陽はまだ低く、霞む光が薄絹のカーテンを透かして寝台を淡く包む。
ファブレ家の若き公子は、白亜の寝台に仰向けとなり、微睡の中で喉奥から息を吐いた。
「……ん。もう、そんな時間か」
寝衣は胸元までずり落ち、ゆるやかに広がる素肌を朝の空気が撫でる。
その下では、既に彼の目覚めを手伝う二人の侍女が、熱心に勤めを果たしていた。
一人は太腿の間に跪き、皮被りのポークビッツに舌先を繊細に這わせている。
もう一人はその傍らで両の手にて熱を包み、しとやかに前後へと愛撫していた。
「……はは、よく働くな。朝からそんなに熱心に舐めて、疲れないか?」
そう囁くルークの声音に、舌を這わせていた侍女が小さく目を細める。
「公子様のお世を仰せつかることは、女として最上の悦びにございます。どうか思うままにおくつろぎを」
「ふうん、なら――もっと強く握って。うん、そう……そのまま、上下に……」
彼女は言葉に従い、ぬるりと滑るポークビッツの表面を舌先で撫でつつ、口内へゆっくりと含んでいく。
軽く吸われた瞬間、ルークの喉がひくりと震え、手のひらが薄布の上から寝台を掴んだ。
「っ……ふぅ、朝から……きついな、これ」
侍女たちの手と口が巧みに連携し、滑らかに、そして容赦なく彼を快楽の頂点へと導いていく。
甘い吐息、湿った音、舌の這う音――淫靡な調べはファブレ家の静謐な朝にのみ響いていた。
「んっ、……いいぞ、そこ……ッ。ん、そろそろ……出すぞ――っ」
昂ぶりが頂点に達し、ルークの腰がぴくりと跳ねた。
女官たちは微動だにせず、彼の迸りを喉奥で受け止め、掌でぬくもりを包み込むように整えていく。
「ふひぃー……上出来。満点だ、お前たち」
ひと息ついたルークは、ぼんやりと天井を見つめながら鼻をほじる仕草で起き上がり、寝衣の裾を整えると、すっかり満足気に立ち上がった。
「水浴びしてくる。床に溜まった分は、ちゃんと片付けておけよ?」
侍女たちが深く頭を垂れる。
その背に振り返ることもせず、ルークは素肌のまま、廊下へと悠然と姿を消した。
水浴びを終えたルークは、石造りの浴場を背にタオルを纏い濡れた髪を振り払うように軽く頭を振った。
侍女たちが駆け寄り、銀の櫛と絹のローブを手に取る。
「本日の香は、柘榴と白檀をお選びしました。お身体に合うかと……」
「うん、任せる。そういうのはお前たちの趣味でいい」
すぐ傍で着衣を整える手が肩を撫で、首筋に香油を垂らす。
背後から細い指が滑るたびルークはくすぐったそうに眉を動かすが、それを制止しようとはしない。
「そういや、聞いたぞ。今朝、新しい女が入ったんだって?」
「……はい。厨房手伝いの予定でしたが、あまりにも麗しいものですから。せめてお顔だけでもと、侍女見習に――」
ルークの目がすっと細められる。
それは獲物を見つけた獣のような鈍く熱を帯びた視線。
「ふぅん。お前たちが推薦したってことは……」
「いえ、まだお勤めは一切……。触れてすらおりません。とても清廉な娘で……」
「そのまま俺様に回せ。手つかずの方が、遊び甲斐がある」
ポークビッツがぴょこっと主張していた。数名の侍女がうっすらと笑みを浮かべる。
ルークは短小で早漏だから奉仕の苦痛は短い。
「……ですが、ひとつご忠告を。彼女は少々頑なにございます。目を合わせることすらためらうほど、従順と言うより、むしろ――」
「拒んでるってことか?」
ルークはローブの帯をゆるく結び、鏡の前で自らの姿を一瞥する。
