お仕事は何の問題もなく終わった。
拍子抜けとは思うが、毎度毎度なんか大きなイベントが発生したのでは正直、心も体も持たない為、これで良かったという感じはある。それで発生した悪魔を討伐した分のマッカの回収やドロップ品の回収で懐が大量に潤い、レベルも十分に上がり、ついに超人と呼ばれるレベル30の領域に到達した。
レベル30からは完全に才能と素質による突破を行うレベルになってくる。これが悪魔人間、デビルシフター、或いは異能者であればこの壁を乗り越えるのは比較的に難しくはなく、純粋なサマナーや純人バスターにとっては一つの大きな壁であると言われている。超人とは
人間を凌駕した人間である為、純粋に寿命が増え、呆れるほどに老化し辛くなり、病や毒に対する抵抗を肉体が取得し、場合によっては属性に対する耐性さえも取得する者も出てくる。そう、超人に踏み込んだ領域はあの聖女や破戒僧と同じ領域なのだ。少し前まではドン引きして眺めていたあの領域に自分も踏み込んだと思うと、少しは困惑する部分もある。とはいえ、あの二人はあの領域に踏み込んでそれなりに期間がある為、此方とは全然練度や経験が違い、出来る事も多い。
とはいえ、超人になったという事は一つ、人間の限界を超えて更なる限界を目指せるという事でもある。ここを何らかの方法で突破した存在は、もはや自力で才能限界を突破出来ている状態であり、相手さえ存在するなら更に強くなって行けるだけの力を持っている。ここから悪魔も人間も、強さが段々と天井知らずになってくる。この領域に踏み込んだ悪魔関係者は漸く一流と呼べる実力を保持していると業界では呼ばれているらしい。
「―――あ、質問です」
「では答えよう。なにかな?」
そう言って此方の言葉に答えてくれるのは眼鏡とベスト姿のデビルバスターだった。場所はシンジュクの一角。ヤタガラスの活躍により地上にも結界が張られた事で、シンジュク内部だけであれば今は比較的に安全な状態となっていた。流石にシンジュクから出たら命の保証は出来なくても、地上が結界によってクリアリングされたことによって今では様々な店舗から食料やら物資やらを運び出せるようになっていた。おかげでシンジュクは復興が始まっていた。悪魔に対する攻撃拠点としての防衛構築、そして食料や物資の生産を本格的に行う為の改造でもあった。
そんな中、自分は解放されたシンジュクの中、無人の喫茶店に、デビルバスターとマンツーマンで授業を受けていた。
なんてことはない、マッカを支払って雇ったのだ。
今回のお仕事で、自分がどれだけこの悪魔業界に関して知らないのか、というのを理解した。そういう事を聞ける仲間がいないというのが致命的だった。何せ、力を付けて殴るというスタンスしか今まで見えなかった所、社会行動が最低限でも取れる様になってきたのだから。ダンテは一応デビルバスターだが、あの人、銃の撃ち方しか教えてくれないのだ。正直、論外というか話にもならない。あの人、というかアイツ飛び込んで派手に決めてやれとしか言えない。
シブヤ解放依頼から数日が経過している。クールマ、チェフェイの変異合体前に色々と話を聞いて、サマナーとしてステップアップするべきだ、と判断したのだ。その間に支配人がクールマとチェフェイの合体用の悪魔を確保しているという話でもあったので、合体を一旦待つ事にして、
こうやって、マッカを支払って勉強している。
少しだけ恥ずかしかったが、意外と反応は好意的な物だった。実際、駆け出しサマナーがベテランを雇って教習して貰うのはそれほど珍しいものではないらしい。死亡してもどうにかなるものの、完全死亡したくないのがこの業界だ。その為のセーフティーをかけるのは当然でもあり、知恵こそが悪魔に対する最大の武器でもあるからして、推奨される行いでもあった。
そういう訳で、この業界に関する話を聞いていた。自分のレベルが30に到達したという事もあって、今の話の中心はそこだった。
