※この作品はR-18です。

魔法少女まどか☆マギカ短編集(R-18)   作:長串望

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モルデカイさん主催の魔法少女乳盛合同こと「おっぱい盛り盛りレコード!」(https://c15wakashamo.booth.pm/items/3377486)に寄稿させていただいたお話です。
呪いでおっぱいが大きくなってしまったさやかが、解呪のためにななかにおっぱい吸ってもらうお話です。何を言っているんだお前は。


【同人再録】たらちね【魔法少女乳盛合同】

 

 

たらちね

長串 望 

 

 日頃の美樹さやかを知っているものであれば誰であれ、路地裏の汚れた壁にもたれかかるようにしてさまよう少女のことを、彼女だとは思わなかったことだろう。

 常であれば颯爽と風に流してひるがえるマントは、いまや華やかな魔法少女装束をすっぽりと覆うようにして体を隠すために用いられていた。

 言葉よりもなお雄弁な表情に彩られていた顔は、いまや冬のナマズよりもぼんやりとして精彩を欠き、健康的な肌に差し込んだ朱色がその酷い発熱をうかがわせた。

 頭痛はしない。吐き気もない。

 しかしこれは気分が悪いと断じてよさそうだった。

 鼓動のビートに合わせるように、脈打ちうずく熱が、体の内側から湧いて出ては、背骨を伝って全身を侵していた。

 いっそのこと自分の頭を破壊してしまえば楽になるだろうかとまでさやかは考えたが、しかし軽く想像しただけでも、あっさりと頭部を再生して体力と魔力だけ消耗する未来が待っていそうだった。そしてそれですっきりするかというと、きっとそんな都合のいいことなどなく、ただ熱ばかりが残りそうだ。

 生存能力の高さという点では、美樹さやかという魔法少女はいささか以上の自信を持っていた。そしてその自信のゆえに、少々調子に乗りやすい悪癖があることをさやかは自覚していた。

 いまもって改善されていないが、しかしその度に反省したようなつもりではいるのだ。口さがない友人に言わせれば、救いようのなさまで回復しないでもいいだろうに、とのことだった。

 なにかしら言い返せればよかったのだが、全く持ってその通りなのでぐうの音も出ず、行動でもって反論してやるということもできなかった。

 何しろ、ぷりぷりと不満を心に抱いて一人で魔女狩りに出た結果、今日も乗りに乗った調子がさやかを地獄に叩き込んでいたからである。

「あたしって、ほんとバカ……ッ」

 もしかしたら美樹さやか語録の三割か、もしかしたら五割か、ともすると八割くらいはこの一言に集約されるかもしれない。少なくとも語録の帯にはでかでかと記されるだろう。

 ダメージは、コストではなく、リスクだ。コストの支払いはけちるな、でもリスクの負担は極力避けろ。悪友の気まぐれな戦訓が今更ながらに思い出された。

 さやかにとって、ただの手傷はすぐに治るコストでしかなかった。支払えば、戦局は血のすべりで少しだけスムーズに回る。しかしその手傷が回復できないものだったらどうなるのか。

 その答えが、いまこうして熱に浮かされ、干乾びたナメクジよりも緩慢に路地裏をさまようさやかの姿だった。

 ため息は、こらえた。呼吸でさえ辛かったからだ。しかしそのこらえるという行為さえ、さやかの内からの熱をうずかせるだけだった。

 それは魔女の呪いだった。魔女を倒してもなお残る呪い。

 その魔女は比較的名の知れた魔女で、その呪いも有名なものだった。だから対処法も有名だった。

 さやかも今まで遭ったことはなかったけれど、先輩であるマミから注意すべき魔女の一体としてその特徴は聞いていた。

 聞いていて、わかっていて、それでこんな無様をさらしているのだから、本当にまったくもって救いようがないのだが。

 とにかくここを離れなければ。

 さやかは先程からそう考えていた。それで、結局、数メートルばかりずりずりと身体を引きずって、息を荒げていた。荒い呼吸は熱をうずかせる。背骨を走るおぞ気にも似た感覚が響く。しかし息を整えようと深呼吸すれば、それでますます熱が広がる。

