その日、珍しく奏達三人も加わっての夕食となり、いつかの事を思い出して話にも花が咲いた。学生組も夏休みが残すところ一週間を切り、シャトーでのお試し生活も終わりが近付いている。
寮に帰りたくないと響が言い出してるのを何度もガリィ達が聞いているらしく、切歌や調も家に帰るのが残念と言ってくれているので嬉しい。それと、キャロルやエルも早くみんなで暮らせるようにしたいと言っている。思った以上にこのお試し共同生活は良い結果となりそうだ。
「あー、こうやってワイワイご飯食べるのも後少しかぁ」
「何? 響は私とじゃ不満?」
「そうじゃないけどさ、やっぱりこれだけいると楽しいじゃん。私の家、四人だったからそれ以上での食事って、基本みんなで外食とかしかないから。こんな風に毎日っていうのは新鮮で」
「デスデス。アタシも五人が最大でしたからこの一月半ぐらいは楽しかったデス」
「うん。それに、いつでも誰かいるっていうのも良かった。ガリィ達が絶対出迎えてくれたし」
「ま、おかえりとただいまを言い合うだけで割と嬉しくなるもんな」
クリスの意見に誰もが笑みを浮かべていた。家族の擬似体験みたいだけど、本当に色々と収穫のあった日々だった。俺は元より、了子のお腹の子がみんなに与えた影響は計り知れない。奏やマリアはさすがにしなかったが、それ以外の装者の子達はみなお腹に耳を当てる事を日課のようにやっていた。一部仕事などの兼ね合いで毎日は出来なかった子もいるけれど。
キャロルとエルなどは日に日に姉となる事を意識させられ、特にキャロルは、自分の両親もそうだったのかもしれないと感じ入っていたんだと思う。俺が了子のお腹に耳を当てるのを、どこか遠い目で見ていたのはきっとそういう事なんだろう。
「さて、では奏達とも過ごせるこの二日がある意味今年の夏最後の思い出か?」
「そうだと思うわよん。九月になると学生達は忙しいから」
「私達も新しい動きが始まるし、しばらくのんびりは出来ないわ」
「特にあたしらは最初で最後の大仕事があるからね」
「ええ、ツヴァイウイングの名の通り、世界中を飛び回ってみせる」
意気込む翼に奏も頷く。彼女達のワールドツアーは年明けから始まるが、その前に新作のアルバムを出す事になっている。とはいえ、それはある意味でツヴァイウイングだけのアルバムではないのだが。
「ホントに楽しみデスよ。ツヴァイウイングとマリアのコラボデス」
「本当に企画通ったんですね」
「ええ。世間的にはライブを一緒にやっただけでも、実質は同じ組織に属する装者同士。故に意外と話は簡単にまとまったの」
「それと、何よりみんなしてフルで聞いてみたいって思ったのさ」
「フル?」
思わず聞き返す響だが、それはみんな同じだったようだ。それを分かっていたのだろう。奏達三人がしたり顔で歌い始める。それは逆光のフリューゲル。そこで分かった。彼女達はショートサイズのデモを作り、それをそれぞれのスタッフへ聞かせたのだと。
「……と、こんな感じでね。仮歌を作って持ち込んだのさ」
「結果は今の貴方達と同じよ。とっても好感触」
「その結果、いつどこでとは言えないが、マリアが私達のライブのサプライズゲストに決まっている」
最後の言葉にテンションを上げる学生組。さり気無くクリスも声を漏らしている辺りが可愛い。これは来年は始まってから色々話題に事欠かないな。そもそもその頃にはこの場所に小さな生命がいるだろうし。
「あっ、そうだ。父さん、みんな揃ってるからアレをやろう!」
「おおっ! エル、ナイスアイディアデス! 中々ない機会デスからこの機を逃す訳にはいかないデスよ!」
エルと切歌が急にテンションを上げてこちらを見る。これは、やっぱりあのゲームの事だよな。思い出してみれば、あの日以来結局みんなでゲームをやる事はなかった。それぞれがやる事はあったし、俺が一人用のものをやってるのを見るなんて事もあった。だけど、全員でワイワイとやるのはなかったな。
「俺はいいけど、みんなはどうだい?」
「あら、家族でのゲームなら断る理由はないわよ?」
「ええ、眺めているだけでも楽しめますからね」
「了子さんとマムの許可が出たなら問題ないですね! じゃ、エルちゃん! キャロルちゃん! セッティングよろしくっ!」
「はい!」
「分かった」
笑顔で動き出すエルとキャロル。それを手伝うように切歌と調も動き出す。さて、ならこちらはこちらで準備をしますか。
