※この作品はR-18です。

女神転生Genesis   作:てんぞー

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再生し始める世界 Ⅸ

「ほう! もう来たかね! 時間前に来るとは中々の日本人的社畜精神を持っているようだ。そこのスペースに大体の参加者が揃っている。面通しを行っておくとよい。それと、そこでは何やら怪しげな商人が怪しげな商品を売っている……マッカに余裕があるのであれば、戦いの前に消耗品を購入しておくのも良いだろう」

 

 朝、時間前に集合場所に集まればそんな事をあのモノクルの受付に言われた。非常に遺憾である。日本人として、或いは社会人として時間前行動は非常に重要なのだと思うのだが。まぁ、それはともかく、ダンテがホーリー・ゴッド・ヌンチャクで遊んでいる間に逃亡し、こうやってシブヤ解放に向けた集合に来た。

 

 示されたスペースには既に30人を超えるサマナーやバスターの姿が見える。今回はまだスティーブンが《アナライズジャマー》を完成させていない為、無論、四文字は連れてきていない。まぁ、シブヤが終わる頃には完成させているだろう、との言葉を信じる事にする。実際、回復に特化した仲魔は鳩が使用不可能なら即座に準備したい所だったからだ。テトラカーン、マカラカーンを使える仲魔が一人いるだけでだいぶ状況は変わってくる。

 

 それがいない間は何とか道具や他の仲魔で乗り越える。それはそれとして、さっそく集団に接近し、軽く見渡す様にアナライズしつつ、責任者を探すと、防弾チョッキにゴーグル、そしてアサルトライフルを装備した25レベルの男が前に出て来た。その下に来ている服装は……テレビで見た、自衛官の服装の様に見える。

 

「や、君も作戦に参加してくれるサマナーかな? 私はハギオ軍曹だ。今回はシブヤ解放作戦に協力していただき、誠に感謝する」

 

「あ、どうも。俺が如月竜二で、こっちは仲魔のアン」

 

 最近、サマナーは舐められたら終わりだ、というのが解って来た。本当に尊敬する人間以外には特に敬語を向ける必要はないというのも少しだが解って来た。なんというか、サマナーやデビルバスターは力を持っている。だから下手に出ていると、舐められて利用されるというか、使いつぶされるというか、そういうケースがあるらしい。なのでもうちょいダンテを見習って、言葉遣いを最近、変える事を意識している部分はある。なので、まずはその一歩。

 

 もうちょい、自分に自信を持てるように。

 

「よろ……しく……」

 

 敬礼を取った自衛官? が手を前に出し、握手をしてくれる。それに応えながらも、少しだけ、あっさりとした対応にちょっと、困惑していた。なんというか、と、言葉を零しながら握手したまま、

 

「もうちょっと下に見られるとかそういうのがあるかと思ったんだけど」

 

「うん? あぁ、確かに若いと舐められる場合もあるね。だけど位階が上がってくるとそこらへん、デリケートな問題だし、見た目では性能とかを測れなくなってくるからねー……。ほら、あそこを見てごらん」

 

 ハギオ軍曹が集団の中で異彩を放つ姿をしている一人を指さした。モヒカンヘルム、褌、そして天使の翼を背中に装備している上で乳首にシールという恰好だった。正直、視界にすら入れたくないレベルの変態なのだが、

 

「モヒカンは物理高揚、褌は不屈の闘志に呪殺無効、翼は破魔吸収に自己継続回復効果、そして乳首シールは電撃無効化が」

 

「クッソ優秀なんですけど」

 

 見た目はどこからどう見ても不思議の国のキチガイというか、精神病院から脱走してきたの君? とか言いたくなる恰好をしている。ちなみに丸太を肩の上に担いでいるので、たぶんあれが武器らしい。

 

「うん……ほら、我々が装備する防具って概念基準じゃないか? だから見た目だけじゃどう足掻いても強さは測れないんだ。若返りの薬や加齢の薬、性転換の薬とか、そういうのは割と簡単に手に入る世の中だしね……」

 

 自分の月光館学園制服もスティーブンの手によって概念加工が施されている。そのおかげで斬撃と射撃と火炎に対する耐性を付与されている。概念によって姿には関係なく力を発揮するのが悪魔世界の装備品だ。とはいえ……流石にそんな薬があるのは初めて聞いた。

 

「えぇ……そんな薬があるのか……」

 

