その日、俺は自宅に珍しい客人を迎えていた。
「ごめんなさい。突然押しかけて」
「いや、それはいいんだけど……」
マリアさんの来訪である。突然の事で驚きはあるが、不思議はない。おそらくだが暁さんと月読さんの事だろう。響やクリスの話だと、二人はある意味素直に貪欲に男の事を知ろうとしているらしい。それを見て二人の姉的立場であり、生真面目な彼女が動かないはずはないと思っていたからだ。
「それで、一体何の用かな?」
「そうね。単刀直入に聞くわ。貴方、切歌と調に何をしてるの?」
躊躇いもなく尋ねてきた。でも、その声にはどこか悲痛なものが混ざっているようにも感じた。多分だけど、俺に否定して欲しいって気持ちがあるんだ。俺が二人に対して自分の過失だったと告げた事や、その後の振る舞いなどを見て、マリアさんはこっちを信じたいと思っている。
「……二人を怒らないでくれるかな?」
「内容次第、と言いたいけれど、いいわ。貴方がそう言うという事は、非があるのは貴方側とするのでしょ?」
「人って基本楽な方へ流れる。つまり楽しい事や簡単な事だ。特に幼い内はこの傾向が強い」
マリアさんの確認へ返す事無く話し出す。それに小さく息を吐いて彼女は頷いてくれた。
「もっと言えば、それまで辛い事や厳しい事を耐えていた子程その反動は大きいと思う」
「……切歌と調ね」
「だから、欲しくなったんだ。今まで味わった中で美味しかったものを。そして、幸か不幸かそれは簡単に手に入り、しかも体にもいいときた」
そこでマリアさんが頭を抱えた。まぁ、そうだよな。もう察しがついただろう。あの二人がここへ来て精子をねだっている事を。
「あの子達……」
「だから責めないで欲しいんだ。俺が立派な大人なら、しっかりした人間なら良かっただけなんだから」
「…………またそうやってあの子達を庇うのね。悪いのは自分だって。本当に貴方って人は……」
俺が話した事を聞いてマリアさんは苦笑いを浮かべる。いや、庇うも何も本当にそうだから。俺が拒めないから問題になるんであって、二人は無邪気にせがんだだけなのだ。でも、こう言ってもマリアさんはそう取ってはくれないのだろう。このずれのようなものは正直直しようがない。性欲まみれの生き方をしてるだけなのに、何故かたまに高評価を受けてしまうのだ。そのまま、マリアさんはしばらく黙り込んでしまった。おそらく二人へどう叱って、どう止めさせるかを考えているはず。と、そこで俺の中に最低な発想が生まれた。マリアさんを自分の女にする、そんなアイディアが。
「マリアさん、もしそっちがある条件を飲んでくれれば、俺はもう二人にスープを飲ませる事はしないってのはどう?」
「……どういう事?」
「言ったままさ。マリアさんが俺の出す条件を受け入れてくれたら、今後暁さんや月読さんに毅然とした態度で断るよ」
出来るだけ悪い笑みを浮かべる。その方が俺の気持ち的にも楽だから。断られればそれでいいし、受けてもらえるならそれはそれでいい。どっちに転んでも俺は得をする。マリアさんの信頼を勝ち取るか、本人を勝ち取るかなのだ。だけど、どうやらそれをマリアさんは演技と取ったようだった。
「そう、そういう事ね。貴方らしいわ。ふふっ、かつての私と同じと、そういう訳か」
どこか懐かしい目をしてマリアさんは小さく微笑むと、一瞬だけ目を閉じて深呼吸。
「いいわ。お願い、聞かせて」
「二人の代わりに俺の相手をして欲しい。実は、二人から今度は気持ちいい事を教えてくれって頼まれてるんだ」
「っ?! そ、そうなの。あの子達、そこまで……」
「うん、だから俺としても丁度良かったんだ。このままじゃ二人へ手を出していただろうから」
「…………つまり、私が貴方とセックスすれば二人へはもう手を出さないのね」
「出さない。マリアさんが条件を飲んでくれるなら、俺は二人へ手を出さないよ」
はっきり明言する。これは本気で言っている。たしかに暁さんと月読さんへスープを直接飲ませるのは止める。……マリアさんが認めない限りは。セックスも同じだ。マリアさんが許さない以上、保護下にいる間は絶対に手を出さない。でも、成人したらいいよね。もしくは、マリアさんが許したら構わないはず。
「あっ、でもマリアさん。一つだけ二人へスープを飲ませていい時を認めて」
