---シュウ---
なんか毎日ギルド長に呼ばれているような。ゾナという90近い老婆なのだが、まだまだ若い者には負けんって感じの元気者である。街のお偉いさんを小僧とか呼ぶし、この街ではエライ部類の者である。その正体は、迷宮資源大臣という名誉伯爵扱いの役人である。
「ボルエナンの里におるハイエルフに訊いてみたらどうだ?」
『流星雨』遣いの件である。まぁ、ハイエルフなら見識もあり、色々知っていそうであるが、エルフ系は苦手である。様々な世界において、エルフ系とは、遺憾なく女難の相が発揮されていると言うか…
「そうですね。ちょっと行ってみます」
「後なぁ…この街の戦力と考えて良いか?」
「当分、いますので、いる間であればね」
セーラの転移酔いが心配なので、地上の拠点は必要だと思う。で、ここなら、迷宮で遊べるので良いかなっと。
「そうそう、お前、治癒術はあるのか?」
「まぁ、大抵の治療はできますけど」
「治してもらいたい者がいるのじゃ」
話を聞くと、この街の太守の4女が「瘴気中毒」、「ゴブリン病」に掛かっているという。
「瘴気中毒は治せます。ゴブリン病は初めて聞いた病名なので、診てみないと、なんとも言えませんね」
「一度、診て遣ってくれないか」
まだ10歳の少女らしい。まぁ、診るだけなら、いいかな?早速診てみる。
-------
「聖者様、いかがですか?」
患者の名前は、シーナ・アシネン。この街の太守であるアシネン侯爵の娘さんである。で、娘さんの母親、要するにアシネン侯爵夫人であるレーテル・アシネンに訊かれた。男爵家の継承権は男爵夫人にあるらしい。侯爵は婿養子で、夫人のケツに敷かれているそうだ。
「瘴気中毒は浄化で治りましたが、ゴブリン病は薬事治療にします」
ゴブリン病と言うけど、栄養障害のようだ。野菜類、ビタミン不足っぽい。なので、体質改善扱いなので、治癒術では効果は無い。
「これを水に溶かして、毎日飲ませてください」
青汁の粉末を30包、1ヶ月分を夫人に手渡した。この青汁は、ハチミツや酒粕、乳酸菌なども入れて、美味しくなっている。戦地で、水分補給の時に飲むように薦めている、栄養補助食品である。
「1ヶ月、飲んでいただいて、様子を見ましょう。お子様なので、急激な変化はつらいと思いますので、この方法にします」
実際問題、体質改善程度なら聖杯でどうにでもなるが、体質の急激な変化は、人間の子供には負担が大きい。
「そうですか。わかりました。今後もよろしくお願いします」
治療費を払うと言われたのだけど、貸しにした。コネ作りを優先したいし、この程度で供物は貰えないし。
「わかりました。聖者様…」
跪いて祈られた。宗派が違うんだけど…
------
次にボルエナンの里というエルフの隠れ里に向かった。教わった場所は森…中央には天にそびえ立つ大樹が一本…あの大樹が怪しい。あんなにデカいのは、アスナが捕らえられていた大樹くらいしか見た事がないし。大樹の先端を目指して行く。
って、宇宙空間に達しているし…なんだ、この大樹は?成層圏辺りで枝が星を包み込む様に茂っている。この大樹が、この星の根幹なのかな?まぁ、取り敢えず、幹に侵入してみるか。透過能力で幹内部に潜入すると、唇に何か柔らかな物が触れ、胸板にも柔らかな物が触れている。舌で舐めてみると、誰かの口の中のようだ…
目の前には目がある…はて?
「何者ですか?アーゼ様から離れなさい!」
近くで女性が叫んでいる。アーゼ様?少し後ずさりすると、かわいいハイエルフが固まって立っていた。って、ことは、侵入したら運悪く抱擁状態に?
「ここはどこ?」
声を掛けてきたエルフの女性に訊いた。
「知らないで不法侵入したの?」
うんうんと頷く僕。
「あなたこそ、何者よ!」
「まぁ、侵入者ですけど…」
「それは分かっている。そうじゃなくて、何者なの?!」
「化け物かな?」
「はぁ?」
なんか呆れている女性。どう答えれば良いんだ?横目でハイエルフを見ると、真っ赤な顔で、手で唇を触れていた。耳は触れていないから大丈夫だろう…
「ソレよりも、なんてことをしてくれたのよ~!」
エルフの女性は怒っていた。
「あなたのした行為の重大性は分かっているの?」
はて?キスした程度だよな。重大性ってなんだ?
