「これがタルタロス、って奴か」
「あぁ、普段は学園。だが、影時間の間だけ、その姿をこうやって塔へと変える」
「はぁー……」
不思議がいっぱいだなぁ、裏世界は。そう思いながら天高く聳える塔を見据えた。空を超えて月にさえ届きそうな高さを誇る塔は地上からはその全容が見えない。そして確かに、その内部からは大量のMagと怪物の気配を感じる。今、《エネミーソナー》の範囲を拡大して確認したら後悔しそうな数を見そうなので、大人しく美鶴の先導に従ってタルタロス内部へと進んで行く。そこについてくるのは明彦、アン、そして何人かの黒服だった。
黒服の方は黒服の方で、鉄の塊を運んでいるが、どうやらペルソナ適性はないらしく、雑用のみらしい。
そんな少人数でタルタロスへと進む。
入った所で広がる階段などが見えるエントランスホールに、大型バイクを美鶴が止めた。その他にも黒服たちが運んできた巨大な鋼のケースをそこに設置し、準備らしきものが完了した。ペルソナ使いでここにいるのは明彦と美鶴のみ、幾月はタルタロスには近づかない様にしているらしく、此方には来ていない。あと一人、こっちに来る前に一人だけペルソナ使いを見たが、どうやら彼女はまだタルタロスへと来るつもりはない……というよりは怖がっているらしい。
「岳羽ゆかりと入院中の彼を除けば現在戦えるのは私と明彦とサマナーだけだ。我々の武器はペルソナ、そして原始的な武器になるのだが……それはある特殊な物を使わないとこの影時間では機械が動かないという点にあるのだが」
ポケットからスマートフォンを取り出し、ついでに銃を手元に電送させる。まぁ、普通に動く。
「ま、俺の事はミステリアスなグッドルッキングガイ、って事で。使えるもんは使えるって事でいいのさ」
「そうだな……では我々の目的はこのタルタロスの調査にある。そしてそれには必然的にタルタロスに巣食うシャドウとの衝突になる。我々には戦力が求められる。そういう訳で、今夜はその実力を見せて貰うぞ」
「仰せのままに」
「なら早速、好きなものを選ぶと良い!」
そう言って美鶴が言葉を発すと、それに従い黒服たちが運んできた鋼のケースの拘束を解いた。パチン、という音共にケースが何段にも解れながら開き、その中に格納されていた数々の兵装の姿を見せた。そう、それは何十という銃が詰め込まれたウェポンケースだったのだ。軽く見ただけでもハンドガン、ロケットランチャー、グレネードランチャー、ショットガン、ライフル、狙撃銃、サブマシンガン、と様々な銃が所狭しと格納され、飾られていた。それを見てヒュゥ―、と口笛を吹いてしまった。
「好きなものを好きなだけ持って行け。ただしまるで使えない事が判明したら地の果てまで追って代金を払わせるがな」
「おぉ、怖い怖い。まぁ、報酬分は仕事をしますよ……っと」
ミリオタでもないので、細かい銃の種類とかは良く解ったものではない。だがなんとなくだが、銃を握れば
何せ、本気で銃を連射しようとすれば、引き金を千切ってしまう。グリップを握り潰してしまう。その僅かな匙加減を《ガンスリンガー》という才能で補っている。正直、手に馴染む武器があればもうちょっと銃で戦えるんだけどなぁ、とは思わなくもない。ともあれ、そんな《ガンスリンガー》の才能がある為、
大体握れば良し悪しが直感的に理解できる。野球選手が手に馴染むバットを探す感覚で。こんな世紀末でもなければ目覚める事のない才能だっただろうと思いながら、銃を手に取って握ってみたりし、確かめる。おもむろにラックからライフルを手に取る。
「おーい、イケメン」
「僕を呼んだかなサマナー!」
