翌日、職場に出勤すると
「おはーようさん沙樰」
ゲッ・・・野生の獣がいる。誰か保健所に電話して早く捕獲してもらって
「野生の獣て、ボクの事やろか?ふふっ」
他に、居ませんでしょ?
「ちょっ!わっ若桜さんんん!!」
焦る同僚を尻目に沙樰は、フンっと鼻を鳴らし市丸の横を通り過ぎ今日のオペ予定の確認をし始めた。手に予定を書き入れ、手術に向けての器具を出し準備し整形外科の手術の器具出しに入り、それが終わると滅菌室から戻ってきた器具を仕舞い、そして手術に向けての器具を出し準備をしていると師長が沙樰を呼んだ
「ちょっと、若桜さんいいかな?」
士長室に入り、士長と向かい合い椅子に座り
用事ですか?
「・・・今ね、産婦人科の京楽先生に呼ばれて行って来たんだけど・・外来勤務に変わった方が良いと思うのよ」
・・・嫌です
「気持ちは分かるけど・・躰が、ダメになったら仕事だって続けて行けないのよ?だからね・・・外来勤務の事、考えて欲しいの」
士長室を出た沙樰は大きな岐路だと思った。仕事を取るか自分の躰を取るか・・すると沙樰のPHSの呼び出し音が鳴った
はい、若桜
「後で、僕の部屋に来てね」
・・・はい、京楽先生
沙樰が、準備を終えナースステーションに戻ると内線が鳴った。
はい、オペ室、若桜です
「小児病棟です。クランケは、4歳の女の子です、緊急でオペになりました。準備、お願いします」
はい分かりました。
内線を切った直後から、慌ただしく沙樰は手術の準備をしていく。そして、クランケが抱かれながら入ってきたが、火が点いた様に泣き出してしまった。
「ぁぁぁぁぁっ・・・イヤイヤイヤぁぁぁ!!!」
「怖くない、怖くないよぉ」
何度、宥めても子供は泣きやむ気配は無く、あやしている同僚のオペ看がお手上げ状態だった。沙樰は、定位置を離れ、あやしている同僚のオペ看の元に行き
私が、代わるわよ
「えっ!?でも・・・」
いいから、いいから
沙樰が、あやしている同僚のオペ看の腕から子供を抱き
はいはいはい・・・イイ子だねぇ、怖いくないよぉ~ねんねしてたら、すぐ終わるからねぇ~
「ぁぁぁぁぁっ・・・」
泣き声が、治まってきた。子供は、泣き過ぎて腫れぼったい目をさせていた。沙樰は、そっと手術台に乗せ、頭を撫で
イイ子だねぇ
「・・・うん」
麻酔がされ、眠りに落ちていった。沙樰は、一度手術室の外に出ると手を洗い直し再び手術室に戻り待っていると、日番谷が入って来た
「・・・何だ、沙樰が器具出しかよ」
・・・うわぁ。偏見の言葉だわ、酷っ
「うるせぇ・・・沙樰」
その他の準備を終え、定位置の立ち
「では、始めるぞ」
よろしくお願いします日番谷先生
子供の手術を見る度に沙樰は、胸が痛くて仕方なかった。手術時間が延びて予定では、市丸執刀の手術に沙樰は器具出しで入る筈だった手術に入れなくなり、代わりに同僚が入っていた。日番谷執刀の手術が終わり後処理をしていると、同僚が入って来て沙樰の腕を引っ張った
えっ!?どうしたの??
「どうしたも、こうしたもないのよぉ・・・お願い今すぐ、器具出しに入って!!」
沙樰は、言われるまま手を洗い手術室の中に入ると
「だから、ソレやない言うてるやろ!!コッチのや」
珍しく声を荒げている市丸を見てビックリした。市丸に器具出しをしているのは、沙樰の代わりに入ってくれた子。市丸の気迫に負け見て取れる程怯えていた。吉良も助手に入っていたが、同じくオドオドしている。沙樰は、即座に器具出しをしている子の隣に行き
ゴメンネ・・・代わるわ
「・・・はい。お願いします」
「遅かったやないの?ボク、キミが器具出しだと思ってたんやけど?」
すみません・・・別なオペに入ってまして
「ソレ、ボクの執刀する手術よりも大切なん?」
沙樰は、市丸の言葉に若干イラっとしつつも的確な早さで器具出しをする。そして、市丸執刀の手術が終わりどっと疲れた中、後処理をしていると、同僚が沙樰の傍に寄って来て
「沙樰っ沙樰っ・・・足っ足」
ん??
意味が分からずいると再度、同僚が
「だから・・・血が流れてる」
えっ!?
