幻想の約束 ~魔の蜜に蕩かされる気高き貴婦人~ 作:ねりうす
✿
「・・・・・」
アースと別れたリュウゼツランの歩先は自分の騎士団の執務室へと向かっていた。団長に会い、答えを伝えるために・・・・。
――三日前。
「・・・え?」
「ん?聞こえなかったか?・・・おれの恋人になってくれと言ったんだ」
「ごめんなさい、聞こえてはいたの。でも、どういうことかしら、説明してもらえる?」
まさしく当然のような質問を投げかけると、彼は微笑みを絶やさぬまま椅子から腰をあげると、リュウゼツランにゆっくりと近づきながら、言葉を返してきた・・・。
「ああ、もちろん。そうだな、まずは、何故という疑問から答えると、俺がキミに惚れたからさ」
「なっ・・・、それこそ、なんで。団長とは初対面なはずなのに」
臆面もなく言うフェガロに数歩後ずさりながらも、突然の告白に困惑を隠せずにいた。
「ああ、たしかに、キミと俺は初対面だ。だが、時間など関係ないさ。それに、さっき言っただろ?『なってもらう』って言っただろ?」
「・・・・・」
不可解な表情を隠さないまま、彼の表情を見つめ返していた。
「キミも聞いたことがあるだろう?今だ理論としては説明されていないが、花騎士は団長との【絆】でチカラを増していく、と」
リュウゼツランは黙って頷いた・・・。
まさしく、その通りで。どういう原理となっているか今だ解明されていないが、団長と【絆】を深めあった花騎士は著しく魔力が増大している事実があり、その為、一度戦線から遠のいてしまった花騎士たちはチカラが落ちてしまっていることが起きていた。
そして、今、まさしく最前線に投入されている騎士団には、団長と心身共に深い絆で結ばれた花騎士が配属されて、戦況を維持していた。
故に、騎士団長には可能な限り男性を配属させること優先させていた。
「まぁ、理解してくれたのとおりさ。そういう理由で、俺の騎士団では【絆】とやらを手っ取り早く深める為に、恋人になってもらおうと思ってな」
楽しそうな笑みを浮かべ、再び腕を回して肩に手を置くと、少し顔を近づけながら、そう言った。
「そ、そうなのね。たしかに理にかなってると思うわ、けど・・・・」
気まずそうに顔を背けながらも、彼の腕を払いのけることなく、ただただ身を任せるしかなかった。
「ククッ、想い人でも、いるのかな?」
「ッッ!?そ、それは・・・・」
「まぁ、いいさ。野暮な事を聞く趣味はないからな。・・・それじゃぁ、交換条件と、いかないか?」
「こ、交換条件??」
訝しげに彼の表情を伺っていると、ソドムは懐から一枚の用紙を取り出して、目の前に見せた。
「ああ。試用期間と言われる三ヶ月の期間、その間精一杯に俺の『恋人』を務めてくれるというなら、コレをキミにあげよう」
「こ、れ・・・・異動願いの紙?」
「ああ、その通り。そこに希望の騎士団名を書いてくれたら、三ヶ月後必ず叶えてあげよう」
「・・・・・・・・少し、考えさせてくれるかしら?」
「ああ、構わないぞ。ただ、俺も気の長い方じゃないから、早めに答えをくれよ?」
「ええ、わかったわ」
リュウゼツランからの答えを得ると、彼女から離れて自分の席へと戻っていった。
そこで、この話は終わり。そこからは秘書官であるナズナが代わり、通常の任務の話や事務的なものへとなっていった。
しかし、その後も彼の妖しげな笑みは絶えることはなかった・・・・。
そして、現在――。
「・・・・・・・・」
執務室の扉前にて、彼女は明確な答えをもってきたはずなのに、彼女の右手は何かを躊躇するように、上がり下がりしていた・・・・。
