大正二十年に到着してから数日が経過すれば、新しい家での生活にも慣れる。ぶっちゃけた話、あんまり崩壊世界と生活に違いを感じないのだ、こっちの世界は。寧ろ崩壊していない分、こっちの方が生活しやすいという所さえもある。どこでも水や電気が通っている事に関してはやはり、こっちの方が遥かに便利だと感じられる。そういう事もあり、割とここの生活に馴染むのは早かった。敷地内に居る事限定だが、省エネモードで仲魔を召喚し、出しっぱなしにするという事が出来るのも割と新しく、悪くない経験だった。
悪魔との生活。崩壊世界とはまた違う、契約では縛っているが敷地内では自由に野放しにして生活するのは、崩壊世界でもやった事のない事だった。ただヤタガラス側の依頼待ちという事もあり、日常的には暇で、平和的な物だった。
ちょくちょく目を盗んでチェフェイの授業が続いたりするものだが、ぶっちゃけ、その内容はエロい事ばかりではなかった。もっと良い男となる為に、好きな子に対して胸を張って好きだって言えるようになるためには度胸が必要で、それは自信から来るものだ。つまりは自分という存在に対して自信を持てるようにならなきゃいけなかった。だけどそれも簡単な物ではなく、
まずは出来る事を増やして、他人から頼られる様な人間になろう、という事から始めた。
「良いか、自信を持てる人間とは他者に己の価値を認めさせる事で、自分の価値を認める事が出来るものである。故にじゃ、サマナーに必要なのはどうやって周囲からみられるか、その印象の作り方じゃ。という訳で本日は特別ゲストを連れて来たぞ」
「魔界で魔王の側近をしている者よ」
「マイ・仲魔」
そう言う訳で、教育に本格的にベルゼブブが加わった。と言っても別に詰め込み教育とかやるのではなく、他人との会話の仕方、どうすればかっこよくみられるか、どういう風に意識されるのかとか、そういう話術をメインにする話をベルは教えてくれた。人は喋り方一つで大きく印象を変える事が出来る。そしてそれを覚えれば他人に自分を認めさせる事なんて簡単だ、と。
それとは別に、チェフェイが料理を教え始めてくれる。自分で何かが出来る様になることもまたステップアップの一つになるという事になる。劇的に何かが変わるものではないが、それでも古めかしい料理を覚える事は新鮮だったし、こうやって人生で数奇な流れを通して出会った仲魔から習い事をするというのは、ちょっと楽しくなってきていた分があった。なので二日目からは自分も台所に混じって、チェフェイから学びながら一緒に料理をする様になった。
そしてそれを知ると、
「水臭いじゃないかサマナー! その学び、成長しようとする姿勢実に素晴らしい! 前々からサマナーの動きには無駄が多いと思っていたんだ、これからの戦いを生き残る為にも戦士としての特訓を行おう! なぁに、僕もパラシュラーマ師からは化身の中でも最も優秀で才能があるって言われていたんだ、教える事ぐらい訳ないさ! さぁ、ブラフマーストラの習得を頑張って鍛錬しよう!」
ヴァラーハが混ざった。なんかイベントの趣旨がここら辺から変わって来たような気がしたが、それでも普段は頼りにしている仲魔と、身近にこんな風に交流するという機会は今まではなかった。ヤタガラスが用意してくれたこんな場所でなければ不可能だっただろう。そんな事を考えてか、文句を言ってやろうかと思ったのを諦め、苦笑しながらヴァラーハとの組手や戦技指導が日常生活に交じり、
「じゃあ唯一神の素晴らしさを教えよう」
とかのたまう鳩はスダマ先輩に括り付け、日課のベルベットルーム、空中庭園の外側へと向けて全力投球して爆破させるという事で処分しておいた。
なんだかんだで、騒がしい日常が始まった。
朝起きて井戸で顔を洗ったら調理場へと向かって朝食づくりを手伝って、それが終わったらベルと喋り方や人の見方の勉強、その後はヴァラーハと組手や鍛錬を続けるような日常が始まっていた。
なんだかんだで賑やかな日常が始まって数日、
ヤタガラスが来た。
「異界攻略か」
「はい、真に超人であるなら、これぐらいは問題はないでしょう、と」
ヤタガラスの使者は先日の交渉人とは別の、表情が一切解らない、黒い布を全身に巻いた男とも女とも取れない存在だった。居間に通して、チェフェイがお茶を出したが、警戒しているのかどうかは解らないがそれに手を付ける事はなかった。ただ居間のちゃぶ台を挟んで、向こう側に座っている。そんな此方は、横にはアンが座って、