 どうしろっていうのよ。

 そればかりが頭を駆け巡った。

 しかし、どうしようもない、というのがその答えなのはわかっていた。

 この魔女の呪いは特殊だった。呪いは大概特殊だが、これは輪をかけて悪質な呪いだ。

 呪いは体を蝕み、戦闘ばかりかご覧のように行動さえままならないようにする。それは耐えていれば癒えるものではなく、むしろ適切な「対処」なしには時とともにひどくなるばかりだ。

 そしてその適切な「対処」というものは、誰かの協力を必要とした。

 仮にさやかが誰かと行動を共にしていて、二人ともが呪いを受けていたのならば、やむなく互いに「対処」できただろう。しかしいまさやかは独りだったし、そして呪いを受けたのはさやかだけだ。しらふの誰かに、この呪いの「対処」を頼むのは絶対にいやだった。

 第一、どう頼めというのだろうか。

 マミから「対処」の仕方は聞いていた。しかしその時は、恥ずかしがりながらも真剣に説明する先輩の、その恥じらう顔ばかりを見ていて、いつか自分が呪われた時にどうしようかなんてことは考えもしなかった。

 いよいようずく熱に耐えきれなくなり、力なくずるずるとうずくまる。もうこうなればと開き直って試しに自分一人で「対処」してみようともしたが、やはり他人の協力なしに癒えるものではないようで、むしろ熱がひどくなって苦しくなった。

 それでも「対処」している間はほんの少し楽になって、そしてますます熱で頭が馬鹿になってくるもので、さやかはしばらくの間、独りで「対処」を続けた。

 夢中、そう、夢中で致していたために、さやかは接近する気配に気づけないでいた。

「……さやかさん?」

 困惑するような声に、さやかはがばりとマントで体を隠した。

 誰かに見られていいような姿ではない。

 見知らぬ誰かになどとても、まして、見知った相手ならばなおさらだ。

 華やかな装束でさやかを見下ろしていたのは、魔法少女だった。

「……ときわ……ななか……」

「どうなさいました? お元気そう、ではなさそうですけれど」

 常盤ななかについて、さやかが知っていることはあまり多くない。

 この神浜をうろつく魔法少女の一人。

 何人かの魔法少女と協力関係にある。

 年齢はさやかと多分そう変わらない。

 そして、なぜかさやかと遭遇すると花開くように笑う。その意味をさやかはあまり考えたことはない。

 なんでもない、どっか行って、反射的にそう言おうとしたが、さやかにはもうその気力さえなかった。それどころか、むしろ体の熱は、呪いは、ななかの登場を喜び、迎えるように、いっそう高まっていた。

 ふわり、と甘い香りが広がった。

 とっくのとうに馬鹿になったさやかの鼻にさえ感じられるのだ。その香りは甘ったるくただよって、ななかの鼻にも届いた。

「この匂いは……『垂乳根の魔女』が出たとは聞いていましたけれど」

 その声さえもなんだかうまく頭に入ってこない。ぼんやりと見上げるだけのさやかに、ななかはずかずかと歩み寄って、失礼と一声かけてから、強引にマントをはぎ取った。

 甘い香りがむせかえるほどに立ち上り、さやかはむき出しの胸に外気のひやりとした冷たさを味わった。

 むき出し。チューブトップの魔法装束は今やずりさがり、さやかの豊かな乳房はあられもなくまろびでていた。重たげに揺れてその形を崩す柔球は、片方だけでもさやかの頭より大きい。もとよりスタイルの良いさやかだが、その大きさははっきりと異常な肥大だった。まして、青白い血管を浮かび上がらせたその乳房は、ななかの見ている前でいまもなおじわじわと肥大を続けているのである。