「分かってるわ。有り得て欲しくない状況ね?」
その問いかけに頷く。ノイズは現れない可能性が高いけど、それでも絶対じゃない。だからそういう緊急時などはマリアさんも了承してくれるようだ。下手したら絶唱を使わないといけない可能性もあるし。
「そこに関しては私も受け入れるわ。貴方もでしょうけど、私だってあの子達にもしもなんて考えたくないもの」
「……じゃ、これで話し合いは終わりでいいかな?」
「そう……ね。それで? 一体いつそういう」
「今からじゃ、ダメ? それとマリアって呼んでいい?」
マリアの問いかけを遮り告げる。すると、マリアはその顔を真っ赤にしていく。正直カワイイ。どこかで予想はしてただろうが、まさか本当に言ってくるとは思ってなかったのだろう。悪いが、マリアに関しては時間をかけてはいけないし、かけられる余裕がないので速攻させてもらう。表向き世界的アーティストで救星主なのだから。だから最初から全力だ。
「その、俺の部屋でエッチした女はまだいないんだ。だから君を始めての相手にしたい」
「…………本当に女の弱いところを知ってるのね。それと呼び捨てでいいわ。そう、まだ誰もここでしてないの」
「ああ、奏さえもな。俺の変なこだわりみたいなもんで、そういう事をする相手には何かしらの初めてをあげたいんだ」
奏は言うまでもなく童貞。翼はソーププレイ。クリスは素股で響はアナル。だからマリアには行為ではなく状況とした。ま、嫌がられたらそこまでだけども。マリアはそんな俺のこだわりを聞いて呆気に取られた後、小さく笑った。その苦笑は可愛らしく見え、俺が思わず見惚れてしまったぐらい素敵だった。
「貴方って乙女座? 中々ロマンティストなのね」
「あー、一応の誕生日は違うけど、本当はどうなんだろう? その、俺って保護された後からしか記憶がないから」
「……ごめんなさい。そうね、貴方は記憶喪失だったわ」
「いいよ。俺は気にしてないから。それで、どうかな? 嫌ならまた別の機会を待つよ」
焦ってはいけない。急ぎたいけど焦りは違う。きっとマリアは俺の申し出を受けてくれるはずだ。何せ、暁さんと月読さんの事があるし、何より今も少し鼻を動かしている。そう、俺の勃起チンポに反応しているんだ。それでも、まずは俺の本音を伝えたい。
「それでも平気なの?」
「正直辛いけど約束は守るよ。マリアは一度言った事を簡単に破る人じゃないって信じてるから。それに、もし裏切られてもいいさ。君に、マリアにならね」
「…………下衆かと思えばそうじゃない。いえ、きっと下衆になり切れないのね。でも完全な善人にも為れない。そう考えると私と貴方は似ているわ。誰かのために何かを犠牲にと言われたら、真っ先に自分を選ぶのでしょうね」
「そんな事ないさ。だって、半分騙す形であの二人へフェラさせたんだ」
その言葉にマリアは軽く顔を赤め、一度だけ咳払い。
「その話は止めて頂戴。事情を聞いているから分かってるわ。貴方なりに奏達を助けようとした結果でもあるんでしょ? ならもう責めないから」
「でも、それを理由に無垢な少女二人を騙した事は事実だよ。な? 似てないよ。俺とマリアは」
「……もうそういう事でいいわ」
どこか呆れたような顔でそう告げると、マリアはこちらへ近寄ってくる。ふわっといい匂いがした。これがマリアの匂いなのだろうか。やはりみんなの匂いはどこか甘い。
「一つだけ聞かせてくれる?」
「何?」
「いつから私の事狙ってたの?」
「正直言うと、そういう対象として見始めたのはフロンティア事変が終わった後。それまではとてもじゃないけどそんな風に見る余裕なんてなかったから」
「そう。で、全て落ち着いた後から私は貴方の中で抱きたい相手に変わったの?」
「かな。でも、明確にそう意識したのは引っ越し祝いの時。全部白状するとさ、あの時の光景を日常にしたいってそう思ったんだ」
俺のバカげた話を聞いて、マリアは目を瞬いた。それでも俺が本気だと気付いたんだろう。大きくため息を吐いて額へ人差し指を押し付けてきた。
「いい? 貴方の気持ちは分かるし嬉しいわ。だからって、私達全員を本当に娶るつもりなの? それで貴方だけじゃなく奏達がどう見られるか分かっ」