頭の上には鳩が座っている。
「契約を履行できるかどうかの実力を確認したい、って所」
「えぇ。で、それだけの能力がなければ打ち切りという事で」
「解りやすーい」
とはいえ、事前の契約通りなので、文句は一切なかった。まぁ、それなりに警戒する必要はあるのだろうが、それでもそこまで怖がる事もないだろう。何せ、ヤタガラスは国家守護の機関なのだから、そこまで執拗に恐れる必要はない。あるとすれば、それは国に対して害意を抱いている場合だ。そうじゃなければ協力できる隣人として一緒に居れば良い。それが処世術という奴だ。
「しかし……召喚能力を見ていれば、只者ではないことは理解できる故、此方はそれほど心配はしておりませんが」
「召喚能力?」
「えぇ、其方の召喚師殿が居た場所ではどうだったかは知りませんが、此方では基本的に一度に一体の悪魔しか召喚できません。そのように複数の悪魔を同時に召喚し、維持する事は出来ません。正直、そのMagをどうやって賄っているのかは聞き出したい所ですが」
『無論、言っちゃ駄目よマスター』
そもそも悪魔の召喚はサバトマでもない、《DDS》アプリ任せの行いなのだから、教えるもクソもない。この時代にはMagバッテリーなんて存在しないだろうし、アプリを動かす為のスマートフォンもないだろうから、説明した所で無駄になるし、没収されたところでユーザー以外は使えない様になっているのだから奪われた所でも無意味だ。説明するだけ無駄だし、説明する義理もない。というかどうやっているのかはあまり良く解っていない。
『愛し子よ、この時代の悪魔召喚は完全にデジタライズされていない。故に悪魔の召喚、そして維持に
鳩がなんか頭の上からまともな事を言っているのに戦慄しながら、
「まぁ、こっちも商売なんで」
「でしょうね。余り期待してはいませんでした。では明日、此方から迎えの監視員を送りますので、その人物と共に異界へと向かい、力を証明してください」
「了解」
と、それで会話は終わった。結局出されたお茶に手を出す事もなく帰ってしまったヤタガラスの使者の姿を見送ると、横の部屋からイケメンが紙を握り潰しながら出て来た。どうやらこっそり式神を放っていたらしい。ほんと油断も隙もないなぁ、と肩肘をつきながら溜息を吐いていると、後ろから横に座っていたアンがのしかかって来た。重い、と文句を口にすると更に力を入れて押し潰される。
「重い」
「おも……く……ない」
問題なのは重い事ではなく胸のそれがダイレクトに背中にヒットしている事であって、そっちの方が重要だから早く退いて欲しいのだが、口にしたって絶対に動かないだろうからもう諦めて、溜息を吐いてアンの好きにさせる。ともあれ、
「ずっと家に引きこもりたい……拙者、外とか嫌でやんす……」
「試練のない人生なんて彩がないのも同然だよサマナー! ここは一発ガツン、とやって自分の価値を示すのがいいさ!」
「何よりサマナーが舐められるのは妾達が舐められているという事でもあるからのぉ。サマナーは良くとも妾達が良くない。妾達が手を貸すサマナーなのだから」
「……おう」
そうだな、と仲魔達の声に応える。ここで一発、どでかい花火を上げるのも悪くない。自分に自信を付ける為にも、少しは実績を作ろうではないか、と決める。
……そうだ、目標を作ろう。
この大正二十年に居る間、少しだけ、前よりも自分に誇れるような行いをしよう。或いは自分を誇れるようになろう。そもそも、周りの思惑がどうであれ、俺ってば世界を救っているではないか? 良く考えれば世界の再生って今の所俺にしか出来ない偉業ではないか? だとしたら少しぐらいは調子に乗ってもいいんじゃないだろうか?
「そうだそうだ、俺が居なきゃ世界が滅んでるんだから、少しぐらい調子に乗ってもいいんじゃないか? 俺とか超頑張ってるだろ? 滅茶苦茶頑張ってるだろ?」
「その調子だサマナー!」
「まぁ、少なくとも認めている者はいるから少しぐらいはいいかもしれないわね」
「サマナー、頑張って……るっ」
何時になくアンの語尾が強い。これは俺の時代が来ているのではないだろうか? 俺も今ではレベルが30を超えて超人だ。ジャンプで100メートルぐらいは軽々飛べるし、その気になれば家を引っこ抜くことぐらいはできる。半分人類を卒業しているって言われているレベルだし、数日何を食べなくてもお腹とか減らないし、強くなっているのだ。だったらそれらしく振る舞う事も重要なのではないだろうか?
