黄龍の頭の上に乗って移動する最中、直ぐに四国へと音速で飛翔せず、飛行機程度の速度でゆっくりと移動していた。頭の上に乗りながらCOMPを取り出して、その中に記録されている仲魔のデータを改めて確認していたのだ。そろそろ仲魔の数が結構増えてきている。だから改めて能力や特徴を把握し直そうという魂胆である。
「……ってベルママが言ってたから四国に行くまで軽く見直そうか」
「うん」
『誰がママよ。ぶっ飛ばすわよ』
『ママ。腹がよじれる』
『お、死にたい様ね?』
『……おい、まて、その不定形生物押し付けるのを止めろ! 止めろ!!』
『新たな仲魔への通過儀礼じゃ』
『甘んじて受けよう! 僕もやった!』
『我は日常的にセットで投げられるぞ』
「我も一発芸の道具として使えって言われて渡されたな」
『……ん? もしかして前の職場よりもブラックじゃないのかここ?』
やはり仲魔連中は楽しそうだ。そのまま仲良くやっていて欲しい。はしゃいでいる仲魔たちを一旦放置して、DDSのデータを確認する。アンも契約状態なので、アンのデータも見る事が出来る。とはいえ、アンは肉体があるし、上下の契約もしていないので無理矢理指示する事は出来ないし、DDSに入る事も出来ないが。
DDSを見た感じ、アンの耐性はほぼフラット。現状、弱点も耐性も存在しない。そしてどうやらデフォルトで
次に最古参その二と三である、チェフェイとラーマは少し前に悪魔合体で能力を確認したばかりなので飛ばす。今、保有している仲魔の中で二大やべー奴である事は八岐大蛇に対して封殺決めている時点で良く解る。最初の頃は鈍器扱いの魚と防具扱いの子狐だったのに。
という訳で、スダマ大先輩のデータを確認している。その最大の特徴はノリとテンションと気分でスキルや能力が変動する事だろう。それでも基本的には
「あ、気が付けば習得スキルに《夢幻泡沫》追加されてるじゃん……」
万能属性ですらない、独自の属性扱いなので耐性に引っかからないというどこか反則さを感じるスダマ大先輩の奥義。あのクラリオンの万物の障壁さえも一瞬で蒸発させた謎の技だ。そう、謎なのである。それ以上、正体を詮索してはならない。今はまだおねむだからそのままにしておくのが大事だ。起きてしまった場合の事を考えて、子守歌の練習でもしておいた方がいいかもしれない。
「頼んだぞ
『妾の名前を言ってみろ』
『タマモ』
『んー! 惜しいー!』
『妲己!』
『ニアミス! ニアミスじゃぞ!』
『ゴン……お前だったのか……』
『ぶっ飛ばすぞ』
また仲魔内で殴り合ってる連中を放置し、こっそりとスダマ大先輩のデータの閲覧を止める。称号が《門松あるよ》に変わっていたのを見て、ついに年越しに成功したんだ、という感想しか出なかったからである。役割は何時も通り核兵器運用。スダマドラオン弾として今後もマップ兵器扱いで頑張って貰おう。ところで門松どこから持ち出したの? 次はなんだろう。血のバレンタインになるのだろうか。コロニーでも落としそうだなこいつ。なおレベルは常に自分と同じ数値を最近、キープしている。まるで調整されているかのようなレベルで同じなのだ。
「スダマ大先輩の運用に一切の変化なし! 滅茶苦茶楽な部類だな……」
「でも……頼りに……なる」
「おう」
なんだかんだで、未だに純粋な一撃での破壊力はスダマドラオンが最高値をキープしていたりする。
そして次に鳩。神聖四文字。絶対神。ただし、今回は愛と平和、平穏と友情。つまり愛すべき隣人として平和の象徴である鳩の姿で顕現している。合体事故を装ってダイレクトに殴り込んできたデンジャーな奴でもある。
