幻想の約束 ~魔の蜜に蕩かされる気高き貴婦人~ 作:ねりうす
過去回想のお話ですw
純愛があるからこそ、NTRが光るよね
三日後―――。
「ふぅ、今日も書類は山積みだなぁ・・・。」
ある昼下がり、空は曇って陽の光が微弱の騎士団内の廊下でアースは書類を両手に抱えながら執務室にむかっていた。
普段、こういう雑務は秘書官であるブルーロータスの役割なのだが、ちょうど彼女は遠征にでていて留守だった。
「(はぁ・・・。それにしても、同じ騎士団屯所内なのに、団が違うとはいえ、なかなかリュウゼツランとは会えないものだなぁ・・・)」
そう思慮にふけりながら、屯所内にもうけられた、中庭へ目を通すと、その意中の人物がベンチに座り込んでいた。当然のように、足先はそちらへ向かっていった・・・。
「ぁ、アース君・・・」
「どうしたんだ?・・・なんか、元気ないみたいだけど」
「うん、少し・・・ね」
そう言って、また彼女は考え込むように黙ってしまった。
もしかしたら、自分じゃ力になれないことかもしれない、しかし、なにもしないという選択をするつもりはなく、横に座り、側にいるようにした・・・。
何分、何十分たっただろう、ゆっくりと彼女の口が動き始めた・・・。
「・・・・アース君は、あの『約束』覚えてる?」
それは以前、彼女と出会ったときに微かに聞こえた言葉だった。
「ああ、・・・」
「そっか、・・・よかったわ」
二人共、あえて何のことか言わずに頷いた。
―――それは、幼き記憶。彼と彼女の尊き思い出にある、
とても小さな『約束』だった。
彼と彼女の出会いは、本人たちともどもに覚えていないほどに幼い頃に出会っていた。
お互いの両親が仲がよく、家も近所だったので自然と仲良くなっていったが、しかし、お互いに第二次性徴期をむかえる手前頃には同性の友人関係ができてきており、次第に疎遠となってきていた。
ちょうど、その頃だった・・・。
「そんじゃ、またな~、アース!」
「おう、またなぁ~!」
夕暮れ時、今日もいつもの友人たちと遊び終えた後に、互いに帰路へと入り、自宅が視えてきた矢先だった。
その声が、アースの耳に届いたのは・・・。
「・・・ひっく、・・・ぐすっ」
「・・・・・ん?この声って」
一度気になってしまうと、好奇心には勝てず、その声の主をたどるように足を向けると、帰路の途中にある小さな公園のブランコに腰をかけながら、リュウゼツランが涙を手で拭いながらも、溢れ出る涙をこぼして嗚咽をもらしていた。
「・・・・・どうしたんだよ、家に帰らないのか?」
「えっ、・・・あ、アース、君」
ただ見てるわけにもいかず、声をかけると。
声をかけられたことで、ようやくアースに気づいた彼女が俯いていた顔をあげた。
「う、うん。・・・帰らないと、ね」
そう言いながらも、腰をあげる様子はなく、また次第に頭が落ち込んでいった・・・。
「・・・・・なんか、あったのか?」
「・・・・・・」
子供心ながら精一杯の気を使って、言葉を絞り出してみたが返答はなく、彼女は俯いているだけだった。
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙。
「・・・・わたしの事はほっといて、先に帰って、いい、よ?」
うつむきながら、ようやっと出してきたのが、そんな言葉だった。
「できるわけないだろ、泣いている女の子をほっといて帰ってなんかみろ、オヤジにドヤされちまう。それに・・・」
「・・・それに?」
「最近、遊べてなかったけど。大切な幼馴染だから、な」
「ぁ、ありが、とう」
ぶっきら棒にそう言い放つと、小さな声で彼女からお礼を言われた。
「だから、おれでチカラになれるんなら、なるぞ。もし、成れなくても、話を聞くだけでも楽になれるんじゃないか?」
「・・・・・う、うん」
そこから、ゆっくりと重かった口を広げて、しゃべり始めた・・・。
どうやら、彼女の両親たちの仲が最近悪く、日がなケンカが絶えない様子で、家の空気が険悪な状態が続いていとのことだった・・・・。
「・・・・そういうわけなの。・・・っぐす」
両親が大好きなリュウゼツランにとって、二人のケンカをみているだけでも居たたまれず、帰るに帰れない状況に陥っているという事だった。
「・・・・・というわけ、なの」
「・・・そっか、おじさんとおばさんが」
事情を聴いたアースも、交流のある二人の不仲に、最初にあった元気はなくなっていった。
「ごめんね、わたしの家のことなのに・・・」
「いや、いいんだよ!おまえの家とはウチの両親が仲いいし。最近は、その、疎遠になってるけど、昔はよく遊んでたじゃんか。だから、頼ってくれていいんだぜ!」
そう言って、現状精一杯の笑顔を向けると、リュウゼツランも合わせるようにぎこちなく笑った。
