※この作品はR-18です。

女神転生Genesis   作:てんぞー

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大正二十年 Ⅴ

 アンとデートに出かけるつもりが衝撃の事実に続いてライドウとのエンカウントが続き、とてもじゃないが心が持ちそうにない。泣きそう。というかここで倒れて死にそう。とてもじゃないがもはや、デートとかいう気分ではなかった。しかもそんな此方の内心を一切理解する事無く、アンとライドウは大学芋を食べていた。

 

 能天気そうに、此方がどう思っているのかも知らずに。

 

 いや、この劣等感は全て、自分自身が悪いのだ。それは解っている。それを他人に向けようとする方が悪いのだ。それぐらい、良く解っている。第一俺の方が強い、って思ってマウントを取らないとまともに他人とコミュニケーションも取れないとか、頭が悪いにもほどがある。悪魔業界に突っ込んだのは事実だが、それでも人間性を捨てたつもりはまだない。だから深呼吸をして、心を軽くして、そして息を吐いた。

 

「ライドウたちはここへどんなご用事で」

 

「見て解るだろう。ライドウは好物を買いあさりに来ただけだ」

 

 溜息を吐きながらライドウの足元に居る黒猫、ゴウトが言葉に応えた。そのまま視線をライドウとアンへと向ければ、並んで容器から箸を使って大学芋を食べる魔人と超人の姿が見えた。人の形をした死とか言われる連中なのになぜこうも平和なのだろうか、と思ってしまえる光景だった。余計に溜息が漏れる。

 

「なんかウチの魔人がすみませんね」

 

「いや、此方も謝らなくてはならんだろうな」

 

 ゴウトと揃ってライドウへと視線を向ければ、もっきゅもっきゅと大学芋を幸せそうに食べる書生の姿が見える。そう言えば、身分は学生……だったか? 少なくとも見た目通りならそうなのだろう。自分はそこら辺の青春を永遠に失ってしまったので羨ましいと言えば羨ましいのだが、

 

 そうか、と思う。

 

 彼は年下なのか。

 

「それで、貴様らは」

 

「初めての逢引の途中でした……」

 

 その言葉にゴウトがアンを見て、此方を見て、大学芋の美味しい店を教えているライドウを見て、そしてもう一度此方を見た。

 

「なんかすまんな……」

 

「いや、まぁ……」

 

 アンを見ながら、溜息を吐いた。コーティングされてある芋を口の中へと運び、その一つ一つを美味しそうに食べる姿は見ていて、実に楽しそうだと思える。楽しそう、というか幸せそうなのだろう。きっと、Magが必要だから食べるのとは別に、彼女自身が食べるという娯楽を気に入っている事に理由があるのだろうから。だからそれを見て、思うのだ。惚れてしまった方が負けなのだ、と。

 

「たくさん食べる彼女の姿が好きなんで」

 

「成程。惚れた方が負け、と言う奴か」

 

「本人には伝えてないんでそこら辺はご内密に」

 

 食べるのに夢中でまるで此方の話を聞いていないアンを見ながらゴウトに告げれば、ゴウトは面白い物を見る様な視線を此方へと向ける。

 

「人と悪魔の恋、か。また身の程を知らぬとでも言うべきか……」

 

「そう大げさなもんでもないよ」

 

 ほんと、そんな大層なもんじゃない。自分が一方的にアンの事に惚れて、そして同時に恐れているだけだ。こんなもの、恋愛とも呼べない。少なくとも自分が彼女よりも強くなるまでは、恋愛なんて安心できないし。そして彼女よりも強くなれば契約によって強制力が出来てしまうから、恋愛には発展しない。

 

 どう足掻いても無理だと今更ながら、思う。だからこれは恋でも何でもないと思う。そう思っていると、アンが箸で大学芋を掴み、もう片手で此方を手招きしていた。再び必殺のあーんをしよう、という形だった。直ぐ近くにライドウとゴウトがいるから滅茶苦茶やりたくはないのだが、物凄い手をくいくい動かして呼んでいる。

 

 それに俺は、逆らえない。

 

 半分諦めながらアンへと近づけば、再び箸で口の中に大学芋を運ばれ、食べさせられる事になる。それを横で見ていたライドウがぴっしりとしたサムズアップを向けて来るので、滅茶苦茶恥ずかしく、両手で顔を覆う。