「てるよ。だから無理強いはしない。もう奏とクリスには許しを得た。翼と響はまだだけど、説得してみせるさ。それにマリア、俺がただエロイ事だけしたいならとっくにあの二人を抱いてるって、そこは分かってくれてるんだろ?」
俺の問いかけにマリアは小さく頷いた。そうなんだよな。本気でエロだけ考えればとっくにあの二人を抱いてる。その機会だってない訳じゃない。だけど、それよりもマリアを抱きたい気持ちが強かったんだ。そして、今の会話で確信出来た。もしあの二人へ先に手を出してたら、マリアは何があっても俺を許さなかっただろうと。いつかのクリスと同じだ。抱けはしても深い仲にはなれなかったはず。でも、今はまだその可能性が残されている。
「ええ、貴方は最後の最後は相手の意思へ決定を委ねている。それがある種の自己保身であり、また優しさからくるものである事は分かってるわ。貴方の能力である生命のスープを利用すれば、装者である私達を堕落させる事も簡単でしょうし」
「そこは正直まだ疑問なんだけどなぁ」
「ふふっ、でも試してないのでしょう? そこが奏達が貴方を嫌いになれない理由の一つね。セックスは無理矢理ではなく合意の上で。そこに至るまではやや強引かもしれないけれど」
「……いや、かなりスープ頼りだよ。ああ、そうだな。だから俺はせめて最後だけはその力なしで辿り着きたいのか」
「成程。一番の難関だけは自力で、という事ね。なら、私はどうするのかしら?」
「えっと、キスしたいな。繋がるのは無理でもデートとかもしたい」
そのはっきりとした申し出にマリアが面食らったらしい。目を見開いてこちらを見つめてきた。その綺麗な瞳をしっかり見つめ返し、俺はマリアの反応を待つ。やがてマリアがゆっくり目を閉じる。そこから待つ事数秒、何の反応も示さないのでまさかと思い、そっと口付けた。
「……どう?」
「思ったよりも悪くないわ。ね、もしかしてこうやって奏達も始めた?」
「あー、どうだったかな? 奏と響はたしかにキスからだけど」
「あら、じゃあガングニールはキス始まりなのね」
少し楽しげなマリアの言葉に俺も小さく笑う。そんな共通点が生まれるとは中々面白いな。と、いかんいかん。
「あの、マリア? 一応そっちは脅されてるんだけど」
「シキ、貴方も一応って言ってるわよ?」
ああ、もうダメだ。結局俺は彼女のように悪を演じきれない。でも、きっとそれを俺が望んでるんだろう。下衆になろうとしてなり切れないから奏達が好きでいてくれる。もしこれが本当に下衆になったら……その答えは言うまでもないだろう。生命のスープに依存性はない。下衆に媚びるような女性達ではない以上、捨てられるのは俺の方である。
「……マリアは凄いな。俺なんかたったこれだけでも貫けない」
「いいえ、きっと貴方も貫けるわ。ただ、今回のはそこまでの信念を持ちえなかっただけよ」
「ありがとう、マリア」
「んっ……」
もう一度優しいキス。一旦口を離してもう一度。今度は軽く舌で唇をなぞる。
「……入れたい?」
「というより絡めたい」
「っ……もう、奏達の気持ちが何となく分かってきたわ。貴方って、母性本能くすぐるの上手いのよ」
「そうなの?」
「ええ。気を許した途端甘えてくるんですもの。こんなに分かり易い違いはないわ」
「そっか。で、どう? ダメかな?」
「……どう、やればいいの?」
やや恥ずかしそうで照れた顔のマリアに俺は思わず抱き締めた。こんなに愛おしい彼女は初めて見た。だから痛くしないように、でも強く抱きしめる。俺の気持ちが伝わるようにと。すると最初は驚いていたマリアもやがて抱き返してくれた。しばらくそうしていたけど、少し離れて見つめ合う。
「マリア、言う通りにしてくれる?」
「ええ、いいわ。どうすればいい?」
「まず、舌を出して」
「……えー」
正直フル勃起な光景である。でも、まだ性欲全開にしてはいけない。マリアを怖がらせたり、セックスやチンポへの恐怖心を植え付けたくないからだ。なので必死に性欲を愛情で抑え込み、俺はマリアの舌へ自分の舌を絡ませる。
「んっ……」
出来るだけ優しく、響が好む方向でディープキス。でも、やり過ぎるのもどうかと思ってある程度で止める。
「どう、かな?」
「……頭がぼうっとするわ。思っていたより優しいのね、ディープキスって」
「お望みなら激しいやつもあるけど、してもいいかな?」
「あるのね。そう……お願い出来る?」
「お任せあれ。舌出して」
