ライドウと共に護衛の仕事をしてから数日後、頼りになるというか、戦力になると理解されたのか、ちょくちょくライドウが此方に顔出しをする様になった。ライドウが善良な人間であり、別に監視に来たわけではなく、彼がいる筑土町パトロールの帰りに此方に寄っているという事だけは解ったが、それでもまるでコミュが解禁されたかの如く、顔を出すようになってきた。
大学芋を片手に。
もしかしてパトロール帰りに大学芋をゆっくり食べられる場所を求めていただけなのでは……? という疑惑が持ち上がる。ともあれ、そんな風にライドウ共々ゴウトが寄り付く様になった。やってくると大抵居間で大学芋のパッケを開けてアンと箸か爪楊枝でそれを突きながら食べ、チェフェイがお茶を出している。
完全に馴染んでいる景色だった。
その間に自分が何をしているのか? となるとトレーニングだった。
悔しいが、自分が弱い事は自覚しているし、引き出しだってそう多くはない。出来る事と言えば銃を撃つか、或いは悪魔に戦いを任せたり、道具を使うばかりだ。異能者サマナーと比べれば、余りにも引き出しが少ないと評価するしかない。だからそこを埋める為にも、
ライドウの人外ぶりを見てからも、更に自分を鍛えるようにした。というか鍛えないと生きて行けない様な気がするので、必然的に鍛える必要はあった。
この前のアンズーの群れは正直、雑魚だった。あの集団が一体一体スク・ンダを一回でもいいから唱えていれば、それだけで此方を封殺できたかもしれなかったのだ。なのにそれを相手はしてこなかった。殺意的には温いとさえ表現できるが、もし、相手がこういう戦術を取り入れて戦う様になれば、
その時は果たして、俺には戦えるだけの力があるのだろうか? ラヴェンツァは俺には俺だけの力があると言っていた。絆と繋がりを力にする様な能力があると言っていた。だけどそれは上手く、使い処も使い方も解らない。そんな不確かな物に頼る事も出来ない。だとしたら自分の手札を増やす為にも鍛えるしかないのだ、
自分自身を。
そういう事でヴァラーハに頼んで、武芸を教えて貰っている。ヤタガラスに連絡を入れればサマナー用の武器の購入は出来るので、それを通して訓練用の武器を購入してヴァラーハから学んでいる。
「まぁ、サマナーにここら辺の才能はまるでないけどね!」
「知ってた」
どうやら戦闘能力としての才能は全部ガンスリンガーにガン振りされているらしく、銃以外の才能はほぼ並程度しか存在しないらしい。だから戦闘する時はいっそ、それ以外での戦闘手段は諦めた方が早いとか言われてしまった。
「まぁ、どこまで頑張っても一流程度が限度だよね、サマナーだと。とりあえず、一流程度には辿り着けるから心配しなくていいよ、サマナー。それに一流程度あれば大抵の相手には通じるからね! 本番はそれを乗り越えた所にあるけど、まぁ、とりあえず銃以外の技能を一流レベルにまで引き上げようか!」
インド基準で考えるの止めろ。そう突っ込みを入れても一流程度の武芸があって基本、入り口だとかいうヴァラーハのスパルタ訓練は続く。うっかり大けがをしても回復魔法万全の鳩が存在する以上、まるで問題にならない。とはいえ、何時も怪我をする訳ではなく、怪我をするのはヴァラーハとの組手の時ぐらいであり、それ以外は至極真っ当に素振りや動きに対するアドバイスを行われ、ひたすら反復練習を繰り返すという形だった。
「剣、槍、弓、斧、そしてそれらを支える体術! 僕もかつては師からそれを学んだ身、なぁに、少し死ぬほど苦しめば簡単に一流程度にはなれるさ! 基本だからね!」
「お前のそのインド基準止めろ」
「大丈夫! サマナーはクソ雑魚だし、才能はないし! どれだけ鍛えても絶対に武芸者としては大成する事はないけど、僕は一流の指導者としての経験があるから短期間で才能限界までは武芸を育て上げれるよ!」
「ほんと泣くから止めろ」
「だけど僕はサマナーがこの苦難を乗り越える事を信じてる……!」
「ぶっ殺すぞこいつ」
