出る前にバイクをMagバッテリー稼働へと変えて貰い、桐条バイクの改造は完了した。これでMagが存在する限りは無限起動するモンスターマシンの完成、そもそもペルソナやシャドウ技術から生み出されたスーパーバイクである為、性能自体はいいのだ。悪魔を格下相手だったら轢き殺せるぐらいには。
ナカノからシンジュクを繋ぐ道路を一直線に走って行く。道路は崩壊してひびが入っていたり、ビルが倒れていたりして時折道を変えなくてはならない。無論、悪魔も存在している。だがレベルの上がったアンがタンデムから魔法を使って迎撃する。その為、こちらのレベル以下の悪魔に対して困る事もなく、シンジュクへの道を進んでいる。出現する悪魔は未だにゾンビやガキといったアンデッド系統の悪魔が多い。やはり、世界の消滅で大量に死人が生まれた影響が少なからずあるらしい。
そんな中、
『サマナー、良いだろうか』
「どうしたクールマ」
運転中、DDS内部からクールマが話しかけて来た。魚から亀になった仲魔の発言に耳を傾けつつ、バイクを運転する。Magバッテリーで動くようになったことで、バイク自体へのダメージ以外特に気にする事無く運転できるのは良い事だ。しかも、無免許でも捕まらない世の中なのだ、悪くはない。
『いや、サマナーも神聖四文字に対する態度を決めあぐねている様に感じているからね。僕も元をただせば
まぁ、クールマの正体に関しては神話を調べれば一瞬で解るので、本体とは何なのかは理解している。それはともかく、四文字の事を知っているのは意外だったが。
『そうかな? まぁ、予め言っておくなら神聖四文字のあのキャラと姿は
「あのクソ雑魚食材鳩が」
『うん』
食材鳩である事が否定されない唯一無二の主神。それはそれとして、
「なんで?」
『そもそも四文字は本来召喚が不可能な悪魔なんだよ。そんな彼が召喚されるのは彼自身がそう望むか、そういうシステムが地上全体を通して出来上がるか、の場合のみなんだよ。そして今の地上に四文字を此方側から呼び出すシステムはない。つまりアレは自分で望んで降りて来たんだよ、この世界に。それもあの弱さでね』
ならばこそ、質問は何故、という事に帰結する。
『君がそれを求めたからだよ』
「……は? と、ととと!」
思わずハンドルがブレそうになった。それを握りなおしながらは? と言葉をクールマに返す。だけどクールマは遠慮も躊躇もせずに言葉を放った。
『君は自分の弱さと才能のなさ、そして心の弱さを嘆いた。そして君は必要な人間で、助けを求めている。その声に四文字は応えた。愛の象徴である鳩の姿。信仰というものを力にするから永遠にレベルが上がる事のない弱者のままで。そして君を笑わせ、鬱を吹き飛ばす快活さと面白さを備えて』
「あれが全部演技……なのか?」
『違うさ。人間、誰しもペルソナを被っている様に、そういう慈愛と笑いで満ちた、そういう
「……おう、ありがとうな」
『君に力を貸す者すべてがそうであるように、僕も君の仲魔で味方だからね。出来るだけ力にはなるさ。それだけでは君の為にはならないから多少厳しくさせてもらう部分もあるけどね』
そう言葉を残してクールマからの言葉が途絶える。本当に、厳しい仲魔だと苦笑する。そして情けない奴だなぁ、俺は、と思う。そうすると後ろから体に抱き着く感触がもっと強く、そして近くなった。体に抱き着くアンの感触を何時もよりも強く感じている。それを受けながら、小さく笑い声を零した。
「解っているよ、アン。折れないよ俺は。もう既に一回折れているんだ。どれだけ絶望、失望しても、これ以上折れる事はないさ」
痛いほどにアンを感じながらも、断言できる。
折れた心は折れないのだ、と。ただ―――狭心症が、苦しい。