 当然の恥じらいと、ななかに対する反発、そしてなけなしの意地でもってマントを奪い返そうとしたが、その急激な動きは乳房の内の熱と疼きを誘発し、背筋を駆けるおぞ気にも似た快感に腰を砕けさせるだけだった。

「ひ、あっ、あ、あぁ……!」

 びくりびくりと体を震わせながら、さやかは母乳を噴き出した。

 母乳である。

 頭ほどにも肥大した乳房の、その頂点で痛々しいほどに赤くはれ上がった乳頭から、幾筋にも分かれた白い母乳が、脈打つように溢れ出していく。それらは実態を持たない魔力でできたものでしかなく、地面に落ちる頃には掻き消えてしまっている。それでも、その度に甘ったるい香りは上書きされるようにして路地裏に充満していた。

 これが、この肥大した乳房とあふれ出る母乳、それに当然のように伴う脱力と都合の良い性的快感が『垂乳根の魔女』の呪いだった。

 この呪いを受けたものは、乳房が肥大し、魔力を際限なく母乳に変換されてしまう。神浜では幸いにも、どれだけ魔力を垂れ流そうと、どれだけソウルジェムに穢れをためようと、ドッペルという形でそれは昇華される。もっとも、それで呪いが消えるわけではないので、苦痛が長引くだけとも言えるが。

 ななかもこの呪いを知っていた。実例を見たことはなかったが、先達より教えも受けていた。

 その呪いを受けてしまったからには、誰かの助けなしには助からないことも知っていたし、そしてそのことを知るはずの魔法少女たちでさえ、「対処」することを渋る事実も。

 というのも、この呪いは、毒を吸い出すようにして誰かが吸い取ってやらなければならないのである。あふれ出る母乳を、誰かが。

 さやかはこらえきれずに自分で「対処」を試みていた──つまり自分で自分の乳頭をくわえて、あふれ出る母乳に吸い付いては飲み下していたのだが、これは一時はうずきを抑えるが、循環しているだけなので何の意味もない。

 手で絞り出して何かの容器に溜めようとしても、絞った端から掻き消えて体に戻ってしまうのでやはり意味はない。そうなると、誰か、生きた誰かが、直接胸に吸い付いて飲むしかない。

 見知らぬ女の胸に吸い付くなどなかなかできるものではないし、見知った女であればなおさらである。恋仲であればともかく、友情などはこれのせいでこじれかねない。善意でもって助けてやろうとしても、あとからセクハラだなんだと訴えられることもある。そもそも本当に性的目的で吸い付く輩もいる。

 いろんな意味で厄介な呪いであった。

 さやかも苦しくはある。苦しくはあるが、この女に貸しを作りたくはなかったし、貸しを作るにしても母乳を吸ってくれとは言えなかった。言えなかったが、それはそれとして重たい胸を支えられず、壁にもたれかかれば自然と見せつけるように胸を突き出す形になった。楽な姿勢を探すほどに胸は大いに揺れて母乳を滴らせ、ようやく落ち着けば胸はより一層露わになった。健康的なチューブトップはもはや、さやかのほっそりとしたウェストを引き締めることしかできず、隠すべき乳房をかえって強調するようだった。

 呼吸する度にゆるふると揺れて、夜の中青白く肌をきらめかせる乳房を、ななかは黙って見下ろしている。その視線さえなんだか胸のうずきをあおる様で、さやかは悶えた。胸の中心から、脈打つように熱が広がって、背骨にしびれがはしった。遠回しな言い方をやめるならば、さやかははっきりと感じていた。気持ちよくなっていた。いやらしい気持ちが集って、頭の中はピンク色に染まりつつあった。見られて気持ちよくなってとろとろのぐちょぐちょになっていた。

