奇跡の殺戮者を変える者
「妊娠?」
俺の言葉に了子は小さく頷きお腹をさすった。その瞬間、指揮所にいた風鳴さん達全員が驚きの声を上げた。
「俺の子が……本当に?」
「ええ。だからしばらくお預けしたの。で、お腹も目立ってきたしもういいかと思って」
「い、いつから?」
「確信出来たのはフロンティア事変終結間近で、無事着床したのがフロンティアが浮上した後ぐらいね。フィーネは分かっていたみたいだけど、黙っててくれたの。自分で気付く方が嬉しいだろうってね」
それで全て納得出来た。そして俺はそっとある人物へ視線を動かした。その相手、奏はどこか残念そうに肩を落としていた。そりゃそうだろうな。俺も正直奏が一番最初だと思っていた。と、そこで気付く。了子には俺の初めて何も上げてなかった。だからこうなったのか。そう思うも口には出せず。
「要君、まずはおめでとうと言うべきだな。S.O.N.Gとなって初めての慶事だ。了子君もだ。もし産休が必要な時は言ってくれ。その分ナスターシャ教授に負担を強いてしまいますが……」
「いいのです。新しい命の誕生が近い事は喜ばしい事ですから。それに、おそらくですが了子さんはギリギリまで研究に精を出すでしょう」
「勿論。デスクワークだし通勤ぐらいの運動は必要だもの。ま、本気で辛くなったらその時考えるわ」
最後にウインクを決め、了子はみんなへそう言い切った。そして、その話をした後、小日向さんを除いた装者全員と俺が了子の研究室へ集められた。小日向さんへはその理由をこう告げてある。小日向さんはあくまで緊急時の装者だからと。つまり、普段からS.O.N.Gとして活動する必要はないのだ。その意味を響が分かり易くこうまとめた。
―――未来には出来るだけ日常にいてほしいんだ。あの時みたいに困った時は助けてもらうかもだけど。
この説明で小日向さんも俺達の願いが分かったのだろう。笑顔で頷き、先に帰っていると返して帰路に着いた。こうして残った俺達へ了子はこう切り出した。
「さて、きっとみんな聞きたがってると思うけど、どうやって私が彼の精子で妊娠したか教えるわ」
「そうだよ。あたしだってかなり意識したのにさ……」
「奏……」
悲しそうに項垂れる奏へ翼がそっと声を掛ける。俺もそちらへ視線を向けていたけど、了子の言う事は本当に知りたい。それさえ分かれば奏や他のみんなとも子作り出来るのだ。特にクリスとマリアの眼差しが強い。
「簡単な話よ。体内に吸収されてしまうなら体外で受精させようとすればいいの」
「……そういう事ね」
「ああ、言われりゃそうだな」
マリアやクリスが納得したような声を出す。翼やセレナ辺りも理解しているようだ。ただ、確実にピンときてないのが二人いるみたいだけども。
「「どういう事です(デス)か?」」
「体外受精だよ。要するに了子さんは自分の卵子を取り出して受精させてから体内へ戻したんだ。フィーネに協力してもらって、ね」
「そういう事。上手く着床してくれたし、成功と言えば成功だけど……ねぇ」
そのどこか残念そうな声に響と切歌が首を傾げた。うん、きっとそうだと思った。
「自然な形の受精ではないからだろう。体外受精の場合、やはり生まれてくる子供は従来に比べると虚弱傾向が見られるそうだ」
「そっか。たしか卵子に辿り着くまでに強い精子だけが残るようになってるんだ」
「だから了子さんは不満気なんですね」
「じゃ、やっぱり普通のやり方じゃ無理なんデスか?」
響に続けと調と切歌が言葉を紡ぎ、了子は小さく苦笑する。そう、可能性はない訳じゃないがやはり低いのだ。奏との旅館での事を思い出すとそれを実感する。と、その時その奏が何か思いついたような顔をした。
「了子さん。実はあたしとシキ、この前子供欲しくて、言われた通り出来るだけ吸収させてから更に出してもらったんだけどさ。あれって、やっぱり一番最初が元気良いんだよね?」
「どうかしら? 状態にもよるわ。でも、肝心なのはそこじゃないんでしょ?」
「二回目まではあたしは九割以上吸収されたんだ。てことはさ、その二回分を前もって採取した分で補えば、シキの新鮮な種を貰えるって事じゃない?」
その提案に了子が成程という顔をした。そうだよな。思えばそんな事を実験的にやったの奏とだけだ。つまり今の情報も奏しか知り得ないものな訳で。と、そこで俺は気付いた。
「了子さん、この話はここまでにしておこう。ちょっと刺激が強くなり過ぎ」
正確には刺激というか具体的過ぎて一部がやや暴走しそうになっている。特にセレナ。何せこの中で一番妊娠しても支障がない立場だ。奏やマリアはそういう意味では色々面倒が多いし、クリスだってない訳じゃないし。
「そうね。じゃあ、次はあなたのスープから見えた可能性を話すわ」
「可能性?」
「そう。ナスターシャ教授が治療困難な病気を患っていたのは知ってる?」
その問いかけにマリア達は頷き、元二課の奏達が首を横に振った。
「ま、もう完治したからいいわね。実は、それは普通であれば確実に教授の命を奪っていたわ」