無論、スダマ先輩で。まぁ、脅した所で寧ろ喜ぶのでこいつはダメだ。なので仕方がなく……でもなく、強くなる為に日々、ヴァラーハに古代文明仕込みの武芸を叩き込まれて行く。だがそれを見ていて大人しく出来る程ライドウも良い子ではなかった。
「解りました……苦労を分かち合いましょう」
「何が解ったのかこっちを見て言って」
「乱入だって? 良い度胸だ―――歓迎しよう!」
「助けて」
しかもそれをヴァラーハは止めない。そういう事で、大学芋を食べた食後の運動にライドウが混ざる様になった。庭でヴァラーハの指導を一緒に受ける様になりつつ、時折葛葉流最終奥義前転を見せて不思議な軌道でヴァラーハの攻撃を完全回避したりする姿は、もはや異次元としか表現が出来なかった。
葛葉ライドウともなると前転で次元を超えるのかもしれない。
そんな事もあり、ちょっと予想外……というよりはちょっと気後れしてしまったが、いつの間にかライドウがちょくちょく出入りする様になった。その本当の理由は恐らくは監視か何かなのだろうと思ったりしている。あの護衛依頼の時に、複数悪魔の同時使役を始めとした、この時代では見慣れない戦術やハメ技を見せた事で警戒されてしまったのかなぁ、と個人的には思っている。
ただ、まぁ、
大学芋を食べるアンの表情は、何時も通り幸せそうだった。その幸せそうな表情はほとんど無表情と呼べるもので、自分の様に毎日付き合った人物でもなければ解らない様な小さな変化なのだが、それを見ているだけでも結構幸せだったので、この際、ライドウが大学芋を持ち込んでくる限りは文句を言わずにいようという事を決めていた。
そうやってライドウがちょくちょく入り浸る事が増える様になって、生活もそれに合わせてちょっと変化する。来客用のお茶請けを買ってくるようにチェフェイに指示されてなぜかサマナーである自分が買い出しにパシらされる事が増える。なんだかんだで日常的に家事を分担しているチェフェイなので、そういう事に段々と真剣になり始めている部分があった。
お前、人間を堕落させる側じゃなかったっけ……?
そんな事を考えながらも、毎回作ってくれる夕飯が美味しいので逆らえない。朝も早いうちに叩き起こされて健康的な生活を送ってしまう。そしてそのままヴァラーハとの鍛錬コース。
恐ろしい程に健康的な日常になっている。
そしてここにライドウがちょくちょく出没する事で、ライドウと合わせて鍛錬したり、ライドウ本人から技術を学び始める様になった。ライドウ自身は悔しいがやや年下でも雲の上の様な実力者だった。悪魔、戦闘、魔術や神話形態に関する知識はずば抜けており、此方よりも遥かに上だった。
一緒に鍛錬に混じってくれるだけで割と、勉強になるのだ。悔しいが。
ライドウのクズノハ式とでも呼ぶべき体術はヴァラーハの教えるそれとは違っていた。ヴァラーハの武術は人間が人間を殺す為の技術であり、ライドウのそれは人間が悪魔と戦う為の体術だった。根本から目指すものが違う二種類だった。ただそれがそうである、という事を知るだけでも割と力になる。そういう訳で豪華なゲストを加えつつ、鍛錬は続く。
それでも短時間で成長できる程、世の中は甘くない。
「それじゃ、音頭取るわよ……一」
「二!」
「三なのじゃ」
「溢れ出す信仰が抑えられず人類が愛と平和に包まれてしまう四」
『その時魔王はたわしを手に取った。そしてそれを勇者へと突きつけながら叫んだ。おぉ、これがオムレツに入れる最後の隠し味だ! セラエノに引きこもった教授マジ許さねぇ……! ミニニューク! ミニニューク! ン・ガイの森を放火だ!』
「良し、全員揃ってるわね」
「正気じゃないのも含めて揃っておるの」
「それがデフォだから……」
深夜、居間にはアンとリュージを除いた家の住人たちが集まっていた。話しながら摘まむ為にチェフェイの出した抹茶と栗羊羹の組み合わせは、時間帯を考えれば殺人的とも呼べる組み合わせだった。或いは、悪魔的な組み合わせとも。だが悪魔である彼らは眠気とは無縁であり、虫歯とも無縁である。つまりこの乙女が体重を気にしそうな組み合わせも、眠気が吹っ飛びそうな組み合わせも、まるで関係ない。