裸の喉元から香が立ち、うっすらと朱に染まった耳が、何よりの余裕を物語っていた。
「……面白い。なら、なおさら手をつけてみたくなるな」
侍女たちが頭を下げ、扉の向こうに控えるその新入りへと視線を投げた。
薄い襖の向こうに人の気配がある。動きはなく、けれど緊張だけが空気に滲んでいた。
ルークは足音を響かせ扉へと歩を進める。
その唇には、まるで純白の絹をゆっくりと汚していくような静かな愉悦の笑みが浮かんでいた。
夜――。
ファブレ家の私邸に静謐と緊張が満ちていた。
寝台の上、ルークは片肘をついて横たわりながら、傍らの蝋燭の火を見つめていた。
扉の向こうからぎこちない足音が近づく。
それは訓練されていない不器用な足取り。
ふわりと香がした。
湯浴みを済ませたばかりの新入り――名をまだ名乗らぬ侍女見習が清らかな衣擦れの音とともに、部屋へと足を踏み入れた。
「……入れ」
扉が閉ざされる。
月灯りの届かぬ室内には、蝋燭の揺らめきとふたりの鼓動だけ。
侍女見習は震える指先で跪き、ルークの寝台に膝を寄せる。
その白い喉が咽るように動いた。
「顔を上げろ」
命ずる声はあまりに柔らかく、それがかえって恐ろしい。
彼女は静かに顔を上げ、目を伏せたまま頷いた。
頬にはまだ湯の名残があり、頑なな唇が真珠のように震えている。
「安心しろ。今日は指一本触れないって決めてる。……代わりに、お前の手で俺を満たしてもらう。できるな?」
侍女見習の肩が跳ねる。
だが彼女は目を閉じてひとつ頷いた。
羞恥に紅潮した顔を俯かせ、ルークの腰元に手を伸ばす。
帯をほどき、ゆるやかに衣を脱がせると、目の前にあらわになった皮被りのポークビッツに、小さく息を飲んだ。
「……触れろ。そっとだ。ゆっくりでいい」
言われるまま、指先がそっと彼のポークビッツに触れた。
ぬくもりと硬質な鼓動が手のひらに伝わり、彼女の肩がすくむ。
「怖いか?」
「……いいえ」
嘘だった。けれど、その怯えた手つきがルークを愉しませる。
おずおずとポークビッツを両手で包み、下から上へ、ゆるやかに撫で上げる。
そのたびに指先が震え、掌の内で彼の熱がじわりと膨れ上がる。
「そう……悪くない。次は、口でしてみせろ」
侍女見習の唇がわずかに開き、戸惑いに揺れる瞳がルークを見上げた。
「やり方がわからないなら、俺様が教えてやる」
そう囁くと彼は自らの指を侍女見習の唇に触れさせた。
柔らかなその感触に侍女見習は小さく息を漏らす。
「唇を、そう……開け。舌を、俺様の先端に……ぬるく、なぞってみろ」
戸惑いながらも命令には逆らえず、侍女はゆっくりと口を開いた。
ぬるりとした舌先が、彼のポークビッツの先に触れた瞬間――ルークの喉がくぐもった声を上げる。
「……いいぞ。もっと吸え。……そのまま」
彼女の動きはたどたどしい。だがそれがたまらなく甘美だった。
唾液の絡んだ舌が何度も往復し、口腔内にその熱を迎え入れるたびに、侍女見習の頬はさらに紅潮し喉がひくつく。
「もうすぐ出るぞ……飲め。こぼせば殺すぞ」
震えながらも、女官は目を閉じ唇を深く重ねた。
瞬間、熱が彼女の喉奥へと奔る。
むせかえりそうな甘さと熱さに体が硬直したが、彼女はひたすらに飲み込み、すべてを受け止めた。
数拍の沈黙。
ルークは満足げに髪をかき上げ、寝台に背を預けた。
「……悪くなかった。下がれ」
女官は深く深く頭を垂れた。
翌朝。侍女たちの間に、静かなざわめきが走っていた。