「レベル30でなんで一流なんですか? 悪魔の事とかを見れば正直、まだまだ上がいるし、良くても中堅レベルにしか思えないんですけど」
「うん、いい質問だね」
《先生》は持ち込んでいたホワイトボードでレベル帯を書き込んで行く。駆け出し、見習い、半人前、一人前、そして一流、と。
「基本的にね、30レベルに到達するにはどんな才能があっても最低で10年はかかるんだ。今のこの状況と環境が異常で、それを感じないけど昔……まだ世界が崩壊する前はヤタガラスやクズノハの手によって魔界との繋がりは最小限にまで抑え込められ、悪魔達は僅かな異界の中でしか存在できなかった。必然、高レベルの悪魔が出現する異界なんて管理されているものだったよ」
「制限されているから自由に戦えず、レベルも上がらない……」
「うん、そして高位異界はそれだけで使用料を取られるものだからね、一回の挑戦で数千万とか場合によっては億。だけどそこに潜らないと強くなることも、強さを維持する事も難しかった。だけどそうやってレベルが30に上がると長い年月を経て、様々な経験から格上でさえある程度どうにかなってしまうサマナーやバスターが出来上がるんだ。そういう経験の持ち主を一流と呼んでいるんだ」
「成程……」
「ちなみに確かに、この業界、クズノハ四天王とかは最低ラインでレベルが70とか80だし、ヤタガラスも上の方を見れば70代がゴロゴロといるさ。でもそれはこの業界全体を見ても少数だからね。というかトップ級をカウントするのは流石に例外なのさ。崩壊前は強い悪魔が出現できても高くて40レベルが良い所で、30レベル環境であれば一流と名乗るには十分すぎるものだったのさ」
まぁ、今と昔では環境が違い過ぎるけど、と言葉が付く。そしておそらく、この壊れている世界では今まで通りに進むこともないだろう。おそらくはガンガン平均的なレベルも、数も上がって行くだろうというのは簡単に想像できる事だった。昔は出現しなかった高位悪魔が大量に出現する様になっているのだから当然と言えば当然の事だった。
「超人というのは一種のステータスでもあったものだ。そして今、力が必要である状況でそれは何よりも求められる。君の背景がなんであれ、君が未熟である事も関係なく、他の同業者たちは君を戦力としてみるだろう。君が既に特別になりつつあることをしっかり覚えておかなきゃ駄目だよ?」
「はい」
「よっし、良い返事だ。じゃあ次はこの業界の他のサマナーやバスターに関する基本的な共通意識や、それぞれの組織に対する扱いとかも教えて行こうか。たぶん一番君に必要な知識になるからね」
「よろしくお願いします」
金を出しているものの、学んでいる側である上に必要な知識を与えてくれる教師だ。マッカを支払って学んでいるのだからしっかりと覚える為にも頭を下げて頼み、そして必死に頭の中に授業の内容を叩き込んで行く―――学校が終わっても、消え去っても、それでもまだまだ勉強は終わらないらしい。
「ただいまー」
「おか……え、り……」
もはや見慣れたバーへと帰還してきた。アンが戻って来た此方の姿を迎えてきてくれる。近寄ると両手を取って、それを握ってくれる。嬉しいのだが、最近こういうスキンシップが増えている気がする。なんというか、シブヤ以来遠慮?という物が薄れて来た、というか。嬉しいけどその変化がちょっと怖い。誰かが親密になれば成程、恐れが心の中に芽生える。その正体は解っていた。猜疑心ではないのだから。
「とりあえず、出来るだけの勉強はしてきた。後数日勉強あるけど」
「ん……合体……準備、できたー……」
「お、マジか。確か合体素材が色々と面倒で調達が大変だったって話だけど」
「ん」
あっち、とアンが店内のターミナルの方に居る支配人を指さした。詳しい話は彼方に、という事なのだろう。そこは素直に従う事にして、肩の上に飛び乗ってくる鳩を受け入れつつ、そのままターミナルの前へと移動する。支配人は既に悪魔合体する準備を整えているようで、待機している。
「お待たせ。合体用の素材悪魔が見つかったって話だけど」
