修正って以外と大変ですね…。
↑
リメイクはもっと大変(2018年11月3日追記)
キルトは今、海の上にいる。目的地はもちろん、タンジアの港だ。
「凶暴かつ極悪につき、甚大な被害が出る可能性あり。よって直ちに対処すべし。稀少であるため捕獲のみとする。但し、危険故討伐でも報酬の半額は払うとする。……か。随分と大袈裟に広められたね…。あいつは生きていたいだけなのにね。」
緊急依頼書を見ながらため息をついた。
「さて、どうするかな…。」
この依頼がユクモ村に来て、自分のいるモガ村に来なかった理由はわかっている。事は最悪の方向に向かっている。モガ村とユクモ村に友好関係がなかったら、きっと自分はこの事を知らなかっただろう。
「どうするのニャ?一応作戦は決まってるニャけど…ダメだったらどうするニャ?」
「その時は…この手で片付ける。」
「ニャッ!?正気ですかニャ?あいつは本当にキルトさんのことを…。」
「僕もさ。でもその隔たりを越えていけないというなら仕方がない。」
「そ、そんニャ…。ぼ、僕はキルトさんに忠誠を誓ったのニャ。だ、だから例えキルトさんが禁忌を犯そうと僕はついていくニャ!それにキルトさんは平気なのかニャ!?モガ村の村長もユクモ村の村長も協力してくれるって──」
「あいつら…ギルドはその気になれば村も町も潰す。……意味がわかるかい?」
「…」
「今まで僕は、生きるためでない殺しを極力避けてきた。でも僕がやらなければ誰かがやる。つまり罪悪感から逃げてきただなんだ。あいつも不死身じゃない。たて続けに戦えばそのうち殺される。捕獲といっても研究材料に過ぎないし、ハンターに直接殺られなくても、そのせいで死ぬことだって充分ある。」
「…」
「ならばせめて、事の発端である僕が決着を着ける。ハンターとしてね。」
─────────────────────────
ギルドナイトA
「ギルドマスター!例の緊急依頼に出たハンターたちが帰ってきました!」
ギール
「して、結果は?」
ギルナイA
「失敗です。3人が重体、もう一人も重傷です。」
ギール
「どうされますか、マスター」
ギルドマスター
「白疾風…5回もG級ハンター4人を送ればいい加減倒れると思っておったのじゃが…。最初にこちらが指名したハンターでは敵わなかったから公開募集してみたが無駄じゃったか…。」
「随分楽しそうだね、おっさんたち。」
ギール
「キルト…!?何故ここに!?」
「僕の知り合いが随分面白そうな依頼を紹介してくれたんでね。結構前からやってるみたいだけど、まだ決着がつかないみたいだけと何か問題でも?」
ギール
「…」
ギルドマスター
「それで、何をしに来たのかね?」
「みんなそんなに僕の大事な友達を殺したいの?」
話を聞いていた人たちはざわついた。
ギール
「討伐ではなく捕獲だ!殺したり────」
「無意味な寿命を伸ばすだけだ。あいつが凶暴で極悪で危険だって?監視隊隊長はなにを監視してたんだ?」
「気づいていたのか……?」
「ラルグを嘗めないでほしい。流石のあなたも臭いまではけせなかったみたいだね。足跡その他の痕跡もあったしね。」
ギルドマスター
「それでお前はどうする。わしらに刃を向けるのか?」
近くにいた護衛のギルドナイト達がハッと身構える。集会所に緊張した空気が流れた。視線が注がれる。
「挑発してるのか?ギルドマスター」
そして武器をとるギルドナイトたちに見向きもせず、受付嬢に歩み寄った。
「その緊急依頼を受ける。人数は一人。手続きしてください。」
辺りがどよめいた。誰もが訳がわからない、という顔をしていた。
ギール
「どうするつもりだ?」
「そのままの意味だが?」
「言ってることと矛盾してるぞ」
「僕がやらなくても、いずれ弱って捕らえられるか殺される。それなら、…他の誰かに、知らないうちにやられるぐらいなら僕がこの手で片付ける。どうせみんな怖じ気づいて受注しようとしないだろ?」
確かに、計20人のG級ハンターを蹴散らした訳だから、進んで受けたがるハンターは、少なくとも今この場所にはいなかった。それに、連続で5回もクエストを実行すると、支給品の在庫が底を尽きかけていた。危険なクエスト故支給できるだけ支給したからだ。
ギルドマスター
「自信はあるのか?一人で勝てる自信が。」
キルトが答える前に、他のハンターが口を挟んだ。
「過去にナルガクルガ稀少種を倒してその装備を着けてるんだろ?相手も弱ってるだろうからいけるんじゃないのか?」
キルトはそのハンターを睨み付けた。ギルドマスターが居心地悪そうにため息をついた。
そして深呼吸をし、胴の装備を撫でながらキルトが話し始めた。
「これは殺して剥ぎ取った訳じゃない…」
「4年前、塔という場所に住み着いたナルガクルガ稀少種を撃退してくれという依頼があった。他のハンターと組んでそれを受けたんだが僕らが塔に着いたとき、依頼人であるはずのその周囲を守る竜人族が、そいつを助けてくれって言ってきたんだ…。」
─ ─ ─ ─ ─ ─
(4年前)
「頼む、かの竜を助けてやってくれ!」
「どういうことですか?」
竜人族が言うには、僕が到着する少し前に別のハンターが来て、ナルガクルガ稀少種を攻撃、殺すつもりらしい。しかも竜人族の子供を人質にとって、彼らの戦士が手出しできないようにしている。明らかな反逆行為。さては密猟者か。
「詳しくは後で説明する。裏道を教えてやるから早く行ってくれ!」
