「う゛、ぇぐ、~~っ!!」
口の中いっぱいに広がる「不味さ」。口に入れた瞬間から拒否するそれを飲み込んで水で流して騙し騙し「ハンバーガー」を食べていく。これはまだ人間の食べ物の中でも比較的まだ食べやすいものらしい。これでまだマシな方とか……これより酷いものを姉さんは毎日食べてたのか……改めて姉さんの凄さを知った。
「通れ」
でもなんとしてもこれを吐き出すわけにはいかない。これを食べなきゃお腹の子が死ぬ。
朝起きて必ず我が子のいるお腹に触れる。自分の意識がないうちに吸収してしまっていたら、なんて恐怖がつきまとう。
「通れ」
そもそも着床してくれたことそのものが奇跡なのだからケンがくれた奇跡を私が台無しにするわけにはいかない。エトの母親が奇跡を起こしたように、私も奇跡にすがり付く。
「通れ」
「食べ物」を拒否する体が本能的にえずくのを無理矢理押さえ込む。
子どもがいつ消えてしまうのか恐怖する。
「通れ」
「私の中で 死なないで」
「お願いお願いお願いお願いお願いお願いお願いお願い」
「消えないで……っ」
「通れぇ……っ」
絶対に産む。産んでみせる。
ケンと私の、私が唯一彼に与えてあげられる「希望」を――――――
誰もいないトイレには私のみっともない苦しい泣き声だけが響いていた。
*****
私がなんとかやっとのことで「食事」を終えるとケンと月山とニシキが集まって話し込んでいた。きっとなにか重要な事なんだろうし、邪魔してもあれなのでここを通るのはやめて別の道から子供たちの方へ向かうか。そう思って踵を返そうとした―――のだが。
「ああ、ちょうどよかった!リトルラビット、君も会話に参加してくれたまえ!」
「はあ?つーかその呼び方……まあいいや。なんか腹立つけど」
「今カネキの体質について話してたんだよ」
「ケンの体質?」
「あはは……」
ケンは元は人間の人工的な半喰種なので本来ならばもうDNAの端にある「テロメア」にガタがきて老化が始まっていてもおかしくないらしい。でも私とここに来てからというものの、まず両腕と身体にあった傷が全て跡形もなく綺麗に治っており、そのうえこの前出撃してクインケでのダメージを一切受けなかった、というか傷一つ付いてなかった。一昨日出撃した時もクインケ(それも尾赫)の攻撃が一切効かず、捜査官を気絶させたところにオッガイたちがやってきたらしい。でもそのオッガイたちの赫子もケンには一切歯が立たず、逆に破壊してしまったらしい。それで赫子が効かないとなるとオッガイたちは素手で攻撃してきたらしいがそれもまた逆に骨折してしまったんだそうな。……どうなってんの?ケンの身体……
そのうえ赫子が10本に増えた。なんかオッガイの子たちがケンに対して「お母さんの匂いがする」とか言ったらしい。その「お母さん」が私だと分かるとオッガイたちの赫包を前の:Reの倒れてた捜査官と同じように抉り出して全て食べたら生えてきたんだとか。
え、ということは私の赫包も食べたんだよね?大丈夫?……食べてない、ただ回収してきた、ならよかった……え、でもリゼの赫包が私の血の味がして美味かった?食べた後赫子に電流が流せるように?なにそれ……
「あの、また大環アクトの人呼んでケンの身体調べてもらったほうがいいかもしれない……」
「僕もそう思うよ。マイキングに何かあってからでは遅いからね」
「つーかよ、俺が思うに原因はお前だと思うぜ、アヤセ」
「え゛、私?」
「原因ってか切っ掛けってーの?だってカネキの傷が全部治ったのも調子が良くなったのもお前の血飲んでからだって聞いたし、コクリアにいた時に盗み聞きした会話でもお前はRc細胞を自分で生成できる特異体質で濃度が濃いって言われてたんだろ?そのうえ、かなり薄めてたって言ってもお前の血液を摂取したエトと死神のやつは死にかけだったくせしてもう復活してんだろうが」
「でも私のこと共喰いしようとして血一滴飲んだ喰種は麻薬中毒者みたくなって結局死んだけど……大体、その二人が半喰種と半人間だったからケンに与えられるかもしれないって思っただけだよ!?」
「半人間や半喰種だから摂取することができるのか、それとも単に運か相性か……」
「でも僕がこうして生きてられるのはアヤセちゃんのおかげだし、気にしないよ」
「……ありがとう、ケン」
益々ケンの謎が深まっただけだったのでとりあえずここは専門家に任せることになり解散した。えっと、連絡はこれからするとして護衛の方も考えないとな……
私は回収してきてもらった赫包をかじりつつ頭を悩ませるのだった。
カネキくんのチート化が進行しています。
勿論アヤセちゃんのせいなんだけどアヤセちゃんの自覚はないので本人は困惑気味。アキラさんの手術をした大環アクトの人々に頼ることになります。
あと、前の話でオッガイのスパイであるハジメ君を救うだけ救って放置しちゃったのでむっちゃんの脅迫ラブレターは届いてないです。どうしよ・・・