あと、奏の妹に関してはオリジナルで名前を付けました。調律から一字貰って律ちゃんです。アイマスかけいおんみたいですがご容赦を。
「んもう……安定期になったらこうなるとは思っていたけど」
俺の上に跨り腰を振る了子。その顔は呆れながらも嬉しそう。かなりお腹が目立ってきた了子は、遂に俺へセックスを解禁してくれた。場所はシャトーに作られた俺の部屋。別名営み部屋。大広間はずばりプレイルームと別名が付けられました。それと、了子も出産後の引っ越し予定を変更しもうシャトーへ定住。常にガリィ達がいるここの方が何かと安心だと考えたそうだ。
「だって、半年以上も待ったんだ。了子との久々のセックスがボテ腹セックスとか、興奮しないでどうするんだよっ!」
「ああっ! ダメっ! ダメぇ! お腹の赤ちゃんびっくりしちゃうぅ!」
言葉とは裏腹に声は悦びそのもの。どうやら了子もかなり楽しみにしてくれていたらしい。まぁ、きっとそこには奏達に先んじて孕んだという優越感も含まれてるんだろうが。とにかく、了子にも俺の初めてをあげる事が出来た。それだけは素直に嬉しい。
「了子っ。勿論二人目も産んでくれるよな?」
「気が早いわよっ。でも、いいわっ! 産んであげるぅ……私も男女一人ずつは欲しいものぉっ」
「ああっ! 作ろうなっ! 俺も頑張って働くよっ!」
「勿論よ? 稼いでもらわないといけないんだからぁ……」
上体を起こして了子と向き合う。その瞳は情欲で燃え上がりながらもまだ理知的な輝きを残していた。本当に綺麗な瞳だ。了子も魅力的だけど、そろそろ彼女とも繋がりたい。そう思って俺は笑みを浮かべて眼鏡を取った。
「あっ……仕方ないわね」
「ごめん。ボテ腹フィーネともしたくてさ」
「……お前と言う奴は」
髪色と雰囲気ががらりと変わった瞬間、嬉しく思いながらキスをする。フィーネも驚きつつそれを受け入れてくれた。そのまま舌を絡めて互いを高め合う。
「フィーネ、どう? 久々のセックスは」
「ああ、悪くない。お前との子がいると感じながら愛されるのも、私が女であると強く認識させてくれる」
「ん。じゃあ動いてくれる?」
「……もう私もお前に変えられてしまったか」
苦笑してからフィーネはゆっくり上下運動を始めてくれる。流れるような金髪と飛び散る汗。そして新しい命を宿して膨れたお腹が艶かしい。俺はただフィーネが動くのを感慨深く眺めた。先史の巫女であり、創造主へ恋い焦がれた女性。それが今や俺の妻であり子まで産もうとしてくれているのだ。そう思うだけ正直な話チンポが反応してしまう。
「んふっ! き、気持ちいいっ! 思いを通じ合わせた相手との交わりがぁ! 子を抱えてのセックスがここまで感じるなんてぇ!」
「当然だよ。俺はフィーネを本気で大好きなんだ。その証がそのお腹だろ?」
「っ! ああ、そうだ。この腹こそがお前と私の想いの結晶。櫻井了子と私の揺るぎ無い繋がり。きっと、私が母になるのはお前とだけだろう」
「転生してまた本気で求めてくれる相手、見つければ?」
「いや、もう覚醒したとしてもその相手の魂を塗りつぶす事はしない。ひっそりとその相手の人生と共にする」
どこか吹っ切るような言葉に俺は意外な印象を受けた。どうしてそこまで変わったのだろう。本当に俺みたいな変わり者と出会ったからかね? いや、きっと響だ。そもそもあの子がフィーネを止めた。それが一番なはず。
「そっか。なら、フィーネと子作り出来る名誉と栄光を独り占めか」
「ふっ、そうなるな。で、このままでいいのか?」
「……フィーネはどうしたい?」
ちょっとだけ意地悪してみる。今までこういう事を聞くとフィーネは決して答えようとしなかった。それらしい事を言ってこちらへ悟らせるようにするのが精一杯。でも、その時のフィーネが可愛くてやってしまうんだよな。さて、今回はどういってくれるやら。そう思って跨るフィーネを見つめていると、何故か彼女は微かに笑ってため息を吐いた。
「やれやれ、本当に私も……」
「フィーネ?」