新入りの侍女――名も告げぬまま夜伽を終えた女は、台所裏の水場で黙々と洗い物を続けていた。
夜が明けてなお、ルークの元を訪れず、膝を屈しない彼女の態度は、他の侍女たちにとって僭越のひと言に尽きた。
ついに、一人の侍女が背後に立つ。
「ずいぶんと高潔なつもりなのね。私たちが何年かけて得たものを、一夜で拒んで……」
水を打つ音が止まる。
その声はさほど大きくなかったが、空気の刃となって彼女の背をなぞった。
「公子様にご奉仕することが、侍女の誉れであると教えたはずですわ。まさか忘れたの?」
「……私は、まだ……何も……」
その言葉を遮るように、侍女の指が彼女の腕をつかむ。
そして、ぐいと腰を引き寄せるようにして、水場の台に押し付けた。
腰布がずり落ちかけ、白い素肌が陽の下にさらされかけた、その瞬間――
「やめろ」
低い声が響いた。
振り向いた侍女の頬が、みるみるうちに青ざめていく。
そこにいたのはルークだった。
衣も整えず、まるで寝所からそのまま飛び出してきたような風情で。
「懲罰は俺の役目だ。……手を出すな」
侍女は即座に頭を下げて姿を消す。
残されたのは、まだ背を向けたままの女と、ルークだけだった。
「お前は……自分の役目を、理解しているのか?」
彼女の肩が震える。けれども返事はなく、ただ静かに首を横に振った。
それを見たルークは、溜息とともに近づき、濡れた手を取り上げる。
そのままゆっくりと、彼女の腰に回した。
「教えてやる。体に刻み込んでやる」
台所裏の空間は、昼の陽差しと、二人の熱でむせ返るような空気を纏う。
ルークはそのまま彼女の背に覆いかぶさるようにして囁いた。
「……逃さない。この家の女は全部、俺のものだからな」
その言葉に彼女はぴくりと震えたが、動かない。
それを承諾と捉えたルークの手が、彼女の腰布をするりと剥ぎ取った。
背中から伝わる熱に、女の身体が徐々に柔らかくなっていく。
臀部をなぞる指先が、ゆるやかに、けれど確かに滑っていく。
「……綺麗な尻だ。ほんのり赤くしてやると、もっと映える」
ルークは右手を掲げ、軽く、しかし音を立てて叩いた。
ぱしん。
「――っ!」
小さく息を詰める彼女。けれど逃げれない。
もう一度、今度は逆の臀部を。
その後には、舌先がゆっくりと、その余韻を慰めるように割れ目に這っていった。
「どうだ。痛いか? それとも……くすぐったいか?」
「……わからない、です……」
震える声。けれどその膝は崩れず、背はぴんと伸びていた。
「なら、もっと教えてやる」
指先は今度、彼女の腿を撫で内側へ。
ぬるりと濡れた感触が指に絡み、ルークは低く笑う。
「……もう、こんなにして。罰を受けながら、感じてたんだな」
「ちが……っ、ちがいます……」
「そうか? じゃあ、この奥を撫でたら、どんな声が出るんだ?」
そして――彼の指は、彼女の蕾をすくい上げるように撫で上げた。
声にならない喘ぎが熱を帯びた空気に溶けていった。
「やめてください……っ」
その言葉は、誰にも届かない。いや、きっと届いてはいた。
けれど、それを無視するのが、この家の普通だった。
「自由契約だってことはわかってる。でもな、それでもここに居るってことは……多少は覚悟してるんだろ?」
耳元で囁く声に侍女の肩がびくりと跳ねる。
ルークはその様子に満足げな笑みを浮かべ、彼女の背後から細い腰を両手で挟むように撫でる。
着衣の上からではあるが、その触れ方はあまりに馴れ馴れしく、まるで彼女が「与えられた所有物」であるかのようだった。
