※この作品はR-18です。

女神転生Genesis   作:てんぞー

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神州混沌行脚 Ⅸ

「高位になればなるほど、概念的な行動が増えて来るわ。言葉遊びとも言うけど。まぁ、それだけ存在として高位であるという事でもあるわね。代表的なのは時間軸に介入して自分の行動を増やす《眼光》と呼ばれる奥義ね……まぁ、さっきのはかなり上手くいった例ね」

 

「成程なぁ」

 

 ベルの説明に納得していると、此方へと向かって投げられたものをキャッチした。十束剣だった。見れば倭建命が軽くマグマを払いながら剣を片手に戻ってきた姿が見えた。その手に握られている剣は十束剣にも負けず劣らず、凄まじい力を秘めた剣であるのが一目瞭然であり、それが手に馴染むように、倭建命は握っては握りを緩めるのを繰り返していた。どうやら、目当てのものを手に入れる事が出来てご満悦の様子だった。

 

「やっぱこれだな。これがねぇとしっくりこないんだな、これが……どうした、妙な視線を向けて」

 

「いや、レベル的に問題ない事は解ってるんだけどさ……」

 

 肩にマグマがついているのを見ると、ちょっと妙な気持ちになる。数か月前までだったら即死案件なんだよなぁ、と倭建命が肩のマグマを払い落すのを目撃した。今では自分も立派な超人、マグマの中を泳いでもまるで熱く感じないだろう。そのまま無傷で上がって来れるレベルで肉体の次元が違う……まぁ、当然とも言うかもしれないが。

 

「れべる、あーっぷ」

 

「私もこれでレベルアップね」

 

 アンとベルの言葉にDDSを確認すれば、二人共レベルが上がっているのを確認できる。だがクラリオンの時の様な爆発的な上昇はない。やはり、アレクラスでレベルが一気に上がるのは難しい話なのだろう。ヘル、チェルノボグ、ヘイグロト討伐で70代これ、無理なんじゃないか? とちょっとだけ思い始める。調べた中で一番レベルの高かった八岐大蛇でこれなのだから、他の連中を倒しても劇的にレベルアップする事はなさそうだ。

 

 それでもアンが60代に入ったのが幸いか。成果はあるのだ、ここで切り上げる理由にはならない。それに今の戦闘、八岐大蛇のデビルソースを入手する事に成功している。これはいい資金源になってくれそうだ。そう思いながら黄龍以外の仲魔をDDSへと戻して行く。その様子を倭建命が横から眺めていた。何か言いたそうにしているのを感じる。視線を倭建命へと向ければ、少し悩んでから、まぁ、いいか、という声が聞こえた。

 

「なぁ、お前」

 

「ん?」

 

「お前さ……俺を仲魔にしてみる気ないか?」

 

 悪魔契約のお誘いだった。そりゃあ勿論、高位悪魔を入手するのは非常に助かる話だ。それも倭建命言えば日本神話の神秘スレイヤー最強格だ。神殺し属性も保有しているからそれだけで非常に強い。さっきの戦闘でも十束剣のスペックを始めて握るのに使いこなしていた。剣士としてもハイエンド。そう考えると欲しい仲魔ではあるが、

 

 何故、という疑問がある。その視線を向ければ倭建命があぁ、と声を零した

 

「俺は元々は先代ライドウの仲魔なんだよ。アイツの頃はまだよかったけど今代が結構ガキでなぁ。頭が固い上に俺を霊的国防兵器として国に縛り付けやがったんだよ!」

 

 ったくと、と倭建命がやや憎々しくライドウの事を語った。

 

「……だけど、まぁ、こういう状況だ。義理で八岐大蛇は斬ってやった。ついでにライドウが国内にいなけりゃあこんな状況じゃ俺を縛りきれないしな。先代は良い奴だったけど今代は気に入らねぇ」

 

「だから環境を変えたい、か」

 

「おう。八岐大蛇を餌扱いで食らいつく奴なんて中々見ねぇぜ? そういう所は気に入った。後はこのままクズノハやヤタガラスに使われるのもめんどくさいって話だな」

 

 これ、契約したらクズノハに怒られないか……? と思いもしたが、空を見上げれば黄龍が今日も元気に輝いていた。そもそも、黄龍自体日本の龍脈、大地の命の化身とも言われているし、それを保有している時点でもはや怒られる要素はある。

 

 ……よっし、深く考えるのは止めよう。

 

「まぁ、いいや! 怒られそうになったら支配人のせいにして突きだしてやろうっと。俺は如月竜二、宜しくな」

 

「俺はヤマトタケルノミコト、コンゴトモヨロシク」

 

