「あっ、やっ、ふか、ふかいっ♥ らめ、あっふかすぎ、るっ♥ あっ♥ おちっ、おちっ、るっ♥ おちっ、ちゃっ、あっ♥」
「ほらっ♥ ほらっ♥ ちゃんと締めないと落としちゃわよっ♥」
「やらぁ♥ もっとっ、もっとぎゅってぇ♥」
「ほぉら♥ 締めないとちんぽ抜けちゃうわよっ♥ 支えなくなっちゃうわよ♥」
「あー♥ あー♥ しめるぅ♥ しめるからぁ♥ らひて♥ さやかのぉ♥」
「もうっ、ほんとにっ、もうっ♥」
ぶびゅるるぶぶぶるるるっ。
くぐもった水音を立てて、ほむらの一番奥で、さやかの精子が吐き出された。そうだ。正しく吐き出された。もはや排泄だ。吐き出す端から溢れかえって、隙間からぼたりぼたりと落ちては足元に白濁した水溜りが出来ていた。それは一度や二度の量ではない。もはやさやか自身も何度目かわからなくなっていた。
服を脱ぐ間も惜しく、四肢を失い軽くなったほむらの体を抱き上げて、オナホールの様に無造作に犯しはじめてから、一体どれだけの時間が経っただろうか。
ぬるぬるとした汗と、足元にたまりにたまった精液だまりに足を滑らせ、ほむらとつながったままさやかはどしんと尻もちをついた。その落下感と衝撃にほむらの膣は怯えて縋るようにさやかをきつく絞り上げ、堪えきれずまた壊れた蛇口の様にどろどろの精液がほむらの中に満ちた。
「あ~~~~~っ♥」
唐突に与えられた激しい性感に半分意識を飛ばしながら、ほむらがぱくりぱくりと愛らしく空をついばんだ。応えるようにさやかはすぐにその口を唇で塞いでやる。生暖かい舌がぬるりぬるりと侵入してくる。ほとんど無意識の内に、反射じみてほむらの舌はさやかに媚びてきているのだ。それがたまらなく愛らしく、愛おしく、さやかは精液だまりにほむらを押し倒し、本格的に腰を使い始めた。
一体どうしてこんなことになっているのかと、一瞬の空隙にそんなことを思いめぐらせながら。
見滝原には六人の魔法少女がいる。
普通の街なら、これは三日後には半分に減っていて、一週間経つ頃には最後の一人が残っているか、それとも七人目が代替わりとして生まれている計算になる。
これには魔女との戦闘によって失われる命は勘定に入れていない。事故や病気も入っていない。ゴシップめいた殺人事件や、文豪めいた自殺なんかも入っていない。
極めてシンプルな計算式だ。魔法少女同士の殺し合いによる減算という、単純な数式。
獲物となる魔女の数が限られており、一定以上の人数を超えれば魔法少女としての生を継続するのに必要なグリーフシードの数は足りなくなる。足りなくなれば奪い合うしかない。奪い合えば殺さずにはいられない。生かしたとしてもやがては魔女になる。そして宇宙を延命させる燃料となる。凄惨な殺し合いは健全な新陳代謝だ。
しかし見滝原の魔法少女達はもう三か月以上も六人で戦っていた。六人が相争っているのではない。六人が協力して魔女と戦っているのだ。
稀な事ではあるが、例外がない訳ではない。
例えば、協力し合う魔法少女達の連携によって、魔力消費が極端に減った場合。魔力消費が減れば、一人あたりに与えられるグリーフシードの数が少なくても、回復が間に合うかもしれない。それが一人での戦闘より生存率を相当に上げる安定したチームであれば、これは比較的長続きするだろう。尤も、チームの誰かが欠ければ安定性は失われる。少しの仲違いが命に係わる。
例えば、普通の街よりも魔女の出現率が著しく高い場合。これは説明するまでもない。獲物が多ければ、あえて食えもしない相手と争う必要はない。金持ち喧嘩せずだ。尤も、そういった街では魔女も強力だ。返り討ちに会うものもしばしばだ。そして獲物を求めて新たな魔法少女が現れる。
前者は比較的長続きする、が、あるとき唐突に崩壊する。不安定な感情の高ぶりをエネルギーに変える魔法少女だ。少しの擦れ違いが、致命的な破綻に至る。そしてエネルギー回収の為にその破綻を煽るものもいる。所詮は収穫の時を待つ間の、短い平穏だ。決定的な瞬間を連中は待っているに過ぎない。
後者は構造的には長続きするが、個々の魔法少女の寿命は短いものだ。強力な魔女との戦いに敗れ、或いは感情の動揺に耐えきれず魔女へと変じ、そしてまた次の魔法少女が訪れ、サイクルは止まらない。しかし行き過ぎれば街は澱んでいく。そうなれば制御が利かなくなる。そこまで行くとリセットだ。一度更地に直して遣り直す。災害という形で。
見滝原は例外中の例外だった。
その両方だったからだ。
魔法少女達は互いに程々の距離で親交を保ち、発展した都市につきものの魔女退治へと精を出していた。そして監視者さえも抱き込んで、見滝原は一つの安定したエネルギー生産プラントとなっていた。
見せかけの安寧、偽りの平穏、箱庭の楽園。
楽園の魔法少女達はこう呼ばれた。
美樹さやかにとって、暁美ほむらというのはいけ好かない女だった。
学校での試験でバツを貰ったのを見たことがないし、面倒臭がるが運動させれば運動部が感心するようなフォームで駆け抜ける。胸は平坦だがすらりとしてスタイルも良く、長い黒髪は嫉妬するほどに艶やかだ。無口だが口を開けばなんとも蠱惑的な声だし、不愛想だがちょっと見ないくらいの美人だ。コミュニケーション能力に難がある点を除けばとんだ完璧超人だ。
だがさやかはそんなことで人を嫌いになったりはしない。そりゃあ美人さんだし頭もいいし運動もできるし、羨ましい事は多い。だがそれは芸術品を見て感心したり、良い音楽を聴いて耳を傾ける様な、そういうものだ。良いものを嫌いになりはしない。タンスに小指打ち付けて骨折しないかなとは思っているが。
無口な事や無愛想な事も、話下手で大人しい性格なのだと思えばどうという事もない。さやかとしては自分が明るく賑やかにしている隣で地蔵の如く虚空を見つめている姿を見て思わない所がない訳ではないが、偶に憎まれ口を叩かれるくらいで、個性の範囲だと思う。トースターに指突っ込んでやろうかとは思うけれど。
こんなにも寛大な心を持っている自分はきっと菩薩か聖母なのだろうと常々思っているさやかにしても、時には我慢できない事もあった。
「あんた、ほんっとにさぁ……なんなのよ、ほんと、もう……」
感情の高ぶりは魔法を強める。しかしこの高効率の燃料は少しばかり煤が多い。ソウルジェムが濁るのを感じながら、さやかはこの怒りを何とか飼い慣らそうと奥歯を噛みしめた。感情の力はさやかの魔力をかつてない程に強化する。
「…………そうね。ごめんなさい」
こんな時ばかり素直に告げられる謝罪に、さやかは危うく感情のバランスを崩すところだった。ぼたぼたと零れる血。走り過ぎて燃えるように熱い肺腑。がんがんと痛む頭。ふざけるなと叫びだしそうになるのを、奥歯を噛みしめて堪える。
呟くような囁くような、余りにも小さな謝罪に、さやかはぎりぎりと歯ぎしりする。エナメル質が欠け、神経に苛立つ痛みを送ってくる。
「こんな、こんっ、こんなこと、二度とッ、二度とあたしに……ッ!」
感情の高ぶりによっていや増した魔力をぶつける様に、さやかは回復魔法を練り上げる。ダメージが大きすぎた。とにかく回復しなければならない。傷口をふさがなければならない。このふざけた馬鹿女の声を聞いているだけで、顔を見ているだけで、さやかの視界は怒りで真っ赤に染まりそうだった。調速機を回す様に、言葉にならない繰り言を吐き出しながら、さやかは感情の高ぶりと裏腹に精妙に術式を構築する。
回復魔法はそのままでは大雑把に人体の持つ再生機能を働かせるだけだ。尋常の傷の治りを早回しに行うだけに過ぎない。しかしそれでは足りない。傷口を覆うように肉を肥大化させ、骨を埋め、皮膚を貼り、足りない血液をかさましし、ショックによって低下した心肺機能を代替し、意識を失わせないよう酸素を脳に送り、雑菌を軒並み殺菌し、ええと、あとはなんだ、なにをすればいい。なんで私は医学書を読んでいないのか。いつも横で知識的サポートをしてくれる人間辞典女はどうした。さやかは感情の生み出す余剰エネルギーのままに思考を空転させた。
第一
さやかは四か所同時で、しかもそれぞれに複数の施術という並列多層術式に、自分の脳の血管の方こそ先に切れてしまうのではないかとぼやいた。
いけ好かない頼りの人間辞典女は、さっきから横になって夢現だし、大体サイズが半分くらいになってしまっていてどうしようもない。
「ごめん、なさい、ね……」
「あんたがッ、あんたが謝ってんじゃないわよッ!」
ありったけの魔力を注ぎ、迸る感情から生み出されるエネルギーの殆どを血液の生産に繰り出しながら、さやかは怒鳴りつけた。
「
暁美ほむらはショックで浅い呼吸を繰り返しながら、謝罪を繰り返していた。
そんな姿にさやかの怒りは際限なく湧き出てはソウルジェムを穢した。
そもそも、全てはさやかが悪いのだ。
初めて見る魔女。初めて見る行動。経験不足だった。仕方がないことかもしれない。しかし警戒が足りなかった。死角から不意に現れたそいつの鋭い突きがさやかを襲い、ほむらに突き飛ばされて事なきを得たのだった。
だがほむらはただでは済まなかった。
水晶の獣のような姿をした魔女のとげは、刺さったものをぱきぱきと音を立てて水晶で凍らせてしまう悪趣味な呪いだった。それに気づいた時、既にほむらの四肢は美しい水晶に覆われ、やがて心臓までが侵されるのは時間の問題だった。
やれと叫ばれた。出来ないと答えた。
やれと二度叫ばれた。出来ないと怒鳴った。
やれと三度叫ぶ声は苦痛に塗れていた。さやかはやった。
さやかの振るった剣は正確無比にほむらの四肢を根元から断ち、水晶化の呪いから遠ざけた。代償として多量の血液を失わせ、ショックでいまや虚ろな目付きで痙攣する少女を残して。
全てはさやかの油断が悪かったのだ。それなのにまるでさやかが無事だったことに安堵するような、そんな微笑みを見せられて、美樹さやかは生まれて初めてと言えるほどの怒りを覚えたのだった。
ふざけるな。
ふざけるな。
ふざけるなよ美樹さやか!
