今回はアヤセちゃんのおかげで二人が・・・?
途中で旧多の妨害に遭いながらもエトの助けにより何とかこの抜け道まで辿り着いたが問題はこの特等二人である。
安浦清子、田中丸望元。両方ともベテランの特等捜査官。この二人も留守番組だったっていうのか。
今の私たちの状況は非常によくない。四方サンはまだ傷が治ってない、ヒナミと姉さんもそれぞれあの二人のクインケの大技を防いだことで消耗しきってまともに戦える状態じゃない。傷や消耗を回復させようにも、イチかバチかの賭けで全滅するのは避けたいし、その一手間の隙さえない。……カネキに3本全部やったから手元に残ってないし、やったことに後悔はないが惜しみはする。万丈たちに治療に専念してもらうためにも囮が必要だ。
とにかく今ちゃんと戦える……「囮」になれるのは私だけなので赫子を広げ立ちはだかる二人を射撃する。二人は掠ったものの避けたため、そこまでのダメージは与えられていない。
「……さすが、SSSのレートは伊達ではない、といったところか。ラビット」
「んん!申し訳ないが君にはここで再び捕まってもらうよ、クールガール……」
「は、だれがあんな牢に帰るか、よ!!」
硬化した赫子で安浦の二刀流を食い止め、その場で結晶を二人に射出する。
「く、う゛!」
「これは驚いた……っ」
二人には無数の結晶が刺さっているものの、比較的小さなものばかりであり、出血もそこまでではない。さすがベテラン特等捜査官、この程度の技はあまり効果は望めないか……でも、痛めつけ過ぎて死んでしまうのはよくない。カネキが気にするかもしれない。しかしその反面、私も限界が近い。コクリアに来てろくに食事に手を付けなかったし、旧多との一戦で力を出し過ぎた。
「喰種風情が……」
安浦に切られた。即座に反応していなければ袈裟斬りで斜めに真っ二つになっていたことだろう。避けたことで予想よりずっと浅かったけど、止血してる余裕はない。というか胴体切られてるからなかなかの出血だ。
思わずよろけてしまう。くそ、もうかよ。私はここで死ぬわけにはいかない。約束を取り付けた本人が約束を果たさずに死ぬなんてカッコ悪い。でも、もう赫子の出力が落ちて、たぶんもう射撃はできない。
それに対して田中丸がまたクインケにエネルギーを溜め込んでいた。あれを食らったらやばい。そんなのは分かっているが、私がここを離れたら後ろのみんながやられる。なら、私はみんなを守ることに専念する。赫子をなるべく大きく展開し、硬化させた。今は倒すことではなく逃げ切ることが優先なのだから。
田中丸の一撃がスローで見えた。私、約束守れないで終わるのかな。
みんなの叫び声が聞こえた。でも悪い、私はもう動けないんだ。
しろいひかりがわたしにせまって――――――
その瞬間、何かに抱え込まれた。来るはずだった衝撃はこない。恐る恐る目を開けると、カネキがいた。
髪は真っ白に戻って、マスクの代わりに巻き付けた布から出ている左目の赫眼が異様に輝いていた。
「―――助けに来たよ、アヤセちゃん」
「っ……」
タイミング、良すぎだろ。こんなときに来るとか……反則にもほどがある。一方で特等の二人をフードの奴らが抑え込んでいる。そのおかげでこっちに注意が向かなくなり、カネキのことはバレていない。けどちょっと待て、あいつらの恰好からして零番隊だよな。CCG側のやつらがなんで――――――
すると、同じフードを被った男……平子丈上等が私たちの前に出た。特等二人もただならぬ状況を覚っているのか表情が硬くなる。
「…………上等ボーイ……どうしたどうした!?!?」
「……本当にどういうつもりかしら……平子上等……?」
少し黙ってから二人の視線を受けつつ内ポケットから出した手紙は―――「辞表」
「辞めます」
そう言って辞表を置いた平子に二人は顔色を変えた。平子もクインケを構え、今にも戦闘が再開されようとしていたその時――――――私を降ろしたカネキが一瞬で平子と二人の間に割って入った。
「貴ッ……、…………貴様は……」
前に見たときよりより強靭になっている赫子を展開したカネキはこの場の誰よりも存在感を放ち、全ての視線を一身に受ける。ああ、まるで―――全ての存在が焦がれる太陽のよう―――
「
――王の
今日この時をもってカネキは「隻眼の王」となったのだ。
*****
あの後、コクリアを抜けた私たちは同じく脱け出した有馬貴将を背負ったエトと合流した。カネキに渡しておいた私の血液を薄めたものをこともあろうにこの二人に与えて一命を取り止めさせたのだとか。有馬貴将の首の傷は薄めてあったこともあって傷痕が残っており、本人も意識がまだ戻っていないがエトと零番隊いわくバイタルも安定していて身体や呼吸も異常はないため大丈夫らしい。
それにしてもカネキが生きて戻って来れるようにと思って渡した血液の3本のうち2本を人助けに使うとか本当、お人好しにも程がある。これにはそれで助かったとはいえ、さすがのエトも呆れていた。
で、その本人は連戦に疲れたのか気絶するように:Reの二階で眠っている。そして私はというと下の:Reで姉さんの淹れたコーヒーと私の淹れたコーヒーをお互いに飲みつつ話し込んでいた。
「まったく、帰って来たそばから眠るなんて……どんだけ無茶したんだか」
「それはあんたもだろ、アヤセ。オークションの時、ヒナミ置いてアイツのこと助けに行ったって聞いた」
「……あのままだとアイツ、あのまま死にそうだったんだよ。そうすると私の想いもこれまでのことも無駄になりそうで、怖かった」
「ふ、のろけかよ」
「そんなんじゃない。ただもう会えなくなるのが嫌だっただけ」
「……そう」
そういうと姉さんがカウンターのキッチンから私の席の横にくる、と――――――殴られた。
「っ!?」
「ったく、今まで心配かけさせやがって……でも、いい。今のでチャラにしてあげる。……おかえり、アヤセ」
「……うん、ただいま。姉さん」
「もう遅いしあんたももう寝な」
「そうする」
姉さんの淹れたコーヒーを一気に煽った。それにしてもあの不器用な姉さんがこんなコーヒーを淹れられるようになるなんて、驚きである。
「あ、あと」
「?」
「あんたの淹れたコーヒー、旨かった。相当練習したんでしょ」
「……うん」
ただアイツの隣にいたいがために、再会した時に飲ませてあげたくてこの約2年間ほぼ日課のように繰り返していた。今までは自分しか飲むことはなかったけど、喫茶店を開くトーカに合格をもらったということは出しても大丈夫、ということだろうか。そう思うとちょっと恥ずかしい。
「認めてないわけじゃないけどやっぱりまだアイツに渡したくないな……」
「?何か言った」
「なにも」
そのまま店の片付けを始める姉さんの手伝いをしてから私も休むのだった。
アヤセちゃんがカネキくんに託したのは自分の薄めた血液です。コクリアの盗聴をしていた時自分の体質などについて話し込んでいた研究者たちの会話も聞いていたため、もしもの時にと思って隠し持っていたものです。
本当はアヤセちゃんもカネキくんが生き残れるように託したものだったのですがまさかエトと有馬さんに使われるとはアヤセちゃんも思ってませんでした。