その言葉に支配人ルイ・サイファーは何時も通りの煌びやかな美貌で頷いた。
「チェフェイ、そしてクールマは共に珍しい悪魔だ。その最終的な到達点に関しても、かなりの高位悪魔に繋がっている。本体の分霊が欠損したという形で降臨している以上その概念を埋めれば本来の姿と力へと近づいて行くのだが―――問題はその欠損情報だ。全く同じものでなくても、埋める様に形と属性を整えればそれでも良いのだろうが、その準備に手間取った」
悪魔合体、概念弱体化、退化させたのを素材に使って更に上の悪魔を作り、それを別の悪魔と合体させて退化。概念と概念を継ぎ合わせて混ぜる事で疑似的に概念を生み出しているのだという。だが出来るのは悪魔の概念補完ぐらいであり、世界規模となるとリソース不足でどう足掻いても無理との事。
だがこの作業、そして相性の良い悪魔を探すために
なんと、普通の合体施設は種族制限が付くらしい。
神霊とかの高クラスカテゴリーの合体不可、特殊合体や変異合体なんて無理だし、大天使みたいなクラスでさえ合体して作り出す事が出来ないらしい。悪魔合体の施設一つをとってもピンキリらしく、スティーブンがここで使える様に作ったものは業界最高クラスの施設だったらしい。
強くなるにはここしかないのだ。
「ところでさっきからあーあーあー歌ってるの誰だ」
酒場内を見たら、いつの間にかピアノを演奏している目を隠した男と、どこか、人から外れた気配のする女がスタンドマイクを前に、息継ぎをせずに歌い続けている。彼女は此方へと視線を向けると、軽く頭を下げた。それに返す様に此方も頭を下げ、それでバーのカウンターの方に一人、客が増えているのが見えた。
「えーと……?」
「彼らは選択した者の味方―――とはいえ、イゴールが足りないがな。フィレモンも集合無意識内で滅ぼされたまま、ニャルラトホテプも深淵で微睡む事さえも出来ぬ。そして白痴の王は消え去った夢の中で眠り続ける……」
「支配人?」
「今はまだ、気にする事ではない。君がペルソナ能力に関連する世界へと渡った時にサポートを得られる様にする為の下準備の様なものだ。それよりも悪魔合体を始めよう。悪魔を此方に出すと良い」
最後に一度、ピアノマンと歌姫を見て、空白のキャンバスを横に置いた、おそらくは画家の姿を見た。なんとなくだが、彼らでは自分の力になれないような気がした。彼らが助けられる領域、その根本に関連する力が自分には存在しないような、そんな感覚だった。とはいえ、それは今は良い。スマートフォンのDDSアプリから、ターミナルへとクールマとチェフェイを転送する。それを確認した支配人が頷く。
「では悪魔合体を執り行う」
ターミナルの上にホロウィンドウが出現した。先に合体が行われるのはクールマの方であった。ホロウィンドウの中央にはクールマの存在が表示され、その周りには30を超える悪魔の姿があった。それがクールマを中心に、その欠損情報を埋めて行く様に溶けて混ぜ込まれて行き、クールマという悪魔の存在を一つ上の次元へと昇華させる。それによってクールマの表示されていたホロウィンドウが消え去り、そしてターミナルから光が溢れ出す。
数歩、後ろへと下がって距離を開ければ、そこに光が集まり、悪魔の姿を生み出して行く。
今度出現する悪魔は―――四足歩行だった。丸い体躯をしており、しかし立派に生える二本の牙が何よりもその存在を主張する。光が消えて行き見えるのは青色の毛皮をした、猪の姿だった。神性なる獣の気配を従え、悪魔合体が完了した。
『我が名は神獣ヴァラーハ! 1000年世界を支え、そして再誕を司る第三の化身! 僕の権能はその逸話通り、再誕。一度の絶望、敗北で諦める必要はない。たった一度の滅び、敗北であれば僕の権能でそれをなかった事として再誕させよう。サマナー! コンゴトモヨロシク……』
「あぁ、コンゴトモヨロシク、な、ヴァラーハ」
