緑髪の少女
案件を終えて、姉ちゃんのいる神の間に行く。
「お帰り、亘♪」
姉ちゃんが抱きついて来た。で、早速のスキンシップをし始めた。
「次の案件は何だ?」
「次のはねぇ…」
一瞬、顔が強張った姉ちゃん。なんか、イヤな案件なのか?
「原点回帰だよ…」
原点回帰?また、あの世界か?
「今度はどんな問題なんだ?」
「う~ん…同じ立場でのスタートでだそうだ」
「仲間は連れて行けるのか?」
「あの世界にいなかった者だけだよ。同化吸収は認め無いそうだ」
認め無い。大いなる意志の試練か?
「違った展開もあったのでは、無いかと言うんだよ」
「母さんを救えるのか?」
「わからない…」
「救えないんじゃ、一緒だろ?」
「エリザベスがいる、雪姫もいる、お前の中の仲間達もいる」
「でも…」
「藻掻けってことだ。お前の世界のように、異種族共存は無理かもしれない。リアスちゃんサイドでは無いから…」
「敵対か?」
「それは、お前とお前のパートナー次第だ」
「パートナーは誰になるんだ?」
「お前の心のトゲだ。抜いて来いよ♪」
心のトゲ?誰だ?
考えている最中に強制転移をさせられた僕。おい!心の準備が出来ていないんだけど…
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転移した先は、僕の家だ。生まれ育った家…カレンダーは小学校を卒業した月の物であった。居間には家具が一切なく、僕のボストンバッグが1つ、ぽつんと置かれていた。あの時と同じ…
他の部屋を見るが、家具の類いは何も無く、日用品すら無い。まるで、あの時と同じ…家族を卒業した日のようだ。1つだけ違うことがある。雪姫とエリザベスが一緒にいることだ。それ以外は、あの時と同じであった。
「お前…こんな目に遭っていたのか…」
大人姿の雪姫が声を掛けてきた。
「あぁ…、母さんの死んだ日だ」
「間に合いませんか?」
エリザベスが声を掛けてきた。
「居場所がわからない」
探査能力を使おうと思うが、この世界の母さんのオーラが分からない。そうか、僕が追跡出来無いように、家具や日用品に至るまで、痕跡を消したのか…あの時、思い至らなかったことが、今わかるなんて…僕を巻き込まないように…父さんと母さんは…
「これからどうします?」
エリザベスが訊いた。
「ここは持ち家だから、ここに住めるよ。家具とか日用品を買わないと…お金…稼がないと…」
「私が働きます!」
エリザベスが声を上げた。
「いや、雪姫とエリザベスは家にいてくれ。関係性は、僕の姉で良いか?」
「まぁ、見た目だと、そうなるな。エリザベス、この世界のことがわからないんだ。お前が働きに出て、シュウの心配ごとを増やすことになると厄介だ。ここは、シュウの言う通り、家にいて、家のことをしよう」
雪姫の説得で、エリザベスが頷いた。そうだ、使える物を見極めないとな。身体の中の者達は全員無事。アポ、オーフィス達は同化吸収したそうなので、この世界にはドラゴンが数少ないようだ。不思議な袋も所持、だから、装備品も総て使える。フィンとの連絡はまだ出来無い。
ボストンバッグの中を見ると、あの時とは違っていた。この世界のルールが書かれた書物と、当面の生活費があった。
「仕事が無いか、一回りしてくる。後、何か食べ物を買ってくるよ。最悪、エリザベスの分だけでいいよな?」
「そうだな。私とシュウは、暫く食べなくても問題は無いからな。だが、風呂は入りたいぞ」
「そうだね。タオルと石けん類は買って来るよ」
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家を出て、周辺を見て廻る。あの当時のままだ。記憶を頼りに、駅へと向かう。アジュカのバイト募集チラシがあってくれるといいんだけど。
公園にさしかかると、一人の男の子が…銀髪の男の子が、白い龍と話していた。アルビオンに似ている龍…まさか…彼に近づき、
「その白い龍は何て名前なの?」
驚いた顔で僕を見る男の子。そうだ、僕も男の子であるんだ。
「君には見えるのか?ホワイトが…」
ホワイト?見たまんまの名前か…
「見えるけど…」
「みんなには見えないみたいで、幻を見たとか、独り言ばかり話すとか、気味悪いって…そうか、ホワイトは実在するんだ」
喜んでいる男の子。
