※この作品はR-18です。

女神転生Genesis   作:てんぞー

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再生し始める世界 Ⅹ

 流石国防組織というべきか、あの転生者以外にもレベルが30を超える者が複数存在した。そしてその手によりエストマが発動し、交代で魔力を節約しながら渋谷への道中を向かっていた。道路は所々破壊されているが、悪路を走破する様にチューンされているテクニカルはそんな事を気にせず悪魔を寄せ付けずに進んでいた。その道中で目撃される一般人の類を全て見捨ててシブヤへと向かう、という辺りも実に流石と表現すべきだったかもしれない。

 

 完全に何をするべきか、何を掬うべきか、どこから救うべきか。その取得選択に一切の迷いが存在していなかった。もしこれが自分であれば、悪魔を殺す程度の助けぐらいであれば入れていたであろうだけに、迷いのない行軍は正直、驚いていた。国防組織というのだから通りすがりの人がだれであっても助けるのかと思っていたが、そんな事はなかった。

 

 こんな時、状況だからこそ助ける相手を選別していた。良し悪しで判断するのではなく、その状況と場所で判断して救っている。シブヤの解放までシンジュクに一切戻る予定のないこの討伐チームでは、道中で人を拾っても邪魔にしかならないし、物資の消耗にも繋がる。それが許せないので完全に無視して進む。

 

 善悪を基準にせず、状況で判断する、ニュートラルらしい理論だった。そこにややもやもやが残るも、この世紀末で全ての人間を救える訳ではないというのはとても当たり前の事であった。人を無視する度に走る胸の痛みを無視しながら、アンに手を握って貰って乗り越えて行く。一つ一つ、自分が知らない世界に踏み込み、知っていたはずなのに知らなくなった世界を知り、少しずつ前進して行く。

 

 そうやって、シブヤへと向かっていた。

 

 道中が静かになるという事はなく、一度喋り出せばサマナーやバスター連中は普通にそのまま、喋り続けていた。マッカが使え、悪魔の力を借りられる彼らは食料や補給物資を悪魔の力を使う事で比較的に楽に調達できる為、喋って喉が乾いたら水を飲み、そして携帯食料を齧りつつ話し続ける。

 

 割と馬鹿な話ばかりを。

 

「んで、その悪魔はチョコレートが喰いたい! って言ってたのな? 交渉の基本ってまずは最初に欲しいモンを与えてから少しずつ威圧してイニシアチブを取る事だ。だからチョコレートをくれてやったんだ―――そうしたらどうなったと思う?」

 

「ニコポした?」

 

「いや、バーのチョコレートうめぇうめぇ言いながらそのまま昇天した。そいつはイヌガミだったからなぁ!!」

 

「はっはっはっは! 犬にチョコレートは死ねるからな!!」

 

「共通認識が生む伝承とかでも殺せるから妙な弱点とかあるよなぁ、悪魔って」

 

「俺もまさかチョコで殺せるとは思わなかったぜ」

 

 そんな馬鹿な話をして、荷台は盛り上がっていた。ぶっちゃけ、そこまで話せる内容が自分にはないので、大半は聞き役に徹していた。とはいえ、聞いている内容は失敗やら教訓に関する事が多く、割と聞いているだけで勉強になるのも事実だった。例えば今の話の様に、悪魔はデータとして表示される能力だけではない。《アナライズ》で発覚するのは基本的な能力、スキルや魔法、そして数値化された体力や魔力だ。これによって悪魔の能力を知る事が出来る。

 

 だがそれとは別に、悪魔は伝承やおとぎ話、概念から来る能力を保有している。クールマは化身としての権能を保有しているし、チェフェイは欲望に関する能力を保有している。魔法やスキルとは別に、属している伝承から来る個人個人の概念という物が存在し、その結果数値や習得している魔法スキル以外でも出来る事等が存在する。そして先ほどのイヌガミの唐突な死もそういう概念から来ているものだ。

 