「「っ?!」」
「……姉さんは知っていたんだ」
「……ええ。でも、ドクターがゆっくり完治に向かっていると言っていたから」
息を呑む切歌と調。セレナは驚かなかったマリアへやはりといった眼差しを向ける。それを受け止め、マリアは大きくため息を吐いて答えた。どうやらマリアも治ると聞いていたから平気だったんだろうな。
「で、どうしてそれを可能にしたのか。それが彼のスープ。どうも閉経し次代への命を残せなくなった女性に限り、万能薬として作用するみたいなの。だから最近の教授、綺麗になったでしょ?」
「あー、そういえば決起した頃よりもお肌つるつるデス」
「うん、顔の皺も減った」
「待って。じゃ、今もマムはシキのスープを飲んでるの?」
その問いかけに了子は頷いた。俺も驚きだ。てっきりもう摂取してないと思ってたから。
「今はこの話のための実験体として協力頂いてるの。何せこんな事を頼める相手、中々いないし。万能薬としてどこまで効果があるか。それを確かめるために病院などへ送ってもいいんだけど……」
「さすがにそこまで数は確保出来ない上、定期的な摂取も厳しい。要さん一人では限度はナスターシャ教授まで、と」
「そういう事ね。でも、そう考えればシキは稼ぐのが簡単だね。一定年齢を超えた女性限定のスキンケアとか言ってスープ飲ませりゃいいんだから」
「奏さん、そういうのってやっぱり数いりませんか? シキさん、倒れちゃいますよぉ」
響の言葉に俺も何度も何度も頷いた。冗談じゃない。そんな事で金を稼ぐぐらいなら真面目にバイトでもした方がマシだ。
「奏、そんな事に俺は出す気ないからな。これでも、出す時はいつだって愛するみんなの事を想って出してんだ」
「最低だけどあんたらしい答えだよシキ。分かってる。それに、これからはあたしらをお母さんにするために出すんだもんな?」
「学生組はまだだけど、それ以外は望むなら一日かけて子作りするさ。実際奏とはそういうつもりの温泉だったし」
俺の言葉に奏が少しだけ嬉しそうな笑みを返し、マリアへ顔を向けて勝ち誇るように笑った。あ、マリアが引きつった笑顔を返してる。うん、あれは良くない。というか、あれで俺は確信した。俺のマリアへのぐらつきが奏にばれてると。本当にこういうとこでの女の勘は凄いの一言だ。
「とにかく、もうここにいるみんなは知ってると思うけど、俺はハーレムなんて馬鹿げた夢を実現したい大馬鹿野郎だ。だから願うのはみんな仲良く。正直俺がいない方が仲良くしてくれるなら、俺はそう」
「そこまでよ。ほら奏、貴女があんな事するからシキがとんでもない事言い出すんじゃない」
「悪い悪い。でも、半分本気だよ。マリア、あたしからシキを盗ろうってんなら容赦しない」
「あら? 何があっても自分はシキに捨てられる事はないんじゃなかったのかしら」
互いに笑顔を向け合う奏とマリアだが、その雰囲気は一触即発といったもの。当然周囲もアワアワとするのだが、そんな二人へ平然と割って入れる存在がここにはいた。
「はい、そこまで。続きは二人で彼とベッドの中ででもやって頂戴」
「……ベッドの中」
「ねぇ……」
「そんな流し目で見られても無理。今日は了子さんと居たいんだ。分かって欲しい」
俺の言い方で奏とマリアが苦笑する。見れば響達もだ。ごめんな、みんな。せめて今日だけはお腹の子の傍にいてやりたいんだ。
「ま、いいんじゃねえか? その、父親になったんだしよ」
「うん、シキさんは今日はお腹の子と一緒にいてあげてください」
「了子さん、今度お腹触らせてください」
「くださいデス」
「ええ、いいわよ」
学生組は全員嬉しそうな声と表情を向けてくれる。了子もどこか嬉しそうだ。そしてクリス達が出て行った後で、残った大人組がこちらを見た。
「では要さん、私達も今日は帰ります」
「ありがとう。翼、さっきの事とは別に、いつか泊まりでデートしような」
「はい、楽しみにしておきます」
「シキ、あたしもまた機会作るからね」
「私もよ。その時は……ね、セレナ」
「……姉妹揃ってなんていかがですか?」
「それは二人目以降にしたいな。最初の子はそれぞれと、ね」
そう返すとイヴ姉妹が揃って嬉しそうに頷いてくれた。ツヴァイウイングが不満そうだったので、そちらも二人目はそうすると返してご機嫌取り。うん、やっぱりハーレムって難しい。そう心から感じました。こうして了子と二人きりとなる。いや、正確にはフィーネとお腹の子を含めて四人なんだろうか。
「どうしたの?」
「いや、了子と二人きりかなって思ったけど、フィーネとお腹の子もいるからなぁって」
「ふふっ、ホント貴方って変わってるわ。それと、一つだけ貴方にだけ教えてあげる」
「何?」
「フィーネが教えてくれたの。もうノイズは絶対現れないそうよ。彼女、呼び出すだけなら出来るの。で、やってみたけど出なかった」
「……どうして俺だけにそれを?」
凄く大事な事じゃないか。そう思うも了子は俺の言葉に眼鏡を外した。その瞬間雰囲気が変わる。フィーネの登場だ。