「耳は触れていないよ」
「まさか、あなた…転生者?あなたの世界と意味が違うのよ!」
違う?まさか…この世界では耳では無いのか…まずっ!
「いい?額に口付けは、婚約の印。で、口に口付けは…その先なのよぉぉぉぉぉ~!」
やらかしてしまった。エルフ系は鬼門(きもん)だな…僕は鬼門(おにかど)だけど…
「それよりも『流星雨』遣いの情報は無いかな?」
エルフの女性が呆れている。
「それよりも?こんな重大なことをしておいて、それよりもって、何よ~!」
逃げるか…転移して、その場から逃走。この森から脱出だ♪
--------
しばらく空中遊泳をしていると、ドラゴンの気配を感じるエリアに出た。ここはどこだろうか?って、ドラゴンは全滅していないようなので、一安心である。下を見ると神殿が見えた。ちょっと寄ってみるか♪神殿に侵入した。
「アナタは誰?」
侵入した直後に見付かった。古代ギリシャ人が着るような、布地を巻き付けた衣装の女性が二人現れた。一人は人造人間、もう一人は人間のようだ。いや、現界した者のようにも思えるな。こいつが元凶かな?
「『流星雨』遣いを探している。心当たりは無いか?」
突然、人造人間の方が襲い掛かってきた。ならば、リミッタを外して身構えた。
「テンチャン、ダメっ!触れたらダメだよ!」
もう一人が叫んだ。僕の正体に気づいたのか?人造人間は、僕から離れた。全身から湯気が上がっている。体液が沸き始めたかな?
「お前が『流星雨』遣いか?」
冷静な方に声を掛けた。
「私は、そんなスキルは無いよ」
うん?スキル?術では無いのか…術よりも危険だろうが…
「持ち主を知っているか?」
「知ってどうするんだよ」
「剥奪する。あれは最高神以上の神が使える物だ」
「最高神以上?あなたはそうなの?」
「企業秘密だ。で、上司に剥奪して来いと命じられた」
「そうなんだ…ねぇ、あなたの力を貸して!そうしてくれれば、私は協力するから♪」
「悪さの協力はしない」
「魔王と魔族を倒したいの。ねぇ、協力してよ~!」
「タダではダメだ。供物は必要だぞ」
「そうだよね。供物は必要だよね…」
考え込む女性。
「私を好きにしていいよ。うん、魔王がいなくなるなら、私で済むなら安い買い物だよ」
買い物なのか?う~ん、巨乳系で無いので、好みではある。ちょっと、エスプレイするには華奢であるかな…せめて若い頃のソーナのような肉付きは欲しいなぁ。
「ねぇ、そのオーラを消してくれない?近づけないよ」
あぁ、リミッタを外していたんだ。リミッタを掛けて、僕本来のオーラを封じ込めた。
「これで近づける♪ねぇ、私の部屋でお話しましょ♪」
僕の腕に抱きつき、エスコートする女性。彼女の記憶を読み取る…他の世界から召喚された者のようだ。
連れ込まれた部屋はだだ広い会議場である。まぁ、椅子が有り、テーブルが有り、お茶とお茶請けが出て来たので良しにする。
「で、なんて、呼べば良いのだ?高林光子か?ヒカルか?ミトか?王祖ヤマトか?」
「えっ?あんな短時間で記憶を読み取ったの?スゴい♪」
目をキラキラとさせている。うっ!これは、苦手な部類かもしれない。
「ミトにして貰おうかな。この世界ではそう呼ばれているから。で、あなたは、どう呼べば良いですか?神様♪」
「シュウと呼んでくれ」
「はい、シュウ様♪」
とびきりの笑顔で返事をしたミト。かわいい…しかし苦手である。
「『流星雨』遣いを知らないか?」
「たぶん、勇者ナナシが臭いと思うの。チートなスキルが多いからね」
この世界の勇者は、異世界から召喚された異世界の日本人のことらしい。なんで、日本人なのかは不明らしいけど。この世界には数多くの勇者がいて、数多くの異世界の日本人がいるそうだ。召喚された際に、この世界の神により神様特典がたくさん貰えるらしい。
一方魔王は、悪魔王ではなく、魔族の王らしい。まぁ、どっちの王でもロストさせるだけだが。
「戦力はどのくらいあるの?」
「この星をロストさせるくらいだけど」
「ロストさせないでください」
ダメなのか?まぁ、アレを剥奪するまでは、ロストは出来無いけど。
「で、シュウ様は何の神様?」
「第13宇宙を司る絶対神だよ」
固まるミト…意味が分かるのか?
