※この作品はR-18です。

淫姫絶頂したいフォギア   作:拙作製造機

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響とキャロルの対話。そして、遂に出現のキャロル大人モード。これでGX本編は終わりのようなものです。ウェル博士? 未だに物扱いで保管されていますよ。舌噛みそうな聖遺物は必要ないのでね。


向き合う勇気と向け合う想い

 シキさんがいる場所への入口。それを探して走る私の前に、突然女の子が現れた。エルちゃんと同じ顔。てことはこの子は……。

 

「キャロルちゃん?」

「そうだ、と言ったらどうする?」

 

 キャロルちゃんはどこか赤い顔で私を見つめる。え、えっと……これってどういう事なんだろう? 私に好意を持ってるはずないし、風邪でも引いてるとか?

 

「うん、とにかく病院連れて行こう」

「何を言っているんだ貴様はっ!」

「ふぇ? あ、声に出てた? ごめんね」

 

 怒鳴られてしまった。しかも、もう赤みは引き始めている。今残ってるそれは、きっと私を怒鳴ったからだ。そんなキャロルちゃんは私を見て何故か複雑な表情をしていた。何だろう? 何か私に気になる事でもあったかな?

 

「……どこかシキに似ているな。まあいい。最後の忠告だ。シキの事は諦めて仲間を連れて帰れ」

「うん、やだ」

「……どうしてもか?」

「どうしてもだよ」

「貴様らが死ぬかもしれないぞ?」

「大丈夫。シキさんを哀しませたくないから絶対死なないよ」

 

 はっきり言い切る。私達は約束したんだ。絶対シキさんを連れ戻して文句を言うって。それに、今の会話で少しだけ分かった事がある。シキさん、キャロルちゃん達まで絆しちゃったんだって。何せ、キャロルちゃんがさっきこう言った。私達が死ぬかもしれないって。殺す、でも、死ぬ、でもない。死ぬかも、なんだ。

 

「キャロルちゃん、シキさんの事好き?」

「…………かもしれん」

「そっか。じゃあ、私達の気持ち、少しは分かってくれる?」

「……少しならな」

「大好きな人なんだ。赤ちゃん産みたいって思うぐらい。家族になりたいって思うぐらい。ずっと一緒にいたいって思うぐらい。それでも返してくれない? 一緒にシキさんと家族になるんじゃダメ?」

「無理だ。俺はそふとくりーむを半分食べられただけで嫌になる。お前はどうだ?」

 

 突然の話に目が点になるけど、すぐに考えるまでもなく答えが出た。

 

「無言なら嫌だな。でも、謝ってこられたら許しちゃうかも」

「……そうか。お前はやはりあいつに似ている」

「じゃ、今度は私から。キャロルちゃんはソフトクリームって普通の奴が好き? 私はチョコとかイチゴとかが好きなんだけど、一番美味しくて贅沢なのってミルクとのハーフなんだよね」

「…………俺もチョコとのハーフが好きだ」

「じゃ、それと一緒だよ。シキさんがコーンで、私達がクリーム。単体よりも両方入った方がお得だし美味しい。ダメ、かな?」

 

 私の目を真っ直ぐ見つめてキャロルちゃんは首を縦に振る。そっか。やっぱりそうなんだね。この手を握り締めるしかないみたい。だけど、それはずっとじゃない。キャロルちゃんに私達の気持ちをぶつけて分かってもらうんだ。そして、その後でもう一度手を開いてみよう。今度は伸ばした手を掴んでくれるように。

 

「どうやら覚悟は決まったようだな」

「うん、決まった。絶対シキさんを連れ戻してキャロルちゃんとも仲良くなるっ!」

「……本当にあいつも貴様も……」

 

 何かキャロルちゃんが呟いてため息を吐いた。そしてその上に現れる竪琴のような物。何だろ、あれ。何か嫌な予感がする。

 