「ほら、尻をこっちに向けろ。……いい子だ」
侍女の視線は揺れていた。怯えと怒り、羞恥と、そして……わずかな戸惑い。
「こんなのおかしい……わたしは……」
返事を遮るように、ルークの指先が彼女の臀部をゆっくりとなぞった。
撫で、叩き、すぐにその痕跡を舌で慰める。
――ちゅ。
口づけが落とされるたびに、侍女の身体が震える。
ぞわぞわと背中を這い上がるような感覚に、息が漏れる。
「誰のものだ……?」
耳元で囁かれた問いに彼女は首を振った。
「ちが……ちがいます……っ」
だが否定の言葉とは裏腹に、彼女の脚はすでに揺らいでいた。
ルークの指が内腿をすべり、布越しに秘所を撫で上げる。
「ふ……ぁ……っ、や……あぁ……」
濡れていた。
自分でも知らぬ間に、彼の指先を招き入れるほどに。
「ほら見ろ。身体は正直だ」
「……っ!」
涙が溢れた。
自分が自分でなくなっていく気がして、息が詰まった。
「こっちはもう十分なんだ。あとは入れるだけ……だけど、今日は入れてやらない」
そう言って、ルークは自らのポークビッツを取り出し、彼女の花びらへゆっくりと擦り付けた。
肉と肉が触れ合い、濡れた音が何度も重なる。
挿入はない。ただ擦り合わせるだけ。
それだけなのに侍女の身体は反応し、細かく震え、悲鳴のような吐息を漏らした。
「っ、ん、や……やぁっ、だめ……だめぇ……っ」
腰が勝手に揺れていた。
快感に飲まれ、擦れるたびに、もう一つの熱を求めるように膣口が開いてしまう。
「もう、だめ……っ!」
突き上げるような痙攣に、彼女の足元が崩れる。
だがルークも同時に果て、吐息を押し殺しながら侍女の肩に頬を預けた。
「……ふう。やっぱ、お前、逸材だな」
熱は混ざらず交わりもせず。けれどふたりは確かに、一線を越えた。
――そして、翌日。
廊下で行き交った時、侍女見習は無視したかったのに身体が反応してしまった。
ルークは当然のように壁へと追い詰め、指と舌だけで、数度、快感を刻み込んだ。
「俺はお前を囲う気はない。ただ、思い出すたびに味わってやる。それだけだ」
彼の囁きに侍女見習は力なく項垂れ、微かに震えながら口を開いた。
「……こんな家、最低です。みんな……死ねばいい。忘れてもらえるなら、その方が、ずっと幸せ……」
それだけ告げて、彼女は足早に去っていった。
背中に光はなく、ただ暗い影が尾を引いていた。
廊下の先から、足音も静かに侍女のひとりが近づいてくる。
「ルーク様、公爵様が御呼びです」
「ん?」
来客があったらしい。相手は――我が剣の師、ローレライ教団・
応接間に向かった俺は、父上と母上に形式どおりの挨拶をしてから、ヴァン先生に軽く頭を下げる。
「急ですが、ダアトに戻ることになりました」
ヴァン先生の言葉に、父上はうなずいた。
「オラクル騎士団の主席総長ともなれば、多忙のことと察する。わざわざ寄っていただき、恐縮である」
「いえ……」
父上に頭を垂れるヴァン先生。
──宗教団体の私兵が忙しいとか、どんな物騒な話だよ。国家転覆でも企んでんのか? いや、宗教か。
聞けば、教団の指導者が行方不明になったらしく、ヴァン先生はその捜索のために本国へ戻るのだという。今日はその、別れの挨拶とのこと。
「どれ、ルーク。しばらく顔を合わせられぬ分、手合わせしてやろうか」
「公爵家嫡男の俺にタメ口きくな。ぶち殺すぞ(本当ですか、ヴァン先生。有難うございます)」
……あれ?
