「ガリィ・ディーンハイム、ねぇ」
「そう。エルも苗字は同じだから。ただ、エルは」
「はい、聞いています。僕はキャロルと同じでマールスもいれるんですよね?」
「うん。エルは見た感じからして姉妹って思われるだろうからね。だからエルフナイン・マールス・ディーンハイムがこれからの名前」
俺の言った名前を小声で繰り返すエルが可愛い。義理とは言え娘となったので呼び捨てにする事にした。エルもキャロルも違和感なく受け入れてくれ、ぎこちなくではあるが親子ではなく家族として歩き出せたとは思う。さて、視線を動かせばキャロルはファラ達と何か話し合っている。おそらくこのシャトーをどう改築するか話し合っているんだろう。
「キャロル、とりあえず俺の部屋ぐらいで」
「何を言っている。いずれここに大勢の人間が暮らすのだ。先を見通した設計をしなくてどうする?」
さらりと返された内容に耳を疑う。えっと、大勢? どういう事だ? 了子と生まれてくる子は分からないでもないが、他に誰が……まさか。
「それって奏達?」
「当然だ。他に誰がいる?」
「マスター、ナスターシャ教授では?」
「あるいは今後増えるであろう子供かも」
「おー、子供部屋がいるゾ」
「ふむ、ミカの言う通りだ。こうなると父さんの稼ぎだけでは無理か」
疲れたようなため息を吐いて俺をみるキャロル。ちなみに呼び方も変えてもらいました。だって、キャロルのパパは一人だけだ。俺は似てるかもしれないけど別人。なので父さんにしてとお願いしました。理由も合わせて告げたら、キャロルが少しだけ驚いて、それから嬉しそうに頷いてくれた。エルも同じく。おかげで今はみんなから父さん呼びでからかわれる日々です。
「じゃ、僕らのお給料も」
「それでも限度がある。生活費だって必要なんだ。水道・光熱費に食費。最低でもこれだけは確保しなくてはならん」
「こうなるとシャトーって住み辛いのよねぇ」
「それでも、今後を考えればここで暮らすのが一番よ」
「地味に普通の暮らしでも家賃が高い。派手な部屋には派手な金額」
「だゾ」
レイアとミカの言葉に俺も頷いた。今の部屋だって結構ギリギリの条件だ。暮らせるのは精々が三人が限度。とてもではないがこれだけの人数は無理。俺とキャロルにエルなら余裕だが、ガリィ達を今更人形扱いにはしたくない。
「やはりあたし達も働くしかないかしら?」
「駄目よ。下手に動くと思い出が減ってしまう」
「で、肝心な時に動けないゾ」
「出来てマスターやエルの護衛。地味な仕事ね」
本当に困っているのがガリィ達の事だ。何せ強力だけども燃費の悪いミカを筆頭に、その原動力は人の思い出だ。俺のスープで賄えているからいいようなものの、このままでは碌な仕事は出来ない。キャロルもそこに頭を痛めているらしく、改良というかリミッター処理のようなものを施して少しでも思い出を使わないようにするしかないとの事。ただ、ここでも了子ならぬフィーネが興味を示してくれているのが救いかもしれない。先史時代の人間である彼女なら、キャロルさえ知らない事や気付かない事を提案してくれる可能性があるからだ。
「それだけでも違うよ。正直思い出を使わないと強力な攻撃が出来ないキャロルや、身を守る術がないエルは護衛がいた方がいいし」
「そちらは私やレイアでやるとして、問題は……」
「ん? ミカか?」
「以外にいないでしょうが」
ミカなぁ。正直人懐っこいし素直だしで、S.O.N.Gでも人気者になれると思うんだ。実際友里さんや藤尭さんにも可愛がられている。戦った切歌と調でさえお友達になってくれたぐらいに。ただ、いかんせん燃費が悪い。ガリィを基準としたら、その最低二倍、最高三倍以上もの消費量だ。
「いっそ省エネモードとかあればなぁ」
「「「「「省エネ?」」」」」
「あっ、そうですね。それはいい考えかもしれません」
