題名に「アンチテーゼ」を入れたのはCCGとの戦い、というか旧多との戦いが終わってもそれが終わりではない、という矛盾から。
「随分と、懐かしい顔がいるじゃねえか。―――有馬」
「…………」
お義父さんの後に広間の扉を開けて入ってきたのは丸手特等たちだった。
こいつらが敵か味方かによって状況は変わる。
「CCGの捜査官……っ」
どうしよう私は今ほとんど戦えない。お義父さんが来てくれたけど、旧多、ロマ、死堪、の他に丸手たちまで加わったらさすがにお義父さんでも手が回らないかもしれない。
「おっと、俺たちの敵はお前さんと一緒だぜ嬢ちゃん。永近から聞いてねえのか?」
「永近……!」
「思い出したみたいだな。おい、生きてるか、イワ!!」
「無論、まだ孫の顔も見てないうちに死んだら死に切れん!!」
「そりゃそうだ!てなわけで……CCGを取り戻すぞ野郎ども!!」
丸手の指揮で一斉射撃を開始する。
「うう~!うるさーい!」
「パン?」
ロマと死堪が捜査官たちに飛びかかる。しかしクインケの一撃によってあっけなく――――――
「ひゃれ?」
「ノン」
首を絶たれた。胴体から離れた首はそれぞれ瓜江とお義父さんによって跡形もなく潰された。それを確認した丸手たち射撃部隊は旧多に集中砲火を開始。ハチの巣になっていく旧多と丸手たちの火力勝負である。
「フッ……愚かな連中め僕に楯突いたらどうなるか……教えてやりゃあ」
「!!」
「僕は風やっぱ鳥」
旧多は走ってビルの下にダイブした。
ここまでみんなが追い詰めたのに逃がした―――次は打開策がある状況であるとは限らない。喰種は追いやられ続けてきっとケンへの負担も増えていく。そうなってしまったらもう――――――
なにも出来ない、戦えない自分に腹が立つ。これだったらいっそのこと旧多の軍門に下ったふりして寝首をかくなんていうやり方でもよかったかもしれない。いずれにしてももう後の祭りで―――。
そう思った瞬間、出ていったはずの旧多が見覚えのある赫子に押し戻されるような形で壁に打ち付けられそのまま床に落下した。
「う゛ぇ゛」
「お久しぶりですね、旧多さん」
そこにいたのは、ケンだった。
「ケ、ン」
「…………」
私に少し微笑むとそのまま旧多のところに歩いていく。
「じょ上官?今度はなんですか?Vの成り立ちとかあの事故のこととかあの時色々話したじゃないですか。僕もうあなたに話せることないんだけどなァ~……なんて」
「はい。今日は話をするために来たわけではありません。あなたの計画を壊すことと僕の大事な人を返してもらいに来ました。」
「な、なんのことですか?リゼ?それともあそこにいる人ですか?」
「正解です。正直な話、リゼさんに関してはもうどうでもいいんですけど、彼女が関わるなら話は別です。ムツキくんが教えてくれました。あなたは僕と彼女のどちらかを儀式の生贄として「竜」にすることで喰種を絶滅させ人間も巻き込んで世界を壊す気だったと。本命は僕だったはずが予定を変更し標的を彼女に変えた……そう言っていました。」
「あ、あははは~……せ!」
笑ってごまかし赫子でケンを狙う旧多だったが逆にケンの赫子に引きちぎられた。
「彼女を利用しようとした挙句僕を食おうとする……なら、これから僕に何をされても仕方ないよね?」
「へ、ぇ!?上官?」
「そういえばあなたはちょうど半人間の半喰種でしたね……ねえ、半殺しの定義ってなんだと思います?」
「な、なんでしょうね~僕ちっともわかりません」
「僕が思うにそれは「骨」。……人体の骨の総本数は206本。そのうち103本を折ればまさに半殺しになると思うんですよ。だから」