「うーん、その物言いはやっぱり業界の新人かな? 最近は急速にレベル上がる子もいるし……君もこの崩壊でレベルが上がったクチだろう? 少し組織や基本的な悪魔業界の話、しておこうかい? まだ時間があるし」

 

「頼みます」

 

 素直に聞く事にする。自分が悪魔の世界へと踏み入ってからまだそんなに時間が経過していない。ルールや常識に関してはほとんど知らないと言っても良いのだから。自分が知っているのは基本的な情報と戦う為の部分だけで、認識とかは全く知らない為、ありがたい申し出だった。それを受け、ハギオ軍曹は良し来た、と言った。

 

「知っての通り、悪魔関係の裏世界は死亡率が滅茶苦茶高い。踏み込んだ人間の内7割がレベル10になる前に死亡する程の死亡率の高さだ。まぁ、一番弱い悪魔を探したところで2か3レベルだからな。普通の人間でも1、アスリートレベルで鍛えていてもまだ1だ。軍人にでもならなきゃ2レベルに到達する事はないしな、だから普通に死ぬのが当たり前だ……これはいいよな?」

 

 その言葉に頷く。

 

「だから大体10レベルになる頃には大体見た目で判断せず、能力や気配で判断するってのが基本になってくる。ここに来るまでは普通の環境では3年ぐらいはかかる……まぁ、なんか知らないけど今の状況、どうにも異常にレベルが上がりやすくなっているらしく、数年に1回レベルが上がれば良い方だったんだけどね……この上がりが早いのと、上限が高いのを才(・)能(・)って風に呼んでいたりもした」

 

「それが今はない、と」

 

「うん。まるでそ(・)ん(・)な(・)ル(・)ー(・)ル(・)が(・)な(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)かの様にね。まぁ、世界が崩壊しているんだから何があっても不思議じゃないんだけど。だけどそんな事で基本的にレベルが20に届く人ってのは見た目で判断しない、まず最初にアナライズする、もしくはアナライズ以外に実力を測る手段を用意しているものだ」

 

 あぁ、そう言えばある程度の実力があれば潜在魔力かなんかで大体の実力が測れる、とは聞いていた気がする。

 

 そもそも見ただけで《アナライズ》が出来るのもスティーブンのアプリがあるおかげと、それを即座に確認できる片眼鏡型ARディスプレイがあるおかげだ。ただ、これを保有しているのは自分だけだ。他の人たちはもっと旧式のアナライズ方法を使用する必要がある。そう考えるとやはり、何か鍛えてるのだろう、調べる方法を。そう考えると……まぁ、常識なのだろうか? 普通に見られるのは。

 

「まぁ、この業界、必要以上に派閥とか主義とかあるからね。そこらへん、藪を突くと無駄に抗争とかに発展する可能性もあるから、必要以上に喧嘩を売ったりする事には慎重だったりするってのも事実だけどね……ラノベみたいな初心者歓迎! みたいなのはないよ……?」

 

「あ、そうなのか」

 

「うん。リアルはもっとハードだからね。なるべくミスや汚点になる様な事はしたくはない」

 

 そう言ってから二人で丸太を装備した褌モヒカンの乳首シールを見た。その視線を受けたモヒカンが背中の羽をパタパタして数センチ浮かび上がりながら見事なホバー移動で周りから避けられ始める。

 

「……まぁ、偶にフィクションを超えたフィクションに出会う事もあるけど……そういうわけだ。纏まりのない連中ばかりの世界だから無理に指揮をしようとはしないし、必要以上に詮索をすることもない。君も、基本的なノルマは与えるけど、それ以外は大体自由だと認識しておけばいいよ。この業界、そんなもんさ」

 

「はー……あ、どうもありがとうございました」

 

「いや、此方も良い清涼剤になったさ。それじゃ、お互いに生き残れる事を祈ろう」

 

 そう言ってハギオと別れた。その姿を見送りながら腕を組んだ。なんというか……この業界、

 

「……予想外にガチガチというか」

 

「ん」

 

 アンがコクコクと頷いた。

 

「悪魔との戦いは……命懸け、だから、油断……できないし、だから……遊びが……少ない?」

 

 アンのその言葉に頷いて同意する。まぁ、所詮はフィクションのお約束という奴だった、というわけだ。リアル規模になってくると、生きる為に全力を尽くすし、そもそも現代は法治国家なのだ。しかも教育のある。そして馬鹿は最初に死んでゆくのがこの崩壊世界の現実だ。だとしたらやっぱり、ある程度賢い奴しか生き残っていないのだろうと思う。それはそれとして、消耗品のチェックの為にも、怪しい店へと近づく。

