「君に従うだけの理由が僕には見つからないんだけど?」
「あぁ、そうだろうな!」
星命は敵だ。自分よりもレベルは上だが―――絶望的な程レベル差があるという訳ではない。セイリュウとビャッコを殺したおかげでレベルが上昇した。その分を含めればある程度は肉薄できるだろう。星命との交渉が決裂した瞬間、ルーチェ&オンブラの銃口は既に星命の頭を狙っていた。
それにめがけて、迷う事無く引き金を引いた。音速を超える弾丸を使い魔を盾にする事で星命は回避し、カウンターにセイリュウ、ビャッコ、スザク、ゲンブが襲い掛かってくる、素早く《アナライズ》でレベルと耐性を取得しながら情報共有し、四聖獣を無視しながら星命に肉薄する様に蹴りを叩き込む。
「ベル、セイリュウ! ナラシンハ、ゲンブ! スザク、チェフェイ! ビャッコはアン!」
「妾らレベルで負けておるんじゃけど!?」
「気合入れろよォ! 仕事はライドウに受け渡すまでだぜ……!」
「クレイジー・ジャパニーズ……!」
星命に一気に肉薄し、蹴りを叩き込みながらオボログルマの横に倒れている集団から引き剥がそうとするが、それを使い魔が遮って邪魔する。使い魔を蹴りでミンチにしながら、銃弾を連射して星命を押し出す為に攻撃するも、それを使い魔の壁を作って時間を稼ぐのに利用し、星命が札を振るう。
「救急如律令」
「マカラカーン」
「トゥーサムタイム」
マカラカーンで陰陽術を反射しながら生み出された隙を《トゥーサムタイム》による連射で使い魔を一掃する。コスモガンであるL&Oにリロードの概念はMagと魔力が続く限り、気にする必要はない。ダンテ仕込みの音速連射で化け物を掃討していきながら一気に星命に肉薄する。
そして蹴りを叩き込み、それをガードさせる。みしり、と肉がきしむ音を生みながら星命が蹴り飛ばされる。
「オン―――」
吹き飛ばされながら星命が呪殺魔法を放ってくる。だが服の下に着込んだテトラジャマーがそれを阻害し、呪殺を無効化する。距離を開けた星命に対して装備をブルームへと切り替え、スダマ弾を放つ。進路上の家屋を全て爆裂し、帝都に傷跡を残しながら炸裂が星命を飲み込んでいく。それを符の一振りによって手元へと召喚したゲンブによって星命が耐えた。
ゲンブが蒸発するも、即座に蘇生する。動き出そうとするゲンブをグライダインが上から押さえつけ、家屋を貫通させるように大地へと落下させる。そして陥没した所にフレイダインによる核熱爆破が連続でその姿を捉える。
その合間にスダマドラオンを連射する。放ち、コールバックし、サマリカームを鳩に使わせて再装填しながら再びブルームで星命へと向けて放つ。
「セイリュウ、スザク、ビャッコ、ゲンブ」
それを星命が手元に呼び寄せた四聖獣の存在によってガードしながら死亡させ、そして死亡状態から再蘇生させる。終わりのないループにチィ、と吐き捨てながら再び地形を吹き飛ばす様にスダマをブルームから射出する。放つ破界の一撃による反動が両腕を痺れさせる。だがそれを鳩に癒させ、連続して星命を消し飛ばす為に判断し、動き続けながら戦闘を続行する。
「流石ライドウが選んだ代理なだけはある……格下と侮っていたけどまさかここまで戦えるなんて」
「俺と敵対した事を後悔したか!」
「確かに驚異的な対処能力だ。実力を瞬時に解析し、それに相応しい相手をぶつける事で即座に対処を可能としている。その上で希少魔法をいくつも備えている。間違いない。君はサマナーとしては僕が知る以上、ライドウに並ぶ厄介さを持っている。だからこそライドウ同様、この世界から消えて貰うよ」
「やれるもんならやってみろクソガキ……!」
ガチャリ、と音を立てながらブルームをストレージに戻し、ルーチェ&オンブラを握り直した。スダマ連射では帝都が吹き飛び続けるだけで致命的なダメージを星命に与えられない。ここは四聖獣の抑え込みに仲魔を回して、自分と鳩で星命の相手をする必要がある。
「子よ、熱くなり過ぎるな。ライドウを謀った青年が憎いのは解る。だがその怒りに飲まれるな」
「ッ……!」
鳩の言葉に冷静さを取り戻しながら符を取り出す星命の動きを阻害する様に、先行射撃を行って