「早く、交換しにいきなよ。後は、私がしておくから」
あっ・・・ゴメン。じゃお願い
沙樰は、手術室を出てロッカー室に行きロッカーの中から常備して置いたナプキンと下着を持ってトイレに入り汚れた下着を捨て仕事に戻る為手術室に向かっていると不意に腕を掴まれ
「沙樰・・・う・・ん??もそやけどもて出血したんとちゃう?」
はい?
「・・・顔の血の気引いてはるよ」
えっ!?・・・だとしても市丸先生には関係ないでしょ!!
「ふぅ~ん。やっぱり出血してるんやね?・・いつから出血してたん?」
答える義務は、ありません。離して下さい
「いや、離さへんよ」
沙樰の腕を掴んだまま、市丸の真紅の目が沙樰を見据え。
「・・・行こか」
嫌だ!!離して下さい
沙樰の抵抗など無視するかの様に歩き出す。そして、歩きながら市丸は、白衣からPHSを取り出し
「あっ京楽先生ですか?今、何処におられますやろか?」
「今かい?今は、まだ外来に居るよ・・どうしたんだい?」
「今から、沙樰を連れて行きますよって・・・」
「・・・分かった。準備しておくよ」
よっ余計な事しないで下さいよ!!
「余計かどうかは、ボクが決める」
はい??
市丸の言った言葉に、沙樰は少し引いた。強制的に連れて来られた産婦人科外来。中に入ると
「待ってましたよ、若桜さん・・さぁ行きましょう」
・・・七緒
七緒が沙樰の背に腕を回し内診室へと連れて逝く。市丸は、それを見送り京楽の居る診察室の中に入った。京楽は、カルテを書いていた
「ねぇ・・・市丸くん」
「はい」
「キミは、どう思ってるの?沙樰ちゃんの事」
「はい??」
「だって、キミ・・・医学書の畑違いの分野を凄く熱心に読んでたって藍染君が言ってたよ・・それに、昨日のアレ」
「出過ぎた真似してスンマセン」
「いいんだよ。許可を出したのは僕なんだし・・それに、沙樰ちゃんには部署を替える様に言うつもりだから・・・しかし、キミが・・・沙樰ちゃんをねぇ・・・ふふっ」
「因みに、ボクって、そないに魅力ないですやろか?京楽先生」
「いやいや・・・沙樰ちゃんが、そっちに不慣れなだけだよ。あの子は、根が真面目だから・・・僕は陰ながら応援してるよ。」
「・・・」
そんな会話をしてるとは、微塵も思っていなかった沙樰は、内診台へと座らせると、七緒は、沙樰の白衣をたくし上げ、下着を下ろそうとした
ちょっちょっ七緒っ!!
「大人しくしなさいっ!!」
七緒が、本気で怒っている姿に驚いるウチに下着を脱がされていた。七緒は、沙樰の躰の位置を直すと、タオルを脚にかけ、スイッチを押す。内診台は動きながら体勢を変え下半身がカーテンの中に吸い込まれ診察しやすい体位になり
「周りを洗浄しますよ」
性器の周りを綺麗に消毒の下処理を終えた七緒は京楽を呼んだ
「京楽先生、お願いします」
「はい。今行く」
カーテンの向こうにやって来た。パチンと何かを嵌める音
「どれ、子宮の状態を見てみようねぇ機械入れるよ・・・」
機械が入って来る感触。モニターに映し出された沙樰の内部の状態を見て
「あぁ・・・血が溜まってるよ。ねぇ昨日、数日間は、躰を酷使させる事は控えてって言われなかったかい?」
・・・言われました
「ほら、また沙樰ちゃん言うこと聞かないだもん・・・じゃあ・・・子宮に溜まった血液を出す管を入れて抜くからね」
管が、子宮の中に入って来て鈍い痛みが走り沙樰は、息を詰めた。管が抜かれ
「それじゃ、止血剤の座薬入れるよ」
京楽は、座薬を膣に入れタンポンを詰めた。
「貧血にならないように、造血剤入りの点滴受けて行ってね」
でも・・何も言わずに出てきたので・・・
「僕が、連絡入れておくよ」
・・・すみません
処置を終え七緒がスイッチを押す。診察しやすい体位から内診台は動き続けながらカーテンの中に吸い込まれていた下半身が出て来て体勢が戻ると七緒が顔を出し
「では、点滴しましょう」
ベットに寝かされ
「何で、無理ばかりするかなぁ」
・・・七緒
「なんですか?」
私・・・仕事辞めようかな・・・
「それが、いいかも知れないです」
・・・そうかな
「まずは、躰を治す事に重点を置いて行きましょう・・・ねっ若桜さん」
翌日、沙樰は退職願いを出したが、受理されず。代わりに無期限の休暇が言い渡された。
「退職願いは、保留にしておくわね、躰が治ったら戻って来て待ってるわよ」