---アインズ・ウール・ゴウン---
エントマをボロボロにしたイビルアイが、地面で跳ねて転がっている。
「なんだ、もう終わりか?」
つま先で蹴り上げ、地面に激突する瞬間にみぞおちへ、ムーンサルトで踵を落としていく。デミウルゴスでさえ、目を逸らしている。死にそうになると回復術で回復して、徹底的に心を折っているようだ。悪魔より残酷な鬼の調教らしい。
イビルアイ以外は興味が無いのか、瞬殺していた。
「デミウルゴスよ。イビルアイ以外は好きにしてよいぞ」
「はっ!」
アイツに跪くデミウルゴス。
「ユリ!イビルアイを飼う。飼育部屋へいれておけ。
「了解です」
俺の配下の者達を使い込んで行くアイツ。
「アインズ、この世界は潰していいのか?」
「我らの実験場にする。だから、残してくれ」
コイツの魔法…危険過ぎる。無詠唱、無魔法陣で、アイドリング時間も要らずに、念じるだけで発動だった。目の前で帝国が砂塵になっていたし。俺に敵対したという、それだけの理由で、相手に前口上もせずに、ただ砂塵にしていた。
挙げ句に、この星すらも消そうとするアイツ…規模がデカ過ぎる。威力が超大過ぎるので、俺達をスカウトしたのでは無いのか?自分の獲物すら巻き込む威力だし…だけど、アイツはイビルアイだけを手にして、喜んでいる。もっと良い女がいるだろうに…アイツの好みがわからない。
---アトス---
不気味な程、静かな夜だった。その静寂をぶち破る、ガラスが割れる音。俺は寝床で目を覚まし、様子を見に行った。出会い頭で、何かが頭部を襲った。薄れていく意識。
意識が覚醒し始めると
「おい!ここじゃねぇぞ!ジジィ!」
この声は、ベート・ローガの声…この街で1、2を争うファミリアの冒険者である。
「くそっ!ガセかぁ…おい、引き上げるぞ!」
集団が出て行く音…俺はゆっくりを身体を起こし、身重の彼女の元へ戻った。だけど…彼女は首の骨が折れていた。身重なのに、誰かにやられていた。下腹部から大量の出血…子供もダメなようだ。なんで、こんなことに…
主神の部屋に急ぐと、光の柱に包まれて、天界に帰ろうとしている主神。
「彼らはここを、闇ファミリアと間違えたようです…この場で、さまよえる魂を連れて帰ります」
残念そうな主神の顔…
「アトス…」
俺に手を伸ばそうとする主神…だけど、光柱から出られないようだ。
主神を見送った俺。頭がズキズキする。手で触ると、出血をしていた。ふらつく身体、薄れつつある意識。俺もダメなのか…くそっ!お守りを握り絞めて念じる。意識が有る限り…
『アイツらに天罰を…お願いします…神様…』
---シュウ---
呼び出しに応じて出向くと、既に絶えていた。酷い怪我だ。首の骨にヒビが多数。頭蓋骨は陥没している。家の中を見て廻るが、寝込みを襲われたのか、男は皆、無抵抗であった。抵抗したと思われるのは、女性達だけ。回されて…抵抗して、最期、命を奪われたようだ。悲しみに満ちあふれた家だ。魂は俺を呼び出した者だけしかない。悪霊かする前に浄化して、魂を天界へと昇華させた。彼以外の者達の魂は、感じ無い。きっと、主神が連れて行ったのだろう。
「どうするんだ?」
ディアヴロに訊かれた。
「勿論、呼び出されたからには、きっちりと、この世界に報復をする。ここには、僕好みの女性が沢山いるしねぇ~」
「その女性達が報酬ってことか?」
アインズに訊かれた。
「僕的には。お宝関係はディアヴロにやる。興味のない奴らはアインズに差し出す」
僕達は欲しい物が被らない。なので、取り分で揉めることは無い。
「デミウルゴス!死体は全て、お前にやる。有効に活用せよ」
「はっ!」
死体と共にデミウルゴスが消えた。
「ルプスレギナよ!家の中を浄化してくれ。僕の能力だと、仲間にダメージが入るから」
「了解っす♪」
さてと、どう報復するかな…
◇
まず、ラキア王国を潰すか。
「アインズ!ナザリック大墳墓をラキア王国の場所に転移して、住民達を好きにして良い。財宝系は、ディアヴロに丸投げしておいて」
「わかった」
ナザリック大墳墓は亜空間移動出来るように改良して有り、僕のキャッスルドランと共に、派遣先でベースの役目をしている。ディアヴロ達は、普段キャッスルドランにいる。ナザリック大墳墓はアンデッド用の要塞である為、生者であるディアヴロ達には居心地が悪いようだからだ。
