※この作品はR-18です。

黒兎の円舞曲   作:紗代

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次の話はカネキくんーとか言いつつ結局亜門さんとカネキくん両方書いちゃいました。


過去と今

カネキたちが帰ってきて、ピエロ騒動の鎮静化が済み、Rc抑制剤も手に入れてきた。それによって今にも死にそうな真戸暁の緊急手術が行われ、奴は一命を取り留めた。

 

「……」

 

何とも言えない、心のどこかにある傷跡が少し疼いている気分だった。

―――真戸暁と対面したことはないし、その父親である真戸呉緒とも直接的な縁があるわけではない。ただ、そうただ。

 

「ちょっと、面倒だな」

 

―――知っている、っていうのは。

 

姉さんが知らない、お父さんを確保した捜査官。篠原幸紀と真戸呉緒。かなり昔の案件だけど、ちゃんと記録が残ってた。別にそいつらや彼女を恨んでるわけじゃない。整理できないわけでもない。でも。

 

「つらいなあ」

 

心は、やっぱり痛かった。

そんなところに―――

 

「黒ラビット……か?」

「……亜門、鋼太郎」

 

真戸親子の最期にして最初の相棒が現れた。

 

*****

「……」

「……」

 

お互いに、無言。そりゃそうだ、私は喰種でこいつは元捜査官。敵同士だったのを「カネキ」っていう繋がりを介して対面しているだけなのだから。

 

「ねえ、もう真戸暁に会った?」

「いや」

「じゃあ、姉さん……ラビットは?」

「まだ、だな」

「……カネキには?」

「眼帯には会った」

「そ」

 

カネキには会ったのか。でもまだなんか抱えてそうな面してるなこいつ。真戸関連だろうか。

 

「なんでそんなに沈んでるの、せっかくの再会なのに」

「アキラに合わせる顔がない」

「……あんたもか」

「?お前も」

「……私の場合はカネキだけどね……まあ、真戸暁と姉さんも、ではあるかな」

 

私は一拍置いてから話し始めることにした。

 

「私の母親は死神に殺されて父親は力を付けようとして……いや違うな捜査官と自分の無力さを呪って捕食殺人と共喰いを繰り返してたのを確保されたんだ。その確保した捜査官が篠原幸紀と……真戸呉緒」

「!」

「あなたも使ったことあるでしょ。甲赫の鎧型クインケ「アラタ」。あれが私たちのお父さん」

「……そう、か」

「まあ、これはちょっとした意地悪。別に今はもう恨んでるわけじゃないから、ただその時は苦しかったから仕返しよ。実際、私としてはお父さんの方がバカだったと思うし……でも分かるんだよね。なんとなくなのかもしれないけど、お父さんの気持ち」

「……」

「……「愛する人」を失った時の悲しみとか痛みってさ、なかなか塞がってくれないんだよ。見て見ぬふりをしようとすればその分だけツケみたいに自分を追い込んでくる。私も、実際そうだった。アイツが、カネキが20区の梟戦で死んだって聞いたとき。何もかもが嫌になって、カネキを探しながらアオギリを抜け出しては捜査官や喰種を殺して喰い回った。それで気付いた。私がやってるのはお父さんと同じ「愛する人」を失ったことに耐えきれない、ただの相手が見えない「復讐」なんだって。……アイツは人殺しを嫌ってるのに、やっぱりだめだな、私」

「だから、今になって、なのか」

「うん、会い辛いというか話し辛い……って結局、私ばっかり話してるな。悪い」

「いや、そんなことはない……十分だ」

「ふふ、優しいんだね。じゃあそんなあんたにお願いがあるんだけど、いい?」

「……なんだ?」

「このこと、姉さんとアキラには言わないでね。姉さんは自分の親の仇だったことを知らないし、きっとアキラの方が知ったとしても余計に話がこじれるだろうから」

「……ああ、わかった。約束する」

「ありがとう……もし、アキラに会い辛いんだったら、まずは姉さんのところにいってみたら?コーヒー淹れて話聞いてくれると思うよ?」

「恩に着る」

「私も。じゃあ、私はカネキのところに行くから」

 

そうして私たちは別れ、カネキの下へ行くことにした。

 

*****

カネキの時間が空いたのはそれからしばらくしてからのことだった。姉さんに頼み込んで:Reのキッチンを貸してもらい、カネキの分のコーヒーを淹れて渡して私もカウンターのカネキの隣に並んだ。

カネキは私が淹れたコーヒーを一口飲んで目を丸くした。

 

「一応、姉さんから合格もらったから味については大丈夫だと思うけど、どう?」

「凄く、凄く美味しいよ、どうしたのこれ」

「コーヒー淹れるの練習したんだ……あんたに飲んでほしくて」

「そ、そうなんだ」

 

会話が一旦途切れる。それはお互いの気恥ずかしさもあったけど、私にとっては本題に入るための合図だった。

 

「ねえ、カネキは記憶失ってからの2年間どうしてた?」

「どうって……捜査官になって、喰種と戦って、Qsの子たちと一緒に生活したり?」

「そっか……私はね」

 

あんたを探しながら人と喰種を食い回ってたの

 

その言葉に反応するカネキを見て、私の顔はどうなっていたんだろうか。

 