 犬はチョコレートを食べると中毒症状を起こし、死亡する可能性を持っている。それで即死する訳ではないが、代謝機能の関係で犬はチョコレートを食べてはならないのだ。だがその細かい話を知らずに、大体の人間は犬(・)は(・)チ(・)ョ(・)コ(・)を(・)食(・)べ(・)た(・)ら(・)死(・)ぬ(・)という部分しか知らないだろう。

 

 それが犬という概念を持つ悪魔に対しても適応されている、という話だ。悪魔は情報、或いは概念の塊だ。だから概念に対して有効的な概念を使えば、非常に効率的に処理や運用をする事が出来るという話だった。

 

 そしてそういう概念に関する話が存在する為、面白い話が生まれてくるのだ。数値やデータを睨んでいるだけでは決して理解する事のない、悪魔個人と種族全体での能力や逸話に関する話だ。そういうのは聞いていてやはり、楽しかった。何より自分の仲魔を知るのに使える事でもあった。

 

 データだけが悪魔ではない。それはある意味、サマナーをする上では最重要な事でもあった。他のサマナーの話を聞けば、仲魔とコミュニケーションを取る為、信頼を勝ち取る為に色々とやっている様子だった。宴会とか、プレゼントとかをするのが割と良くある手口らしく、契約しても素直に従わない悪魔はそうやって懐柔して行くのが良くある事でもあるとか。

 

『宴会! 宴会!』

 

『イア、イア』

 

『素敵な響きじゃなぁ、宴会。無論、妾は何時でも貢物にオープンじゃぞ』

 

『あぁ、私は特にそういうのはいいわ。バアルにする事を目指してくれさえすれば。でもそうね、慰労の為に酒をふるまうのは悪くないわね。魂胆が見え透いていてもそういう催しで喜ばない悪魔はいないわ』

 

 約一体やっぱり発狂していない? とは思ったが、概ね好評だった。という事は今度、暇なときに仲魔を召喚した状態で宴会でもする事にする。片手を握るアンもそれなりに楽しみらしく、手をぎゅっと握りしめる。そしてそれを眺めている周りの連中がほっこりとした表情を浮かべている。

 

「守らねば……」

 

「高校の冬。進路相談。皆でクリスマス。屋上で食べるランチ」

 

「やめろ、やめろ……俺だけ夏休みの海に誘われなかった事を思い出させるのはやめろ……」

 

「あぁ、俺のマッカビーム特化ガキがCOMPの中で昇天してる……!」

 

「大丈夫かこの連中」

 

「たぶ……ん?」

 

 一応、全員自分よりもレベルが上だから心配する必要はないのだと思うが、それでも言動がここまでカオスだと不安になってくるものがある。タルタロスのあったあの世界では俺の方が自信満々だったのに、自分の世界へと戻ってくるとこんなもんかー、とは思わなくもなかった。まぁ、彼方の世界は強さの上限が感じられる範囲では狭かったし、滅びを前にしないから精神的な余裕があったのかもしれない。

 

 その余裕を此方でもどうにかして継続できないものか、とは常々思う。

 

 そんな事を頭の中で考えながらもテクニカルは進んで行き、やがてシブヤ圏内に入ってくる。

 

 かつては大量の人がいたシブヤの姿も、世紀末に飲み込まれて見るも無残な姿に成り果てていた。シブヤの象徴たる109もその先端が破壊され、瓦礫となって道路に転がっている姿が見える。どこへ行っても世界は崩壊している。当たり前ではあるが、どこまで行っても変わらない崩壊の姿を見ていると、嫌になってくる。

 

 だがそれと同時に、空を見上げればエストマの範囲外から此方をじっと窺ってくるハーピーやオキュペテーの姿が見える。エストマの範囲外から攻撃する訳でもなく、常に100メートルほどの距離を開けて此方へと視線を向けてくるその存在感は少々不気味であり、シブヤに入ってからは感じる肌を撫でる様な悪寒と嫌な視線に、静かにL&Oを抜いていた。

