幻想の約束 ~魔の蜜に蕩かされる気高き貴婦人~ 作:ねりうす
アース君視点から
照りつけるような太陽、身を焦がすような日差しに地平線の向こうから流れてくる風が、海塩をまとって髪を流されていく。
俺たちは今、常夏の世界花 国家『バナナオーション』にいた。
………。
……。
――発端は数日前。
先日のキャンプ任務から数日、落ち着きを取り戻す間もないまま、次の合同任務地が通達されてきた。
バナナオーシャン国家から直々の依頼で、海域の哨戒任務を一週間、請け負うこととなったのだ。
ロータスレイクとの交流が始まってから、水中移動のできる害虫も発見され、警戒が強まったが為だった。
「それにしても、あっちぃ~なぁ~…」
気怠げに身体を伸ばしながら、隣に来たソドムがぼやく。
「あんまり、気を抜きすぎるなよ。ソドム」
「わかってるさ。だけど、あんまり、気を張りすぎてピリピリした空気を醸し出して住民たちに不安感を与えるわけにもいかんだろ?バナナオーシャンでは変わらず、毎日のように祭りが開かれているんだ」
「まぁ、…な」
バナナオーシャン王族からもその旨は伝えられていた。
「そのために、俺たちも普段どおりの軍服じゃなくて、水着で海上警備するわけだしな」
そう言ってきたソドムの格好は、海パンにアロハシャツを雑に着て、サングラスをつけた。いかにも、観光客を装った感じがしていた。
納得しかけたところで、別の声の主が隣にやってくる。
「まったく。騙されちゃダメよ、アース君。うちの団長はバカンス気分できてるのが丸わかりなんだから」
嘆息しながらやってきたのはリュウゼツラン。――当然、彼女も水着をきている。
三角ビキニタイプの桃色がベースの水着に、所々フリルがアクセントで入り、彼女の可愛さを一層引き立たせ、麦わら帽子を被り、サマーシャツを羽織った姿は、休暇を楽しみにきた貴婦人然としていた。
「…ん?どうしたの、アース君。……ぁ、もしかして、この水着、変?」
どうやら、ジロジロと観てしまっていたのが不安に思えてきたらしく、表情が曇っていく。
「い、いや、そんなことないぞ!むしろ、とても…、よく似合っているよ」
素直な感想を言う恥ずかしさに耐えながらも、きちんと伝えると、途端に、彼女の表情は晴れやかになり、笑顔を綻ばせる。
「よかったぁ~…。最近、新調した水着だから、ちょっと不安だったの」
「そんなことないさ。自信をもっていい」
「ありがとアース君、とっても嬉しい♡」
夏の太陽にも負けないような彼女の笑顔に、俺の体温も自ずと上がってくる。
キャンプ任務から数日、すれ違いで、悶々と考え込んでしまっていたが、彼女とは想いが通じ合っていると信じられた。
「ふふっ…、団長さまも、あんまりリュウゼツランさんに見惚れてばかりいないで、お仕事がんばりましょうね」
「そうですよ、団長さん!私の水着もどうですか?」
そう言ってきた二つの声は、ウチの騎士団員であるブルーロータスとアナベルだった。
「……あ、あぁ。二人もとても良く似合っているぞ」
――ブルーロータスの水着は、淡い青色のチューブトップ型ビキニで、アダルトな感じを表現していた。少し屈んでしまえば、彼女の豊満な胸の谷間が覗かせ、健康的な男子にとって、だいぶ目に毒(?)と感じてしまうものだった。
――アナベルの水着は、ガーリーな白と緑を基調としたホルターネック型の水着で、活発的な彼女らしい動きやすく、なおかつ女の子らしい格好となっていた。
「~♪、いいねぇ。こりゃぁ、ささっとウロウロしてる害虫を討伐して、バカンスと洒落込みたくなるな」
まさに、自分の心にも飛来した、欲望に忠実な一言をソドム言ったことに対して、無意識のまま頷きそうになったのを軽く頭を振って、振り払った。
それから、何かと最近コミュニケーションが過剰になってきたアナベルを嗜めつつうちに、メンバーが揃い踏み、俺たちは任務へと赴くこととした。
――どうやら、互いの騎士団ずつにバナナオーシャンにいる間、国からクルーザーを貸与してくれる(太っ腹なバナナオーシャン王族には、打ち合わせの際に全員が驚嘆の声を発した)とのことなので、それを駆って陸から離れていった……。
それから二時間……。
害虫の出現もなく、遊覧のような気分のまま海域を哨戒しながら、空の中腹まで上ってきた太陽からの日射により肌をチリチリと焼かれる感覚を味わっていた。
――クルーザーは魔力を導力として動いていて、それなりに魔力を保持した花騎士であれば、誰でも運転できる仕様となっていた。中も、手狭と言うまでもいかないまでも船室が設けられ、トイレやシャワールームなど、一通りのアメニティが揃えられていた。
「さて、そろそろ…、一旦休憩するか。この暑さの中張り詰めすぎても、日射病にかかってしまうからな」
団員の体調管理も団長の役目のひとつ。俺の一言で、肩の力を抜いた団員たちは、挙って中へと入っていった。
「オジギソウもお疲れ様。すまないな、ずっと運転を任せてしまって」
「いえ~、的確な配置かと~。私がきっと、団の中では魔力量だけで言えば一番多いでしょうから」
多少の疲れは見えるものの、オジギソウも特別疲れた様子もなかった。
「まぁ、オジギソウも一息いれてくれ。完全に警戒を緩めるわけにもいかないが」
「わかってますよ~。団長さんもちゃんと休んでくださいね~、軍師からの命令です」
「わかったよ、軍師様」
言われるがまま、俺も他の花騎士に倣うように、船内へと入っていった。
「(う~ん、さすがに潮風にさらされ続けたから、髪や肌がベタベタするな。よし、…みんなの所に戻る前に軽くシャワーを浴びていくか)」
船室へと向かう足を少し方向転換して、シャワールームへと移動する。
そして、船内に一つしかないシャワールームにたどり着き、使用札がかかっていないことを確認すると、中へと入ろうと扉をあけた。
しかし、そこには――。
「えっ…!?」
「……ぁ」
一糸まとわぬ姿でシャワーを浴びているアナベルの姿があった。
感想をもらえると典型的なやる気がます執筆者