近づきながら良いか? と聞いてから許可を貰い、毛皮に触れた。ヴァラーハの体を覆う毛皮はその予想に反して、非常に柔らかく、そして手触りの良いものだった。あぁ、これはそのまま枕にして眠りたいレベル。横では同じようにアンがヴァラーハの毛皮に触れ、そしてそのまま体を毛皮の中に埋めていた。
『ふっ、僕の魅力にどうやら参ってしまったようだねサマナー……! ちなみに今回の化身、ヴァラーハはクールマ同様にサイズがある程度可変自由だ。無論サマナーと人修羅ぐらいであれば二人纏めて乗せられるだけの大きさになる事も出来る。それ以外にも枕サイズになる事にもね!』
「よし、今からヴァラーハ枕にして寝ようぜ」
「さん……せー……」
「ならば本日の悪魔合体はここまでだな」
『まてぇぇぇ―――!!!』
全員でターミナル前から去ろうとした所で、道を塞ぐようにターミナルからホロウィンドウが放たれ、遮った。そこに表示されたチェフェイが半ギレの表情を浮かべていた。
『妾の! 合体が! まだ! じゃろ!?』
『必死ねアレ……』
『蝿王! 聞こえとるぞ!!』
『嫌ね、余裕のない奴は』
『連中明らかに本気じゃろこれ!?』
「そんな事ないよー」
「ないよー」
『じゃあその猪から手を放して喋れ』
『ちなみに僕の毛並みもある程度可変可能で、戦闘時は鋼鉄を超える強度を出す事が出来るよ』
地味に便利だな、ヴァラーハ。乗り物としても枕としても使えるとは、流石インド神話だ。インド神話関係あるのだろうかこれ? まぁ、あるのだろうきっと、たぶん。とりあえず悪ノリのし過ぎでチェフェイが半泣き状態なので、皆でターミナル前に戻る。気のせいか、あーあー歌っている人までやや半笑いな気がする。そうやってターミナル前に戻った所で、
「ではさっさと終わらせよう」
「これで二尾だな」
『それ妾弱体化してるぁ―――!』
ぽちっと、支配人が合体スタートのボタンを押して、チェフェイの電子音声を響かせながら合体を開始した。バーの方ではバンバンバンとカウンターを叩く、中身が子供のイケオジの姿が見える。やっぱりこいつをネタにするのは楽しいよな、と思いながら悪魔合体が強制執行されているウィンドウの様子を眺める。
クールマ―――今ではヴァラーハと同じように欠損情報を補うように悪魔合体を行い、変異して一つ上の段階へと存在の次元を上げて行く。
やがて、ヴァラーハの時の様にターミナルから光が放たれる。それが集まり、そして悪魔の形を構成して行く。集まって行く光は人の形を形成する。だが今までの様な小柄な姿ではない。成人した女の体躯になって行く。姿はゆったりとした和と中が入り混じったドレスで、長髪で片目を隠すような黒髪をしており、服の裾からは四本の尻尾が伸びるのが見える。手を袖の中に隠したまま、両手を合わせて恭しくその姿が頭を下げた。
「妾は四尾チェフェイ。騙し、乱し、そして誘惑する悪魔。コンゴトモヨロシク……」
「演出変わってないじゃん……」
「はぁー……」
「この態度酷くないかや!? 妾変わったぞ!? 姿変わったぞ? 凄く変わったぞ? 見よ、この尻尾の毛並みを! 触れたら堕落に溺れるこの毛並みを! を!」
「必死過ぎて引くわー」
「妾に! どうしろって! 言うんじゃ!! どうじゃ!? これでどうじゃ!?」
ぼふん、と音を立てて煙に包まれたチェフェイがその姿を変身させた。桃色の髪の狐耳を生やした、青い巫女服の様な恰好の獣人に。滅茶苦茶どこかで見た事のある恰好の姿に、みこーん、と口で言いながらどこかで見た事のあるポーズを決める。それを見ていたダンテが笑い過ぎてカウンターに突っ伏していた。此方もその姿を見て、静かに視線を他の皆に合わせ、そしてゆっくりとその場から去ろうとした。
「駄目!? 駄目なの!? 何がダメなんじゃ!? これでどうじゃ? 元の小さい姿にもなれるんじゃぞ!?」
「中身に進歩なし、と」
後ろで喚いているチェフェイを放置してカウンターの方へと向かう。ダンテのおっさんは何時も人生が楽しそうで羨ましいなぁ、とカウンターに倒れ込んでいる姿を見て、スマートフォンを取り出してDDSアプリを確認する。表示される四尾チェフェイとヴァラーハのレベルはジャスト30になっている。