DDSからマツヤを召喚しつつ、Magを与え、変身能力を解禁させる。アプリから召喚されたマツヤは魚の姿ではなく、白い布を体に巻いた褐色、長い白髪の青年の姿となり、その姿が出現した瞬間にライフルの銃弾をイケメンマツヤの顔面に叩き込んだ。そのいきなりの姿に美鶴と明彦が驚くが、
「サマナー! 流石にターゲットにするなら一言ぐらい言って欲しいかな!」
「お前銃撃無効属性ついてるんだからちょっと黙ってターゲットにされてろ」
「文化が違う……!」
黒服の誰かがそんな事を呟いているが、ガン無視してイケメンに銃弾を撃ち込む。ライフルの感触は悪くはないが、やや柔らかい。ダメだな、とラックに戻してショットガンを手に取り、手に取った瞬間の感触がダメなので塵だと判断し、次のを手に取って確かめる。グレネードランチャーとロケットランチャーは根本的に重要な武器だ。炎弱点の悪魔を纏めて焼き殺すのに使えるのだから重要じゃない訳がない。
ガキの群れとかグレネードランチャー一発で蒸発させられるのだから、これはキープである。
「あんまり脆い構造だとあっさりと使い潰しちゃうからなぁ……頑丈な奴がいいんだよなぁ……うぉ、デザートイーグルじゃん! 俺でも知ってるやつがあるとは……あ、でもこれも脆い方だな。グリップ握り潰しちまうわ。あ、このライフルは悪くない。重いし頑丈だし……うん、威力も申し分ないな」
イケメンにライフルの弾丸をぶち込んだところでキープ決定。RPG等と合わせてストレージに電送させる。持ち運びが便利なのは本当にスティーブン様様だよなぁ、と思いながら、ラックに飾られている大型自動拳銃に目が行く。自然と視線が吸い寄せられるそれは片方が黒く、もう片方が白く、自然とそういう色をした銃であり、同時に濃密なMagと概念の気配を感じる。
「……なぁ、この銃はどっから持ってきたんだ?」
「ん? 誰か説明できるやつはいるか?」
「うっす、では自分が」
そう言って黒服の一人が美鶴の声に答えた。
「此方は影時間内でもなぜか稼働する大型自動拳銃です。その性質から影時間の間にお嬢達に渡せば戦力向上になるのでは? という考えがあったのですが……」
「ほう、初耳だ……で、何故私の耳に入らなかった?」
美鶴の言葉に黒服がそれがですね、と言葉を続けた。
「……性能検証をする為に影時間に持ち込んだ同僚がそれをシャドウへと向けて放った時、シャドウを射殺する事に成功しましたが……その、撃った反動で
ほう、そりゃあ中々ご機嫌な奴ではないか、と迷う事なくウェポンラックからそれを外して手に取った。その瞬間、手にフィットするような感触と凄まじい重量を感じ取り、また同時にその中に感じる対悪魔概念を感じ取った。元々そういう風に作られた、というよりは……後天的にそういう形に至った、という感じがする。
右手と左手にそれぞれ握ったそれを軽く回転させてから真っ直ぐ、イケメンへと構え―――引き金を引いた。
ガツン、と腕に来る反動を感じながらも、その反動に心地よさを感じていた。放たれた弾丸はベレッタで放っていたそれよりも遥かに早く、そして力強く、一瞬でイケメンの頭に到達し、無効化する筈のイケメンを銃弾の衝撃で軽く仰け反らせた。
「……これ、根本的にデビルバスターとか悪魔人間とかが使う事を想定して作られている様な気がするな」
床に転がったイケメンを全力でプギャるチェフェイの笑い声を無視しつつ、気に入ったので貰う事にする。握っていて解るのは恐ろしく硬い、と言う事。普通の人間なら引き金を引くのに指が千切れそうな程力を入れる必要があるだろう。そしてこれ自体で殴っても人の頭を割れるぐらいの強度がある。