鳩自身は一種のオプションパーツ扱いにして運用する。肩にでも乗せておけば自動的に《ラスタキャンディ》で全体の強化を支援し、《常世の祈り》で回復を行え、《サマリカーム》で即座に蘇生が出来る。それに使用する魔力やMagは鳩支払いではなく、俺が支払う様になっているので、根本的に余裕がある。その上で戦いでは必須とも言える《マカラカーン》と《テトラカーン》、即死対策の《テトラジャ》も覚えている。オプションパーツとして運用する限りはすさまじい化け物っぷりを発揮する、専業アシストになる。しかも完全耐性で死なないのでずっと妨害されずに行動できる。
それに最大神としての威光があるからか、その神聖さが時折妙な効能を発揮する。これ! と言えるような運用がその神の威光には存在しない代わりに、非常に便利で不浄の浄化やバッドエンドを本能的に粉砕する力を持っている。なんだかんだで便利な奴だ。完全耐性持ちだから咄嗟に盾に出来るというのも余りにも便利すぎる。ただしさっき、スダマ大先輩の《夢幻泡沫》習得を確認してしまったのでそれで死亡できると発覚してしまった。やはりあのICBMやばい。
『安心安定の我である』
『掴みやすいサイズってのが最高よね』
で、次がベル―――つまりベルゼブブだ。契約内容は彼女を豊穣神バアルにする事だ。ベルゼブブは元はバアルという神であり、とある神話の主神であった。だが四文字の信者によって占領された時にその信仰は徹底して踏みにじられた。なんとバアルを祭る神殿をトイレにして小便ぶっかけてまで貶めたそうだ。そりゃあ殺意で満ち溢れるに決まってるわ、と納得するしかない。
なお、それを四文字本人が一切命令していないのが本神、困惑の所。
信者は何時の時代でも宗教と信仰の為なら超えちゃいけないラインをヒャッハーしながら乗り越えて行く事を再確認できてしまう一件である。
逆にそれだけバアルという神が危険視されていた、という事の証明でもあった。
なお能力はバアルから零落している為、一段階全てにおいて劣るとベルは言っていた。耐性的には弱点は存在せず、多くの耐性、神経や精神無効を保有、破魔や呪殺に関してはついに反射まで取得している。八岐大蛇戦でレベルアップしたのもあり、その霊格がバアルに近づきつつある。主神クラスの能力がちらほらと見え始めている。
スキル構成的には電撃を主体としており、《電撃ガードキル》を保有している為、相手が吸収でもしない限りは誰が相手であろうと問題なく電撃を通せる他、《STUN極大拡大》というスキルを保有しているらしく、異常耐性を保有しない相手であればほぼ確定でSTUNを誘発できるともある。レベルが先ほどの戦いで上がった事でついに《魔王の眼光》と呼ばれる所謂眼光系スキルを習得。時間軸に介入して瞬間的に複数の行動を割り込ませる事の出来る超高位悪魔のスキルを獲得した。それ以外にも《魔王の号令》に《死蝿の葬列》も習得、魔王の名に相応しいだけの実力を取り戻しつつある。もうほとんど、ベルゼブブとしては完全体とも言える。
「というか《死蝿の葬列》覚えたのならこれだけ連打してればいいのでは」
『大体あってる』
『ん? あ、いつの間にか万能高揚増えてる』
ベルのサムズアップが脳裏に浮かんだ。そのイメージを追い出して、次に新しいデータを見る。つまりはライドウから託された仲魔、黄龍の存在だ。
帝都守護の最大戦力にして東西南北を守護する四神の長。また龍脈の化身とも呼ばれ、それはこの土地という概念そのものでもある、と呼ばれる存在でもある。つまり黄龍が存在する事は元気な土地を表す意味でもある。ライドウ、それを他人に預けて大丈夫だったのか?