 

 もうやだぁ……。そう思いながらさっさと大学芋を飲み込んでしまい、食べ終わる。もうやだ、ライドウとは関わりたくない。素早くここから抜け出そうと心を決めながらアンの腕を掴む様に組み、逃げ出す様に引っ張り上げる。

 

「それじゃ! 俺達! 忙しいので!」

 

「いえ、此方も邪魔しました。そう言えば近いうちにヤタガラスが仕事を回すつもりと言っていましたので」

 

「ありがとう、さようなら、さようなら!」

 

 アンを引っ張って、そのままライドウの傍から逃げ出して。逃げ出しながらもアンはまだ芋を食べていた。そんなに大学芋が気に入ったのかお前……と思いながらも、ある程度ライドウから離れた所で早歩きだったのを止めて、普通に歩き出す。勢いのままアンと腕を組んでしまった。

 

 組んでいた腕を外そうとするが、それを否定する様にアンが腕を絡めたまま、身を寄せて来た。腕を絡め、身を寄せて来るアンの胸の感触が服の上からでも解る。滅茶苦茶困るのだが、それでも振り払う程の力が自分にはない……というか、振り払えない。

 

「ふふ」

 

 嬉しそうに腕を組み、楽しそうに笑い、幸せそうに食べる彼女に俺は勝てない。何がどう足掻いても勝てない。振り払おうと思った力も体から抜けて行き、まぁ、いいや、と考える。

 

 深く考えすぎるのも毒だ。何時も何時も、自分を苦しめているのは誰でもない、自分自身の劣等感であるという事ぐらいは、良く理解しているのだから。

 

 だから今は、このデートの間だけはそれを一旦忘れる事にする。いや、完全に忘れる事は難しいし、そこまで器用な男じゃない。

 

 だけど幸せそうに食べる彼女を見るのは、好きだった。

 

「この時代って戦後の影響が強いんだっけ? だから味付けとか薄いらしいんだよなぁ……美味しい料亭とかは紹介して貰う事が前提らしいし。うーん、次はどこに行こうか」

 

「サマナー……といっしょ、なら……どこでも、楽しい……よ」

 

「……おう。それじゃあ適当に回ろうか」

 

 特に詳しく街を知っている訳でもないし、大掛かりなプランがある訳でもない。それでもただ、彼女と戦う必要がないと解る場所で一緒に歩くだけでも十分に幸せだというのは解った。安い男だと思いつつも、

 

 平和な時間は永遠に続いてくれないという事ぐらいは。良く解っていた。

 

 

♦

 

 

 デートから満足げに帰って来て、なんでそこで押し倒さねぇんだよとベルにキレられて腹パンを喰らってから数日が経過した。与えられた屋敷で平和にトレーニングしたりコミュニケーションを取ったりして、死神と塔の扉の世界を思い出させるような平和な時間を過ごしていた。

 

 根本的に自分から依頼を取りに行く必要はなく、完全にヤタガラス側から斡旋される為、待つだけで済むのは凄い楽だった。まぁ、間違いなく警戒されているというのは事実なのだが、それを入れても生活費には余裕があるし、自分から危ない場所に飛び込んで生活費を稼ぐ必要がないのは、崩壊世界と比べれば警戒されている事実を込みにしても天国の様な場所だった。

 

 何時か、自分の世界もこれぐらい復興するのだろうか? そんな事を考えながら勉強、そして練習を続ける日常だった。

 

 デビルサマナーとして必要なのは戦闘技能だけではないのだから。既にレベルと経験は完全に不釣り合いと言えるレベルになっている。だからこそ、必要な知識を蓄えて、自分を鍛える必要がある。だから開いている時間は相変わらず交渉術やら神話知識を調べては暗記する様に努力し、そして仲魔たちとのコミュニケーションを取る事も忘れない。

 

 崩壊世界のサマナーから学んだ事だ。

 

 悪魔は合体しても、前の出来事を忘れるわけではない。そして従う事を契約としてCOMPに縛られても、完全に縛られている訳ではない。場合によっては契約の穴を突いてきたりする奴も存在する。世界を取り戻すために一緒に旅をしている仲魔たちがそんな事をするとは思いたくはないが、

 

 それでも主従でのコミュニケーションを取る事は非常に大事な事らしい。

 