「俺はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーって言うんだ。君の名前は?」
「代羽周太郎だよ。シュウと呼んでくれ。よろしくな、ヴァーリ」
このタイミングでヴァーリか…どうなるんだ、この世界は…一抹の不安を隠せない。
「なぁ、俺の友達になってくれないか」
「いいよ。僕で良ければね」
ヴァーリと少し、話して、また公園で会おうと約束して別れた。僕は買い物途中だったので…
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やっと商店街に着いた。タオルとシャンプー、リンス、石けん、歯ブラシ、歯磨き粉など、必需な日用品を買っていく。後、エリザベスの食い物だな。
とあるお店でくじ券を貰い、引いてみたら、超合金のフィギュアが当たった。う~ん、食い物が良かったんだけど…まぁ、貰ったのなら、部屋に飾るか。ソレを手に持って、店を出ると、緑髪の女の子が、僕の前に立ち、僕の手が持っている物に視線を注いでいた。
「何?コレが欲しいのか?」
頷く女の子。彼女の手に、当たったフィギュアを手渡した。
「大事にしろよ♪」
フィギュアを大切そうに胸に抱き締めた女の子。喜んでいるようだ。まぁ、困っている者を救う。僕の本業だもんな。家路を急いだ。
家に着くと、エリザベスに菓子パンを与えて、雪姫と日用品の置き場を決め始めた。
「なぁ、うがいをするコップはどうしたんだ?」
「買い物リストに無い物は買っていないよ」
「おい、考えればわかるだろ?」
「僕は、雪姫の乳首で充分だし♪」
「うっ!」
真っ赤な顔になる雪姫。見た目は強面であるが、心は乙女であることを、僕は知っているのだよ♪
「美味しい♪この世界では、こんな美味しいパンが、売っているのですか?」
エリザベスは、コンビニのパンに感動していた。雪姫とすったもんだをしていると、呼び鈴が鳴った。応対に出る僕。
玄関には、知らない男性が立っていた。
「夜分に申し訳ありません。アリヴィアンと申しまして、シーグヴァイラ・アガレス様の執事をしております」
ヴァイラの?あっ!心のトゲ…そういうことか…この世界では、まだ遭遇していないはずだけど…あれ?
「どういった御用件でしょうか?」
ドラゴンみたいなオーラだな…
「うん?あなた様…このオーラは…」
数歩下がって臨戦態勢を取る男性。
「お前には勝て無い。止めておけ。無駄に命を捨てるな!」
攻撃をしようとしているが、ドラゴンマスターである僕に、攻撃は出来無いで、あせっているようだ。
「なぜだ…お前は…」
「ドラゴンマスターだ。ドラゴンであるお前は、僕に攻撃は出来無い」
「このオーラでドラゴンマスターだと…」
顔から血の気が失せている男性。
「用件は、アガレス家の宣戦布告か?売られたケンカは買う。いつ、開始するんだ?」
「いえ…用件はそうでは無いです…お嬢様の件です」
「宣戦布告をして、眷属になれとかか?ふざけるなよ。当主を連れて来い。話はそれからだ!」
室内に戻り、雪姫との戯言の言い合いを再開し始めたのだが、また呼び鈴がなった。今度は何?応対に出ると、大公アガレス様がいらした。
「御用件は?」
「娘の執事が失礼な行動を取ったようだな。詫びに来た。少し上がっても良いかな?」
「何も無いけど」
室内に誘った。
「本当に何も無いな。どうしたのだ?」
「両親が離婚して、僕達だけ置き去りだよ」
体験からの出任せを言った僕。
「なんと…」
驚いた顔で僕を見るアガレス様。
「どうかな。生活基盤が無いのであれば、私の家に来ないか?」
「娘の眷属にするのか?」
「いや、それとは別だ。君は娘にプレゼントをくれたそうだな。娘は君にお礼を言わなかったそうで、困っているのだよ」
プレゼント?え?!あの時の緑髪の女の子がそうなのか?生育途中でまだ巨乳で無いので、分からなかったよ。
「欲しそうな目で通せんぼされたんだよ。上げるしか選択肢は無かった」
「そうか…君はやさしさが有るのだな。そのお礼に、君達を私達の家で暮らして欲しいのだが、どうかな?眷属とかは別にしてな」
でも、眷属に成れないんじゃないかな?鬼と天使のハーフ、真祖のバンパイア、女神だし…子供の悪魔の能力値では無理だと思う。いや、大人の悪魔の能力値でもどうかな?