貪欲の化身、全王神の化身、魔界の宰相、神聖四文字の分霊、そして爆弾。バリエーション豊かすぎると表現できるその組み合わせはサマナー・リュージが現在使役する仲魔たちの姿であり、アンを除いた全ての仲魔が家の居間に揃っていた。示し合わせたように揃った悪魔たちはお互いを見やり、そして確認する。
「サマナーは?」
「部屋で眠っているね。軽く予知してみたけど朝までぐっすり眠ってるよ」
「あの子は?」
「サマナーを抱き枕にして添い寝しておるのぉ」
その言葉に人の、女性の姿を取っているベルゼブブはそう、と呟きながら頷き、そして腕を組みながらそれでは、と言葉を置いた。
それは悪魔たちの集まりだった。
主にさえ秘密にして開かれる悪魔たちの会合。
仲魔たちだけで開かれる、主には絶対に知られてはならない裏切りの集い。
その内容は、
「―――さぁ、今夜もどうやったらサマナーのヘタレ具合を矯正してあの子を抱かせるか考えるわよ」
どうやったらサマナーが童貞卒業するか、それを物凄く真剣に考える集まりだった。
その達成難易度の高さに、揃った悪魔たちは珍しく腕を組み、首を傾げ、そして低い声で唸っていた―――スダマ以外は。スダマだけは栗羊羹をバーの状態のまま口に咥えながら高速でちゃぶ台の上でスピンしていた。その全身で甘味の喜びを表現しているだけだった。
「この前の突撃! 一緒のお風呂! ~濡れた君の髪が艶めかしくて……~作戦は失敗したわね……」
「少なくとも不能じゃないって判明しただけでも良い方じゃろ、アレ」
「トラウマが原因でEDになる事はそこまで珍しくないけどね!」
「EDになられたら困るのよ。マジで」
悪魔たちの繰り広げている会話はかなり下世話な内容だった。その議題はどうやったらサマナーの童貞を女魔人を相手に喪失させられるか、という点に尽きる。サマナーの仲魔たちは毎晩こうやって集まってお茶をしながら、真剣にその事を考えていた。その絵面はまさに馬鹿々々しいという言葉に尽きるが、その内容は割と真面目だった。
「あの子の食欲が増えているのよね……」
ベルゼブブが溜息を吐く様にそう呟いた。徐々に、徐々にだがアンという女魔人・人修羅の食欲が増えて、食べる量が増えてきている、と。
「まぁ、もうしばらくは妾が飯を多めに炊くが故、保つじゃろうが」
「それでもその内、限界は来るだろうね。恐らくこの世界を出て行く辺りから苦しくなるかな?」
ヴァラーハも人間の姿で少し、考える様に計算してから言葉を口にし、そして他の悪魔たちから同意を貰った。何も、この悪魔たちの会話内容は決してふざけているものではなかった。
「レベルが上がれば上がるほど体を維持する為のMagは増えてくる」
「僕らの様にアプリの機能でコストカットできる悪魔とは違って、彼女は肉体を保有しているからね。節約モードになる事が出来ないからどうしてもMagが必要だ。今の所、この時代には色々と感情が渦巻いているから空気中のMagがそこそこ豊富で悪くはない。だけどレベルも上がって来て大分苦しくなってきたね」
悪魔を維持するためにはMagが必要となる。
スティーブンが生み出したDDSプログラム、アプリは本来それを使役するのに必要とする演算の為の才能や資質をプログラムという形で負担する事によって、個人の才能に関係なく召喚、契約プロセスを可能にする道具だ。そしてそれに際し、様々な機能を付随する事が出来る様になる。
悪魔の召喚、維持にはMagが必要となる。
だがDDSで召喚する悪魔はMagで肉体を作られている。そしてその維持は同じMagを循環して利用している為、常にMagを消費し続ける必要はなく、一度召喚に使ったMagだけで継続的に召喚し続ける事が出来る。これが前時代のオールド・サマナーとは全く違う。オールド・サマナーは個人の才能に召喚や維持が任される他、召喚し続ける事にもMagを消費する必要があるのだ。