「……後ろから抱いてくれ。ただし出来るだけ優しくだ。腹の子に障るからな」
「あ、ああ。分かった」
凄く素直に頼まれて思わず戸惑ってしまった。だけど、こちらを見るフィーネはとても優しい表情を浮かべていた。
「これでいいな」
ベッドで四つん這いになるような姿勢でこちらへケツを突き出すフィーネ。正直言おう。素直になったフィーネはとても綺麗で色っぽい。今にも後ろから襲い掛かりたい程だ。だけどそれを俺の中に芽生えた父性が辛うじて止めてくれる。お腹の子を想わないといけないからな。
「じゃあ、いれるぞ?」
「ああ、きてくれ」
「よっと……」
「あっ……ふぁぁぁっ」
ゆっくりと挿入するとフィーネが聞いた事のない甘い声を出した。それと締め付けも心なしか普段よりもネットリ気味な気がする。
「フィーネ? どうかした?」
「あ、ああ。どうやら櫻井了子と完全に想いが一致したせいか、今まで以上に快感がくるようだ。そうか。これが夫に愛される喜びか……」
「フィーネ……」
「そう、これが愛。ふふっ、こんな事あの方さえ教えてくれなかった。感謝するぞ、要シキ。いや、ここはアナタと呼ぶべきか。私に愛される喜びを教えてくれてありがとう、アナタ」
こちらを振り返り微笑むフィーネが愛おしくて、俺も微笑みを返して頷いた。
「俺こそ感謝だよフィーネ。俺の妻になってくれてありがとう、お前」
「っ……動いてくれ。いや、動いて欲しい」
「ああ、分かった」
そこから始まる優しいセックス。今まで俺がしていたのは種付けがどこかで頭にあった。だけどこれは違う。今はただ目の前の妻を大事にしたい。その気持ちだけで繋がっていた。感じさせるというより感じて欲しい。そんな気持ちで腰を動かす。するとフィーネがどんどん甘い声を上げ始めた。
「あんっ、い、今のところをもっとぉ。もっとコツンってしてくれるか?」
「ここ?」
「んっ! ああ、そこだ。んんっ、ああ……そうされるのは好きだ。もっとしてくれ。もっとグリグリしてぇ」
ツンデレ巫女がデレデレ巫女になりました。これも妊娠効果なんだろうか。どちらにせよ可愛い妻の頼みだ。全力で応えようと思う。出来るだけ優しくゆっくりを心がけ、フィーネを労わりながら愛していく。それが伝わるのかフィーネも声を隠す事もせず、ただ甘い声を出し続けてくれた。大きなお腹を揺らし、胸も揺らして俺の雄を刺激する光景。だけど、今日は何故か男が勝っていた。
「どう? 気持ちいい?」
「んんっ、ああ気持ちいい。もっと愛してくれ。もっとアナタを感じさせて。夫婦の営みをここまで嬉しいと思ったのは初めてだ。早くこの子を産んでやりたい。そしてまたアナタの子を宿して欲しい」
「フィーネ……嬉しいよ」
「あっ、今中で跳ねたぞ。それに腹の子も動いた。ふふっ、父の愛が伝わったのか? もしくはまだ出たくないと文句を言ったのかもしれん」
「出来れば前者がいいな。少しだけ強くする?」
「……お腹の子には気を付けてくれ」
ホント、今のフィーネの破壊力は何だ。これが奥さんモードとでもいうのだろうか。この後は俺の上にフィーネを乗せ、背面座位で愛し合いました。顔が見れないのは嫌だと言われた時は本気で危なかった。で、フィーネとのラブラブセックスを終え、二人でお風呂へ。浴槽に浸かりながらフィーネは俺へ体を委ねていた。
「フィーネ、さっき想いが一致したって言ってたけど」
「ああ。私は知っていると思うがあの方をお慕いしていた。それは今も変わらない。変わらないが」
「が?」
そこでフィーネは俺へ向き直ると左肩へ頭を乗せる。彼女の重みを少し感じた。
「やっと認められたのだ。私もアナタを愛していると。そこで櫻井了子と完全にシンクロした」
「で、今まで以上に幸せを感じるようになった、と……」
「そういう事だ。それに、あの娘達が母と呼んでくれたのも大きいだろうな」
キャロルとエルか。たしかに二人は了子を母さんと呼ぶようになったらしい。了子はいい予行練習になると笑っていたっけ。ん? てことはフィーネも呼ばれた事があるのか?