 

 どうやらそう感じていたのは自分だけではなく、他のバスター達も武器を抜き、サマナー達は仲魔を召喚する為にCOMPを召喚待機状態に移行させていた。

 

「あんまり良くねぇな、この雰囲気」

 

「高位悪魔が支配する異界に突っ込んだときに感じる統率された悪魔って感じがするぜ。……ひょっとすると、高位悪魔がいるのかもしれねぇな」

 

「ま、そういう面倒なのはヤタガラスに任せようぜ。その為に高位異能者を連れてきてんだろうしな。お前も、妙な事は考えるなよ? 種族英雄なんて連中も存在するが、俺達は英雄でも何でもないからな」

 

「おう」

 

 一々此方を心配してくるの、恥ずかしいのでそろそろ止めて欲しいと思いつつ、真理だった。とりあえずはバフデバフを中心として、支援に回って動き回る事をメインにしようと決め、テクニカルが停止する。場所はシブヤのスクランブル交差点前。制圧目標はシブヤ駅になるが、シブヤ駅内部を何時ものマップと索敵アプリのコンボで確認すれば、内部が悪魔の反応で真っ赤になっている。それを見ていると、前から横から覗き込んでくる同業者たちがうわぁ、と声を漏らす。

 

「モンスターハウスかよ」

 

「これ、半異界化してないか? シンジュク駅に続いてシブヤ駅までダンジョン化かよ」

 

「いや、シンジュクは元からだろアレ」

 

 本職から見てもシンジュクは異界らしい。まぁ、確かに初めて行くと確実に迷うよな、と思いつつテクニカルから降りる。まだエストマが効果を効かせている間にDDSアプリから高速召喚でチェフェイを召喚する。そうやって召喚されたチェフェイは普段の和装のロリ姿ではなく、複数の尾が生える子狐の姿で召喚され、そのまま頭の上に乗った。視線を上へと向ければ、お腹を頭の上に乗せ、両足をだらりと下げる様な姿勢、尾の一本で軽く肩を掴んで落ちない様にしているチェフェイが、

 

『まぁ、妾の姿や情報を必要以上に周りに見せる必要もあるまいて。多少運動能力は制限されるが、これでも問題なく戦えるから安心しておくと良い』

 

 なんというか、普通に召喚しようとした俺よりも遥かに良く考えている狐だった。いや、俺が簡単に信用しようとして不用心だっただけか、と判断する。そうやってチェフェイが頭の上を陣取った所で、アプリを起動する。DDS内部の仲魔にも均等に経験値が配分され、レベルアップが行えるというアプリだが、ここら辺、本当にゲームっぽいな、とスティーブンの謎技術を思い出しながら判断し、L&Oを軽くガンプレイで回転させて握りなおす。

 

「さて、お仕事の時間だな……頼んだぞ、アン、駄狐」

 

「まか……せ、て」

 

『妾の扱い相変わらず酷いんじゃが』

 

「様式美という奴だから安心して」

 

 額をぺしぺしと叩いてくるのを無視しながら、周囲にも様々な悪魔が召喚されて行くのを確認する。その度にアナライズによるデータ登録と確認が行われ、一瞬で視界がホロウィンドウによって埋め尽くされるので、一度の表示数を制限し、それを整列する事で視界を確保する。そしてその間にもエストマの効果が薄れ始め、虎視眈々と此方の命を狙ってくる妖鳥達の視線に殺意と敵意が混じり始める。

 

「マカラカーン用意したかー?」

 

「テトラカーンも忘れずになー」

 

「突撃の狼煙使える奴いるかー?」

 

「お、ウチは出来るぞー。デ・カジャ持ちがいなければいいんだがなぁ」

 

「そこはボヤいてたってしょうがねぇだろ、上に行くと必ず持ってるもんだし。とりあえず安全な区域を確保するのが最初らしいからな。シブヤダンジョンに突入する前に挑めるための陣地作りだ」

