「そろそろかな?」
手元の時計へ目をやれば、待ち合わせ十分前になろうと言うところ。待ち合わせ場所は響と約束した時と同じ時計前。行き交う人々を眺め、待ち人を探す。と、見つけた。こちらへ近付いてくるハンドバッグを下げた可愛い女性。どうやら向こうも気付いたようで、可愛く手を振ってくれた。
「シキさ~ん、お待たせしました~」
セレナの声に周囲の男が顔を動かす。そしてその視線を追って俺を見るなり、なんでこいつが? という顔をした。だろうよ。中には驚いている奴もいる。もしかして響とのデートの出来事辺りを見てたのだろうか。まぁいいや。今はセレナだ。
「ごめんなさい。待たせちゃいました?」
「気にしないで。こうやって待つのが好きなんだ」
俺がやや気障っぽく告げるとセレナは一瞬呆気に取られ、すぐに何かに気付いて苦笑した。
「……今日もそういうシキさんなんですか?」
「嫌?」
「いえ、嫌いじゃないです。ただ……」
「ただ?」
「どんなシキさんでも私は好きですよ。初めてお化粧品をくれた人ですし、あんな大人の約束をしてくれましたから」
少しだけ頬を赤めてセレナは笑う。おそらく口紅を贈った時の事を言っているのだろう。それもあっての今日のデートだ。残念ながら夜には先約があるため、今日は夕方までしかセレナといられないが構わないだろう。
「そう。じゃあ、少し早いけど行こうか?」
「はい」
自然な流れで手を繋ぐセレナだけど、今日はそれじゃ終わらせないよ。
「セレナ、出来れば今日は違う繋ぎ方をしたいんだ」
「違う繋ぎ方?」
「一旦手を放してもらっていい?」
俺の言葉に素直に従ってくれるセレナ。本当にF.I.S組は基本的に従順だよなぁ。そんな事を思いながら、俺はセレナの綺麗な手をそっと手に取り指を絡めていく。それでセレナも理解したようで、少しだけ恥ずかしそうにこちらを見てきた。
「あ、あの……これって」
「セレナとこうなりたい。せめて今日だけでも。ダメかな?」
「……今日、だけですか?」
「セレナさえ良ければいつまでも」
気障っぽく言い切るとセレナが照れながらも無言で指へ力をこめてくれた。どうやらセレナは王子様系や俺様系が好きそうだ。正直俺のキャラじゃないけど、セレナのためなら頑張りましょう。そう思って言動へ気を配る事にする。最初に向かうはセレナの希望でプリクラを撮りに行く事になっていた。どうもクリスからデートの内容を聞いた事があるらしい。それで自分も撮ってみたいと言ってくれたのでまずはそこへ行く事に。
「そうだ。セレナ、遅くなったけどさ」
「何ですか?」
「服、似合ってるよ。そのルージュがよく映える」
「そ、そうですか? 実はこれ、姉さんに選んでもらったんです」
「マリアに?」
「はい。姉さんにだけは教えたんです。今日シキさんとデートするって」
驚きの告白だった。という事は、セレナは知っているのだろうか。俺とマリアの関係を。……いや、どっちでもいい。浮気じゃなく全員に本気という世迷い事を貫くだけだ。これだけは絶対曲げも折れもしないぞ。
「そっか。マリアは何だって?」
「楽しんできなさいって。それと、シキさんは慣れてるだろうから任せればいいって」
「……慣れてる、ね」
これはマリアは拗ねてると見た。ま、そりゃそうか。自分だけデートなどせずいきなりセックスだったもんな。立場があるからと我慢しようにも、奏とお泊りした事もどうせ気付いているだろうし翼からも似た事をおねだりされてるのも知ってるはずだ。近い内にマリアとも、泊まりかせめて日帰りデートぐらいしないといけないな。
「シキさん、最近姉さんと何かありました? 妙にシキさんとのデートを気にしてたんです」
「多分羨ましいんじゃないかな? ほら、マリアは外出とかしたくても立場や何やで動き辛いだろうし」
「あー……そっか。姉さんもそういうものに憧れとかあるんだ」
これでいいだろう。おそらく嘘は言ってない。本当に近い内に無理矢理予定合わせてデートしよう。絶対にしよう。マリアの拗ね顔も見たいけど、一番はやっぱり喜んでくれている顔だし。
