朝、三葉は目が覚めて飛び起きた。
「早く戻って! ……ここは……」
見飽きた体育館の避難所だった。
「私は……」
おっぱいを触ると、おっぱいがあるし、股間を触ると男根がない。
「私に戻ってる……戻ってる? ………あれ、何だっけ? ………なにか、夢を見ていたような……」
三葉は手錠をかけられた痕を痛がるような動作で手首を撫でながら考えるけれど、思い出せない。
「夢? ……なにか、すごい悪夢だったような……記憶が……もう……」
どんどん記憶が消えていき、思い出せなくなってくる。悪夢だったような、いいことをしたような、慌てて戻らなければいけなかったような、そんな感情だけが残っている。とりあえず、妹に訊いてみることにした。
「四葉、おはよう。夕べ、私、何か言ってた? 寝言とか」
隣のダンボール製ベッドで毛布にくるまっている妹に声をかけたけれど、返事してくれない。
「四葉、まだ寝てるの? めずらしいね」
「…………」
四葉は毛布にくるまって丸くなった。
「具合でも悪いの?」
「…………今日は学校……休むから……気にしないで……」
「そう。早く元気になってね」
しっかり者の妹なので体調不良で自重するのだろうと思い、配給された朝食を摂って登校したけれど、教室の雰囲気がおかしかった。
「おはよう」
三葉が挨拶しても誰も返事してくれない。探しても早耶香もいないし、克彦も登校してこない。授業が始まり、ユキちゃん先生がプリントを配りながら三葉の顔を見てくる。
「…………」
「先生? 私の顔に何かついてます?」
「………」
救いようのない悪人を見るような目をして三葉を見下ろすと、何も言わずに授業を進めていく。
「……なにか……変……なに、この空気……」
教室に漂う空気が理解できず、三葉は教科書を開く気にもなれず、なんとなくスマフォをいじった。
「っ……なに……これ……」
スマフォには合成写真かと思うような自分の姿が写っていた。
「……………なんなの……これ………これ合成?」
授業中に自慰をしている写真を見ると、鳥肌が立って寒気がした。写真に写っている三葉は気持ちよさそうに、おっぱいを揉み、股間に手を入れて、ヨダレを垂らして喘ぎながらもカメラ目線で微笑んでいる。
「………こんなの……私じゃない……違う……」
自分でない自分の姿を見て否定するけれど、たしかに三葉の姿だったし、背景は教室で合成とは思えない写りだった。
「っ?!」
震える指で次の画像を表示すると、三葉が教卓に立って自分でスカートをあげ下着を着けたまま放尿している写真が出てきた。
「……うそ………ウソだよ……こんなの……ハァ……ハァ……ぅぅ…気持ち悪い……」
胸がムカムカとして吐き気がする。知らない間に自分の身体が勝手に動かされて痴女として振る舞っていた画像を見ていると、自分の身体なのに穢れた汚物のような気がして嫌悪感が胸いっぱいに拡がり、気が狂いそうになってくる。
「…ぅぅ……違う………絶対、違う……これ、私じゃない……」
教卓の上で複数の男子と交わり、男根を咥え、ピースまでしてカメラ目線で写っていたり、いつか大切に想い合える人と結ばれようと思っていた処女がクラス内の不良に奪われていたり、あまつさえ肛門にまで男根を受け入れていたりする写真を見たくないのに、見ずにいられない。頭がグラグラと揺さぶられ、足元から地の底に落ちていくような絶望を覚えながら、三葉は画像を確かめていく。
「っ…サヤチンまで……」
自分だけでなく早耶香の痴態まであった。けれど、それは喜々として写っていた三葉と違い、顔を殴られ、泣きながら強姦されている写真や股間をカミソリで剃られ、抵抗したために血だらけになってしまった写真だった。しかも、送信された写真のようでメッセージがついている。
「お望み通り、名取を犯してやったぜ」
「…そ…そんなこと望んでない……これは、何かの間違い…」
とうとう妹の無惨な姿も見てしまう。まだ小学生の四葉が裸にされ、三葉の手で悪戯されている写真が何枚も出てくる。三葉の手が妹の処女を犯したり、女性器と女性器を合わせている写真が続き、最後に自撮りで二人顔を並べて写っている写真は屋外なのに四葉も三葉も全裸で、四葉の顔は無気力にうなだれ、三葉の顔は喜々として下劣に笑っていた。
「うっ!」
あまりの気持ち悪さに吐き気が強くこみ上げてくる。自分の身体が肥だめに漬けられたように汚辱したものに感じられ、皮膚の内側にウジ虫が這っているような、大切な膣や子宮にヘドロを塗り入れられ、身体が腐っていくような感覚がして、三葉は嘔吐する。
「うっ、うえっ! うおぇええっ!」
ボタボタ…
机の上に嘔吐物が拡がる。自衛隊とボランティアが配給してくれたオニギリと味噌汁、漬け物が胃液と唾液で消化されつつあったのに、机の上に拡がって匂いを立ち上らせる。
「ううぇ……ハァ…ハァ…一体、何なの?! どうなってるの?!」
三葉は半狂乱で隣席の男子に問う。
「これ、私じゃないよね?! 昨日の私、こんなことしてないよね?!」
見られたくない写真のはずなのに、訊かずにはいられずスマフォを見せて問うと、男子は否定も肯定もしてくれない。
「……うそ……だよね……ねぇ?! みんな、私に昨日、何かしたの?! 私、昨日なにしてたの?! 私じゃない……こんなの……私じゃ……ない……はず…」
そう言いながら、心配になって身体に触れ、そして自覚のない変化に気づいた。陰毛がない。股間が少しチクチクとする。手で触れるとザラっとした剃った翌日の腋のような感触がした。