疑問符を浮かべるキャロル達と一人納得するエル。そう、切り替えが出来ればいいんだ。普段は省エネ状態で、いざとなったら通常状態。キャロル達に分かり易く言えば、あのファウストローブを使うのが通常で、普段はそれがないようなもの。そう言ってやると、キャロルがふむと考え込む。実際、今の家電とかはそういうのが多くなってきているし、錬金術だって似た事が出来てもおかしくないだろう。さて、どうなんだろうか。
「キャロル、どうかな? 出来そうだと僕は思うんだけど」
「……要は待機状態と稼働状態ではなく、フル稼働と最低限稼働にすればいい訳だろう? なら何とか出来るかもしれん」
「了子さんやナスターシャさんの力も借りる?」
「そうだな……聞くだけ聞いてみよう。俺には現代科学の知識がない。そちらからも使える要素が出てくるかもしれない」
その返しにエルが嬉しそうに頷いた。今のキャロルは人の話をよく聞くようになった。どうも本来はそうだったらしく、変わってしまっていた事に気付いて少しだけ悲しげな眼をしてた。だけど、エルと揃って了子やナスターシャさんからは頼りにされている。何せ、これでS.O.N.Gは現代科学に先史文明の知恵、そこに錬金術まで加わった、まさしく人類の英知の最先端なのだから。
「じゃ、明日了子さん達に聞いてみよう」
「ああ」
すっかり仲良し姉妹といった感じの二人を見て癒される。これが下手をしたらケンカで済まないレベルの状況になっていたのかと思うとぞっとする。ま、キャロルもエルを妹として扱う事に異論はなかったのが良かった。実際似ているけど色々と違うからなぁ。性格もそうだけど、声や仕草も違うし、何よりも空気感が違う。ただ、二人して知的好奇心は強いのが姉妹って感じで和むんだけども。
「それにしても、世知辛いのねぇ」
「ああ、まさかあんなにも金がかかるとは」
ガリィとレイアの言葉にキャロルとエルが頷いた。それは戸籍取得のために必要になった金額である。地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもので、風鳴さん曰くそういう事は往々にしてあるそうだ。なので俺のなけなしの貯金を切り崩し、キャロル達の戸籍等を取得したとそういう訳。なので今の俺は一文無しではないものの、かなり厳しい財政状態と言える。今月の家賃は大丈夫だけど、来月から節約しないとなぁ。
「仕方ありません。元々いなかったものをいた事にするのですから」
「存在の錬金術だゾ」
「言い得て妙な表現だな。ミカって意外と頭いい?」
「どうだろうな。直感で要点を押さえている可能性は否めんが……」
「ん?」
こちらを不思議そうに見るミカに少しだけ気持ちが癒される。でも、本当に辛い。今までさして金銭面で困る事はなかったから余計に。キャロルとエルの稼ぎに俺のを加えて一月で…………うん、しばらく改造は諦めよう。
「キャロル、エル、相談があるんだけど」
「「ダメだ(です)」」
「……え?」
何故か内容を言う前に却下を喰らってしまった。何故?
「どうせ改造を先延ばしにするべきだと言うつもりだろう」
「そう、だけど……」
「それじゃ、いつまで経っても父さんと一緒に暮らせません!」
「まったくだ。大体、今とて一人で部屋へ帰って過ごしているというのに」
「寂しいんです」
うわ、義理の娘にでもこう言われると心にくるものがある。何というか、すごく申し訳ない気持ちになってきた。でも、仕方ないんだ。捕まっていた時は我慢出来るけど、今だとここの暮らしは結構辛い。と、そこで思いついた。
「ね、こういう事出来ないかな?」
その俺の思いつきにキャロル達は驚き、考え、検討してみる事となる。もし上手く行けば住宅問題はかなり改善出来る。将来の事を考えても割といい案だと思うし。とりあえずこの日はみんなでおにぎりを作って晩御飯。それだけでは寂しいので玉子焼きとあおさのみそ汁も付けて。
―――う、上手く出来ないな……。
―――ちゃんと三角にならないわねぇ。
―――地味に上出来。
―――こちらもって、ミカ? 作ったそばから食べないの。
―――ウマいウマい。自分で作るからウマいゾ。
―――父さん、どうでしょう?
