---御坂美琴---
有り得ない…こんなことは…
「はぁ…はぁ…はぁ…」
こんなにも体力を使うものなのか…呼吸が荒くなっていく。
「どうしたの?口からヨダレがダダ漏れしているよ」
唾液を飲み込む体力さえ無い。全身の筋肉が躍動している。
まさか…こんな術があったとは…背伸びをしすぎたバツを喰らった。私の身体を高校生並に変化させて、彼と…
「どうしたよ。ガバガバだそ?」
もう絞めつける力も残っていない。
「ヒダもクッタリしているし、こんなんでへばるなよ、強請っておいてさぁ」
ごめんなさい…幻滅しないでください。
『解除』
術が解かれ、身体が元に戻っていく。全身が痛い…酷い筋肉痛である。
「美琴の体内はビリビリしないんだな」
そうなんだ…意識が保ったのは、そこまでだった。
---土御門元春---
戦時下だと言うのに、いつもと変わらない日常であった。学園都市は今日も、それなりに平和である。
ヨーロッパではアンデッドと天使と魔女が、三つ巴柄の戦いをしているらしい。普通に考えて、アンデッドが天使に弱いはずだが、双方とも魔女を倒すのが優先らしい。
放課後…スキルアウト達を見かけなくなった。この街を護る為に、戦っているらしい。どこで?
「うん?何か来るよ」
紅が、何かに反応した。身構える俺達。どこだ?
「上だ!」
兵藤の声。空を埋め尽くす黒い物…なんだ、あれは?
「邪龍の群れだ…」
緑が吐き捨てる様に言った。
「マズい!固まって!結界を張るわ」
って、紅。俺達を紅色のドームが囲った。邪龍が地上に降り立つと、人間をついばみ始めた。
「一誠!緑!」
「「了解!」」
兵藤と緑は剣を手にして、結界から出て、地上に降り立った邪龍達を屠り始めた。
「助太刀するよ」
剣を手にしたイッセーが現れ、やはり邪龍に向かっていく。
「あれは、どこから来たんだ?」
紅に訊いた。
「防空システムに反応していないから、たぶん現地調達だと思う」
「現地調達ってなんだ?」
「現地人を邪龍にして、この街を襲わせているのよ。たぶん、魔女達だわ。禁書にあった聖杯を術式化したんだと思う」
紅も禁書へ目を通していたことに、驚きを隠せない。
「聖杯って、そんなこと出来るの?」
初春が訊いた。
「種族変更出来るの。神の力を模したらしいんだけど、不完全で邪龍にしかならないの」
結界に触れると灰になっていく邪龍。紅の表情が苦しそうだ。エロ神は来ないのか?そう思った瞬間、空を埋め尽くすほどの魔法陣が展開し、空にいた邪龍達が一瞬で灰に成っていく。
「紅、頑張ったな」
「はい、師匠…」
突如、現れたエロ神に、身を委ねるようにして倒れた紅。
「遅かったじゃないか!」
「あぁ、この世界にいなかったから。おい、シオン!出番だぞ!」
「任せてください、主様!」
長身の美女が大刀を手にして、邪龍にきりかかって行く。
「あれは誰?」
「あ?あぁ、鬼族の戦士だよ」
鬼…って、エロ神が来て、直ぐに掃討できたようだ。
「いない留守を狙うとはなぁ」
頭を掻いているエロ神。
「まぁ、ほぼ全軍を持ち込めたから、今後、留守にすることは、ほぼないと思う」
全軍?はぁい?
「この国のフィクサーとは話も着いたし、正式に名乗りを上げてもいいらしい」
なんか、楽しそうなエロ神さま…
「全軍って、どういうことですか?」
御坂美琴が訊いた。
「あぁ、僕のチームを全軍展開させたんだよ。この世界に対してね」
エロ神のチーム?
「どんなチームなんですか?私は何かできますか?」
「美琴は、僕の帰りを待ってくれればいい。それだけで、充分だよ」
◇
横浜にある魔法師協会のビルに、呼び出された俺と神裂。なんでだよ?会議室に通されると、俺達くらいの歳の奴らに混じって、エロ神がいた。
「よぉ、ツッチー、火織」
いつもの笑顔である。何をするんだ?
「では、皆さんお集まりになられたので、会議を始めます。まず、紹介をしましょうか。私は司会をいたします司波達也です」
こいつは30代くらいに見える。
「魔法師代表の十文字克人君、一条将輝君」
こいつらは高校生か?
「学園都市代表で『グループ』の土御門元春君、『天草式』代表の神裂火織さん」
俺達も立って、頭を下げた。
「後、今回の作戦で前線に出ますファントムドラグーン団長のシュウ・ヨハネ・鬼門です」
敬称を付けない。エロ神の手下なのか?って、団長だと…
「作戦については、団長から」
エロ神が立ち上がった。
「作戦は特に無い。来た物は消す。それだけだ。こちらから手を出すには、遠すぎるから、来るのを待つことにする。以上だ」
防戦だけか?いや、前線に出ると言っていなかったか?