この女を死なせてはならない。さやかは激情のままに、ほむらに回復魔法をつぎ込んだ。
仲間たちが魔女を追う姿を尻目に、さやかは半ば以上ソウルジェムを濁らせながらも、なんとか死に体の少女の命を辛うじてつなげることに成功した。
しかし、二人を守りながら、それも攻撃を受けてはならない相手との戦闘は困難なもので、さやかたちは撤退する他になかった。殆ど負け知らずと言っていい見滝原の魔法少女達にとって、それは屈辱的な撤退だった。
もはや戦闘不能となってしまった鬼札暁美ほむらとその水晶に覆われた四肢を抱えて逃げ去る彼女たちの背には、言葉に出来ない、言葉にしようもない怒りと悔しさと、そして恐れが、どうしようもなく滲んでいた。
「まあ、あれだけのダメージだったのだもの。生き残れただけ良しとするしかないわ」
大損害を被った暁美ほむらは、しかしあっけらかんとしたものだった。
一番落ち着くだろうという事で自宅の布団に寝かされたほむらは、目覚めてすぐに詳細を聞くなり、損害を嘆くよりも生存を喜んだ。
「あ、暁美さん、大丈夫なの?」
「勿論大丈夫ではないわ。流石に両手両足を失うのは初めてね」
「その割には余裕そうだなあんた」
「少ない魔力で自分で腕繋いだときより余程快適ね」
ハードな体験を偲ばせる発言に、まどかが引き攣った苦笑いを浮かべた。弓を扱う遠距離型の魔法少女であるまどかは、比較的ダメージを負う事が少ない。それだけでなく、マミとまどかという二人の支援があるセクステットは、基本的に大きなダメージを負う事がない。負ったとしても前衛よりの回復役であるさやかが即座に修復できる程度だ。大出血を伴う今回の様な大けがを目の当たりにして、流石にショックだったのだろう。
ベテランであるマミや杏子にしても、あえて軽口を叩いて心の均衡を保とうとしているようであった。
「ねえさやか。この手足かっちんこっちんですけど、本当に要るのですか?」
一方でまるで平然としているのが一番年の若いなぎさだ。部屋の隅に並べられた、透き通った水晶でまるで標本の様に固められた生々しい手足を興味深そうに眺めながら小首を傾げている。確かにこのままではただの悪趣味なインテリアだ。
「流石のあたしでも、いちから手足を生やすってなると、コストが足りないのよ」
「じゃあこれを繋げるのですか? プラモみたいなのです」
「プラモって」
しかし銃火器を武器とする女だ。むしろサイボーグ化した方が強いんじゃなかろうかと一瞬考えてしまうさやかだった。
ともあれ、さやかはこの四肢をほむらに繋ぎ直すつもりだった。新しく手足を創造するのはもはやさやかの魔法の範疇ではない。やってやれないことはないだろうが、莫大な魔力が必要だし、時間もかかるだろう。そして神経系を生み出していく過程では恐らく想像を絶する痛みが生じる。それならまだ、本人の手足を繋ぎ直した方がリハビリも楽だ。
しかし、問題はこの水晶だった。
「無理ね」
「無理だな」
「物凄く強力な呪いだわ。干渉しようにも手の付けようがないの」
「物理的に壊すにしても、手加減が利かねえ。中身ごと壊しちまうよ」
「ならなぎさが貰っても、」
「お腹壊すわよ」
「むぅ」
まずはこの水晶が解けなければ、手足の繋げようがない。しかし水晶を破壊する手段がない。
となれば、やることはひとつだった。
「急いであの魔女を倒す。そうすれば呪いは解けるはずだわ」
「なら、すぐに、」
「魔女の結界も閉じてしまったわ。改めて腰を据えて探さないと」
既に時刻は深夜というより朝に近い。まさか徹夜で追いかけて、疲労困憊した状態で戦う訳にもいかない。気持ちは急くが、魔法少女と言えど休息抜きには戦えなかった。
これにはさやかも納得したし、仕方がないと思えた。
しかし杏子の言葉にはいきり立った。
「さやかは留守番だ」
「なっ、ちょっと! なに勝手に、」
「そうね、美樹さんは暁美さんの傍にいてあげて」
「マミさんまで!」
どうして自分をのけ者にするのか。そもそもこれは自分の油断のせいなのだ。自分が何とかしなければならない。そういきり立つさやかを、まどかがそっと押さえた。
「落ち着いて、さやかちゃん。さやかちゃんまで傷付いたら、誰もあんな回復魔法使えないんだよ」
「む、ぐぐ……」
「さやかは近接メインだ。どうしても攻撃にさらされる。そうなっちまったら、あたしらがいざって時に今度はどうしようもなくなっちまう」
理屈だった。正論だった。行きたいとわめく感情を、押さえつけられる。自分の優れた回復魔法が恨めしくさえ感じた。しかしこれがなければほむらは今頃水晶に覆われた一体の標本になっていたのかもしれないのだった。
「第一、さやかが出かけたらほむらの面倒を誰が見るのです? なぎさは嫌なのですよ」
「私も
それまで黙りこくっていたほむらが、横になったまま言い放つ。
「なによそれ」
「騒がしいあなたがいた所で落ち着かないわ。自分の面倒位自分で見られる。あなたはさっさと私の手足が戻るよう、犬の様に走り回ってきなさいな」
「おいほむら!」
毒舌を吐きはじめるほむらを睨みつける杏子と、平然と受け流して涼しい顔のほむら。眉を寄せて溜息を吐くマミと、おろおろと視線を迷わせるまどか。眠たげにマミに体を預けているなぎさ。そういった只中で、かえってさやかの胸中は落ち着いてきた。
何時もであればほむらの憎まれ口に一番先にとさかに来て、ああわかった、すぐにでも治してやるわよと飛び出していき、マミやまどかに宥められていたことだろう。しかし今のさやかには不思議と解ったのだった。なにせ、ほむらの目は、さやかを庇ったあの時と同じ目だったのだから。
「わかったわ」
「美樹さんまで、」
「あんたがあたしのこと心配してくれるのは分かった」
「へっ? さやかちゃん?」
「確かに、あんたのその姿を見ていて一番つらいのはあたしだわ。でも、あんたをそんな姿にしちゃったのもあたし。だから責任は取る。皆があいつを仕留めてくれるまで、私があんたの手足になるわ」
「…………要らないと言ったら?」
「今のあんたになにができるっての?」
深い溜息が返答だった。
「というわけで、あたしがこいつの面倒見てるから、みんなはちゃちゃっと魔女退治してきてよ! あたしがいらっと来てこいつの頭でサッカー始める前に」
「あら、それじゃあ大急ぎで探さないとね」
「リフティングのプロになっちまう前にな」
「さやかちゃんはバスケの方が得意だよね」
「まどか?」
「なぎさはいい加減おねむなのです……」
ほむらにとっては極めて不本意に朗らかな会話を済ませ、
「さあってほむら、まずは何をしてほしい!?」
「静かに寝かせてくれるかしら……」
「えー? まくら投げしようよー、ほむら枕ね」
「貴女を庇ったこといま猛烈に後悔してるわ」
一夜明けて、さやかは日が昇る前に目覚めた。
払暁の薄明の中、辛うじて予備の合った毛布をもぞもぞと抜け出して、すぐ隣で眠りにつくほむらをじっと見下ろした。カーテンの隙間から差し込む薄明かりの中、ほむらの白い肌はまるで死人を思わせた。今日の一件で体力を消耗した事だけが原因ではないだろう、長い間に刻まれた疲労が目の下にうっすらと隈になって残っていた。唇は少しかさついていて、まるで人形か何かの様にピクリともせず横たわっている。そして掛布団の上からでも分かるくらいに、そのふくらみは小さかった。
ちっぽけだとさやかは思った。
こんなにもこいつはちっぽけな女の子だったのだ。
そして、そのちっぽけな女の子に、体を張らせてしまったのだ。
両腕と両足、普段当たり前の様に見ているそれらが失われた姿は、どうしようもない違和感と罪悪感を呼び起こした。
余りにも静かな寝姿に、もしかしたら夜更けに息絶えていたのではないかと、さやかはそっと鼻先に手をやった。静かで、細やかで、しかし確かに暖かい湿り気のある呼気が感じられて、我知らず胸をなでおろす。
体力を消耗していたほむらはあの後すぐに眠りについたが、限界まで魔法を振り絞ったさやかは、興奮と不安、緊張と言ったものが抜けきらず、浅く短い眠りと、暗闇の中はっと目覚めてはこうしてほむらの無事を確認する夜を過ごした。
経過はいいようだ、とさやかは分かったように頷いて、不安を振り払った。
少なくともこのいけ好かない女は、水道水の塩素に負けて腹を見せて浮かんでくる金魚みたいに、一夜明けてぽっくり死んでいたりしない位には図太いのだ。そう自分を納得させて、さやかは静かに立ち上がった。一時は死の淵をさまよい、文字通り死ぬほど疲れているほむらを起こしてはいけない。