「お前に相応しいのはカンオケだ……!」
銃口から数十を超える弾丸を雨の様に降り注がせながら弾幕を張るも、片手で結ばれた印によって星命の正面に障壁が生み出され、それが弾丸を阻んだ。
「ダンテ、《The Tower》!」
ラヴェンツァからベルベットルームで受け取った、ダンテの絵柄の塔のカードを稼働させる。瞬間、《射撃ガードキル》が自身の攻撃に刻み込まれた。時間を稼ぐ為に生み出された障壁を紙の様に切り裂きながら弾丸が星命に到達した。神経弾が星命の体を僅かに蝕んだ。
同時に、
「こなっ、クソォ―――!」
素早く屋根の上を転がりながら粉砕する様に蹴り飛ばして、直後、落ちて来た象を思わせるような悪魔の攻撃を回避する。転がった先で、多腕の悪魔が拳を複数構えていた。
「はっはっハッハッハ!」
「ライドウの様に、お前も苦しんで消えろ―――!」
「電装《電撃弾》《神経弾》、セット!」
「テトラカーンッ!」
アタバクの拳が叩き込まれるも鳩のテトラカーンが間一髪間に合う。凄まじい衝撃を受けながらもアタバクが自分の拳によって攻撃を反射され、それで自傷していた。速度で勝るガネーシャが回避した直後から此方へと突っ込んでくる。テトラカーンの張り直しが間に合わない。
ここは、
「受けるっ―――がっ―――」
ガネーシャの攻撃を生身で受けた。スティーヴン製の概念強化防具を利用していなければ一瞬で体が真っ二つにされていただろう衝撃はしかし、鳩が放つラスタキャンディのおかげで耐えれる領域にまで自分を強化し、耐えられた。
屋根が崩れるのを感じつつも、耐え抜き、血反吐を吐き捨てながら神経弾と電撃弾を装填したルーチェ&オンブラでトゥーサムタイムを放つ。
ダンテ直伝の銃技が放たれる。神速のトリガーが弾丸の嵐となって的確に射撃耐性を貫通しながらそれぞれの弱点属性を弾丸で穿つ。神経をアタバクが蝕まれ、ガネーシャが電撃弾によってSTUNする。
「月まで吹っ飛べッッ!」
動きが停止した所を蹴って纏め、そのままブルームで市街地を吹き飛ばしながらスダマドラオンを放つ。爆裂の閃光にガネーシャとアタバクを飲み込み、完全に消し去って経験値へと変換させながら殺害する。さっきから何人も人を殺しているのに、それが心に響く事はない。
俺も、だいぶ人でなしになってしまった。
だがそれでも、
「星命くぅん! ゴミ箱かカンオケか選び終わったー?」
壁を蹴って、再び屋根の上へと上がり、ブルームからL&Oへと武装を切り替える。屋根の上へと着地すれば、星命が符によって陣地を形成している姿が見えた。
「それを必要とするのは君の方じゃないかな?」
星命が言葉を切り返しながら空間を陣地で歪めて行く。それを破壊する様にブルームをもう一度取り出し、それを地面へと打ち込んで地形そのものを破壊する事で構築されていた陣形を粉砕する。片足でブルームを抑え込みながらL&Oを星命へと向けた。狙われながらも、大胆不敵な表情を星命は崩さない。事実、《ハニー・ビー》は更にレベル50を超える悪魔数体の接近を知らせ、そして此方の仲魔が完全に分断されている状況を作っているのだ、
此方が何度か四聖獣を殺せているものの、有利かで言えば……相手の方が有利だ。
だけどそんな事はどうでもいい。
俺が許せないのは別の話だ。
別に、星命が実はコドクノマレビトの一員だというのは俺自身はどうでもいいのだ。
だけど―――こいつは、
「
「子よ、落ち着け」
ふぅ、ふぅ、と息を吐きながら星命を睨む。普段は頼りにならない鳩の声が、ささくれだった心を癒して行く様な気がする。それでも激怒に包まれた自分の熱は、欠片も消えやしない。
こいつはヤタガラスに居た。
そしてライドウと一緒の姿を見る限り、敬語を必要としないレベルで近しい存在だったのだろう。
しなくてもいいのに。
それが殺したい程許せない。
自分から友を捨てる様な屑を。必要でもなく、その選択肢を考えて選んだクソを。
それだけは絶対に許せない。事情はどうあれ、友を捨てる様な奴は屑だ。クソだ。カスだ。
そうじゃなきゃ―――この旅は俺への罰にならない。