 

 スペースの端の方に風呂敷の上に荷物を広げるのはアフロ姿にサングラスを装着した怪しい褐色の男だった。そのサングラスも形が星型で、アフロも虹色になっている。もう見た目からして怪しいのだが、露店に並んでいる一部の物は自分でもわかる。

 

「これ……反魂香……」

 

「オー、サマナーさん慧眼ネー。凄ーく良い物ヨー。今ならたったの10万マッカネー」

 

「クッソたっかい!!」

 

「Oh? でも命の値段ヨー。サマリカーム並みの回復力を道具で補えるのは重要ヨー」

 

 アンが横から覗き込み、反魂香が本物であるのを一瞬で看破し、マジか、と呟く。とはいえ10万マッカというのは5000万円の価値はあるという事だ。それだけの値段は流石に出せない―――というか持ってない。地返しの玉は常にストックしてあるんだけどなぁ、と呟く。

 

「Oh……でもサマナーさん反魂香は一個あるといいヨー。地返しの玉じゃ欠損40%が蘇生リミットネー。だけど反魂香ならサマリカーム同様欠損70%までなら蘇生圏内ヨー。頭が吹き飛んでも蘇生できるのが魅力ネー」

 

「あー……」

 

 頭が消し飛んでも蘇れるという言葉が実に魅力的だった。とはいえ、流石に10万マッカも持っていない。今の全財産合わせて3万マッカちょっとだ。これでも既に現代の価値で言えば1500万円だ。相当金銭感覚ぶっ壊れているレベルだなぁ、と苦笑しつつ、流石に購入するだけの金がないと伝える。

 

「オーゥ、それじゃあ仕方がないネー。じゃあこっちの惚れ薬はどうネー? そのまま飲ませるのもかけるのもオッケーヨー! マリンカリンと同じ効力をしっかりと発揮してくれるネー! 精神耐性の無い悪魔にも、手籠めにしたいあの子にも、或いは一般人を騙すには十分な品ヨー」

 

「おー……こんなもんまであるのか」

 

『表に出てくる幻想、ファンタジーグッズの大半は実在するものよ、サマナー』

 

 なんというか、本当にすごいな裏世界は、という感じだった。真面目にこんなものが存在するのかと驚き、同時にこんな道具が無くてもマリンカリンなどの魔法が使えれば、必要ないのだという事も理解させられた。並べられた道具を眺めつつ、

 

「この大半の道具は悪魔が居ればどうにでもなるんだな……」

 

「そうだネー。結局は悪魔のやっている事を人間の技術で再現している事だからネー。例えばこれヨー」

 

 アフロが二つの薬を持ち上げた。

 

「こっちは若返りで、こっちは加齢の薬ヨー。だけど基本的に高濃度のMagを浴びているサマナーやデビルバスターは老化そのものが遅いからアンチエイジング要らずの長生きヨー。そうじゃなくても高位の術に通じた悪魔であれば不老の法程度ちょちょいで出来ちゃうネー。だから適度に弱いサマナーや、偶然こういう世界を知った政治家とかが良く欲しがるネー」

 

「政治家?」

 

「若返りや人を操る力は何時の時代だって人気なんだヨー。……まぁ、そういう連中は即座に居なかった事にされるけどな……」

 

 アフロがぼそっと呟いた言葉に限りない業界の闇を感じた。ここら辺、あまり突かない方が良いなぁ、と思いながらアフロにお勧めの品を聞いてみる。

 

「うん? もちろん反魂香ヨー。だけど見た所そんな金はないけどそこそこ手持ちの仲魔が優秀そうなサマナーネー。となると小道具とかの方が欲しいんじゃないかナー? んン? まぁ、アフロ・エディにお任せよ」

 

「ファンキー」

 

「せやな」

 

 アンの発言に再び同意し、アフロ・エディが並べる商品に視線を向ける。何故だか解らないけど、このアフロマンとはどことなく長い付き合いになりそうな気がしてならないのだ……。それはそれとして、面白いものを並べ始めている。マーケットでは中々見なかったものが非常に多く、ちょっと興味が沸いてくる。

 

 先ほどの若返り、加齢薬とかも結構使い方を考えれば楽しい事が出来るだろう。人間に敵対した時に使ってみれば、これで一時的に相手を年齢デバフで追い込むことが出来るのではないのだろうか? とは思わなくもない。

 