やがてバイクを走らせ続けていると、ちょくちょく一般人と、悪魔に襲われる人間の姿を目撃する。流石にこれを完全に見過ごすのも寝覚めが悪いので、見かけた以上は軽くL&Oで銃殺し、始末している。出現するのはレベルが少し高くなったゾンビとガキばかりだが、その中にも新しい悪魔を見つける様になってきた。ゾンビとガキはレベルが大体10前後になる様に強化されていた。恐らくは概念的なレベルキャップが外された影響だろう、とは自前の知識で理解できた。
問題はそれに対処できる人間が少なすぎる、という事だった。その為、通りすがりのバイクガンマンという形でL&Oで射殺しながらシンジュクへと向かうハメになった。本来であれば街道を一本道すれば良いだけの道のりも、悪魔討伐を絡めながら進んで行くと面倒に時間を食われる。
ポルターガイスト、グール、モウリョウ等の外道・幽鬼系統悪魔が大量に出現する。L&Oの弾丸を鳩の聖水で祝福した弾丸を装填して射撃している為、戦闘はほとんど一瞬で終了する。レベルもそこそこ高くなってきた悪魔でもある為、経験値的には美味しい獲物でもあった。
こういうダーク悪魔は基本的に破魔系統に弱い。
問題は
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」
「おう、それじゃあな」
「えっ、いや、待ってくださ―――」
悪魔を殺し、襲われていた人間を助けた。ここまでは良い。ここまでは良く見るお話しだ。ヒーローが颯爽と助けに来て、めでたし、めでたし……にはならない。
「待ってくれ! あんな化け物が出て来たら!」
「見捨てるのか!」
「なんで助けたんだ!」
「その力をなんで!」
助けた人間が最初に向けてくるのは感謝の言葉だった。そしてその次は
金を出して報酬をくれるなら最後までやるかもしれない。
だけど
最初に見捨てた友達や家族の価値はどこに行くのだろうか。こんな有象無象が、もっと大事だとは思いたくない。そう、
それでも同じことを吐く奴は舌を引き抜く。
これはルールだった。自分で自分に課した制限。だからこそ守らなくてはならない。どれだけ心臓が苦しくなろうとも、同じ態度を一貫して、人を助けて、そしてその後を見捨てる。助かって、この先も助けられたと思う人間の傲慢さと、それをあっさりとやる俺の傲慢さ。
俺も、有象無象もどうしようもなく救いがない。
シンジュクへのツーリングは苦しいだけだった。だがそのツーリングもいよいよ道路標識にシンジュクまでの距離が出てくる所で終わりが見えてくる。そしてその終わりの果て、シンジュクへと入れる道の一つ、
そこにはバリケードを構築しつつ応戦する姿と、バリケードにぶつかる悪魔の姿が見えた。バリケードの向こう側には警官の姿が見える。制服に身を包みながら迷う事無く銃を撃ち、防衛に参加する使役悪魔の姿も見える。だがどれもレベルは8前後、襲撃している悪魔は15前後のスライム系悪魔、ブロブが混じっている。
このままでは押し負けるだろう。
迷う事無くバリケードの前へと向かって、バイクをドリフトさせるように滑り込ませ、近くに居たゾンビを跳ね飛ばしながらバイクの上から動かずL&Oを左右へと向けて引き抜いて弾丸を放った。祝福された弾丸が連続で放たれ、横に展開している悪魔を撃ち殺し、昇天させながらホイールが潰した悪魔を削り殺す。
「アン」
「任せ……て」
両脇の悪魔を射撃で始末している間にアンが背中を合わせるように寄り掛かり、息を吐いた。放たれた炎の吐息が一瞬で外道悪魔達を飲み込んで焼き払う。基本的にアンデッド系統が炎に弱い事もあって、一瞬で焼き払われ、耐性のある者を祝福の弾丸で射殺して行く。