―――うん、いいと思うよ。あと、手で握るのが難しいならこういう小技が……。
こうしてシャトーでの夕食は過ぎていく。少しずつ和食や洋食にも触れ、ゆっくりと人らしい生活を送り始めたキャロル達を見て俺は笑顔を浮かべた。いつか、ここに奏達も来るのかと。その時はきっと賑やかで楽しい時間になる。それだけを心から願って俺は帰宅の途に着くのだった……。
「で、どうしているのかな?」
「だ、ダメでしたか?」
マンションの部屋前にいる帽子と伊達メガネで変装した女性。青みがかった黒髪が綺麗な翼である。
「その、以前約束していたデートの件で話したい事があって」
「電話とかじゃダメだったの?」
「……要さんに会いたかったから」
小声で告げられた本音に思わず顔が熱くなる。あの風鳴翼が女をここまで見せてくれる。それが嬉しくまた喜びだった。そう言われたらもう入れるしかない。それに、そもそも彼女もマリアや奏と同じで自由になる時間が少ないはずだ。それを割いてまで来てくれたのに追い返すのも気が引ける。
「見られたりしてない?」
「そこは大丈夫です」
「ん。じゃ、中へどうぞ」
「っ! はい、お邪魔します」
嬉しそうな笑みを見せて俺の部屋へ入る翼。何というか、俺が初恋の相手だからか感情表現が素直なんだよなぁ。ま、そんな事言い出したら装者の子達、みんな俺が初めての相手なんだけども。これって、やっぱり凄い事だよな。そして、最低な事してる。でも、だからこそ途中で諦めたくない。今は義理の娘が二人出来たしね。
「それで、デートの事だったよね」
「はい。その、泊まりにしたいと私が言って」
「うん、それは聞いてる。もしかして日帰りじゃなきゃ無理?」
そうなると予定を考え直さないといけない。行先とか流れとか。そう考えていると翼が慌てて手を動かす。
「いえ、それは変わりません。変わらないんですが……」
「どうかした?」
「その、叔父様から私の父が要さんの事を知ったらしく、一度連れて来なさいとそのデート予定日を押さえられてしまって」
「……えっと、つまりお泊りデート前に翼の親父さんと対面?」
俺の問いかけに小さく頷く翼。どうやら風鳴さんとしては可愛い姪に気を遣ったんだろう。おそらくこうでもしなければ俺は風鳴家へ足を踏み入れる切っ掛けがなかっただろうし。ハーレム大いに結構。だが、取るべき責任や果たすべき義務は男としてしっかりしろと、こういう事かね。
「じゃ、お泊まりデート前に翼の親父さんの許可を取ろうか」
「っ!? い、いいんですか?」
「むしろいつかはご挨拶に伺いたいと思っていたし、丁度良かったよ。お忙しい方なんだろ?」
「はい……」
「なら、親父さんから都合を付けてくれたのは有難い。当日の案内、頼める?」
「はい、分かりました。お父様に会う、のか……」
どうやら訳ありのようだが、そこは詳しく聞かない方がいいかな。翼も聞いて欲しくなさそうだし。さて、ではこれからどうしようかな。そう思って翼へ視線を向けると何かを期待するような眼差しを向けられる。これって、やっぱりそういう事か。
「翼」
「っ……は、はい」
「時間もあれだから途中まで送ろうか?」
「……要さんのいじわる」
やばい。超可愛い。軽く頬を膨らませ、上目でこちらを睨む翼なんてレアだな。仕方ない。これは奏に怒られるかもしれないけど、翼相手なら許してもらえるだろう。
「ま、そうだよな。念には念を入れて早朝出て行く方がいいか」
「……一緒に?」
「……起こしてくれるのなら」
「任せてください。ちゃんと起こしてみせます」
「うん、ならエッチは控えめにしようか」
「っ! そ、それはぁ……ううっ」
