※この作品はR-18です。

黒兎の円舞曲   作:紗代

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今回はアヤセちゃんとむっちゃん両方の視点で書いてます。むっちゃん視点は+++++から*****までの間です。


作戦/相手を出し抜く強かさ

局長、和修吉福がいるという広間までできるだけ急いだ。

どうやら戦っているらしい―――聞こえてくるのは瓜江、おそらく黒磐特等、旧多、死堪、ロマの声と戦闘独自の音。

なるほど、旧多の協力者はピエロだったわけだ。

 

「サイコ、シャオ、髭丸―――行くよ」

 

私の言葉を合図に4人で広間に入り死堪とロマの攻撃を捌いた。

 

「!」

「あれえ?」

「Qs……」

「!おまえら(なんでここに)」

 

攻撃を弾いて全員が着地する。

 

「ウリ!誘っといて抜け駆け許さん!!」

「班長をサポートするのも班員の役目です」

「一人で抱え込まないで頼ってくださいよ!!」

 

そして私はというと、みんなに守られるようにして、檀上の旧多と対峙していた。

 

「よお、久しぶりだな。和修旧多宗太―――いや、今は和修吉福だったか」

「……棚ボタ♡」

 

+++++

オッガイたちに東京中を見張らせて先生の行方を探る。東京の喰種は殆ど全滅させたし、生き残ってたとしても餌の死体なんて一切ない。だから必ず尻尾を出すはずだ。兵糧攻めである。そして東京の県境あたりを見張らせてるオッガイのチームから連絡があった。この際隻眼の王以外はどうでもいいし、どうせあの女で全滅するのだからほっといたってかまわない。むしろあの女の手でより多くが死んだ方がいい。だから見逃しておいてあげよう。どうせ羽虫だし。

オッガイの気配を感じ取ったのか先生が足を止め、後ろに続いていた集団は別方向に散って行った。その場に残り、オッガイに囲まれているのは先生と他数人の喰種。さてと、私も行くか。

 

「お久しぶりです。先生」

「ムツキくん……」

「どこに行って来たんです?もしかして食料調達ですか?大変ですよね、このご時世、東京に死体なんて喰種以外転がってませんから」

「…………」

「ああ、そういえば、あの時の人、ここに来てないんですね。お姉さんの方は来てるみたいですけど」

「!」

 

先生は動かないがあの女の姉・霧嶋董香はわずかに反応した。

 

「まあそれも仕方ないか。あんな書類渡されたら団体行動なんてしていられる余裕なくなりますよね」

「書類?」

「もしかして知らないんですか?オッガイからの封筒。あの中に入ってるのって実は手紙なんかじゃなかったんですよ……なんだと思います?」

「!」

 

そして私はゆっくりと見せつけるようにして例の通達書類のコピーを取り出して開いて見せる。

 

「ご友人の結婚、おめでとうございます。霧嶋董香さん。ですが、この度喰種法の改定厳罰化がありまして―――もう時間はほとんど残されていません。あなたとご友人だったばかりに、不憫ですよねえ。ですから送ったんです、あなたの妹さんに」

「テメエ……」

「でもあなた方がここにいる、ということは諦めたんでしょうか?まあ、どちらにしてもきっと今頃は局長のところでしょうけど」

「……どういうこと」

「元々局長は先生と妹さんに目を付けていたんですよ。喰種を絶滅させるなんらかの儀式の生贄として。でも先生が難攻不落になったことで標的は妹さんに移ったんです」

 

きっと、オークションで先生を助けたラビットなら姉の友人を見捨てるような真似はしない。それを理解しているであろう喰種たちは顔面蒼白だ。

 

「ねえ先生、今ならまだ間に合います。私がこの二人の処遇を掛け合います。私はこう見えて局長や上層部に顔が利きますから延期してもらうことも、ひょっとしたら刑そのものを止めさせることも出来るかもしれません。私と一緒に来てください。」

 

先生、今すべき選択はわかっているでしょう?

