まだヒナミちゃん登場してないです。
獲物を物色しに街中を歩きまわっていると声がした。言い争って……いや、この場合はカツアゲか?気になるので行ってみると、ひょろっとしたモヤシっぽいやつが如何にも頭悪そうな集団に囲まれてた。
にしても、あの詰め寄られてるモヤシの服……見覚えあるんだよな……と思ったところで、ふと思い出した。あの制服、あのモヤシ「あんていく」の従業員か。
はっきり言って関わり合いになりたくないが、あの更に奥から漂ってくる甘い匂いは血の匂いだ。匂いの濃さからして、かなりの出血。おそらくもう遺体なのだろう。しかし、あの集団を抜けなければ死体の下にはたどり着けないし、今更次の獲物探しなんて御免である。
「(それに「あんていく」のメンバーが減ったりしたら……)」
同じような制服を身に付けた姉の姿が思い浮かんだが、すぐに消した。そうじゃない。私は、私の目的のために行動するのだ。それに、弱いのがどうなろうと知ったことではないけど、目の前でされたら目覚め悪いし。
「なあ、おまえら何してんの?」
「あ?」
「カツアゲか?共喰いか?」
「なんだテメェ」
「こんなヒョッロイモヤシ相手にこんな人数で寄って集らなきゃカツアゲ一つもできないなんて、どんだけ弱いの」
「んだとゴラァ!!」
一人が赫眼になって殴りかかってくるのを躱して、そのまま打ち込む。予想通り、倒れ込んで悶える奴を見て、その場にいるモヤシ以外の奴が赫眼になって襲い掛かってくる、が
「遅ぇんだよ」
全て捌くまでもなく、掛かって来た数人を返り討ちにしてやった。結局、そうしたら全員ビビったのか、尻尾巻いて逃げていったので、この場に残っているのは私とモヤシだけである。よく見たら、モヤシは買い物袋を持っていた。買い出しの途中だったのか。
「おい、そこのモヤシ」
「も、モヤシ!?」
「怪我は」
「ないです」
「そ、運がよかったね。じゃあ、私はこの奥に用があるから」
「あ、あの!」
「……何」
「助けてくれてありがとうございました!」
律儀だな。こんだけ派手にやったら普通さっさと逃げるだろうに。
「……別に、もう済んだことだし行きなよ。あんた、弱そうだし……匂いも変わってるから、ここらの連中にはいいカモだよ」
「は、はい!」
モヤシがそのまま私の横を通り過ぎて遠ざかったのを確認すると、私も奥に向かって死体を解体するとバックに詰め込んで、十一区へ帰ることにした。
「……」
ほんと、今日は朝の夢といい、「あんていく」のモヤシといい、最悪な一日だった。女々しいにもほどがある。
そう思いながらも、とりあえず食事の調達が出来たことと、その肉が美味かったことで、なんとか機嫌を直そうとするのだった。
(結局、万丈たちにも気を遣われてしまった)
(あーあ、しばらくあの路地も使えないか。「あんていく」のやつに会いたくない)
(そう思いながらも、近いうちにまた再会してしまうなんて、本当に私はツイてない)