 新しい仲魔、ゲット。契約し、DDSへと倭建命を入れる。これで強力な仲魔がまた増えた事になる。黄龍やラーマと同レベル帯で人間サイズだから、市街地での戦いで活躍してくれそうだ。

 

 黄龍やラーマ、確かに強いけど二体とも、攻撃がインフレしすぎて基本、地形を吹き飛ばす事前提になりつつある中、規模が小さそうな攻撃を持つ仲魔は重要の様に感じた。あ、いや、待て。さっきまで拳で地形を破壊してたわ。前言撤回。新たな破壊者が登録されただけだった。

 

『お、さっき一緒に肩を並べた奴だよな? 宜しく頼むぜ』

 

『宜しくなのじゃ』

 

『宜しく! 早速だけど君の名前は倭建命だっけ?』

 

『あぁ、そうだぜ』

 

『じゃああだ名はミコっちゃんだね!』

 

『!?』

 

『妾は良く駄狐って呼ばれておるぞ』

 

『それあだ名なのか……?』

 

『ちなみに僕は特にあだ名とかない!』

 

『あだ名をつけようとした意味はなんだ』

 

『特にない。そしてアレは鳩! アレは核の冬』

 

『くるっぽー』

 

『かーくかーくかーく』

 

「もう仲良くなってるな」

 

 相変わらずツッコミ処しか存在しない空間だった。やはりDDS内部がどういう風になっているのか物凄く気になってくる。ただ、会話を聞いている感じどうやら黄龍と同じ、ツッコミ属性として頑張ってくれそうな気配がある。心の中で頑張れ、頑張れとエールを送っておく。まぁ、仲魔たちの交流から意識を外し、

 

「次……は、四国……だ……ね」

 

 そう、次は四国だ。確か四国は現在、ガイアがヘルと戦っている……らしい。距離的に次に向かうのは四国で、その後北海道のチェルノボグとヘイグロトを血祭に上げる予定になる。そっちはメシア教が抑え込んでいる。

 

 ……不思議と、ちょっとぐらいゆっくりしてもいいんじゃねこれ……? と思ってしまった。いや、でもガイアとメシアのアレな話は割とよく聞く。ナカノやシンジュクの連中が非常に特殊だって言うのも割と聞いている。そしてその上で本来のガイアとメシアの話を聞いていると、双方消滅してくれねぇかなぁ、と切実に思う。

 

『か、か、彼らは、その……やっぱ擁護無理』

 

『無理すんな鳩』

 

 鳩でさえ匙を投げる。まぁ、それでも人類の為に防衛線をしている形、完全に腐敗しているという訳ではないのが解る。少なくともチェルノボグとヘイグロトを抑え込む動きをしている間は、メシアはある程度は信じられる。問題は弱肉強食のガイアの方だ。連中、乱入してヘルぶっ飛ばしても大歓迎しかしなさそうなイメージしかない。勧誘とか大変そうだなぁ、と思いつつ、

 

「行……く?」

 

「まぁ、そろそろな。正直行く前に軽く飯を食っておきたい所だけど、別に食わなくても死なないしな」

 

 少なくとも軽く断食した所で数週間程度、余裕で生存できるのが超人だ。いや、或いは年単位で絶食しても余裕かもしれない。だから別に、食事をしてから向かう必要もないだろう空腹はそのままだろうが。四国を解放したらうどんだかラーメンだかを食べればいいのだ。お店が開いている事を祈りつつ。黄龍に乗り込もうとしたところで、

 

 COMPから着信が入った。ポケットから引き抜いて着信を確認すれば、戦闘前と同じナンバーだった。つまりはクズノハからの着信になる。なんか、出鼻をくじかれてばかりだなぁ、と思いながら通話する。

 

「はい、もしもし此方八岐大蛇の……ぐつぐつ煮込み? を料理した一般通過サマナー」

 

『そんなサマナーが一般でも困ります。と、そうではありません。此方でも八岐大蛇のMag反応消滅を確認しました。ありがとうございます、そしてお疲れ様でした。これで中国地方はしばらくは安定するでしょう。此方の実力不足を其方に頼むようでして本当に申し訳ありませんでした』

 

「いやいや、此方も此方で都合があった訳だし」

 

 ほんと、感謝される様な事じゃない―――いや、まぁ、感謝されると確かに気持ちは悪くないが。内心、もっと褒めてちやほやしていいのよ? とか思ってたりする。そう思える分、少しは自分も前進しているのかもしれない。

 

『報酬の受け渡しに関しては後日するとして、今、時間はありますか? 今避難キャンプでカレーの炊き出しをやっているのですが、顔合わせのついでに昼食でもどうでしょうか?』

 

 その言葉にどうしようかなぁ、と思っているとちょんちょん、と肩を叩く感触があったので、振り向けばアンが目を輝かせていた。

 