 特に悪魔は概念的な存在である事を考えると、モチベーションや感情でコンディションが激変する存在でもあるらしい。だからこそコミュニケーションを取るべきらしい。酒を使って宴会をしたり、一緒に運動したり、勉強したり。日常的に接しながら主従だけではなく、一緒に戦うパートナーとして築く事が大事らしい。

 

 そんな訳で日常的に家の中では悪魔を放し飼いにしている。

 

 そしてそれを見てヤタガラスの使者が滅茶苦茶ビビる。どうやら、悪魔を一体以上同時に召喚させられるのはかなりの高等技能らしい。そしてそれを常に召喚し続けているとなると、もはや膨大なMagが必要となってくる為、そういう意味でも信じられない光景らしい。

 

 軽くヤタガラスの使者がショック症状を引き起こしていたが、

 

 持ち込まれたのは仕事の話だった。いよいよか、という感じがその時にはしていた。迷う事無く異界を爆撃する事でクリアするとかいう問題児を相手にヤタガラスがどんな仕事を持ち込んでくるのか、実の所ちょっと楽しみに、というか待っていた。何もせずに食う飯は美味しいのだが、心地の悪さがあった。早い所仕事かなんかで成果を出せば、心おきなくだらける事も出来る。

 

 そういう事で、漸く仕事の時が来た。その内容を確認すると、どうやら要人護衛らしかった。異界爆撃テロを行ったサマナーにそんな仕事を与えていいのか? と思ったりもしたが、どうやら戦闘力の問われる仕事であるだけに、自分をヤタガラスは指定したらしい。

 

 ともあれ、仕事は拒否する権利もない。

 

 ヤタガラスのおかげでこうやって平和な日常を過ごせているのだから。

 

 故に―――それは雨の日となった。

 

 

♦

 

 

 雨が降っている。

 

 昔は面倒だった雨だが、今ではそこまで嫌いじゃない。あの崩壊世界では雨が降らないのだから。そう、海が存在しない。水が不足している。だから雨が降らない。だから雨が降ると、少しだけ楽しくなってくる。降り注ぐ雨の中、少しだけ濡れるのは嫌いじゃなかった。少しだけ心が躍る感触に、どうやらアンも同じらしく、足運びが軽く踊りながら、降り注ぐ雨に体を濡らしていた。

 

 お互い、超人であり、魔人だ。雨で風邪を引くような事はない。

 

 仕事用の装備姿でヤタガラスに指定された場所は、軍事基地の前だった。そこには何台もの車が止められている。確か、この時代は車は結構な高級品じゃなかったっけ? と思い出し、それが何台も並んでいる姿に圧巻を覚える。

 

 そして同時に、此方よりも先に到着していた姿を見つけた。

 

 書生風の服装をしているサマナーの姿、つまりはライドウだった。だがそこにはライドウだけではなく、白いスーツの軟派そうな男の姿もあり、顔を隠すような恰好をした女の姿も見られた。ライドウの肩の上に居るゴウトはどうやら、女に対して文句を言っていたらしい。

 

 だが此方が来るのを見ると、強引に話を切って此方へと言葉を向けて来た。

 

「こうやってお会いするのは初めてですね、如月リュージ。私はヤタガラスの者になります」

 

「どうも」

 

「貴方の奇抜な発想と戦闘力は今回、妨害が想定される護衛任務にて最適だと判断されました。ライドウと協力して任務の完遂をお願いします」

 

「奇抜……」

 

『そらそうよ』

 

『どの世界に四文字を自爆テロの燃料に使い続ける事を発想するサマナーがいるって話よ』

 

 ここにいます。いや、だってアレ、最大の被害を巻き込みながら虐殺する為の最適解だもん……と、心の中で祈っておく。まぁ、生き残るために手段を選ぶのは悪い事だとは思わないし。それでも一応、時と場合というのは考えておく。ともあれ、ヤタガラスの女は去ってしまったので、代わりにライドウへと向かって軽く敬礼の様なポーズを取った。

 

「じゃ、今回は宜しくお願いします」

 

「此方も宜しくお願いします」

 

「貴様か……ライドウの足を引っ張るなよ」

 

「なんだ、お前の知り合いなのかライドウ。あ、俺は鳴海な」

 

「どうも、如月リュージです」

 