「ふぇー」
蕩けた顔で舌を出すマリア。あー、これが初体験だったら確実押し倒してる。それぐらいエロイ。先程よりも強くなった性欲を懸命に愛情で押し留め、俺は再び舌を絡める。今度は翼の好きなディープ。俺はハードと呼んでいるけど。さっきとは打って変わってやや乱暴な感じもするキスだが、心なしかマリアの反応が良い。
「どうかな? 俺はこっちをハードって呼んでるけど」
「……凄い。今のキス、好きよ。その前のも好きだけど、導入だからかしら優しすぎる気がするの。ねぇ、もう一度ハードをお願い」
「っ……分かった」
「んっ!」
今度は舌を出させずキスしてからねじ込むやり方。それを嫌がらず嬉しそうに受け入れてくれるマリア。呼吸さえ困難になりそうなキスなのに、聞こえてくる吐息や返ってくる反応はむしろ喜びを感じさせてくる。最後には透明な橋を互いの間へ作り、俺とマリアは熱っぽい眼差しを向け合った。
「マリア……」
「……何?」
「愛してる」
「っ……バカ」
返ってきた罵声は、とても愛情のこもったものだった。何せそのままキスしてくれたのだから。そのまま俺達はキスを繰り返した。深いもの浅いもの問わず、ずっとキスをしていた。どれぐらいそうしていたのだろうか。気が付けばマリアの息は荒く、表情はトロンとしたものへと変わっていた。それを見て俺は思い出す事があった。俺の唾液には発情させる効果がある事を。つまり媚薬である。
「シキ……私、おかしいの。さっきまでは抱かれても仕方ないって、そう思っていたのに……」
「今は抱かれたいって思ってる?」
「……ええ」
「やっぱり。ごめん、マリア。これを話しておかなきゃいけなかった」
そこで唾液に関する話をした。正直これで嫌われてもいいと思っていた。意図せずであろうと騙した事に変わりはないのだ。俺の話を聞いている内にマリアは息を整え表情も凛々しさを取り戻していく。それが余計俺の不安を煽る。それでも最後まで話し終えた。
「そう……つまり今の私の気持ちは貴方の唾液によるものと?」
「多分……」
そう自信なく返した途端、マリアが俯いた。きっと怒りを感じているのだろう。その証拠のように体が小刻みに震え始めている。怒鳴られてもいいように身構えておこう。そう思った瞬間、頬に鋭い痛みが走った。引っ叩かれたと、そう気付いたのはそれから少ししてからだった。視線を動かせばそこに何とも言えない表情をしたマリアがいた。
「ふざけないで。確かに貴方の唾液にそういう効果はあるんでしょう。それを否定するつもりはないわ。でも、これだけは言っておく。女が、この私が、マリア・カデンツァヴナ・イヴが! たかが媚薬程度で気にもしない男に抱かれたいと思うかっ!」
その怒声は俺の心を貫いた。そして、俺がしでかした失態をこの上なく突きつけてくれた。そう、そうだ。彼女は世界のために悪となろうとした女性。そんな人が、俺の唾液の効果だけであんな事を言うはずない。
「ごめん、マリア。俺がバカだったよ。そうだ、君は芯の強い女性だもんな。いくら媚薬なんかで理性が弱くなったって、それで心まで動くはずもない」
「……分かればいい」
そう短く言い放つと、マリアはその場から立ち上がってキッチンへと向かった。きっと口をゆすぐんだ。俺のような男とキスをしたのを忘れるためにと、そう思った。これで完全に終わり。でも当然だ。俺はマリアの女性としての誇りを傷付けたのだから。そう思ってソファに座ったまま俯く。と、突然痛む頬へ冷たい感触が。
「っ!?」
「ごめんなさい。驚かせてしまったかしら」
「ま、マリア?!」
そこには濡れたハンカチを差し出すマリアがいた。
「動かないの。ほら、冷やすから」
「あ、ああ……」
「もしかして、私が帰ると思った?」
「……うん」
俺の声で本心だと分かったのだろう。マリアは苦笑交じりにため息を吐いて俺の目を見つめてきた。
「本当に貴方って人は。いい? 私が怒る前に言った言葉をよく思い出しなさい。そして、さっきの言葉も」
「……まだ、抱かれてもいいって思ってくれるのか?」
「違うわよ。でも、そんな貴方だから嫌いになれないのね」
今度は嬉しそうな声と悔しそうな顔を見せる。そして、その表情のまま俺の額へ指を突き付けた。
―――抱かれてもいいじゃなく抱かれたいの。
―――っ!?