その為、サマナーが倒れたり、Magが切れた場合はそのまま、召喚が解除されてしまう。
だがスティーブンが生み出したDDSで悪魔を召喚すれば、話は別だ。スティーブンのプログラムの画期的な所は誰でも、そして一度のMagで悪魔を召喚し続けられる点にある。その他にも専用のアプリやプログラムを導入する事で戦闘力を制限する事によって悪魔を生活用に力とMagを抑えた状態等で召喚する事も出来る。これが今のヴァラーハやチェフェイ達の状態になる。つまりは省エネモードになる。
だがそれが出来るのは現代のCOMPベース、DDSプログラムの恩恵を受ける事の出来る悪魔だけになる。
肉体を持たないからこそ、情報量を削減する事でMagの節約を行っているから当然の事になる。
だが、肉体のある悪魔、魔人などは違う。肉体とは即ち高密度の情報である。つまり物質として存在している情報の塊になる。それは肉体を得ている悪魔、高レベル存在というものだ。そしてそういう肉体を維持するにはもはやMagの存在は必要不可欠になってくる。
Magの調達方法は複数ある。食事する事、信仰を集める事、感情から摂取する事、そして他人から譲渡される事。この内一番手軽なのが食事をする事。これは食べる量を増やせばそれだけで済ませられるので、まだレベルが低い内はどうにかなる。
だがレベルが上がってくると話は変わってくる。
英雄級とも呼ばれるレベル40に近づけば近づく程、肉体を維持する為のMagが要求される様になってくる。超人等の人間ベースの高レベル存在はまだよい。なぜなら人間は自分自身の力でMagを生み出す事が可能だからだ。少なくとも自分を維持するだけのMagであれば、何らかの手段に頼らなくても普通に生きて行こうとすればMagの余りが出来る程度には余裕がある。
だが悪魔はMagを自発的に生み出す事は出来ない。
何らかの手段で摂取する必要が出て来る。それは肉体を保有し、元は人間だった悪魔でもそうなる。
つまり人修羅・アンは自分の力でMagを生み出せない体質となっている。彼女の大食は彼女自身の趣味もあるが、同時に足りていないMagを補充するという意味合いも込められている。彼女が取るスキンシップもサマナーに対する親愛の情が含まれているが、そのリアクションから生まれてくるサマナーの感情Magを摂取する為に半ば、本能的に動いているという部分もある。
「まぁ、サマナーが童貞らしいリアクションを見せてくれている間はまだ安泰だと思うけど……いい加減、サマナーの方から手を出してくれないと困るのよね」
「じゃないと二人の初体験が逆レになってしまうのじゃ」
「うん……」
アンのMagが足りなくなってきた場合、食事とスキンシップで足りなくなってしまった場合はどうなるのか? それをリュージの仲魔たちは良く理解していた。サマナー自身はまだ、好意そのものを疑っている部分はあるが、それでもアンがサマナーに対して好き好きオーラを向けているのは事実だし、誘えば一瞬でベッドインできるぐらいには好感度が高いのも理解していた。
だったらMagが足りなくなったらどうなるのか?
そう、逆レイプである。
単純にアンのMagへの飢えとサマナーへの好感度が我慢の限界に来て二人の初体験が逆レイプになるだけだった。というより、このまま放置していればまず間違いなくそのコースが強い。何もかも悪いのはヘタレているサマナーなのだが、その境遇には同情出来る部分もある為、一概には完全に悪いとも言い切れなかった。
そんな考えから始まったのがこの仲魔たちの集いだった。
どうにかしてリュージにアンに手を出させよう。
それを会議する為の場だった。
ただ、問題は予想外にチキンでグラスハートなサマナーの存在であり、もう半ば諦めている形で逆レイプでいいんじゃないかなぁ、と大半が思いつつあることだった。それでも逆レイプENDに到達してしまったら恐らく、空気が最悪になる。
―――それはめんどくさい……!