「お、サマナーさん良い考えヨー。実際、そういう使い方もあるネー。弾丸加工して使うのが主流ヨー。強制老化は中々恐ろしいヨー。後は性転換薬から作った性転換弾とか、一部の悪魔の対策に重宝されるヨー」

 

「えっ、マジ?」

 

「マジだヨー。メイヴとかサキュバスとか、性別強制魅了がある相手に対して自分に打ち込んだり、味方に打ち込んで性別を変えて無理やり無効化する方法とかあるからネー。後は概念的に男女で識別されている装備などを無効化する為にとかネー」

 

「ひぇー……あ、どれもください」

 

「まいどネー。おまけで気つけ薬もつけておくネー」

 

「どうもどうも」

 

 3000マッカ程散財する。怪しい薬からちょっとした消耗品を補充し、それを全部ストレージに送り込む。この業界、まだまだ注意しなきゃいけない事が多いなぁ、と思っていると、強い気配を感じる。振り返れば、

 

 集合スペースに近づいてくる一団が見えた。自衛官とはまた違う、統一された制服にタクティカルベストを装着した集団に、おそらくは彼らが《ヤタガラス》なのだろうと判断する。その中で一人、より濃い気配を持つ、刀を装備した男を反射的にアナライズした。

 

転生者 イイダ Level41

 

 アナライズを終わらせて情報を目撃した瞬間、イイダの視線が此方へと一瞬だけ向けられたのを感じ、背筋に悪寒が走るのを感じた。ただやっぱり、一度レベル99とかいう人類の限界点に到達しているっぽい悪魔狩人を見ている為、それで怯える様な事はない。そう、

 

 どんな相手であろうと、大体ダンテよりはマシだ。

 

 あの腰にある刀だって引き抜いたら鳩が出てくる訳じゃない。

 

 そう考えるといろんな意味で怖くない。

 

「良し、時間となったため、これより作戦行動に移る! 移動用に大型テクニカルを数台自衛隊の方で用意してきた! 道中は我々ヤタガラスがエストマを使いつつ移動する! デビルバスターであれば今のうちにチームを組んでおけ! 超大型悪魔持ちのデビルサマナーは事前申請しておけ! それではこれより移動する、先導に従ってくれ!」

 

 超大型悪魔、そんなものもいるんだな、何て事を考える。

 

『そりゃあいるさ。僕の次の化身、ヴァラーハもある程度サイズ可変だけど、基本的に20メートルを超える巨大な猪だからね。僕が次の化身になれば、僕の背中に乗って長距離移動するという選択肢も出て来るよ』

 

「はぁ、すげぇなぁ……」

 

 根本的に常識を捨てなきゃならなそうだなぁ、なんてことを考えながらイケメンの話を聞いて、とりあえずは置いて行かれる前にヤタガラスの先導に従ってシンジュク駅の中を抜けて行く。ケイオウ線から、余り利用した事のないバスのロータリーへと出た。そこにはヤタガラスの用意した数台のテクニカルが設置されており、どんどんバスターやサマナーが荷台の方へと乗り込んで行く。淀みのない、迷いのない動きに置いて行かれない様に、軽く小走りで追いついて乗り込んだ。みんなはこういう事、慣れているのだろうか? そんな事を考えながら乗り込み、アンが横に座って並ぶ。

 

 先頭の方は何やら忙しそうで、真ん中のテクニカルを選んで乗り込んだ自分の周りは、様々な装備で身を包んだバスターやサマナーが同席しているのが見える。

 

 全体的に重苦しい雰囲気が周囲を支配している。ちょっと、辛い。これ、どうしたもんか。そんな事を考えていると、

 

「おう、お前」

 

 反対側から声がかかった。視線を反対側に座っている男へと向ければ、首にスカーフを巻いた、まるでガンマンの様な男がそこに座っていた。酒で潰れた声で此方に語り掛けてくる男は、

 

「お前、大丈夫か? レベル結構開きがあるけどよ。ぶっちゃけあぶねぇぜ」

 

 普通に心配された……。やっぱ、創作のテンプレ通りに物語は進まねぇんだなぁ、とどこか感心しつつ、大丈夫です、と言葉を贈った。

 

「仲魔が高位悪魔の劣化分霊なんで」

 

「あぁー……成程な。レベル以上に優秀なタイプを揃えている奴か。ならそのレベルでも十分か」

 

「と言ってもお前、油断するなよ? 悪魔連中も脳味噌がねぇって訳じゃねぇからな。殺す犯すって事ばかり考えている連中は単純だが、レベル30にもなれば戦術や奇襲とかを駆使してくる奴が出てくるからな。シブヤの規模を考えれば、間違いなくレベルの低い奴から狙ってくるからな」