「クズノハカレー……」

 

 そう言えば地味にライドウが珈琲淹れたり主婦スキル高かったし、意外とクズノハってそういう方面の技術も高いのだろうか? まぁ、アンが乗り気だし行くと決める。どうせ時間を食っても数時間程度の誤差だし。

 

「それで困るのガイアかメシアだしな!」

 

『せやの。あ奴ら欲望の塊じゃし。好かんわ』

 

『あいつらはもうちょい苦労しとけ』

 

『いや……まぁ、うん。私が言えた話でもないわね』

 

『ランチタイムなので休業っ!』

 

『それでいいのか……』

 

『あけましておめでクリスマス』

 

 スダマ先輩がそろそろ新年を迎えそうだった。それはそれとして、アンが乗り気なら一切構わない。クズノハに向かう事を伝え、黄龍の頭の上に今度こそ飛び乗る。COMPに避難キャンプの場所をマーキングして貰ったので、それに従って空を素早く黄龍で移動する。

 

「かれー、かれー、かーれー……」

 

 カレーが好きなのか、カレーの歌を作曲して歌っているアンが可愛すぎて死にそうだなぁ、と思いながら。

 

 しかし最近、かなり感情豊かになってきたなぁ、と思う部分が多々ある。

 

 精神的に成長しているのはどうやら、俺だけじゃない様に思える。

 

 

♦

 

 

 流石に避難民の居る場所を黄龍で突撃するのは色々と酷いので、それを考慮して途中からはシンジュクで購入したバイクに切り替えた。目立たずに移動したいときはこれで決定だな、と思う。今では走った方が早いが、音速で走って移動する人間なんかみたら、町中に恐怖の記憶として残ってしまうだろうし。

 

 それはともあれ、クズノハが島根県の人々の為に用意した避難キャンプの規模は意外と大きかった。キャンプとは言うものの、整地された大地に大量のログハウスが設置してあるのが見える。Magの気配が漂う感じ、このログハウスは悪魔が生み出した素材を即座に加工して作られたように思える。

 

 それが大量に存在する為、小規模な街になっている。流石60代もあればこれだけの事は出来てしまうのか、とその対応を見て驚いた。自分もそこそこ悪魔を運用しているつもりだったが、流石専業訓練を受けている専門のサマナーは発想や展開力が違うな、と納得させられる。どうやら悪魔の力を使って足りないインフラや資材を賄っている様だった。

 

『クズノハと言えばエリート中のエリートよ。全員がサマナーとバスター、双方の訓練を受けた上で三ケタ時間の実践訓練を経験している。あらゆる悪魔の知識を頭の中に叩き込んで、様々な武器や道具を使えるように学習している。その上で軽い陰陽術程度だったら誰でも使えるって集団よ』

 

『ま、言っちまえば日本最強の組織だからな。組織の規模はガイアやメシアに負けるし、国内で言えばヤタガラスにだって負けるだろう。だけどクズノハだけでそれら全部駆逐できる程度の実力はあるぜ』

 

「マジでエリート中のエリートなんだなぁ……」

 

 悪魔の幅広い知識を保有する他、何をどうすれば効率的に状況を進めれるかというのが解っているのだろう。そこら辺の知識は自分にはないものだ。今度、もうちょい最低限、自分の仲魔に関してだけでも勉強しておくか、と自戒しておく。それはさておき、避難キャンプに到着したのでバイクから降りてそれをストレージに戻す。

 

「ん……あまり、悪い……感情……ない? 良い、香り……する、から、かな?」

 

「ん? あぁ、そういえば……」

 

 アンの言葉にそういえば避難キャンプの雰囲気が穏やかなのが解った。彼女の言う通り軽く空気の匂いを嗅いでみれば、どことなく心が落ち着く匂いを感じさせた。それ以上の効力はないが、不思議と闘争心を失って行くような匂いだった。

 

「このお香は鎮静、リラックス、ストレス軽減を持つコノハナノサクヤヒメ様に調合して貰ったものです。本当ならあまりこういう手段はとりたくないのですが、八岐大蛇クラスとなると一般人ではその気配に当てられるだけで発狂死してしまいますから……」

 

 残像と共にスーツに帽子を被った初老の男が近くに出現した。超人的な感覚がその登場を僅かに察知出来たので、特に驚く事はなかったが、それでもそういう動きが出来るレベルである事を判断させるには十分だった。片手で帽子を押さえながら登場した男は、少し疲れたような表情をしており、目の下には隈が出来ているものの、笑みを浮かべて来た。帽子を取りながらそれを胸に当て、一礼した。

 

「悪魔協会のキサラギ・リュージさんですね? 今回は非常に助かりました。おかげで多くの命と部下の命を守れました。どうもありがとうございます。其方の人修羅の方も、助力に感謝します。ありがとうございます」

