原作持ってないこともあってオリジナルな部分あります。
モヤシに忠告して以来、私はやつに一度も会っていない。理由は簡単。私が十一区のアジトから出ていないからである。あの後、リゼの行方が分からないことにしびれを切らしたタタラがせっついてきて、もう外へ出れるほどの余裕がなくなった。忙しい合間に外へ出るたび出くわすアイツとの会話は私自身が意識していなかっただけで、結構息抜きになっていたらしい。その清涼剤さえない今日この頃は、すこぶる機嫌が悪かった。
資料や他の喰種の匂いを虱潰しに探ってて、あることに気付く。そういえば、私は写真を見て身体的特徴は分かっても、リゼ本人と直接会ったことがないから、匂いや足音とかの癖は分からないんだった。東京は広くて人も多いので、これではかなり非効率的である。せめて、リゼと一度でも接触したことのあるやつがいると……いや待てよ。いるぞ、うってつけの奴が。
「万丈」
「な、なんだ?」
「あんた、たしかリゼと会ったことあるって言ってたよな?」
「あ、ああ、そうだけどそれがどうしたんだ?」
「……決めた。あんた、二十区にリゼ探しに行ってこい」
「お、俺がか?!」
「バーカ、他にだれがいんだよ。たぶんこの中じゃ一番付き合い長かったんだろ。だったらリゼの匂いとかも知ってるはずだし。ほら、やっぱ適任じゃねーか」
「けど、俺がリゼさんに敵うはずねーし、あの人の性格からして素直に来てくれなさそうだし……」
「うちのアジトに連れてくるだけであって、殺すとか寸前までバッキバキにするわけじゃねーんだ……行ってこい」
そのまま万丈を見送って少ししたくらいに呼び出しがかかった。そこに待っていたのはヤモリとニコだった。
「タタラは?」
「彼なら君と入れ違いで出て行ったよ」
「で、用件は?今私らはリゼ探しで忙しいんだけど」
「んもぉ、せっかちね。せっかくの可愛い顔が台無しよ?アヤセちゃん♪」
「うっさい、余計なお世話だ。それで、用件とっとと言え」
「本当に君は融通が利かないね……実はリゼが姿を消す前に懇意にしてた店があったみたいでね。今もそこに身を隠してる可能性があるから、今から行こうと思うんだけど。どう?」
「どうも何も初めから拒否権なんてねえんだろ。で、その店ってのはどこ?」
「二十区の「あんていく」っていう喫茶店」
その名前を聞いたとき、後悔した。
*****
店に着くと窓を割って中に入る。
そこにはモヤシと万丈がいた。
「万丈……あんた何してんの?」
「あ、アヤセ!?なんでここに……」
「なんでって、リゼを探してに決まってるだろ。あんたが出てった後に、リゼがここに匿われてるってタレコミがあったんだよ。あんたこそ、そこのモヤシと話してないでリゼ探しな」
「っ……」
モヤシと目が合ったけど、すぐに目を逸らした。たく、なんだってこんな日にシフト入ってんだよこいつ。そんなふうに思っていると、一番会いたくないやつが出てきて目が合った。
「アヤセ……あんた今まで一体どこ行って」
「久しぶり、姉貴……今回の目的はリゼであってあんたじゃない。それとも何?リゼの居場所教えてくれんの?」
「っ、たとえ匿ってたとしても誰が教えるかよ、このバカ妹が!!」
「あっそ、ならいいや。じゃあもうあんたは邪魔なだけだ」
飛び掛かってきた姉を受け流して、かなり強めに膝をめり込ませてからそのまま蹴飛ばした。口から血を吐き出している上、痛みと衝撃でその場から動けなくなっている姉を一瞥し、胸ぐらを掴み上げる。
「もう一度聞く、リゼはどこだ」
「しる、かよ……」
強情な姉にため息を吐き、諦めて手を離す。あんまりしたくないけど、これは家捜しするしかないんじゃ……
「おいヤモリこっちはハズレだ、もう行くぞ」
「ハズレ?ハズレなんかじゃない、大当たりだ!リゼのやつはここにいる!!」
「はあ?おまえ何言って……っ!!」
ヤモリのやつがいたぶっていたのは、モヤシだった。
「はははは!この匂い、この再生力!リゼそのものだぁ!!」
もう制服は血塗れで、動けなくなるほど痛め付けられているというのに、ヤモリはまだモヤシをいたぶり続けている。……やっぱり、こいつのこういう悪癖は目に余る。
私はモヤシに振り上げられる拳を止めた。
「ああ?!今いいとこなんだから邪魔するな、アヤセェ!!」
「もう十分やったろ。それに私たちは連れてくるように言われただけで、壊せっては言われてない……それ以上やったら、今度は私が相手になるぞ」
「アヤセちゃんの言う通りよ、ヤモリ。今ここで壊したら後で遊べなくなるわ。ここは一旦退くべきよ」
「そっかぁ……二人とも止めてくれてありがとう。もう少しで壊すところだったよ」
ヤモリが引いたところでモヤシの傷を見る。もうほとんど治り始めているが、痛々しいほどの出血の跡に顔を歪めた。
「……もうここに用はない、行くぞ」
モヤシの身柄を確保すると店を後にした。