本当に可愛い。なのでいじめるのはこれぐらいにする。さて、なら久しぶりに翼の泡姫プレイを堪能しますか。そう思って翼を風呂へと誘うと、向こうも俺が何を考えているかを察してくれたらしく、少しだけ顔を赤めて頷いてくれた。
「では、始めますね?」
「うん、お願い」
全身を泡だらけにしての翼のボディースポンジ。久しぶりの行為に否応なくテンションがあがる。翼も俺のそれが分かったのか、妖艶な笑みを浮かべてまずは背中へその体を押し付け上下させる。
「んっ、要さんの背中で乳首が擦れる……。ダメぇ、私が気持ち良くなっちゃう……」
「おいおい、早過ぎるだろ翼」
「だってぇ、要さんとのエッチ久しぶりなんだもん。最近はごっくんだってさせてもらえてなかったし……」
口調が甘くそして拗ね気味。これはどうやらスイッチが入ったらしい。翼なりのけじめのようなものだ。普段の防人状態は敬語を使うけど、エッチなどをする時はそれが消える。つまり、ただの風鳴翼という切り替え。
「ごめん。そうだよな。じゃ、背中じゃなくてこっちをお願い」
「あっ……」
反り返る程に勃起したチンポを見せるとその顔がすぐに惚けたものへ変わる。その表情のまま彼女は俺の胸へ自分の体を押し付け、更に片手でチンポを扱き始めた。
「ああっ、こんなに熱い。要さんも私と繋がりたいって言ってくれてる」
「そうだよ。出来る事ならずっとそうしたいさ」
「んっ、私もずっとオマンコしていたい。要さんのチンポを入れて過ごしたい。マリア達にも、奏にだって渡さないで」
「翼……」
「私が女になれるのは貴方の前だけ。私を女に出来るのは貴方だけ。そして、私を母にしていいのも貴方だけ」
熱っぽい眼差しで俺を見つめながらチンポを扱く翼。それだけでなく、その突起となった乳首を俺の体で刺激し快楽を得ている。昼は防人、夜は娼婦ってとこかな。だけど、それも俺にしか見せない彼女の顔だ。
「光栄だよ。翼の旦那になれるなら世界を敵に回したっていい」
「っ……要さん」
「でも、それは翼の望む事じゃないからな。安心して。ちゃんと敵なんか作らず立ち回ってみせるよ」
「はい、信じてます。だから……」
「何?」
「い、今だけ私は貴方のチンポケースです。試してみませんか? いかがです?」
本当に淫語を教えるとすぐに覚えて使いたがる。翼は男を誘う術を知らないからこそ厄介だ。その時は狙っていないのにそれが最終的な狙い通りの結果を生むんだから。
「試すなんてとんでもない。もうその使い心地はよく知ってるよ。だから、是非とも永続使用をしたいな」
「……はい、どうぞ。風鳴翼は貴方だけのチンポケースです」
うおっ、何ていうかゾクゾクっとした何かが体中を走った。心から幸せって顔でそんなとんでもない言葉を口にする翼なんて見せられたら、もうする事は一つだ。
「じゃ、翼。ケースらしく納めてくれ」
「はい、失礼します」
言いながらチンポをマンコへと入れていく翼。あー、いつもよりも締め付けがキツイ。これ、翼も興奮してる。物扱いとそこに愛情を込められている事で感じているんだ。
「ああっ……入りましたぁ」
「うん、いい具合だよ。俺専用のチンポケースなだけあるね」
「ありがとうございます。では、体の方を洗わせて頂きます」
どうやらまたスイッチが切り替わったらしい。今の翼はソープ嬢兼チンポケースのようだ。こうして始まるソーププレイだったが、当然ながら挿入したままではそこまで出来る事は多くなく、しかも翼の方が感じ始めたために敢え無く撃沈。そのままマンコでチンポを洗うだけになり、結局そうしてしまった俺が原因だ。
「んあっ! 要さんっ……要さんっ!」
「出すぞ翼! 奥に出すぞぉ!」