そうと決まれば、と気合を入れて立ち上がる。
「俺……やるよ! 明日来る監視員にガツンと胸を張った態度で挑むよ!」
「うむ、それでこそ妾のサマナーよ。授業の成果が出てきたの」
「生まれてきてごめんなさい」
「さ、サマナ―――!」
玄関でそのまま倒れた。監視員と呼ばれて派遣された人物はなんか、モミアゲが特徴的な書生風の男だった。黒猫を連れているし、なんか昨日の使者よりも信頼できそうだなぁ、とか思って咄嗟にアナライズした結果がこれであった。心臓発作を起こしそうな衝撃にそのまま横に倒れて、玄関のフローリングで頬を冷やす。近寄って来た鳩がツンツン、頬を嘴で突いている。そして後ろから来たチェフェイが尻尾でぺしぺしと体を叩いているが、立ち上がる気力が湧かない。
そんな様子を前に、書生風の男―――いや、それにしては若く感じる。たぶん、青年……は帽子の鍔を掴んだまま、此方を見て困惑する様に動きを止めていた。そしてその足元の猫が、溜息を吐いた。
「なんだこいつは……」
嫌に渋い声で黒猫がそんな事を言ってくるもんで、一瞬だけ正気に戻り、立ち上がろうとして、再びフローリングにへばりつく。
「もう駄目だぁ、おしまいだぁ、頑張ろうと踏み出した所からケチがつくなんて……はい……どうも、ゴミムシです……」
「おい、こいつが本当に例の超人なのか?」
呆れたような視線と声の猫に、視線を向け、じぃーっと猫を見つめる。
「良し」
「貴様、今此方を見て気力を取り戻さなかったか」
「面倒なサマナーですまんのぉ……」
尻尾でそのまま掴まれると、無理やり持ち上げられる。そして再びライドウを見て、レベルを確認して、そして頭をぐったり、と下に下げる。
「いや、俺いらないじゃん……」
「そういう問題ではなかろうて。あ、すまんな。こっちで今ちょっとシャキっとさせるから」
「……」
コクリと青年・ライドウは頷き、その間に尻尾に引きずられ、玄関の角へと引きずり込まれ、家に放し飼いにしている仲魔達との緊急会議が開催される。ぐったりと、体から力を抜いた状態で、尻尾に体を持ち上げられたまま、まず口にする。
「とりあえず日本から出て行かない?」
無言でベルからのビンタが飛んできた。
「なんとなく昨日の時点でフラグが見えてたけどまさか24時間も持たないなんて」
「いや、まぁ、ライドウが監視役に来るなんておそらく誰も思わないだろうけどね? だけどね、サマナー。僕達のサマナーなんだからちょっとは、こう、胸を張ってね?」
「みーんみーんみーん」
「蝉になってる……!」
「おい、大丈夫か……?」
「大丈夫! 大丈夫じゃぞ!? ほんと大丈夫じゃからな!? だからタンマ! ちょいタンマじゃから―――サマナー! 正気に! 正気に戻るのじゃ! はよ! はよぉ!」
がくがくと揺さぶられながら、少しずつ正気を取り戻して行く。そう、ここで引きこもる為には、ライドウとこれ以上関わらない為にはさっさと仕事を終わらせるのがベストであるのに違いない。そう、監視員なのだからさっさと仕事を終わらせればそれで関係は終わりだ。とりあえずもう一発ベルからビンタを叩き込まれ、大丈夫だ、と告げて、
ライドウとゴウトの前へと戻る。
「大丈夫、俺は正気に戻った」
「頬が腫れているが……」
ライドウの言葉に無言でサムズアップを向け、やっぱり痛いので鳩を掴んで回復魔法を使わせる。そしてそれが終わった所で出かけるので、仲魔達をDDSへと送還する。そしていやぁ、と声を零す。
「少し錯乱してごめんね? ぶっちゃけライドウなんて大物とエンカウントするなんて思ってなかったから思わず発狂しちゃったよ」
「ほう、見てライドウの実力を見抜くとは流石だな。成程、なら確かに錯乱しても仕方あるまい」
黒猫のゴウトが尻尾を揺らしながら、どこか誇らしげにそう言う。ライドウをどうやら誇りに思っているらしく、しかしその仕草が完全に猫なので心が癒される。あぁ、でもジャンル的にはウチの鳩と一緒なのではないのだろうか、これは? そう思うとライドウの事を少しだけ同情してしまう。なので軽くライドウの肩を叩き、
「お前もきっと苦労してるんだろうな……」
「……?」
『今日のサマナーはぶっ飛んでいるね!』
『状況が状況じゃからな』