「貴様達が身に纏うのが奇跡なら、俺が纏うのは願望だ。もう二度と失いたくない。もう二度と……俺からパパを奪わせはしないっ!」

「パパ?」

「貴様達が奪うと言うのなら、俺が、俺達がその奇跡を打ち砕く! その希望を追い払う! 何するものぞ、シンフォギアぁぁぁぁぁっ!」

 

 キャロルちゃんの叫びに反応するように竪琴の糸がその体へ伸びていく。それに伴って、キャロルちゃんの体がどんどん変化していく。手や足が伸びて、体まで成長してまるで大人の女性みたいになっていく。気が付けば目の前には一人の大人の女性がいた。

 

「これぐらいあれば足りるか。さあ行くぞ小娘」

「うん、いいよ。絶対一緒に帰ろうね、キャロルちゃん」

 

 共に笑みを見せ合う。おかしいな、これから戦うのに。でも、笑いが込み上げてくるんだ。戦う事への高揚感じゃない。絶対仲良くなれるって思えるからだ。それをキャロルちゃんもどこかで感じてるんだと思う。だからこそ、けじめをつけたいんだ。私達かキャロルちゃんか、どっちがシキさんを大事に思っているかを。そのために歌うなら、これしかないっ!

 

「何故、どうして? 広い世界の中で」

「嗚呼、終焉への追走曲が薫る」

 

 私とキャロルちゃんの歌声が響き合う。だけど、それは重なる事なくぶつかり合う。今はそれでいい。私の気持ちとキャロルちゃんの気持ち。それをぶつけ合って分かり合おうとするしかない。お互いに納得出来るように。勝ち負けじゃない。これは、相手と共鳴するための通過点だ! だから退けない。だから譲れない。戦いたい訳じゃないけど、戦わないといけない時があるって、今の私は知っている。シキさんも戦ったんだ。自分なりのやり方で。なら、私も自分なりのやり方で戦ってみせるんだっ!

 

 

 

「装者達が押されている、だと!?」

「各装者共にイグナイトモジュール稼働中! ですが、それでもオートスコアラーに届きませんっ!」

「響ちゃんのフォニックゲイン、上昇中っ!」

「ダメね。それでも僅かに足りないわ。あのキャロルって子、やはりイグナイトの出力限界を知っているみたい」

 

 了子さんの言葉に発令所の全員が顔を動かした。僕も同じだ。だって、そんなはずは有り得ないからだ。イグナイトモジュールによる出力上昇は、キャロルだって正確な数値を予測しようがないはずなのに。

 

「了子君、説明を頼めるか?」

「簡単よ。いえ、種が分かればを付けるべきかしら? エルちゃん、あなたはあのキャロルって子のクローンに等しいのよね?」

「は、はい。正確にはホムンクルスですけど」

「本来であれば彼女のスペア扱いだったんじゃない?」

 

 その問いかけに僕は頷いた。すると、ナスターシャさんが目を見開いて僕を見た。

 

「では、彼女はエルの感覚を通してこちらを?」

「さすがですわ、ナスターシャ教授。私もそうではないかと思っています」

 

 僕もそのやり取りだけで分かってしまった。そうか、僕がここにいるからキャロルは今まで何も動かなかったんだ。

 

「僕が、キャロルの目であり耳だったんですね?」

 

 噛み締めるような問いかけに了子さんは悲しそうな表情で頷いてくれた。否定したり誤魔化したりしないところが了子さんらしい。見ればナスターシャさんも辛そうな顔をしている。ごめんなさい。僕はお二人の研究も手伝ったり、横から見せてもらったりしていました。それもキャロルに筒抜けだったなんて。

 

「気にする必要はないぞ、エルフナイン君」

「え……?」

 

 そこへ告げられたのは、風鳴司令の力強く通る声。その響きが僕の中の沈みそうな気持ちを上向かせる。

 

