---シュウ---
ここからが正念場である。テストしていないので、この方法でいいのか、問題ではあるが、他に浮かばなかった。
「深雪…頼むぞ!」
頷いた深雪が、始まりの魔法使いに対して『コキュートス』を発動した。精神を凍らせる魔法である。正式には超能力ではあるけど。
「何?こんな魔法があるのか?」
始まりの魔法使いの最後の言葉だった。僕は『強奪』でアイツの凍った精神、アイツの本体を手にし、ヴァレリーの持つ聖杯の力で、精神体から固体に変えて、闇の世界に捨てた。闇の世界の住民達が食べてくれるだろう。
「次の行程だ。アーシア回復魔法でナギの命をキープしてくれ」
「了解です」
「ヴァレリー、今からネギの魂を招魂する。身体を魂から読み取って創ってくれ」
「了解です」
「莉愛、セラフォルーは索敵を怠るなよ。こういう局面が危ないんだからな」
「はい、師匠♪」
「頑張るよ、お姉さんは♪」
ナギの身体を探査する。異常な部位はなさそうだ。次は僕の能力で、ナギの魂から精神を創りだし、彼の身体に戻していく。
「うぅ…ここは?」
ナギが意識を取り戻したようだ。
「始まりの魔法使いを処分した」
「君は?」
「知らないでいい。人間には知って良い領域があるんだから」
「なるほど、そういう存在なのか…」
僕の正体を感じ取ってくれた。
「もう少しで、君の息子のネギが生き返る。少し待て」
「わかった」
「莉愛、撤収作業をしてくれ。地上から白音とリアスを連れて来てくれ」
「はい、師匠♪」
莉愛は僕の頼みをこなせることが嬉しいようだ。最近、離れて暮らしているからな。
『フィン、撤収作業を開始してくれ』
『了解』
念話でキャッスルドランにいる仲間にも指示を出した。
「最後に、君達を一緒に居るべき相手のもとに、送り届ける」
---雪姫---
コンコン
ドアがノックされて、誰かが入って来た。訪問者の方へ顔を向けると…何で、ここに…
「ただいま♪」
もう会えないと思っていた彼がいた。
「ナギ…どうして?」
彼の胸に飛び込む。幻ってオチかなって、ドキドキしながら。でも、彼の胸に抱きつくことが出来た。
「会いたかった。ねぇ、もうどこにも行かないで。私を一人にしないで」
頷く彼。
「浦島太郎状態だよ。まったく、あれから何年経ったのやら。生き残っているのは、エヴァだけか?」
私の頭を優しく抱き締めてくれる彼。こんな日が訪れるとは…夢にも思わなかった。しかし、その時の私は、失った者のことを忘れていた…
-------
ネギ坊やも帰ってきていた。倒せたんだ…ネギは明日菜と再会を喜んだ。あやか、真名、茶々丸達も訪れて、ネギとの再会を喜んだ。
「先生、どうやって倒されたんですか?」
あやかが訊いた。
「えっ?僕も父さんも倒していないよ。助けてくれたんだよ。ねぇ、父さん」
「そうだよ。幽玄龍騎士団と言う勢力が助けに来てくれたんだよ。お礼をしたいのだけど、彼はどこにいるんだ?なぁ、エヴァ」
知らない勢力である。
「知らない勢力だな。どんなヤツがいたんだ?」
「男性のリーダーの元、女性だけのチームだったな」
それだけでは、分からないなぁ。
「どんな能力持ちだ?」
「精神を凍結する能力持ちだ。憑依タイプのアイツの精神を凍結して、俺から取りだしてくれた。その後、俺の魂から俺の精神を創り出してくれて、今に至っている」
なんか、チートな能力者だな。
「聞いた事無いなぁ…あっ!」
私は失念していたあることを思い出した。アイツなら…
「夏凜、アイツはどうしているんだ?」
「それが、見当たらないんです。彼も彼の妹も、彼の弟子もです」
まさか…アイツ…いや、リンクがあるから、この世界にいるはずだが…
--------
1年経ち、2年経ち…アイツから音沙汰がまるで無い。喪失感が私を襲う。アイツなりの愛情表現…まさか、アイツ、ナギを私に…プレゼントのつもりか…
「どうした、エヴァ」
今の私は、ナギと共に旅をしている。そして、明日菜はネギと暮らしている。夏凜は、刀太と相変わらずらしいけど。
「いや、何でも無い」
「気がかりなことでも有るんじゃないか?」
「ナギと一緒にいるんだ。そんなことは、微塵も無い」
とは言うものの…この喪失感はなんだ?
---シュウ---
姉ちゃんの居る神の間で、次の案件の話を聞いている。
「で、何をすれば良いんだ?」
「今度の赴任先は、異種族共存の世界だ。ブリタニアって言う大陸にリオネス王国って有るんだが、ちょっとマズい事になっている」
赴任先の殆どがマズい事態ばかりなんですけど…うん?ブリタニアって…アーサー王のか?