「フィーネも呼ばれたの?」
「そうだ。その、櫻井了子が髪色が同じだからより親子らしいと言い出してな。それで」
「……うん、想像出来た。エル、すごく喜んでなかった?」
「とても綺麗な眼差しを向けてきたぞ。キャロルの方も満更でもなかったようだ」
苦笑するフィーネに俺もつられて苦笑する。でも、これで安心した。血の繋がりがない俺達でも心の繋がりは作っていけそうだ。そう思ってフィーネを抱き寄せる。
「フィーネ、母親の経験は?」
「あると思うのか?」
「じゃ、俺と一緒に頑張って親の勉強してくれ」
「……分かったわ、アナタ」
最後の言葉は了子の声と重なって聞こえた。この後、俺達はキャロルとエルの寝る部屋へ向かい、二人を挟む形でそっと眠った。翌朝、目が覚めると二人はそれぞれ近くにいた俺と了子へ抱き着いていたのが面白く、また嬉しかった事を記す。
郊外の静かな公園のような場所。そこの一角にそれはあった。天羽家の墓。奏のご両親と妹さんが眠る場所である。遂に俺はそこへ奏と共に来ていた。奏は墓参りに来るのが初めてだったらしい。何でも墓参りする暇があるなら訓練をしていたかったそうだ。それだけノイズへの憎しみ恨みが強かったという事だろう。
「来るのが遅くなったね、父さん、母さん。それに律もごめんね。お姉ちゃん、中々来る気持ちになれなくて……」
そっと墓石の前に花を置いて奏は静かに語りかける。俺はそれをただ黙って聞いていた。本当なら奏も既にここにいた。そう思うと何とも言えない気持ちになる。俺が居なければそうなっていた。奏は昔そう言った。俺の体質が、俺の知るところで助けた最初の命。それが彼女だった。
「本当ならこんな事をする事なくみんなのとこへ行ったんだよ。だから、最初は来なかった。すぐに行くなら行く必要ないってね。でも、それが変わった。あたしはみんなのとこへしばらく行かなくて良くなった。だけど、そうなると今度は行く事に二の足を踏むようになった。今更どの面下げてってね」
微かに苦笑し奏は振り返って俺を見る。
「そんなあたしがここへ来れたのは、こいつが、シキが連れてきてくれたからなんだ。あたし一人じゃ、きっといつまでも来れなかった」
「奏……」
こちらへ微笑む奏は本当に綺麗だった。だけど違うんだよ奏。俺が君をここまで連れてきたんじゃない。君が俺をここへ向かわせてくれたんだ。そう思って奏を後ろから優しく抱き締める。
「違う。奏がいたから俺はここにいる。二人でここへ来れた。そう思うのじゃダメか?」
「……聞いてくれた? こういう奴なんだ、あたしの旦那になる男は」
な。そんな感じで笑いかけてくれる奏に頷き、キスをする。それをちょっとだけ驚きつつ、奏も嬉しそうに受け入れてくれた。そこで奏を一旦離す。すると彼女は俺の隣へ移動して腕へ抱き着く。
「紹介するよ父さん、母さん、律。あたしの彼氏で旦那の要シキ」
「初めまして天羽家のみなさん。要シキです。この度は奏との約束を果たすためにここへ来ました」
俺の少しだけ畏まった言い方に奏が小さく笑う。いいだろ別に。俺からしてもここへ来るのは感慨深いものがあるんだ。
「その、本来は奏との間に子を儲けてから来るつもりだったんですが、色々自分のせいでそれが難しいので、まず一緒になるご報告だけでもと思いました。いきなりですが、お嬢さんを、お姉さんを、自分の嫁にさせていただきます」
奏を抱き寄せてそう告げる。それに彼女は目を何度か瞬かせ、やがて顔を真っ赤にして抱き着いてきた。
「きっと文句や不満が沢山おありでしょうが申し訳ありません。それについては、いつかそちらへ行った際に全て聞かせていただきます。生きている自分達はそちらの分まで幸せになるという役目がありますので」
「……普通は尋ねるとこだろ? 何で軽くケンカ腰なんだよ」
「仕方ないじゃないか。もう俺に奏を手放すつもりなんかこれっぽっちもないんだ。反対されようが呪われようが君と一緒にいたいんだよ」
「シキ……っ!」
俺の初めての女性。心から大事にしたいと思った相手。間違いなく正妻を決めろと言われたら、俺は迷う事なく彼女を選ぶ。きっと、そうする。それが奏なんだ。以前約束した事も影響していると思う。奏よりも上を作ってはいけないっていう約束だ。
「なので次に来る時には一人増えている予定です。自分ではなく奏の子供を待ち望んでいてくれると助かります」
「あははっ……うん、そうだね。父さんと母さんはシキを呪い殺さないでよ? 律、肩こりにするぐらいは許すからね」
「怖い事言わないでくれよ。ホントになったらどうするんだ?」
「その時はあたしに子供作っておくれ。そうしたら解呪をお願いしてやるよ」
そんな会話をしてから俺達は手を合わせて奏の家族の冥福を祈った。そして俺と奏はその場を後にし、向かうはあるライブ会場。そう、響がギア装者となる切っ掛けとなったあの場所だ。あの騒ぎの後、ここは犠牲になった人達のための慰霊碑を建てられ、今は静まりかえっている。
「どうしてここに来たいなんて言ったんだ?」
慰霊碑を前にして俺は隣の奏へ尋ねる。慰霊碑にはまた新しい花々が飾られている。未だにあの事件を忘れていない人達がいるという紛れもない証だ。それを見て奏は苦しそうな表情を浮かべた。
「あたしは、あたしのような気持ちになる人が出ないようにと思って槍を振るっていた。復讐っていうのはそれも含めてだと思ってたんだよ。ノイズの犠牲者を出さない。これだって立派な復讐ってね」
「……そうか」