「セレナ、悪いんだけど」
「飲み物とお菓子、ですね」
「一応アラームをしとくぞ。遅くても日付変わる三十分前には絶対止めるからな」
「えー、そりゃないよクリスちゃん。夜更かししよ~よ~」
「響? そうやって崩れたリズムをどこで戻すつもりかな?」
「そうよ。未来の言うとおりだわ」
「あー、響? 大人しく言う事聞いておけ。あたしも翼に似たような事よく言われたもんだ」
「あれは奏がだらしないからでしょ!」
装者達は誰か喋り出すとすぐに賑やかになる。それにしても、奏と翼のやり取りを聞いて俺も昔の事を思い出す。俺が二人と出会った頃は、まだ奏が女子高生になったばかりだった。当時から礼儀正しかった翼は、年上という事で奏を敬い、彼女と仕事や任務でしか付き合っていなかったせいか、かなり憧れを抱いていたらしい。
だけど、それも親しくなって奏の本性を見る事で変化したそうだ。敬意はあるものの、私生活の面では翼の方が上で、奏は色々と注意を受けていたとか。ただ、部屋の状態だけは翼の方が酷かったというオチが付くけれど。
「翼、この話題はそれぐらいに。下手に刺激すると翼の方がダメージ喰らうぞ」
「大丈夫だよシキ。とっくにみんな、マムさえも知ってるから」
「っ!? 嘘、ですよね……?」
「……残念ながら本当です。ガリィから聞きました」
「ガ~リ~ィ~?」
「仕方ないじゃない。翼の部屋、一日でよくもまああれだけ散らかせるって思ったものよぉ」
涙目でガリィを睨む翼だが、それに返って来たのは容赦のない事実。それにしても、本当にみんな打ち解けてきたな。家族ごっこと呼ばれてもいいとどこかで思っていたけど、エルを始めとして切歌やクリスなども本気で家族を欲している事もあってか、気付けばぎこちなくもお互いにダメな面や弱い所を見せ合えるようになってきている。
ガリィの申し訳なさそうな声に翼がシュンとしょげたところで皆が笑い、場の空気が和んだのでこれ幸いとばかりに俺はある提案をした。
「さて、じゃあ今回はこの前の続きをやる訳だけど、俺から一つ提案があるんだ」
「提案、ですか?」
「それは何だ、父さん」
娘二人の視線に笑みを返し、俺は今後を見据えた事を告げた。
「今後は、お正月にこれを続けて行かないか? 我が家の恒例行事みたいなものにして。すごろくみたいなものだし、切歌達で分かったけど、簡単なこの国の勉強にもなる。こういうのって意外と馬鹿に出来ないからさ」
「あー、いいかも。でも、出来ればお正月じゃなくて二日か三日辺りがいいなぁ。ほら、お正月は色んな事があるから」
「なら、あたしも賛成だ。シキの言う通り恒例行事ってのはいいと思うけど、正月ってのは響や未来の場合、家族へ挨拶とかもあるしな」
「そうだ。私もお父様へ挨拶をせねばならない」
「だそうよ。シキ、子供達が出来たら余計お正月は難しいと思うわ。なら、響の言う通り三が日の間としたら?」
「そうだなぁ。たしかに立花家の人達や小日向家の人達に八紘さんを加えてゲーム、って訳にもな……」
理想ではあるけど、現実的ではない。それでも、いつかはそうしたいと思う。ゲームは無理でも、あの人達とも年始の挨拶を普通に出来るようには。そう思って天井を見上げていると、急に視界の中へミカが現れる。
「な~に難しい顔してるんだ? ヘタな考え休むに似たりって言うゾ?」
「ミカにしては難しい言葉を知ってるな」
「おー、この前ミカもガリィに言われたんだゾ。ミカみたいなのは、何も考えず思った通りにする方が上手くいくって」
「一理あるな。そういう意味では父さんはミカ寄りだ」
「言い返せないのが辛い……」
本当にキャロルは容赦がない。でも、聞くと昔からパパ相手にも辛辣な事を言っていたらしい。まぁ、言葉のチョイスは今の方がキツイみたいだけど。それもキャロルなりの甘え方と思って俺は甘んじて受け入れる。そうこうしている内に準備が整い、いつかのような状態になる―――と思ったら、何故かチーム毎に固まるのではなく、コントローラーを誰かが持って、後は適当にその周囲にいるという状態へ。
「いきなりイベントかよ!?」
「わわっ! 噴火だよ噴火!」
「阿蘇山……? どこにある山でしょう?」
「九州のようね。派手な演出に派手な被害」
「熊本や大分に被害が……」
「くっ! 私達の物件じゃない!」
「損害保険カードなんてあるんだ。どこで手に入るんだろ?」
「えっと、どこかのカード売り場で買えたはずだけど……」
