暗転する思考。
奈落の底へ堕ちていくような浮遊感。
「……ぁぁぁああああああああっ!!!!」
僕は叫びながら身体を起こした。
呼吸が荒い。まるでマラソンを全速力で走った後かのよう。
ふう、ふう、とゆっくりと呼吸を整え、落ち着いたところで呟く。
「……夢、か……」
心臓がバクバクしている。
内容はあまり覚えてないが、酷い内容の夢だったのははっきりと分かっている。
最初は良かったのに、最後はとんでもなく恐ろしい展開になっていたような気がする……。
背中にぶるりと寒いものが走る。
「うわ、汗びっしょり……」
全身汗まみれで服が肌にへばりつくという大惨事。寝ていてこんなに汗をかくなんて、風を引き熱が下がったタイミング以外に経験したことがない。
よっぽどの悪夢を見ていたんだな僕は……。
「今何時だろ……?」
壁に掛けられた時計を見上げると、時刻はもうすぐ22時――夜時間になろうとしていた。
夜時間になれば水が止まりシャワーが使えなくなってしまう……そうなる前にサッと浴びてしまおうか。
大浴場があったけど、残念ながらモノクマによって閉じられてしまっているし。
僕はそう思ってベッドを降りた。
ピンポーン……
するとそこへ来客を告げるチャイムが鳴り響いた。
「誰だろう……?」
今来客者の相手をすればシャワー時間はなくなってしまう。
しかし来客を放っとく訳にはいかず、シャワーを惜しく思いつつ僕は来客者を迎えようと部屋のドアへと足を進めた。
「……舞園さん?」
ドアを開けたそこには何かに怯えたように震える舞園さんの姿があった。
「な、苗木、くん……っ」
酷く顔を青褪めさせた表情の彼女を見て、僕は既視感を覚えた。
なんでだろう、こんな事が前にもあったような気がするんだ。
そんなわけがないのに。同じ中学だったけれど、僕と舞園さんは接点がなかったし。
でも。
胸がざわざわする。
僕はそれを不思議に思いつつも、震える彼女を部屋に迎え入れた。
彼女と言葉を交わすと、胸のざわざわが増していく。
この胸騒ぎは何なのか。これは何かの予兆なのだろうか。
僕はそんな胸中でいるにも関わらず、彼女を襲った恐怖体験に同情しそれを押し隠す。
そして僕は彼女と一晩部屋を交換することになった。
胸のざわめきは収まることなく、でも憧れのアイドルの部屋に内心ドキドキする。
彼女のいい香りに包まれた僕は、あれが彼女と最後の別れになるなんて思ってもいなかった。
朝目覚め、朝食会に顔を出し……いつまでも現れない彼女に不安を覚えて。
僕は後悔した。
だって―――知らなかったんだ。
彼女の訪れが本当の悪夢の始まりなんてさ。
ああ、耳に障る笑い声が木霊する。
うぷぷぷぷぷぷぷぷぷ……………