それだけで分かった。ここでの戦いは奏にとって負け戦だった訳か。半数以上助けられたではなく、半数近くも助けられなかったなのだろう。だから奏は響が装者となった事に最初複雑な反応を見せていたんだ。後になって聞いた話だけど、響の訓練を一番厳しくしていたのは奏らしい。翼はそれを見て、自分まで厳しくしては響が頼るべき寄る辺を失うと思い加減する事にしたそうだ。あの頃の奏さんは鬼か悪魔かと思いましたとは響の言。
「見なよ。まだこうやって花を手向けに来る人がいる。あれから三年以上経ったって言うけど、遺族からすればまだ三年なんだよ。それは何年経っても変わらない。どれだけ周囲が忘れようと本人達は忘れない。これはあたしへの恨み言でもあるのさ。どうしてうちの人は守ってくれなかった。何で俺の家族は、友人は助けてくれなかったんだって」
噛み締めるように告げ、奏は慰霊碑の前でしゃがみ込んだ。そして静かに両手を合わせる。俺もそれに倣うように隣へ移動ししゃがんで拝む。しばらくそうしていると背後から人の気配を感じて目を開けて振り返る。そこには中学生ぐらいの男の子が立っていた。手には一本の百合の花がある。
「お兄さん達もノイズに誰か殺されたの?」
「えっ? あ、いや」
「ここじゃないけどね。家族を失ったよ。両親と妹」
戸惑う俺の声を遮るように奏がそう告げると、少年は凄く驚きそして申し訳なさそうな表情を見せた。
「ごめんなさい。ここに来る人は大抵そういう人なのに……」
「いいよ。もう五年以上も前の話さ。坊やも大切な人を失ったの?」
「……うん、お姉ちゃん。やっとライブチケットが手に入ったって喜んでた」
「そうか」
どうやら少年は奏がそのツヴァイウイングだと知らないようだ。あるいは気付かないのだろうか。帽子やヘアゴムなどで変装しているので可能性はないとは言わないが……。
「お姉ちゃん、すっごく楽しみにしてたんだ。前の夜もライブの予習だって何回も曲を聞いてた」
話しながら少年は慰霊碑へ百合を置いた。きっとその花のようなお姉さんだったのだろう。白くて華やかな女性がぼんやりと浮かぶ。
「一人で来てたの?」
「うん、本当なら俺と行くはずだったんだ。でも、その日に俺、風邪引いちゃって」
そこで少年は黙り込んだ。きっと自分がその時健康で一緒に行っていればお姉さんは死なずに済んだのではないかと、そう思っているに違いない。そしてその問いかけを何度もしているんだろう。何もかける言葉が見つからない俺の横を奏が静かに通り過ぎる。彼女はそのまま少年を後ろから抱き締めた。
「お姉さん……?」
「自分を責めるんじゃないよ。もし仮に坊やが一緒に行けたとして、二人揃って死んだら親御さんはどうすりゃいいんだ? もしくはお姉さんが生き残って坊やが死んだらどうする?」
諭すのでも叱るのでもなく、ただ純粋な疑問として奏はそれを突き付けた。その答えを少年が出すか出さないかで奏は更にこう続ける。
「あたしも昔自分だけ助かってこう思った。何で一緒に死ねなかったんだろう。どうしてあたしだけ助かったんだろうって。だけどある時こう思ったのさ。あたしだけでも助かって良かったって」
「どうして? だってお姉さん、家族を殺されたんでしょ?」
「だけどあたしが生き残れば父さんや母さん、妹のいた証は残る。あたしっていう、唯一無二の証がね。あたしが生き続ける事。それがみんなの生きた証を残す事だって思ったのさ」
そこで奏は一度だけ俺を見る。どことなく懐かしむような目で。
「だから、坊やも一緒に行けなかったからお姉さんを死なせたって思うより、一緒に行かなかったからこそお姉さんが坊や以上に苦しまずに済んだと思いな。哀しむのは必要だけど、過去に踏み止まるのはダメなんだ。苦しくても悲しくても、生きてる限り死んだ人の分まで幸せにならなきゃね」
まるで自分へも言い聞かせるような奏の言葉。だけど、俺には分かった。それはあの墓前での俺の言葉と同じだと。思えば奏はあの夜以来殺すという表現を本当に使わなくなった。俺が女の子扱いした日から、奏は俺の前では必ず女性らしさを心がけてくれるようにもなった。ああ、本当に奏は俺の中で別格らしい。そして、きっとそれは奏もだろう。
少年はどうやら奏の言葉で思う事があったのだろう。無言で目元を何度も拭っていた。それを見て奏は小さく微笑んで立ち上がると深呼吸をする。そして、歌い出した。それは彼女がギアを纏った時に歌っているものだ。アカペラでの歌唱。だが、それは普段の力強さを感じるものではない。どこか優しく語りかけるような、伴奏を付けるのならピアノ辺りだろうか。その歌声に少年は泣くのも忘れて聴き入っていた。かつてのライブ会場で歌を奏で響かせる彼女の姿に俺も魅入る。まるで鎮魂歌だ。
「……私という音奏で、尽きるまで……か」
きっと昔と今では意味が違うのだろう。はっきり聞いた訳ではないが、そう確信出来る。やがて歌は終わり、再び静けさが戻る。だが、二つの拍手が奏へ送られた。俺と少年のだ。
「お姉さん、歌上手いねっ!」
「ありがとさん。ま、御代はその笑顔って事にしとくよ」
悪戯っぽく笑い、奏は俺の方へウインク一つ。ああ、そういう事か。彼女の意図を理解し俺は出口へと向かって歩き出す。そして奏もそれに続くように歩き出し、慰霊碑からそれなりに離れたところで帽子を取って髪を解いた。その瞬間、少年が大きな口を開けたのを俺は見た。
「坊やっ! 他の人には内緒だぞっ!」
呆気に取られる少年を置いて俺達はその場から去った。あの子がこれからどう生きていくのかは分からない。けど、少しでも前向きな人生を歩んでくれたらと思う。俺の隣で楽しげに笑う女性のように。
―――いつか慰霊ライブみたいな事やりたいな。
―――ツヴァイウイングで?