「とにかく、今日は夕方まで他の人の事考えないでいよう。俺はセレナだけ、セレナは俺だけの事しか考えない。いいか?」
「えっと……少しでも?」
普段の俺ならそれぐらいはと言うところだけど、ここは少しだけ強気に。
「ダメ。俺だけを見て、俺の事だけ考えてくれ、セレナ」
「っ…………はい」
顔を近付けはっきり言い切ると、セレナは真っ赤な顔をして俯きながら小さな声で了承してくれました。か、可愛いな、おい。思わず抱き締めたくなる。だけどさすがにそれはやり過ぎなので我慢。それに正直俺も今のは恥ずかしい。そんなこんなでクリスとも来たショッピングモールへ到着。一路プリクラコーナーを目指す。
「わぁ……」
「何か目を惹くものがあった?」
「あ、その……こういう所へ来るのが初めてで」
そこでセレナが教えてくれたのは、彼女は今の暮らしを始めてから近所のスーパーぐらいしか利用していないという事。なのでならばと、クリスの時よりもじっくり色んな店を見て回る事に。セレナは本当に奏と同い年と思えないぐらい純粋に目を輝かせてくれました。正直服を買ってあげたかったけど、それは遠慮されそうなので断念。荷物にもなるしね。とはいえ、何か贈りたいのも事実。となればアレしかない。
「セレナ、これなんかはどう?」
「どれですか?」
クリスの時は素通りしたアクセサリーショップ。そこの一角にある耳飾りの一つを指さした。星を模った物で色はマリンブルーだろうか。慈愛の色って感じがする。海の色だからだろう。セレナもそれを見て気に入ったようにため息を漏らした。
「綺麗……」
「どう? 気に入った?」
「え? あっ、そ、そんな事ないです」
慌てて首を横に振るセレナだが、その目と表情では説得力がない。よし、ここは古典的な手法でいこう。
「そっか。じゃ、向こうを見てみよう」
「はい」
さり気無く別の物へ注意を向けさせ、さっきの耳飾りを手にする。髪飾りを見ているセレナに手頃な値段のリボンやペアピンを勧め、それならと頷いてもらう。セレナに店の外で待ってもらい会計へ。当然あの耳飾りを一緒に。それなりの値段はしたが、これでセレナを驚かせて喜んでもらえればと割り切る。で、両方共プレゼント包装をしてもらい、例の物は俺の内ポケットの中へしまってセレナと合流。
「お待たせ」
「そんな。あの花のヘアピン、大切にします」
セレナが選んだのは撫子をあしらったヘアピン。何となくセレナのイメージに合う気がしたからだ。大和撫子って、下手したら今は外国人の方にこそいるかもしれないな。セレナみたいに。この後、目的のプリクラを撮影。さすがに今回は恋人モードは止めておいた。クリスもその辺は話してなかったし、セレナもいきなりキスやハグは嫌だろうと思って。
「えっと……好きな事書いていいんですか?」
「うん、いいよ」
そして今は最後の落書きタイム。セレナは初めての事にどこか緊張しながら落書き開始。俺は後のお楽しみとするべく先に外へ。セレナもそうして欲しいと言ってきたし、きっと何か照れるような事を書いてるんだと思う。やがてそれも終わったのかセレナも垂れ幕の中から出て来て一緒に印刷されるのを待つ。
「どう? 初めてのプリクラは?」
「楽しかったです。今度は姉さん達と撮りたいかな。マムも一緒に」
「そうするといいよ。シールになるからスマホや手帳なんかに貼れるしね」
「はいっ!」
そんな会話をしている内に印刷終了。出て来たシールを手に取り、セレナはやや恥ずかしそうにこちらを見る。
「シキさんも欲しいですよね?」
「そりゃあね。セレナとの思い出だし」
「……じゃ、じゃあどうぞ」