 

 同じテクニカルに乗り込んだ別のバスターらしき男が言葉を付け加えてくる。それに合わせ、別のサマナーが口を開く。

 

「まぁ、乗り込んで来たって事はきっと自信があるって事なんだろうけどな、万が一があるかもしれねぇから、最初は俺達の後ろに居ろ。それでレベル差が5以内になったら戦闘に参加したらどうだ?」

 

「……それ、給料泥棒にならないの?」

 

「命の方が大切だし」

 

「この状況で戦える奴減る方が問題だし」

 

「戦える奴が育つだろ? 戦うだろう? 作業が分担できるだろ? 生存率が上がる」

 

「命を無駄にしている暇なんてねぇんだよ。特に戦える奴を無駄にするだけの余裕はねぇんだよ」

 

「なんか思ってた裏社会と全然違う……」

 

「飴、食うか?」

 

「もら……う」

 

 しかもアンは餌付けされてた。いや、確かに連中の言っている事は正しいのだ。だって協力しなきゃ死んでしまうというのは今のこの世の中での真理だ。特に重要なのは、戦えない無力な人々ではなく、戦える力を持った裏社会関係の人間だ。戦える人間が減れば減るほど、それだけ全体として押される。だからこの状況、確かに不安のある奴を少しだけ下げて、戦えるレベルまで上げてから戦闘に参加させるのが効率が良い。

 

「良いのかそれ……」

 

「ンダ系魔法は?」

 

「仲魔がマハンダ系を揃えてる。あと精神系もある」

 

「それを後ろから連打してりゃあ問題ねぇ。十分仕事している範囲だよ、そりゃ。バフデバフはマジで重要だからな、この世の中」

 

 横から肩を突かれてバンバンと叩かれる。意外と話して見ると性格の良い人ばかりだった。となると先ほどまでの緊張感は、お互いにどういう風か解らないから牽制、探りを入れていたのだろうか? なんとなくだが、会話をする為のダシに使われてしまったような気がするも、話せている方が遥かに命の為にもなるから問題ねぇな、と結論付ける。

 

「じゃあ、最初の方はちょっと世話になるって事で」

 

「おう、任せろ。ついでに現場まで暇だし、俺がちょっと武勇伝を語ってやろう」

 

「いやいやいや、そこはマテ。俺がサキュバスと1週間戦い続けた話をしよう。年頃の青年ならこの話が絶対に受けるから」

 

「馬鹿じゃねぇの。俺がインスマス村で盛大にドンパチした時の話を聞けよ」

 

 一度言葉が滑り出せば、段々とテクニカルの荷台がにぎやかになってくる。或いはもともと、そういう連中ばかりだったのかもしれない。盛り上がる様に、これから死地へと向かうのかもしれないという恐怖をかき消す様に、或いはそんなもの、最初から存在していないんだと主張するかのように馬鹿な話を広げ、それで笑い始める。

 

 おそらくはこのデビルサマナーやデビルバスターは、一般人以上に今、死亡率が高いのかもしれない。最大でレベル30の悪魔が出現する現在、それは単独で街を消し去る事が出来るというだけの実力を持っているのであり、それが集団で襲い掛かっていないから維持されているコミュニティなのだ。

 

 それを駆逐しなくては、未来がない。だから俺達はそこへと飛び込んで行かなくてはならない。そしてそれが絶対的な成功で終わる保証は―――ない。だから今笑っていても、この先死ぬ可能性がある。

 

 いや、だからこそ笑っているのかもしれない。

 

 特別なアプリにバックアップと仲魔に装備を抱えているのに、今は自分よりも周りにいる人たちのこの笑えるだけの強さが、自分よりも遥かに頼りに見えた。そう思いながらテクニカルはシンジュクを出て、進んで行く。

 

シブヤを奪還する為に。

 




 原稿が終わったので更新解禁。

 という訳で次回からシブヤだよ! 内ゲバ? 不和? ライバル意識? テンプレ的なガン飛ばし?

 世界の危機というか足引っ張って自分が死んだらどうすんだよ!! そんなの! やる余裕! ある訳ないだろ!! と、危機感MAXなサマナーバスター連合なので起きる筈もないのです……。

 一般人はともかく、命を懸け続けているこういう連中はたぶん、終末思想でもない限りは足を引っ張る事はしようとはしないと思う。
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