部屋を出て借り物の寝間着を着替え、洗面所で顔を洗い、鏡に向かってにっと歯をむき出しにした。大丈夫。ちょいとヤバいヤマだったが、峠は越えた。さやかはちょっと疲れているが怪我もないし、皆も無事だ。そして、ほむらも死んでいない。
「ほむらも……死んでない」
そうだ。死んでいない。生きているのだ。
一人になって、静かな薄暗がりを呼吸をするうちに、さやかは不意にその一事に気づいて、全身から力が抜けそうになった。ほむらが生きているという事が、さやかの体を支配していた緊張を一時に解き放ってしまったかのようだった。ほむらは生きている。そんな事さえもさやかはまともに判断できない程に興奮し、緊張していたのだ。
感情のどよめきに気持ち悪くなって込み上げてきた胃液を飲み下し、ほろりと零れる涙をぬぐって、さやかは買い置きの歯ブラシの包装を勝手に開き、しゃこしゃこと歯を磨いた。歯茎に感じる硬いブラシの感触が、たまらなくリアルだった。
口をゆすぎ、さやかは寝室へ戻った。
静かに行動していたつもりだったが、ほむらは目覚めていた。ぼんやりとした目付きでどこを見るでもなく虚空に視線をさまよわせてはいたが、しかし目を開き、しっかりとした呼吸を始めていた。
「……おはよ、ほむら」
何と声をかけたものかと悩み、そして結局零れ落ちたのは有り触れた言葉だった。ほむらはゆっくりとさやかに視線をやり、それから起き上がろうとしているのか少しの間もぞついて、それから、諦めたように脱力した。
「夢ではないのね……夢でまであなたの間抜け面なんて見たくないわ」
ぽつりと、誰に言うでもなく虚空へと漏らした呟きは、思いの外さやかの胸をえぐった。そんなさやかの表情に気づいたのか、すぐにらしくもなくからかいの言葉に切り替えてくれたけれど、しかし胸に刺さった棘は小さくはなかった。だが本来その棘はほむらの胸に刺さっているべきものなのだ。さやかが向けられていいものではない。さやかなどが。
さやかは静かに枕元に腰をおろし、体は辛くないかと尋ねた。辛くはないけれど、なんだか不思議な感じだわとほむらは返した。さっきもね、起き上がろうとしたの。体はいつも通り起きようとするんだけど、支える手足がないから、まるで操縦桿が突然いう事を聞かなくなった戦闘機に振り回されている気分だったわ。らしくもないジョークじみた物言いに、さやかは乗っからせてもらった。さやかもその方が楽で、そしてきっとほむらもその方が楽なのだ。まるで体験したみたいねと笑うと、ほむらもぎこちなく笑った。知らなかったの。酔っぱらってフラフラの所に契約書を書かされて、中東でF-5を乗り回していたの。
二人してしばらくくすくすと笑って、それから、少しの間呼吸を整えた。
「切り替えなきゃいけないわ」
ほむらがそう言い、さやかも頷いた。何時までも気持ちを引きずっていては、ソウルジェムも濁る。ソウルジェムが濁れば、こころはより一層疲れてしまう。
さやかはおもむろに立ち上がって勢いよくカーテンを開いた。
差し込む朝日に目を細めるほむらに振り返って、太陽を背にさやかはにっと笑った。
「さあってほむら、まずは何をしてほしい?」
仕切り直しだと、さやかは笑い、ほむらは苦笑した。
初仕事はなかなか難儀だった。
何をしてほしいかと問われたほむらは少し考えて、こう答えたのだった。
「着替えたいわね。それに、寝ている間に汗もかいたから、拭いてもらえると嬉しいのだけれど」
淡々とした『お願い』によし来たとタンスを漁り、洗面器にぬるま湯とタオルを用意した辺りで、さやかは気付いた。着替え。それに体を拭く。
「あたしが脱がすのか。あたしが。ほむらを」
ぽつりと呟き、改めて事態を認識して、さやかは洗面器を抱えたまま寝室を前にしてそっと座り込んだ。
「脱がすのか」
脱がす。これは言い方が悪いに違いないとさやかは考えた。着替えさせる、だ。脱がすのが目的ではない。それは途中経過であって目的ではない。脱がし、体を拭き、服を着せ、着せ……。
「あたしが体を拭くのか」
拭くのだ。
ほむらにそれが出来ない以上、さやかがやる他ない。
同性の体だ、気にすることはないと言ってしまえばそれまでだが、だからといって同性の裸をまじまじと見たことなどそうそうあるものではないし、ましてやその裸の無防備な体をまさぐるなどさやかの世界に未だかつてなかったことだ。それもあのほむらだ。ちょっと見ないくらいのほむらだ。しかもいまや反撃の心配もない弱ったほむらだ。
前々から、運動した時などにあの白い肌にほんのりと血の色が透けているのを見かけたりするときに、なんだか不思議とどきどきとしたものだった。邪魔だからと無造作に髪をくくった時の、普段は見えないうなじが思いがけずさらされたときなどは思わず見入ってしまった。
そのほむらの裸体である。
「美樹さやか?」
戸の前で動かない気配に気づいたのか、ほむらが声をかけてきたが、さやかは少し待っていてと硬い声で返答した。
さやかは逃げたりしない。ほむらにお願いされたのだ。きちんとやり遂げる。しかし、いまはまだ立ち上がれない。立てない。立つためには、まず座っていなければならないからだ。
美樹さやかは健全に思春期真っ盛りだった。
しばらくしてようやくしずしずと部屋に入ってきたさやかに、ほむらは眉を顰めた。
「……どうしたの、あなた?」
「何が?」
「仏像みたいな顔して」
「
「まあら?」
「……ちょっと縮めて言ってみて?」
「……? ……まら?」
「おーけい。ちょっと……ちょっと待っててね。ちょっとだけ。降魔調伏してくるから」
美樹さやかは健全に思春期真っ盛りだった。
トイレで用を済ませて消臭剤をたっぷりと振りかけて帰ってきたさやかは清々しい程爽やかな笑顔で手早くほむらの寝間着を脱がせ、タオルで丁寧に汗をぬぐってやり、思いの外に弾力のあるなだらかな丘に触れ、桃色に色づくいただきに臨み、下着の向こうの渓谷に思いを馳せ、そこだけは大真面目に塞いだ傷口の経過を確かめ、そして新しい寝巻を着せてやった。中身のない裾と袖は縛ってやった。
「ありがとう。さっぱりしたわ」
「あんたに素直にお礼言われるとなんか変な感じだわ」
「普段あなたが碌でもない事しかしないからよ」
「もう、口が減らないんだから」
さやかは改めて布団にほむらを横たえてやって、洗面器とタオルをもって部屋を出て、片付けもそこそこにトイレに籠った。そしてしばらくしてやはり消臭剤の匂いを纏って出てきた。この短時間でこれは新記録だった。さやかの青春は弾けるパトスだった。
さて、出すものを出すと腹が減ってきた。
成長期のさやかの図々しい胃袋はもうぐうぐうと騒がしく文句を言い始めている。しかしそれも生きているという事だ。さやかは生きている。そしてほむらも。
生きているならば、まずはご飯だ。朝御飯を作らなければならないとさやかは決意した。
普段自分で料理をすることは滅多にないが、元々器用な方だ。家庭科の授業をきちんと受けていれば酷い失敗はまずしない。失敗をしないというのが大事だ。必ずしも大成功でなくてもいいのだ。まずまず食べられればいい。
しかしまず失敗するとかしないとかの問題以前の所でさやかは躓いた。
冷蔵庫の中身が壊滅状態だったのである。
正確に言えば、入っているは入っている。ゼリー飲料とか、栄養食品が。業者か。ふざけるな。さやかは激怒した。こんなものを飯と認めることは断じてできなかった。こんなものばかり食べているからあんなに平坦なのだ。
あいつにはきちんとした飯を食わせなければならない。
決意を新たにしたところでさらに追い打ちをかけられた。
なんと炊飯器がない。日本人の家なのに炊飯器がないのだ。場合によっては二台も三台も置いてある家すらあるというのに、この家にはライスクッカーが存在しないのだ。何食って生きてんだこいつと呆れたが、決まっている。ブロックタイプの栄養食品をシャキサクとやっているのだ。珪素生物か何かかこいつは。
呆れながら台所をひっくり返す様に探し回る、必要はなかった。何しろひっくり返すまでもなかった。申し訳程度のフライパンに鍋が一つずつ。包丁はない。恐らく包装を切る為だけに生かされているキッチンばさみが一挺。それだけだ。洗い物をするための洗剤やスポンジもたわしもない。どれだけ棚を漁っても虚無が犇めいているだけで、調味料と名の付くものは塩すらない。悪霊が出てきたらどうやってお祓いするつもりなのか。物理か。化学か。頭が痛くなってきた。
あまりにもさびしい食生活を思って、さやかは溜息を吐いた。