「データだけで全て片付くのなら、俺達はこれまでの事でとっくに終わっている。その弾き出されたものの上を行くのが彼女達だ。だから信じて前を見つめるんだ。君も、我々S.O.N.Gの一員であり、仲間なのだからなっ!」

「風鳴司令……」

 

 胸が熱くなった。僕に、ここにいる資格があると言ってくれたのだ。何一つ恥じる事なく前を見ろと。

 

「そうよ。気にしないでいいわエルちゃん」

「そうだぞ。お前が自分の意思でスパイをした訳じゃないだろ?」

「友里さん、藤尭さん……」

 

 笑顔で僕を見てくれるお二人に、僕は瞳が潤んでくるのを感じていた。何て優しく強い人達だろう。この人達から僕は仲間だと認めてもらえるなんて。

 

「ほら、エルちゃん。泣いちゃダメよ? 涙は最後までとっておきなさい」

「これを使っていいですからね」

「了子さん……ナスターシャさん……」

 

 僕の肩へ優しく手を置いてくれる了子さんとナスターシャさん。そして、差し出されるハンカチにこの前の事を思い出す。ああ、僕は幸せ者だ。ここの人達は本当にあったかい。キャロル、いつか君もここに来て欲しい。僕を通じて知っているなら、もう一度顔を合わせて話をしたい。

 

「エルちゃん、一緒に行こう? あの子とお話したいんだよね?」

「未来さん……」

 

 僕の目を優しく見つめ、未来さんは微笑んでくれた。その眼差しに僕は頷く。そうだ。キャロルともう一度話をしたい。今のキャロルなら、僕の言葉が届くはず。シキさんをパパと呼んだキャロルなら!

 

「風鳴さん……いえ、司令。お願いです。私をエルちゃんと一緒に響の、あの子のところへ行かせてくださいっ!」

「お願いします! 行かせてくださいっ!」

 

 未来さんと揃って頭を下げる。すると、少し間を置いて僕の肩へ大きくてあったかい手が置かれる。見れば未来さんもだ。

 

「分かった。だが、どんな状況であっても他の装者達の戦闘へ関わるな。君達は響君の場所だけを目指して行け」

「「はいっ!」」

 

 こうして僕と未来さんも現場へ急行する事になった。待ってて響さん、キャロル。この争い、必ず止めてみせるからっ!

 

 

 

 俺は目の前のモニタの中で繰り広げられる光景を、ただ見ている事しか出来なかった。奏が、翼が、クリスが、マリアが、切歌が、調が、セレナが、そして響までも苦戦しているのを。たしかにキャロルちゃんの言った通り、ギア側のダメージは多いものの、致命傷には至っていない。でも、それはガリィ達がどこかで加減しているからだと分かる。何故なら、未だにガリィ達に焦りはなく、逆に奏達の方に焦りが見えているからだ。

 

「不味い……このままじゃ……」

 

 例えガリィ達に殺意はなくとも、何かの拍子でその結末が訪れる事は十分考えられる。それが奏達へかガリィ達にかは分からない。けど、その最悪の結末を避けるには俺がみんなの前へ行くしかない。間に合うか分からないけど、それでも動かないよりはマシだ。そう思って俺はその場から走り出す。真っ直ぐに、一直線に、最短距離で出口を目指す。

 

「くそっ! ホント、今更過ぎるよな、俺! あの時、無理矢理にでも一緒に行くべきだったんだっ!」

 

 ガリィ達の時も、キャロルちゃんの時もここで待っていて欲しいとお願いされた。その気持ちが嬉しくて、結局折れてしまった。そう、折れてしまったんだ。マリアに言われてたのにな。約束したのに。貫くって。本当にダメな奴だ、俺はっ!

