※この作品はR-18です。

隔たり   作:神座(カムクラ)

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 皆さんこんにちは。第3章前編は波乱の展開です。

 初めての戦闘シーン!上手く描けたかな…?

 何度も言っていますが、副題を裏切ることはないのでご安心を。
 
 


『第3章~絆の力~前編』

水没林にて……。

 

 

 ギール

 (これはどうしたものか。こちらの作戦としては、あいつが白疾風と対峙している隙をついて白疾風を麻酔弾で眠らせキルトを拘束。その後キルトは死んだ事にして証拠隠滅させるつもりだったが…。)

 

 自分と仲間のギルドナイトの後ろには、飛び入り参加をしたハンターたちとラルグがいる。ハンターなので、味方でも自分達の後ろをとられたくないという言い分だが、これではこちらが監視されているようなものではないか!だが下手に何かを言ってキルトに勘づかれても困る。

 

 (例えキルトが討伐に成功しても、後々ギルドにとって厄介な存在になりかねないからな…。さてどうするか)

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 一方キルトも頭を悩ませていた。

 

 (師匠だけならともかく、他に二人もギルドナイトがくるとはね…。彼女を逃がした後師匠をどうにかするつもりだったけど、その作戦は無理そうだな。あのハンター達がいなければ、もうすでに拘束されてたかもね。)

 

 残る問題は彼女を殺すか否かだ。願わくば戦いの途中で逃げてほしい。いや、もしかするともう逃げたかもしれない。だがもしいたら、そして逃げなかったら。

 

 (殺すしかないよなぁ。研究資料なんかにさせるよりはましだよな。)

 

 それに逃がしたとして、その後自分がどうなるか。恐らくハンターの資格を剥奪されるだけではすまない。ハンターでありながら許可なく竜を手なづける。これだけでも充分禁忌とされるのに、相手が極悪と判断された緊急討伐対象となれば…あまり想像したくない。

 

 そうこうしている間にいつも会っている場所に近づいてきてしまった。ゆっくりと太刀を背中に留めている紐を外し、左手でその鞘を持っていつでも抜けるようにする。今更だが、彼の太刀は普通の太刀の2/3ぐらいの長さしかない。これは、彼の戦法に合っているという点と、素材のナルガクルガ稀少種の刃翼の損傷が激しくて(相手が拡散弾を使用したため)双剣を造るには足りなかったからである。その代わり鞘もかなり丈夫なので、本気を出すときは剣と鞘で戦った。

 

 そして、

 

 (いた………)

 

 いてしまった。

 

 彼女は寝ていた。

 

 キルトとラルグとギール以外

 「あれが白疾風…」

 

 「みんなはこの辺りに。尾棘が飛んだらあぶないので。ラルクも手を出さないでね。事の発端は僕だから」

 

 「ニャー…」

 

 彼女は治りかけの傷が幾つもあり、以前会ったときよりも少し痩せているように見えた。

 

 ゆっくりと太刀を抜く。そのまま少し近づくと、目を覚ました。ハッとこっちを見ると「ギャン!」と嬉しそうな声をあげて急いでこっちに向かってきた。その表情から、後ろにいる者達でさえこのナルガクルガがキルトを慕っていることがわかる。

 

 ギール以外のギルドナイト

 (マジでなついていやがる…)

 

 ハンターabc、ラルグ

 (本当に殺すのか(でしょうか、ニャ)?)

 

 異変に気づいたのか白疾風が立ち止まり、喜び全開だった表情が疑問に変わる。敵意が無いことを示そうとしたのか、頭を低くし「クルルル…」と喉をならすが、キルトは構わず近づいた。

 

 (逃げてくれよ…)

 

 …と最後に祈り、キルトは頭の中を真っ白にした。もう感情はない。目の前にいるのは討伐対象の白疾風ナルガクルガだ。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 度重なる人間達の襲撃に、私はより一層彼に会いたい気持ちが強くなるのを感じた。いつ襲われるかわからない情況。安心して寝ることもできないが、この地を離れてしまえば彼に会えなくなる。

 