「分からんか? お前はもう少し賢いと思っていたが」
「……みんなを装者のままでいさせて、更に世界へ緊張感を無くさせないため?」
「ほう、全てではないが大方当たりだ。共通の敵がいる方が人間はまとまりやすいからな。それと、一つだけ懸念している事もある」
「懸念?」
初耳過ぎる。フィーネがそんな表現を使うなんて。そう思っていると、彼女はやや難しい顔をして教えてくれた。錬金術師。そう呼ばれる存在が今もどこかにいるのだと。彼らはフィーネとは相対する思想を持っており、共にバラルの呪詛と呼ばれるものを無くそうとするが、その目的が異なるために何度かやり合った事があるそうだ。それに対抗するためにギア装者を不必要とさせる訳にはいかなかったらしい。
「じゃ、まさか月を?」
「いや、さすがにそれはないだろう。奴らは呪詛そのものを打ち消す術を開発しようとしていた」
「呪詛を? ……小日向さんっ!?」
「気付いたか? そうだ。あの神獣鏡の娘、狙われる可能性がある。それと、お前もだ」
「俺も?」
どういう事だと、そう思うもすぐに理解した。もしそんな奴らが現れれば小日向さんを守るために響達は戦う。そんな彼女達を抑えるために必要な力はかなり強大になるが、心で抑えようと思えばあっさり出来なくもないのだ。俺を捕まえ人質にすればいいのだから。だがしかし、それだけではない理由があるらしい。そう、かつてやっていた各国研究機関へのスープの提供。それで俺の事を知っている可能性が高いとの事だ。
「はっきり言うが、この女がお前の子を宿した理由はそれ絡みだ」
「…………まさか」
「そう。そうすればお前を抑えるためにこの女も狙われる。本来狙いが分散するのは守る側にも厄介だが、狙う側にも負担を強いる。だが、この女が私でもある事は知られていない。つまり」
「こちらは了子への警備を最小限に出来る上撃退も可能って事か」
「ああ、そうすれば相手を捕まえ情報を聞き出せる可能性もある。とにかくだ。ノイズの脅威が消えた今、奴らが動き出すのに障害はない。シンフォギアは多少壁になるかもしれんが、所詮大本は科学技術だ。錬金術の派生である以上、その上を奴らが行くのは明らかだろう」
フィーネのまとめに俺は返す言葉がなかった。だから俺にだけ教えてくれたのか。きっと錬金術でも簡単に勝てない物がシンフォギアにはあるからだ。エクスドライブ。今までその姿をみんなが見せたのは二回だけ。一度はフィーネとの決戦で、次がネフィリムとの決戦だ。どちらも色々な要因があってのもので、狙って出来るものではない。だけど、フィーネはそれを狙って出せるかもしれないと俺へ言っているのだ。
「……俺とセックスして中出しされた瞬間なら限界突破出来るかも?」
「可能性は大いにある。特に望みが高いのがかつての融合症例だ。さすがに今はあれ程の相性はないだろうが、それでもあの中では一番高いだろう」
「……ね、アナルへの射精なら?」
「…………そちらの方がより可能性は高いだろうな。ドリンクではなく座薬型にでもしてみるか。いや、いっそ原液を射出出来るプラグ辺りでも……」
そう呟きながらフィーネは目を閉じる。多分了子と話し合いを始めたんだろう。俺はそんな彼女を見つめ、ぼんやりと考える。ノイズとの戦いが終ったら、今度は人間が敵とか嫌過ぎる。響やセレナは下手をしたら戦えないかもしれない。そんな風に思いながら俺は今後の平穏を願うしかなかった……。
そんな事を話して早二か月が経過し、了子のお腹はかなり目立つようになってきた。切歌と調の入学も決まり、翼の卒業と入れ替わりに二人がリディアンの制服へ袖を通す事になった。クリスは翼の代わりとして学生組をまとめようとやる気を見せ、響と小日向さんはそんな彼女を支えるらしい。……ま、響はむしろ下級生二人側だろうけど。
「さて、二人の入学祝いは何がいいかな?」
翼への卒業祝いはお泊りデートと相成った。緒川さんがスケジュール調整をしてくれていて、早ければ六月辺りに行けるらしい。こんな話をするとあの二人も同じ事を言い出しそうだが、それは正直まだ早い。それにナスターシャさんを通じて渡してもらおうと思っているので、そういうエロ関係は絶対ダメなのだ。
「おい、そこのお前」
「ん?」
鉄板は文房具かなと、そう思って歩いていると突然声を掛けられる。しかもかなり乱暴な感じに。誰だと思って周囲を見渡すがそれらしい相手はいない。気のせいか。そう思って歩き出そうとしたところで再び声が聞こえた。
「おい、ここだ」
「……えっと」
声のした方へ視線を向けると足元に変わった帽子を被った女の子がいた。金髪でいかにも外国人といった感じだが、その目はどこか悲しみと怒りを湛えている。その瞳に思わず息を呑んで見つめていると、その輝きが怒りだけに変わった。
「要シキ、で間違いないな?」
「え? どうして俺の名を?」
「……理由を知りたければついて来い」