空っぽになった弾倉をL&Oから外し、新しく祝福弾の入った弾倉を装填する。これが通常弾であれば、無限弾数なので一切リロードする必要なんてないのだが。だが特殊弾を使用する場合はこうやってリロードする必要が出てくるのがやや面倒だ。
その内、Magを利用した属性付与するアプリとか生まれてこないだろうか。
……スティーブンに依頼すればやってくれそうだ。
そんな事を考えていると、悪魔の射殺が完了する。出現していた悪魔も20少々、と数は多くても頭が悪い外道悪魔ばかりだ。これが天使だとか、もうちょい脳味噌のある悪魔だったらカジャ系やンダ系を集団で連打してくるのだろう。だけどこの集団にはそういう知識はなく、ただ突進してくるだけだった。連射して、範囲攻撃を叩き出せばそれだけで十分だった。L&Oをベルトに戻しながらバイクの上から視線をバリケードの向こう側へと向ける。
「無事か? というか助けに入って大丈夫だったか?」
「あぁ、助かった! 此方も悪魔の数がキャパを超えてて困っていたんだ」
バリケードの向こう側から答えて来たのは制服に身を包んだ警官の姿だった。その横には小さな悪魔が、ピクシーが浮遊している。初めて目撃する悪魔はなんというか、ティンカーベルの様な姿をしている。へぇ、これがピクシーか、と少しだけ感心しつつ、バイクをストレージの中へと送り込んで、バリケードを飛び越える。それを見ていた周囲がおお、と声を零す。
「君は……フリーのデビルバスターかな?」
「サマナーだよ、所属はなしの」
「ライセンスはあるか?」
「これでいいか?」
スティーブンが用意してくれた、偽造ライセンスをスマートフォンで表示させ、それを見た警官の男が失礼した、とアサルトライフルを下ろす。ちなみにサマナー活動にライセンスは必須ではない。だがライセンスを持っている方が様々なサービス等を受けられるらしく、話や仕事を受けやすいとの事でもある。そんじゃ、シンジュクへ向かうか、と思ったところで、
「此方から即金で200万円出せる。これで本部が雇ったバスターやサマナーの援軍が来るまで護衛を頼めないか?」
「……マッカ支払いか、或いはピクシーの魔晶があるならそれで手を打つよ」
「なら魔晶で支払おう、助力感謝する」
握手をして契約を完了させる。一方的ではない、双方に利益のある関係、これが一番健全だと思う。大いなる力には責任が問われる。
それは、タダの雑魚の理論だ。
「チェフェイ、クールマ出ろ。相手のレベルと耐性を考えればラク・ンダとマハグライバだけで封殺できる筈だ」
「慢心せず、油断せず、じゃろう?」
『新たな姿での初陣を見事に飾るとも!』
小型化したクールマをチェフェイの頭に乗せて、二匹がバリケードを飛び越えた。向こう側へと回りながら、迎撃態勢を敷いた。アンは流石に近くに置いておきたい……というか近くにいてくれた方が俺が安心する。そうやって即座に行動を開始すると、警官が敬礼してくる。
「助力、感謝します」
「いや、契約は守る人間なので。丁度魔晶を探していたところだし」
「いえ、それでも外道悪魔には普通の銃弾が通じ辛いですからね……どうしても属性弾や魔弾技術に頼り切りになるんですけど、魔力の回復と比べて悪魔の沸きが早くて……」
「魔弾?」
言葉を繰り返すとバリケードの向こう側からめきょ、と潰れる音が聞こえた。マハグライバによって悪魔がすり潰される音だ。重力属性の魔法は非常にレアで、ある意味万能属性よりもバリエーションが少ない。その為、耐性や弱点を保有する悪魔がほぼ存在しないのだ。その為、ほぼどんな相手だろうと安定したダメージを繰り出せる便利な魔法になる。ブースタによって威力の増強が入り、その上でチェフェイによる足止めと妨害があるのだから、同レベルの悪魔でこの布陣を超えるには相当苦労するだろう。少なくとも神経・精神耐性のある悪魔が出ているのだから、シバブーやマリンカリン、ドルミナーによる搦め手が通じないのは強みだ。
