東京からちょっと離れた田舎町。いや田舎っていうほど田舎でもないかコンビニもタクシーもバスも電車もあるし、娯楽施設だってそれなりに充実してる。ゲーセンにネカフェ、漫画喫茶、女子が好きそうな古民家カフェなんかもこないだオープンしたって言ってたっけ。まあ連れてくような彼女とかいないけど。とりあえず職に就いて日々の生活費を捻出できるだけまだいいと一人空しく思う毎日。
そんななか、小学校の同窓会の出欠確認のハガキがきた。なんだってこんな中途半端な時期に寄越すんだよ。でもちょうどその日は空いていて、それを同級生のラインで呟いてしまっていたので断るわけにもいかなかった。
会場に着くと年相応になった同級生たちと会う。お互いの近況とか、誰が結婚したとか、親がうるさいとかそんな在り来たりな話。みんなそれぞれ小学校の卒業後色んな刺激を受けてきたせいもあってか変わらないやつもいれば丸っきり変わってしまったやつもいる。浅岡なんてそのタイプかもしれない。
小学校の時近くに住んでた従兄弟が天涯孤独になって浅岡の家に引き取られてきたんだが、どうやらそいつが浅岡より出来のいいやつだったらしい。学校で比べられる分、家で差別的に扱われている従兄弟を見て優越感に浸ってたらしいが、高校を出た後から状況は一変した。
従兄弟は奨学金制度を使ってあの上井大学に進学し、東京へ行ってしまったのだ。
当然近所では元々優秀かつ真面目で見た目も派手さはないけど整ってたから噂になった。そしてついに母親がキレた。元々自分より優秀だった従兄弟の母親に劣等感を感じていた母親は家族の中でも特に従兄弟に対して当たりがキツかったらしいが同時にそれがストレスの捌け口でもあったらしく、理想通りに行かず出来の悪い浅岡と万年無職の夫に当たり散らした。それ以降の家族の仲はぎすぎすしているらしく、浅岡はせっかく入った私立の大学を中退し、家でゲームに明け暮れているらしい。今回の同窓会に出席したのだって会場の周辺あたりでしか配信されてないモンスターのデータ欲しさにだって聞いた。着ている服も最早どうでもいいのか上下ジャージである。こいつ、老け込んだよなあ。
なんて思ってたら聞き覚えのある声がした。
誰だ?と思って声の方向をみると永近がいた。
永近英良、クラスのムードメーカーで取っ付きにくかった浅岡の従兄弟といつも一緒にいたやつだ。
「おう、久しぶりだな。カネキの奴はもうちょっとしたら着くってよ」
カネキ?ああ、浅岡の従兄弟か!にしてもこいつはまったく変わってない。良い意味でな。
「カネキの奴はめちゃくちゃ変わったぜ、今仕事でバタバタしてるけどまあそれはみんなが埋め合わせしてくれてるだろうし」
そうやって話していると会場の入り口から凄い悲鳴が上がった、黄色いやつな。
一体なんだと思ったらそこには白髪の男が立ってた。整った顔立ちと白めな肌と白髪でやや儚げだが動作がしっかりしていて一筋縄ではいかない雰囲気を纏っている。
「おーい、カネキー」
永近の声に反応してやってくる。
え、あいつ浅岡の従兄弟なの!?もっとモサッとしてるっていうかオドオドしてる雰囲気の奴じゃなかったか?