 もしもななかが、さやかが助けを求めるのを黙って待っているのだとすれば、意地の悪い話だ。もしもななかが切り出してくれれば、さやかだって仕方ないと応じられるのに。おっぱいを吸わせてくださいと頼み込めとまでは言わない。しかし、もしよろしければおっぱいを吸いましょうかくらい言ってくれれば、さやかだって、そこまで言ってくれるんなら、悪いけどおっぱい吸ってくれないかなって言えるのだ。溢れてはこぼれていく母乳でしっとりと濡れた乳房は期待に震えた。

 しかしななかはだんまりで、さやかはいよいよもってその視線に参りかけていた。母乳はいよいよ溢れてとどまらず、消える間もなく流れていくものだから服までぐっしょりと濡れていた。仕方なしに拭おうとして、それが気持ち良いものだからついつい揉みしだいてしまって、手に余るそれをぐにんぐにんとしているうちにますます母乳は溢れてくるし、気持ちよくなってくるしで、なんだかさやかはどうでもよくなってきた。

 もうなんか、母乳をぬぐうとかそういう建前はどこかに行って、さやかは自分が気持ちよくなるために胸を揉みしだいた。手のひらが全部埋まってしまうくらいの柔球であるから、もう抱きしめているようなものだ。そうすると母乳がぴゅうぴゅうと噴き出て、その甘ったるい母乳で濡れながら揉みしだくといっそう頭の中はピンク色に染まった。お腹の奥はきゅうきゅうと切なくなり、汗や、汗ではない湿りで全身がじっとりと濡れそぼっていた。

 しかしこれは苦しみを増すばかりだった。こらえきれずに自分で乳首に吸い付きもしたが、快楽の熱はこもるばかりで一向に発散されない。達することができない。要するに、イケない。

 いよいよどうしようもなくなって、さやかはプライドを捨てた。

「……おっぱ」

「吸ってェ……! お願い、だからっ、ねえっ、あっ、おっぱい! あたしのおっぱいィ!」

「……喜んで?」

 無様に頭の悪いおねだりをするさやかに、ななかは優しく屈みこんだ。その微笑みだけでさやかはイキかけたが、結局イケずに母乳が噴き出しただけだった。

 ななかはといえば、突然始まったオナニー・ショーに思考が停止して思わずじっくり観賞してしまっていたのだが、さやかの叫びに何とか我を取り戻し、そして正気を捨てた。助けを求める人がいて、そして自分には助けたいという気持ちがあるのだ。下心があるにしても。需要と供給が揃ったのだった。

「では、失礼して……ずっしりとしていますね」

「そういうの、いいか──ンんんんああッ!」

 ななかはさやかの乳房を下から持ち上げるようにして、おもむろに赤い果実のように腫れ上がった乳首に吸い付いた。普段がどのようなサイズだったのかは知らないが、しかしいまや口の中でしっかりと存在感をおぼえるサイズ感である。小指ほどはありそうだった。

 ななかがその膨れ上がった乳首を口に含んだ瞬間、待ちわびたように母乳が噴き出した。思わずごくりと飲み干すと、次から次へとおかわりがあふれてくる。吸い付くまでもなくあふれてくる。吸い付けばいっそうあふれ出る。揉みしだいてやればそれこそ壊れた蛇口のようでさえある。

 甘い母乳は、さらさらとして飲みやすいが、飲めば飲むほどになんだか渇いてくるようでもある。飲み下した腹の中で、かっと火がついたように熱くなってくる。それを誤魔化すために、ますますななかは勢いをつけて母乳を飲み、それでさらに火照ってくる。

 甘露とはこういうものか、とななかは火照り始めた頭で思った。

 顔を半分乳房に埋めるようにして、遠慮なしに吸い付かれて悲鳴を上げたのはさやかである。自分で吸い付いていた時とは、まるで比べ物にならない快感が胸から背骨に駆け抜けていた。全身から何か大事なものが流れ出していくような恐ろしい寒気があり、そしてその寒気がどうしようもなく気持ちよいのである。