差し出された一枚のシートを受け取り、セレナの書いた落書きを見る。おー、可愛い言葉や絵が描かれている。絵は多分猫と鼠。俺が猫でセレナが鼠。根拠は猫が鼠を銜えてる事と絵の下に俺の名とセレナの名が書いてあるし。書いてある言葉は初めてのプリクラとシキさん好きですの二つ。後はハートや星がチラホラ。うん、意外と恋人っぽくしてくれたんだな。そう思って俺は一枚シールをもらい、自分のスマホの裏に貼る。そこにはクリスと撮った物もある。一枚だけもらっておいたのだ。……いつか響や切歌に調とも撮りたい。ゆくゆくは装者九人とのツーショットに全員での一枚の十枚セットみたいにしたいな。
「はい、ありがとう。後はご自由に」
「は、はい……」
照れた顔で受け取りセレナはハンドバッグへそれをしまった。さて、ここからどうしようかな。クリスと同じコースはさすがにどうかと思うし、とりあえずお昼はここで済ませてしまおう。
「セレナ、お昼は何がいい?」
「え? お昼……?」
「そう、まだ多少早いけど混む前に食べた方がいいかなって」
「あっ、そっか。そうですね」
納得したセレナを連れて、俺はクリスの時も見た食べ物関係の案内板へ。それを見てクリスに負けず劣らずの眼差しを向けるセレナに小さく笑みが零れる。本当にいい意味で子供らしさが残ってるんだな。
「あのシキさん」
「どうかした?」
こちらを困った目で見てくるセレナに何かあっただろうかと疑問を抱きながら問いかける。すると帰ってきた答えは予想外のものだった。
「えっと、いくつか分からないお店があるんです」
「……あー、そっか。そうだよね」
クリスもそうだったが、セレナもそうだったか。考えてみれば彼女は外国生まれの外国育ち。日本によくある、美味いものはどこのものでも食べるし取り入れるみたいな場所は縁遠かったはずだ。なので説明するよりも実際見せようと思いフードコートへ。レストラン街は高いからと遠慮しそうなので、まず先にこっちにしたのだ。
「わぁ……」
簡単な店がいくつも軒を連ねるフードコートはセレナにとって馴染みがなかったらしく、まるで子供のようにキョロキョロと店のメニューを眺めていた。俺はそんなセレナに癒されつつ、その後ろをついて行く。一通り見て回ったセレナは迷ったようだが一つの店に決めた。
「オムライス、かぁ」
「一度食べてみたかったんです。切歌や調も好きそうだし」
「うん、きっと好きだと思うよ。俺も結構好きだしね」
「そうなんですか。じゃ、頑張って覚えよう」
笑顔でそう告げるセレナは本当に可愛い。マリアが綺麗ならセレナは可愛いだ。本当にこの姉妹は凄い。美の女神に愛されてるとしか思えない。こうしてセレナは普通のオムライスを、俺はハヤシオムライスをそれぞれ注文。出来上がるまで席に座って待つ事になった。
「食事が終わったら行きたい場所とかある?」
「えっと、見たいお店はここにもあるようなものばかりだったから……」
「つまりないんだ?」
「はい。シキさんと一緒に見て回ったところで大体」
「じゃあ、俺に任せてくれるって事でいいかな?」
「はい、お願いします」
笑顔で応じるセレナに内心ガッツポーズ。とはいえ、さすがにホテルなどへ行く訳ではない。今日はセレナの言ってくれた事を確かめたいし、もう少し距離を縮めておきたいからね。と、今少しだけ試してみるか。そう思ってセレナの唇へ視線を注ぐ。するとセレナもその視線に気付いたのか、恥ずかしがるように口元を隠した。うん、どうやら覚えててくれてるみたい。
「し、シキさん……今の」
「うん、綺麗な色でセレナに良く似合ってるなぁってね」
「あ、その……ありがとうございます……」
赤くなって俯くセレナだけど、その雰囲気は好意的なものだ。これなら大丈夫だろう。そう思って次の話題を振る。それはこれからのセレナの生き方だ。マリアはアーティストで切歌や調は学生。彼女だけやる事が決まっていないのだ。今のように家事をしてみんなを支えるのもいいが、何かしたい事ややりたい事はないのか。それが知りたかった。力になれるならなりたいと、そう思っていたから。
「……姉さんにも同じような事を聞かれたんです。マムも私の好きにしていいと言ってくれて」
「うん……」