正直、一瞬でも奏を忘れそうなぐらいの衝撃だった。奏の告げた禁止事項に抵触しそうな程、マリアのそれは強烈だった。声には拗ねたような可愛さが、表情は照れて朱も混じっている。それを見せてくれているのがあのマリアなのだ。だから全力で踏み止まる。奏との約束を思い出して。絶対に彼女だけは裏切らない。俺の一番は奏。並ぶ事はあっても、それを超える女性はいないし出来ないのだ。
「どうしたの?」
「……こういう隠し事は苦手だから正直に言う。俺、さっきのマリアに心奪われそうだった。奏との約束を忘れそうだった」
「……そう。なら、奏から奪ってしまおうかしら?」
「なっ!?」
「冗談よ。でも、嬉しいわ。私、そこまで貴方の心へ入り込めたのね」
そう言って微笑むマリアはとても綺麗だった。奏の微笑みもそうだけど、装者の女性達の微笑みは本当に美しい。それにしても不味い。こっちが落とすではなく落とされかかっている。主導権を渡しているからだと思うけど、それでもこの進攻速度は凄い。何とかこちらが主導権を取り戻さないと。
「えっと、マリア?」
「何?」
「シャワー、浴びておいで。ベッドで待ってる」
「……そうね。そうさせてもらうわ」
軽く苦笑し、マリアは何故かこちらへ顔を近付けてくる。そしてそのままキスされた。俺が立ち直る前にマリアは小さく手を振ってシャワーへと向かった。何だろう。この短時間の内にマリアが凄まじい速度で大人の女へ進化してる気がする。今までのが演技って事はないはずだ。実際キスはたどたどしかったし。なら、どうして急に……?
「名前の通りに母性が強いのかな? だから甘えるようになった俺を包んでくれるから、今みたいに主導権を握られっぱなしなのかも」
何せマリアって聖母と同じ名前だもんなぁ。そんなくだらない事を考え、寝室へ移動しようと思った時、主導権の取り戻し方が浮かんだ。それはある意味賭けでもあったが、先程マリアが教えてくれた言葉がその失敗はないと教えてくれていた。そう、マリアは俺に抱かれたいのだ。ならば、余程の事でなければ受け止めてくれるに違いない。こうして俺は寝室ではなくバスルームへと向かう。脱衣所には当然マリアの服がある。そこから下着を手に取り、その変色具合を確かめた。ぐっしょり濡れてる。
「……行くか」
出来るだけ素早く服を脱ぎ去り、マリアの服の上へ置いていく。そして全裸となって一度深呼吸。よし、突入!
「えっ……?」
突然聞こえたドアを開ける音に反応し振り向くマリア。その視線がこちらを確認した瞬間、俺はその唇を奪った。
「んんっ!?」
それと並行して胸を強めに揉む。そのクリス以上の豊かさに驚きつつ、奏や翼好みの揉み方でマリアの性感を高めようとする。そう、彼女も同じ傾向だと踏んだのだ。つまり、Mっ気が強い。その証拠にマリアは嫌がる素振りさえ見せず、俺にされるがままになっていた。よく見れば乳首が完全な突起物と化している。なので強めに摘んでやった。
「ふんんっ!?」
くぐもった驚きがバスルームに響く。だが、嫌がる反応は一つもない。更に気を良くして片手を胸ではなくマンコへと移動させた。そしてその手がマンコに触れる前で口を離す。
「あ、貴方ってああんっ!」
「凄いな。もう濡れ濡れじゃないか」
軽くマンコの周囲をなぞるように手を動かす。整えられているであろう茂みも触りつつ、愛液を出し続けるマンコを刺激する。
「マリア、これって今なってるの? それとももっと前から?」
「い、言う訳ないでしょ!」
「じゃ、こうするね?」
「ああああああっ!!」
マリアの乳首を強く摘んで扱きあげる。同時にクリトリスも強く摘んだ。響やクリスなら嫌がる事請け合いの行為だが、マリアの反応はというと……。
「あっ……ああっ……」
「気持ち良かった?」
どこか恍惚の表情を浮かべていた。間違いなくマリアはMだ。しかも、下手をするとドがつくやつ。もしかして、長い間頼られる存在として振舞ってきたから誰かに寄り掛かってみたかったのかも。その欲求が今、こうやって別の形で噴出しているんじゃないだろうか。依存するタイプだと分かっているからそうならないように強がっていた。それを俺が壊し始めたんだろう。試しにちょっと言ってみるか。
「マリア、次はどうして欲しい? 言ってくれればしてあげるよ?」
「な、何を……」
「エッチな事。俺だけには弱さを見せてくれていいから。強くないマリアでも強いマリアでも関係ない。俺は、君が、マリア・カデンツァヴナ・イヴが抱きたいんだ」
「っ!」
耳元でそうしっかりはっきり言い切ると、マリアの顔が初めて見る程緩んだ。それが嬉しくて、でもそのままだと崩れてしまいそうなので抱き止める。するとマリアが強く抱きしめてきた。
「ズルいわよ。このタイミングでそんな事を言うなんて。本当に女の弱い事を知っているのね」
「そんな事ないさ。俺は、俺が言いたい事やしたい事を素直に行ってるだけ」
「……それがそうだって言ってるの。シキ、私も断言してあげる。貴方が奏達と繋がれたのはスープのおかげじゃない」
そう言ってマリアは俺の耳元へ口を寄せる。
「貴方自身の魅力よ」
「……ありがとう、マリア」
優しいキスをする。舌を入れないものを。と、そこで気付いた。マリアが先程からチンポをお腹で擦っている事に。それが何を意味するかを察し、俺はマリアへあるお願いをした。それに彼女は嫌な顔一つせず頷いてくれた。