という共通する考えから、所謂ラッキースケベやイベントを企画し、それで何とかサマナーに押し倒させようと後押しをしていた。
死ぬほどくだらない内容だが死活問題だった。
「というか鳩もなんか口を出しなさいよ」
「いや、我は婚前交渉は悪いと思うから……」
「人の神殿を便所に改造した畜生が何か言ってる」
「原典の話を持ち出すのは止めないか」
ベルゼブブが憎しみたっぷりの視線を鳩へと送り、それを受けた鳩が目を反らしながら嘴で口笛を吹こうとして失敗している。
「というかサマナーはちゃんと女体に対して興味あるんだよね?」
「妾が閨の手管を教えている間はちゃんと勃起しているのを確認しておるから問題ない筈じゃぞ。それでも妾襲われないんじゃが……」
「やっぱりヘタレじゃない」
ベルゼブブの言葉にうん……とヴァラーハとチェフェイが呟きながら頷いた。栗羊羹を口に咥えたままのスダマが高速回転しながら浮かび上がり始めるのをベルゼブブが片手で掴んでテーブルの上に叩き落した。
「僕が彼の年齢の頃は分身して100人同時に相手をしたんだけどなぁ……」
「参考にならないケースの話は止めなさい」
「妾思うんじゃが、やっぱり一発経験した方が度胸がつくんじゃないじゃろうか」
「駄目よ。あの子が悲しむじゃない。アレで結構乙女なんだから」
「人修羅にだけクソ甘い……」
当然よ、とベルゼブブがスダマを指先で転がしながら応え、溜息が居間に広がる。悪魔たちの最大の敵は他の悪魔でも世界でもない―――主のヘタレさ加減だった。いい加減、女の一人でも押し倒せるぐらいのメンタリティでもつけて貰わないと自分の番もないし、Mag補充や他の面で見ても辛い話だった。
「我、思ったのだが」
鳩がくるっくー、と声を鳴かせながら嘴を開いた。
「そも押し倒すとか考えるのが間違いなのでは? 普通に告白させる事を目標として、その後でステップアップする事を考えるべきなのでは? 我、童貞にいきなり性交渉しろというのはちょっと早いと思うの。だから先に告白、キスとステップを重ねるべきでは?」
「何故じゃ? セックスなんて挨拶の様なもんじゃろ」
「どんな男だって結局のところ女を組み敷きたいって思ってるんだから、サマナーのその気持ちを刺激したほうが早いわよ」
「駄目だ、倫理観が違う」
鳩の言葉にカオス勢力が当然の様に首を傾げた。倫理観が死んでいる奴らに意見を求めたのが間違いだった、とライト勢力のヴァラーハへと鳩がつぶらな瞳を向ければ、
「……? 練習も必要だしセックスするのに段階って必要なのかい?」
「王族」
まるで頼りにならなかった。そこで鳩は気が付いてしまった。人間という種族全体の扱い方は恐らくカオス勢力が理解しているだろう。
人の動かし方を理解しているのは統治者としての経験を持つライト勢力だろう。
だけど、普通の人間、それを等身大で理解出来ているのは人々の生活に寄り添い、そしてそれを見続ける事が出来たライト・ロウ勢力の鳩のみだった。最後のアライメント超不明のスダマに関しては会話さえ出来ない。
「四面楚歌……!」
そう、人という種の面ばかりを理解している超越者的な悪魔ばかりである為、等身大の普通の人間というものを知る悪魔が極端に少ない構成だったのだ。世界の危機、崩壊した世界の再生を目的とするパーティーである事を考えれば、納得の面子ではある。
だが普通のメンタリティしか持たない人間のカウンセリングをする面子としては落第だった。
まさに四面楚歌。鳩から見て色んな意味で味方が居ない状態だった。
「じゃあ、そろそろ次回に行う作戦をそろそろ募集するわ。そろそろもうちょっと派手目のスキンシップを狙っていいんじゃないかと思うのよ」
「丁度一緒に寝ている所じゃし、人修羅の服を脱がして朝起きたら全裸だった! 作戦はどうじゃろう」
「採用」
「ついでにサマナーも全裸に剥いておこう」
「追加採用」
「おぉ、神よ―――あ、我が神だ」
そうやって、帝都の夜は平和に更けて行く……。
仲魔どもの頭を空っぽにした会話が余りにも楽しすぎる。
仲魔同士でのコミュニケーションは実は珍しかったりする。基本的にコミュニケーションは仲魔とサマナーの間で行われるものという認識。なのでこうやって集まって会議する仲魔たちというのも結構面白かったり。
理解者が鳩しかいないという。まぁ、個人の苦しみを癒すためにやって来たのが鳩だから当然と言えば当然なんだけどね。