『見ている分には面白いからいいんじゃないかしら。どこまで醜態を晒すのか楽しみよ、個人的には』
DDSでの邪悪な会話を止めろ、と心の中で言い返しつつ、とりあえず、困惑するライドウと握手を交わす。
「とりあえず、今日は宜しくライドウ。俺はリュージ、如月リュージな」
「葛葉ライドウ、宜しく頼む」
握手を交わしつつ、これが最後になるといいなぁ、と心の中で密かに思い続けていた。
そして異界へと向かう。
なんでも、この帝都という場所そのものが異界の発生しやすい環境になっているらしい。帝都という日本の中心が異界だらけなのはおかしくはないのか? と思われるが、どうやら帝都とは元々不安定な環境の上に建てられた場所なのだとか。その上、今は大量の人、建設ラッシュ、発展によって様々な感情が入り混じり、それが龍脈と反応してMagを生み出し、空間を不安定にする。
そうやって都心の中にぽっかりと異界を生み出したり、帝都の横の空間に異界を生み出したりと、悪魔達が入り込む為の隙間を生み出してしまうらしい。一部のケースを除き、どれだけ暴れようと現実への影響が一切ないのが異界という場所だ。だがこれを放置すると、段々と異界が現実を侵食し始める。つまりは異界での出来事が現実に対して力を持つようになる、という事だ。
更にこれが進めば異界そのものが現実と融合し、現実そのものが異界と同化する。こうなるともはや現実世界での被害を逃れることは出来ない。その為、サマナーやバスターは基本的にこの異界を潰す方向で働いている。異界を潰せばそれだけの金が悪魔協会から支払われるし、これはガイアでもメシアでも一緒だ。
そう言う事で、異界探索、異界攻略はサマナーとしての実力を発揮する場所であり、力を測る場所としては最適な環境でもあった。
そういう事で、ライドウとゴウトに連れてこられたのは、帝都の端の一角だった。もうもうと煙突から噴き出る黒煙、そして広がっているのは木造ではなく金属質の壁によって建築されている建造物―――つまりは工場だった。ぴぴぴ、と到着した所で反応を示す様に音を鳴らすスマートフォンを取り出してみれば、新しいアプリがインストールされていた。《プレインウォーカー》と呼ばれるそのアプリは、工場の直ぐ傍に異界が発生、存在している事を示していた。
「到着したな……ここが貴様を測る為の場所だ。全く、ライドウを便利屋とでも思っているのかヤタガラスめ」
にゃーにゃーとゴウトがライドウの足元で文句を言っているが、ライドウはそれを無視して歩いているので、その姿を追って工場付近、つまりは異界の入り口がある場所へと案内してくれる。背筋がしっかりと伸び、そして迷いのないその眼差しは、少し羨ましいかっこよさを持った青年だった。
と、追いかけるとあっさりと追いついて異界の入り口に到着する。見て解る様に空間が歪んでいるという事は、それだけ強い異界である事の証明でもある。異界の前でライドウは動きを止めると、振り返って此方へと視線を向けた。
「ではこの異界の攻略を行ってください。もし一般人がいるようであれば最優先で救助、主を倒してこの異界の消滅を確認できれば合格だそうです」
「了解……それじゃあ早速、挑戦してみますか」
何時も通り横にいるアンに視線を向けて、頷きを返してもらってからL&Oを抜き、入った直後に奇襲を食らわない様に警戒してから歪みに飛び込んで、
工場異界へと突入した。
外は青空が広がる晴れであった。
だが異界の中は違い、空が血の様な赤色をしていた。地面もまるで血を吸ったかのような鈍い色をしており、所々、木々は醜悪な形に歪んでいるのが見えた。炎の臭いを感じる……どうやら、炎がどこかで燃えているようだった。攻略して主の所へと向かうとなると、相当苦労しそうだな、と考えながらアプリから何時ものマッピングを行う。
とりあえず、と表示されたのは工場異界全体の姿。どうやら2階や地下は存在しないようで、このフラットな異界の全体図を即座に入手する事が出来た。《エネミーソナー》には大量の赤点で存在する悪魔の姿が表示されており、異界内で迎撃態勢の完了を見せている。統率されたかのような悪魔の配置は、警戒されている……或いは1回、異界攻略に失敗したかのような気配を見せている。