「『聖戦』を起こす為に、聖騎士の一部が魔神と結託したようだ」
「まさか、敵がいないから、戦争談合か?」
「そんな感じだ。戦争が無いと聖騎士なんて不要な職業だからな」
「アーサー王絡みか?」
「あぁ、絡んでいるぞ。どうする?あぁ、ジムのいた世界とは違うからな」
僕の仲間のジムは、並行世界において、アーサー王の円卓の騎士のメンバーだったらしい。
「アーサー王は談合サイドか?阻止サイドか?」
「中立だが阻止に傾いている」
「そうか…で、何をすればいいんだ?」
「女神族の使徒と呼ばれる女性がキーだ。魔神族の完全復活のキーになるらしい。だから、魔神族サイドが手にして、何かをする前に、奪ってこい」
神族か…可愛い女性ならいいなぁ…奪いがいがある。う~ん、ロキみたいな女神族だと、パスだけど…
「はぁ?パスはダメだ。最悪、身近に置かないでも、どこか違う世界に捨ててこいよ!」
なるほど、違う世界なら捨ててもいいのか♪本拠に戻って、帯同する人選をしないとな。
---雪姫---
アイツの記憶が薄れてきている。ナギと一緒にいるんだ。良いことではあるが…いいのか、このままで…アイツは何のメリットが有ったんだ?私達を助けることで。
「どうした?また、彼のことか?」
ナギには話した。私の中で渦巻くアイツのことを。
「あぁ…アイツは何のメリットがあったんだ?」
「メリット?好きな女を助けるのに、メリットは求め無いぞ」
え?好き?アイツが私を?まさか…私を下僕扱いにしていた無礼モノだぞ!
「私を好きでは無い。アイツには…」
そう言いかけた私の脳裏に、『サプライズ』という言葉が浮かんだ。そう言っていた、アイツは。『僕は下僕の願いを見捨てない』とも…普通、下僕の願いなんか聞き入れないだろうに。アイツはおかしいのか。違う…アイツの言う下僕は…そうだ、違う意味なんだろう。
「そうか。なら、忘れてしまえ。お前には俺がいるんだからな」
そうなんだが…う~ん…
---シュウ---
メンバーはファルコン、ジム、フレイでいいかな。女性がいないのが難点であるが、現地調達も悪くない。
「団長、現地調達する気ですか?」
ジムに訊かれた。現地調達で弊害もある。少し不安だ。どこぞの並行世界では、娘が大量に増えてしまったし。娘枠では手が出せない…
「ダメ?」
そんな不安な気持ちを仲間には見せないようにする。
「ダメじゃないけど…ちゃんと、別れを言って別れてくださいよ」
「そのうち忘れるよ。僕のことなんか。ほら、影が薄いし」
「どの口が言っているのかな?」
めっちんが睨んで、僕の口を引っ張る。
「まぁ、仲間にすればアフターフォローはするけど、そうじゃない場合は酷いよね」
って、セレジアが睨んでいる。誰か酷い目に遭わせたっけ?
「私達を連れて行け!それで、女性問題はクリアだろ?」
って、アリスちゃん。お前達は大味だからなぁ…
「うん?大味と思ったのか?書物であれこれ研究したぞ!」
めっちんに心が読まれた。しかし魔導使いなんだから、エロ本の研究はしないでいいんだけどなぁ。
「この前の土産はどうするんだ?」
「チェインか?潜入にはいいが、攻撃力は皆無だ。ファンタジー世界は無理だな」
って、このメンバーなのか…たぶん、ツンデレな赤髪と両刀な青髪も来るだろうし。繊細なテクニシャン系は帯同してくれないかな…それか、虐めがいのある女性とか…ラムレムでも呼ぶかな。メイドは必要だしなぁ。
---雪姫---
久しぶりに本拠地に戻った。明日菜、ネギも戻っている。まぁ、温泉で疲れでも取るか。温泉へと向かった。温泉には明日菜、夏凜、九郎丸、キリヱが先客としていた。
「女性陣勢揃いか」
「う~ん…雪姫様…刀太のヤツ…かまってくれない!」
って、夏凜。
「はぁ?お前の接し方が悪いんだろ?顔を見れば、ぶっ殺すってさぁ」
「だよねぇ~。ネギ君もかまってくれないし」
って、明日菜。
「そうか?お前達、結構いちゃついているだろ?」
「なんだけど…なんかなぁ…」
誰かと比較しているような二人。アイツだよな。もう、あれから5年も経つのに…アイツの記憶は薄れているのだが、アイツの感触が…何の呪いだ?