「久しぶりだな、元気にしてたか?」
「うん、今は丸手さんたちが本部で書類と戦ってる」
「うーん、俺一回差し入れ持ってったほうがいいかなー……あ!そういえばアヤセちゃんとかは?」
「アヤセちゃんなら近くの公園にいるよ。ハイセが離れないからとりあえず散歩に行くって」
「相変わらず母ちゃんにベッタリだなあいつ。」
え、アヤセって誰だ?ハイセ?話についていけねーんだけど。
「そういや今日はこっちに泊まってくのか?」
「うん、一泊だけ」
「……まあハイセがいるんじゃ二人目作るどころじゃねえもんな~」
「そんなんじゃない、今日は家族旅行みたいなものだから!」
「はいはい。お熱いねえ」
え、まさか結婚してるのか?カネキって
「ん、そうだぜ?ちなみにハイセって子どももいる。たしか今年三つ」
「やりたい放題だけどね……」
「そのうえアヤセちゃんにベッタリだよな」
いいなカネキ、結婚してて子どもまでいるとか。勝ち組ってやつか……なんて思ってたら浅岡がこっちを、正確にいうとカネキの奴を凝視してた。まあそうだよな。こいつすげえ変わったもん。
「アヤセちゃんとハイセがいるってことは二次会でないのか?」
「うん、あんまり遅くなると心配だから」
「アヤセちゃん美人だもんなー」
え、奥さん美人なのか!?なんかすげえ気になってきた。
と思ってたけどもう時間だった。あーあ、見てみたかったな奥さん。いや、狙ってるとかじゃなくて純粋にこのかさついた心に潤いが欲しかった。
と思ったらまた会場がざわついた。なんだ?もう二次会に流れる時間なんだけど。とそっちを見ると小さな子どもがこっちに向かって走ってきて勢いよくカネキの足に飛び付いた。
「わ!?」
「パパー!!」
ぱぱ?
するとすぐに髪の長い女性がやってきた。
「ハイセ!」
え、ハイセってこの子のこと?じゃあカネキの子ども?
「ダメでしょ、まだパパの用事終わってないのに勝手に入ったら」
「でもパパの匂いしたからー」
「ハイセ?」
「……ごめんなさい」
「はい、よくできました」
ハイセが大人しくなったのを確認した女性はやっとカネキに視線を向けた。……美人だ。その一言で片付けたくないくらい綺麗な人だった。長い艶やかな黒髪、陶器みたいな白くて綺麗な肌、大きな目に形のいい鼻、色っぽい唇、モデルみたいにスラッとしてるのに大きい胸が更にその細さを強調している。芸能人でもここまで綺麗な人はそうそういない。男女問わず、二次元以外に興味のなさそうな浅岡さえ俺と同じようにみんな彼女に見とれていたようだった。
「ごめんねケン、ハイセがいきなり走っていったもんだから」
「いいよ大丈夫、もうそろそろ終わるところだったから」
「アヤセちゃん久しぶり」
「!久しぶりね永近」
「ヒ、デ!」
「おう、ハイセも久しぶりだなー。いい子にしてたか?」
「してた!」
もしかしてこのもの凄い美人が……
「おお、カネキの奥さんだぜ」
ま、本気で!?すると彼女は俺の方を見て微笑んだ。う、うわー俺今美人に微笑まれてる!!
「はじめまして金木絢世です。お話を遮ってしまってすみません」
もう俺、死んでもいいかもしれない……
もうそのあとの記憶は曖昧だった。それくらいインパクトの強い出会いだった。いいなカネキ。あんな美人で礼儀正しい人とどこ知り合ったんだろう。冴えないあいつがあそこまで変わってあんな美人と結婚できる。そんな夢みたいな人生ってどんななんだろう……きっと俺には想像できないようなものなんだろう。
あー、彼女ほしい。
会場から仲良く出ていく家族を俺はそんなふうに思いながらみていた。
ねえ、ケン。今幸せ?
うん、凄く幸せ。
そっか、よかった。
アヤセちゃん
?
僕を愛してくれてありがとう――――――愛してるよ昔も今も
うん。私もケンに愛されて、愛して凄く幸せ
大好きよ、ケン
~happyend~
いくら厄介払いしたいって言っても大学に行くような大金を浅岡家が出すかな?と思ったので奨学金ってことにしました。浅岡家の方に関してはほぼオリジナルです。