人間を超えた力を持つ者が、それでも銃で戦えるように……という感じで作成されたような気がする。まぁ、素晴らしい逸品であるのには変わりはない。ベルトの中に突っ込みつつ、ウェポンラックの中にあるミニミも頂く。こんなものを用意するとは中々のクレイジーさ、実に気に入った。
それはそれとして、
「今の二挺自動拳銃、いったいどうやってこんなところに回って来たんだ?」
「いえ……同僚の持ち込み品なんですが」
「持ち込み品」
「えぇ、なんでも餓死しそうな赤いコートの男にピザとストロベリーサンデーを食わせてやったらお礼に貰ったとか」
「ストロベリーサンデー」
「ちなみに銘はルーチェ&オンブラらしいですよ。まさかこの世にそれをまともに扱える人間がいるとは思いませんでしたが……」
いや、まぁ、確かに人類が使う事を想定してない拳銃だとは思うが、身体能力が爆発的に上昇したデビルバスターやデビルサマナー、或いは異能者だとかはこういう、特別製の頑丈な銃じゃないと握り潰してしまうのだ。それを気にしていると銃を連射出来なくなるし。今までがそういう状態だった。これからはもうちょっとフリーダムに銃弾をばら撒けるだろう。
それはそれとして、イケメンの役目は終わったのでさっさとDDSに戻してしまう。そしてその代わりに今度はチェフェイを召喚する。勢いよく召喚されたその姿を見て、とりあえず蹴りを入れて床に転がし、踏み潰す。
「お前、風呂の事は絶対に許さないからな」
「なんでじゃ! 良い思いが出来たじゃろ!」
「それとこれとは話が別だ駄狐」
一回ぶち殺してやろうか、と思ったが、そろそろペルソナ組を仲間外れにし続けるのも悪いだろう。チェフェイを蹴り転がして、本日の肉盾を決定する。
「えーと……とりあえず実力を発揮すればいいんだろう?」
「その……なんだ……本当に大丈夫か?」
「不安そうな表情を浮かべるなよ。茶番やってる自覚はあるから」
まぁでも、これぐらい遊んでおけばもうちょっと軽い感じで話しかけてくれるだろう、と思う。美鶴も、明彦も警戒するせいでどこか言葉が硬い、というか心の壁が存在していて完全に拒絶されている気がする。まぁ、外様だからしょうがないのかもしれないが。そんな事を考えつつチェフェイを階段のところまで転がし、L&Oの銃口を向ける。飛び上がったチェフェイが階段を走って上がって行く。
「うっし、肉盾が前に出たから進もうか」
「いいのか……これで……?」
「あぁ、アレは肉体を持たない悪魔だし、ミンチになった所で地返しの玉か反魂香でも用意すれば即座に生き返るよ。それに契約を結んで戦ってくれているんだしな、少なくとも同意はある……」
銃を肩に担ぐように階段へと向かって歩き出しながらそれとも、と明彦へと振り返りながら言葉を向ける。
「見た目が童女だから非道には耐えられないか?」
その言葉に明彦は少し迷ってから頷いた。成程、とそれで理解する。やはり明彦も、そして美鶴も、腹に何かを抱えているとしても、その根っこは善性の人間であるらしい。略奪とか殺人とかさえやらなければ、仲良く出来そうだなぁ、と計算しつつ言葉を口にする。
「じゃあ今夜は悪魔に関する良い勉強になりそうだな」
「ん? どういうことだ?」
「いや、見れば解るって」
そう告げて、アンを引き連れて階段を上って―――タルタロスへと侵入した。
「うーむ、不味い」
バリバリと音を立て頭からシャドウを食べながら、そんな事をチェフェイが呟いていた。余りにもグロテスクすぎる光景に、明彦が召喚機と呼ばれるペルソナ能力を発動させる媒体を片手に、動きを完全に停止させていた。それもそうだ、見た目幼女が異形の怪物に噛みついてそれを食っているのだから当然だ。