「お前は引きずり倒す。そして戻って来たライドウの前で土下座させてやる。安心しろ。一回ぐらいぶち殺してもサマリカームで甦らせるからな」
「我が」
鳩が肩の上で胸を張る。こいつがほとんどオプションパーツの様に活躍しているが、こいつが居なきゃ間違いなく戦いにすらならないだろう。とりわけ、ラスタキャンディの効果が滅茶苦茶高い。支援魔法によるバフで全能力を限界点まで強化しているからこそ対応できる戦闘になっている。だが、
「無駄だよ―――ライドウは帰ってこない」
「あぁ、お前が起きている間はな!」
跳躍した。直後、背後に忍び寄っていた斬撃を回避する。振り抜きに銃撃すればそこには刑務所で見たオウハンの姿が見えた。ただし、今回はあのマスクを装着しておらず、素顔を晒していた。とんだイケメンもいたもんだ、と毒を吐き捨てながら引き金を連続で引く。オウハンと星命に同時に射撃するも、
オウハンが射撃を斬り払ってガードする。その間に星命が詠唱する。
「弾けて消えろッ! スダマ先輩」
『夢は夢にトイレへ行きたいです』
後ろへと下がりながらスダマを召喚し、それを蹴り飛ばしてオウハンと星命へと向ける。射撃の高速連射に反応し、スダマが爆裂する。指向性の存在しない花火の様な連続爆破が至近距離で発生し、空間を丸ごと飲み込んで行くのを鳩を壁にする事で自分だけ回避する。鳩のぐわあああ、という声が聞こえてくるのをガン無視する。
そのまま、どうせまだ死んでないであろう星命に銃口を向ける。
だが爆発を抜けて来たのはゲンブだった。
鈍器の様に投げつけられたそれを横へと跳んで回避した所で、
「まだ未熟だな」
その影から、オウハンが飛び出してきた。
「しま―――」
「テトラカーン!」
鳩が素早くテトラカーンを張る。だがオウハンは此方の反応よりも早く、
「テトラブレイク」
テトラカーンを剥がされながらオウハンの剣が心臓に突き刺さった。吐血しながらも、強靭な超人としての身体能力が即死を許さない。心臓を貫通した剣を掴んで、それをそのまま握潰ししながら引き抜いた。踏み込みながら頭突きをオウハンに叩き込んでいく。額から血が流れて顔を濡らす。
そのまま、銃を握ったままトリガーを引きながら殴る。
一撃、二撃、三撃―――十六連撃。
ノータイムで打撃と銃撃を同時に行いながらオウハンに弾丸とダメージを叩き込んで行き、即死ダメージを鳩にサマリカーム等で回復させる。常時回復させながら殺す為に動きを作っていく。
だがその動きを崩されていく。
星命の符術で動きを抑え込まれて行く。デクンダで解除する頃にはガネーシャ、アタバクが新しく増えていた。オウハンはほとんどダメージを受けていない。更に異形化した魔人達が群がってくる。仲魔は全て迎撃の為に出している為、星命とオウハンを攻める為の手札が足りない。
スダマを爆裂させても、レベルと物量差で押し込まれ始め、
再び、刃が体に突き刺さる。符術によって能力を制限され、デクンダデカジャをお互いに打ち合ってリセットし合う中で、此方が少しずつ削られていき、
「良く頑張った―――だけど君には力が足りなかったね」
オウハンの新しい剣が胸を貫通し、それを横に引き裂く様に薙ぎ払われた。心臓を体から弾き出す様に吹き飛ばしながら、臓器を弾き出された。サマリカームで即死を直そうとするが、それよりも早く次から次の攻撃が体に突き刺さる。数の暴力から対応が追い付かない。痛みを声に出さない様に堪えながら引き金を引くが、
「サマナー……リュージッ!」
それよりも早く、数々の武器が体に突き刺さり、
内臓が、腕が、足が引きちぎられる。
首が切断される。
仲魔が遠い。
「さようなら、サマナー。君の奮闘は中々のものだったよ」
―――抵抗する暇もなく、体がバラバラに引き裂かれ意識を失った。
ざんねん リュージ の ぼうけん は おわってしまった!
事前情報から本気で殺すべき相手だと判断して戦力投入しつつしっかりとデカジャデクンダを持ち込んで対策しつつテトラブレイクまでしてくる敵、ぐう有能。
裏切りはある種逆鱗。自分が誰よりも裏切って生き残ってしまったという認識を持っているだけに、友情を裏切ったりする事に関しては一瞬で沸騰するレベルでキレる。