---フィン---
振り返ると、レフィーヤが呆然としている。肉が焼ける香ばしい香りが立ちこめ始めた。
「ガレス!水だ!」
「おぉ、そうじゃな」
ガレスが数人を連れて水を汲みに向かった。
「もう、手遅れのようだ」
モモンの言葉で振り返ると、あの三人は灰になっている。燃焼スピードが早い。業火系か?モモンとナーベラルが、灰に向かって手を合わせている。
「生き証人は殺す方針なのか?」
モモンに訊かれた。
「いや、そんなことはしない。それに、あれはレフィーヤの魔法では無い」
「そうか…」
フルフェイスの兜の為、モモンの表情が見えない。俺達を疑っているのか?現状では、疑われてもしかたない状況であるが。
◇
地上に戻ると、主神のロキにドヤされた。
「何をしてんのや?路上で女を襲った挙げ句、焼き殺したって、噂になってるで!」
目撃者は多かった。地震で建物から逃げた者達が沢山いたし…うん?まさか、あの地震すら罠か?目撃者を作る為の…
「なぁ、あの誤報騒ぎは、誰に情報をもらったんだ、ロキ?」
「忘れた…覚えておらへん。なんで、今更や」
「あのファミリアの残党が絡んでいるようなんだ」
いや、絶対に絡んでいるはずだ。
「あのファミリアの眷属は、もうおらへんでぇ~。主神も送還されたしなぁ」
いない?では、知り合いだったのか?彼らは一体、何者だ?
「今夜は神会なんや…少し探ってくるわ」
悪そうな笑みを浮かべるロキ。
---ヘルメス---
アスフィが消えた。神隠しにあった感じで、痕跡も無く消えていた。
「アイズたん達と一緒やな」
ロキが囁いた。
「どこが関与していると思うの?」
フレイヤが訊いてきた。
「「お前のところだ!」」
俺とロキが同時に答えた。こんなことが出来るのは、フレイヤ・ファミリアしか無い。
「私の所?ご冗談を言わないでね。メリットが無いわよ」
そう、フレイヤがするメリットは無い。
「あのな、あの件はどこからの情報やったんや?」
あの件とは、無名に近いファミリアのホームを、襲撃した件だと思う。得た情報により、人身売買をしていた闇ファミリアのホームに、押し入ったのだが、誤報だったのだった。
「そういや、死体が1つしか無かったなぁ。残りの死体はどうなったんだ?」
翌日の現場検証の際、そのファミリアの団長の死体しか残っていなかった。もっと、沢山あったはずなのだが…
「フィンが言うのはなぁ、その時の関係者が動いているようだよ」
あの件に関わったのは、俺の処とロキの処だったな。辻褄は合う。問題は、あの偽情報はどこから出たのかである。たぶん、その関係者も分からないのだろう。
「それより、アストレアはどういうつもりかしらねぇ」
この街を一度追放された主神が、舞い戻って来たのだ。タイミング的には、今回の件に絡んでいそうだが、眷属達は未だ18階層すら到達していない。とても、アスフィやアイズ達を連れ去ることは出来ないレベルである。
そう言えば、タイミング的に考えると、ウラノスが消えたのも謎だ。その原因と思える、あの建造物の出現もかぁ。う~ん…
---シュウ---
神会帰りの女神様を襲った。お付きの者の意識を狩り取り、女神様だけお持ち帰りをした。
「あなたは何者…」
銀髪の女神様。薄いお召し物を奪い、ヘルメスの部屋へ転移させた。彼女の肌は透き通るような白い肌である。
「その魂って…まさか…」
この女神は魂の色が見える。足首を掴み、大きく足を広げた。僕を驚愕な表情で見つめている。その表情は、恐怖に染まっているようだ。
「止めて…お願い…」