「だがゾンビやガキ等と比べればまだマシじゃな。そこはかとなく人の欲望の味を感じるのも悪くない。サマナー、妾ちょっとグルメっぽくない? 評価の仕方グルメっぽくない?」
「俺が知るか」
更に近づいてくるシャドウの対処をチェフェイに任せ、いいか、とチェフェイを指さす。
「悪魔ってのは大体あんな感じです。見た目で騙されちゃいけません」
「言葉ではなく魂で理解した」
まぁ、これを見てしまえば解るだろうが、所詮悪魔は悪魔なのだ。どう足掻いてもその概念に縛られるし、見た目がどんなに可憐であろうとも、結局は中身が悪魔だから、その外見で判断してはならないのだ。特にチェフェイは妲己や玉藻の前と同一視される狐の妖怪だ。つまりは傾国の女だ。今はまだ二尾の状態で力も姿もほとんどダメダメになっているが、これで力を取り戻せばつまりはそういう悪魔になるという事だ。
「まぁ、この先他に悪魔と出会う事があるか解らないが、絶対見た目で判断するなよ、とは教えておく」
「授業料は中々に高くついたがな」
「うーん、中々ビターな味じゃのぉ」
「まだ食ってたのかよお前」
チェフェイかマツヤが戦闘に出るだけで、空気が緩みっぱなしになるよなぁ、と思いながらチェフェイを壁にする様に前に出したまま、タルタロス内部を進んで行く。この塔はどうやら何百を超える階層により構築されており、2階から3階へと上がった感じ、全くダンジョン構造に変化が見られなかった。ひたすら作業感の強い探索だった。そして薄々感じてはいたが、シャドウたちの巣でもある。
中に入り、《エネミーソナー》を使ってみればアホみたいな反応がある、まるでタルタロスそのものがシャドウを材料に建築してあるかのような気持ちの悪さだ。だが幸い、出現するシャドウの強さは制限されているようで、
レベルがどれも10以下の雑魚しか出現して来ない為、解りやすい虐殺になる。
チェフェイを前において壁にしつつ、見えてくるシャドウで射撃耐性を持たない者はクイックドロウで射殺し、そうでないのはチェフェイが喰ったり、アンが蹴り潰したりして一瞬で始末する。ここら辺のコンビネーションは崩壊世界からやり続けているルーティーンワークでもある為、そこまで難しい事はなく、サクサクとタルタロスを進んで行く。
此方が出す素早い動きに美鶴からの通信も、そして現場で此方を見ている明彦も驚いている様だった。まぁ、ペルソナ使いがどういうものかはまだ良く解っていないのが事実なのだが、基本的に、サマナーの戦いとは連携の戦いだと学んでいる。
攻撃、防御、支援。この全てを一人で用意する事が出来るのがサマナーの魅力だ。
「攻撃用の悪魔、防御用の悪魔、支援用の悪魔。そうやって役割を割り切らせて悪魔を用意する事がサマナーは出来る。そうなると自分で連携を構築できるからな。これぐらいは出来て当然だとも」
何より二尾チェフェイは斬撃と精神耐性を保有している。つまり比較的多い、爪などの攻撃からダメージを最小限に抑えることが出来るし、プリンパやマリンカリンをはじめとした精神攻撃に対して惑う事もない為、即座に対応が取れる。今はデビルソースなどが足りないが、スティーブンが悪魔合体を解禁したら、状態異常を解除する系統の魔法を習得させたいと思っている。それと物理、後は呪殺。前衛防御と支援。それが今のところのチェフェイの役割だ。
実際、傾国の概念で無駄に攻撃はチェフェイへと向かう。その事を考えたら適役だろう。