「出してっ! いっぱい出してぇ! 私を母にしてぇ!」
「ぐっ!」
「ふあぁぁぁぁっ! あ、熱いの来たぁ……要さんの子種汁……」
うっとりしながら胸に顔を埋める翼。その頭を優しく撫でると、こちらを見上げて舌を出す。なので俺も舌を伸ばしてそれへ絡めた。風呂場に響く淫らな水音。当然ながら翼のマンコがまた締め付けを始め、俺に孕ませてくれとおねだりを始めた。
「翼、気持ちは分かるけどそろそろあったまろう。風邪を引きかねない」
「……はい」
名残惜しそうに一旦俺から離れる翼。すると、やはりというか精子が流れ出てこなかった。
「……要さん、これなら」
「そうだね。でも、まずは軽くシャワー。泡を落とさないと」
こうしてお互いに泡を流し、湯を張っておいた浴槽へ体を入れる。翼は俺に座るようにしながら同じく浴槽へ体を沈めた。にしても、可能ならシャトーにも風呂を作って、ソーププレイ用のマットとか買いたい。あー、でもまだ先の話かぁ。そんな事を考えていると、俺に背中を預けていた翼がこちらを見上げてきた。
「何を考えているんですか?」
「あ、ごめん。ちょっとシャトーの改造案を」
「改造案、ですか。そちらはキャロルとエルに任せていると聞きましたが?」
「そうなんだけどさ。その、いつかみんなとも暮らせるようにしたいって二人が意気込んでて……」
「そういう事ですか。でも、それは要さんの稼ぎだと……」
翼の言葉に頷くしかない。何もないところから何かを生み出すのは錬金術でも無理と断言された。まぁ、文字通り錬金だからなぁ。何か元手があっての錬金術だ。なので改造も資材がないと出来ないし、家電などは錬金術でも不可能。なのでシャトーは今後錬金術と科学の融合形となるはず。……俺の給料に見合う形で。
「その話、奏やマリアは知っているのですか?」
「いや、まだのはずだよ」
「では早くするべきです。私とて若輩ながら給金を頂き、また歌にて稼ぐ事をしています。奏やマリアもです。櫻井女史はお腹の子がいますから、そちらへお金を使うはずですのでナスターシャ教授辺りにも相談しては? シャトーを装者達の寮ないし第二の本部と出来るのなら叔父様も多少の便宜は図ってくれるやも」
「あー、違うんだ翼。あくまでもシャトーは家。たしかに万が一に備えてそういう機能を持たせてもいいかもしれないけど、俺達としてはどこまでいっても家として扱いたいんだよ」
何やら認識に齟齬が生まれていると察し、翼へ俺達の意図を説明する。それに伴って俺が思い浮かべている改造案や現状直面している問題なども。すると翼は少しずつ顔を赤くしてしまった。
「つまり、子供部屋などの将来設計の面で頭を抱えていると?」
「うん」
「……それでもナスターシャ教授への相談はするべきです。マリア達はあの方と離れて暮らす事を嫌がるでしょう」
「あ、うん。そこは分かってる。シャトーも広いからね。何ていうのかな? キャロルやエルも自分の研究室は欲しいみたいだし、作業エリアと居住エリアみたいに区分けしたいって考えだ」
「それはいいですね。櫻井女史やナスターシャ教授も暮らすのですから必要な考えかと」
「ただ、問題はね」
「何がなくても資金、ですね。世知辛い話ですが仕方ない事でもあります。この世は残酷なまでに金が物を言い過ぎる」
苦々しげな翼の声に同意するように頷いた。
「しょうがないよ。これが現実だ」
「です、ね。これも私達が守り抜いたからこその話です」
「そうそう。キャロルのおかげでパヴァリアだったか。その相手の事も多少分かったしね」
「ええ、パヴァリア光明結社。裏で何やら企んでいるようですが、今の私達ならば決して劣りはしないでしょう」