そう言うと女の子は背を向けて裏路地へと歩き出す。どうしようかと思ったけど、一応携帯で風鳴さんへ発信だけしてポケットへ突っ込む。これで多少聞き取りにくいかもしれないけど、こっちの声は本部へ届くはずだ。そう信じて女の子を追い駆けた。
「ね、どこまで行くの?」
だんまり。
「君、一人なの? 誰か家族は?」
「うるさい」
微かに反応。どっちだ? 一人か家族か。……あるいは両方か。
「もしかしてご両親のどっちかが俺の事を知ってるの?」
「黙っていろ」
ビンゴ。どうも家族絡みがNGワードっぽい。この辺、昔のクリスとかぶるなぁ。てことはそういう事だろうね。なら傷を触らないようにするべきか。でも、情報を聞き出すには相手の冷静さを無くすしかないし。迷っている暇はない。もしこのまま最悪の結果になるとしたら、せめて少しでもみんなの役に立ちたいからな。
「ごめん。辛い事思い出させたみたいだね」
「っ……お前などに何が分かる」
「分からないよ。何も教えてもらってないから。だから謝るしかないんだ」
「っ! ならばずっと黙ってろっ!」
感情を露わにした女の子は、帽子が落ちそうなぐらいの勢いでこちらへ振り向いた。気付けば、そこは人気のない廃墟。多分、今までのノイズとの戦闘で被害に遭った場所だろう。
「なら、せめて最初の質問だけ答えてくれないかな? どうして俺の名を知ってるのか」
「いいだろう。パヴァリア光明結社を通じて聞いた情報だ。お前が装者を人工的に作り出せる能力を有しているとな」
「パヴァリア光明結社?」
聞いた事ないな。でも、多分だけどまともなもんじゃない。だって、明らかに名前からして怪しいもん。秘密結社とかのやつだろ、結社って。悪の組織感半端無いぞ。
「そちらの質問には答えた。次はこちらの要求を聞いてもらおうか」
「待って。俺がここについて来る事がその質問の答えの対価だよ。なら、次はこっちが要求していいはずじゃない?」
「ほう、まさか俺を見た目通りだとでも思っているのか?」
「いや、違うって。要求って言っても大した事じゃない。せめて名前を教えて欲しいってぐらい」
「……キャロルだ。キャロル・マールス・ディーンハイム。これでいいか」
やけにあっさり答えてくれた。多分どうでもいいと思ってるんだろう。うん、ならこう返そう。
「ありがとうキャロル……ちゃん? それともさん付けの方がいいのか?」
「何故そんな事を聞く」
「いや、さっき見た目通りだと思ってるのかって言うからさ。年上ならちゃん付けは失礼だし」
「…………本当に変わった奴だ。好きにしろ。俺はそんな事にこだわらん」
「じゃ、キャロルちゃんで。それで、俺も一言だけ言わせてもらうなキャロルちゃん。俺を見た目通りの馬鹿野郎と思わない方がいい。それに、どこかに連れ去ろうとしてるみたいだけど、君の体格じゃ俺をさらうには厳しいだろ? 俺、こう見えても鍛えてるから余計重いし」
俺がそうハッタリをかますと、キャロルちゃんは欠片も反応を見せずため息を吐いただけ。そして何かの結晶みたいな物を取り出し、俺の足元へ投げつける。その瞬間、足元に何かが光と共に現れる。これは……。
「紋章? 文字?」
「知る必要はない」
体がその中へ吸い込まれていく。まさかこんな手段があるなんて。もっと時間稼ぎするべきだったかな。いや、どちらにせよ無理だったはずだ。キャロルちゃんは俺のハッタリへ無反応だった。つまり、見抜いていたんだ。俺が何をしようとしているか。と、俺の体が完全に吸い込まれる丁度その時、金髪の美女が現れる。それを見てキャロルちゃんが目を見開いた。
「っ!? お前は……」
「ちっ! 間に合わなかったか」
その声を最後に俺はその場から消えた。気が付くと見知らぬ場所にいた。階段の先に玉座のような物があり、周囲には四つの台座と女性型の人形がある。
「一体ここはどこなんだ?」
「チフォージュ・シャトーです」
「え?」
聞こえてきた声に振り向く。そこにはさっきまで俺と居たキャロルちゃんがいた。いや、恰好が違う。何かボロボロだし、素足だし。
「えっと、君は?」
「僕はエルフナインといいます。キャロルから貴方の世話を頼まれました」
「……世話?」
「はい」
キャロルちゃんに比べると妙に友好的な感じのエルフナインちゃんだが、姉妹か何かだろうか? それにしては名前に共通点がないし、そもそも響きからして違い過ぎる。でも、ここまで似てるなら親戚ではあるだろう。
「あの、エルフナインだと長いから略していい?」
「え? はい、構いません。そんな事言われたの初めてです」
「そうなんだ。じゃ、エルちゃんでいい?」
「エル……はい、好きに呼んでください」
「ん。ならエルちゃん。あの四体の人形は何?」
俺の指さす方を見てエルちゃんはごくあっさり答えてくれた。
「あれはオートスコアラーです。青い服がガリィ。黄色がレイア。緑がファラで、赤いのがミカです」
「……最後だけ日本人みたいな名前だな。にしても、オートスコアラー? 自動記録員? どういう意味だ?」