「んっ……熱いわね」
クリスには最初断られたパイズリである。しかも、今回は俺が仁王立ちしてのパイズリなので征服感が凄い。おそらくマリアもそれに気付いてマンコを濡らしているだろう。それにしてもマリアのパイズリはクリス以上だ。大きさもさることながら、特筆すべきはその弾力にある。クリスがふわふわなら、マリアはもちもちなのだ。包まれる感じはクリスだが、気持ち良さならマリアだろう。これは幼い頃から訓練を受けてきた彼女だからこその弾力だと思う。
「どう? 気持ちいいかしら?」
「凄くいい。このまま出したいぐらいだ」
「そ、そんなに?」
やや信じられないような声のマリアだが、挟んでいるチンポの感じで嘘ではない事を理解しているはずだ。その証拠に扱きながら、その目が出てくるであろうスープを心待ちにしているようだった。その表情や光景が俺の射精感を煽る。
「マリア……出すよ。飲んでくれ……」
「分かったわ。はむっ」
「うっ……出る……っ!」
俺の頼みに躊躇いさえなくチンポを咥えるマリアが最後のとどめだった。温かい口内の感触を楽しむ間もなく、チンポはあったかいスープをマリアへ御馳走する。その初めて飲む味にマリアは一度だけ目を見開き、次第にうっとりとした顔へ変わっていく。最後は尿道に残っている分まで優しく吸い出して、マリアは初めての精飲を終えた。
「マリア、ありがとう。嬉しいよ」
「いえ、それはこちらの台詞よ。こんなにも原液が美味しいなんて……」
「しかも、直飲みだからね。これを知ると、コップでも物足りなくなるんだ」
「……そうでしょうね。そうか、だからあの子達も余計に……」
「ところでマリア、気付かない?」
「えっ? あっ、まだこんなに……」
勃起チンポを前に心からの笑顔を浮かべるマリアだが、その笑みは既に聖母のようなそれではない。言うなれば淫魔だ。男の精を搾りつくし、飲み干さんとするサキュバス。今、マリアはそんな存在へ堕ちてしまったのだ。ならばと、俺は前々から試してみたい事をマリアへ提案してみた。嫌がるかと思ったそれは、こんな問いかけに頷く事で許可が出た。その問いかけとは……。
―――それ、誰にもした事ないでしょ?
で、現在マリアは頭を両手でしっかり掴まれチンポを扱くオナホのような扱いを受けている。俺が俺の事だけしか考えず、ただ快楽を貪るような行為。そう、イラマチオと呼ばれるものだ。マリアにとって嫌だろうと思っていたのだが、やはりMっ気が強いのかどこか喜んでいるようにも見える。
「ああっ! 気持ちいいっ! マリアのノドマンコ最高だ!」
「おぐっ! ぐぷっ!」
聞こえる声にならない声。普段ならば絶対しないし、更に言えば歌手であるマリアにとっては商売道具でもある場所。そこを自由気ままに蹂躙出来る快感は凄まじいものがある。自分の中の雄が雄叫びを上げているような感覚を覚えながら、俺はその叫びに導かれるままにマリアの喉奥へ射精した。
「あー……気持ちいい……」
射精を終えて両手を放す。咳き込むマリアを見つめ、俺はやっと我に返った。
「ご、ごめんマリア! 調子に乗り過ぎた!」
「ごほっ……いいの。だって、その……ね?」
そう答えてマリアがとった行動はマンコをこちらへ見せつけるというものだった。そこは先程よりも愛液を多量に垂れ流していて、イラマチオをマリアがどう感じていたかを雄弁に語ってくれた。無論、そんなものを見せられて俺が猛らぬはずもなく、こうして俺達はバスルームを後にし、体を軽く拭いただけで寝室へと向かう。
「んぅ! んんっ! んふぅ……」
ベッドへ倒れ込みながらキスをする。これが初めてと思えない程発情したマリアに俺も影響されていたのかもしれない。激しく舌を絡め合い、互いの体をまさぐり合い、セックスというより交尾の雰囲気だった。
「……マリア、いきなり入れてもいいか?」
「ええ、むしろ早く入れて。もう待ちきれないの」
「じゃ、股を開いてくれ。一気に奥までいれてやる」
「分かったわ」
若干の恥じらいは感じさせるものの、それでもしっかりと足を開いてマンコを曝け出すマリア。その姿に俺は自分の中でマリアをこう位置付けた。奏+クリス÷2と。そして、だからこそ分かったのだ。俺が母性を強く感じる二人の中間なのだ。いいとこ取りに近いものもある。それだから俺はあそこまで堕ちかけたのだ。
「一応聞く。避妊しておく?」
「ならこう返すわ。今までそれを望んだ相手は?」
「……入れるぞ」
期待に胸膨らませた顔で告げられた問いかけへの答えとして、俺はチンポをマリアのマンコへと挿入させる。それも一気に最奥へ。処女だからとマリアを気遣う必要はないと判断したのだ。奏も翼も破瓜の痛みは皆無に近かったし、クリスでさえそうだった。しかも、マリアはしっかり濡れている。どこに躊躇う必要があろうか。
「あはぁっ! す、凄いぃぃぃぃっ!」
「ぐっ!」
挿入した瞬間、チンポを食い尽くさんとばかりの締め付けが襲ってきた。正直言って二度出してなければ即射精していた。四人もの処女を奪ってきたが、こんな事は初めてだ。動けば出しそうと感じるぐらいの締め付け。しかも、それが緩んでくると今度はチンポへうねうねと絡みつき、きつさとは別の方向で射精させようとしてくる。これはもしかして名器って呼ばれるものか?