 5度目の襲撃に耐え、ひとときの休息に、私はいつも彼と会っている場所で微睡んでいた。昨日、一昨日と随分激しい雨が降ったせいで体が泥だらけになってしまったが、巣に戻れば会う機会が減ってしまう。それに、以前は巣にいれば人間は来なかったが、3度目のとき、体にひどい臭いのする桃色の物体をつけられてから巣にも人間が現れるようになった。

 

 ふと足音が聞こえ、ドキリとして目を覚ましその方向を見ると、待ちに待っていた彼だった。この不安な日々のなかどれ程会いたかったことか。嬉しくて嬉しくて、急いで駆け寄る。が、異変に気づいて立ち止まった。武器を、刃を抜いている。それだけではない。ただならぬ殺気を感じる。私だと気づいてないのか?ふと彼の後ろに別の人間が隠れていることに気がつく。恐ろしい予想が脳裏によぎった。

 

 (まさか…いやそんなはずないわ。最初見たときでさえ攻撃をしてこなかった。額をつけたらそれに撫でながら応えてくれた。だからそんなはずないのよ。今まで来た人間も死んではいないはずよ。)

 

 きっと私と同じような体の色をしたやつがいて、そいつと間違えてるんだ。と、その誤解を解くために喉をならしながら頭を下げ、敵意が無いことを示した。しばらく歩みを止めなかったが、近くまできて止まった。嫌な汗が流れる。

 

 (ほ、ほら…)

 

 彼が剣先をこちらに向けた。と思った瞬間、かなりのスピードで突っ込んできた。

 

 とっさに後ろに避ける。刃が鼻をかすめ、全身に震えが走った。後少し反応が遅れていれば、頭を串刺しにされていただろう。彼の刃の鋭さは、今まで彼が他の鳥竜や獣などと戦っているのを見ていればわかる。

 

 (殺される…!)

 

 もう一度彼を見る。冷酷な目で私を見ていた。私の目ではなく、体全体を。それはつまりこちらの動きを読むため。

 

 (裏切ったのね…)

 

 忘れかけていたあの感覚。同族に差別された時の、仲の良かったリオレウスが目の前で殺されたときの、胸を鷲掴みされるような感覚。いや、あのとき以上の感覚。違うのは、もう泣いてないこと。自分の眼が紅くなるのを感じた。

 

  ─  ─  ─  ─  ─  ─  ─

 

 

 白疾風がキルトの攻撃をかわし、そして咆哮を上げる。キルトは動じなかったが、その悲痛な叫びに観客達は罪悪感を覚えずにはいられなかった。

 

 白疾風が目にも留まらぬ速さで尻尾を振ると、青白い刃が高速で飛んでいく。キルトはそれをスライディングで避け、一気に距離を縮めた。真空刃は岩を木っ端微塵にし、木を斬り倒した。

 

 「あ、あんにゃ真空刃をだしてるの初めて見た二ャ…」

 

 ハンターb

 「あ、あんなに化け物みたいなやつに一人で立ち向かうなんて…。」

 

 ギール

 「あいつはそういうやつさ。」

 

 マルク(ギルドナイト)

 「他人事ですね。」

 

 ギール

 「弟子である前にあいつはハンターで俺はギルドナイト。それだけだ。」

 

 白疾風はもう一度距離をとり、今度は尾棘を飛ばした。普通ならそれを横に転がって避けるところだが、キルトはそれを少し右にずれただけでかわした。 

 遠距離攻撃は効かぬと判断した白疾風は一転、素早くキルトの右側へ移動し、左のブレードを叩きつける。それを紙一重でかわしたキルトは差し出された左腕に太刀を突きだす。鋭い痛みが白疾風に走ったが、間髪入れずに今度は噛みついた。しかしその時そこにはもうキルトはいない。

 

 キルトを一瞬見失い、何処かと探そうとした瞬間白疾風の左腕に激痛が走った。潜り込まれたのだ。尻尾でなぎ払おうとするもかわされ、代わりに左足に鋭い痛みを感じる。たまらず距離をとるが、その時に腹も浅く切られた。

 

 キルトが白疾風に傷を与えるたび、観客からは歓声が上がった。なんせG級ハンター4人でも敵わない相手に優勢なのだ。それに、キルトの身のこなしは師匠ギールでさえ唸らせた。

 

 しかし左腕の深い切り傷を除いてその他の傷は浅く、さほどダメージを受けていないように見えたが、ある時間を境に情況が一変した。

 

 白疾風が距離をとろうとバックステップしたときだった。白疾風が転んだ。慌てて起き上がり、尻尾を振ったが何も起こらない。むしろその勢いでまた転んだ。

 

 (そんなっ…体に力が入らない!)