言いながら気付いた。みんなはチーム戦だけど、対抗戦というよりは本当に家族でのイベントとして捉えようとしてるんだと。だからわざわざそういう風にするつもりはなく、同調などをして盛り上がりたいのだ。
そうやって始まったゲームは、平和に、時に騒ぎを起こしながら進み、目的地が初めて沖縄になった時、それを見ていたセレナがぽつりと呟いた。
「沖縄かぁ。行ってみたいな」
「あれ、セレナってそんなに泳ぐの好きだっけ?」
「いえ、それだけじゃなくて、この前のギアのテストで水着になったじゃないですか。なら、もしかして水中でも平気なギアとかもあるのかなって。そうしたら道具なしでスキューバーダイビングとか出来るなぁって」
「面白い発想ですね。水中用ギアの進化系ですか」
「やってみる価値はあるかもしれないわね。上手くすれば、費用をS.O.N.G持ちで旅行出来るし」
「うわ、了子さん汚いね。でも、あたしも乗っかるよそれ」
奏の意見に誰もが笑う。でも、そこですかさず常識派のクリスが一言正論を。
「でもよ、シミュレーションでいいじゃねーか」
「甘いなぁクリスちゃん。そこは、仮想と実物じゃ同じになるか分からないからって押し通すんだよ」
「響、そういう時は頭使うんだ」
「でも、否定し切れないのも事実です。それに、そう言ったら司令はこっちの本音を分かった上で許可してくれそう」
どこか苦笑するような調の言葉に全員が頷いた。風鳴さんはそういう意味で理解ある人だ。それらしい建て前を用意し納得させられるだけの材料を見せれば許してくれるだろう。こんな話を出来るぐらい、今の俺達は家族っぽいような空気になっている。
「沖縄旅行はいいけど、まずはゲーム内で沖縄を目指す方が先じゃない?」
「ではマスター、ここは新幹線カードを使っては?」
「いーや、先にぶっとぶべきだゾ」
「貧乏神が近くにいるし、僕はミカに賛成するよ」
「地味な移動か派手な移動。当然私は派手を推す」
「分かった。では派手に飛んでみるか」
キャロルチームはカード使用。これが四国へ飛んでまあまあ。フェリーで沖縄を目指す事になりそうだ。
「私達はどうしよっか?」
「カードは何があった?」
「移動系はオレンジカードぐらいだな」
「待て、銀河鉄道カードがある。現在位置ならこの方が早いはずだ」
「うし、じゃ星空の旅と洒落込もうか」
旧二課チームはプラス駅しかない宇宙の旅で沖縄を目指す。何というかすっかり楽しんでる。
「こ、このままでは貧乏神がアタシ達に来るデスよ?」
「ならば、とっておきのこれを使う時!」
「そ、それは……マリア!?」
「九州カード……」
「いい判断だと思います。鹿児島や宮崎に行かなければ一気に接近出来ますし」
旧F.I.Sチームはカード使用で沖縄付近を狙うも、到着は熊本と微妙。だが、現在トップの位置に着いた。
「ホ~ント、みんなして楽しそうねぇ」
「了子は楽しんでない?」
「楽しんでるわよ。ただ、不安もあるの」
「不安?」
了子の言葉に首を傾げる。確かに何事も上手く行くとは限らないし、先行きが分からない事で心配になる事はある。だけど直近で不安になる事なんて、と思った時に一つ思い当る事があった。
「お腹の子?」
「ええ、そうよ。無事に生まれてくれるとは思うけれど……ね」
マタニティブルー、という奴なんだろうか? いや、これは違うな。了子はきっと産んだ後の事を不安に思っているんだ。お世辞にも了子は家庭的な女性じゃない。だからこそ子育ての本を読み、せめて知識だけでもと備えている。実際は了子だけじゃなく、ガリィ達やセレナも手助けしてくれるけど、やはり実の母として自分で出来るだけの事はしたいんだろうな。
「大丈夫だよ。頼りないだろうけど俺も手助けする。それにみんなもだ。了子は無事に産んでくれればそれで大仕事達成だよ」
「ふふっ、その後の事は?」
「一緒に頑張ってくれると嬉しいかな。それに、みんなだって参加したいと思うよ? 何せ、奏とマリア以外はみんな一人っ子だし」
「……人気者確定だものね」
「うん、確定」
互いに小さく笑い合う。視線の先ではみんながゲームをしながら一喜一憂していた。だけど、笑顔だ。苦笑に微笑、大笑い。どれもみんな笑っている。その後は了子も響達に合流して楽しみ、俺もキャロル達のところで一緒になって騒いだ。
ふと気付けば時間も九時を過ぎており、一旦女性陣は入浴となった。俺は一人待つ事にしたのだが、マムだけがその場に残った。