「さあ? 僕も名前しか知らないので」
揃って首を傾げる俺とエルちゃん。と、その時玉座の真上にここへ来る際に見たものと同じ何かが現れた。そしてそこからキャロルちゃんが降ってくる。
「なっ……」
「キャロルっ?!」
ただ、その恰好は多少変わっていた。ところどころが焼け焦げていたのだ。それを見てエルちゃんが血相を変えて駆け出した。やはり大事な相手なのだろう。
「くっ、まさか先史の巫女が覚醒しているとはな。しかもシンフォギアと協力体制だと?」
「キャロル、大丈夫?」
「ああ、問題ない。多少想定外ではあったが、目的は達した」
「あの人の事?」
「そうだ。奴の生成する生命のスープとやらを使えばガリィ達の目覚めを早める事が出来る。特にミカの起動と運用にはかなりの思い出を使わなければならないからな」
聞こえてくる会話の半分ぐらいが分からないけど、それでも俺がどうして連れてこられたかは分かった。あの人形を動かすために連れてこられたって事は。
「えっと、一ついいかなキャロルちゃん」
「何だ」
「君と戦ったのって、やっぱりフィーネ?」
「知っているのか。そうだ。何故先史の巫女がお前達に手を貸している? あの巫女の目的は統一言語を取り戻す事だったはずだ。なのに、月を砕く事を諦めたばかりか、それを阻止した相手と手を組んでいる。理由が分からん」
ま、そうだろうな。まず第一は響。次に俺。そして、結果を繋いだのが生命のスープという構造なのだ。説明すると長くなるし、面倒だから省略して話そう。
「えっと、寝取りました」
「「寝取る?」」
うわ、エルちゃんは予想してたけどキャロルちゃんまで知らないか。どうする? これを説明するのはある意味ヤバイ。なので要点だけ分かるようにしよう。
「フィーネが好きな相手が俺になるようにしたって事」
「……馬鹿な。あの巫女が恋い焦がれていたのは創造主だ。それからどうやって」
「キスどころか手も握ってくれない相手より、キスもハグも出来る男の温もりを選んだ。それだけさ」
俺の返しにエルちゃんは小首を傾げ、キャロルちゃんは少しだけ何か考え込むように目を閉じた。
「……そうか。あの巫女も所詮は人間という事か」
「そうだよ。だから誰かの温もりを求めていたんだろうね。あるいは、自分の想いへ反応してくれる相手を」
「それが貴方だった?」
「というより俺がそうなりたいって言った。フィーネを大事にして、出来るなら子供を産んで欲しいってね」
その内容にエルちゃんだけでなくキャロルちゃんまで呆気に取られた顔をした。そんなにおかしいかな? 俺にしては比較的まともな事を言ったんだけども。
「……まあいい。早速だが、命が惜しいなら生命のスープを作れ」
「キャロル! そんな言い方」
「黙れ。どれぐらいで出来る? 材料は何が必要だ?」
「えっと……うん、じゃあ二人にはスープの正体を教えるよ」
「「は?(え?)」」
揃って疑問符を浮かべる二人の少女。うん、こうして見ると姉妹だな。隠しても意味ないし、正体を知れば真似は出来ないと分かるだろう。そう思って俺は包み隠さずスープの正体を話した。ただし、それがシンフォギアを強力にする事は黙ったまま。教えるのは何がスープであるかだけ。
「……信じられん。だが、嘘にしてはあまりにも内容が馬鹿馬鹿しい」
「実際見せてみた方が早いかな?」
「そうですね。お願い出来ますか?」
「おいっ!」
「ふぇ?」
エルちゃんの言葉にキャロルちゃんが即座に反応。おやおや、これは面白いものを見たぞ。
「キャロルちゃん、どうしたんだ? 実物を見れば俺の話が嘘か本当か分かるだろ?」
「そ、それはそうだが……」
「そうだよキャロル。この人の言う通りだ。それに、錬金術の観点で言っても精液はかなり強い生命力を秘めてる。意外と本当かもしれない」
「わ、分かった。さっさと出せ」
顔を少しだけ赤くして背けるキャロルちゃん。どうやら彼女はエルちゃんと違って羞恥心などがあるようだ。じゃ、失礼して。
「え? ズボンを脱ぐんですか?」
「そうだよ。射精しないといけないからね」
「えっと……排泄のようには出来ないんですか?」
「さすがに無理かな。チンポがファスナーの金属部分に当たると痛いし」
「黙ってやれ!」
俺の話に感心するエルちゃんと恥ずかしいのか顔を背け続けるキャロルちゃん。うん、このコンビはヤバイな。今までの俺の周囲にはいなかったタイプのコンビだ。強いてあげるなら、響とクリス辺りだろうか。とにかく、可愛くてからかいがいがあってチンポにくる。しかも見た目が少女っていうか、下手したら幼女だもんなぁ。
そんな二人の前で下半身を露出って完全逮捕コースだよな、普通。で、エルちゃんは興味津々でチンポを見つめ、キャロルちゃんはチラチラ横目で見ていた。うわ、何となくリアクションが逆転してる気がする。
「これが男性器ですか。知識としては知っていましたが本物は初めて見ます」
「しかも勃起しているからね。本来はもっと小さいよ」
「そうなんですね。あの、少し触っても?」