―――……装者全員で。場所はどこでもいいさ。これまでのノイズ被害者を想って歌えばいいから。
後日その考えをシャトーでしたところ、ならここでやればいいとなり、期せずして奏の希望は叶う事となるのだが、それはまた別の話……。
「こうして飲むのは初めてか」
「です、ね」
「ま、たまにはいいだろ。男三人の飲み会ってのもさ」
この日、俺は珍しく風鳴さんと藤尭さんに誘われ、男だけで居酒屋へ来ていた。藤尭さんとは何度かあるけど風鳴さんとは初めてだ。でも、一体どういうつもりなんだろう? 親睦会とかなら友里さんや了子……は身重だから無理か。
「まあ、まずは乾杯といこう」
「シキの新生活とエルやキャロルがお姉さんになる記念に」
「まだ予定日まで日がそれなりにありますけどね」
「いいじゃないか。では、乾杯だっ!」
「「「乾杯っ!」」」
手にしたジョッキを軽く合わせて三人して飲み干すように流し込む。喉に流れる苦みを感じながら、最初にビールを飲んだ時の事を思い出す。そういえば、あの時は風鳴さんが缶ビールを奢ってくれたんだっけ。これで君も大人の一歩を歩き出した訳だ。そんな事を言って笑っていた。思い出すと妙に懐かしくなる。思えば風鳴さんは俺にとって兄かおじさんのような人だった。厳しくも温かく、時には諭してくれる人生の先輩。
藤尭さんは完全に先輩の友人って感じだった。気さくに接してくれて、俺も風鳴さんには出来ない話やしない話なんかをよくした。奏と関係を持つ前だったから余計に。二人でAVの事で馬鹿な話をした事もあったっけ。
「っぷはあっ! このために生きてますねぇ!」
「大げさだな。だが、気持ちは分からんでもない。要君はもう平気になったか?」
「いえ、まだこの苦みは慣れません。好きになれそうもないですね」
「そうか。まぁ、それでもいい。人には向き不向きかある。甘味が苦手な者もいれば辛味が苦手な者もいる。その違いが噛み合って世の中は回るんだからな」
そう告げて風鳴さんはジョッキをテーブルへ置いた。
「だが、それでも時には飲み込まねばならない時もある。大人とは、親とはそういう事だ」
「……はい、心得ているつもりです。もうガキのようにはいられません。ちゃんと俺は自分で立って、彼女達を、家族を守れないといけないですから」
「ああ、そうだ。いつまでも俺達が助けてやれる訳じゃない。いや、もう助けてはもらえないと思うぐらいで丁度いいかもしれんな。君がどうしても己の力だけでは届かない時、こちらへ声をかけてくれれば手を貸す事はあるかもしれないが、な」
俺の目をしっかり見据えて告げられた言葉を胸に刻む。これは、風鳴さんからの宣告なのだ。もう俺を一人前の男として扱うと。だからしっかりとその足で立って見せろ。そう、俺は受け取った。なので力強く頷く。それに風鳴さんも真剣な表情で頷いてくれた。
「それにしてもちょっと前まで俺と馬鹿な話してた奴が父親かぁ。何か感じるもんがあります」
「そうだな。俺なんか出会った時は少年だった。それが今や所帯を持っている。俺でさえ成し遂げていない事だ。そこに関しては尊敬している」
「や、やめてください。そんなに立派なもんじゃありません。まだまだ若輩者です」
困ったようにそう言うと二人は声を上げて笑ってくれた。その後は二人からの質問へ俺が答える形になった。シャトーの事やキャロル達との生活、将来を見越しての計画や課題などを。藤尭さんが主に家族問題を、風鳴さんが生活面を質問する事が多かった。そういう意味でのこの面子なのかもしれないとそこで思った。ま、時々藤尭さんが突っ込み過ぎる質問をして風鳴さんに苦言を呈される事はあったけど。
「では要君、俺はこの馬鹿を送っていくのでな」
「はい、お疲れ様です。今日は御馳走様でした」
「ああ。いつか奢り返してくれればいい。出来れば君達の家で、な」
「……はいっ!」
この日から半年後、俺はシャトーの自室へ風鳴さんを招きサシ飲みをする事が出来た。そこで俺は風鳴さんのある秘密を教えてもらうのだが、それを聞いて強く想う事になるのだ。この人はやっぱり本物の漢で大人だと……。
その日、シャトーはかなりの大人数を迎えていた。夏休みが始まり、リディアン組五人が予行練習兼勉強合宿と銘打ってやってきたのと、スケジュールを調整してアーティスト組も参加。更にはセレナがナスターシャさんを連れて泊まりに来たのだ。ま、これは切歌と調がちゃんと課題をやるようにする事と、それに伴って響のやる気を出させる意味合いもあるようだが。ちなみに場所はかつての玉座の間。今はリビング兼応接間となっていて、ガリィ達が元々居た場所は撤去され、大きな円卓が設置されている。で、キャロルの座っていた椅子があった場所辺りはキッチンへと変貌している。劇的どころではない変化だが、これも応急処置であり、正式採用ではない改造である。……このままな気がしないでもないけれど。