「いや……いや………違う……私じゃない……私じゃないの!!! 違うの!!」
「静かにしなさい!!」
ユキちゃん先生が冷たい声で叱ってくる。
「せ、先生! た、助けて! わけがわからないの!!」
「………。また、わけのわからないことを言って………。授業を妨害するなら、出て行きなさい!! あなたは頭がおかしいわ!! 病院に行った方がいい!!」
昨日、三葉の唇が言い立てた濡れ衣のおかげでスマフォと職場のパソコンだけでなく私室まで校長と教頭に調べられたユキちゃん先生は、もう二度と、この生徒に関わりたくないという気持ちで怒鳴っていた。結局、疑惑を証明するような写真は見つからなかったけれど、無いものを無いと証明しきれない悪魔の証明のために、いまだ同僚たちから疑われている。まったくの心外だった。
「…そ……そんな……私じゃない…、私、じゃ……」
すがろうとした教師に怒鳴られて、フラフラと三葉は教室を出て彷徨う。
「お、いたいた。宮水の姐御、ちゃんと名取を犯しておいたぜ」
「え……?」
三葉は不良たちのリーダーに声をかけられて意味がわからない。小さな町なので顔は知っているけれど、生きる方向性の違いから、もう小学校の子供会キャンプで、いっしょにカレーを作ったとき以来、会話したことのない相手なのに、親しげに姐御とまで呼ばれて三年生のはずなのに意味不明すぎて返事ができない。
「お礼の方、頼むぜ」
「え……? お礼って……何のこと?」
「またまた、そんなトボけて。女ってのは気が変わるのが早いっていうけどよ、これだけは頼むぜ」
そう言ってリーダーが三葉の手首を捕まえてくるし、他の不良たちが三葉を取り囲んでくる。取り囲まれたまま、三葉は男子トイレに連れ込まれた。怖いのと意味不明なために抵抗することもできず和式の個室に押し込まれる。狭い個室内にリーダーと他に2名、そして個室の外にも5人以上が集まってきている。逃げようのない場所に追いつめられ、取り囲んでいる男子たちが全員勃起していて、三葉の身体を好色な目で見てくると、何をされるか、わかりたくなくてもわかってしまう。しかも、スマフォにあった早耶香の写真が脳裏にフラッシュバックしてくる。きっと抵抗すれば殴られて血だらけになる、そう思うと、あまりの恐怖に三葉は悲鳴をあげることもできなくて膝が震え、おしっこを漏らしてしまう。
じょわぁぁぁ…
勢いのない小便がショーツを濡らし、内腿を流れて匂った。
「おお、いきなり聖水サービスか」
「うまそうだな」
内腿を触られ、胸を揉まれ、強引にキスをされた。
「ううっ?!」
キスされながら別の男子にショーツを脱がされていくと、三葉は自分に起こっていることを否定する気持ちで頭の中を満たし、何をされているのか、感じたくなかったし、記憶したくなかった。スマフォにあった写真のように何本も男根が迫ってきて、三葉の身体を犯してくる。射精され、身体を穢され、膣も肛門も痛くて涙が流れて止まらない。いつの間にか裸にされ、何人目の男なのか、もうわからない射精をされていると、個室の外で金銭のやり取りをしている声が聞こえてくる。
「一万円な」
「撮影は?」
「1ショット千円だ」
三葉の身体が売られていた。買っている男子にはクラスメートまでいて昨日の再現のように口へ男根を押し込んでくる。二時間近く20人以上の相手をさせられて、ようやく新規の客が途切れると、店じまいになった。
「夕方までに、また集めておくからよ。一週間、頼むぜ」
「………」
三葉はトイレの床に座り込み、ぼんやりと天井を見ていた。全身精液まみれで、もう汚されきったので、トイレの床にお尻を直接着けて座っていても、もうどうでもいい。制服とショーツも盗られたのか、売られたのか、無くなっている。三葉に残されたのは上靴と靴下、スマフォ、髪をまとめている紐だけだった。裸では、ここから出ることもできないし、このまま夕方まで次の客が集まるまで待機させられるのだと、なんとなくわかる。
「……一週間……」
これが一週間も続くと言われた気がする、三葉は髪をまとめていた紐を外した。
「………もう無理……」
紐を首に巻きつけて堅く結ぶと、立ち上がって紐の端を個室ドアのフックにも結びつける。
「………」
結び終わると、三葉は脚の力を抜いた。
ぐぐっ…
三葉の体重が首にかかり、息が苦しくなって脳への血流も減る。この方法でも自殺できると、何かで知っていた気がする。本当に死ぬ気があるのなら、最後の最後で自分の脚で立ったりせず、ちゃんと力を抜いていれば最後には立つこともできなくて、この高さでも死ねると、三葉は苦しくて紐を持ちそうになる手を腰に回して握った。
「………」
三葉の顔が鬱血して真っ赤になり、唇の端から泡の混じったヨダレが垂れていく。
プリプリ…
肛門から大便と精液が漏れた。腰の後ろで握り合わせていた手からも力が抜けて垂れさがる。
カクン…
もう両脚からも完全に力が抜け、全体重が三葉の首にかかる。
メキッ…
体重を支えるには華奢な首の骨が折れて、指一本動かせなくなり、三葉は意識を失った。
ギシギシ…
丈夫な組紐が三葉を絞首し、意識も無く、手足からも力が抜け、わずかな尿が垂れ流され、膣からは精液も滴り落ちていった。
ブチッ! べしっ…
三葉の全体重に耐えきれず組紐が切れ、三葉は無防備に顔面からトイレの床に倒れたけれど、意識は戻ることなく、自分の大便と何百万という精子たちにキスをしたまま動かなくなった。