そしてその寂しい食生活を送ってきた、寂しい光景をもはやさびしいとも思えず当たり前のように過ごしてきたほむらを思って、もう一つ、深い溜息を。
ないものは仕方がない。
適当に幾つか見繕って朝飯とすることにした。
「……あのね、美樹さやか」
「はい、あーん。なによ」
「んぐ、むぐ……別に、ここまでして貰わないでも」
「あんた一人じゃ食べられないでしょ」
「そうだけれど、そうじゃなくて……」
溜息を吐くほむらに、さやかは小首を傾げた。確かに食事をいちいちはいあーんなんて食べさせて貰うのは恥ずかしいだろう。しかしこれは介護なのだ。自分で食べられない以上、このような形を取るのは仕方がない。合理性を重んじるほむらならば納得できる理屈だと思うのだが。
「その……この体勢の意味は?」
「……何か問題でも?」
「……はあ」
さやかの膝の上で、ほむらは溜息を吐いた。ゼリー飲料に、ブロックタイプの栄養食品。それにミネラルウォーター。見慣れた品目は、しかし快活なさやかが口にするものとしては違和感が酷い。当人は手早く食べ終えて、こうしてほむらを膝の上に座らせて、抱きすくめる様にして甲斐甲斐しく食べさせている。ありがたいはありがたいが、鬱陶しいと言えば鬱陶しい。一度思い立ったら何処までも突っ走るさやかの愚直さが完全に悪い方に出ていた。
しかし逆らおうにも自分が無力であることはよくよくわかっているのか、借りてきた猫のように大人しくすっぽりとさやかの腕の中でもくもくと朝御飯を平らげるほむら。なんだかその素直な姿が思いの外可愛らしく想えて、さやかは自分の中のほむら像が昨夜までとは全く姿を変えてきているのを感じた。ごちそうさまと小さく呟く声もなんだか恥じらいがあって、こう、なんだ、いい。いい匂いもする。しかし賢者タイムなので穏やかな気持ちでいられる。
抱きしめたまま、午前中は二人でテレビを見てのんびりと過ごした。何しろやることがなかった。最初の内はお互いの息遣いや鼓動に緊張があって落ち着かなかったが、下らないバラエティ番組で、アマゾンの奥地で謎の食人部族(現地スタッフ)に追いかけられて、可愛いボクが何でこんな目にと叫びながらジャングルを全力疾走する小柄なアイドルの必死の形相に二人して噴き出してからは、自然とお互いの体温に身を任せることができた。
お昼は何を食べようかと話しているうちに、チャイムが鳴ったのでさやかが対応すると、買い物袋を下げたまどかたちだった。きっと暁美さんの家には何もないと思って、と信頼の程が伺えるお言葉と共に、マミが台所で腕を振るってくれた。
朝からの流れで自然に膝の上で食べさせ始めた所、四組の視線が集まってしまってほむらが悶絶し、まどかがこれ以上ない位清々しい笑顔で写真を撮りはじめたりと一波乱あったが、概ねにおいて平和で充実した昼食であった。それらのおどけた空気が、ほむらを悩ませないようにと彼女らなりに気を遣った結果だとすぐに察せたからだった。
「マミさんたちはこれからどうするんですか?」
「例の魔女の結界を探す、と言いたいけれど、少し難しいわね。夏休みみたいに人が大きく動く時期は、魔女も活発になるの。光が強ければ、その分暗闇で迷う人も多くなるから。そういった魔女を放置していくわけにもいかないものね」
「あの魔女の気配は覚えてるからな。痕跡を辿って追いかけながら、道々引っかかる魔女どもを倒してくことになる」
「気にしないで。二人も抜けた状態で無理をしては、犠牲が増えるだけよ。幸い夏休みはまだ始まったばかりだもの。気長に行きましょう」
「ほむらは思ったより元気そうなのですね。さやかに慰めて貰ったのですか?」
「こら、なぎさちゃん」
「いいの。そうね、構ってちゃんの犬がきゃんきゃん煩くて、落ち込んでる暇もないわ」
「あんたねえ……」
ほむらも、そしてさやかもまた、魔法少女達が作り上げてくれる空気に乗った。
女の子が集まってきゃいきゃいと騒ぐ華やかな空気。からかい、からかいかえされるおどけた空気。暖かな紅茶によって暖められる柔らかな空気。作り上げなければ呼吸するのが辛かった。息苦しかった。四肢を失った少女を囲むお茶会は、あまりに歪で不安定だ。幻想的で華やかな魔法の世界に、ふいにリアルが差し込んでしまった。その緊張を、丁寧に包み込んで押し隠さなくてはならなかった。
食後のお茶も済ませ、情報を共有し、程よく空気が弛緩したところで、お開きとなった。
魔法少女が呼吸するのに必要な幻想をたっぷりと補給した後は、魔法少女が活動するリアルに立ち返らなくてはならない。魔女を殺す。そして仲間を助ける。シビアな骨を優雅な肉で覆い隠して、マミ達は朗らかな笑顔を残して去っていく。
「ちょっと見送ってくるわ」
「ええ、よろしく伝えておいて」
テレビが見える位置に即席の座卓を作ってほむらを座らせてやって、さやかはマミ達の後を追った。
ほむらには幻想が必要だった。マミ達もそれを呼吸しに立ち寄らなければならなかった。しかしさやかはリアルが欲しかった。差し迫ったことを知っておかなければ、早晩飛び出してしまいかねなかった。
そんなさやかの心境を察していたのだろう。マミ達はあくまでもゆっくりと歩いていた。
「マミさん」
「美樹さん」
目は通じ、頷き合った。
「実際のところ、どうなんですか?」
「簡単にはいきそうにないわね」
さやかの性急な問いには、鋭く直截な答えが返った。
「実は来る途中、あいつの使い魔に遭ったんだが、ありゃとんだ厄モンだ」
「使い魔も水晶化の能力持ちなのです。ずっと弱いけれど、数が多いのです」
「おまけに結界内に水晶を集めてるみたいで、見分けがつき辛くって……」
悪いニュースと、更に悪いニュースがある、そう聞かされた気分だった。
「やっぱり、あたしも一緒に……」
「駄目よ。いまの暁美さんは一人にはできないわ。一晩で済むようなものじゃないの」
たしなめる様なマミの言葉に、頭では理解を示す。しかし心は納得がいかなかった。
マミ達は見ていないから落ち着いていられるのではないかと、じらじらと腹の奥でくすぶるものがあった。さやかは見た。一晩見続けたのだ。死人の様な、死の淵にある、まだ死んでいないだけのほむらを。そして目覚めて、現実に泣く事も出来ず、こころの落ち着けどころを見つけられない迷子の様なあの顔を。
「さやかちゃん。さやかちゃんは、ほむらちゃんを看てあげて。いま、ほむらちゃんはきっとすごく怖いの。怖くて、不安で、泣きそうになってる。私じゃ駄目なの。マミさんでも、杏子ちゃんでも、なぎさちゃんでも」
「なんであたしならいいのさ」
「さやかちゃんだけが許してくれないからかな」
「なにそれ?」
幼馴染は意味深に微笑んで、ただお願いねと残して、連れ立って行ってしまった。
心の整理がつかないまま、さやかは帰路についた。納得はいかなかった。しかし、誰かがほむらの傍にいてやらなければならないのも確かだった。
「いいのかい、さやか。行かなくて」
「……キュゥべえ」
その足元に影から湧くように、いつの間にか白い獣が尾を振って現れた。少女と契約を結び魔法少女とし、魔女を狩らせてグリーフシードを集めるマスコット。理屈屋で胡散臭いというのが、さやかの正直な印象だった。
「あの時は殆ど不意打ちを食らっただけだ。魔法少女が五人も集まって挑めば、すぐに終わる相手だよ」
「あんた、あの魔女のこと知ってるの?」
「はじめて見る魔女だ。でも何時もの事だからね。バランスが崩れる様な魔女ではない筈だよ」
魔女がそんなに魔法少女に都合のいい存在であれば気楽な話だが。しかしキュゥべえの方はいたって平然とそんなことを言ってくる。或いは魔法少女の根幹にかかわる彼には、魔女の法則とでもいうべきものがわかるのかもしれないが。
「あの四人じゃ倒しきれないかもしれないけど、さやか、君が行けば話は別さ。さくっと倒してさくったと終わらせた方が、ほむらの為にもなるんじゃないかな」
行きたくはある。行きたくはあるが、とさやかはキュゥべえを蹴りつけた。小生意気にもひらりと避けられる。
「あんたがそんなふうに勧めてくるのってすっごく怪しいんだけど。一体今度は何を企んでるのよ?」
「ボクはただ早く終わらせてほしいだけだよ。さやかにとっても悪い話じゃないと思うけど?」
悪い話では、確かにない。さっさと魔女を片付ければ、ほむらをすぐにでも治してやれる。一晩程度なら、寝ている間なら、さやかが抜けだしても大丈夫だろう。
しかし結局さやかは首を振った。