「クリス先輩、これなんですが……」
「あ? どれだ……?」
「う~っ……分からないデェス……」
「そういう時は聞きなさい。どこですか?」
「えっと、ちょっといいかな未来」
「はいはい。どれを教えて欲しいの?」
調と切歌にはクリスとナスターシャさんが先生役としてついてくれているので安心。響は当然未来がそれ。で、セレナはファラやレイアと共に料理中。そう、シャトーの中で仕事をする事になったガリィ達は、炊事担当と掃除担当、洗濯担当の三つに分かれて動いていたのだ。で、炊事担当がファラ。何でもそつなくこなすレイアは万能サポートとして動き、ガリィが掃除でミカが洗濯となっている。
「味付けはこんな感じかな?」
「……記憶しました。今後はこれを参考にします」
「派手さはないけどいい味ね」
「洗濯物、干し終わったゾ~」
「はいはい、ご苦労さま。じゃ、大人しく座ってなさい」
「ん」
……ミカが洗濯なのは消去法。炊事や掃除では道具を壊すからという理由だ。洗濯は洗濯機を俺の部屋から移動させ使えるようにした。これによりミカは洗剤や柔軟剤などを適量入れてスイッチを押すだけでいい洗濯担当となった訳である。
「私と奏、翼と私。それぞれで新曲かあるいはセルフカバーをするのはどうって緒川さんがね」
「アナザーツヴァイウイング、か。面白そうじゃない」
「うん、ならそれで一枚アルバムを作りたいな」
「あら、じゃあ購入者特典に三人でフリューゲル、歌う?」
「あのライブで歌うはずだったアンコール、か。いいかもしれない」
「いいねぇ。それならアルバムのコンセプトはあのライブを再びって感じ?」
アーティスト組は楽しげに仕事の話。真剣なだけでは生まれない企画や発想。それをこういう雰囲気から生み出すらしい。緒川さんもツヴァイウイング最初で最後のワールドツアーを行うために動き回っているそう。うん、そうなのだ。奏は翼へこう言ったらしい。一度だけ全力で世界を飛び回ってみるって。理由は簡単。最後の荒稼ぎだ。
「なぁんだか凄い光景ねぇ」
「だね」
俺の隣で臨月間近となったお腹を撫でる了子。その近くにはキャロルとエルがいる。了子が来てから二人は暇さえ見つけては傍にいるようになった。お腹の中にいる赤ちゃんが気になって仕方ないらしい。ま、キャロルは生命の神秘はまだ直に触れた事がないからだと言い訳していたけれど。
「それを言うなら母さんの方が凄い光景だ」
「うん。何度見ても不思議です。この中に父さんの子がいるんですね」
言いながらお腹へ耳を当てている二人。これもここ数か月でお馴染みとなった光景だ。ま、二人程じゃないが切歌と調もよくやるし、響も結構な頻度でやっているのを見る。それと、了子曰くクリスも隠れてしにくるそうで、今から人気者な我が子である。と、その時ナスターシャさんがこちらを見た。
「予定日は来月でしたか」
「ええ、秋の気配が来る前になるかと思います」
「夏休みの終わりが来たら次は赤ちゃんの誕生かぁ。そう思うとイベントが尽きないね」
響のらしい発言にみんなが笑う。ここにいる全員が歪ではあるが家族となる。きっと色々な問題が出てくるだろう。だけど、それでもきっと今みたいに笑い合える。そして、いつかその笑顔が増えていくはずなんだ。
「子育て本、買っておくべきかなぁ」
「それがいいでしょう。私も赤子から育てた経験はありませんよ?」
「マムさえ未体験……」
「これは凄いデスよ」
ナスターシャさんの言葉に調と切歌が驚きを見せる。まぁ、そうだろうなぁ。例の施設はある程度の年齢以上の子供が保護されていたそうだし、きっとナスターシャさんも育児は未経験だ。なら、やはりここはまず知識だけでも手にしておこう。
「マムもグランマになっちゃうね」
「そうね。覚悟してね、マム。孫がどんどん増えていくわよ?」
「それは大変ですね。こちらの風習では新年を迎える日にお年玉、でしたか。それを渡さねばならないようですし、破産してしまいそうですね」
イヴ姉妹の言葉で楽しげに笑みを見せるナスターシャさん。その笑顔にマリア達も笑みを深くする。
「大丈夫ですよ。その金額は気持ちでいいんで。赤ちゃんなら百円とかでもいいし、何だったら物心つくまではなしでも構わないかな。ね、シキはどう思う?」
「俺も奏の意見に賛成です。まぁ、世のお祖母ちゃんやお祖父ちゃんは総じて孫に甘いらしいですけど……」
「そうですか。ならそうするとします。でも、出来れば破産するぐらい長生きしたいですね」
その一言で誰もが頷いた。特にマリア達四人は強く。孫だけでなくひ孫だって見て欲しい。そんな気持ちがあるのだろう。そして、同じくお祖母ちゃんがいる響も近い気持ちを持っているかもしれない。
「ナスターシャ教授には長生きして頂かないと困ります。S.O.N.Gの人間としても、そして家族になる者としても」