「イグナイトに九人の装者。加えてドリンクとアルカ・ノイズの絶対命令権」
「相手がそれを知らずにいるのが何よりの力です。こちらへの足止めさえ出来ないのと同義ですので」
本当にキャロルが奏達へ与える一番の恩恵はそれだ。アルカ・ノイズはもう役立たずと言っても過言じゃない。何せキャロルがその気になれば使用した相手へ攻撃させられるのだから。
「それにしても、キャロルの先を見越した目には驚かされます。世界を再構築するために邪魔が入らないよう徹底していたとは思いますが……」
「だよねぇ。伊達に長く生きてる訳じゃないって事だ」
「取引をした相手の事を信用していなかったとも言えます」
「ああ、それが一番じゃないかな? 癇に障る相手だったらしいよ」
キャロルの話だと、彼女と直接相対したのは見かけだけなら紳士然としていたそうだ。名前は……たしかアダムとか言ったとか。
「とりあえず、そろそろ出よう。で、後は……ね?」
「……はい」
ベッドでのやり取りは激しくはなかったけど、その分濃厚ではあったかもしれない。翼はもう妊娠を恐れる必要はないとばかりに中出しをねだり、俺もそれに応えた。正規適合者である翼は奏と違い一度で吸収量を満たしたため、二度目はかなり残っていた。
―――櫻井女史の次は私が妊娠します。
そう蕩けた顔で宣言されてはこちらもその気になるってもの。明日に響かないように、だけどしっかり愛し合った。事が終わったも翼は俺から離れる事はせず、そのまま繋がったままがいいと駄々をこねてきたのでそうしてやる事に。
「あの、要さん」
「ん?」
「奏と少しだけ相談したんです。ツヴァイウイングの事を」
どこかで分かっていた事だった。もう二人は一対の存在ではなくなっている事を。俺がその間に存在してしまったあの日から、ツヴァイウイングはその名の通りではなくなったのだから。
「それで?」
「奏はもう世界を飛ぶつもりはないと明言しました。私は飛べるとこまで飛びたいとも。初めてです。私達の意見がどこまでも平行線になったのは」
「……そうか」
「だけど奏はこうも言ってくれました。今の私なら一人でも飛んでいける。その名の通りの立派な翼があるから、と」
そこで翼は俺を見た。その目は俺もそう思うかと問うている。なので笑みを浮かべて力強く頷いた。今の翼は奏という羽が無くても飛べる。それにもし彼女が不安ならば、別の羽がある。飛ぶ事は出来なくても、その歌声をより強く遠くへ響かせてくれる旋律が。
「翼、奏も言ったかもしれないけど、世界で不安が出来たらマリアを頼ればいいよ。彼女はそういう意味では君の先輩だ」
「……そうですね。国内は奏と、国外はマリアと飛ぶのも悪くない」
「そう考えると翼は贅沢な存在だね。一人でも飛べるし、異なる相手とも飛べるし、その気になれば三人でも飛べる」
「ええ、本当に幸せです。でも、そんなに幸せなのに私はもっと欲張ってしまう」
笑みを見せながら俺の体に指を這わせる翼。これはそういう事か。
「可愛い孫、親父さんに見せてやろうな」
「っ! はいっ!」
輝く笑顔でキスをしてくる翼を優しく抱きしめ、俺は彼女へある提案をした。それはキャロル達にもした事と同じ内容。彼女もそれが可能なら助かると賛同を示してくれ、可能な範囲で資金援助も申し出てくれた。そして、これはきっと奏達も同じ事を言ってくれるとも。
―――もしみんなで暮らすとなったら家事は分担かな?
―――……私はどれも得意では……。
―――じゃ、その分稼ぐ?
―――その方が気が楽です。
この後、軽くシャワーを浴び直し二人で寄り添って寝た。翌朝、日が昇って間もないぐらいで本当に起こされ、翼を部屋の近くまで送り届ける事になるとは思わずに……。