前置き無しで突っ込んだ。その衝撃で白目を剥いた女神様。あんまり興味無いし。アインズとディアブロに喰わすかな。大墳墓に転移して、今日のお仕事は終了。リヴェリアとアイズを枕と布団にして、安眠だ♪
---フィン---
ティオナだけ戻って来た。その目は虚ろで、生きた屍のようだった。
「朝起きたら、廊下にいました」
と、レフィーヤ。話し掛けて、無反応だったらしい。
「酷い…」
姉のティオネが優しく抱き締め、呟いた。全身に鞭を打たれた痕が残っていた。
「ティオナ…ねぇ、何があったの?アイズはどうしたの?」
ティオネが話し掛けるが反応が無い。高レベルの戦士をここまで追い込むとは…相手は残虐なようだ。
「どうする?」
ガレスに訊かれた。どうするって…相手がわからない。もしかすると、これは警告かもしれない。リヴェリアとアイズの精神が心配である。
---兵藤一誠---
当初の目標は18階到達だったが、ミノタウロスの肉の取得が目標になった。殺さずに、喰えそうな部位だけを切り取るのが目的である。
「足と首はダメよ。片腕なら大丈夫そうね」
って、セーラ。しかし、肉が固い。鍛え上げた腕の筋肉は固すぎた。
「内臓まで抉らなければ、腹の肉もいいみたいですよ」
って、イッセー。霜降りであり、旨そうな肉であるが、戦闘中に、内臓に到達しないように切り取るのは、至難な技である。剣士組が、試行錯誤で挑んでいる。
「バカイッセー!剣士だけを出して、アシストしなさいよ!」
って、セーラから指示が飛んできた。剣士だけ妄想って、難しい。まして、具現化した後の指示も上手く出来ずに、殺しまくっているし。
「肉が灰になるでしょ?お前は飯抜きでいいか?」
セーラがキレてきた。これでも努力しているんだよ~!
---シュウ---
アミッド、ナァーザ、シャクティと有名処の女性を強奪しまくり、街は大騒ぎのようだ。ヘルメス達が、アストレア・ファミリアを疑い出したので、アイツらを撤収させた。そして、空気と同化して、街中で情報を収集していく。
「何?アストレア・ファミリアの全員が消えたって?」
ヘルメスが驚いている。しかし、ガセネタの元が見付からない。どうするかな?
ヘルメスがフレイヤの元へ向かい、フレイヤすらも消えた事を知り、愕然としている。アイツの部屋にフレイヤの衣服を捨てたのに、気づいていないのか?
「どうして、フレイヤが…何者の仕業だ?オッタル、何か気づいたことは無いか?」
「俺よりも強い奴だ。この俺が意識を狩り取られた隙に…」
この街の最強者のオッタルが、悔しそうである。
「オッタルの意識を狩り取ったのか…そうなると魔法使いか?」
ヘルメスとオッタルが連れ立って、ギルドへ向かっている。魔法使いを探すのか?いや、違った。この街の冒険者全員で、ナザリックに殴り込みをするように依頼をしているようだ。どうするかな…あぁ、殴り込みに参加しないファミリアが、臭いかな。正義を司るファミリアがいない隙に、何かをするかもしれないし。
方向性が決まったので、ナザリックの僕の部屋へ転移した。アイズ、リヴェリア以外は、同化吸収済みである。
「どうでしたか?」
アスフィに訊かれた。
「ここにオラリオ全軍で攻めるらしい。なので、進軍を始めたら、ここは撤退する」
「この世界のヘルメス様は、腹黒く無いんですか?」
「そうだな。淡泊だな。もっと裏で蠢いていて欲しかったかな」
お気に入りの枕と布団を使い、まったりとする。
「この二人はどうします?」
「同化吸収はさせない。ここを撤退するときに、このまま返品だな」
お昼寝を終えると、オラリオの街へと戻った。大規模な戦闘の用意をしている感じだ。そうか、用意をしてないファミリアを探れば良いのかな?主な裏ファミリアを巡り、当たりを付けた。