チェフェイの耐性は更に優秀になっている。精神、神経系統への耐性を増やしながら体のステータスが大きく向上されている。どうやらロリから卒業した事で、体力的に大きく改善されたらしい。それだけではなく、どうやら専用概念、ブースタの様なスキルを習得しているらしく、チェフェイが行うあらゆる神経・精神系統の魔法はその効果量が上昇するらしい。
SLEEPやSTUN状態であれば効果時間の延長、CHARMであれば傀儡の様に完全に操られる、等とデバフが更に凶悪化された。それ以外にもンダ系統魔法による能力の低下幅が更に上昇したらしい。デバフ、搦め手をメインとするチェフェイの役割をスタンダードに維持しつつ、その効果を大きく上昇させたスタイルは自分よりも格上の悪魔に対して此方側がアドバンテージを得る手段として、非常に重宝する進化だった。それ以外にもどうやら、変身能力によって自分に関連する姿であればある程度自由に姿を変えられる様にもなったらしい。先ほどのみこーん、な玉藻の前もそういう事なのだろう。
『ほれほれ、妾の進化に刮目し、感謝すると良いぞ?』
狐の姿になったチェフェイは一気に背中から駆け上がると、そのまま肩の上の鳩を叩き落してから着地し、四本に増えた尾を体に絡めて来る。挑発するようなその姿を無視して、一瞬でアプリの中へとチェフェイを叩き返してやる。文句の声が聞こえてくるがそれを無視し、次にヴァラーハを確認する。
ヴァラーハはゲーム的に説明するなら、
斬撃、打撃、水、氷、地、と保有している耐性が凄まじいほどに優秀となっている。その代わりに新しく核熱属性弱点を得る様になり、フレイ系統の魔法が弱点となっている。とはいえ、核熱属性の魔法はかなりレアな魔法であり、小型携帯核を保有している人も多いとは思いたくない。というかシブヤでの事はアレ、超例外だと思いたい。
それはそれとして、クールマとは比べ物にならない速ステータスがヴァラーハの魅力でもあった。力・体・速。その三つと比べると魔運知がやや低く感じるが、ヴァラーハはどうやら肉弾特化の化身の様であった。ステータスに関しては完全にサマナーである俺をぶっちぎっていた。頼りになる仲魔の進化だった。
『サマナー、僕も君も、まだまだ旅路は始まったばかりだ。これで満足せずに邁進し続ける事を祈るよ』
そう告げるとヴァラーハもアプリ内部へと戻っていった。
ベルは電撃ガードキルをレベルアップで取得し、ジオダインやマハジオダインが誰が相手でも突き刺さる様になったのが非常に強力だった。ベルには電撃高揚とSTUN確率上昇のスキルがある為、相手がそういう事に対する耐性の無い悪魔であれば、一方的にジオでハメ殺せる恐ろしさがある。
スダマ先輩は大人しく座っててください―――使った覚えがないのに何でこいつだけレベル35なんだろうか? 俺よりもレベルが高い。お前本当になんなの? もしかして放たれた小型核に対して対抗心燃やしてレベル上げた? どうなのだろうか、そこらへん。
『核の冬を見ながら流し素麺』
『風流……なのか、な……?』
『そんな風流あってたまるか』
『でも魔界の連中ならやりかねない』
今夜もDDS事情は複雑怪奇であった。それにしても三尾とクールマ時代は比較的に短かったなぁ、とぼやく。まぁ、とんとん拍子でレベルが上がったのが原因なのだろうが。これ以上にレベルを上げるのは流石に難しいし、しばらくはこいつらと顔合わせだ。大事にしておかなきゃならない。そう考えつつカウンターに肘を乗せて息を吐き、
「次の扉の準備しなきゃなぁ……」
「くるっぽー。確か次の扉の名は―――」
叩き落されていた鳩が肩の上に再び着地しつつ、言葉を作り、それにアンが続いた。
「大正……20……年」
《大正二十年》と扉には彫られていた。即ちそこに関連する世界への移動を次回は行う事になっている。とはいえ今回は距離を開けて確認した。前回の様にいきなり飲み込まれたくはないので。そのおかげで今回は色々と情報収集と事前準備が出来ている。こうやって勉強したり、悪魔合体が出来ているのはそうした結果の一つだ。