 完全に状況がアウェイだからか、口調がどうしても敬語寄りになってしまう。この業界では舐められないようにもうちょっと粗暴な口調でやってくつもりだったのに、ちょくちょく素というか、日本人気質が浮かび上がってくる。根本的にこっちの世界、俺向いてないんだよなぁ……と理解させられる。

 

 ともあれ、仕事をする以上は私情を挟み込まない。劣等感や嫉妬は全部捨てて、仕事モードのスイッチを入れる。ライドウもそれに気づいてか、背筋を伸ばして此方の言葉に耳を傾けてくれる。本当に真面目で善人なんだよなぁ……。

 

「仕事をする前にとりあえずお互い、隠している手札は隠すとして、話せる範囲で話しません?」

 

「デビルサマナーにとって悪魔の情報は命綱になりますが、それでいいんですか?」

 

「仕事はきっちり片付けたいタイプなので。先輩方も仕事をするならちゃんと仕事相手とコミュニケーションを取って、事前にハメ殺されない様に互いにカバーできるようにある程度情報共有しつつ立ち回る事が優秀なサマナーだって言われてますんで」

 

「何故その常識力をこの前発揮できなかった」

 

 ライドウを前にテンパってはしゃいでしまったのだ。許してください。というか忘れて欲しい、永遠に。アレは悪い記憶なのだ。それはともあれ、ライドウと軽く情報交換を行う事にする。やっぱり根本的にいい奴だ、と話しながら思う。仕事に対して真面目だし、此方の言い分が正しければそれを素直に聞く。

 

「此方でのサマナーは基本的に悪魔合体で習得させる魔法とかを厳選させたり、耐性を事前に調べて欲しい悪魔とかを調べられるので、それを通して仲魔それぞれに役割を与えて運用していたりするので、こいつが強い、アイツが強いとかじゃなくて状況や相手によって運用を切り替える、それぞれが特化された仲魔という形になっていて」

 

「成程、どうやら其方の悪魔合体技術はどうやら此方よりもかなり発展しているようですね。此方だとそこまで悪魔の合体で自在に変化させられる訳ではないので―――」

 

 特化運用がメインである二十世紀のデビルサマナーに対して、大正二十年のデビルサマナーはどうやらサマナーとの相性面を考慮した悪魔を選出する事の方が重要に思われており、使役される悪魔も基本的にサマナー一人に対して一体、そして召喚できる数も一度に一体まで、というのがスタンダードらしい。

 

「無論、ライドウにそのような制限は存在しないがな」

 

 ゴウトの自慢げな言葉が、やはりライドウはこの時代のサマナーとは別格である事を証明する。

 

 此方の時代だと悪魔との契約、召喚、その負荷や負担は極限までプログラムによって削減、軽減、肩代わりされている。だがこの時代のサマナーは悪魔の使役や契約を才能と脳の領域でどうにかする必要があった。DDSはその演算を機械に代替させる事によって、個人の才能に関係なく悪魔を使役させる事を可能とする、奇跡のプログラムになっている。

 

 才能でしか出来なかった特権を誰にでも出来る様にしたのだ、恐るべきはスティーブンだろう。悪魔の複数召喚もその為、大正二十年ではレア技能。それが出来るというだけで非常に貴重な戦力として認識されるらしい。

 

 それも当然だろう。デビルサマナーが根本的に一人で一体しか制御できない所、複数の悪魔を入れ替えながら同時に使役できるのなら、一人で数人分の働きをする事が出来るという事でもある。

 

 そりゃあ異界爆破テロなサマナーでも働かせるわ、と思う。

 

 ライドウ級の人材でもなければ複数使役が出来ないのであれば、複数の同時使役が出来るというだけで管理し、運用すべき戦力になってくる。

 

 ライドウとの話は、結構というかこの時代における常識を理解する上で非常に有意義な会話となった。

 

 ただ、もう一つ驚かされたのはこの時代にはレベルの概念が薄いという事実でもあった。どうやらアナライズの魔法やそういうプログラムが存在しない事に原因があるようだが、悪魔の強さをレベルの様な数値で測る事はなく、同時に実際に攻撃しない限りはその耐性を知る様な事も出来ないらしい。

 

 現代、というか科学によるサポートの存在する時代から来た身としてはなんとも恐ろしい環境だった。事前にレベルも調べられず、耐性も調べられないのなら比較的に通りやすい衝撃や疾風属性、或いはガードキルを取得している仲魔以外は全く安心して攻撃出来ない魔境環境だった。

