アヤトくん成り代わりですが書いてるうちにあんまり似なくなってきてる気がします。「どっちかと言うとトーカじゃね?」うちの妹よ思っててもはっきり大声で言わんといて・・・
あの出会いから何の因果か、行く先々で私はあのモヤシに遭遇するようになった。こうして今も―――
「……」
「……」
目の前で辛気臭い顔しながらウジウジし続けてる奴と顔を突き合わせている。
長いことこのままなので、もういい加減目に余る。
「なあ、いつまでもそう辛気臭い顔されてるとこっちも参るんだけど」
「ご、ごめん」
指摘すれば更に縮こまってしまった。あー、もうめんどくさいな。
「それで、なんかあったの?」
「!え」
「なんかあったからそんなウジウジしてんだろ。言えば?そのままでいられても私まで気が滅入るし」
「……うん」
モヤシは少しずつ話始めた。バイト先の常連だった喰種の親子が、白鳩のやつらに襲撃されたこと。子供は助かったが母親は子供を逃がすため囮になり、子供とモヤシの前で殺されてしまったこと。モヤシはその場にいたにもかかわらず、何もできなかったこと。
「なんであんたが自分を責める必要あんの?」
「でも、僕がもっと動ければきっと二人とも助けられたんじゃないかって、思って」
「はあ?そんなひょろひょろの肉も何も付いてないがりがりの赫子も出せないおまえがか?無理だよ、無理。それにおまえがどんな生い立ちしてんのかなんて知らないけど、私たち喰種の世界でなんてそう珍しいことでもないだろ」
「……え?」
「んだよ。子持ちの喰種は子供のことを考えてあまり移動できないから、白鳩のやつらにとっちゃ補足しやすい恰好の的なんだよ。そんなことも知らないとか、この匂いも含めて一体何者なの?」
私があからさまに溜息を吐くと、少し気まずそうにしたモヤシと目が合った。
「……何?」
「じゃ、じゃあ君も……?」
口が滑った、いやいいか。隠すことでもないし。それにこの鬱陶しい気遣いみたいな視線をやめさせる方が優先だ。
「……割とありきたりな話だ。物心がつくかつかないくらいの時に母親はCCG……白鳩のやつに殺されて、それから数年後に父親も白鳩のやつらに捕まって行き場を追われた。父親は死体漁りとかしててうまく隠してたつもりだったみたいだけど、呆気なかったな」
「でも、近所の人とかとはうまく付き合ってたんだよね?死体を漁ってたっていうことは、人を殺してたわけじゃないんだし……」
「正体がばれるまではな。バレてからは早かった」
「それって……」
「通報したのは仲良くしてた隣に住んでる人間だったんだよ。喰種ってバレた途端に手のひら返した」
「そんな……」
「それが人間だよ。自分の安全を考えたら妥当な判断なんだろうな……いや、それは私ら喰種も変わらないか」
「だから」と、私は言葉を続けると同時にモヤシの額に思いっきり弾いた。モヤシが声にならない悲鳴とともに額を抑えて悶えているが、気にしない。
「なにが言いたいのかっていうと。おまえが気負う必要ねえんだよ。おまえ弱いんだから。それに、一番後悔してるのはその子供だ。その子供を気遣ってやりゃいいんじゃねえ、の……」
自分で言ってて気が付いた。あれ?なんで私ここまでこいつに話してんだ?というかなんで私がこいつを慰めてるような感じになってるんだ?
「どうしたの?」
「……忘れろ」
「え?」
「今の話忘れろって言ってんだよ!この貧弱モヤシヤロー!!」
「ええ!?」
「わ・す・れ・ろ!」
「ぐえ、首、首が絞まって、わ、わかりました!忘れます!!」
「……ならいい」
ぱっと掴んでいた襟首を離すと、モヤシが崩れ落ちた。窒息するほど締め上げていたわけじゃないので大丈夫だろう。たぶん。
「ありがとう、それでもう一つ、お願いがあるんだけど……」
「……何、言っとくけど面倒事は」
「僕に戦い方を教えてほしいんだ」
「……」
「だめ、かな?」
手を合わせて頼むモヤシにこれまた盛大にため息を吐いた。本来なら自分の部下にすらしない事だけど、ほとんど事情を知ってしまった所謂乗り掛かった船の状態で、しかも自分の事情も話してしまっているので、そう簡単に無下にするわけにもいかない。
「……一回だけだからな」
「うん!」
*****
場所を変え、だだっ広い廃墟まで来た。ここなら目立たないし、人間や他の喰種に見つかることもないだろう。
「始めるぞ。まず最初にどこでもいいから本気で打ち込んでこい」
「え、でも」
「いいからこい。初心者でなよなよしたお前の一撃くらいどうってことないし、もし怪我したとしても骨折くらい数時間もすりゃ直る」
「じゃ、じゃあ……せいっ!!」
打ち込まれた一撃を片手で受け止め、その流れのまま蹴り飛ばし反撃した。蹴飛ばされたモヤシは壁にぶつかり、私はすかさず距離を詰め首に触れる。これで一回目。
「本当に実戦の経験無いんだな」
「うん……」
「攻撃できなくとも避けられるくらいにはなっとけ。じゃないと、一撃で死ぬぞ」
「わかった」
モヤシが立ち上がり稽古は再開。とりあえず、まずは基礎からだな。
*****
「こんなもんか」
「ぜぇ……はぁ」
「体力無しだな、おまえ」
「き、君と一緒にされても……」
「まあそうだろうな。まずおまえがすべきなのは体作りだ。もし万が一、戦いに巻き込まれたら相手をよく見て流れに乗ることだ。そうすれば避けやすくなって、攻撃にも繋げやすくなる。私が教えてやるのはここまで。後は自分でどうにかしろ」
「あ、ありがとう」
「その代わり、私の話したことは誰にも話すなよ。それと……私にここまでさせたくせに負けたら、私がおまえをぶっ殺しにいくから」
「は、はい!」
「じゃ、私はこれで」
私はモヤシに背を向けて歩き出す。あーあ、今日は本当にらしくないことをした。結構かかったし、万丈たち他の奴らにこき使われてないといいけど。
「あの、今日は本当にありがとう!」
「礼とか別にいい。」
「ううん、僕が言いたいんだ」
「……あっそ」
「それで、今更なんだけど」
「?」
「君の名前、教えてほしいんだ」
「……私の名前なんか知ってどうするつもり」
「い、いや結構頻繁に会ってるし、聞いてなかったから」
しどろもどろになるモヤシに本日3回目のため息を吐いた。まあ名字さえ言わなければ変に勘繰られることもないか。
「アヤセ……じゃあ私急ぐから」
そう言って今度こそ、モヤシを置いて出ていった。
まだカネキくん視点書く予定はありませんがもうこの時点で一定以上の好意を持ってる設定で書きました。トーカちゃんに毎回相談して「恋じゃね?」とか早期発見、自覚してるといいと思う。
アヤセちゃんの方はまだまだだけど。