「どう、する……?」
「うーん、どうやら人命救助は必要ないらしいし、まともに戦う必要もないからね……最近思いついた外道コンボを試そうか」
「……?」
大丈夫大丈夫、とアンの背中を押しながら、入ったばかりの異界から脱出する。出た所でふむ、とゴウトが声を零しながらライドウの足元から此方を見上げた。
「もう音を上げた……という訳ではなさそうだな? お手並み拝見と行こうか、異国の悪魔召喚士」
「まぁ、見てなって。本当の異界攻略って奴を見せてやりますよ……!」
この状況なら一切遠慮せずにやれる、という事からアプリから召喚する仲魔は二体。召喚光と共に出現するのは丸いフォルムの地霊、ICBM先輩ことスダマ。そしてもう一体は完全耐性を保有する事によって、現状殺す手段が存在しないという驚異の耐性を保有しておきながら殺傷力ゼロのクソ雑魚唯一神、鳩。
二体を召喚する。その召喚を見て、ふむ、と声をライドウが声を零した。
「二体同時召喚や使役が出来るんだな」
「あぁ、一応6体ぐらいまでは同時に出せる。……と、いいか、先輩。おまえがついに輝く時代が来た」
「……!!!」
スダマ先輩を掴んでその顔? らしきものへと向かって言えば、その姿が今にも破裂しそうな輝きを見せた。よーしよし、と軽く撫でてからいいか、と声を零す。
「いいか、今日は普段ベルベットルームでやっているデイリー自爆みたいに芸術点を極める自爆じゃなくていいんだ。遠慮なく、全てを更地に変える様な冒涜的で暴力的な自爆を見せてやる時が来たんだ。あぁ、しかも相手が死ぬまで何度もな……」
「―――! ―――!」
「ハハ、こやつめ。フライングは俺の生死に関わるぞ?」
「あ、こら、放せ人修羅。くるっぽー! くるっぽー! アイ・アム人畜無害な鳩……!」
逃亡しようとしている鳩をアンが片手で掴んで捕獲していた。それを感謝しつつ受け取りながら鳩の足にスダマを近づければ、自動的にスダマが鳩の足を掴んだ。そしてそのまま、鳩の首を掴んでそれをこっちへと向けた。
「いいか、お前は今から爆撃だ。しかも無限再生する爆撃だ」
『仮にも主神にやる事じゃないよね、これ』
『だがそこが良いわ。もっとやれ』
『あぁ、Chaos側からの好感度上がっている……』
「サマナー、話せば解る」
「ごめん、俺人間だから鳩の言葉解らないんだ。だけど鳩からでも通じる言葉はあるよ」
「それは」
「サマリカーム」
鳩withスダマを異界の中へと投げ込んだ。ライドウとゴウトが数秒間、何をしているのか全く解っていないのか、疑う様な視線を向けてくるが、数秒後、その答えが異界の中から聞こえてくる。
「悪魔しか存在しないのを確認したら、馬鹿正直に攻略する必要ないんだよなぁ……」
異界の内側から自爆するスダマ先輩の気配と、それを甦らせる為のサマリカーム代のMagが体から吸い上げられるのを感じるが、溜め込むばかりで全く消費していないので、サマリカームを何発か連発しても余裕のレベルは蓄えてある。なのでサムズアップをライドウとゴウトへと向けるが、あんぐり、とした表情を一人と一匹に向けられていた。
「なんて奴だ……」
その言葉に再びサムズアップを向けた。必殺、ネトゲ式ゾンビアタック。サマリカームと自爆を繰り返すだけの戦い。今までは崩壊世界の建築物を破壊する事や、蘇生魔法を使える仲魔がいないという縛りがあったから無理だが、運び屋として鳩を使えるなら延々とこれを繰り返すだけ異界を更地に変えられる。
悪夢の外道戦術だった。
しかもこれ、何が凄いって自爆しているスダマ先輩が一番喜んでる。
「いやぁ、辛い試験でしたねぇ……」
「こんな方法で突破する奴がいるか!」
ゴウトのにゃーん、と響く声に笑い声を返しながら、ヤタガラスのお仕事を終わらせた。
ライドウ! かっこいい! 強い! ヒーロー! 好きなものはだいがくいも! 僕も好きですなぁ、アレ。美味しいよね。硬すぎるのもあるけど。という訳で誕生、鳩&スダマのミックスレイド……? ミックスレイドなのか……? これをミックスレイドと呼んで許されるのか。
でもスダマ先輩が楽しそうなので許す。確殺こそ正義。テロリストの鑑。
でも誰もが思う。更地にしたほうが早いよね。小説じゃないと許されないけど。