「魔弾とはデビルバスターやサマナー向けの射撃戦闘術ですよ。正式には《魔弾の射手》という人間向けの戦闘スキルなのですが。不動明王や愛染明王等の神仏の力をお借りし、それを弾丸に込めて放つスキルです。他にも《援弾の射手》という生体マグネタイトを弾丸に込め、射出する事で活性化させて仲魔や自分自身を強化するという技術もありますが、其方は中々扱いが難しく、自分たちはどうも魔弾の方が得意で……」
「ほうほう、成程成程。これは良い事を教えて貰ったな。そっち方面はあまり詳しくなくてな、俺」
「そうでしたか……」
少し首を傾げ、悩むような姿を見せるが、話をそこで切り上げる。あまり話し過ぎて無免許サマナーのボロが出るのも困るからだ。まぁ、こんな状況、進んで追及して藪を突くような事を連中がするとは思えない。
そんな事を考えながら、《エネミーソナー》を眺めつつしばらくの間、出現する外道悪魔を討伐し続けるだけの作業が続いた。
「お疲れ様でした。これが報酬のピクシーの魔晶です」
「ん、お疲れ様。確かに受け取った」
「現在シンジュクは野良悪魔に対する反撃拠点として急速に構築中です。地上はまだ悪魔が散逸しているので、基本的な都市機能は地下や建築物内がメインになっています。シンジュク駅内部が避難場所にもなっていますが、悪魔関係者も其方の方にいますので、用事があるのなら其方へ」
「あ、どうも」
そうやって軽く挨拶をした所で援軍のデビルバスターやサマナーと交代し、再びバイクを出してシンジュクへと侵入する。レベルが15前後である事を考えると、自分のレベルはどうやら、まだまだ珍しいものではないらしい。チェフェイやクールマをDDSへ戻し、バイクに乗ってシンジュクを進んで行く。
やはりというか、今までの道と比べれば多少数が減ってはいるものの、まだまだ、シンジュク内部にも悪魔の気配がソナーに映っている。
『どうやらまだヤタガラスの力が完全には蘇っていないようだね』
バイクに乗りながらシンジュク駅を目指していると、そんな通信がバーから入ってくる。スティーブンの声だけが届く通信の中で、ヤタガラス、という名前を呟く。
『ヤタガラスはこの国におけるもっとも大きな霊的国防組織だ。この国の表側に悪魔が出現できない様にクズノハと力を合わせて結界を張ったのがヤタガラスであり、同時に多くの超人や中位サマナーを従えて、日本の平和や表と裏の住み分けを行っている組織だよ。おそらく目に見える形での国防を担っている……メシアやガイアが大きな顔を出来ない理由の一つだね』
「あ、やっぱりそういうのがあるんだ」
『無論だとも。そうでなければ世界の表側に悪魔が出現するからね。……まぁ、中堅どころを抑えたのがヤタガラスに対して、本当に恐ろしいのはクズノハだがね』
「クズノハ」
『メギドラオンを前転で回避し、戦艦を刀で両断し、平均的なレベルが70を超えるのがクズノハという集団だ。おそらく日本最強であり、世界的にも有数の強者で構成される組織だよ』
「会いたくねぇ……」
平均70オーバーとは何事だろうか。というか、そういう連中がいても世界が滅んだという事は、世界終焉の原因とは何だったのだろうか? 地味にだがそれが気にならなくもない。とはいえ、世界の崩壊の原因を探るのは俺の仕事ではない。ピクシーの魔晶は手に入ったのだ、次はライジュウの魔晶と聖杯探しだ。
シンジュク駅の入り口を見つければ、此方もバリケードが構築されていた。バイクをストレージに戻して近づけば、入り口を見張る様に剣と銃を持ったデビルバスターの姿が見えた。駅入り口を守るデビルバスターは此方へと視線を向け、