「でも、私のやりたい事もしたい事も出来てるんです。みんなを笑顔にしたい。みんなの幸せを守りたい。この二つだったから。だから今のままでいいんです」
「そっか。なら、セレナがやってみたい事やしてみたい事は?」
「え?」
「やりたい事としたい事は分かった。それがもう叶ってるっていうのも。じゃあ、他の事、趣味みたいなのとか興味ある事は? 編み物でもいいし小さな菜園をやってみるのもいい。何でもいいからない?」
そう、きっとマリアもナスターシャさんもそれをセレナに問いかけていたのだ。夢や希望というものを。セレナは俺の例えで考え込み始めた。きっとこれまでの反動で日々の生活だけで満足し、そんな事へ想いを馳せる事がなかったのだろう。しばらくセレナは無言で、いや何事かを呟きながら考えていた。やがて注文したものが出来たと告げるように渡された機械が振動し、俺は席を立って受け取りに行く。二つのお盆を持ってテーブルに戻ると、セレナはまだ考えていた。が、漂ってきた匂いで我に返り自分の手元を見る。
「わあ、美味しそう」
「まずは食べよう。冷めたらいけないし」
「はい」
こうしてセレナは初オムライスを美味しそうに食べた。口の端にソースが付いていたので教えてあげようと思ったが、ここはセレナ相手なのでやや少女漫画っぽく。
「セレナ、ちょっとじっとしてて」
「え?」
何の事か分からないでも言われた通りじっとしてくれるセレナ。その口の端へ指を動かしソースを掬い取る。
「ソース、付いてるよ」
言ってその指先をペロリ。あ、真っ赤になった。さて、では残ったソースを紙ナプキンで拭き取りますか。こうしてセレナは最後まで俺の為すがままになってくれた。その後、真っ赤なセレナの手を引いて俺はフードコートを後にした。空いた食器? 勿論俺が返しに行きましたとも。セレナは席で真っ赤なまま動かなかったからね。しばらく歩き外へ出たところでセレナがやっと口を開いた。
「あの、どこへ行くんですか?」
「ネカフェって言って分かるかな? まぁ、行けば分かるよ」
疑問符を浮かべたまま、俺の指へ自分の指を絡めてくれるセレナに笑みを浮かべつつ街を歩く。やがて目当ての店が見つかりその中へ。受付の店員へ個室タイプが空いてるかを聞き、無事空いていたのでそこを二時間利用で支払う。
「さ、セレナ行くよ」
「は、はい」
初めて来る場所だからかセレナの落ち着きがない。けれど、それは戸惑いと同じぐらい興味もありそうなので良しとする。で、言われた場所へ到着。おっと、一応セレナへ言っておくか。
「セレナ、ここは靴を脱ぐとこだからね」
「はい、分かりました」
こうして俺はまずセレナへネカフェの簡単な説明をする事に。漫画なども読み放題と聞いて目を見開くセレナが印象的でした。後、ネットゲームもたくさん出来ると聞き、絶対切歌には教えないでくださいと釘を刺されました。そうだね。確かにネットゲームに関しては俺の部屋でも出来ないからなぁ。で、説明が終わればまず飲み物を取りに行く。ドリンクバー初体験のセレナへ説明しつつ、お互いコップに飲み物を入れて部屋へ戻る。セレナは漫画を読みたいらしく、一通り見て来て良いよと告げると嬉しそうにフロアへ出て行った。
「さて、じゃあ俺はどうしようかな」
ここへ来たのはとある事をセレナにするためだ。エロではないが、あまり人目のあるとこでやるものではないのでここを選んだ。カラオケでも良かったのだが、あそこではセレナの歌を楽しんでしまそうなのでまたの機会にした。ここならば俺の知ってる少女漫画の定番もし易いだろうと思ったし。しばらくぼんやりと待っているとセレナが漫画を沢山抱えて戻って来た。どうやら最初はその場で読んでいたのだが、邪魔になると思い何度も行き来する事を考えて持てるだけ持って来たらしい。意外なとこでものぐさな面を見た。
「あー、見事に少女漫画ばかりだね」
「か、買うとお金がかかるし場所も取るから……」
「成程。賢く経済的でらっしゃる」
「ここだと買うよりも安く済むみたいですね。響とか好きそう」