「あっ、あいッ、ひあっ、あ、あああッ、だめッやッ、あァあああああッ!」

 脳が駄目になる。後頭部のあたりからジワリとなにかが溢れ出して、脳に沁み渡っていくようだった。ぱきぱきと光の欠片が砕けては、目の裏で踊っている。言葉にならない冷たさが背筋に突き刺さる。大事なものが根こそぎにされていくように感じられて、そのくせそのことで何か言い知れず満たされるものがある。そうだ。満たされる。満たされている。しょろしょろと股座が濡れそぼった。

「もっと、もっとォッ! あっ、ひっ、もっろ、く、フぅうううッ!」

「んっ、んっ、んぐっ、ぷは、んっ、んぐっ、ふゥんっ……」

 片方だけが吸われているうちに、もう片方の乳房からも母乳が溢れては二人の間に流れ、消えるよりも早くあふれ出るそれがななかの装束をじっとりと濡らした。

 かわいそうに。片方だけ放っておかれて泣いている。トチ狂ったななかの頭はトチ狂った妄想に取りつかれ、おもむろに余った乳房に手が伸びた。その肥大した乳房を押しつぶすように掌が押し付けられ、揉みしだかれたさやかが快感をこらえきれず逃げようとすれば、腫れあがった乳首を握りしめられて悲鳴が上がった。あるいは、嬌声だろうか。

 指を握るように乳首を握ると、悲鳴が上がる。肥大した乳輪を巻き込むようにして絞ってやると、悲鳴と母乳が噴水のように噴きあがる。面白くなって握りしめた乳首を右に左にとひねってやれば、逃れようとして逃れられず、背筋を逸らして悶える。やわやわと乳首をあまがみしてやれば、グミのような弾力が楽しめる。

「あ、そ、ぶ、なッ!」

「んぐフッ! ぷはっ、すみません、あまりにかわいらしいので……」

「んクぅううううッ……このばかッ!」

 ななかは頭を叩かれたが、大した痛みではない。むしろ叩かれた拍子に口に含んでいた乳首を思いっきり噛んでしまって、さやかの方が自爆したくらいである。ばかわいい。

 授乳プレイもとい解呪は順調だった。達する度に足をピンと伸ばすのが邪魔くさかったので、途中からななかはさやかの腰にまたがり、壁に背中を押し付けるようにして押さえ込み、乳房を逃がさず抱え込んだ。それで一層効率は良くなって、さやかの嬌声は止む暇もなくなった。ななかも尻の下の湿った温もりに満足だ。

 呪いが放出されるに従い、さやかの胸は徐々に小さくなっていった。あふれ出る母乳の量も、少なくなっていった。それこそ最後には、さやか自身がもとよりちっちゃくなったんじゃないかと不安になるくらいにまで落ち着き、母乳もほとんど止まった。それでななかが絞り出すようにして揉みしだき、強く吸い付くと、さやかはこらえきれずその頭を掻き抱いてこらえた。

 最後の一滴がななかに飲み下されると、さやかの中の熱はすっかり引いて、心地よい気だるさと心地よくないぐしょぬれの下着だけが残った。

 いや、だけではなかった。

 ぱん、と軽い音を立てて何かが弾けた。その何かは「痛ッ」さやかの額に直撃し、地面にこつりと落ちた。ボタンである。素材不明の魔法由来のボタンである。それがもう一つ「あだっ」、二つ「へぷっ」と弾けて、さやかの顔面を経由して地面に落ちる。