同化吸収を避ける為、今回はキャッスルドランを持ち込まずに、オラリオの街の宿に住み込むことにした。
「クッキーが欲しいのだ」
クッキー大好きのクルムの為に、ココナッツサブレを手渡した。
「今日の分だ。考えて喰えよ」
「うむ。感謝なのだ」
クルムの相手としてシェラとレムを留守番薬にした。この二人、基本召喚術メインの為、街中での戦いへ参加不可にした。被害が増えうるだけだし。なので、街中の情報収集は僕とディアヴロ、シルヴィ、エデルガルトで行っている。
「なぁ、ダンジョンには行かないのか?」
ディアヴロに訊かれた。
「この世界では、神を主神にした眷属しか潜れないんだよ。基本的に」
「あぁ、ディアヴロとエデルガルトは魔だから、眷属になれないんだね」
って、シルヴィ。
「そういうことだ。まぁ、種族を隠密にするアイテムがあるから、可能ではあるけど、風呂には入れない」
「基本的では無い方法は?」
「簡単だよ。素知らぬ顔で潜入とか、ダンジョン内部へダイレクトで転移だ。入ってみるか?18階層にあるリヴィラの街になら、すぐに転移出来るよ」
って、気の変わらない内に転移した。
「ここが地下迷宮か?空があるが…」
上を見上げている三人。
「あれは時間によって、色が変わる魔石を設置しているんだよ。地下ででも時差ボケしないように。方式が違うけど、ナザリックにもあっただろ?」
頷くディアヴロ。うん?丁度、あいつらも潜っていたのか。
「あの背の高いのがベートだ。で、あのフルアーマーがガレスだ」
「依頼者を襲撃した奴らだな」
「あぁ。そして、あの金髪の娘がアイズ。僕のお気に入りだよ。あぁ言う強気な女性を虐め倒したいんだよ」
「ド変態?」
シルヴィに言われた。
「でもいいよ」
笑顔で応えると、後に下がるシルヴィ。
「ここで、攫うのか?」
「それも手だな。ただ、どこで飼うかだ。宿屋住まいでは無理っぽいだろ?」
「家を持つか」
「それも主神有りの眷属か、その家族しか買えない。神が君臨して統治している街だからな。僕達のようなイレギュラーには住みにくいんだよ」
誰かの家を奪うか?
「ここはクッキーは売っていないのか?」
エデルガルトに訊かれた。
「ここは無い。地上にあるカフェにならあるが、少し稼ぐか」
アインズ達は潜伏費程度の金しか要求しないが、コイツらは、遊行費が多いのが玉に瑕である。まぁ、情報も得てきてくれるので、問題のないレベルではある。
脛に傷のありそうな店から『強奪』をしていく。財布を警戒していない奴らの懐からも『強奪』して、財布などはベートの主神の部屋へ、転移させて捨てて行く。
「ここではどうやって、稼ぐのだ?」
と、ディアヴロ。
「魔物を倒すと、魔石とドロップ品が手に入る。それらを売って、金にする。ここよりも地上に出て換金した方がレートは良い」
そうか!買い取った魔石も『強奪』しよう。地上で換金しようかな。
強奪三昧して、地上へ転移した。本日の分け前を4等分して、解散した。
「ねぇ、クッキー…」
エデルガルトが僕の服と掴んでいた。クルムの餌付けの為、クッキーが欲しいらしい。二人で、売っていそうな店へ向かった。
エデルガルトの稼ぎは総てクッキーへと化けた。大人買いすぎるだろう…でも嬉しそうなエデルガルトを見ていると、文句が言えない。妹を可愛がる姉のようなものか…クルムもエデルガルトも成長待ちである。物理的に無理だった。レムも…シルヴィだけだな。物理的に可能では有るが、シェラは危険だよな。あの魔乳エルフは…ディアヴロと添い遂げてくれないかな。エルフは間に合っているというか…
---ヘルメス---
何?ラキア王国のあった場所に、見慣れぬ要塞が建っていた。ラキアはどうなったんだ?斥候を数名、送り込んだのだが、帰って来ることは無かった。
ギルドの地下にホームを持つ、ウラノスの元を訪ねた。
「どうしたのだ?」
「ラキア王国の場所に、要塞があった。四方が壁で囲まれていて、内部は見えない。斥候を送り込んだが、帰還した者はいなかったよ」
「う~ん…フェルズ、様子を探ってきてくれ」
「御意」
フェルズはウラノスの眷属であるリッチである。魔なる者故、耐性も我々よりも上であるう。しかし、そんな彼さえも、帰還することは無かった。
数日後、ウラノスを訪ねると、彼すらも消えていた。誰かに、消されたようだ。誰にだ?