「シキ? どうしたの?」
「えっ?」
「だって、動いてくれないじゃない。私のそこは良くない?」
「っ……そんな事ない。むしろ逆だよ。マリアのマンコが良すぎてすぐ果てそうなんだ」
「そ、そうなのね。……でも、動いて欲しいわ。さっきから下腹部が熱くて仕方ないのよ」
こんな事を言われて動かない奴は男じゃない。もういい。いくらでも出してやる。マリアがここまで誘ってくれているのだ。なので最初から全力のピストン。クリスや響なら嫌がるかもしれないが、マリアは完全にM。よって遠慮はいらない。奏や翼のように獣じみたセックスをしてやる!
「ああっ! いいっ! いいわっ! 熱のある場所に届いてる!」
「どこだよ! ちゃんと言ってくれ!」
「い、言えないわ! 恥ずかしいものっ!」
「だからこそ言ってくれよ! ……俺、マリアの口から恥ずかしい言葉聞きたいんだ」
「っ! ど、どうしても?」
「ああ、どうしても」
いつかの翼の時と同じく一旦動きを止めてのお願い。どうやらこれはマリアのようなタイプにはかなり効くようで、翼と違い抵抗するのも僅かでため息を吐いて呟いた。
「いいわ。貴方の前でなら私は何も偽る事も装う事もないもの」
「……動いて欲しいかい、マリア」
「ええ、お願い。私の子宮へ貴方の精子を注いで?」
さらりと言ったマリアではあるが、その顔にはしっかり照れや恥じらいが残っている。それが堪らなく興奮する。翼のような言い方もいいが、マリアのように照れなどを感じさせない言い方でもそれが顔に残るのはとてもいい。再開されるピストンによる快楽にマリアは全てを委ねだす。さっきの呟きで吹っ切れたように淫語を言い始めてくれたのだ。
「どう? ここをグリグリされるのは」
「好き……好きよ……」
「何で何をグリグリされるのが?」
「オチンポでオマンコをグリグリされるのぉ!」
奥までチンポを突き入れ、そこで腰を円運動させる。更に最奥を刺激するとマリアがうっとりした顔になった。そこで先程の会話となったのだ。マリアは奏と同じで淫語をある程度知っているらしく、こちらが教える必要はなかった。でも、そうなると今度はどこまで知ってるのか聞きたくなるのが人情。よって、ここからは動く事は止めて調べる時間とする。
「よく言えました。じゃ、マリア? 今度は別の事を教えてくれる?」
「別の……?」
「今日マリアが二度も口にもらったもの。ただし、精子や精液以外でお答えください」
「ええっ!?」
「答えてくれない場合、今日はこのままキスだけで終わります」
「っ……えっとね? 一つシキに言っておきたいのだけど」
「何?」
「お、教えてくれないかしら? 私、俗にいうアダルト系のものは触れた事がないの。今までの表現も奏が以前言っていたのを真似ただけなのよ」
予想外の答えだった。でも、考えてみれば当然かもしれない。暁さんや月読さんも性知識は小学生レベルだった。となると、マリアやセレナさんもそこまで大差はない事もある。さすがに子供のでき方は知っているだろうが、淫語のようなものは知りようがないか。
「分かった。なら、ドイツ語で種子。分かる?」
「……それでいいの?」
「いいよ。さ、どうぞ?」
「ザーメン」
「ん。では、その表現でおねだりして?」
「あ、貴方のザーメンで私の子宮を一杯にして?」
「……最高だよマリア」
「あっ……中で跳ねた……」
世界的アーティストとセックスってだけでも凄いのに、更に淫語を言わせておねだりとか数え役満もいいとこだ。いや、これはトリプル役満ぐらいはある。それぐらいテンションやら何やらがぐん上がりだ。ピストンと同時にハードキスをしてマリアを虐める。更に乳首を両方抓ってやるとマンコの締りがすごい事になった。そのあまりの凄さに堪らず射精す。……まさかほんの数分で射精す事になろうとは。
「い、今の凄かったわ……ねぇ、もう一度して?」