「いいよ」
「じゃあ失礼します」
本当に未知の生物でも調べるかのようなエルちゃん。物怖じしないのは見た目に近い行動な気がする。逆にプシューと音が聞こえてきそうな感じなキャロルちゃんの方が驚きだ。何となくだが、俺のチンポを直視して平然としそうなイメージがあったからな。と、いかんいかん。ちゃんと構ってあげないと。
「キャロルちゃんは触らなくていい?」
「必要ないっ!」
「あの、これをどうすれば射精するんですか?」
「エルフナインっ!」
「え? だって、生命のスープを出してもらわないといけないんだよ? 出し方を教えてもらった方がいいと思うんだ」
「そ、それは……」
エルちゃんの無垢な答えにキャロルちゃんが言い淀む。うん、これは間違いない。キャロルちゃんは知っている。なら、俺の取るべき行動は一つ。
「キャロルちゃんは知ってるんだろ? ちょっとお手本を見せてあげたら?」
「っ!? な、何を言っている! 俺は」
「「知らないの?」」
俺とエルちゃんの声が偶然ハモる。だが、その言い方はまったく異なる。俺は煽るように、エルちゃんは不思議そうに。だからキャロルちゃんが答えに窮した。どうやらエルちゃんに知らない事があると思われるのが嫌なようだ。お姉さんぶりたいんだね、キャロルちゃん。
「何かふざけた事を考えてないか?」
「別に?」
「キャロルが知らない事があるなんて……」
「っ! し、知っている! 黙って見ていろ!」
そう自棄になって言い放つと、キャロルちゃんは俺のチンポの前に立ち、エルちゃんに気付かれぬよう小さく深呼吸をした。そしてその可愛くて綺麗な手でチンポをそっと掴んだかと思うと、ゆっくり扱き始めたのだ。
「おおっ、イイ感じだよキャロルちゃん」
「うるさい。黙って早く射精しろ」
「いや、さすがにそんな早くは無理だから」
「くっ……何故俺がこんな事を……」
「成程。陰茎に刺激を与えるんだ。あっ、亀頭から透明な液が……カウパーだっけ。キャロル、ちゃんと射精する工程に沿っているよ?」
「少しお前も黙ってろ!」
ああ、堪らん。何というか、おませな女の子が妹に大人であるとこを見せたくて、引くに引けなくなってエッチな事をしているみたいなこの状況。正直我慢しないと結構早く出せるやつだ。今もエルちゃんは黙って俺のチンポを見つめているし、キャロルちゃんはどんどん顔が赤くなっているし。本当に可愛いな、この二人。
「エルちゃん、このままだと時間がかかるから手を貸してあげて?」
「えっと、何をすれば?」
「袋の部分って言って分かるかな? そこを優しく揉んでくれる?」
「睾丸の部分ですね。分かりました」
何の違和感もなく頷き、キャロルちゃんの横に立って玉袋をやわやわと刺激し始めるエルちゃん。この光景は見る人が見たら即射精ものだろう。金髪ロリが二人でチンポを刺激しているのだ。片や赤面で片や平然という違いはあるけれど。
「くっ、手が粘液のせいでヌルヌルする……」
「何なら代わるよ?」
「……いい。このまま続けた方が早そうだ」
「そっか。でもいつでも代わるからね?」
「ふん……」
あー、いいねぇ。仲良くしたいエルちゃんとそれに素直になれないキャロルちゃん。まさに二課合流当初の響とクリスだ。そんな事を思い出したせいか、よりチンポが硬くなる。と、それに気付いてキャロルちゃんが息を呑んだ。
「ま、まだ硬くなるのか……?」
「え? さっきよりも硬くなったの?」
「おっ……」
エルちゃんが確かめるように指でチンポをつっつき、その感覚に思わず声が漏れた。ついでに我慢汁も出た。
「本当だ。僕が触った時よりも硬い。さっきのは完全に勃起していなかったんだ」
「おい、まだか。さっさと出せ」
「……じゃ、キャロルちゃんはそこで両手を合わせて水を汲むみたいな形にして。エルちゃんはそのまま袋を刺激してくれる?」
「こうか?」
「分かりました」
そして俺はキャロルちゃんに代わってチンポを扱く。その速度にキャロルちゃんが驚きながら顔を真っ赤にしていく。エルちゃんはその変化に感心しつつきちんと袋を揉み続けてくれた。そうこうしていたら、遂に感じるいつもの感覚。ならばとキャロルちゃんの両手へチンポを向ける。
「うっ……」
「なっ!」
「わぁ……いっぱい出た。これが射精なんですね」
キャロルちゃんの両手にたっぷり吐き出される白濁液。それを見て真っ赤になるキャロルちゃんとどこか嬉しそうなエルちゃん。うん、これはいかんな。ある意味でいつかのひびクリを超えたぞ。そしてキャロルちゃんは自分の両手にある精子を見つめておもむろに立ち上がると、そのままあの人形達へ近付いて行く。と、エルちゃんも何かに気付いてその後を追う。俺もそのまま二人の後をついて行きガリィと言う名の人形の前へ。
「これが本当に生命のスープなら……」
「ガリィを起動させられる?」
「そのはずだ。丁度いい。おい、俺をこのまま持ち上げてガリィの顔まで近づけろ」
「俺?」
「以外に誰がいる。早くしろ」