空気が凍る。
ひきつるヴァン先生。
やっちまった感。俺も、思わず目を逸らした。
「ルーク、ヴァン謡将の御言葉に甘えてはどうだ」
父上の絶妙なフォローで場が動き出す。
「はい、父上」
母上は、いつものように俺の怪我を心配して、何か声をかけてくれた。……ほんと過保護だ。
(頼むから風呂に一緒に入ろうとするのはやめてくれ。母親に欲情したくなるとか、どんな地獄だ)
俺は剣架にかけてあった実剣を取った。
木刀? 笑わせるな。
実戦を想定してるなら、最初から本物を振るうべきだろ。
ヴァン先生も構えを取る。
空気が、張り詰める。水面のような静けさが、突然に破られる――その直前。
俺は地を蹴った。
風を切ったのは俺の剣だった。
足場を蹴り、最短で間合いを詰める。
斜めから一閃、喉を狙った刃を――ヴァン先生は軽く避けた。
避けただけだ。剣は抜かれていない。
でもそれが俺には一番腹立つんだよ。
「……本気でやってんだよ、こっちは」
咆哮のように吐き捨て、俺は二撃目を叩き込む。
膝を落とし、低い姿勢から斬り上げるように。次は脇腹。斬れば内臓。死ぬ。知ったことか。
が、今度は弾かれた。
鋼と鋼の音が庭の静寂を破る。
「焦りすぎだ、ルーク。構えが浮いている」
「そうですか〜」
何が浮いているだ。先生が俺の剣を受けきれないだけだろ。
三撃目。四撃目。五撃目。
刃を重ねる。斬り結ぶたびに、俺の剣から皮膚を切るような殺気が漏れる。
「いいぞ、ルーク。踏み込みが鋭くなった。だが――まだ甘い!」
声と同時に、ヴァン先生の剣が抜かれた。
それはまるで、空気の中に水が混ざったような違和感。視線が奪われる間もなく、彼の刃が俺の剣を弾き飛ばす。
「くっ――!」
飛んだ。俺の剣が。俺の体も。
庭石に背をぶつけ地面を滑った。
口の中に血の味。背筋が痺れる。
視界がにじむ。けど意識はある。
「……ははっ、マジかよ……」
笑いが漏れた。悔しいはずなのに、笑えた。
強いな、さすが俺の先生。やっぱり雑魚とは違う。
誰よりも、どの家臣よりも。あんたが俺の剣の師で、良かったよ。
ヴァン先生は剣を収めたまま、こちらに歩いてくる。
傷を負った俺の前に跪き、手を差し伸べた。
「ルーク。貴族の剣は守るためにある」
「俺の剣は奪うためにあるんだよ」
「……ならば、いつかお前は誰かを殺し、何かを失う」
その言葉が妙に冷たくて――温かかった。伸ばされた手を俺は素直に取った。
でも心の中で一つ、決めた。
次にあんたと剣を交えるとき、俺は――絶対に斬る。
その時だった。
どこかから、柔らかな――けれど芯に圧がある、不思議な歌声が響いてきた。
まるで、風に乗って吹き込む子守唄のように。
それと同時に、まぶたが急激に重くなる。
(……譜歌か!)
本で読んだだけの知識が、脳裏で警鐘を鳴らす。
音による干渉術――戦争で使えば、制圧兵器になり得る力。
実体験は初めてだ。こんなに強烈なのか。
「ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ」
響く呪文。
澄んだ、高く、少女の声――あずきちゃん……? 誰だ、それ。
記憶の底から浮かび上がる謎の名前に一瞬だけ意識を取られたが、それどころじゃなかった。
現れたのは、金髪の――整った顔立ちの少女だった。
白い軍服のような衣装。腰のホルスターに手がかかり、投げナイフが放たれる。
「くっ……やはりお前か、ティア!」
ヴァン先生の声が、珍しく鋭く響いた。
ティア? この子が?
名前より何より、まず視線が吸い寄せられたのは――胸だった。
メロンサイズ。しかも良質なヤツ。
ぴっちりとした制服の上からでも、弾力と重量がはっきり分かるレベル。揺れてるし。ぷるんぷるんだし。
(すっげえ……あれ絶対、片手じゃ収まらん)
思考がどうでもいい方向に逸れる。
でも仕方ない。眠気と好奇心と乳の三重攻撃なんて、防げる男はそういない。
ナイスメロンである。
……にしても、いきなり襲撃って何してんだこの子。
(まぁ、相手はヴァン先生だし、負けるわけないか)
俺は眠気が飛び、壁にもたれて状況を見守る。
まったく緊張感もなく、鼻の穴をほじりながら。
それより問題は――もしこの襲撃が失敗に終わったら、だ。
(公爵家への不法侵入に加え、騎士団の総長への攻撃。
完璧に犯罪だな。……ってことは、捕らえたら戦利品として引き渡し交渉できる?)