「いいけど、マリアって本当にドMだな」
「……そうかも。ううん、きっと貴方といるからそうなるのかしら。貴方が甘えて来た時は私が包んで、私が甘えた時は貴方が受け止めてくれるから」
「弱みを見せても平気な相手って事?」
「そうね。うん、そうだわ。きっと私が本当に全てを曝け出せる場所は、貴方の胸の中なのよ」
「光栄だよ。そして誓う。絶対マリアも幸せにしてみせるって」
「……調子がいいんだから。でも、そんな世迷い事を信じてしまいそうになるんだから、本当に貴方は不思議な人ね」
そう言いつつマリアは笑みを浮かべてキスしてきた。多分、今のマリアなら俺が暁さん達へ手を出しても怒るだけで離れはしないだろう。でも、それは約束が違うので出来ない。致し方ないが、あの二人はお許しをもらうか保護下から離れるのを待つしかないな。とりあえず一旦チンポを抜いてマリアの口元へ。すると俺の意図を酌んでお掃除フェラをしてくれる。心なしかその顔がだらしなくなってきたので、もう一度イラマチオ。だけど今度は喉奥がまるで締まるような感じだった。マリアが二度目のイラマチオに順応してきたのだ。
「ああっ! マリア、出すからなっ! ちゃんと飲め!」
普段なら言えないような口調が出る。それでもマリアは嫌がる事無く精子を飲み干していた。最後の一滴までも出し切り、俺はマリアの頭から手を放した。
「ゴホッ……容赦ないわね」
「嫌か?」
「いえ、何故か嬉しいの。だって、貴方は他の誰にもこんな乱暴はしてないと思うから」
「……本気で奏から寝取るつもりかよ」
「さあ、どうかしら? 何? 寝取って欲しいの?」
「んな訳あるか。逆に俺がマリアをものにするんだ」
そう返すとマリアは心底楽しそうな笑みを見せる。それを見て俺はマリアが何を望んでいるかを段々分かってきた。
「マリア、俺は絶対これだけは貫くぞ。何があっても必ずだ」
「……ええ、今の言葉には信念が見えるわ。そして、きっと折れない事も分かる。安心して。もう貴方は三本の槍を味方につけているのだから」
「それに一振りの剣と弓に矢もな」
「そうね。短剣や対の刃に呪いを払う鏡までも手中にするのでしょ?」
「……出来れば、ね。でも、約束は守るから。俺はあの二人には手を出さない。ただ、二人が保護下じゃなくなったら」
「成程ね。つまりあの子達が自分自身で責任を取れるようになったら」
マリアの言葉に頷く。それに暁さんと月読さんはともかく、セレナさんや小日向さんは正直分からない。というか、マリアもその辺りは分かっているはずだ。なのにこう言うって事は、そういう事なんだろうか。
「なぁマリア、セレナさんも手を出していいの?」
「あら、姉妹を離れ離れにするつもり?」
「いや、そういう訳じゃないけど」
「どうせ貴方の事だからセレナの意思を確認するんでしょう。なら、別に構わないわ。無理矢理なんて出来そうにないのも今日で分かったし」
そう言ってマリアは口元を指で拭う。そこに付いた精子を舌で妖艶に舐め取ってからこちらへ視線を向けた。
「それに、この美味しさを一番最初に味わっているのはあの子だもの。美味しいものはみんなで分かち合うべきだと思わない?」
「……何と言うか、吹っ切れると凄いんだなマリアって」
「かしら。きっと人はみんなこうよ? 腹を括ると強くなれるの」
「俺もそうかな?」
「きっとそうよ」
くすっと笑い、マリアは四つん這いになってこちらへお尻を振った。
「さっ、もっとしましょう。またしばらく忙しくなるの」
「……連絡しなくていい?」
「実はシャワーの前にしてたって言ったら?」
「歩ける程度には加減する」
「むしろ出来ないぐらい愛して」
その言葉で俺の中の雄が唸りを上げた。本気で記憶が飛んだのはこの時が初めてだった。気が付いたら、俺はマリアと共にベッドで朝を迎えていた……。