「へへっ♪ようやく笑ったな!よし、それじゃぁ、行くか!」
「え、・・・・ど、どこに?」
アースに急に腕を掴まれて、ブランコから立ち上がらせられると、困惑した表情のまま、そう、聞いた。
「そりゃぁ、もちろん。おまえんち、だよ」
「ええええええっ!?」
リュウゼツランの叫びもなんのその。手をとると、グイグイと引っ張っていった・・・。
そこからの出来事は怒涛の勢いで進んでいった。
彼女の家に着くやいなや、ケンカしている親二人をアースが怒り、二人が呆気にとられた所でケンカの理由を問だたすと、実は「リュウゼツランの将来について」ケンカしていたと分かる。そして、ケンカしている二人をみてリュウゼツランが悲しんでいたと理解すると、申し訳なさそうに謝ってきた。
結局のところ、親バカ二人の痴話ケンガという事で落ち着き、一件落着となった・・・・。
それから、数日後・・・。
アースとリュウゼツランは疎遠だった頃が嘘のように再び仲良くなり、今日も仲良く先日の公園で一緒にブランコを漕いでいた・・・。
「・・・・ねぇ」
「ん~?」
「こないだは、・・・本当に、ありがとう」
「・・・・あぁ。おれが言わなくても、なんとかなってたんじゃないか?」
「そうかもしれないけど、あなたが言ってくれなかったきっと、もっと長引いていたのは事実だろうから、ありがとうだよ」
「そ、そっか。・・・どうしたしまして?」
そう言って、アースは照れくさそうに頬を掻いた。
アースのその表情を彼女は満足げにみつめると、彼女も照れくさそうにポツツポツリとつぶやき始めた。
「それで、ね。今回のことで私わかったことがあるの」
「ん?なんだ?」
なにか大事な話をしとうとしている雰囲気に気づいた、アースは真剣に耳を傾けた。
「私は将来、やっぱりお母さんみたいな奥さんになりたいなって、思ったの」
「おう、いいんじゃないか!?リュウゼツランなら、きっとなれるぞ!」
「うん、ありがと。それでね・・・・」
さらに、照れの表情が強くなり泣きそうになるほど、表情に赤みが差し込んだあとに、二の句を呟いた。
「お母さんがいるってことは、お父さんがいるってことだから。その、お父さんをアース君にやってほしいなって・・・・」
「えええぇっ!?」
突然の告白に、アースは驚きを隠せずに軽く仰け反ってしまった。
「だ、・・・・ダメ、かな?」
「い、いや。だめって、ことは、ないけど、」
「けど?」
「ぅー・・・・。こんなの男らしくないよな、よし!」
まるでゲンを担ぐようにアースは自分に言い聞かせると、リュウゼツランに向き直った。
「りゅ、リュウゼツラン!!」
「は、はい!」
いきなり肩を掴まれて大きな声で名前を呼ばれた為、反射で返事をしてしまう彼女。
「おれは将来、フラワーナイトの団長になる!そんで、世界を平和にする!そしたら、・・・け、結婚しよう!」
「ふふっ♪嬉しい!それじゃぁ、わたしもアース君の夢を実現させるために手伝う!花騎士になって、あなたの騎士団にはいって、世界を平和にしましょう!そして、平和になったら、わたしをお嫁さんにしてね・・・」
「ああ、約束だ!」
そう言うと、アースはポケットから何かを取り出すと、リュウゼツランの手のひらに乗せた。
「え、・・・これは?」
「ああ、それは約束の証だ。・・・受け取ってくれるか?」
彼女がアースから受け取ったものは、ピンク色のリボンだった。きっと、お小遣いを貯めて買ってきたのだろうそれは、特別な装飾のないシンプルなものだったが、彼女にとって、この上ない特別なものとなった。
「ええ、もちろんっ!・・・・どう?似合うかな?」
嬉し涙をこぼしそうになりながらも、すぐさま受け取ったリボンを自分の髪へと結んでみせた。
「あぁ、よく似合ってる、ぞ」
「えへへ♪」
今度は気恥ずかしそうになりながらも、顔をそむけることなくアースが正直な感想を伝えると、同様にリュウゼツランも満面の笑みのなか、照れ笑いを浮かべていた。
いつのまにか、二人の手はつながっており、二つの影は一つになって、その日離れることはなかった・・・。
それが、二人が記憶をともにする『約束』の記憶であり、共に遊んだ最後の記憶だった・・・。
これより数日後、襲撃してきた害虫によって村は滅ぼされ、二人は散り散りとなってしまったのだった。
―――。
――。
―。
実際には数分の時だったが、まるで数時間たったような錯覚を味わいながら、記憶の淵からもどり、リュウゼツランの表情を改めてみると。なにかを決意したような様子だった。
「ありがとうアース君、話せてよかった。私、がんばるわ、・・・それじゃっ」
そう言った彼女は、立ち上がるとすぐさまその場を離れていった・・・。
アースはただ見送ることしかできず、その場で彼女の後ろ姿が消えていくのをみているだけだった・・・。
次こそNTRが書けるはずw