 

「なっ!?」

 

 考え事をしていたからか、何かに躓き転ぶ。痛みが体中を襲うも、それでも俺は立ち上がる。止まっている暇はないからだ。擦り傷やら打ち身なんて何て事ない。いつかは治るんだ。だけど、もし命が失われたらそれは何があっても治らない。ああ、本当に馬鹿過ぎる。考え無しで動いてばかりいるからこうなるんだ。

 

「せめて絆創膏でも持ってくるんだった」

 

 痛む体で走り出そうとして、俺はふとズボンのポケットに何かある感じを覚えた。何も入れてなかったはずだけど。そう思いながら俺はその感覚のする方へ手を入れる。何か入っている。取り出してみて、俺は息を呑んだ。それはキャロルちゃん達が移動用に使っている結晶のような物。そして、俺はこれを見た事がある。そう、今日ガリィ達が使うのを。

 

「もしかして……これを使えばガリィ達のところへ行けるんじゃ?」

 

 その瞬間、俺はこれがキャロルちゃんからの贈り物だと気付いた。あの最後のキスの時、抱き着いてきたのはこれを密かに渡すためだ。気付けばよし。気付かなければそれはそれでよしと。

 

「……本当に素直じゃないんだから」

 

 笑みを浮かべて、俺はその結晶を地面へ叩き付ける。一分一秒が惜しい。今は少しでも早く奏達とガリィ達の争いを止めるんだ。そして光に包まれ次に見たのは、こちらへ向かって突き出される氷の刃と驚くガリィの顔だった。

 

「っ!? チッ!」

 

 すぐさま刃を消して距離を取るガリィ。俺はあまりの事にその場で硬直していた。と、その背中に感じる温もりと柔らかい感触がある。それだけで俺はそれが誰か分かった。忘れるはずがない。間違えるはずもない。俺の愛する女だ。最愛の一人だ。更に言うなら、俺の心を大きくかき乱してくれた存在だ。

 

「その、もしかしてバッドタイミングだった?」

「そうね。でも、結果的に私としてはグッドタイミングだったわ。これで奏に自慢出来るもの」

 

 返ってきたのは優しい声。でも、どこかくぐもっていたように感じた。それを口にする事はせず、俺はその場で大声を出した。喉が潰れてもいいと思う程の、大きな声を。

 

―――もう止めてくれぇぇぇぇぇぇっ!!

 

 その叫びに周囲の視線が一斉に動いた。そして、俺の姿を見て一瞬だが戸惑い、それでもすぐさま走り出してこちらへ向かってる女性達。中でも一番早かったのは、やはり彼女。

 

「シキぃぃぃぃぃっ!」

「奏っ!」

 

 飛び込んでくる奏の体を何とか受け止める。出来たのは、密かにマリアが後ろから支えてくれたから。きっと奏もそれに気付いている。だけど、嬉しそうに俺の顔を見つめ―――キスされた。

 

「奏っ! ズルい!」

「そうだぜ先輩っ! あたしだって気持ちは同じだっ!」

 

 続いて翼とクリスが両脇から抱き着いてくる。ああ、懐かしいなこの匂いも。久しぶりの彼女達の匂いだ。俺の好きな、愛する女達の匂いだ。

 

「アタシ達もいるデスよ!」

「シキさん、心配しました」

 

 切歌と調はマリアの両側、つまり後ろ側面から抱き着いてきた。なので軽く腕を動かして翼とクリスに気付いてもらう。俺が年下二人を撫でてやりたいのを察し、二人は苦笑しつつ腕を解放してくれた。その後すぐに抱き着いてきたけれど。

 

「シキさん、ここにも一人いるんですけど?」

 

 どこか拗ねた声でセレナが奏の後ろから顔を出した。そこでやっと俺の口も解放される。

 

「ごめん、セレナ。それに翼も、クリスも、切歌も、調もだ。本当にごめん。最低な戦い方と最悪の結果しか出来なかった」

 

 心の底から詫びる。そして視線を複雑そうな表情でこちらを見つめるガリィ達へ向けた。

 

「それに、ガリィやファラ、ミカとレイアも本当にありがとう。俺のために彼女達を殺さないようにしてくれたんだろ? 結局、俺が事態を余計複雑にしたんだな。本当にごめん」