 

「109とか近くの店見ると結構物資ありそうだからなぁ、駅前を拠点にする予定か? まぁ、悪魔を殺せばとりあえずどうとでもなるか」

 

「んだんだ」

 

 言葉は滅茶苦茶軽い連中ではあったが、その準備は的確かつ迅速で、慣れているものだった。チェフェイだけを出して準備を完了させた此方に対して、声を掛け合いながら素早く魔法や隙を潰す様に展開し、そしてエストマが切れる瞬間に備えていた。サクサクと行動を纏めて行くその姿に軽く驚きながら、ふむふむ、と頭の上でチェフェイが呟くのを聞いた。

 

『どうやらある程度、業界的に知名度の高い魔法や効力の高い魔法はそのまま晒しているようじゃの。即席で連携しやすいようにする為の配慮じゃろうか』

 

『結構考えてるわね、人間も』

 

『信頼は出来なくてもお互いに戦力を信用する事が出来るからね、人間は! まぁ、それ以上にこの状況で隠す事への無意味さを理解しているから、切り札だけは伏せて、それ以外にはスムーズに動く為に明かしているんだろうね……連携している方が生存率上がるし』

 

 良く、考えられている。そういう素早い対応なんてものを見ていると、改めて自分が此方の世界に踏み込んできたばかりの初心者である事が良く解る。まだまだ、勉強しなくてはならない事が多くあるんだろうな、とその考えに不覚ながら楽しみを覚えていた。強くなり、そしてこの裏世界を知る事は恐ろしくも、楽しいのだ。

 

「うーし、こんなもんか! ざっと見て数百体以上いるからこりゃあ入れ喰い状態だな! あ、坊主、お前はレベルが揃ってくるまでは俺らの後ろに居ろよ? 大体テトマカでどうにかなるしな」

 

「まぁ、テトラカーンもマカラカーンも無駄にコスト高いから張り直すのがめんどくせぇんだけどな」

 

「アレ、異能者が触媒込みで使おうとすると1回1000マッカとかかかるらしいな……いや、それでもまだ物反鏡とか使うよりは遥かに安いんだけどよ」

 

 展開と言葉が早い。慣れている連中に対して一歩遅れながらも心を落ち着かせ、そして防衛迎撃撃滅体制が整うのに加担した。そしてそうやって集められたサマナーが準備を完了させてから、特に合図もなく、

 

 誰もが解る様に、エストマが解除された。

 

 いや、合図もなくではない。そもそも集まっている大半がレベル的には何年も業界で戦ってきたベテランや準ベテランとも呼べるような連中ばかり。合図そのものが必要ない。そうやってエストマが解かれた瞬間、周囲から視線を送るだけだった悪魔が―――ハーピーやオキュペテー、そしてケライノー等の妖鳥悪魔が弾丸の様に一気に飛び出した。だがその動きに先んじて、

 

メ ギ ド ラ

 

 万能属性の光がスクランブル交差点を中心に四方へと向けられて1(・)2(・)発(・)同(・)時(・)に(・)放(・)た(・)れ(・)た(・)。超高位悪魔でもない限りは耐性を保有せず、尚且つ高威力で圧倒的殲滅力を誇る最強魔法の系列が一気に交差点を駆け抜けて悪魔の姿を飲み込み、反撃する事すら許さずに消し飛ばした。その光に巻き込まれて交差点周辺から一時的に悪魔の姿が消滅し、大量のMagが霧となって漂う。それが急速に力へと還元されて行くのを感じ取る。当然ながらこの規模が一瞬で蒸発する、何て事は初めて見た。その為、放たれたメギドラの暴力を前に、一瞬思考を停止させてしまったが、

 

「なにやってんだ! 本(・)番(・)は(・)こ(・)こ(・)か(・)ら(・)だぞ! さっさと飛び込んできそうなところに魔法と弾丸を放て!」

 

「あ、は、はい!」

 