「まどかたちを信じて待つわ。ほむらも放っておけないし、勝手は出来ない。それに何よりあんたは信用できないもん」
「そうかい。それは残念だよ」
出目が悪かったな、と呟いてキュゥべえはまたどこかへ消えてしまった。全く不気味な消え方をする奴だ。さやかは肩をすくめて見送り、そして早足に帰路についた。思いの外時間をかけてしまった。ほむらは大丈夫だろうか。退屈はしていないだろうけれど、何しろ今の彼女は体勢を変えることさえ困難なのだ。
機嫌を損ねていたらどうしよう。ほむらは一度拗ねると長いから困る。
そんな心配がちっぽけに思えるような大惨事が待っていることをさやかはまだ知らなかった。
ほむらの家に戻って、最初に気づいた異変は、ただいまの声に返事がなかったことだ。無駄に騒々しいさやかの声に気づかなかったとは思えない。しかしまあ、ほむらのことだから返事が面倒だったのだろうとその時は思った。
明確に異変に気付いたのは、靴を脱ぎ、いまに向かった所で聞こえてきた、押し殺すような嗚咽だった。嗚咽。泣いている。そうだ。泣いているのだった。誰が。ほむらしかいない。さやかは困惑した。さやかの知る限り、暁美ほむらという女は涙と無縁だった。レンタルビデオ屋で借りてきたグリーンマイルを観たときだって隣でさやかがギャン泣きしているのを尻目にしれっとした顔でコーンブレッドがおいしそうとかいうクソみたいな感想をかましてくれた女だ。さやかの知る限りほむらが泣いたことなんて一度しかなかった。
駆けつけて、そして異変の全てを悟った時、全ては手遅れだった。
テレビから無遠慮に垂れ流されるバラエティ番組の笑い声。
声を押し殺して泣くほむら。
鼻につく異臭。
その可能性をちらとも思いつかなかった自分に、さやかはどれ程自分が甘い認識だったのかを嫌というほど思い知らされた。
ほむらは失禁していた。
昨晩から用を足しておらず、朝昼と食事し、利尿作用もある紅茶も飲み、そして身動きの取れない状態で手足となるべきさやかもおらず、こらきれなくなったのだ。
「ほ、ほむら、」
「み、ないで……っ! ひ、ぐっ、みない、でぇ……っ!」
硝煙の香りに燻され、鋼鉄を友として携え、心まで鎧った魔法少女。しかしそんなほむらも、その実はただの力ない少女に過ぎない。がつん、と激しく頭を殴られたようなショックがさやかを襲った。こうしてほむらが弱々しい姿を見せるまで、さやかは心のどこかでほむらの強さを信じていたのだ。信奉していたのだ。信仰していたのだ。触れ得ざる鋼鉄の魔女の様にさえ思っていたのだ。そんな訳がないというのに。
「ごめん、ほむら、ごめん。あたしが遅くなったから……」
咄嗟に飛び出た謝罪に、ほむらはただ顔を背けた。
そうだ。謝罪など何の意味もない。
さやかは濡れた床を踏み、嫌がるほむらの小さな体を抱き上げた。さやかの服に沁み込むほど、ほむらはじっとりと尿で濡れていた。
「お風呂、はいろっか」
努めて平静を装った言葉に、ほむらは返事をくれなかった。
服を脱がせ、浴室に入り、暖かなシャワーを浴びせるうちに、ほむらはようやく泣き止んでくれた。抱きとめる様に支えながら、長い髪を苦労して洗っていると、やっと声を出してくれた。
「呆れたでしょう?」
「えっ」
「いい年して、お漏らしなんかして、人の手を借りなきゃ、綺麗にする事も出来ない。とんだお荷物ね。嫌になったでしょう」
ひどく自虐的な言葉だった。思えばこの女が饒舌な時は、大体が訳の分からない知識を披露している時か、こうして自分を自分で貶めている時ばかりだったように思えた。
「貴女を庇った時、しょうがない奴だって思ってたのよ、私。すっかり油断して、この子は何時までたってもダメな子ねって、そう思ってたのよ。それを庇って、いい気になっていたの。いい気分に浸っていたの。私はあの美樹さやかを助けてやったんだって。手足を失ったときだって、ヒロイックな愉悦に浸っていたわ。ああ、身を張って仲間を助けるなんて、私はなんて素晴らしい魔法少女なんだろうって」
呟くような声でそんなことを言って、ほむらは微笑んだ。
「本当に、死にたくなるわ」
さやかの嫌いな笑顔だった。さやかの大嫌いな笑顔だった。すっかり染みついた、自分をあざ笑う負け犬の笑顔だった。
「あなたも、可愛そうな芋虫女の面倒を看てやる私はなんて素晴らしいんだろうとでも思っていたんでしょうけれど、お生憎様ね。自分の下の面倒も見れない汚い生き物なのよ。もう嫌になったでしょう」
「そんなことないわ」
「口では何とでもいえるわ。あなたは偽善が大好きだものね。でも一皮むけば誰だって同じよ。誰が好き好んで人の糞便の処理なんてしたがるというの。汚いって思っているんでしょう。呆れているんでしょう。もう嫌だって思っているんでしょう」
「全然、そんなことない」
「全然そんなことあ――ひゃうっ!?」
「本当に、全然そんなことないんだよ、ほむら」
「えっ、な、えっ、なに、熱いっ!?」
「さっきほむらが洩らしちゃって、泣いてるの見て、あたしは今までほむらの事全然知らなかったんだって思い知ったの。鉄面皮で、何考えてるかわかんない機械みたいな奴だって思ってたけど、でも、そんなことなかった。こいつはちゃんと女の子なんだって、すっごく可愛い女の子だって気づいたの」
「なになになにっ!?
「ほむらのこと、すっごい可愛いって思うわ。綺麗だって思う。口で言うだけじゃなくて、もう、こんなになってるの」
「こんなって、こんな、あっ、えっ……ひぅう……!」
ぎゅう、とほむらのお尻に押し付けていた
最初は魔女との戦いの後で、命懸けの戦闘をこなした後の高揚感で眠れないのだとマミに相談したのだった。ベテランの先輩であるマミは、恥ずかしげに、しかしどこか興奮するように、魔法少女に伝わる解決方法を教えてくれた。
命のかかった高揚は性欲に繋がる。そして男性器は出してしまえばおさまる。そういう理屈だった。あのマミもそうして処理しているのかと想像して、その晩さやかは全くおさまらなかった。その翌晩はもしや杏子もそうなのかと想像して、全くおさまらなかった。三日目の晩には幼馴染のまどかもいずれと思って逸ったが、その後の後悔もひとしおだった。四日目になるとだいぶ落ち着いてきたが、小学生のなぎさはどうなのだろうかと想像してしまい非常に背徳感にあふれる一晩となった。
その後は慣れもあって随分落ち着いたけれど、何度か仲間達をおかずにしてしまったことはあったし、時には高慢なほむらを押し倒す想像をして滾ったこともあった。
しかし、今日ほど興奮したことはなかった。
生身の裸体に触れている事だけが原因ではない。四肢欠損という特殊な体に興奮しているのでもない。失禁というシチュエーションにでもない。
ほむらの見せた弱みが、さやかの懐の深い所に深々と突き刺さったのだった。それは日頃とのギャップによる錯覚に過ぎないかもしれなかった。しかし今のさやかにはとにかくほむらがかわいく思えて仕方がなかった。この自己評価の低いひねくれ屋の同級生が、愛らしくてたまらなかった。
「ねえ、ねえ、ほむら、ねえ」
「やっ、えっ、やだ……やだぁ……っ」
さやかのペニスに混乱してふるふると首を振りながらも、視線を逸らせずにいるほむら。それをみてさやかはすぐに分かった。こいつはこれを知らないんだ。生やしたこともないだろうし、誰かのを見たこともないんだ。そもそもそういうことを考えたことさえ全然ないんだ。そう思うと、さやかの物はさらに血流を送り込まれて一層張り詰めた。
「ほむらが悪いんだよ……ほむらのせいでこんなになっちゃったの」
「わ、たしの……せい……っ?」
「そうだよ。ほむらが可愛いからこんなになっちゃったの。ほむらのせいだよ。ねえ」
「あっ、や、やだっ、ゆらさない、で……っ」
ほむらをペニスの上に乗せたまま、そのぴったりと閉じた秘所をこすりあげる様に、さやかはほむらの体をゆする。シャワーはさっきから浴室の床に転がってあらぬ方にお湯を吐いているのに、さやかの頭の中はすっかりゆだっていた。
「ねえ、ねえほむら、どうしてくれるの? ほむらのせいだよ」
そして、頭の中がゆだってしまったのはさやかばかりではないようだった。
のぼせあがったようにすっかりと顔を赤らめたほむらは、呂律の回らない様子でこう答えたのだった。
「お、おくちで、するからぁ……っ♥」
手早く体をふきあげて布団に移ったさやかは、いま眼下にある光景に頭がおかしくなりそうだった。