到着したときには遅かった。ナルガクルガ稀少種は体のあちこちから危険な量の血を流していた。襲っていたのはG級ハンター。だが僕らが依頼の正式受理者なのでこれは反逆行為。その自覚あってか、僕らを見つけると一瞬固まった。その瞬間、もう動けぬだろうと思っていたナルガクルガがその隙をついて攻撃した。それで1人を倒したが、最後の力だったのだろう。よろよろと数歩歩いて倒れた。残りの二人が慌てているところを仲間のハンターが取り押さえる。
「キルト君はナルガクルガを!」
「分かった!…おい!おい!しっかりしろ!」
「お前たち…は敵では…ないのか?」
まさか人語を話すとは思わなかったが、それに構っている余裕なんぞなかった。近づいて怪我を見るが…
(これは…もうダメか…)
致命傷を幾つも負ってる。死はすぐに来るだろう。…と突然何かが飛び出してきて、キルトに襲いかかった。
「み、みぎゃぁぁ!」
「うおっ!」
とっさに受け止める。そしてそれを見て、何故稀少種がこうもあっさり倒されたのか分かった。子供を護っていたのだ。その子供も怪我をしていた。
「キルト君右!」
仲間のハンターの警告とほぼ同時に発砲音。辛うじて避けて身構えたが、ボウガンを持っていたそいつの後ろから竜人が襲いかかり事なきを得た。どうやら倒したと思って人質を捨ててこちらに来たらしい。
「ラルグ秘薬を!早く!僕は止血を…」
「もういい。自分が助からないことぐらいわかる。」
「でも───」
「人間の子よ…近くに…来てくれ」
近寄ると、腕のなかにいたナルガクルガの子供が母親に飛び付いた。母の死を理解しているのか、泣きながら。
「頼む…この子を……助けて…くれ。そして育てておくれ……お前は…あの人間とは…違う。
私…のために……涙を………ゲフッッゴハァァッ…ハァ…ハァ」
自分も泣いていた。何もできない自分が情けなく、また彼女らが哀れで。
「お前たち…がどの……ようなやつら…なのかは…竜人から聞いた…ただで…救えとは言わん……」
その先は聞きたくなかった。礼など要らんといったのだが、聞かなかった。
「私の…体を…使うといい……そうすれば…この子も…安心して……眠れるだろう……そのあとは…好きに使え…」
つまり、この母親の体で武具を作り、敵が来ればそれで守り、夜は抱いて寝てくれとのことだろう。何とも恐ろしく、切なく、悲しくも優しい願いだろう…。
先程まで荒かった呼吸が急激に深く、遅くなっていく。子供の鳴き声が一層大きくなり、甘えるようにすり寄ると母親もそれに応える。
「この子…息子……ジンだ……」
そしてジンと名付けられた子供に何か囁くと、ジンがコクコクと頷いた。
「この子は…きっと護ってみせます。安心して見守ってください」
と言うと、僕の額に自分の額をつけ、それから
「グ…ギギギ…」
何かを言った。聞き取れなかった。人語では無かったのかもしれない。だが表情は緩み、一筋の涙をこぼし目を瞑った。
大きく息を吸い、はいた。また吸って、はいた。もう一度吸って、はいた。そして動かなくなった。辺りは静まりかえり、ジンの泣き声だけが響いた………。
後で聞いた話だが、この地は別の者が治めており、この竜人族が護っていた。そしてその長に断りなくこの月迅竜がきて巣を造ったそうだ。頭に来た竜人たちは即座にギルドへ依頼を送ったが、月迅竜が幼子を連れ、別の竜から逃げてきたと聞くとすぐに住むことを許したという。だが、ギルド本部とここからはかなり距離がある。だから依頼取り下げの連絡が届く前に事件が起きてしまったそうだ。
竜人族と僕は彼女の遺言に従い、この子を育て、守り、鍛えることにした。一緒に来ていたハンターは密猟者をつれ本部に戻り事件を説明し、ギルドもさすがにこれは重く受け止めて、極秘に僕がナルガクルガ稀少種の子供を育てることを許可してくれたそうだ。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「僕がG級になって最初のクエストだった。」
沈黙
「だから、この武具に生きるためではない殺しの血を浴びせたくなかった。でもそれも今日で終わりだ。」
ギルドマスターへ向き直る
「報酬は要らない。支給品もだ。その代わり捕獲はしない。撃退か討伐のどちらかだ。」
ギルドマスター
「ギール、マルク、ダン。この3人にお前が故意に逃がさないかどうか監視させる。それが受注許可を出す条件だ。」
「………戦いに手を出さないと約束するならいいでしょう。」
ギール
「分かった。約束しよう」
ギルドマスター
「では────」
ハンターa
「あっ、あのっ、僕も見に行って良いですか?1度キルトさんが本気を出しているところをみてみたいんです!」
ハンターb
「私もっ。ハンターの参加人数上限は4人ですから良いですよね!ほらっあんたも行こ!」
ハンターc
「お、おう」
ギルドマスター
「お前たちは確か…ユクモ村専属の?フム…キルトが許すなら良いだろう。但し報酬はないぞ?」
ハンターa
「わかってます!キルトさん…いいですよね?」
彼が瞬きでキルトに暗号を送ったことに、キルト以外で気付いたものはいなかった。
「……分かったよ。」
「隔たり『第3章~絆の力~前半』」へ続く
いやー。2章は過去話が大半を占めてしまいましたね…。ただ、このあとに繋げるためには過去話をする必要があって…。次章はこんなに長々と回想することはない…はずです。そうならないように頑張ります。