 向けられてくる怒声に背筋を伸ばす。呆けている場合ではなかった。似たような光景であれば既に何度か見ているじゃないか、と自分の頬を軽く叩いて気合を入れる。そうだ、ここは既に戦場なのだ。呆けている場合じゃない。自分から踏み出さないと食われる場所だし、助けてはくれるが、見捨てもする連中でもあるのだ。

 

『準備は出来たかの? なら指示じゃ、サマナー。自信をもって言葉を声に出すと良いぞ。それに従うのが悪魔じゃ』

 

「攻撃の合間を埋めるように近づけさせるな!」

 

 チェフェイが鳴き声を零せば、雨の様に放たれる魔法の弾幕の合間にドルミナーが隙間を埋めるように放たれ、僅かな隙間から飛び込もうとする妖鳥の動きを一瞬で眠らせ、停止させ、失速させて地に向かって落とす。それによって落下する悪魔が魔法に巻き込まれて一瞬で蒸発する。成程、こうやって動けばいいのか、とアンに竜巻を何時でも放てるように準備させながら、隙間を埋めるようにチェフェイに精神と神経魔法を連打させる。

 

 飛行する悪魔はそうやって行動が封じられれば、勝手に落ちて魔法に巻き込まれる。この場に居て一緒に戦っているというだけで、ガンガン体がMagを吸い込んで、スポンジの如く吸い上げて一気に強化して行く―――一種の促進培養状態だった。普段であればこういうレベルの上げ方は嫌われる。

 

 当然、経験や知識がついてこないからだ。だが今は仕方がない。というかレベルを上げてからではないとあっさりと死ねる世の中なのだから、今は優先順位が違う。だからMagを命を啜る様に吸収し、支配人の手によって解除された生物としての限界と、成長のキャップ。その作用によって、急速的に肉体と魂は追い付くようにレベルを、位階を駆け上がっていた。

 

 自分の体の内側から生まれてくる熱を感じながらも、爆撃の様に魔法が連射され、マシンガンの様に連続で放たれる戦場の中に、自分も動きを作る。チェフェイの連続で妨害用の魔法を放たせながら、新しくクールマを追加で召喚し、重力による壁を空に生み出させる。

 

 それによって飛行する悪魔が勝手に行動制限されて落ちてくる。

 

「っしゃあ!! ここは戦術核の出番だッッ! 見ろ! これがアメリカからこっそり盗んできた携帯型ミニニューク……!」

 

「誰かあの馬鹿を殴って止めろ」

 

「つかフレイラで満足しておけよ。アレ放射能反応の出ない核熱魔法なんだし」

 

「フィーヒヒヒィ―――!」

 

「会話している間に核をぶっぱなしたぞぉ―――!!」

 

「嘘だろお前……」

 

 道玄坂の方へと叩き込まれたミニニュークの姿に一瞬、うん? と首を傾げたが、必死に放射能を消せ、と叫んで来る声が聞こえてくる辺り、どうやら環境汚染をどうにかする方法はあるらしい。しかし流石裏社会だ。当たり前の様に小型核を戦闘にぶち込んでくるなんて、考えもしなかった。これがサマナー世界の当たり前となると、自分がどれだけ矮小か思い知らされる。

 

『……いや、あれ普通じゃないから』

 

『一応核兵器でなら40レベルの悪魔なら問題なく消し飛ばせるものなんだけどね』

 

 あ、じゃあ、ここの連中が特別にクレイジーなのか、と、ミニニュークを放った男が二発目を取り出そうとするのを、他の連中の仲魔が無理やり取り押さえながら止めているのが見える。その間にもチェフェイとクールマへと指示を出しつつチャクラドロップを与え、妨害をし続けるだけの機械となりつつ周りの光景を見て、戦いながらも聞こえてくる話に耳を傾ける。周辺はまさにカオスとでも表現すべき光景だった。

 