「べっつにぃ? あんたがその女達の方を優先してたのは分かっていた事だし?」

「ええ、だからこそ本当は仕留めておきたかったのですが……」

「意外と粘られたゾ……」

「派手な結果に出来ず、地味に残念」

 

 その声には諦めの色が見えた。きっと奏達もそれが伝わったのだろう。誰からともなくギアを解除していったのだ。そして俺は奏に一度だけ顔を向ける。それだけで悟ってくれる彼女は本当に凄い。呆れるように笑うと小さく頷いてくれたのだ。それに俺も頷き返し、ガリィ達へ近付いて行く。

 

「その、ずっと世界を巡るのは無理だけど、たまにみんなで出かける事とかは出来ると思う。それじゃダメかな?」

「……マスターが頷けばね」

「そうですね。全てはマスター次第」

「ま、ミカはそれでもいいゾ? ウマいもん食えるなら」

「私も派手な事をさせてもらえるなら構わない」

 

 よし、ガリィ達の事はこれでいい。後はキャロルちゃんだけだ。そう思って走り出そうとして、俺は何故か腕を掴まれた。振り返るとそこにはとても良い笑顔の奏達がいる。しかも何故か再びギアを纏って。あ、分かった。この流れはそういう事だ。視線を後ろへ戻せばガリィ達が楽しげに笑っている。

 

「シキ? そういえば、どうやらその四人と楽しくヤってたみたいじゃないか」

「えっと、それは……まず、槍は下ろしてくれない?」

「分かっています。要さんなりの考えがあっての事だと。ええ、分かっています」

「うん、刀も下げて?」

「でもな? だからって全て許せるって訳じゃねえんだ」

「銃口、向けないで?」

「そうね。私達は本気で心配していたの」

「うん、とっても」

「姉妹揃っての笑顔がここまで怖いなんて……」

「なのにシキさんは毎日毎日エッチな生活デスか」

「いくら生き残るためとはいえ、やり過ぎだと思います」

「うわぁ、鎌と鋸が首元にあるってヤダなぁ」

 

 生きた心地がしない。四方八方をアームドギアで囲まれるなんてな。ハーレムが夢だけど、一番最初に経験するのがこんなハーレムとか勘弁だ。でも、仕方ない。今回に関しては俺が全面的に悪いのだから。と、そこへ現れる二人の人物。

 

「あれ? 戦闘が……」

「シキさん、無事だったんですね!」

「小日向さんにエルちゃん? どうしてここに?」

 

 しかも小日向さんはギアを纏ってる。そしてエルちゃんはその腕に抱えられていて、若干小動物みたいになっていた。うん、可愛い。

 

「えっと、私達は響のところへ行こうと」

「そうだ! シキさんも来てください! キャロルを止めないと!」

「えっと、それなんだけどさ。キャロルちゃんはもう計画を捨てたんだ。今は俺達と世界を見て回る旅をしたいって考えてる」

 

 そう答えた瞬間、奏達七人の目が鋭くなった。ああ、そういう事ね。俺がキャロルちゃんまでそういう事をしたと思ったんだろう。なのでこの中で一番嘘を吐けないだろうミカへ視線を合わせる。

 

「ミカ、俺はキャロルちゃんに変な事してないって証言して」

「ん? おお、いいゾ。シキはマスターにウマいもんあげてないゾ。それにキスもしてないゾ」

「……どうやら信じて良さそうだね」

 

 奏の言葉に頷く装者達。小日向さんだけは小首を傾げていたが、その表情がすぐに真剣なものへと変わる。

 

「でも! 響と戦ってるキャロルちゃん、大人になってて!」

「は?」

「あー、マスターのファウストローブよ。あんた達のそれと似たような物」

「という事は、マスターは思い出を失う覚悟なのでしょうか?」

「ん~? でも、今失うとしたら、それはシキとの思い出になるゾ?」

「それは地味に有り得ない。派手に戦うためにマスターがそんな浅慮をするはずないな」

 