 

 本当に、安心する様にそう言ってくる男の姿を見て、茶化したり、大したことはなかった、と言葉を向ける事が出来なかった。アンに助けを求めて視線を向ければ、首を傾げ、そして唇を僅かに動かすのが見えた。

 

「がん……ば」

 

 最近、本当にリアクション豊かになってるなぁ、畜生。だけど好き。そう思いながらもあー、と声を零した。

 

「そのー……うん。誰か、死なないでいい人が死なずに済んだのならそれでいいんじゃないかな。人が減ったら……なんというか」

 

 今のこの世界は狭い。日本だけが残されている。だから人が減ったら、

 

「その分、世界が寂しくなるし」

 

「―――」

 

 その言葉にクズノハの男は言葉を失い、驚くような表情を浮かべ、しかし笑う様に声を零した。

 

「は、ははは……あぁ、いや、すみません。失礼でしたね」

 

「いや、気にしなくても。俺も俺でちょっと今のはどうかと思ったし」

 

「いえいえ、寂しくなる、ですか。私は嫌いじゃありませんよ、今の言葉は。同僚や部下が一人いなくなるだけでも凄い静かになりますからね……そうですね、寂しくなるのは嫌ですね」

 

 とても普通な理由ですが、と付け加えられてしまった。普通で悪かったな。まぁ、所詮はモブだし、自分が思いつく理由なんてそんなものだ。大体アンと個人的な感傷が理由でしかない。日本の為とかそういうのはちょっと、無理だ。自分にはスケールが大きすぎる。そういう事を考えるだけ無駄だ。だから、まぁ、

 

「カレー。カレー食べに来たんだよカレーを」

 

「Curry」

 

「見ろよ、ウチの可愛い子を。余りの食欲に流暢な英語で求めているぞ。どうしたの?」

 

「たべたい」

 

「そっかー」

 

 本当に食欲旺盛になってしまった。Mag不足はクラリオン戦の超大量Magで一時的に回復しているから、今はそんなはずもないんだけどなぁ、と思うもこれ、普通に食べるのが好きなだけだよな、と理解する。

 

 そしてそれを見ていたスーツの男は苦笑する。

 

「では案内しましょう。私の名前はクズノハ内ではレイジで通っています。宜しくお願いします」

 

「名前は……もう知ってたな、そう言えば。宜しくレイジ」

 

 案内されながらキャンプの中を進んで行く。多少不安な様子を見せる人間はいるものの、大体の人間は落ち着いている様に見える。やはり、お香の効力があるという事だろうか? それに飢えている姿も見えない。

 

「しかし助かりました。実はオオゲツヒメを確保していまして、ヤマタノオロチ出現に合わせてスサノオが出現するようであればオオゲツヒメを守る為にスサノオを倒す必要もありましたので……」

 

「オオゲツヒメ……」

 

『知らない方が幸せ。そういうケースもあるのじゃ』

 

『まぁ、そうだな』

 

『うむ』

 

 そこまで言われると気になってくるが……知るのも恐ろしい部分がある。ともあれ、問題は解決したし、ここでやるべき事は済ませた。四国へと行く前に腹ごしらえをするだけだ。

 

「じゃ、それじゃあカレーご馳走になるな」

 

「えぇ、どうぞ。現在は食料生産も安定していますし、ヤマタノオロチを倒してくれたサマナーを無下にする理由もありませんし」

 

「じゅるり」

 

「はは、こう見えても結構料理の腕には自信があるんですよ」

 

 カレーを求めて奥へと進んで行き、ご馳走になる。この避難キャンプの人達が家に帰れる様になるのは何時頃なのだろうか? 果たして壊されたものは復旧するのだろうか? この景色を見ていると、嫌でも世界は崩壊している事を理解させられる。

 

 自分は幸運で、比較的に復活している環境で生活出来ている。

 

 だけど、この人たちは違う。

 

 とはいえ、他人の面倒を見れる程自分には余裕がある訳じゃないし、そういう立場でもない、改善してやろうとも思わない。だからカレーを食べて、腹を整えたら出て行くだけ。

 

 そんな中で食べたカレーは。

 

 思わず、お代わりを求めてしまうぐらいには美味しかった。




 という訳でクズノハと接触1、そんでミコっちゃんゲット。きっと神殺しスキルで活躍してくれるでしょう。上位陣って基本神格持ちだし。最終的に合体させたりする事を考える仲魔はもう少し増やしたい。

 オオゲツヒメ? いらない人はググろう。安定して食料が供給されるよ!

 それはそれとして次回から死国へ。ガイア寺院との本格接触でもある。皆で知ろう、ガイアの教義!
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