 それは常盤ななかの魔法少女装束のボタンだった。具体的に言えば、いまや頭よりも大きく肥大した乳房の圧力に屈した胸元のボタンであった。

「ふ、う……ッ、なるほど、これは、苦しいですね」

 言いながらななかは、胸元をくつろげる。まろび出た柔球が、目の前でどたぷんと揺れて、さやかは思わずまじまじと見つめてしまった。

なにしろ腰にまたがられて、本当に目の前なのだ。背中は壁で逃げられないし、前はおっぱいの壁でふさがれてしまった。さやかの右目の視界をななかの左パイがふさぎ、さやかの左目の視界をななかの右パイがふさいでしまっている。

 視界が完全におっぱいで埋まるというシチュエーションに、さやかの脳が処理に窮して沈黙したのも仕方のない話だった。呼吸の度に揺れる乳房の先端、母乳をこぼしつつある乳首が、まるで催眠術か何かのようにさやかの目の中で踊った。

 ななかの乳房も、先程までのさやかのように、頭ほども大きく、そして肥大し続けていた。うっすらと青い血管の透ける肌は白く、しみのひとつもない。

 きれいだ。

 さやかは素直に思った。ななかのことはいまも気に食わないところがある。しかし呪いに苦しむさやかを助けてくれたのは確かで、そしてとてもきれいなおっぱいをしていた。そのおっぱいがさらさらとした母乳を涙のように流している。

 目の前の乳房はまるで南国の花のように甘ったるい香りを放っている。それがさやかの鼻を通って、脳の部分にたまっていくような気がした。すっかり呪いは抜けたはずなのに、腹の底が熱くなり、背筋は震え、頭の中はとろ火で溶かされるようにゆだっていた。

 しかたがない。しかたがないって。さやかは仕方がないを繰り返した。

 だってこんなにもおっぱいがおっぱいだ。

 さやかの視界を塞ぐおっぱいはさらに膨らんだ。おっぱいが押し寄せてくる。いや、違う、ななかがその胸を押し付けてきたのだ。咄嗟に引いた頭が壁に打ち付けられ、後頭部が痛む。しかしその痛みさえもかすむ圧倒的な柔らかさと甘い香りが、鼻先から脳天に突き抜けた。おっぱいにおぼれてしまう。さやかの脳裏にちらと恐怖がはしった。

「さあ、さやかさん……『続き』をお願いします」

 そうだ。続きだ。これで終わりではない。

 呪いを吸い出して飲み込んでしまえば、呪いは移る。吸い取ったものは呪いに侵される。しかしすべての呪いがそのまま移るのではない。人から人へと渡る度に、呪いは薄れていく。だからこの呪いは、お互いに呪いを移し合って、薄めていくことで最終的に解除されるのだ。

 うっとりととろける微笑み、それ自体は押し付けられたおっぱいの向こうで見やしないのだが、声の湿り気さえもがさやかをしびれさせた。空気を求めてもがけば、開いた口に乳首がねじ込まれる。柔らかい肌。甘い母乳。香り。脳がとけていく。

 こくり。

 一口飲み下せば、喉が、胸が、腹が、途方もない何かに満たされていく。あたたかく、甘く、優しく、何もかもが満たされるような多幸感がさやかを包んだ。脳みそが丸ごと、心地よいぬるま湯に漬け込まれてしまったようだった。

 しあわせが襲ってくる。

 しあわせが背骨を通ってくる。

 しあわせが脳の中で弾けている。

 さかやは溢れ出す快感と幸福に恐ろしくなってきた。帰れなくなるようなそんな気がした。けれど溢れてくる母乳を吐き出すこともできず、飲み下し続けた。おっぱいに埋もれながら、おっぱいを飲んでいる。おっぱいのむこうで、ななかの甘い声がする。

 ななかの呪いを飲み干せば、今度はまたさやかの中で呪いが膨らむだろう。そうしたらまたななかが呪いを飲み干す。そうしてななかの呪いが膨らめば、さやかがそれを吸い出す。呪いが薄れて消えてしまうまで。

(これがずっと続けばいいのに)

 それがどちらの思いだったのかは誰も知らない。

 

了 

 

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