クラリオン戦でのレベルオーバーブーストの影響を受けて、本来であれば90代は存在する黄龍も、現在では自分と並ぶ程度のレベルにまで下がっている為、何とか使役する事が出来る。そうじゃなきゃ間違いなく使役出来ないレベルの悪魔だ。その能力も超高位悪魔に相応しいだけのものがある。
属性の耐性に関してはほぼオール耐性、無効化ばかりで弱点は皆無。その上で専用スキルとして自分が場に居るだけで浄化や地脈の正常化、酸素の確保等環境を整える能力に非常に秀でている。それに加えレベル50台ではあるが、四神を召喚する事が可能となっている。攻撃手段は広範囲を一気に薙ぎ払える《大雷撃》に《メギドラオン》、そしてそれを圧縮してブレスへと昇華させて吐き出す《メギドファイア》等を習得している。元々クズノハで管理されていた悪魔らしく、高いレベルで習得しているスキル等が固まっている。とりあえず出しとけ、という感覚で戦闘に出しておくだけで場が整う。安定する。非常に優秀な奴だ。
「鳩程ではないが、我も浄化などの力に関しては強い適性を持つ。瘴気で溢れる場所であれば野営が出来る程度には浄化できるぞ」
『ただし穢れ切った結果龍脈になったじゃろぬしは』
へぇ、そんな逸話があったんだ、と納得させられる。それはそれとして、地味に黄龍は仲魔の内で最大級のサイズの持ち主である。その大きさは黄龍一頭で小規模な異界であれば抱え切れずにそのまま内側から破裂して消滅するレベルで大きい。シンジュクの空に浮かべばシンジュクの端から見えるレベルで長大だ。おかげで乗り物扱いすれば移動が楽だし、それなりに頭の上であればくつろぐ事も出来る。便利な奴だった。サンキューライドウ、フォーエバーライドウ。有効活用させて貰います。
で、これで最後の仲魔だ。
つまり、先ほど加入したばかりの元霊的国防兵器、倭建命になる。
『俺は元々先代ライドウ……あー……大体60年前か? ぐらいからちょくちょく悪魔合体の応用で能力とか強化してるからな。強いぞ。ちなみに先代は今代と違って90代超えてたぜ、レベル。その頃は俺も同じぐらいはあったんだけどな』
今の倭建命のレベルを見る限り、今代のライドウが使役できるレベルまで落とされてしまったのだろうか? ともあれ、今の倭建命のレベルは自分でも使役する事が出来るので丁度いいし、そのスキルや能力構成も非常に高いレベルで完成されている。クズノハにもイゴール級の悪魔合体師が存在しているのかもしれない。
ともあれ、基本となる《物理ハイブースター》を抑えつつ、《エボルヴ》も最上位のを搭載して純粋な物理による攻撃力を極限まで増大させている。《貫通・極》によって通常の貫通に加え、吸収、反射、無効化にテトラカーンもどうやらそのまま無視して叩き切る事が出来る様になっている。究極の脳筋とでも表現すべき構成になっている。その上で《神格特攻》で神性持ちに対する高揚を抑え、《勝利の雄叫び》で継続戦能力も大幅に強化している。そして安心安定の《不屈の闘志》を搭載。それに加え《天軍の剣》とかいう物理、斬撃系統の最上位攻撃手段まで保有している。
『というか我、《天軍の剣》ミカ君のモノだと思うのだが』
『昔メシアに召喚されたミカエルをぶち殺してスキルカードとして吐き出させて覚えたもんだよ。《空間殺法》も悪くはないんだけどな』
『何時ものメシア』
『ただ、まぁ、天叢雲剣も手に入ったし。こっちのが手に馴染むからもういらねぇわ。サマナーなんか有用なスキルカードないか? 要らないからこれ消そうぜ』
『使うだけ使われて塵の様に捨てられるミカエルの剣』
『所で俺に十束剣使わせない? というか貰っていい? 仲魔になったなら俺も使ってもいいよな』
「ぐいぐい来るなこいつ」
とはいえ、自分が握るよりも遥かに優秀だから倭建命には十束剣を場合によっては使わせる事も考えるべきかもしれない。ただ個人的な感覚、余り使われたくはないのが本音だ。
「ライドウ……に、貰った……もん、ね」
アンの言葉に頷く。十束剣もライドウから友情の証として託されたものだ。黄龍共々、俺がしっかりと使いこなせるようになりたい。あっさりと使いこなした上にミカエルの専用技をあっさりと連打していた倭建命の姿を見ていると、絶対にその領域に到達できるような気がしないが。