 四方八方から飛行して襲い掛かってくる悪魔の物量に対して、サマナーも物量で仲魔を召喚してぶつかりながら広範囲に効果を及ぼせるマハ系統の魔法で弾幕を張りつつ、テトラカーンとマカラカーンを張り詰めながら相手の攻撃を吹き飛ばし、暴風の様に攻撃を叩き込んで一斉に蒸発させて行く。まるで死を恐れない様に突撃してくる悪魔の姿は一見、恐ろしく映る。

 

 だが、

 

「なんでシブヤ奪還作戦で核をぶっ放す馬鹿が居たんだよ!!!」

 

「見ろよあそこのヤタガラス、絶対イエローカードだってあの視線はさぁ!」

 

「じゃあレッドカードが出たらモヒ子とベッドインで」

 

「鬼畜かよ」

 

 まるで緊張感の無い会話がそれでも続いていた。恐るべき事にそんな会話を続けながらも戦闘に集中し、合間にハンドサイン等で仲魔に対する指示を的確に行えていたのだ。正直、驚いた。というか一緒に仕事してから驚き続きだった。

 

「そういえばダンテさんも結構軽口をするタイプだったなぁ……やっぱり、軽口を浮かべながら戦うのがこの業界の流儀なのか」

 

『いや……貴方がそれでいいのなら私もそれでいいけど、本当にそれで正しいと思うの?』

 

 ベルの言葉にしかし、小さな疑問を覚える。だが楽しそうにヒャッハー叫びながら悪魔を殲滅する同業者の姿を見ていると、こんな状況でもなんと逞しく、そして恐れる姿を見せずに戦えているのが見える―――そういう部分では純粋に羨ましく、あやかりたくもあった。

 

 俺ももう少し、外面から恰好付ける事を考えよう。

 

 そんな事を思いつつも、出現してくるケライノーの集団の対処に入る。もはや集団ではなく群れや軍団とも表現できる膨大な数が視界を覆う黒い波となって迫ってくる。

 

 それが魔法に触れると一瞬で消し飛ぶ。決して悪魔側が弱いという訳ではない。

 

 ただ、ただただ単純に、此方の火力がアホの様に高いだけだった。

 

 《突撃の狼煙》と呼ばれる魔法は全てのカジャ系魔法を二段階発動させるという究極の補助魔法だ。それによって最大限まで強化されたところで乱発されるンダ系魔法。それによって下げられる魔法や攻撃に対する抵抗。そしてそこに放たれるマハの付く広範囲効果のある魔法。

 

 そして元々、ここに居るサマナーやバスターの大半のレベルは30を超えている。レベルが大きく下回っているのは自分ぐらいで、それでさえ大量に蒸発する悪魔を前に一気に追いつき始めていた。良いのかなぁ、と思いながらも迫り来る悪魔に対して対処する為、必死に此方からも魔法を叩き込む指示を出す。銃を振るうなんて余裕はなく、必死に仲魔に攻撃の指示を連続で繰り出しながら、

 

 ひたすら、ただひたすら迫りくる悪魔の津波に対処して行く。

 

 何時まで続くのだろうか、これは。頭を空っぽにして半ば自動的に迎撃を行いながら戦い続ける事1時間、

 

 スクランブル交差点からは完全に、敵性悪魔の姿が消失していた。




 悪魔狩人に自重はない! 使えるものは何でも使う! テトマカ! テトラジャ! 狼煙! ガードキル! ンダンダンダ!

 根本的に悪魔を殺すという事に慣れてきているのがベテランと呼べる連中。有用な魔法を理解しているし、自分と同じステージなら大体揃えているだろうという共通認識もあるし、隠す必要もないので声に出して連携を取りつつ確実に潰して行く。

 崩壊世界のサマナー達は逞しいのだ。

 ちなみに創作だから出来るレベルの敵の数や規模だと思うだろう? ネトゲメガテンのIMAGINEでは日常的にこの規模の悪魔と戦えるイベントが常設されてたのだ。
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