「(がんばるのよ、私!・・・アース君があの約束を覚えてくれてる、それがわかっただけでも収穫よ。次は私が約束を守らなきゃ、隣にいくためにっ)」
自分を鼓舞するように顔を上げると、決意を固めた手で扉をノックした・・・・。
「どうぞ」
扉を隔てた先から、団長の声が届いて、すぐ入室した。
「ん?・・・・リュウゼツランか、どうした?」
入ってきた人間がリュウゼツランだとわかると、執務中だったにも関わらず手を止めて、顔をあげた。
周りを見渡すが、室内には団長とリュウゼツランしかいない様子だった。
「・・・・ナズナさんは?」
「ナズナなら、今王城に行ってるぞ。・・・・彼女に用事なのか?」
「いえ、・・・・そういうわけじゃ」
「・・・・・・・・ふ~ん」
いつも快活な様子の彼女と違って、しおらしい態度に何かを察したのか、口元を釣り上げて席を立つとリュウゼツランに近づいていった・・・・。
そして、リュウゼツランの数歩手前に止まると・・・。
「もしかして、この前の答えをもってきたのか?」
「ッッ!?」
「ククッ、どうやらその反応を見る限り、そうみたいだな。・・・・それで?」
彼の答えを促す言葉に、眉間に皺を寄せていた表情を少し緩めると、返答した。
「・・・・あなたとの交換条件、飲むわ」
「へぇ・・・・、つまり、俺の『恋人』になると?」
「・・・・・・・・ぇ、えぇ」
「ハッキリと聞かせてほしいな?せっかく、これから三ヶ月とはいえ恋人になるんだし?」
彼からの意地悪な問いかけに、少し肩を震わすが道理もなかったので、返答することにした。
「あなたの、恋人に、・・・・なるわ」
「ああ、これからヨロシクなっ」
「ぇ、・・・・きゃっっ!」
そう言ってさらに数歩進み彼女の側に寄ると、すぐさま腰に手を伸ばして自分の胸の内へとかき抱いた。
突発的なことで、少しバランスを崩して足元がおぼつかなるが、彼の思いの外ガタイのいい身体に支えられた為倒れることはなかった。
ちょうど、彼の胸板の所に顔が押し付ける形になり、なにか甘くていい匂いがしたが逃れるように反射的に顔を上げると、今度は彼の顔が数センチ手前まで迫っていた、ちょっとした拍子でキスができてしまう距離だった。
「・・・・ッッ!」
瞬間、身体中が強張り逃れようとするが、彼に姿勢の悪い形で抱かれており、チカラが入らずにいた。
最後の抵抗として、顔をそむけると・・・・。
「・・・・・・・・・・・・ククッ」
少しほくそ笑えんだあと、唇に近づけていった顔をズラして首元へ持っていった、そして・・・・。
「んっ・・・・、ちゅっ♥・・・・・」
「・・・・・・・・んっ♥」
リュウゼツランの肩に顔を埋めてから、ちょうど首元と鎖骨の間にキス跡を残すと、彼女をかき抱いていた腕の力を緩めていった。
そして、再び顔をあげると、キスされた気恥ずかしさから赤くなった顔になったリュウゼツランと目を合わせると、今度は囁くように呟いた。
「今日から、よろしく頼むぜ、リュウゼツラン。俺のことはソドムと呼んでくれていいぞ」
「わ、わかったわ、・・・・・・・・ソドム」
「(ククッ、あくまで気丈に振る舞うか。心は清廉、身体は敏感、・・・・堕としがいのあるメスだぜ)」
「(な、・・・・なんとかファーストキスは免れた。でも、この先どうなるかわからない・・・・。それでも、貴方の隣にいくために私も、がんばるわっ)」
悪どき魔の蜜を持つ男と、決意を固める乙女。
運命の微笑みがどちらに傾くかは。まだこの時どちらもわかっていなかった・・・・。
感想や、NTR好きな皆さんの好きなシチュなどよかったら教えてくださいw
次回よりジワジワといきます!(