「絶対神…うそっ!最高神よりエライんじゃん♪」
うっ!また、目がキラキラしている。う~ん、苦手だ…不思議大好き少女系は…
「絶対神よりエライ神様って、いるんですか?」
「あぁ、いるよ。宇宙神っていう神だ」
「恐いの?」
「ブラコンの姉ちゃんだよ」
「ブラコン…姉ちゃん…まさか、シュウ様の…」
神族と違い、神は嘘をつけない。なので、頷く僕。
「スゴい…姉弟で神様のツートップだなんて…」
「宇宙神より上がいるんだ。だから、ツートップでは無い」
「そうなんだ…シュウ様、この件が片づいたら、私も連れて行ってください♪」
不思議大好きだとそうなるよね…
「考えて置く。で、勇者ナナシはどこにいるんだ?」
「神出鬼没なんだよ。どこにいるのやら…」
おいおい…困ったなぁ。情報屋に情報を集めて貰うか。情報屋って言っても、ギルド長と巫女長であるけど。あと、侯爵婦人もいるか。
「じゃ、そろそろ帰るよ」
「えっ!帰っちゃうの?ねぇ、どこに住んでいるの?」
「迷宮都市に家がある。そこが拠点だ」
「一緒に行っていい?」
ダメと行っても来るんだろうな。ミトと一緒に、家に転移した。
------
「また、陸釣りですか?」
めっちんが人聞きの悪いことを言う。僕は釣っていないんだから。
「シュウは撒き餌だよね」
って、フィア。入れ食いみたいなことを言うな!
「スゴい…美人さんばかりだ…」
周囲の風景にやられ、オーラにやられているミト。
「で、メイドにしていいんですか?」
うちのメイドにするのは無理だと思う。華奢すぎるもの。
「一応、この世界の勇者の一人だ。現時点で、うちのメンバーにする気は無い」
「えぇぇぇぇ~!仲間に入れて貰えないんですかぁぁぁぁ~!」
ミトが僕に泣きすがってきた。かわいいんだけど…能力も問題は少ないんだけど、協調性が危険に思える。セーラのような一般人には優しいが、なまじ能力を持っている者には、厳しく接する仲間達。
「まぁ、見習いって感じだな。『流星雨』の情報をくれたし。フィア、勇者ナナシの情報を展開している仲間達に集めさせてくれ」
「了解です」
展開しているのは、チームヤマトとチームファントムの2チームで、情報収集をしてくれている。後、ドランも来ているので、大規模な情報収集活動をしている。次に使われる前に、なんとしても剥奪をしたいし。
「明日辺り、潜って、ミトの力量を測るかな」
------
翌日、潜れなかった。セーラのご神託「森の賢者が襲来」だと言う。思い当たる節が有る僕。あいつだよな、きっと…エルフ系は苦手なんだけど…まだ、ミトの方が扱い易い気がする。
仲間の視線が冷たい。ぐさぐさ刺さる。
「ふ~ん、やらかしたんですね。森って言うと、エルフですか?ハイエルフですか?」
めっちんの冷たい視線と棒読みのような言葉が痛い。ごめんなさい…みんなに顛末を話した。
「団長らしいわねぇ。侵入したらキスしていただなんて♪」
って、アイリス。
「この世界のエルフって、額に口付けが婚約で、口に口付けは結婚だよ♪」
って、ミト。説明は不要だよ。予想は付いていたから…
「この案件は放り出せませんが、どうするんです?」
ファルコンが苦笑い気味に訊いて来た。
「逃げたい…トンズラしたい…エルフはダメだって…」
「「ダメです!」」
仲間から一斉砲火のダメ出し…逃げられないのか…そんな中、
トントン!
ドアがノックされた。来たのか…なぁ…