「……たしかに」
聞いた事はないけど響の好きそうな場所ではある。もし来た事ないって言ったら、今度のデートはここにしよう。そう決めて、俺はセレナを眺める事にした。時間は分かっているので、終了三十分前ぐらいまではそうしていようと思う。セレナは見られている事に気付きながらも漫画を読み始めた。最初こそ座って読んでいたけれど、段々足を崩し、しまいには寝転がって読み始める。きっと部屋のベッドでもこういう事しているんだろうな。でもね、セレナ。そうするとスカートの中が俺に見えちゃうんだよ? ……淡いピンクでした。
「……セレナ、そうしてるとスカートの中見えるよ」
「っ!? ……み、見ました?」
「悪いとは思ったけどね」
赤い顔で女の子座りをするセレナへ正直に答える。それで彼女は真っ赤な顔になって俯いた。そのまま沈黙が流れる。仕方ない。予定より早いけどやってみるか。そう思ってセレナへ近寄る。するとセレナがこちらの動きに気が付いて顔を上げた。丁度いいや。
「セレナ、もしかして誘ってる?」
「えっ? そ、そんな事ないです……」
「じゃ、あんな事しちゃダメだよ。だって……」
「あっ……」
壁へ軽く押し付けるように迫る。顔の横に手を付いてセレナへ顔を近付ければ、俗にいう壁ドンである。心なしかセレナの顔が驚きと喜びに変わった気もした。なら、このまま押し切ろう。
「男はこんな風に調子に乗るんだぞ?」
「あっ……えっと……」
「それとも、あの時の約束をここで果たしてくれるのか?」
俺のその言葉にセレナは息を呑んで、頷くように目を閉じた。なら遠慮なく。そう思って口付ける。まずは軽く。
「……まずは一回だな」
「え……?」
「一本分、全部回収させてもらうから。覚悟して」
「ん……」
もう一度キス。今度は少しだけ長く。
「っ……し、シキさん……」
「まだだよ」
「んっ……」
そうやって何度も何度もキスをする。少しずつ時間を長くしてセレナの心を溶かすように。次第にセレナの息が荒くなってくる。それでも止めない。そうこうしているとセレナからキスをねだってくるようになった。嬉しく思いながらキスをする。そろそろいいかな?
「セレナ、大人のキスをしよう。分かる?」
「……ふぁい」
可愛い舌を出してくるセレナにムラッとくるものがあるが、まだそこまでいくつもりはない。でも、ここでその下準備はしておこうと思うので響の好きなディープを。互いの舌と舌を絡め合い、俺はセレナの体を抱き寄せる。甘い匂いが香り、俺の下半身へ熱を増させるが今は欲情よりも愛情だ。
「どう?」
「すごい……これが、大人のキスなんですね」
「少しだけエッチなキスもしようか」
「ふぇ?」
トロンとしたセレナへ今度はマリアも好きなハードをする。それをセレナは受け入れてくれる。ゆっくり口を離すと透明な糸が橋を作る。それを惚けた眼差しで見つめるセレナはとても色っぽかった。
「シキさん……」
「何?」
「……もっとお返しさせてください。もっと、もっといっぱい……」
そう言ってくるセレナはとても物欲しそうな目をしていた。ならこっちの答えは決まっている。
「じゃあ、遠慮なく」
「んぅ……」
こうして時間ぎりぎりまでセレナとキスをし続けた。最後は慌てて漫画を返しに行く事になって二人して笑った事も思い出に。そして店を出たところで最後のとどめを。
「セレナ、これ受け取ってくれ」
「えっ? これは?」
「中身を見てくれれば」
そう告げるとセレナはプレゼント用の小袋を開けて中身を取り出す。
「これって……」
「初デートの記念品。今度のデートで付けて来てくれると嬉しい」
「シキさん……」
耳飾りを小袋ごと抱き締めるようにして、セレナはこちらを熱っぽく見つめてきた。そこでキスでも出来れば決まるのだろうが、そこまでは俺には出来ないのでただ笑みを浮かべるのみ。そしてセレナを送ると言ったのだが、そこで予想外の返答がきたのだ。
―――今日は帰りたくないです……。