そう思ったら、口元が自然と緩んだ。
(うん。父上に頼んで、俺にくれって言ってみよう)
譜歌使い。金髪美少女。メロン級バスト。
何この高スペック。囲って育てて、気が向いたら可愛がるとか最高すぎる。
――そう思った時だった。
少女の視線が明確にこちらを捉えた。
まるで、視線だけで殺意を突きつけてくるような、そんな目。
あ、これバレてる――
(俺、マジで狙われてる?)
ティアと呼ばれた少女は、ヴァン先生に対して容赦ない連撃を仕掛けていた。
投擲と近接の切り替え、その間隙を埋める譜歌――鍛えられた動きだ。
だが俺は、戦闘技術よりももっと単純で愉快なものに目を奪われていた。
――その肉体美だ。
腰のひねり、踏み込みと共に揺れる豊かな胸。張りのある太腿と、構えた瞬間に伸びる背筋。
隠しきれない女の色香が、戦うたびに溢れ出す。
にやり、と笑みが漏れる。
(あれを俺のものにしたら、毎晩どれだけ愉しめるか……)
あんな表情で睨まれながら、俺に抱かれて震える日が来る――そう想像しただけで、下腹に熱が集まってくる。
俺はそのまま、にやりと唇を歪め、彼女をねっとりと視姦した。
まるで鑑賞するように。
いや、もっと卑猥に、隅々まで品定めするように。
視線が肉を這い、唇を舐めるように流れ、太腿の奥まで想像する。
自分がどれだけおかしいかは分かっている。
けれど――それでも構わなかった。
俺はこの家で生まれ、この家の常識で育った。
世間の感覚なんて、鼻くそ以下だ。
――あ。
先生に吹き飛ばされた暗殺者(襲撃者?)は、俺のほうに向かって飛んできた。
「ちょ、おま──」
そのときだった。
「しまった!」
ヴァン先生が珍しく声を荒らげる。え、なに? そんなにヤバイ?
――次の瞬間、視界が光に包まれた。
……で、気がついたら花畑だった。
ガチで焦った。これ、もしかして死んだ?
いや、違う。呼吸できる。空気も匂いもあるし、俺の鼻もほじれる。
指についた何かを振り払ってから、ゆっくりと立ち上がった。
「……はー、なんだよここ」
まるで絵本の中。陽の光が穏やかで、色とりどりの花が一面に咲き乱れている。現実感がない。
でも、異常にリアルで――ああ、なるほど。譜術か。これ空間転移ってやつだ。
目の前を見ると、さっきの金髪の女の子――あのティアって呼ばれてた子が気絶して倒れていた。
近づいてみる。やはり美人だ。というか近くで見ると更にいい。
顔立ちは整っていて、睫毛は長く肌は白くて柔らかそう。
そして何より――服の隙間から覗くその肢体。
意識のない身体って、どうしてこう無防備で艶めかしいんだろうな。
俺は軽く舌打ちして、鼻をすすった。
「ふむ……なるほど。よく見れば、中々、良い身体をしているではないか」
服の襟元は乱れ谷間がのぞいていた。
呼吸にあわせて上下する豊かな胸。それを囲う布地が、なんとも薄くて頼りない。
……触れようと思えば、触れられる。誰にも見られていない。
この場所には俺と彼女しかいない。
(どうする……?)