それに比べ、アンは回復魔法を習得しているが、能力が攻撃に偏重している。ぶっちゃけた話、ディアを使っているよりは攻撃に参加させていた方が遥かに効率が良くなる。まぁ、ここら辺を考えなきゃいけないのもサマナーの仕事だ。
最終的にマツヤは攻撃、チェフェイを支援と妨害、アンを攻撃という形に成長、調整させたいとは考えているが、今はまだ無理な話だ。
それはともかく、このメンツで崩壊世界で毎日戦ってきたのだ。連携の一つや二つ、簡単なものだ。《エネミーソナー》と《ハニー・ビー》でどこにシャドウがいるのかは把握しているし、5戦も行えば大体、このエリアに居るシャドウがどんなものかはつかめてくる。
そしてここに出現するシャドウで、射撃に対して耐性を保有しているものはいない。その為、チェフェイを前に出してシャドウを誘引し、出てきたところをクイックドロウで射撃し、シャドウの脳天にL&Oから弾丸をぶち込めば、大体それで戦闘が終了し、次へと進める。
「強い、とは解っていたがまさか手を出す暇さえないとはな……」
「戦闘は何時だって先手必勝、いや、先手必殺だ。先に動いて先に殺すのが一番効率的な戦い方だよ」
更に理想を言えば相手に反応すらさせないのが一番だと思う。明彦にタルタロスの中を進みながら伝える。
「根本的に俺は危ない環境で育てられたからな。……まぁ、簡単にいえば都市規模でタルタロスの状態になってる場所だ。だから生きていくためにはより早く、そして確実に悪魔をぶち殺せるようにならなきゃならん」
「成程、自然と鍛えられる訳か」
明彦の納得する言葉に、自分が強くなった最大の理由は最近、マジシャンにスダマ先輩でメギドラ花火を打ち上げた事が原因である、とは絶対に言わない。少しでもプロフェッショナルさを演出し、良好な雇用関係を続けるためにも嘘は大事なのである。それはそれとして、明彦が止まれ、と声をかけてくる。
正面には階段が見える。
「この先の階段を上った層……5層には門番と呼べるシャドウが屯っている。そこにはターミナルもあり、それを使えば一瞬でエントランスまで戻れる。ただ、面倒な事にそいつは定期的に蘇るらしくてな」
「それが試験相手だ、って事だな」
「あぁ、話が早いのは良い。俺も拳を振るいたい所だが―――」
『明彦が手を出してしまっては実力を見る事も出来ないからな。いや、おそらく現時点で我々よりも強い事は解るのだが』
「まぁ、建前は必要だもんね。任せろ。一瞬でケリを付けるから」
そう告げて階段をゆっくりと昇って行き、偵察を行う。階段を上がった向こう側のフロア、そこには仮面を被った大きなハーピーの様なシャドウが道を塞ぐように存在していた。隠れながら近づく事もなく《アナライズ》を行い、データを取得しつつ、そそくさと離れる。
「成程、ヴィーナスイーグル。5レベルとは中々あるし、疾風属性を持ってるのが厄介だな」
疾風属性は他の属性とは違い、威力がやや低い属性だ。ガルやマハガルを初めとする疾風属性は確かに威力が低いのだが……そのかわりに、満遍なく多くの悪魔に突き刺さる、というか弱点や耐性持ちの悪魔が少ない属性なのだ。その為、疾風系統は一つ仕込んでおけば、耐性による詰みがなくなるとかいう話はスティーブンから教えて貰った。それはともかく、
「食いしばりもない雑魚め……これでボスのつもりか」
「ん? 倒す算段が出来たのか? お手並み拝見とさせて貰おうか」
階段から降りてきて明彦と合流し、此方の言葉を聞いた明彦が期待する様に言葉を向けた。それに応えるように、サムズアップを向けてから、視線をアンへと向ける。それを受けたアンは此方の視線に気づき、頷いた。足を全力スイングし始めるのを確認してから、
スダマ先輩を召喚する。