布団に腰をおろして広げた脚の間に、ほむらはいた。何しろ手も足もないものだから、そこに置いたのはさやかのだけれども、その光景はそれだけで暴発してしまいそうな破壊力があった。いまにも破裂しそうなほどに張りつめて、先端から先走りを垂れ流す淫棒を、寄り添うようにして顔を寄せたほむらがじっと見つめている。さやかの腿を枕代わりに、涼しげな顔をこれ以上なく赤らめて、至近距離で見つめている。
興奮しているのか荒い鼻息がさやかのペニスをこそばゆく撫ぜ、否応なく官能を高めていた。そんなに荒々しく呼吸をしているほむらは、きっとさやかのペニスの匂いを脳天まで感じているに違いない。そう思うだけでさやかはたまらなかった。ほむらがあたしのおチンポを呼吸している。そんな気の狂ったワードが駆け巡った。
「は、はじめる、わ」
「ええ、お願い」
「は、はじめるわよっ」
「早くしてよ」
冷静を装ったように素っ気なく急かすさやかだったが、勿論余裕などない。
恥じらいながらもはじめて目の当たりにする性欲の権化に釘付けになり、鼻息も荒く恥的好奇心のままに真っ赤な顔でペニスを見つめるとかいう想像を絶する可愛い生き物と化したほむらに、さやかは早くもニルヴァーナに片足を突っ込んでいるのを感じていた。かろうじて暴発していないのは、脳内でこれはAVこれはAVと念仏のように唱えて液晶画面の向こう側の事として感覚を遮断しようとする努力の為だった。
そしてAVはついにVRAVとなった。
意を決したように、ほむらはそっと顔を動かしてさやかのペニスに口づけた。その時の感触をどう表現したものだろうか。ちゅっちゅっと啄むような口づけは、さやかの青い性欲に任せた荒々しい手淫に比べればはるかに弱い刺激だった。しかし、穢れを知らぬ柔らかな乙女の唇が、黒ずんでズル剥けした性欲の塊に捧げられているという視覚効果と、その穢れなき乙女がよりにもよってあの暁美ほむらであるという心理的効果のダブルパンチが与えたダメージは想像を絶するものだった。同じクラスの男子生徒の八割よりペニスの扱いに長けた百戦錬磨のオナニストであるさやかをして、我涅槃に立ちたりと後に述懐せしめたほどである。
美樹さやかは順調にバカだった。
「おっほぉ♥ くふぅ……♥」
思わず声を漏らしたさやかに、ほむらの方では少し落ち着きを取り戻してきた。余りにも禍々しく嗅いだことのない異臭を放つ肉棒に最初こそ恐れをなしていたけれど、それがさやかから生えてきているという事によって、何だか間の抜けたものに思えてきたのである。それに自分が口づけをしたところ情けのない声が漏れてきたもので、刺激に対して呆気なく反応してしまういっそ可愛らしいものとして見えてきた。
調子に乗ってほむらは何度も口づけを落とした。手足がないのでひどく億劫だったが、背筋を逸らし、首を精一杯捩じり、ほむらは肉茎のあちこちに唇を落とした。うまくいかず、倒れ込むように唇を押し付けたり、鼻先まで押しつけてしまったりと難儀ではあったけれど、その度にさやかが身を捩っては堪えるのでどんどん楽しくなってきた。自分の貧相な口づけで気持ち良くなっているのだと思えば、尚の事である。
「ほ、ほむら、その……そろそろ、あの、舐めて貰ってもいいかな?」
遠慮しがちに提案してきた言葉に、ほむらはしばし逡巡した。舐めろというのか。これを。間の抜けた印象を抱きはじめていたとはいえ、なにしろ内臓を外側に延長したようなグロテスクな代物である。匂いもするし、先端から何やらだらだらと汁も溢し始めている。
まどかから借りたレディースコミックには、口でするという描写もあるにはあったが、大抵はぼかされているか、ほむらが直視できず早々とページを捲ってしまっていた。だからどうすればいいのかわからなかった。
しかし見上げれば必死そうなさやかの顔。脚を広げて股間を晒してそんな必死そうな顔をしている間抜けなさやかが何だか哀れで愛らしく思えてきて、ほむらは恐る恐る血管の浮き出るペニスに舌を這わせた。
「ひぁああああ……っ♥」
途端にさやかの洩らした声にびくりと離れたけれど、もっともっとと急かす様に左右から両足が狭まってきて圧迫するものだから、ほむらも覚悟を決めた。きっと毒々しい味がするのだろうと思っていた肉棒に舌を這わせると、思いの外呆気のないしょっぱさだった。少し汗をかいた時の皮膚と同じ様に思われた。ただし、匂いは凄かった。鼻で嗅ぐだけの時より、口の中を通じてより濃密ににおいを感じ取れた。他に例えようのない馴染のない匂いだった。そして不思議ともっとかぎたくなる匂いだった。嗅いでいるうちに胸がドキドキして、お腹の辺りがキュンキュンするのだった。
ほむらが全体を丁寧にぺろぺろと舐めはじめると、さやかが身を捩るのと、ペニスがびくびくと跳ねるのとで作業はどんどん大変になっていったけれど、顔を押し付ける様にしてペニスを固定して舐めてやると安定した。その分さやかは悶絶した。
そうして慣れてくると、茎の方ばかり舐めているうちに先端の方も気になってきた。皮で包まれたような茎と違って、先端はなんだか赤黒くはれ上がっていて、皮もなくつるつるとしたそれはなんだか痛々しそうでもある。おまけにだらだらと涙を流している。
相手をしてやらないから悲しいのだろうか。そう思うとなんだか途端にこのグロテスクな亀頭が哀れに思えてきて、ほむらは頑張って首を伸ばして、垂れ流しの滴を舐めとってやった。
さやかの反応は劇的だった。
「ほ、むらぁあああ……ッ♥」
びくびくと腰を揺らして、何とも切なそうにほむらの名を呼ぶのだ。それがたまらなくて、ほむらは何度もぺろりぺろりと舐めてやった。けれど舐めてやると激しく揺れて、ぶらんぶらんと揺れてはぺちりぺちりと顔を打たれて大変なので、揺れが収まったのを見計らって、えいとばかりに口の中に含んでやった。
「はうぅあああっ♥ ほ、ほむらっ♥ ほむらぁ♥」
正解だったようだ。
甘く呼ぶ声にほむらは気を良くして、口の中で暴れる肉棒を何とか頬張って、チロチロと舌を這わせた。そうするとさやかが我慢できないようにほむらに頭に手をやって撫でてくれるものだから、ほむらは一層気持ちよくしてやろうと緩急をつけて舐めてやった。
暁美ほむらも順調にバカになっていた。
どうすれば気持ちがよいのかを少しずつ覚えて、ほむらは鈴口をちろちろ舐めたり、頬をすぼめてぎゅうっと吸ってやったり、雁首に舌を這わせたり、頑張って喉の奥まで銜え込んだり、逆に一息つくように浅く咥えて、はぷはぷと唇で挟んでやったりした。その度にさやかが間抜けに鳴くので、ほむらはもう楽しくて仕方がなかった。
しかしすぐに叛逆ののろしが上がった。
ほむらの健気な奉仕にさやかは我慢できなくなって、がっしりとその形の良い頭を掴んで、手加減も出来ず自分のモノを打ち込んだ。喉の奥の柔らかな肉に包み込まれる感触に、さやかの顔は自然と愉悦に染まった。そしてすぐに、吐き出してしまいそうになるのを堪えて強張る。ほむらの喉はまるで蛇のようだった。奥へ奥へと飲み込もうとするかのように、さやかの亀頭を咥えこんで離さない。
これはいけないとずるりと引き抜くと、今度は甘噛みするように桜貝を削って作った様な小振りな歯がこりこりと茎をすべる。それがまた味わいたくて突っ込むとまた囚われる。さやかは全く自動機械の様にほむらの頭を前後にゆすって、オナホールのように扱って快楽を追求した。そんなことをしてはいけない、苦しませてしまうと頭では思っても、涙目になりがならそれでも健気に舌を這わせて上目づかいに見上げてくるほむらの愛らしさに、さやかは止まれなかった。
「おっ♥ おっ♥ 出るっ♥ ほむらのおくちまんこに出るぅっ♥」
そしてすぐに限界を迎え、喉奥にまで突っ込むと同時に、今日既に二度も出したとは思えない程の濃さの精液がペニスを駆け上り、ほむらの胃袋へと叩き込まれた。たっぷり十秒はかけて腰が抜けるような射精を終え、なんとかさやかはほむらの頭を掴んで引き抜いた。そのままでは窒息させてしまう。
「あふぁ……♥ んっ、けふっ♥ けぷっ♥ げぇえっふ♥ くしゅんっ♥」
むせる様にして精液臭いげっぷを漏らし、鼻から逆流してきた精液にくしゃみをし、ぜえぜえと荒い息をつきながら、ほむらはぐったりとさやかの股座に沈んだ。汗で黒髪が頬に張り付いて、妙な色気があった。