 

 これがキルトの本当の恐ろしさだった。キルトは子供ではないが、大人でもない。故に他のG級ハンターより腕力だけでは劣ることもあった。その代わり、その俊敏性、体力、攻撃の正確性はずば抜けていて、頭の回転も速かった。まるで泡狐竜のように相手の攻撃を紙一重でかわし、その隙をつく。相手の体力が切れたところで一気に畳み掛ける。それがキルトの戦法だった。

 

 白疾風にできた無数の傷も、やみくもに攻撃していた訳ではない。攻撃のほとんどが関節もしくは同じ傷に当たっていた。どんな小さな攻撃もいずれ相手に大きなダメージを与える。それが関節ならなおさらだ。左腕以外深く斬ってはない。致命傷なんて1つもない。しかし白疾風はもうまともに動けなくなった。

 

 勝負は決まった。白疾風はついに立てなくなった。

 

 ダン(ギルドナイト)が麻酔弾を撃とうとボウガンを構えようとし、ラルグが気づいて止めようとする前にギールが抑えた。同情したわけではない。疲労してたとはいえ、無傷でしかもこの短時間で白疾風を追い詰めたキルトを恐れたのだ。キルトの成長はギールの予想を遥かに越えていた。この情況で敵にまわすのは好ましくない。心からそう思った。それに麻酔弾を撃ったところでキルトは白疾風を殺すだろう。キルトに当てても、麻酔弾があの稀少種の防具を貫けるかどうか自信がなかった。

 

 キルトが止めを刺そうと近づいていった。

 

 (そんな…そんな…こんな死に方…私はただ温もりが欲しかっただけなのに…こんな体でも生きていたかっただけなのに…。)

 

 怒りが、悲しみが体にあふれでてくる。

 

 (このまま終わらせてたまるものか…せめて後一撃…後一撃……動いてよぉ…ねぇ…)

 

『動けぇぇぇぇ!!!』

 「ギャオオォォォォォォン」

 

 「!」

 

 白疾風が咆哮を上げた。一瞬キルトの動きが止まると、白疾風が一気に距離を縮め、尻尾を振った。キルトはかわしたが、それが狙いだった。跳び上がり、空中で回転して思い切り尻尾を叩きつける。キルトはこれもかわし、剣を突きだすが、もう一度宙返りをして尻尾を叩きつけた。

 

 ドオォォォォン!ドオォォォォン!

 

 轟音が2度響き渡り、大地を揺らした。当たればひとたまりもないだろう。

 

 だがキルトの方が上だった。当たった感触がないのでまた距離をとったが、今度こそ動けなくなる。痛い。それ以上に動かせない。白疾風は死を覚悟した。

 

 キルトは止めを刺そうと再び近づいてきたが、ふと立ち止まった。

 

 (脚が震えている?攻撃は食らってないはずだが?)

 

 しかし、ほぼ同時にパラパラという不吉な音を聞いた。一瞬白疾風と目が合う。キルトに殺されるとは別の恐怖が写っていた。

 

 キルトと白疾風が戦っていたのは、マップで言う4番と6番の間。崖の上で、下は川。しかも連日の大雨で増水、流れもかなり速い。そして地盤はかなり緩くなっていた。

 

 (脚が震えているんじゃない!ヤバイ!)

 

 「ここから離れろ!」

 

 と観客達に言いながら走る…が、手遅れだった。先ほどの白疾風の最後の一撃の振動で、崖崩れを起こしたのだ。上から大量の土砂が流れ込み、地面が消えた。

 

 観客は無事だったが、キルトと白疾風はそのまま急流に落ちてしまう。ラルグの主人を呼ぶ声が虚しく響いた…。

 

 

それはただの偶然か、神のいたずらか。

 

 

 

 

    

「隔たり『第3章~絆の力~後半』」に続く

 




 
 
 後半は少し長くなりそうです。まぁ今までが結構短いっていうのもあるんですが。

 それではまた。
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