とはいえ、
「大正二十年なんて存在しない筈なんだよなぁ。俺の記憶が正しければ大正15年までしか存在しなかったはずだし」
「つまりそういう歴史を進んだ世界、という事なのだろう。最強の守護者が存在する時代、時空だ。間違いなく記録に成功すれば、この日本という大陸を復活させるだけの情報概念を取得する事が出来るだろう」
「あの時代にはライドウがいるしな」
クズノハライドウ。人類最強議論の話になるとダンテと並んで名前が出てくる存在だった。その中でも14代目ライドウは、永世ライドウと呼ばれるほどに次元違いの実力と功績を打ち立てた存在である、と支配人が説明する。大正20年の存在する世界では、そのライドウが事件の中心を駆け抜け、解決しまくっているとの事だった。
ダンテ級の超人がいる世界とか恐ろしすぎる。
というか戦艦斬りってなんだ。本当に人類かそれ。
「まぁ―――そこまで不安になる必要はないだろう」
支配人がカウンターに戻り、目の前にコーラフロートの入ったグラスを出してくれながら言う。何時も思うが、悪魔王の癖に妙にウェイター姿が似合う。これが本当に魔界を支配している悪魔達の王様だとか未だに信じられない部分がある。とはいえ、コーラフロートには罪がない。横に座ってきたアンが欲しそうに見ているので、スプーンを受け取ったらアイス部分とコーラを軽く掬って、それをアンの口元へと運んで餌付けする。
俺もここら辺は慣れたなぁ、と思いつつ、支配人の言葉に耳を傾ける。
「主役でも主人公でもないのだ。放っておけば勝手に解決する。別の世界はそのように出来ている。最も、その主役に干渉して殺せば話は変わってくるが―――今の実力ではライドウに真っ二つにされるのがオチだろう。敵対する必要も、味方をする必要もない。真の異邦者として、星と宙と世界の外側からの来訪者として、物語には最初から関係のない存在だ」
ま、と横で、突っ伏していたダンテが体を起き上がらせながら呟く。
「お前の心がそれを許せるなら、って前提だがな。断言するけど、お前は絶対に見過ごせないタイプだからな。必要のない時でも手を出すだろうよ。Hey! 俺にもストロベリーサンデーをくれよ!」
それは、どうなのだろうか、とアンにコーラフロートを餌付けしながら思う。友達を、家族を、知り合いを全て捨てて逃げ出した俺にそんな善性はあるのだろうか? 俺がそこまで動けるかどうかは解らない。
「それを悩む必要はないのだ、サマナー。汝、心のままに生きよ。我はそれを慈しみ、許そう。その心の奥底には見捨てられない善の支柱が存在する。そしてその天秤は必ずサマナー自身を救うであろう。なぁに、次回は私も一緒だから心配する必要はない」
鳩がぱたぱたしながら自信満々に胸を叩いているが、不安になる。スティーブンから《アナライズジャマー》を渡された事で、此方の悪魔に対するアナライズ行為は無効化できるようになった。流石に大天使たちや超高位の悪魔等、直接面識や気配を知っている連中に対しては無意味だが、それでもアナライズされなくなるという事はそれだけで便利だし、アドバンテージになる。
それにメシアやガイアの前で使ってもバレないというのは便利だ。
何せ、バッファーと回復を兼ね備えている仲魔なのだから、居ないと困る。存在そのものが爆弾なのに編制必須メンバーという酷い縛りプレイはどうにかして欲しい所だが、今はその事に頭を悩ませることを止める。
とりあえず、前を向こう。
扉の向こう側への旅路に備えて準備を進め、そして近いうちに―――突入する。
という訳で四尾、ヴァラーハに変異させてついに最終兵器四文字鳩を仲魔に投入だ(震え声
四文字が仲魔になるという頼もしすぎる状況。シリーズでもハゲ扱いされて殴られるかヘイト集めるかしかしてないもんね、メガテンの四文字はね……。
という訳で次回、大正20年。