まだ意識のはっきりしないぼんやりとした視線が注がれるのを感じて、さやかの肉棒は再度がちがちに勃起した。一度目とまるで遜色のない硬さだった。寧ろいっそう滾っているようにさえ感じる。こんなに復活が早いのは、初めてペニスを生やした晩、妄想の中でマミの柔らかな尻を掴んで厭らしく吸い付いてくる秘所に激しく腰を打ち付け、食いしん坊の子宮にたっぷりと注いでやった妄想内童貞喪失の時以来だった。あれはエロかった。しかし今のほむらはもっとエロかった。いまのさやかにはとにかくエロいという中学生ならではの頭の悪い単語しか出てこなかったが、実物の、生の少女が息も絶え絶えに自分の股座に頬を寄せているというのはもともとバカな頭がバカになりそうなほど扇情的だった。
しかし一度出して少し冷静になったさやかは、これ以上はまずいのではと思い始めた。
そもそもこの一発だって、さやかの滅茶苦茶な要求から始まったものだ。ほむらは何も悪くないのに、自分が強引に押して押して勝ち取ったフェラチオだ。この一発でさえ、あとで冷静になれば気まずくなること間違いなしのアウト中のアウトだ。
いまならばまだ言い繕ってごまかせる範疇だ。そっと服を着せて、寝かしつけて、何もなかったように振る舞うチャンスだ。ここで引けば、お互い最低限の傷で済む。お互いを慰めるためにとかそういう。
そうしよう、と決意してそっとほむらを抱き上げ、さやかの決意ははじけ飛んだ。
桃色の乳首がピンと硬くなっていたことが原因ではない。口を半開きにして幸福そうに意識を半分飛ばしている顔が原因でもない。そのずっと下。触れてもいないのに布団をじっとりと濡らすほどにそぼ濡れた秘所だった。
いや、秘所などと今更取り繕うまい。
まんこだ。さやかはほむらの股間を凝視した。
浴室で見た時はぴったりと閉じていたそこは、いまや朝日を浴びた朝顔の様にゆっくりと花開きはじめていた。とろとろと蜜を溢れさせ、薄い花びらをだらしなく広げ、肉色の内側をそっと晒していた。そんな詩的表現を全て取っ払ってさやかの胸にダイレクトに飛び込んできたパワーワードはまんこだった。
ほむらのおまんこがぐっしょりと濡れている。さやかは頭がおかしくなりそうだった。恐らく誰も触れたことがないだろう乙女のおまんこが、さやかが指一本触れる前から、ちんぽをしゃぶらせただけであんなにだらしなく蜜を溢しているのだ。
「合意とみてよろしいですね!?」
「あ、ふぇ……♥」
「ファイナルフュージョン、承認!」
頭の中がピンク色になったほむらは当然返事などできず、頭の中がピンク色になったさやかはもはや止めようがなかった。
さやかはほむらを布団に押し倒し、遮るもののない蜜壺に肉棒をねじ込んだ。
「痛っ、な、ああッ!?」
濡れそぼっていたとはいえ慣らしもしない初物である。さやかの些か遠慮を知らないサイズのペニスに押し入られて、ぼんやりとしていたほむらも流石に悲鳴を上げた。熱した鉄杭をねじ込まれたようなものである。
おまけにさやかは童貞である。素人童貞どころか妄想内でだけ童貞を喪失したリアル童貞である。さやかにはリアル・セックスがわからぬ。さやかはバカな童貞である。竿を扱き、身勝手な振る舞いでも勝手に気持ちよくなってくれる淫乱お姉さんや淫乱シスターや淫乱幼馴染や淫乱小学生や淫乱悪魔の妄想で抜いてきた。けれど快楽に関しては人一倍敏感であった。
さやかも自分の乱暴な前後行為がほむらを苦しめていることはすぐに分かった。ぎちぎちに締め付けてくる肉壺が快楽よりも痛みを与えてきたからだ。しかし興奮し切った頭は腰を止められない。かといってすぐに技術が向上するわけでもない。
「なら、後は魔法で補えばいいじゃない!」
「ひぅううううんっ♥」
さやかはほむらの下腹部に手をやり、魔力を流し込んだ。傷口を癒し、血管を広げ、体温を上昇させ、発汗を促し、痛覚を抑え込んでやる。どれも治療に於いて可能な事をやっているに過ぎない。しかしその効果は劇的だった。傷口がふさがり痛みは途絶し、それでもきつい圧迫感は神経へ伝わる信号を誤魔化し、血流が増えて活動を活発化した性器は快楽信号だけを正常に脳へと送る。そうすれば体は素直に快楽を得やすいようにほころんでいく。そんなことを知識で知っていた訳ではない。しかしとにかく気持ちよくなりたいという下半身からの欲求が、さやかの思考をかつてないほど明晰にしていた。初性交というイノベーションによって肥大化したチンポ第二脳が必要故に生み出したセックス革命だった。ほむらが授けた医療知識は、巡り巡ってほむらへと返ってきたのだった。
痛みによって硬直していた身体はすぐに弛緩し、快楽によってどろどろと濃厚な愛液を溢れさせ、たっぷりの潤滑液によってさやかの前後運動もスムーズになり、叩きつけられる肉棒に刺激された膣肉は愛情たっぷりにうねっては締め付けた。
「やっ、やらぁ♥ やら♥ なにこれぇっ♥ こわいっ♥ こわいよぉっ♥」
「大丈夫♥ 怖くない♥ 気持ちいのっ♥ ねっ、きもちいんだよほーむらっ♥」
「きもっ、ちいいっ? きもちっ♥ いいっ、のぉ♥」
「そうだよほむらっ♥ ほらっ♥ ほらっ♥ もっと言ってみよっ♥」
「あっ♥ あっ♥ きもちいいっ♥ きもちいのっ♥ もっとっ♥ もっろぉ♥」
「いいよ♥ もっとしたげるっ♥ きもちいのすき?♥ ねえほむらっ♥」
「すきっ♥ しゅきぃ♥ らいしゅきぃ♥ みきさんっ♥ みきさぁんっ♥」
美樹さん。美樹さん好き。この響きが齎す破壊力はまさに精神的破城槌だった。ぼろぼろの扉を一撃で破壊した挙句、守りを固めた兵隊どもを星の彼方にまで吹き飛ばす破壊力だった。処女を突き破る巨根並みの破壊力だった、とは童貞を捨てたばかりのセックスど素人の貧相な喩えだったが、とにかくさやかの受けたダメージは計り知れなかった。
手があれば抱きついてきただろう、足があれば腰を捕まえて離さなかっただろう、それほどに甘えてくる声に、さやかは堪えきれず激しく腰を振るった。何の技巧もない、勢いだけのセックスだった。しかし魔法と、そして重なる肌の熱さに脳をやられている二人はロケットエンジンを取り付けた下駄でも履いたように快楽の階段を一気に駆け上った。
「すきっ♥ あたしもすきだよほむらっ♥ ほむらぁっ♥♥♥」
「みきさんっ♥ みきさんっ♥ みきさんっ♥♥♥」
ごつんごつんと激しく突かれて降りてきた子宮が、さやかの亀頭に熱烈にキスをした。いやらしくぱくぱくとうごめいてキスをねだる子宮口に、さやかは思わず全てを吐き出しそうになって、慌てて引き抜いた。その激しい動きにほむらはびくびくと背を震わせ、さやか自身もこらえきれずほむらの腹に粥のような精液をびゅるびゅると吐き出した。危うく中に出すところだった。
「あっ♥ ふぅっ♥ ……ふひぃー、あっぶないあぶない……」
額の汗をぬぐさやかを、絶頂を迎えたばかりでとろりとした目でほむらが見上げてくる。
「んんっ♥ ふあぁ……♥ なに、が、あぶないの……?♥」
すっかりとろけた視線に、さやかはほむらでもバカになっちゃうんだなと少しおかしくなった。自分が性欲に支配されるのはよくわかるけれど、ほむらがこんなにとろけてしまうなんてなんだか意外だった。
「なにがって……赤ちゃんできちゃうわ」
一度出して少し落ち着いたさやかは、子供に言い聞かせるようにしながら、ほむらの髪を梳いてやった。魔法少女としても、女子中学生としても、流石に赤ん坊が出来るのはまずい。魔法を使えば大人は誤魔化せる。しかしそういう問題ではないことくらいさやかにだってわかる。
「……あかちゃん……?」
しかし。
不思議そうに小首を傾げるほむらに、さやかは少々危機感が募った。
「ええっと……ほむら。おしべとめしべの話って聞いたことあるよね……?」
恐る恐る確認を取れば、なんとこの秀才、保健体育の授業は恥ずかしくてほとんどまともに聞いたことがないという。教科書も裸の人が書いてあって恥ずかしくて見れなかったという。お前それでレディースコミック読んでたのかよと思うと日本の教育のあり方を考えずにはいられないさやかだった。
さすがにこれはまずいと、ざっくりとさやかは男女の性交と赤ちゃんの作り方を教えてやった。まあ要するに今やってたことだが。事後に裸で授業やっているという凄まじく間の抜けたシチュエーションに、何をやっているんだろうと妙な気だるさがあった。
そしてその気だるさはすぐに解消された。
「……わたし、欲しいわ……♥」
「へぁっ?」
「さやかの……赤ちゃん♥」
二ラウンド目に容赦はなかった。
一度快楽を味わってしまえば、中学生の無尽蔵の性欲はおさえようがなかった。
さやかは抜かないまま何度も何度も精を吐き出し、ほむらもまたそれを嬉々として受け入れた。疲れれば入れたまま緩やかな愛撫を繰り返し、口づけを交わし、そしてまた激しく交わった。