探ってみると、消された理由がわかった。取引の現場を、あの主神に見られたと思ったらしい。そこで、口封じで…主神を殺すことは出来ないが、眷属を皆殺しにすれば、主神は天界へ帰ると思い、実行したようだ。結果は、彼らの思うとおりになったし。
ロキ・ファミリアの援軍で現場へ向かい、抜き打ちの捜索時に抵抗したとして、殺したらしい。惨いことを…
オラリオからの進軍を確認し、ナザリックを撤退させ、アイズとリヴァリアをそれぞれの部屋のベッドへと返却し、アインズ達も撤退させ、今回のターゲットを消し去り、僕も離脱をした。
◇
次の案件が厄介である。相手は過去へも未来へも飛べる能力者である。コイツの罪は重い。本来死ぬ運命だった自分を、別の世界で転生した後、過去の自分の死を回避したらしい。これはパラドックス的におかしいのだ。死を回避したのであれば、別の世界で転生するはずが無いのだが、転生したソイツは存在し、その世界の主となっているらしい。
まぁ、初めての世界である。堪能してから、容疑者を捕獲するかな。まず、一人で視察である。必要な人材や設備を見極めないとなぁ。
降り立った世界は、中世ファンタジーな世界のようだった。目的の奴は、森の中に作った。国にいるらしい。
その森はジュラの森といい、多種族が共存していた。目指すはジュラ・テンペスト連邦国の首都リムルだ。目指す相手は魔人で、リムル・テンペストと名乗っているらしい。東西南北に門があり、魔法結界で護っているようだ。入る資格が無い者は弾かれるらしい。
ここは後回しで、近くに迷宮都市があると言うので、そちらへ向かう。弟子達の鍛錬場所にと考えていたのだった。
入場料を払うと、迷宮内で死んでも生き返るアイテムが、初回だけ無料で貰えた。死んで生き返るなら、鍛錬場所として最高だな。ダンジョンを中心として、街は発展しているようだった。どこかの迷宮都市のようだ。
試しにダンジョンも体験してみた。ゲームでよくある、下層へ行くほど強い魔物が出るタイプであった。10階層ごとに、フロアボスがいるのも良い。弟子の鍛錬場所にするか。
次にナザリックの設置場所を検討する。地図を買い、広い空き地を探す。う~ん、森の中は難しいか?うん?ほら穴があるなぁ。ここに隠すのも手か?
ナザリックを洞窟内へ転移させ、洞窟を結界で囲んだ。オーラが漏れて、警戒されないように。
「今回はこの世界か?」
アインズに訊かれた。
「そうだ。相手のデータが不足しているので、迂闊には動けない。聖属性だと、ナザリックは撤収させる」
「わかった」
「取り敢えず、弟子達を迷宮街に住まわせて、迷宮を鍛錬場所にしてもらう。それと並行して、モモン、ナーベラル組と、ディアヴロ単独、僕単独で、周辺及び、首都テンペストを内偵する」
皆に指示を伝えた。
◇
視察すればするほど、中世ファンタジー世界のはずが、現代日本を思い越されるのは、転生者の主のせいか?水洗トイレが存在し、鉄道で各国が繋がっている。空には飛行機が飛んでいるし。キャッスルドランの持ち込みはきついかな。
各国を巡り歩いていると、1枚の貼り紙が目に止まった。『リムル杯闘技大会』と書かれている。これに出れば、魔人リムルの顔が拝めるのか?早速、参加の申し込みをした。この世界の戦力を知ることも出来るし、強い女体が見付かるかもしれないし。一石二鳥かな。
予選会場へと向かうと、バトルロイヤルで優勝者が本戦へ出場だという。名の売れていない戦士は、勝ち抜けってことか?会場に入るなり、ディアヴロとモモンと目が合った。その瞬間、二人からリタイヤするって念話が飛んで来た。なんだよ~、戦おうよ~!