「サマナーか! いや、戦える人間は今、大歓迎だ。さ、中に入ってくれ。安心してくれ、シンジュク駅は異界化されてないから」
「元から異界の様な形してるけどな」
その言葉にガードのデビルバスターが笑い声を零し、奥へと通してくれた。それに従い中に進む。
階段を下りてシンジュク地下、新宿の各所を繋ぐそのアホみたいに広い地下通路の入り口、その一つに降り立った。
その中は人で溢れかえっていた。新しく降りて来た、銃を装備した此方、として明らかにカタギではない紋様が彫られたアンを見て、視線が集中している。ただ遠巻きに見つめているだけで、此方に話しかけたり寄ってくるような気配はない。
……気持ちが悪い視線だった。嘗め回すような、期待するような、待望するような、そんな気持ちの悪い視線だった。
『うーむ、ビンビン欲望を感じるのぉ。この気持ち悪いほどに傲慢な気配、妾には美味しすぎるのぉ。ま、サマナーには気分の良い物じゃなかろうて。さっさと離れるのが良いと思うぞ』
「ま、それもそうだな」
こういう光景はナカノでは見かけなかっただけに、少しだけ……新鮮で、そして気持ち悪かった。地下通路内部には新しい看板が設置されており、スプレーで《サマナー・バスター此方へ》と矢印が置いてあった。どうやらこれに従って移動すれば良いみたいだった。さっさとこの場を離れる為にも、移動する。
どうやら向かう方はケイオウ線の方のシンジュク駅の様だった。
しかし、周辺を見ればどこもかしこも、絶望して無気力な人の表情ばかりだ。ナカノでもそういう人々は見ていたが、少なくともガイアとメシアによる炊き出しや訓練、娯楽が供給されていた。その為、こういう絶望的な表情を見せている人間はそこまで多くはなかった……或いは、そもそもそれだけ人間がいなかったのかもしれない。どちらにせよ、本当に世紀末であるのを自覚させるような景色だった。
『まぁ、正真正銘のカリ・ユガだからね、これぐらいの景色は珍しくないと思うよ、サマナー』
『今は東京23区だけじゃが、その内日本全土、そして世界全土がこういう景色になるんじゃろうな』
そして世は人と悪魔が混在する世界へ―――果たして、そうなった時、この星はどうなってしまうのだろうか? そもそも、ヤタガラスやクズノハが復活したところでこの世界を再生、或いは表と裏を分断するだけの力は残されているのだろうか? だって、レベル70オーバーの組織でさえ世界を守れなかったのだ。
どうすれば世界を守れるのだ。
「当然ながら電車は運行停止中、か」
ケイオウ線シンジュク駅に到着すると、思っていたよりも多くのデビルサマナーやデビルバスターの姿が見えた。その服装も本当に色々とごちゃごちゃという様子で、一切の統一感が見えない。レベルもバラバラ、上は30、下は4レベルとか存在している。本当に、サマナーやバスターを集められるだけ集めた、という感じがしていた。
しかし空気が先ほどのホームレス集団とは違い、ややピリピリしているのを感じる。どことなく、探ったり警戒したりしているのが解る。
「ん? よぉ、見た事ない顔だな……新入りか?」
どうしたもんか、と思っていると近くにいた白い大型の魔獣のサマナーが話しかけて来た。此方はどことなく余裕を保っているのを感じさせる雰囲気を持っていた。声を掛けられて、少しだけ肩から力を抜く。
「あ、どうもナカノの方から来たんだが……」
「ナカノって言うと一番最初に復活してた所か!」
その言葉に驚いた。まだ世界が再生を始めてから一日しか経過していないのに、良くそんな情報を持ってこれたな、と驚く。その言葉にうん? と男が首を傾げた。