夕食はマミが作りおいてくれていたが、二人は繋がったままそれを温め直し、散々時間をかけて口移しで食べさせあった。信頼する先輩の作ってくれた食事をその様な冒涜的な形で摂ること自体が、二人を高ぶらせた。気付けばさやかはリゾットにこってりとザーメンを吐き出し、ほむらは後ろからねっとりと小突かれながらそれを犬食いしていた。勿論さやかはほむらの中にもたっぷりのザーメンを吐き出してやり、ほむらもそれを美味しくいただいた。
食後は流石にぐったりと疲れ果て、互いの吐き出したもので汚れてしまったので、さやかは重たい身体を押して浴室へ向かい湯を張り、溜まるまでの間に汚した床を掃除し、布団のシーツを剥いで洗濯した。布団でする時は厚手のバスタオルか何かが必要だなと女子中学生の身空で学習してしまった。
湯が溜まり、さやかはほむらを抱き上げて浴室に入り、まずシャワーで全身を流し、それからたっぷりとソープを泡立てて二人の体から精の残滓を丁寧に取り除いた。べたべたとした汗以外の粘液が綺麗に取り払われ、二人は一息ついた。
ほむらのおまんこに弱めのシャワーを当てながら中を掻き出した時は、ほむらも流石にとろりと股座を湿らせたし、さやかの方でもむくりと鎌首をもたげたけれど、すぐさままぐわおうという程には盛り上がらなかった。
「流石に疲れたわ」
「あたしも、ちょっと痛い」
くすくすと二人笑い合って、ほむらの髪をゆるくまとめて、ゆっくりと湯船につかった。そうして暖かな湯につかると、普段使わない妙な筋肉の疲れがよくわかって、セックスってのは思ったよりも激しいスポーツなのだなと妙な感心がさやかの内に生まれた。命をつくろうという行為だ。そりゃあ疲れもするか、と。
はじめは膝の上にほむらを置いて、後ろから抱きしめるようにして湯船につかっていたのだけれど、暫くしてほむらが身を捩ったので、向きを変えてやった。そうすると、ほむらはさやかの肩口に顎を置いて、ぴったりと体を吐けて安定した。
「苦しくない?」
と聞くと、
「すこし。でも安心するわ」
と返ってきた。
成程、お互いの鼓動が感じ取れて、不思議な安心があった。
手の置きどころに困って、腰の辺りと、お尻に手を置くと、ほむらが少しくすぐったそうに身を捩った。それに反応してさやかの物がむくりと持ち上がると、ほむらは振り返ってそれを見てくすくすと可笑しそうに笑って――そう、笑ったのだ。あんまり穏やかに笑うものだから、偽物じゃないわよねとつつくと、がぶりと耳を噛まれた。
「失礼ね」
「ごめん、でも、その、あんまり、あー」
「あんまり、なにかしら?」
「あんまりかわいいもんだから」
「可愛いとすぐにおっ立てるのかしら?」
「そうかも」
「もう、困った子だわ」
そう言って笑う顔があんまり穏やかなものだから、さやかは気付けばその頬に口づけていた。ぽかんとするほむらの顔にすぐに謝ったけれど、今度はほむらがさやかの唇にちゅうと吸い付いた。
「な、なによ?」
「『ごめん、でも、その、あんまり、あー』」
悪戯っぽくほむらが笑った。
「『あんまりかわいいもんだから』」
何だか小悪魔っぽいなとさやかは新鮮な思いでその笑顔を見た。今日はほむらの新しい面を沢山見た気がする。そしてそのどれもが悪いものじゃなかった。人間としてのほむらを今日初めて見た気さえした。
「ねえほむら、あたしのここ、ちょっと出っ張っちゃったのよ」
「そうね。私にはへこんでいる所があるわ」
「あたしの出っ張ったのであんたのへこんだのを塞ぐのってどうかしら」
「悪くないわね」
さやかの精一杯のユーモアに、ほむらは優しく乗ってくれた。
のっそりと起き上がったものをほむらの中に差し込むと、お湯よりも少し温い肉の中に、温りぬるりと割り込んでいき、そして奥の所でこつんとぶつかって落ち着いた。
「あ、ふ」
「苦しくない?」
「お湯が入ってきて、変な感じだわ」
でも暖かい、とほむらはまたさやかの肩口の辺りに顎を置いて、ふうと一息ついた。
腰を使う事もなく、愛撫することもなく、二人はそうしてしばらくただつながったままでいた。ほむらが呼吸するのに合わせてほむらの中はくにくにと柔らかううごめいて、さやかが呼吸する度にさやかの肉はぴくぴくと跳ねた。そうしてお湯が体温と同じくらいになってくる頃に、さやかはとろとろと精を吐き出し、ほむらはきゅうとそれを受け止めた。
風呂から上がって、さやかは湯冷めしないように手早くほむらの体を拭き、自分もさっと拭き上げ、寝間着を着せ、自分も着て、膝の上で抱っこして長い髪をドライヤーで乾かした。
「寝る時、髪はどうしてる?」
「そのままか、適当にまとめてるわ」
「お団子にしていい?」
「あなたできるの?」
「まどかの髪、良くいじらせてもらったんだ」
「そう……まあ、構わないわ」
ほむらの髪をたっぷりといじり倒して、二人で一つの布団に横になっても、あれだけ荒れ狂った性欲はもう湧いてこなかった。今日の分は出し尽くしてしまったのかもしれなかった。
しかしそれ以上に、満足感が大きかったからかもしれなかった。ほむらの新しい面を沢山見て、胸の中が一杯になって、まだ整理がつかないのかもしれなかった。
そしてそれはほむらの方でも同じだった。先程まではあんなにも求めていたのに、いまは隣でそっと腕枕してくれているさやかに満ち足りた思いでいるのだった。昨夜はあれほど感じていた怖さは、もうみじんも感じなかった。そしてそれ以前の生活で感じていた、微かな寂しさも。
このままでもいいんじゃないかしら。
そう思ったのは、果たしてどちらだったのか。
......Session 1 "Lost her limbs, Given her love." closed.
柔らかな風の流れる青々とした野原に、何かを囲むように三人の少女が真っ白な椅子に腰かけていた。
「はーいお疲れ様でしたっ!」
「……お疲れ様」
「お疲れ様なのです」
通常の時間軸とは隔絶した
桃色のドレスを纏った笑顔の少女。
喪服のような黒のドレスを着こんだ陰気な少女。
道化じみた水玉模様の衣装の小柄な少女。
三人が囲むのは視覚情報としてはシャボン玉のような球状として定義される第871泡沫世界線だった。その中でクローズアップされているのは、安らかな眠りについた二人の少女だ。ひとりは活発そうな単発の少女で、もう一人は手足を失ってはいるが、黒衣の少女と酷似していた。
「うーん、途中でキュゥべえを出してくるなんてびっくりだったよ。あそこで魔女を倒してたらセッションどころかシナリオエンドだったしね。あぶないあぶない」
「ほむらはキュゥべえの事毛嫌いしていますからね」
「サブマスになぎさがついているのだもの。それ位しないとフェアじゃないわ」
「なぎさは別にまどかなんかの味方する気はないのですけど」
「なぎさちゃんは相変わらずつれないなあ。でもだからこそサブマスとしてフェアなんだけど」
「うへえ。そんなクソみたいな理由で呼ばれるとかたまったもんじゃないのです」
ほむらと呼ばれた超存在は、そっと溜息を吐く。円環の理のシステムに介入してどれだけになるだろうか。片割れを奪われたシステムは、黙るどころかかえって面倒な存在になった。
エゴイストである鹿目まどかがシステムの根幹にあった頃は、まだそのエゴイズムゆえに秩序は徹底していた。しかしまどか自身が秩序を緩めてほむらに手を伸ばした時に、既に円環は歪んでいたのだ。人としてのまどかの生を泡沫世界群の一つに作り上げた時はその箱庭に満足さえ覚えていたけれど、介入してこようとする円環としてのまどかは鬱陶しい事極まりない。
セッションと称するこの泡沫世界線を玩具にした遊戯も一体何度目か。神としての
円環の理が主催するこのゲームで、ほむらは何度となく相手をさせられてきた。シチュエーションなその度に違うが、その目的は人としてのまどかが生を終えて円環の理に戻るまでの暇潰しに過ぎない。故に勝ち負けなどない。寧ろその相手をさせられざるを得ない、決定権を持たないほむらは常に負けていると言ってもいい。
しかしほむらは負けのまま終わる気はない。
既に世界線を観測する眼は獲得しつつある。変動率数パーセント程度の範囲内ならば既にほむらの干渉可能な領域だ。それは遍く存在する円環の理からすれば微々たるものだったが、しかし絶対的な停止ではなかった。
最後に勝てばいい。最後に覆しさえすればいい。このふざけたシステムを黙らせるその叛逆の時までに、静かに牙を剥けばいいのだ。
能天気に次のセッションの準備を始める
どうでもいいから自分はさっさとさやかの待つ世界線に戻りたいのだが、と。