「そうだよ、ツッチー。戦うのは僕達の仕事だ。君達はみんなを護り切れよ」
戦うのが仕事?エロ神なのに?
◇
翌日、いつもの日常がそこにあった。ニュースも戦争に関して特に報じていない。兵藤達は、俺達をガードするのが仕事だと言う。なので、前線には行かないそうだ。
「前線って、どの辺りなんだ?」
兵藤に訊いてみた。
「フランスだよ。海を跨いでも、アメリカは堕ちているし」
アメリカは既に倒したのか…いつだよ。
「マンハッタンに異界の門を設置して、異界の仲間達を解き放ったそうだよ」
異界の仲間達って、何?
「ドイツと北欧は、既に抑えているから、もうフランスにしか侵攻出来ないらしいよ」
いつの間にだよ。あのエロ神は…って、ローマとロシアはどうしたんだ?
「ローマとロシアは属国だし」
まさか、天使とアンデッドって…仲間なのか?
「団長が言ってなかったか?全軍スクランブルって」
アイツの言う全軍って、多種族混成軍なのか?
「ふぅ~、来るよ!」
紅が呆れたように言い放った。何が来るんだ?また、空を埋め尽くすように黒い物がたくさんいる。
「隣国で製造したようだ」
隣国?チャイナか?大漢の隣国だと…
「多いなぁ」
って、兵藤達は動かない。誰が倒すんだ?って、空に現れた異形なる物が数体。邪龍の群れに襲い掛かった。
---御坂美琴---
邪龍の群れが、学校へ向かった降りて来た。私の能力で全滅は無理だ。どうする。
「あなたが御坂美琴さんね」
知らない少女に声を掛けられた。
「そんな顔しないでね。あなたを保護しに来ました。私はセーラ・シトリー・鬼門。で、外で戦っているのは姉のシルキー・シトリー・鬼門よ」
見た事の無い術で、邪龍の群れを倒している女性。彼の仲間なのかな?
---初春飾利---
なんで?学校へ邪龍の群れが突入してきた。うわぁぁぁ~!窓際の生徒が食べられている。廊下に避難するが、徐々に教室を破壊して、侵入してきた邪龍の群れ。
「もう大丈夫だよ」
知らない男性が私の肩に手を置いた。なんか、懐かしいオーラを感じる。この人は誰?
「あぁ、俺はガイア・グレモリー・鬼門だ。あっちは弟のアリス・アガレス・鬼門だ。君を保護しに来たよ」
え?じゃ、邪龍の狙いは私?なんで?
「君のハッキング技術狙いだよ。君を食べた邪龍は、君の技術を継承出来るからね」
そんな為に、学校に…
「人間は道具としか思っていない連中だよ。君の尺度で考えてはダメだ」
そんな…
---土御門元春---
上やん、コガラシも応戦している。窓に首をつっこんだ邪龍を消して行く。
「なぁ、俺は保護対象じゃ無いのか?」
上やんが兵藤に訊いた。
「団長は男に興味無いし…」
「なんだよ、その理由は…」
まぁ、ベースはエロ神だしなぁ。
「うっ!眩しい!」
窓の外から閃光が入って来た。何が起きたんにゃー?うっすらと見える視線の先では、邪龍の群れが灰に成っていくのが見えた。校舎を護っていた異形なる者達は消え、一体の鬼だけがいた。鬼なのに天使の翼を持ち、鬼なのに頭上に光輪を浮かべていた。なんだ?あれは?
「団長がキレたみたいだ」
兵藤が呟いた。まさか、アレがエロ神の正体か?何?窓の無いビルが崩壊していき、天上へと昇っていく光の筋が見え、何か光り輝く玉が上昇していく。
新手の邪龍達が鬼に近づくだけで灰に成っていく。これがアイツの能力か?
「まだ、本気にはなっていないよ。本気になったら、私達も燃えちゃうから」
って、緑が答えてくれた。って、こいつらも、俺の心が読めていたのか?
「はい、正解」
って、緑。俺の妄想がダダ漏れか…
「大丈夫だよ、一誠の方がド変態だから」
って、紅。慰めか?兵藤からは苦笑いな声が聞こえる。
---結標淡希---
路地裏を逃げ回る。得体の知れない者に追われている。攻撃しても怯まない。傷口からは血すら出ないし。こいつら、何者だ?
しまった。袋小路だぁぁぁぁ~!
迫る得体の知れない者達。壁に背中を預けるしか出来ない私。ここまでか?