「やっぱり見た事のないサマナーだと思ったが新入りだったか」
男は髭を掻きながらちょっとレクチャーしてやる、と言葉を吐く。
「サマナーやデビルバスターには専用の連絡網やウェブサイトがあってだな、普通の回線は死んでいても、サマナーやデビルバスター用の通信網は一時的に復旧させているんだよ。これには特殊なアプリが必要なんだが……スマホ、持ってるか? これ、持ってるやつから送って貰わない限りインストール出来ねぇんだよ」
「あ、おう」
スマートフォンを取り出して、アプリをコピーして送ってもらい、それをインストールする。追加されたアプリは《Summoner’s Community》、略して《SC》と呼べるアプリであり、起動すると某有名BBSみたいな掲示板サイトが開いた。
「使い方は解りやすいだろう? 今は崩壊後の情報収集中って事で色々とお祭り状態だ。ここでうろつくよりも先にそれを使って情報収集したほうがいいぜ」
「これは良いもんをどうもありがとうございます」
「あー、気にするな。敬語もいらねぇからさっきみたいにフランクに話しかけてくれ。この業界、死ぬのが早いからなるべく同業者には生きていてもらいたいだけなんだよ。特にこんな状況、俺達の様に戦える奴が長く生き残らなきゃすぐに崩壊しちまうからな、社会なんて」
もう一度感謝を告げてから、駅の端の方へと移動し、壁に背を向けて寄り掛かりながら《SC》を起動させ、スレを確認した。カオスなものから、色々と有益そうなものまで、色々とスレが並んでいるのが見える。
「《合体材料交渉スレ》……《情報集積スレ》、《目撃情報スレ》……お、この《マーケット宣伝スレ》ってのはいいな。というか検索で欲しいものをこっから探せばいいのか……」
『ん? このアプリ、僕達でもアクセスできそうだね。サマナーが僕たちを召喚していない間は、アプリの方で巡回や検索することが出来そうだね』
『丁度良い暇つぶしじゃな。どれ、暇つぶしに妾はAAスレでも始めるかの』
いきなり全く関係のない遊びを始めているチェフェイは大丈夫だろうか……? そんなことを考えながらも、マーケットに出品されている商品を検索し、確認して行く。その中にあっさりとライジュウの魔晶と、聖杯のレプリカを見つける。
なんというか……本当に簡単に見つかるなぁ、という感じだった。値段はどちらも現地に行かなきゃ確認できないが、どちらもケイオウ線のプラットホーム、1番と2番で売られているのが解った。
というか、こんな状況でも商売をしているのだから、商魂逞しい。
「というか電波塔とか間違いなく動いてないんだけど、電波とかどうなってんだろうな……」
スティーブンからの通信もそうだったが、一体どうやって連絡とか入れてるのか、地味に謎技術なので気になる。まぁ、それはともあれ、何時までもこんな辛気臭い場所に居たくはない。
さっさと用事を済ませてナカノに帰ろう。いや、シンジュクからスティーブンのバーへと繋げて入ればいいのだから、さっさと用事を終わらせてしまえば良い。
お小遣いはかなりあるので、少しぐらい、遊んでも問題はない。そう思いながら改札機の方へと向かった。
世界が再生すれば当然、人が増える。そして悪魔も増える。大地が増えればそれだけ物質が増える。そしてそれが増えれば当然、衝突する主義と主張が生まれる。今まではガイアとメシアが1街規模で全てを収容、隔離できるからこその平和だった。
だけど23区にも土地が増えれば人は収容しきれなくなる。まぁ、見えていたことだよね!
魔弾関連やフリマとかはネトゲのIMAGINEベース……我輩も元サマナーで強化しまくったアリスを使っていたんだけどなぁー……あの運営、プレイヤーに廃課金させるだけしてサービス終了したなぁ……。