よく分からないがそれで俺の話を信じてもらえるなら。そう思ってキャロルちゃんを抱き上げ人形の顔まで近づけた。するとキャロルちゃんは人形の口へ両手の精子を塗り付けた。何が起きるのだろうと、そう思って眺めているとその人形が動き出した。
「……あ~あ、やっと動けます。って、何この思い出量。マスター? 少し大盤振る舞いじゃありませんか?」
「……どうやら本当のようだ」
「みたい」
「あらぁ? エルフナインまでいる。あと……」
「どうも」
こちらを胡散臭い物を見るような眼差しで見つめるガリィと言う名の人形。しかし、凄いな。どう見ても人間と遜色ないぞ。精巧なんてレベルじゃない。これも錬金術なんだろうか。
「ついでに残った分でファラも起動出来るかやってみるか」
「はいはい。えっと、たしか緑の人形だよね」
「そうだ」
キャロルちゃんを抱き抱えたまま、俺は別の人形へ移動する。その間にガリィはエルちゃんから今までの簡単な説明を受けていた。
「はい」
「これで足りればいいが」
両手に残る僅かな分を口元に塗り付け、キャロルちゃんはやや不安そうな声を出す。と、そこでガリィが接近してきた。
「あのぉ、もし何でしたらガリィちゃんの分、少し分けますけど?」
「……そこまで余裕があるのか?」
「ま、正直あたし自身も半信半疑ですけどねぇ。でも、ま、実際余裕があるのは事実なんで」
「なら頼む。どうやら残りカスではダメだったようだ」
「はぁい」
そう言ってガリィはファラと呼ばれる人形へキスをした。何だろう。人形同士だと分かっていても妙な気分になる。と、そこでエルちゃんがトコトコと近寄ってきた。可愛いなぁ。
「あの、ズボンを履いた方がいいですよ? 風邪を引くかもしれません」
「あっ、そっか。ありがとう」
「なら俺を下ろせ。手を洗いたい」
「はいはい」
そんな事をやってる内にどうやらもう一体も起動したようだ。お姉さん風な雰囲気を漂わせて、ファラと呼ばれた人形が動き出したのだ。
「起動確認。マスター、ありがとうございます」
「礼ならこの男に言え。一応お前とガリィを目覚めさせた思い出提供者だ」
「は?」
「それがね、実はぁ……」
ガリィの耳打ちで何故か凄く信じられない者を見る目で彼女も俺を見てくるんですが……。ま、いいさ。そう思ってトランクスとズボンを履いた。さて、これからどうするか。そう思っていると、ファラとガリィがこちらへ近付いてきた。
「貴方が本当に私達を?」
「変わった体質してるわねぇ」
「……ま、それについては同意。その、もし良ければ質問しても?」
その言葉に二人は視線をキャロルちゃんへ向けた。キャロルちゃんはエルちゃんが持ってきたのであろう濡れタオルで手を拭っていた。
「マスター、こんな事を言っていますが?」
「どうしますぅ? やっぱ吸い取っちゃいますか?」
「止めろ。まだそいつは有用だ。それに、下手に殺せば装者達だけでなく巫女まで動き出す。さすがにミカが起動していない今はそれだけを相手取るには数が足りん」
「それに、その人にはまだ教えて欲しい事もあります。出来るだけ丁重に扱ってください」
「……だって」
エルちゃんの言葉にキャロルちゃんが何も言わない事。それがどういう意味かを理解したように、ファラとガリィは渋々俺の方へ顔を向けた。
「その、君達の名称なんだけど、どういう意味? オートスコアラーって直訳すると自動記録員とかだけど」
「答えられません」
「そ。答えが知りたければマスターに聞くのね」
「そうか。なら次だ。君達の服の色は何か意味あるの?」
「あるといえばあるけどぉ……」
「マスター、どこまで言ってもいいのですか?」
「計画の根幹に関わらない部分はいくらでも話せ。それ以外は何も言うな」
端的なキャロルちゃんの返しに俺は首を傾げる。つまりオートスコアラーの意味は計画とやらの根幹部分らしい。で、服の色云々はそうではないか判断し辛い部分らしい。この調子で色々聞いてみよう。
「じゃ、別の事にするよ。さっき思い出がどうこう言ってたけど、それはどういう意味?」
「……私達は人の思い出をエネルギーとして動くわ」
「そういう事。本来は自分達でもそれを吸収出来るのだけど……」
「俺のスープの方が効率が良かったと。で、仮に思い出を吸収された人はどうなるんだ?」
「廃人って奴かしらねぇ」
「他に質問は?」
さらっと返したけど、かなり恐ろしい事を言っている。つまり、俺がキャロルちゃんに連れてこられなかったら、どこかで誰かが廃人にされていたって事か。ん? 待てよ……? たしかさっきそれが沢山いるみたいな事を言っていた存在がいたような。
「えっと、じゃあ最後。ミカって子の起動と運用をスープじゃなく思い出でやるとしたら、どれだけの人数が必要なの?」
「個人差はあるけど、起動だけでも大体百はいるかしら? 運用自体も近いぐらい必要ね」
「しょぼいのだともっといるわよ。あいつ、大食らいなんだから」
「……そう」
これぐらいでいいだろう。さて、ならそろそろかな?