ふと、そんな考えが頭をよぎる。
でもそれは即座に「理性」とか「常識」とか、「貴族としての矜持」みたいな都合のいい建前で打ち消された。
(いやいや、俺が何しようが別にいいだろ? どうせこの子、俺に手を出してきたんだし)
そう思うと罪悪感はすっと薄らいだ。にやりと笑みがこぼれる。
(さて……どう“教育”してやろうか)
ここは、もう……一発、決めておくか。
誰にも邪魔されない。柔らかな花々の香に包まれ、彼女は静かに寝息を立てている。
服の下、なめらかな太腿から伸びる曲線。
指先でそっとなぞれば、びくりと身体が震えた。
まだ完全には意識が戻っていないらしい。
(ふむ……ぴったりと閉じてる。これは……)
下着の奥、指で探るように撫でると、わずかに熱が滲んでいた。
膜こそ感じられないが、これは……まだ誰にも開かれていない肌の反応だ。
唇を触れさせるだけで、彼女の腰がゆるく動く。
甘い吐息が漏れる。
意識の底で抗いながらも、身体は確かに応えていた。
「……っん、ふ……や、ぁ……あ……」
蕩けるような声が、花の香に混じってこぼれた。
ゆっくりと、丁寧に、愛撫を重ねていく。
彼女の足が無意識に絡まり、熱を求めるようにきゅっと締めてくる。
――これは、もう、止まれない。
ぴたりと重なった身体の奥に、そっと、深く沈んでいく。
ふるりと震えた瞬間、彼女の中がぎゅう、と愛おしげに包み込んできた。
「くぅ……いい締め付け……」
優しく、甘く。まるで溶け合うように、彼女の奥を何度も、何度もゆっくりと愛していく。
軽く子宮を突くたびに、びくびくと快楽の波が彼女の全身を揺らす。
「……っ、だめ……ぁ、ん、そこ……だめ、だめぇ……っ」
甘い抗い。けれど身体は素直だった。
彼女の唇が喘ぎを零しながら震え、両腕が背に回される。
そのまま、熱に包まれながら――俺も、限界に達した。
ぴたりと奥で止まり、彼女の身体ごと抱きしめたまま、深く、静かに果てていく。
「……ふぅ。……いや、初物にしては、なかなかの逸品だったな」
彼女の中は、最後まで温かくて、柔らかくて。
まるで好きだよって、奥の奥で言われてるみたいだった。
ぐったりと横たわる彼女の身体は、花畑の中でひときわ儚く美しかった。
肌には赤みが残り、吐息は浅く、目元には乾ききらない涙の跡。
それを見て、俺は――うん、満足した。
「……ふぅ。やれやれ、良いモノだったな」
言葉にしても誰も答えないが、それがまた心地よい。
逸物を整え、下衣の皺を払いながら立ち上がる。
まだ膝に残る彼女のぬくもりが、名残惜しくまとわりついていた。
けれど、それもすぐに忘れる。
俺は貴族だ。持つ者であり、選ぶ者であり、支配する側だ。
そう――深く愛したところで、囲うつもりはない。
疲れた。戦いの緊張も、譜歌の酔いも、快楽の余韻も混ざり合って、まぶたが自然と重くなる。
ああ、これは……いい眠気だ。
そっと花の間に身体を横たえる。
香と、風と、女の甘い匂いに包まれて、俺は静かに目を閉じた。
風が揺れていた。
肌を撫でる冷たさで、ティアはゆっくりと意識を取り戻す。
どこか遠くで鳥が鳴いている。
花の香りが強すぎて、むしろ不快だった。
「……ぅ……」
身体が重い。脚が震える。
起き上がろうとしても、腹の奥がきゅうっと縮こまり、膝が力を失った。
それより何より腰の奥が――ずきずきと痛んだ。
まるで何かが無理矢理、押し込まれたような――
「っ……え……?」
下着はずれていた。太腿には、何かが乾ききらないまま垂れていた。
ティアは、慌ててスカートを直しながら、深く呼吸した。
頭がまわらない。何があった? どうしてこんな……痛み……
それでも、記憶は曖昧だった。
ヴァンを殺さなければならなかった。
あの人の手で世界が壊される。そう感じたから、あの屋敷に乗り込んで――
「擬似超振動……!」
思い出した。歌を唄った。術式が崩れ、空間が裂けた。
誰かと接触したはず。誰かの顔が。――赤い髪。
でもそれだけ。あとは何も。
ティアは立ち上がりかけて、隣に寝そべる少年の姿に目を止めた。
彼だった。屋敷にいた傲慢そうな、でも何故か無害に見えた青年。ファブレ家の嫡男――ルーク。
眠っている。無防備に。
(まさか、彼が……?)
ありえない。いや、わからない。
でも……でも、どうして……身体が、こんなに……。
ティアの喉がひくりと震えた。
何か、取り返しのつかないことが起きたような気がする。
でもその意味も、現実感も、どこか朧だった。
彼女は膝を抱えるように座り込み、誰に届くこともない問いをつぶやいた。
「……わたし、何をされたの……?」