『ま、俺に斬れないものはないさ。天叢雲剣も今ならあるしな。真っ直ぐ行って斬り飛ばすのは任せろ。そう言うの得意だからな、俺は』
「まぁ、頼りにはして……ん?」
倭建命のデータを見ていると、性別部分がバグってる気がする。
「なんだこれ」
『胸も逸物も穴もあるって事だよ』
「ほえー……そういうのは初めて見るな」
『まぁ、僕ら神性があるというかモロ神サイドだからね。僕とか一応超ぎりぎりヒューマンだけど属性的には化身だから結局は神だし』
『私達神は根本的にそりゃあ姿は自由自在だから性別なんて見た目と役割、後は楽しむ以上の意味はないわ。つまり本質的に雌雄同体ね』
神とは完全なる存在である。故に男であり、女でもある、という事だろう。
『ま、俺の場合神の血が濃いからこうなってるだけだ。人間としての側面のが強いから他のあっぱらぱーよりは話は通じるぞ』
『お、言うわねこいつ』
『処す? 処すかの?』
『あ、こら、お前ら叢雲をその不定形に差し込もうとするの止めろ! マジで止めろ! フリじゃねぇから止めろよ!』
『解った、じゃあ入れるね!』
『フリじゃねぇって言ってるだろ! 芸人じゃねぇんだよ……! 冒涜的な形にされそうだからほんと止めろよ!』
やはり新人は玩具になる運命なのだろう。倭建命―――もうミコトでいいな、と勝手にニックネームを決める。ミコトが馴染んでいるようだし、これで仲魔全員の能力のチェックを終わらせた。COMPをしまって黄龍の上から見える景色へと視線を移せば、
「あ……見えて……きた」
「四国だな」
四国が見えてきた。顕現したヘルによって四国は死の国に変質している……という話だった筈だ。どんな様子を四国は見せているのだろうか? 気になるその様子を黄龍の上から真っ直ぐ向ければ、
草木が枯れていた。
大地が荒れ果てていた。
そしてその大地に紫色の瘴気が漂っており、この世ならざる雰囲気が四国の大地を覆っていた。空も四国の上からは赤く染まっており、通常とは別世界の様な姿を見せていた。四国そのものが丸ごと、巨大な異界化している様な、そんな風にさえ見える。そして《エネミーソナー》を眺めれば、それが探知できる範囲にはおびただしい程の屍鬼と妖鬼の気配が存在していた。死の国が開いた、というよりは四国そのものが死の国となってしまったような、そんな惨劇を目の前にしている様な状態だった。
八岐大蛇もアレはアレで酷かったが、環境テラフォーミングを行っている分、此方の方がもっと残酷かもしれない。ヘルを倒した所で四国をもとに戻すのは相当大変だろう、これは。まぁ、俺は何も悪くないから責任感とか感じないが。
「こいつぁひでぇ」
ただ、それだけは言えた。
「良くない……気配、い、っぱい……いる」
「全部敵だと思う?」
その言葉にアンがコクコクと頷いた。その様子を見てから四国というか完全に死国となってしまった大地を眺め、腕を組み、首を傾げる。
……もしやこれ、手遅れでは……?
まぁ、でも、ヘルの経験値は欲しい。
となるとやはり、突撃するしかないだろう。
「コウリュウ。一番戦闘が激しい所へと突っ込むから、そこまでに居る奴適当に消し飛ばしちゃってくれ」
「拝承した主殿よ」
命令と共に黄龍が黄金の鱗を輝かせ始める。それと共に四国へと突入し、黄金の風を呼び寄せる。浄化と破魔の混ざり合った黄金の風が黄龍がその大地を飛び越えて行くのと共に、吹きすさぶ。それに触れた不浄と死から蘇って来た悪魔たちが端から消滅して行く。とはいえ、こいつらはレベル30に届かない雑魚共ばかり、経験値にすらならない。本命はもっと奥に居る筈のヘルだ。
「まだ倒されていなければいいんだけどな……」
四国の状況にどう足掻いても面倒になりそうな予感を感じつつも、ブルームを引き抜いてスダマを装填する。何時でも爆撃が出来る様に準備を進めながら、
死の大地となった四国入りを果たす。
という訳で軽く仲魔のおさらい。ラーマとチェフェイだけは最近チェックあったので。
神様は雌雄を自由に切り替えられるので性別という概念はコスプレみたいな感覚でしかない。逆にその血を引く存在は神という特性の都合上、血が濃ければ自由変化、中くらいで雌雄同体、薄ければ神性だけってイメージ。
という訳でウェルカム・トゥ・ヘル(文字通り
ミコっちゃんもようこそこの素晴らしき救世チームへ。