「ふっ、諦めるなよ。お前をロストすると、躾が恐いんだよ」
知らない男性が現れた。
「我は異界から出でたる魔王ディアヴロだ。心無きゾンビ共よ、灰へ還れ!」
目の前の得体の知れない者達が灰へとなって崩れていく。はぁ?魔王だって?敵だったら、死亡フラグが立つんですけど…
---神裂火織---
五和と逃げている。異形なる者達に追われていた。なんだ、こいつらは?ゾンビだと言え無くもない。心臓を一突きにすれば、動かなくなるが、心臓潰し以外の攻撃に怯まないし。
「私が囮になりますから、逃げて下さい」
って、五和。
「ダメだ。お前は供物なんだぞ。供物が無くなれば、この世界に明日は無い」
そう励まし、五和と共に逃げる。だけど、四つ角に達し足が止まった。前後左右から迫るゾンビの群れ。ここまでかな。彼ともっと一緒にいたかったけど。
「五和…背中を預けるぞ」
「はい!」
「そんな悲壮なことを言うなよ。アイツが哀しむよ」
「そうだ。凹むと、相手をしてくれなくなる。だから、主様を凹ますなよ」
知らない剣を手にした女性二人が現れた。彼女達の剣は的確に心臓を切り裂いて行く。速い…高速剣技持ちか?もう一人は大刀を軽々と扱っている。
「うがぁぁぁぁぁ~」
え?上か降ってきたゾンビ達。ソレを屠っていく、赤い翼を持つ赤髪の女性。
「うりゃぁぁぁぁ~!」
青髪の女性が、掛け声と共に剣を振り抜くと、斬撃が飛んでいく。斬撃が着弾した場所には小さなキノコ雲が発生した。誰?この人達は?
---土御門元春---
窓からキノコ雲が見えるんですけど…放射能とか大丈夫か?
「あぁ、あれは大丈夫だよ」
って、緑。
「全軍スクランブルは久しぶりだから、みんな愉しんでいるんだよ」
って、バトルジャンキー集団なのか?って、エロ神の姿は消えていた。次の戦域に向かったのか?
「で、これから、どうするんだ?」
って、コガラシ。確かに、逃げる場所は無さそうだ。
「沢井の家なら安全だよ」
って、小萌先生だ。
「って、シュウちゃんが言っていたよ」
そうなのか?
「あぁ、あそこは安全だ。移動ベースが護っているから」
って、紅。移動ベース?
「問題はどうやって移動するかだな」
「転移術は?」
確か、こいつらも使えたはずだ。
「ここからは無理だよ。でも、援軍の誰かと会えれば、転移出来るかな」
援軍?
「他にも狙われる女性っているでしょ?」
「女性限定なのか?」
って、上やん。まぁ、そうなんだろうな。男には興味無いし。うん?緑が誰かと連絡を取り合っているようだ。
「転移出来そうだよ。セーラさんが来てくれるって」
セーラって誰?って、誰かが転移してきた。知らない女性二人と、御坂美琴だ。
「緑、紅、一誠、がんばったわね」
「セーラさん…」
彼女がセーラなのか?黒髪の女の子である。線は細いし、ちっぱい系である。
「ちっぱい系は、遺伝です」
って、俺を睨むセーラ。こいつにも心がダダ漏れなのか…
「おい!セーラを虐めると、喰うぞ」
黒髪の女性が俺に迫ってきた。喰う?
「赤玉を出してやろうか?」
そっちの喰うか…好みがあるんだが…
「私も好みがあるんだよ。奇遇だな」
あ…蛇に睨まれたカエル…
---御坂美琴---
無事に沢井の家に戻れた。
「紅、私達は上に戻るわ」
セーラが紅に声を掛けた。
「ありがとうございました」
深々と頭を下げる紅。彼女のそんな姿を、初めてみた気がする。
「彼女には頭が上がらないの?」
疑問に思い訊いてみた。
「あぁ、私達は養女で、彼女は実子だから。立場は明確にしておかないと」
紅が養女?誰の?
「実子と養子とか区別はしないけど、私達養子組は、団長に敬意を払って、末娘のセーラには接しているんです」
それって、彼の子供?え?彼は何歳だ?
「団長に歳の話はタブーですよ」
って、緑。小萌先生以上のギャップがあったり?
「人間の思い浮かぶギャップとは桁違いだから、知らない方が良いな」
って、兵藤。え?彼は一体何歳なんだ?
「父ちゃんは2兆歳を超えているよ。あぁ、内緒にしてね。凹むから」
って、シルキー。2兆歳?想像出来ないんですが…この星って、出来てから46億年だよな。そうなると…はぁ?計算が出来ない…って、父ちゃん?
「私、こう見えて長女なんだよ」
って、嬉しそうに言うシルキー。妻子持ちってこと?
「だって、それだけ生きていれば、妻が8人くらい、いておかしく無いでしょ?」
奥様が8人いらっしゃるの…
「でも実子は少ないよ。数名は戦死しているし。その分養子は数千人いるけど」
って、緑…桁違いなんだ…彼は…
---シュウ---
空気に同化している。目の前で展開している歳の話、妻の話、子供の話…どのツラ下げて、現れればいいんだ?