 

「ムツキくん……」

「はい、先生」

 

さあ、言って。私と来るって。あの女を裏切って私のものになって。あの女が喰種側にいる原因ならこの時点で隻眼の王は死んだも同然なのだから!

 

「嫌だ、僕は君の出した条件には乗らない」

 

は?

 

「どうしてですか?」

「僕は彼女を裏切らない、ずっと彼女と一緒にいるって誓ったんだ」

 

なにそれ。前に会ったときの返事は「それはできない」だったのに今回の返事ははっきりと拒絶された。

 

「どうしてですか……私と一緒に来てください。もう時間ないんですよ?」

「それでも、僕は彼女に拒絶されるのが嫌だから、他の誰かに着いて行きたくないんだ」

「そんなに、そんなにあの女のことを―――」

「うん――――――愛してる」

「!!」

 

―――やっぱり、だめですよ先生。そうやって手足があるからそんなこと言うんです。あなたの世界を私だけにしてあげないと。どこにも行かないように。トルソー、じゃだめだ。ダルマにしよう。

気付いたら先生に向かってナイフを振り上げてた。

ああ、対策としてRc抑制剤製のクインケ持って来ててよかった。いくらクインケ鉱が通らなくてもRc抑制剤の塊ならいけるだろう。そういえばその前に念のため抑制剤を噴射させておかないと。先生の真上で勢いよく噴き出すRc抑制ガス。――――――獲った♡

 

「げ、ァ?!」

 

ナイフをそのまま振り下ろそうと、その瞬間みぞおちに入った衝撃―――え?

え?え?え?

なんで?なんで先生が立ってるの?Rcガスもろに喰らった、はずなのに?おかしい、なんで?

私に一撃入れたのはあの女の姉?

 

「なんで、もろに喰らっただろ、倒れろよ!!」

「るっせえ!!下種野郎!!こいつとあいつの邪魔するなら私が相手になってやる!!」

 

口を拭きながら、ふらつきながら立ち上がりあの女の姉を睨む。あの女と違うのにどこか似ているその顔、髪色――――――ところどころにあるあの女の面影。消えろ。

 

「ムカつく―――ムカつくんだよその顔!あの女を見てるみたいで気色悪い!」

 

ナイフを振り回す。なるべく早く正確に。でも当たらない。まるであの喫茶店であの女と戦った時みたい。

 

「ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな!!先生を私から奪ったくせに!!ぽっと出のくせして先生に色目使ってんじゃねえよクソ女!!」

「ぽっと出はお前の方だイカレ野郎!!」

「はぁ?何言って……」

「こいつは捜査官になる前……佐々木琲世になる前からアイツを想ってんだよ!!ようやく一緒になったのにそれを壊そうとしてんじゃねえ!!」

 

は?先生になる前?一緒に、なった?なにそれ―――なに、それ。

じゃあ何認めない私の方が認めない横恋慕認めないしてたってこと?認めない

一緒って何認めないまさか認めないまさか認めない先生と認めない

 

「ふざけんなあぁあああああぁあぁぁぁぁあああ!!」

 

響く私の声振り上げたナイフは当たらずよろけ、そのまま尾赫を出して攻撃する。でも当たらない。距離を取られ切る前に尾赫の欠片を飛ばす。

 

「っ!」

 

一撃当たったがそれは顔じゃない肩をかすめただけだ、だめなんだよ顔じゃないとだめなんだグチャグチャにしなきゃ先生が離れていくくらい―――

 

『なんとなく、放っておけないんだ』

 

ダメだ、コクリアの時の事を思い出した。先生は、あの女の人相が分からなかったときも通ってた。じゃあそれは――――――あの女の存在そのものに惚れてるってことじゃないか。

 

「殺す!殺してやるあの女ァ!!」

「ウゼェ!!」

 

尾赫の攻撃を全て躱してきた女に背後をとられ尾赫を掴まれる。

 