 ガリィ達の話だけで奏達が俺を見る。先程ぐらいの鋭さはないが、じと目ではある。うん、本当にこういう時の女性の勘は凄い。だから俺は隠す事なく話した。キャロルちゃんに頼まれてキスはした事を。その際、ガリィ達の稼働分ほどでいいと言われた事も。それらを聞いてガリィ達は納得するように頷いた。

 

「じゃ、早く行きなさい」

「俺?」

「マスターとそちらの装者は貴方を待っているのです」

「そうなの?」

「だから未だにマスターは全力を出してないんだゾ」

「というと?」

「マスターが全力を出す時は、その思い出のほとんどを派手に焼却する必要がある。それをすれば、シキとの記憶どころか亡くなった父との記憶も失うだろう」

「成程」

 

 全てを理解した瞬間、俺の体は浮いていた。翼が掴んで駆け出していたのだ。その足のブースターを噴射する事で。

 

「つ、翼?!」

「喋らないでください! 舌を噛みますから!」

「でも!」

「立花は本気で相手を止めようとします! なら、キャロルが本気になってしまう前に要さんが止めに入るべきですっ!」

 

 その返しに俺は納得するしかなく、そのまま翼によって運ばれていく。すると、その後ろから小日向さんとガリィが追ってくる。よく見ればエルちゃんがガリィに抱えられていた。氷で道を作るようにして移動する分、ガリィの方がエルちゃんを運ぶには適任って事か。

 

「私は響を止めますっ!」

「ぼ、僕はキャロルと話がしたいんです!」

「て、事らしいわ。ったく、何であたしがこんな事を……」

 

 ぶつぶつぼやきながらもしっかりエルちゃんを抱えている辺り、ガリィも可愛いとこがあるよなぁ。そんな事を考えつつ、俺は顔を後ろへ向ける。そう、つまり翼にとっての前を。聞こえてきたからだ。ぶつかり合うような歌声が。目を凝らせば二つの影が動いているのが見える。

 

「響ぃぃぃぃぃぃっ!」

「キャロルぅぅぅぅぅっ!」

 

 小日向さんとエルちゃんの叫びがこだまする。すると、その瞬間二人が同時にこちらへ振り向いた。

 

「未来っ?! それに翼さんも!」

「エルフナイン? ガリィと……シキもいるのか」

 

 よし、とりあえず二人の戦闘は中断された。そう思って安心していると、小日向さんはそのまま響へ抱き着いていく。エルちゃんはガリィに下ろしてもらい、キャロルちゃんの前へ。それにしても、キャロルちゃんって本当はあの姿なのかな? それとも、実際はいつもの姿でこれは戦闘用なんだろうか。いつか聞いてみようと思う。

 

「響っ! 無事で良かった!」

「大げさだなぁ未来は。でも、アリガト」

 

 うんうん、仲良きことは美しきかな。ま、多分後で響にも本気のお怒りを受けるだろうから、今は関わらないようにしよう。

 

「キャロル、僕を通してS.O.N.Gの皆さんの事は知ってるね?」

「……だとしたらどうする?」

「僕と一緒に行こう。そして、そこでパパの命題を解くんだ」

「それならばもう俺は答えを、いや解き方を理解した。だからシキを返す訳にはいかない」

「キャロル……」

 

 はっきりとしたキャロルちゃんの言葉にエルちゃんが目を見開いた。けれど、すぐに嬉しそうに微笑んでキャロルちゃんを見つめる。見れば翼も同じ顔をしていた。

 

「なら、こう返せばいいのかな? パパを奪われた気持ちを、響さん達やシキさんにもさせるの?」

「っ!? そ、それは……」

「キャロル、と呼ばせてもらおう。君はどうやらエルと同じく優しい心根の持ち主のようだ。だからこそ、私達としても要さんを奪ってしまうのは心苦しい。どうだろうか? 先程要さんがガリィ達へ提案していたのだが、ずっとではなくたまに旅をするぐらいではダメだろうか」