「翼、それなら呼び方を変えないと。せめてプライベートでは教授なしとかさ」
「そ、それは……いいでしょうか?」
「構いません。私としても子供が増えるのは歓迎します」
「あっ、なら私もいっそマムって呼びたいです!」
「あたしもそれがいいかね。ナスターシャさんってちょっと呼び辛いし」
「ふふっ、いいですよ。了子さんもそうしますか?」
「あら、よろしいんですか? では、遠慮なく……マム、今後もよろしくお願いします」
それが契機だった。みんながナスターシャさんをマムと呼ぶ事で一致し、エルやキャロルも照れや恥ずかしさを見せながら呼び、ガリィ達は呼びやすくなったと喜んでいた。何というか、呼び方一つで急に距離が近くなった気がする。そして、それはナスターシャさんもだろう。嬉しそうに微笑んでいたのが印象的だ。
で、こうなるとある意味必然な流れだったかもしれない。みんなで互いの呼び方を見つめ直そうとなったのだ。ちなみに俺は除外。何せもう言うまでもないからだ。そう、これはある意味で翼とクリスをターゲットにしていたのだから。
「さ、クリスちゃん。私達の事を名前で呼んでもらうよ?」
「な、何でこうなる……」
「翼さんもですよ」
「……苗字ではダメなのか?」
「ダメデス。翼さんは家族を苗字で呼ぶ家知ってますか?」
切歌の正論。翼に痛恨の一撃。翼は倒れた。
「ま、諦めな翼。いい機会じゃないか。これでみんな名前で呼ぶ中、シキだけさん付けで呼べば特別感出るよ」
「…………わ、分かった。なら、改めてよろしく頼む。響、未来、クリス、調、切歌」
「「「「はい(デス)っ!」」」」
「……おう」
開き直れば早い翼である。奏の言葉もあって彼女はあっさり片付いた。問題はクリスである。やはりこれまで出来るだけ名前で呼ぶ事をしてこなかったため、ここでいきなりみんなを呼ぶ事になり、しかも面と向かってとあってか恥ずかしさが限界に達しそうだった。それでも逃げる事や誤魔化す事をしないのは、ある意味クリスなりの成長であり、家族に対する覚悟のようなものなのかもしれない。
「ああっ! わ~ったよ! 名前で呼べばいいんだろ、呼べば」
「うんうん。じゃ、どうぞ」
待ちきれないとばかりの響を見て、クリスが顔を真っ赤にしていく。あー、これは後で荒れるな。
「ひ、響……」
「っ~~~~っ! 未来っ! クリスちゃんにやっと名前で呼んでもらえたよぉ!」
「はいはい。良かったね響。で、クリス?」
「……未来」
「うん、嬉しいよクリス」
ある意味でクリスにとっての親友二人だ。その二人の反応だけでもう倒れそうなぐらい疲れてる。でも、まだ始まったばかりだぞクリス。
「クリス、あたしらは?」
「せ、先輩じゃダメかよぉ……」
「諦めろクリス。私も通った道だ」
「くっ……奏、先輩。翼……先輩」
恥ずかしそうに俯くクリス。先輩二人はそれに微笑みを見せ合っている。と、そこへ更なる試練がクリスを襲う。
「クリス先輩、私達も」
「デスデス」
「ち、ちくしょう……。調、切歌」
「「嬉しいです(デス)、クリス先輩」」
はい、後輩二人の笑顔でクリス撃沈。しかし残念ながらまだ彼女は沈む事を許されない。強制引き揚げされたクリスが見たのは、どこか楽しげに笑うイヴ姉妹。
「さ、残りは少しよクリス」
「頑張って」
「……分かったから離せマリア。セレナも、んな顔でこっち見るんじゃねえ」
疲れが上限を超えたからか、もう自棄になり出しているクリス。それでもまだ頬の赤みは消えていない。
「く、クリスさん。僕らも呼んでもらえますか?」
「無理なら別に構わんが……」
「たかが名前呼ぶだけだろ。何でエルもキャロルも大げさに捉えてんだ?」
「あら、じゃあ私も呼んでもらえるのかしら?」
クリスを一瞬にして初期状態へ戻す声。了子はどこか不安気な眼差しでクリスを見つめる。この二人は因縁浅からぬ間柄だ。だから了子もいつもと違う雰囲気なのだろう。しばらく見つめ合う二人。するとそれに耐え切れなくなったのか、了子が息を吐いて目を伏せた。その瞬間……。
「了子さん……」
「え……?」
「あんたはフィーネじゃなく、櫻井了子なんだろ? なら、了子さんだ。あたしが一緒にいたのはフィーネだ。あんたじゃない。あんたに恨みも何もねえよ」
顔を背けはっきりと告げるクリスだが、その頬は少し赤い。了子はしばらく目を瞬きさせていたが、やがてクリスの気持ちを理解出来たのか両手で顔を押さえるようにし、瞳を潤ませた。
「じゃ、これでとりあえず呼び方問題は解決かな? 後は子供達が生まれてからまた考えるって事で」
こうしてひょんな事から始まった流れは終わり、また少しみんなの関係が深まった。例え家族にならずとも、今日の事は無駄にならないだろう。で、この後はみんなで夕食を食べ、何故かゲームをする事に。まぁ、現在の切歌達の家にはゲーム機ないからね。さすがに人数が多すぎるので代表して俺が何かゲームをする事に。でもホラーはダメって言われたんだよなぁ。