 

「良く……生きていますね……」

 

「……?」

 

 相手のレベルも耐性も事前に取得できない環境で、それでも業界最強格を維持しているライドウという存在、環境の恐ろしさを知れば知るほど、その強さが際立ってくる。レベルや耐性も解らないのにぶった切って殺せるだけの実力。一人一体保有するのが通常な所に保有する複数の仲魔。そしてこの時代ではありえないとも表現できるほどの大量使役可能な才能。

 

 まさしく、葛葉ライドウという名に相応しいだけの怪物的実力者だった。

 

「じゃあ戦闘に入ったら支援と妨害をメインで此方でやるので、ライドウは自由に動くという事で宜しくお願いします」

 

「良いんですか?」

 

「えぇ、純粋な強さはライドウのが上でしょうし。見栄を張って失敗する方が恐ろしいですから。素直に強い人のサポートに回った方が結果が良くなりますからね、こういうの」

 

 渋谷での大規模レイドを思い出す。アレとか実に良い例だった。ただ戦うのではなく、数人で戦う場合は魔法などによるサポートを専門とする仲魔がいると、それだけで選択できる行動の幅が広がる。自分よりも強い人間がいるのなら、突撃の狼煙は無理でも、スク・カジャやタル・カジャで支援したり。スク・ンダで相手を妨害して自由にライドウを動けるようにした方が遥かに達成率が上がるもんだろうと思う。

 

 というかどう足掻いても今の自分ではライドウ並みの戦果を叩き出す事は出来ない。

 

 それは自分が誰よりも理解している。

 

 だから、これでいいのだ。分は弁えている。自分は脇役どころか、舞台の上には本当は存在しない人物なのだから。自分にそう言い聞かせながらライドウとの話を終えた所で、鉄を引きずる音と共に基地の入り口が開いた。ちりん、と澄み渡る様な音と共に基地の内側から大量の武装された軍人と共に姿を現す女の姿が見えた。

 

 その姿を車に夢中な鳴海以外の全員が捉えていた。

 

「サマナーを加えた上でこれだけの物々しい警護を必要とするだと? 一体何者だ……?」

 

 異様な数の軍人の姿に気おされながらも、即座にアプリがレベルを解析し、その大半がレベル的に10にも届かない連中である事を確認した。いや、それでも一般人、軍人であってもレベルが5に届くような人間は少ない。プロフェッショナルでももっとレベルは低い、とどこかで聞いた覚えがある。となると精鋭部隊とも呼べる連中を集めたのだろうか?

 

 良く解らない。

 

「媛、此方へどうぞ」

 

 そう言って車に乗り込む護衛対象を見た。その姿を見送りつつ、

 

「さーて、お仕事お仕事! さっさと終わらせて車を貰って帰ろうか!」

 

 なんて、陽気な鳴海の声が聞こえてきて、肩から力が抜ける。

 

「はぁ……それでは行くぞライドウ」

 

 ゴウトが先導する様に鳴海の乗り込んだ車へと向かうと、ライドウは足を止め、それでは宜しくお願いします、と軽く敬礼してから車へと乗り込んだ。その姿を見てから自分も、ドライバーが待っている車へと向かって。

 

 車へと乗り込めば、直ぐ横にアンが乗り込んでくる。流石の超人や魔人でも、濡れているのを即座に乾かすような力はないので、車内が濡れる。申し訳ないと思いつつも、車は終われば報酬として貰えるらしいし、まぁ、後で自分の物になるなら別にいいかなぁ、と判断する。

 

 とりあえず、

 

「それじゃ発進お願いします」

 

「了解です」

 

「ごーごー」

 

 アンの発信の言葉と共に車が動きだした。雨模様の空を窓の内側から眺めつつ、ライドウがいる時点で絶対に普通には終わらない予感を感じ、

 

 とりあえず、何時でもDDSから仲魔を召喚できるように準備だけはしておく。




 ライドウと共闘。

 コドクノマレビトを確認する限りレベル表記はしないし、どうやら一人に悪魔一体というのがスタンダードらしい。ゲームとはかなり違うのよねー。まぁ、アナライズできずレベルも耐性もチェックできない中レベル80超えて生き残っているって相当な化け物だよね。
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