『君は目玉焼きに何をかける? 俺ニトロ派』
「!?」
『こ、個性的な仲間? だな……?』
美鶴の通信にそうだろう? と答えながらそれをアンの方へと投げつけ、アンが見事な蹴りをスダマへと叩き込み―――その姿が、階段の上の方へと一瞬で消えて行く。それを蹴り飛ばした瞬間、明彦の肩を掴んで横に引きずり倒す様に床に倒れ込み、自分の耳を両手で抑え込む。
「サマナー!? 何を―――」
言葉が続く前に、爆音と爆発の連続で轟音が上層から響く。シャドウの悲鳴が一瞬だけ聞こえたような気がしたが、それすらも連続で発生する閃光と爆発音によって一瞬で掻き消え、続く爆発で音という音が喰われる。タルタロスすら揺れていると感じさせるような轟音がしばらくの間続き、Magが自分の中へと流れ込み、一段と上昇する自分の力にレベルが上がったのだと気づいてヤッホー、と心の中でガッツポーズを握りつつ、横で転がり、ドン引きの表情を浮かべている明彦にサムズアップを向ける。
「いいか、確殺できる手段があって、それを使わない奴は馬鹿だ。動かない敵なんてただの的なんだ。戦う前に偵察して確殺手段を用意するか、カジャ系全部積んでから殴ればいい」
「意味は解るが納得はいかんぞ……!」
げらげらげら、と笑いながら試験を終わらせた。それにしてもスダマ先輩のメギドラダインで破壊出来ないとは、もしかしてこのタルタロス凄まじく頑丈なのでは……?
そんな風に、タルタロス探索の夜は終わった。美鶴と明彦にスダマ先輩と言う恐怖の影を永遠に心に刻み、絶対にアレを使わせてはならないという誓いを勝手に刻まれながら。まぁ、携帯し再利用できる破壊兵器と言う時点で確かに、みだりに使わせてはならない、と言う考えは正しい。俺もそんな簡単にスダマ先輩を解き放つつもりはなかった。だが確殺が見込める状況、相手が動かない、そして閉鎖された空間。そんな状況で確実に殺せる手段を択ばない方が甘えなのである。
そんな訳で、タルタロスの夜は終わった。
近いうちに新たなペルソナ使いが加入するらしく、夜の後で寮は更に騒がしくなり始める。
増える学生、助けない大人、要請しない限りは最低限の支援しか行わない美鶴の実家。果たして本当にあのタルタロスを攻略する気はあるのだろうか? 子供に全てを任せた状態で。疑問に思う事は多く、同時に頼みさえすれば一瞬で兵器の類は揃えてくるその対応にも首を傾げたくなる所でもあった。
そんな風に一時的な拠点での生活が始まった。
昼間は寮でぐだぐだ成長計算を行ったり自分の旅の記録を書き残したりし、夜になったら明彦と美鶴とタルタロスへと攻略とトレーニングに向かう。
そんな、崩壊世界とはまるで違う日常が始まる。
平和でありながら混沌とし、そして同時にどこか不穏―――否、不吉な気配が付きまとう。死神と塔の扉の世界。そう、未だに塔は見えるのに死神が見えない。その名を冠する扉で、塔というタルタロスを示すのなら、もう一つ、共にあるべき死神の存在がない。
それが致命的に物語に欠けていた。
そのピースが埋まる事になるのはその出会いから数日後、約一週間後の出来事になる。
それはとある人物の目覚めであり、或いはその物語に必要とされるキーパーソンの目覚め、そして復活だった。その死神が目覚めた事で漸く、
世界に記された物語が動きだす。
次回、キタロー。
皆は知ってるかな? あの赤いコートのデビルバスターがメガテン3に出演して戦闘さえできたというのを。そうだ。ストロベリーサンデーを食ってるアイツが来るぞ。いるぞ、このメガテンシリーズに。
まぁ、メガテン二次でもちょくちょく見かけるしね、アイツ。