「クソ!離せブス!!」

「誰が離すかよ、オラァ!!」

 

そのまま投げられ身体を打ち付けられて動けない―――いや動く。動かないとあの女に負けたことになる嫌だ。

 

「こ、の゛ぉ!」

「そんなに切り刻みたいなら自分のでも喰らってろよ、このイカレ下種野郎!」

「!あ゛」

 

尾赫の付け根に、何かが突き立てたれた。突如として力が抜けていく、気持ち悪い、吐き気がする。突き立てられたのは――――――先生用(Rc抑制剤製)の私のナイフだった。尾赫の付け根、赫包を貫かれている。動け、ない。

 

「クソ、クソクソクソクソクソ!!嫌いだ女も男もみんなみんな、あの女ばかり!!死ねクソ女!!死ね死ねよみんなこんな世界終わっちまえ!」

「終わるのはお前の方だろ」

「アハハ!あの女が儀式で「竜」になって全部壊せば終わりますよぉ世界なんて!私に構ってる時点でもう遅い――――――」

 

『―――どうせ私たちはここでお前らに殺されるんだろ?「死人に口なし、喰種に口なし」なんだから最後くらい真相聞かせろ。ここまで私が語った内容が正しいのかどうか。まあ、刺客として現れたのがピエロの奴なんだし素直に言ってもらいたいんだけど』

 

今まで戦闘に集中しすぎて聞いてなかった放送の、あの女の声。は?なにこれどういうこと?

 

「!アヤセ」

「みんなはこのままアジトに帰って……僕はアヤセちゃんを迎えに行ってくる」

「……ちゃんとアヤセ連れて戻ってこいよ」

「うん、行ってくる!!」

 

そのまま喰種たちと先生は別れ先生だけが建物を伝ってCCGの方へ向かって行き私一人だけが取り残される。嫌おいていかないでください先生――――――

 

『こわいですねえー……まあいっか、そうですよ?全部ピエロさんたちにお願いして協力してもらいましてーまあここまでうまくいくとは思いませんでしたけど。それにしても元Qsのえーっとだれだっけオッガイの教習役の……ああそうそう、六月透でしたっけ?いやーあの子便利ですね!ちょっと背中を押せば応えてくれるんですよ!もう笑っちゃいました。そんなことしたって手に入るわけないのに……ああ可哀想クスン』

 

私、また男に利用されたの?

強くなったと思ってたのは私だけ?

結局――――――

 

「う゛ぁああああああああ!!」

 

憎い嫌いだ、旧多も先生もあの女もみんな死ね!

 

「先生ぇ――――――キライ」

 

そして私は――――――

 

*****

「なんの真似です?せっかく正直に話してあげたのに」

「いや、やられたらやられたままでいることが私はできないから、ちょっとした―――仕返し」

 

永近に頼んだのは私の隠し持ってきた小型マイクから今の話、真相をばら蒔くために東京の稼働しているメディア機器全てのジャック。

これで少しは、ケンに対する誤解が解けることを願う。

 

「…………このクソアマ」

 

旧多の赫子が私に伸びてくる。かわすけど人間の食べ物食べ続けてて、力が出ない。赫子が出せない。避けられない。

 

「ラビちゃん!!」

 

サイコの声が聞こえた。ごめんね、ここまで付き合ってもらったのに。

 

ヒナミ、蓮示さん、姉さん、―――ケン。

 

死にたくない。

 

その瞬間一瞬にして目の前は白一色に変わった。来るはずの衝撃も痛みもない。

 

「無事か、アヤセ」

 

服も髪も全てが白一色の人が、クインケを携えそこに立っていた。

 

「お―――お義父さん!!」

 

私の危機を救ったのは、有馬貴将その人だった。

 

 




色々あってなんとか収束できそうな感じです。オッガイどうした?って思う人もいると思いますがちゃんと出します。むっちゃんと一緒でたぶん報われないけど。
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