「たぶん、眷属にはなれませんよ?」
「なぜかな?」
「能力値が足り無いでしょ?まぁ、眷属でなくて、一緒に遊ぶなら別ですけどね」
「そうなのか?将来的なことは、後回しだ。君達は、生活に困っているのだろ?」
正直なところ、困っている。家具も布団もベッドも無い。どう寝ろと言うんだ?
「はい、貧困です…布団もベッドも無くなっているし…」
「では、決まりだな」
こうして、僕達はアガレス家に引き取られた。大いなる意志が導いたシナリオ通りなのかな?
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「空が青く無いって不思議ですよね」
窓から外の景色を見ていたエリザベスが感想を漏らした。アガレス家は冥界になった。人間界にはお忍びで来ていたに過ぎなかった。これは誤算である。
「冥界って、そんな感じだよ。悪魔、堕天使の住まう世界だから、日光は不必要なんだよ」
「私には快適な環境だぞ♪」
って、雪姫。バンパイアも魔属性だからな。
「俺も一緒で良かったのか?」
ヴァーリが戸惑い気味に訊いてきた。この後、彼に起こることを考えると、家出をそそのかしたのは、彼の為である。現に、あのクソじじぃに、DVを受けていたし。
「友達を一人、人間界に置いておけないよ」
「ありがとう…シュウ」
アガレス様により、一人一部屋を与えられた。寝る時は、僕の部屋に雪姫とエリザベスが来るけど。シーグヴァイラにお礼を言われた。どうしても欲しい賞品だったらしいのだが、当たらなかったそうだ。
「シュウ…ありがとうございます。これでコレクションが賑やかになりました♪」
彼女の部屋には、ショーディスプレイがあり、合体ロボ関連の物が多数飾られていた。
「それは良かったね」
「あの…眷属になってもらえませんか?」
「眷属にはなれない。でも、助ける。それではダメ?」
「ダメ…他の子に取られたく無い…」
事実を言うべきか?どうするかな。駒を手にしたヴァイラ。僕に駒を当てた。しかし、駒は入らずに床に落下した。
「だから、なれないと言っただろ?信用していないのか?」
「怒らないで…ごめんなさい」
怒ってはいないのだが、ヴァイラの号泣により、アリヴィアンとアガレス様が集まってきた。
「まさか、娘が無礼なことをしたのか…」
床に落ちている駒を見て、事態を把握したアガレス様。
「約束したのに、すまない」
「いいんだ。だって、入らないのはわかっていたし」
「なんで、入らないの?」
ヴァイラに訊かれた。
「僕の方が能力値が高いからだ。誰かの眷属になる事も無い。今後もだ」
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アガレス様、ヴァイラに連れられて、僕達はアジュカの居城へ連れて行かれた。能力値の測定のようだ。たぶん、ヴァーリは眷属になれると思うけど。
検査した後、アジュカが難しい顔をして、僕達を見つめていた。
「どういうことかな?君達は何者だ?」
有り得ない数値でも出たのか?この世界の基準値が分からないので、なんとも言えないけど。
「何者でもいいでしょ?悪魔では無いとだけ、言っておきましょうか?」
「君は物知りのようだが、何者なんだ?種族がまるで分からない。ヴァーリ君は人間と悪魔のハーフであるのは分かった。君の二人の姉も種族がわからない。どういうことだ?」