「何?」

「マスター、あたしはその辺が落としどころだと思いますよ? これ以上やってどっちかに死人でも出たら、こいつが自殺しかねませんし」

 

 ガリィの指摘に俺は深く頷いた。間違いなくそうなったら俺は生きるのを諦める。いくら他に残った女性達が止めようと、一人でも俺のせいで失ったのなら耐えられない。要するに俺は自分勝手なのだ。愛している女達を泣かせても、結局自分のしたい事をしてしまう。ああ、本当にダメな奴だよ俺。これでよく奏達の相手になれたな。本当にスープありきだわ。

 

「……だが、それではガリィ達の稼働が」

「戦闘しないなら今回のように溜め込めば平気じゃないの?」

「っ! お前は黙っていろ!」

 

 疑問を口にした途端怒鳴られた。それを見た響達が笑う。エルちゃんは何がおかしいのか分からず小首を傾げ、俺は怒鳴られたから苦笑するしかない。

 

「キャロルちゃん、そうまでしてシキさんとずっと一緒にいたいんだね?」

「でも、ごめんね? 響達も同じ気持ちなんだ」

「すまんがずっとは諦めて欲しい。その分、住む場所などは同じにしてもらって構わない」

「え? ちょっと翼? 何で勝手に」

 

 というか、キャロルちゃん達と同居となると確実今の部屋じゃ狭い。かと言って広い場所に引っ越せる程、俺は高給取りじゃないし。そんな事を考えていると、ガリィが呆れたように俺へ告げる。

 

「シャトーがあるじゃない。そこで暮らせばいいって言ってんのよ、そいつ」

「そうなんですか?」

「ああ、そうだ。元々居住用ではないと思うが、それを改造するぐらいなら要さんの給料でも何とか出来るはずだろう」

「えっと、エルちゃんってたしかシャトーの現場監督みたいなものだったよね? その辺、どう?」

 

 俺の問いかけにエルちゃんはキャロルちゃんへ一度だけ視線を向けた。それにキャロルちゃんはため息を吐き、小さく頷いた。するとエルちゃんが嬉しそうに笑顔を浮かべてこちらへ顔を向けた。

 

「大丈夫です! キャロルも手伝ってくれるみたいですし、小規模の改造なら時間もそこまでかかりませんっ!」

「……という事だ。どうやらこの勝負は引き分けらしい」

「違うよ、キャロルちゃん。みんなで勝ったんだ。もう分かれる必要、ないよ?」

「うん、響の言う通りだ。だから帰ろう。みんなで」

 

 笑顔で手を出し出す響と俺。それを眺め、キャロルちゃんは一度だけ大きくため息を吐いた。だけど、その後の表情は輝くばかりの笑顔。

 

―――本当に、お前達は……。

―――知らなかった? 響はいつだって戦った相手と最後には手を繋いじゃうんだよ。

 

 その俺の言葉に翼と小日向さんが力強く頷く。キャロルちゃんはそんな二人に楽しそうな笑い声を上げて姿を元に戻すと俺と響の手を掴んだ。それが終わりの合図だった。こうしてガリィがキャロルちゃんとエルちゃんを抱え、俺は再び翼に持ち上げられ、響と小日向さんを先頭に来た道を戻り出す。

 

「あっ、シキさん? 後で私から言いたい事があります!」

「うん、心して聞くよ。今回は完全に俺のせいでややこしくもなったしね」

「殊勝な心がけです、要さん。では、今日は寝れないと思ってください」

 

 翼の声の冷たさに俺は心底震える。初ハーレムタイムがそんな絶対零度とか嫌にも程があるぞ。だけど文句も不満も言えないので諦めて項垂れた。

 