「馬鹿みたいでしょ。そんなことしたってあんたが現れるわけないのに、結局私はお父さんと一緒だったの。あんたが死んだってことを受け入れたくなくて片っ端から情報を集めて、力と現実逃避のために殺し回って……気付いて後悔した。あんたは人殺しを嫌ってたから……ごめんね。せっかく時間作ってもらったのに。気分、悪いでしょ……軽蔑、した?」

 

カネキの視線は、私の淹れたコーヒー。私は、カネキの目を見れない。

出だしで言うようなことじゃなかったのかもしれない。隠しておいてもよかったのかもしれないけど、きっと私は愛する人への罪悪感とかそういうものに潰されてしまうかもしれないから、ここで言ってしまおう。ここで切れてしまっても、黒山羊の活動がある以上まだそばにいられるし。私の心の持ちようだ。

 

「……軽蔑なんか、しないよ」

「……っ」

 

顎、触ってない。

ハイセの時も残ってた癖なのに。さっきからずっと。そのまましゃべってる。

 

「僕だって捜査官の時、やむを得ずに喰種を手に掛けたことがあるし、確保したとしても結局コクリア行きからの処分だったから、ある意味アヤセちゃんより惨いことしてきたし、それは仕方がないことだったんだと思う」

「……なんで?」

「きっと立場が逆で今みたいになってなければ、あの時の僕だったら、同じ事をしてたかもしれないから」

「!」

 

私はやっとカネキの目を見た。優しげな、けれどどこか悲しげな目だった。

 

「だからこうして今があって、君と再会できて、本当によかったって思ってるんだ」

「……そう」

 

その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けてほんの少し表情が緩んだ。ここまで強張ってたのか私。

 

「そういえば、一番聞きたかったんだけど……なんで姉さんやニシキは連れてくのに私はおいていくの?自分で言うのもあれだけど、戦いも諜報も結構役に立つと思うんだけど、私」

「前に、アオギリにいた時君に言ったこと、覚えてる?」

「……「私が一人で苦しんでたら嫌だ」だっけ」

「そう、でもそのあとアオギリから抜ける時、僕は君を……」

 

カネキが言い淀んだ。あの時は仕方がなかったと思う。私にも非はあったし、そこまで気にしなくていいのに。

 

「そんなに気にしなくていいのに」

「でも、あのぼろぼろになって苦しんでた君を見て、後悔した。君はあのぼろぼろの体を引き摺ってどこかに消えちゃうんじゃないかって、そう思ったんだ」

「……だから、私をおいていくのね。どこにもいかないように」

「うん……君は強いから、どんなに傷付いても先に進もうとしてそのまま姿が見えなくなる。それが怖い」

「……」

「君がいなくなるのが、今一番怖いよ」

 

震えるカネキ。私はそっと震える手に自分の手を添えた。

 

「それ、今の私と一緒。」

「え……?」

「私からすればあんたの方がずっと消えちゃいそうに見える。だから私も考えるの。どうやったらあんたが消えないように支えられるのか、どうやったらあんたを繋ぎ止めておけるのか……気が付けばそればっかり考えてる」

「アヤセちゃん……」

「だからね、カネキ」

 

添えた手に力が籠る。どこにも行ってほしくないと思う気持ちが少しでも伝わるように。

 

「どんな状況に、どんな状態になっても、死なないで……どこにもいかないで」

「……」

「今のあんたの顔、死にに行く人の顔してる。……言っとくけど、あんたが死んでいいなんて思ってる奴はここに一人もいないから」

「……うん」

 

カネキはカップに残ったコーヒーをすべて飲みきってカップをカウンターに置こうとした。

 

「ねえ、聞きたいんだけど」

「?」

「まだ私のこと好き?」

「!!!!」

 

カップがカネキの置こうとした手を離れてカウンターの角に当たり、床に落ちて割れた。

 

「今箒と塵取り持ってくるから動かないでね」

「ご、ごめん」

 

割れた破片を集めて捨ててカネキのもとに戻った。

 

「ありがとう。……でもなんで急に?」

「これから話すことに関わるから、かな」

 

照れて少し赤くなったカネキは見ててちょっとかわいかった。

 

「す、……好き、だよ。ずっと、今も……前も」

「……うん、そう言ってくれて安心した」

「けど、どうして……」

「だって、ハイセの時も私のこと見てたでしょ」

「え」

「公園で会うときもコーヒー飲みながら見てたし、コクリアでだって大した用事がなくても通い詰めて私が返答書いてるときに見てた。喉を切られて声も出ないし、両目だって切られてたから包帯でほとんど人相が分からなかっただろうし、匂いだってRc抑制剤のせいでうまく感じ取れなかったはずなのに」

「琲世……僕……ごめん」

「なんで謝るの?嬉しかったんだよ、私」

「え?」

「どんなになっても、あなたが見つけてくれるって……私を好きなんだって。そう、思ったから」

「……!」

 

「好きだよ、カネキ。ずっとずっと言いたかった。……返事、遅くなってごめんね」

 

―――ねえ、カネキ今の私はあなたにどう映ってる?ちょっとでも、綺麗に、女らしく、あんたに見合う女性(ヒト)として映ってたらいいな。

 

月山が凶報を持って扉を開けて入ってくるのはそのすぐ後だった。




次の話は結構迷ってます。ちなみに今作のむっちゃんは原作よりも激情家で本家のトーカちゃんに対しての憎悪以上のものをアヤセちゃんに持ってる設定です。むっちゃん好きな方すみません。
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