---シュウ---
この世界のリッチが、ナザリック大墳墓に潜入したそうだ。だけど、囚われて、アインズ達が様々な実験をして、使い道が無いということで灰にしてあげた。彼の上司である神も天界に送還してあげた。僕の二つ名を知り、驚愕していたウラノス。いや、地獄を体験せずに退場って、損したんじゃないかな?
ウラノスの部屋へ行き、入口を封鎖した。ここをプレイルームにする為である。防音設備を作り、音が漏れないようにしておく。責め具は、徐々に購入か、強奪だな。
地上に出ると、神々が騒がしい。ウラノスが消えたことに、気づいた者がいるのか。まぁ、いいか。ギルドを眺める。エイナの身体が美味しそうなんだが、あいつ、ハーフエルフだからなぁ。
「おい、お前!見かけない顔だな。どこのファミリアだ?」
たかり専門のソーマ・ファミリアの連中に絡まれ、人気の無い場所に連れ込まれた。
「おい!財布と金目の物を出しな」
ナイフを手にしてヘラヘラしている品の無い奴ら。全員、ナザリックへ強制転移させた。あっちで有効利用してくれるだろう。
「君は魔法使いか?」
この街の主神の1柱であるヘルメスに声を掛けられた。強制転移させた現場を見られたようだ。
「さてねぇ。品の無い奴らだから、僕から遠ざけただけだ」
「君はどこのファミリアだ?」
「どこでもいいだろ?お前こそ誰だ!」
知っているが訊いてみた。
「ギルドの関係者だよ」
嘘を吐くヘルメス。まぁ、二つ名は『腹黒』だっけ?策略系陰謀策士である。
「じゃ、旅人って言っておこうか。ヘルメス様」
「貴様!何者だ?!」
強制転移だな。全裸にしてベートの主神の部屋へ捨てておく。服は、ベートの部屋にでも捨てておくか。
◇
宿へ戻った。
「ここを引き払う。マズい奴に目を付けられた」
「どこへ引っ越すんだ?」
ディアヴロに訊かれた。どうするかな。宿泊費が高くなるが治外法権エリアのホテルにするか。でも、クッキーは売っていないし、治安が更に悪くなる。誰かの家を奪うか…
「1時間後に引き払う。用意をしてくれ。家を手に入れてくる」
う~ん…どうするかな…困った時のあそこかな。訳有りって言えば、どうにかなるかな…ダメ元で、大家さんと交渉した。
交渉した結果、借りられた。ウェイトレスとして、二人貸せると言ってみたら、オーケーが出た。宿に戻り、清算をして、全員で借家へ転移した。
「すっご~い。広いねぇ♪」
って、シェラが喜んでいる。
「で、シェラとレムには働いて貰う」
「性的サービスのお店はイヤだよ~」
シェラがダダを捏ねている。性的サービス向きと認識しているのだろうか?レムは唖然としているのだが。
「違う。食い物屋だ。そこでウェイトレスをしてもらう」
シェラを宥めていると、大家のミアが、品定めに来た。
「この二人だ。素人だが、教え込めば大丈夫なレベルだ」
シェラとレムを紹介した。
「あっちの二人は?」
魔王とその眷属を指差したミア。
「教え込んでもダメかもしれないレベルだ。一人はお子ちゃまだし」
クルムとエデルガルトを紹介した。
「わかった。4人とも働いてもらうよ。そう、心配そうな顔をするな。安全は保証する。お前達二人が動き易くなるだろ?」
隠密と勘違いされたのかもしれない。まぁ、ミアにまかせておけば、安心だ。どの並行世界でも、頼りになる肝っ玉母さんだったし。