ケンが旧多の襟首を片手で掴んで引きずりながらもう片方の手の指を鳴らした。
「これからあなたの骨を103本、折ります。あなたの場合半喰種でもありますから赫包もいただきますね」
「え、ちょ、冗談っぎ!!」
そのまま旧多を引きずって広間の扉から出ていくのをただ私は見ていた。これから起きることを唯一この場で知る存在として複雑な心境である。心なしか幻肢痛がしている気がする。サイコやQsのメンバーが心配して駆け寄って来てくれた。きっと私の顔は蒼白なのだろう。
そして―――始まった。
骨の折れる音、旧多らしき悲鳴、折れるたびに聞こえるケンの無機質な骨の解説。
……思い出したら本格的に痛くなってきた。
さすがに色々な修羅場をくぐってきている捜査官やQsたちもこれには青ざめていた。
「そ、そういえば有馬、お前なんでここに来たんだ?公式にはお前は死んだことになってるぞ?」
空気をなんとか変えようと丸手がお義父さんに話しかけた。みんなの視線もそっちに集まる。
「俺はケンに負けて死んだ。しかし俺が死ぬことをケンは良しとしなかった。だから死ぬ寸前に救われて生きている。今日ここに来たのは娘と孫を迎えに来ただけだ」
「は?お前結婚してねえだろうが」
「そういえばさっき、ラビちゃんが「お義父さん」って……」
「え?喰種と養子縁組?」
「あの有馬特等が?」
「ん、待てよ。孫って言ってなかったか今」
「アヤセはついこの間ケンと結婚したから、俺の義理の娘。」
「お義父さん……」
みんなが驚く中、やっと旧多への制裁が終わったのかケンがやってきた。
「帰ろうアヤセちゃん。みんなが待ってる。」
「で、でも今ちょっとそんな状況じゃない」
「?」
本人がやってきたことで聞きたそうな話についていけないやつらがケンに詰め寄った。
「おまえ結婚してたのか!?」
「有馬さんが孫って言ったんだけどどういうこと?!」
「え、えっと、はい。彼女は僕の奥さんで、現在妊娠しています」
「おめでたなのにここまで来たのか嬢ちゃん……」
「CCGの方から姉さんの友人を処刑する旨の書かれた書類で脅迫されて……居ても立っても居られない状態になったから」
「……もしかしてできちゃった婚なんかね?ママンとラビちゃん」
「そんな、いくらなんでも」
「いずれにしても早い……」
「結婚、か(佐々木も結婚……しかも妊娠)」
そんなふうにわいわいしているなかで私の持っている無線に通信が入った。
≪もしもし、アヤセちゃん?≫
「!その声、堀さん」
≪そ、ホリチエだよ。そっちどうなってる?≫
「とりあえず解決しました。黒磐夫妻は……」
≪無事に保護したよ、今はトーカちゃんと零番隊の人と一緒。ただ―――困ったことに今アジトの一部が襲撃を受けてる≫
「!オッガイ……ですか!?」
≪そうだね、どうやら遠征の後を嗅ぎ付けられたみたい。今のところ四方さんとか月山くんが対応してくれてる≫
「今向かいます」
無線が切れた。遠征から帰るみんなの匂いを辿って来たのか。
「ケン、アジトがオッガイに嗅ぎ付けられて襲撃されてるって、堀さんが」
「!戻ろう」
「おい、俺たちも……」
「いえ、ここで旧多を取り逃がすわけにはいかないので彼の拘束とCCGのどこかで研究を続けている嘉納教授の発見・拘束をお願いします」
「ラビちゃん……」
「うん、サイコ。またね」
「うん!またな、ラビちゃん!!」
そして私はケンに抱えられるとアジトへ急いだ。
襲撃した主犯はいわずもがなあの子です。
ちなみに旧多はアヤセちゃん(原作のアヤトくん)とは逆の方を半殺しにされました。赫包もほとんど持っていかれて、たぶん再生も死なない程度にしか治ってないと思います。
たぶん治ってもトラウマになってることは確実。