「えっと、ご愁傷様ですシキさん」

「あの、未来さん。一体何をシキさんはされるんですか?」

「装者八人による大説教会だろう。まぁ、説教だけで済めばいいが」

「マスターも文句言う権利あると思いますよぉ? こいつ、こっそりあたし達を手籠めにしてたんですし」

 

 ガリィの言葉にキャロルちゃんは少しだけ自嘲気味に笑う。

 

「俺がそれに気付けなかっただけの事だ。自分の失態を棚上げし、他人へその理由を押し付けるなど俺には出来ん」

「うわぁ、キャロルちゃん立派ぁ。何か文句言おうとしてる私が情けなく思うよ」

「いや、響。俺に対しての事はそれでいいんだ。だって、響達は知りようも気付きようもなかった訳だし」

 

 本気でそう思う。そうしなければ俺の命が危なかったかもしれないけど、それでどこか調子に乗っていたのも事実。なので甘んじて彼女達の文句や不満は受け止める。それがせめてもの俺の男らしさだ。

 

「そんなものですか?」

「そんなもんだよ」

「見えた。奏達だ」

 

 そんな会話をしながら俺達は遂に全員集合する。響はクリス達と喜び合い、キャロルちゃんはファラ達へ事情説明。俺はそんな光景を見ながら、ふと思い出す事があってキャロルちゃんへ質問をぶつけた。

 

「ね、キャロルちゃん。ガリィ達に聞いたんだけど、アルカ・ノイズを他の錬金術師達が使役出来るって本当?」

「ああ」

 

 その瞬間、奏達の表情が曇る。そうだよな。だって、これで迂闊に妊娠出来ないって事だから。が、そんな俺達の雰囲気にキャロルちゃんは首を傾げつつ、驚くべき事を口にした。

 

「だが、心配はいらんぞ。俺が作ったものだ。いざとなれば制御は俺が出来る」

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

「当然だろ? 向こうがこちらへ手を出さないとも限らん。最悪を想定した細工はしてある」

 

 その、もっともと言えばもっともな意見に俺達は揃って顔を見合わせた。て、事はつまり……?

 

「もう、大規模なノイズ災害は起きない?」

「仮に起こせたとしても、すぐに無力化出来る。心配はいらんぞ。ま、これも何かの縁だ。生きていくためには金がいる。それ相応の対価を出せば俺の知識を貸してやらんでもない」

「キャロル、そんな言い方は」

「いや、いいよエル。キャロルつったね。あたしから風鳴の旦那に話は通してやるよ。きっと了子さん達みたいに雇ってくれるはずだ」

「そうか。ならよろしく頼む。パパはどうもそこまで財政に余裕がないようでな」

 

 奏の申し出にキャロルちゃんが答えた瞬間だった。装者のみんなが一斉に驚きの表情でキャロルちゃんを見る。

 

「「「「「「「「「パパっ!?」」」」」」」」」

「そうだ。こいつは考え方や雰囲気がパパにそっくりだ。それに、今後の事を考えると俺は子供として振舞う方が都合がいい。だからシキをパパにする」

「初耳なんですけど……」

 

 ここで俺も知らないとちゃんと言っておかないと不味い。だって、そうしないと奏やマリア辺りが煩いのは分かり切ってるし。どうやら俺が本気でそう言ってるのが分かったらしく、奏達は視線をキャロルちゃんへ向け続けていた。

 

「……ダメ、か?」

「…………昔の人は言いました。泣く子と地頭には勝てない。俺は、どうやら女子供にそもそも勝てないみたい」

 

 そう言うと一瞬の間の後、奏達が苦笑してくれた。こうして俺は風鳴さんへ頭を下げ、キャロルちゃんとエルちゃんを養子として引き取る事になった。ガリィ達も一応の戸籍を与えられ、こうして俺の誘拐に端を発した騒動は終わりを迎える。これからが大変になるだろうとの予感をさせながら……。

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