検査結果と睨めっこをしているアジュカ。
「特に君だ!能力値が測定不能って…どんだけの能力を持っているんだ?」
測定不能と出ましたか…
「アジュカ殿、どうなんだい?」
アガレス様が訊いた。
「ヴァーリ君はハーフ悪魔だが、眷属に出来無い。シーグヴァイラ君よりも、能力値は上だ。赤い変異の駒プラス女王の駒で、行けるかもしれないが、もう持っていないだろ?女王の駒は」
え?眷属がいたのか…既に…もしかして、アリヴィアンがそうなのかな?ドラゴンだし。
ヴァイラは凹んでいた。能力値が低いと言われたことに。僕達が高すぎるだけなのだけど。
「そろそろ白状したら、どうだね。じゃないと、シーグヴァイラ君が立ち直れなくなるぞ」
僕を脅すアジュカ。う~ん。新鮮な体験だな。
「それは困るな。大事な友達だからな。僕の種族は天使と鬼のハーフだ。そんなチンケな装置じゃ測れない。まして聖属性過多だから、測定出来無いのだろう」
「「はぁ?鬼と天使のハーフだって…」」
アジュカとアガレス様が同時に驚いている。
「その気になれば、アジュカ様程度の悪魔なら、灰にして差し上げますよ」
アジュカの顔から血の気が失せていく。
「雪姫は真祖なバンパイアで、エリザベスは女神だ。悪魔が眷属に出来る種族では無い」
「え…」
アガレス様が固まった。
「で、ヴァーリは、初代ルシファーの直系の曾孫だ。彼を眷属に出来る悪魔は、いないと思う」
「「…」」
固まる冥界の重鎮の2名。ぽっかんと、二人を見つめるヴァイラ。意味が分からないようだ。
「だから、眷属にはならないが、協力はすると言ったんだよ」
「なんで…異種族で姉弟なんだね?」
「諸事情だ。知らない方が良い話って、有ると思うけど…どうする?」
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検査の日を境に扱いが多少代わった。眷属にはなれないけど、アジュカ公認で、ヴァイラの眷属扱いでゲームに出ていいことになった。僕達の戦い振りを見てみたいらしい。
で、非公式のゲームが決まった。観客は魔王と大公様だけのゲーム。アガレス眷属VSルシファー眷属である。
「魔王様とレーティングゲームって…」
ビビるヴァイラ。まぁ、普通ビビるよな。まだ、高校生では無いし。
「ヴァイラは作戦を立てれば良い。アリヴィアンはヴァイラをガードだ」
「わかりました」
扱いが変わったことで、僕達はヴァイラと同格で、継承略で呼んで良いことになった。
「騎士はヴァーリ」
「白き騎士と呼んでくれ」
ヴァーリはヤル気満々のようだ。アルビオンに訊いたら、ホワイトは雪系統のドラゴンらしい。なので、氷・雪系の術が使えるそうだ。
「エリザベスは僧侶、雪姫は戦車かな。で、僕は歩兵だ♪」
「シュウの能力って何?」
ヴァイラに訊かれた。
「召喚術と、剣術かな。エリザベスは回復役。雪姫は魔法ランチャーだ。ヴァーリと僕とで相手を翻弄する」
「シュウが作戦参謀ではないか」
と、アリヴィアン。
「作戦指示が出せない指揮官なら、それを補佐するのが仲間だろ?」
「シュウ、やらかすなよ」
って、雪姫。エリザベスもそっち系の心配をしている。グレイフィアか…やらかしそうだけど…不安だな。