「じゃ、これだな」
そう思って選んだのは俗に言う無双系と呼ばれるもの。一人一人のストーリーならそこまで長くないし、軽い歴史の知識も学べるとあり、ナスターシャさんも許可してくれた。折角なので日本ではなく中国系の方を選ぶ。まずは三英雄からだな。間違った知識を与えてもいけないので曹操をプレイキャラに。だけどその瞬間、ナスターシャさんが苦笑した。
「あなたらしいですね。英雄色を好むを地でいった曹操ですか」
そこで始まる質疑応答。俺はそれを聞きながらゲームを開始。何故だろう。雑魚兵を片付けているのにダメージを負ってる感じがするのは。でも、それもゲームを進めていく内に気にならなくなった。やはり何も考えず出来るゲームはいい。途中途中のムービーも彼女達の反応がいい。というか、案の定翼は夏候惇が気に入ったようだ。徐晃や張遼も好きそうだよな。
「この張コウって人、変わってるね」
「デスね。若干女の人っぽい喋り方デスよ」
「オカマの人だったのかな?」
「響、これはゲームだからだと思うよ?」
……やっぱりゲームの選択間違ったかもしれない。そう思いつつ曹操でクリア。最後まで覇を唱え貫く生き方は本来ならば道半ばで子へ受け継がれるんだけども、まあゲームだからね。で、次は大人数でも出来るパーティーゲームをやる事にした。以前と同じ物では向き不向きがあるので、今回はボードゲーム系の物を。で、日本全国の物件を買いながら目的地を目指すやつにした。三人プレーヤーで一人だけCPU。そうしないとケンカになりかねないと思った。
「旧二課組、旧F.I.S組、キャロル達で三チームね。俺はそれぞれの疑問質問に答えるよ」
こうして始まったゲームは、基本CPUを共通敵としつつチーム毎で競争する流れとなる。貧乏神の洗礼に始まり、カードの妨害やイベントなどの被害や恩恵。それらを楽しみながら十年目となった辺りで一旦終了と相成りました。今は決算をみんなで眺めている。
「収益は私達がトップねぇ」
「ですね」
「ですが、我々もすぐ下にいます。逆転の目はまだ残っているようですね」
「任せてマム。来年こそは独占を増やしてみせるっ!」
「俺達は三位か。だが……」
「うん、まだ突き放された訳じゃない。あの突発的脅威さえいなければ……」
「あれは仕方ないゾ。まさか一気に資金をあんなに捨てられるとか……」
「派手な損害と派手な行動。理想的だわ」
了子とナスターシャさんは普段通りだけど、意外にキャロルが熱を上げている。もしかして、こういうの好きなのかな? あと、地味に切歌と調が地名を覚え始めているので効果アリ。ついでに特産品や名産も覚え出したら完璧。軽い地理の勉強になる。
「あの時も、こうやってみんなでゲームしたんだよなぁ」
噛み締めるように呟く。あの時は九人に了子を入れての日常が夢。それが今はそこにエルやキャロル達まで加わっての日常だ。正直言おう。エロ抜きで幸せである。義理の娘が二人に実の子が間もなく産まれる。妻はみな器量良しで、義理の母とも呼べる存在も出来た。と、そこで気付いた。そうか、俺は家族が欲しかったんだと。
「……ま、そこにエロが関係してないとは思わないけどな」
小さく呟き、風呂へと向かうみんなを見送る。と、肩を軽く叩かれた。視線を動かすとナスターシャさんがいる。その表情はどこか嬉しそうだ。
「どうかしました?」
「……今まで研究や計画といったものばかりに生きてきました。そんな私が、まさか本当に家族を得る事になるとはと。全てあなたのおかげです」
「そんな事は……」
「いえ、私の場合は、あなたがいなければここにこうしていられませんでした。生命のスープの思わぬ副産物。それが私を延命してくれたのですから」
ああ、そうだった。ナスターシャさんは体の病気を治すためにスープ飲んでたんだっけ。
「えっと、ならどういたしまして?」
「ふふ、本当に感謝しています。おかげで最低でも孫は見れそうです」
遠い目をして告げるナスターシャさんだが、俺としてはその言葉には待ったをかけたい。
「何言ってるんですか。もう孫はいますよ。エルとキャロルっていうね」
「……そうでしたね。では、ひ孫まで見れる事を願って頑張りましょう」
「ええ、そうしてください」
この後、ナスターシャさんから小さい頃のマリア達の話を聞かせてもらった。これもまるで嫁の母親との会話だった。また俺の中に忘れられない思い出が増えた。こういうのを増やしていきたいな。俺の大事な家族みんなで……。
とりあえずヒロインは出揃い、各々のフラグも回収完了。残るはまだお泊りデートしてないキャラ達や各ヒロインとの妊娠セックス、そして特殊コンビでの3Pや4Pですかね?