「申し訳ないですがこれが精一杯です風鳴さん」
『十分だ。必ず助け出すから待っていてくれ』
その瞬間、俺の喉元へ突きつけられる二対の刃。一つはファラのもので、もう一つがガリィの片手に現れた氷の刃。それが俺の首筋へ二筋の赤線を流させる。
「……そうか。何故あの場所へ巫女が現れたかと思ったが通信機か」
「正確にはスマホ。渡すから壊さないでくれると助かる。電源切れば探知も出来ないから」
「マスター、やっぱこいつ殺すべきです」
「私も同感です。今のだけでも十分かと」
先程と何も変わらない口調だけど、表情はとても冷たい。正直怖いが、俺は殺されないという自信があった。だからこそ敢えて自分から本部との通信手段を教えたのだから。
「どうぞ。でも、一つだけ言わせてもらうなら、そんな事したら君達の目的は頓挫するんじゃない?」
「どういう意味ですか?」
「エルちゃん、多分だけど今のでみんなはここの位置を大体把握したはずだよ。正確な位置は無理だろうけど、時間をかければ分かるぐらいにはね。その時間がどれだけか分からないけど、その間にどうやって百人以上もの人間を襲って思い出を奪うの? しかも、それをしても起動出来るか出来ないか分からない。更に行動させるにはもっと思い出が必要で、それは継続しなきゃいけない。更にもう一体は起動さえしていないのに。そんな状況で君達は複数のシンフォギアとフィーネを相手に目的を達成出来るのかな?」
出来る限り余裕を漂わせてはっきり告げた。正直内心バクバクで、今にも吐きそうなぐらい緊張しているし怖い。それでも、ここでハッタリを貫かないと折角見えてきたハーレムが消え失せる。それだけは嫌だ! しかも子供まで出来たんだ! 何が何でも生き残ってやる!
「それに、今のは俺なりの誠意だよ。あのまま黙ってバッテリーの続く限り質問しても良かったんだ。だからさっきまでのは、ここへ強制的に連れてこられた事への慰謝料代わりだと思って欲しいな。で、ここからはもう大人しくするって言う意思表示。ほら、これを預けるよ。正直壊されたくないけど、もし壊すならカバーだけは外して。大切な物なんだ」
「……そこに発信機があるかもしれん」
「調べれば分かるでしょ? 最悪壊すなら、そこのプリクラだけでも回収させて。それなら構わないだろ?」
俺がそこまで言うと、ガリィが剥がせとばかりにスマホを突き出すので何とか剥がそうとするも、やはり綺麗に剥がれない。そこで思いついた。
「ガリィ、このカバーを冷やしてくれない? そうすれば粘着力が落ちて剥がせると思うんだ」
「え~? あたしがぁ?」
「中々頭の回りがいいな。ガリィ、やってやれ。こういう発想力は俺も嫌いじゃない」
「はぁい」
こうしてガリィによって冷やされたプリクラは何とか綺麗に剥がす事が出来た。そして哀れスマホはファラによって見事に切断。お亡くなりになりましたとさ。この後、俺はエルちゃんに案内され彼女……なんだろうか。とにかくエルちゃんの部屋というべき場所へ。仕事部屋と言っていた通り、かなり散らかっていたが、俺の寝床はその隣の空き部屋。ベッドが一つあるだけの簡素なもの。
「ま、ベッドで寝られるだけ有難いかな?」
「すみません。出来るだけ必要な物は用意しますから」
「別にいいよ。あ、そうだ。エルちゃんってキャロルちゃんの妹なの?」
「いえ、僕はキャロルのクローンみたいなものです。ただ、性別はありませんが」
「……はい?」
そこで聞かされる簡単なエルちゃんとキャロルちゃんの話。どうやらあの子のタブーは父親らしい。ちなみにエルちゃんに下半身を見せてもらいました。うん、つるつるだった。女性器のようなものはあったけど、機能はなくただ排泄用に存在するだけとの事。
「ありがとうエルちゃん、今日はもう疲れたから寝るね」
「はい、おやすみなさい」
これが俺のシャトーでの生活の始まり。そしてキャロルちゃん達との奇妙な日々の始まりでもあった……