そんな時、サイレンが鳴り響いた。出動命令だ。服を着て現場へと向かう。何故か、明日菜、ナギ、ネギも付いて来た。なんらかの虫の予感があったのかもしれない。
現場では、民間軍事警備会社「力の手」が貧民街の住民を強制退去させていた。しかし、苦戦しているのは「力の手」の方であった。どこかの勢力が住民達を護り、対峙している。
「貴様らは何者だ?」
「幽玄龍騎士団、団長直属の親衛隊だ」
「聞いたことの無い勢力だな」
「あぁ、派遣されたのは2度目だからな」
対峙している勢力の中に、アイツがいた。
「死にたくなければ、退け。さもなくば、消す」
「はぁ?俺達を舐めるなよ」
しかし、一瞬でケリは付いた。灰斗が言い終わる前に、アイツらが動いた。早い…一瞬で血柱が幾つも上がっている。的確に喉元を切り裂いて行くナイフ使い達。居合い斬りを簡単に防ぐ4刀流のアイツ。居合い斬りを防がれたことで産まれた隙を見逃さずに、二刀流の女性剣士2名が飛ぶ斬撃で居合いの達人を屠ってしまった。
瞬動術の使い手の灰斗の胸を拳で撃ち抜き、引き抜き際に心臓を引き釣り出した男性。彼らは屠る事に躊躇が無い。その上、表情が全く変わらない。屠り慣れているようだ。
「新手か?」
私達の気配に気づいて、アイツが振り向いた。でも、私達の知っているアイツでは無かった。私達の前では温厚な目付きだったのだが、今のアイツはどこまでも冷たい眼で私達を捉えている。しかし徐々に、目付きが崩れていき、あの時の温厚な目付きに…
「はぁ?マズい。撤収だ!」
「あ!団長、彼女達に何かやらかしたんでしょ?」
「めっちん、濡れ衣だ。おい、撤収しようよ。早くさぁ~。捕まるとマズいんだよ~」
かよわそうな女性相手にジタバタしているアイツ…なんだ?どうしたんだ?
「どうも、初めまして。私は幽玄龍騎士団団長付親衛隊隊長のファルコンと申します。もしかして、過去に団長が何かやらかしましたか?」
「彼って、シュウ…ですか?」
私が質問をした。
「そうですよ。幽玄龍騎士団団長のシュウ・ヨハネ・鬼門です。何をやらかしましたか?」
アイツだった。いや、肩書きがスゴい。そこに驚く私。騎士団の団長だって…
「下僕にされました。どうしてくれるんですか?もう、あの感触は忘れられなくて…」
真っ赤な顔で俯く明日菜が抗議した。
「あぁ、この世界でも、やらかしたんですね。団長は、女性との別れ方って、こっそり帰ることと思っているので、申し訳ありません」
こっそり帰ることが別れる方法?何だ?それは愛情を封印されていた後遺症なのか?
「もう、普通の刺激ではダメなんです…」
って、夏凜。
「あぁ…団長は性癖が破綻したドエスプレイヤーですから」
ファルコンさんが苦笑いしている。
「「破綻しまくりでしょ?!」」
二人が抗議している。
「もし良かったら、三人を引き取って貰えませんか?」
ナギが彼らに提案をした。なんだ、その提案は?
「リンク先を、それぞれの思い出の先に結び、立ち去ったんですよね」
何を言っているんだ、おぃナギ…
「あの時、助けてもらって、お礼を言っていない。すみませんでした」
「お礼は要らないです。私達の役目を果たしただけですから」
アイツは、仲間の女性陣にツンツンされている。あぁ、混ざりたい…
「役目?役目ってなんですか?」
ネギが訊いた。
「それは、人間である皆さんの知って良い領域から外れます。あぁ、そろそろ行きます。次の赴任先に行かないとダメなんで。団長!何か言ってあげてくださいよ~」
隊長さんがアイツに一言言ってくれた。
「う~ん…添い遂げて、幸せになれよ!よし、行こう♪」
私達の方に振り向かずに言葉を掛けてきたアイツ。私は…私は…アイツの背中に駆け寄り、アイツの顔を見た。どんなふざけた顔で言っているのか見る為に…でも、違った。血の通わない鬼畜野郎は、涙をポロポロと溢していた。だから、別れをしないで、立ち去るのか…だから、別れの言葉を掛けずに、いなくなるのか…血も涙も無いってダウトになるから…
「連れて行ってくれ。役立てる自信は無い。ただ、永遠に傍に居られると思う…ナギが朽ち果てていくのは見たくないんだ」
人間であるナギはいつか寿命を迎える。それは、ネギもそうかもしれない。刀太だって、私の血が薄まれば…
「ネギ君…」
「明日菜、たまには帰ってきてくれよ♪」
「うん♪」
「ナギ…」
「お前の選んだ道だ。悔いなく生きろ。俺は、お前を随分と待たしてしまった。今度は、お前の帰りを待つ。それでおあいこにしよう」
夏凜は…とっととアイツの元へ…刀太は九郎丸と…
「隊長さん、彼女達をたまにでいいです。里帰りさせてください」
ナギが要望を伝えた。
「わかりました。半年に一度でいいですか?割と時間はどうにでもなるんですよ。私達は時空の旅人ですから」
こうして、私、明日菜、夏凜は、彼らと共に、彼らの赴任先へと向かうことになった。