---リムル・テンペスト---
秘書のシュナに予選会の勝ち抜けした戦士のデータを見せて貰った。うん?どういうことだ?『名前はシュウ、ジョブは戦士、種族不明、レベル計測不能、能力不明…』とまるでわからない。
「コイツ、どんな奴なんだ?」
「印象に薄い感じの人物で、好戦的って感じではなかったですよ」
う~ん…トーナメント表によると、一戦目はゼギオンが相手のようだ。ゼギオンは、たぶん俺の配下でトップクラスの戦士である。可哀想に、一戦目で消えるだろうな。
---シュウ---
決勝の出場権を得て、首都リムルへの出入りの権利を貰えた。いや、貰う前から出入りはしていたけど。『結界無効』スキルで、出入り自由だったし。
そして今、宿で攻略中である。街で目が合った女剣士。倒したら好きにしていいってことで、意識を狩り取り、宿へお持ち帰りをした。彼女はクールビューティー系の鬼族だったので、元ハーフな鬼である僕と相性が良い。
「うっ…ダメ…」
と、言いながら、身体を僕に預け、抵抗せずに、刺激を愉しんでいる。エムかな?胸も大きすぎず、なかなかの美形である。舌で乳首を味わう。柔らかさを纏っていたそれは、じょじょに固さを得て、起立していく。
「いい…うっ…もっと…」
ゆっくりと腰を動かし、奥の方に僕の印を刻み込んでいく。彼女の魂を読みと、一度死んだ後に、甦ったようで、不死身の半精神生命体のようだった。なんて、中途半端な蘇生なんだ?完全精神体にすれば、彼女は、もっと強くなれるのに、もったい無い。
「なぁ、僕の仲間にならないか、シオン」
「もっと、愛してくれますか?」
僕の目を真っ直ぐに見つめている彼女。愛に飢えているようだ。
「努力する」
「傍に置いてくれますか?」
「強ければな」
「いつまでも、隣にいたい…強くなりたい…」
「その願いを叶えよう。供物はお前だ。どうする?」
「お願いします」
彼女の望みを叶えて上げた。再生能力有りのホムンクルスに、完全精神体にした彼女の魂を入魂していく。魂の情報を読み取り、ホムンクルスが、シオンの身体へと調整されて行った。
「どうだ?新らしい身体は?不具合は無いか?」
「もっと愛して下さい。でないと、不具合がわかりません」
笑顔のシオン。そのまま、彼女の身体を堪能しつつ、彼女の不具合を調整していった。
---リムル・テンペスト---
決勝戦の会場へ向かうと、シオンが知らない男と仲睦まじく歩いていた。
「シオン!」
「あぁ、リムル様」
なんか、いつものシオンと違う感じがする。いつもより、堂々としている上、俺が眼中にないようだ。
《解 彼女は完全生命体になりました》
《告 彼を敵にしてはいけません》
シエル先生からメッセージが届いた。コイツ、シオンに何かをしたのか?
「そうか…お前がリムルか…なるほど、竜種スライムかぁ…それは、珍しい」
人化した俺の正体を、言い当てた男性。コイツ、何者なんだ?
《告 彼を敵にしてはいけません》
シエル先生から、警告のメッセージが届く。俺よりも強いのか?
《解 彼と戦った場合の勝率は0%です》
0%だって…歯が立たないのか…なんだ、コイツ…
《告 彼を敵にしてはいけません》
シエル先生からの警告が、俺に危険を知らせていた。
「シオン、セコンド席にいてくれるか?」
「はい。私が戦う時は、セコンド席にいてくださいね」
俺は見てはいけないものを見た気がする。あのシオンが、あの男の唇に自分の唇を重ねた。その姿は妖艶な乙女にも見える。コイツ、こんなに色気があったっけ?
「リムル君、女性は恋すると色気を纏うんだよ」
って、あの男に言われた。なんか、腹が立つ男だ。心が読まれているようだし。
《告 彼を敵にしてはいけません》
敵意を見せたら、即死なのか?
《解 簡単には殺さないと思います》
いたぶった挙げ句なのか?
《解 精神は破壊されると思われます》
精神いたぶり系か…サディストか?
「じゃ、そろそろ時間だ。リムル君、また後でね」
って、シオンと試合会場に向かうあの男…相手はゼギオンのようだ。じゃ、アイツが勝ち抜けしたのか。ゼギオンとの試合で、アイツの実力でも拝むか。
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