「どうかしたんですか?」
「いえ、大した事ではないのです。ただ、やはり貴方の方も早急に用意するべきと思いまして」
「あー、そうですね。男の子が生まれたら、いずれは」
「それだけではありませんよ。出来ればそういう事はそちらでお願いしたいと思うからです」
「…………えっと」
「何も責めている訳ではありません。貴方もそういう意味では分別があると分かっています。ただ、そういう事もしたくなる事もあるでしょう。その際は、貴方用の方でする方が色々と不都合が少ないかと思いまして」
何というか凄く気まずい。義母にエッチの事を心配されるとか。まぁ、今のところそういう事を風呂でしてないけど、いつかはと思っているために返す言葉に困る。だけど、マムの言う事はもっともだ。基本我が家は女性が大部分を占める。なら、気を遣うのは俺の方。そういう事もやはり色々考えないといけない。いくらハーレムだからって、無計画や無秩序に動いていい訳じゃないし。
「そう、ですね。分かりました。ちゃんとそういう事は考えて、今のところは場所を変えます」
「そうしてください。キャロルやエルも分かってはいますが、何分まだ精神面は幼い所があります。父親として、出来るだけ男をあの子達には見せないように」
「はい。ありがとうございます、マム」
「いいのです。それに、敬語は無くても構いません」
「あー、出来るだけそうしてみますよ。その、そちらも俺を義理の息子と思ってくれていいんで」
「……そうですね。では、シキさん? くれぐれも孫たちの情操教育に悪い事は避けてください」
「はい、お義母さん」
そこで互いに見つめ合う事少し。すると何かおかしく思えて笑えてきた。見ればマムもそうだったらしく、口元に手を当てて笑っていた。
「ははっ、そろそろお義母さんもお風呂に行かれた方がいいですよ?」
「ふふっ、そうします。ああ、そうです。何ならシキさん」
「はい?」
「一緒に入りますか?」
こちらへどこか悪戯めいた笑みを浮かべて問いかけるマムが、一瞬とても可愛らしく見えた。この人にもそういう部分があるんだなと思い、苦笑しながら首を横に振った。
「勘弁してください。おもちゃにされるのが目に見えてますから」
「ふふふっ、そうかもしれません。なら、お先に」
「はい、ごゆっくり」
ゆっくりと離れ行く背中を見送り、俺は小さく笑みを浮かべる。マムも後二十年若かったら、俺とそうなってくれたのかね? あのスープが厄介な効果を発揮せずに済むのは閉経した女性だけ。つまりもうマムは子が産めない体と言う事。逆に考えれば、そうじゃなかったらマムもみんなのように?
「……若い頃のマムって、一体どんな女性だったんだろ?」
気になるけど、何となく分からなくもない。了子に近い感じだったのかもしれないと。了子もフィーネとして覚醒する前は地味な研究一筋な女性だったらしい。マムもそうだったんじゃないかと思う。ただ、結構な美人さんだったと思うんだよなぁ。意外と研究優先で男を何人も袖にしたとか? うん、この辺りはマムと二人で酒でも飲みながら聞いてみよう。きっとそうでもしないと話してくれないだろうし。
「まだまだ俺達は知らない事だらけなんだなぁ……」
もしかしたら、まずはお互いの身の上話をする事から始めないといけないかもしれない。全てとは言わないけど、俺達は今でさえ知らない事が多い。可能な限りの話せる範囲で過去を教え合い、共有した方がいいかも。……でも、これは慎重にいこう。何せ他ならぬ俺が過去が無さ過ぎるんだし。
この後、女性陣が戻ってきたのと入れ替わりに俺が風呂へと向かい、さっさと汗を流して戻ると若干驚かれた。ま、男の入浴なんて速けりゃ五分程度だよ。そう言うと女性陣のほとんどがちゃんと体を洗えとか、ゆっくり浸かれと言い出す流れに。
仕方ないので今後は出来るだけそうすると返して、強引に会話を終わらせてからゲームを再開。この時点で既に時刻は十一時近くになっており、今やっている一年が終わったら終了と決めてプレイ続行。
「そういえば、父さんは以前皆さんとゲームをした時に中々変わったゲームをやったと聞きました」
「ん? ああ、ホラーゲームの事か」
みんなが怖がってたのを今でも思い出せる。あれ、日が出ている時だったから良かったけど、夜だったら確実クリスと切歌が煩かっただろうなぁ。
「それは、これでも出来るんでしょうか?」
「出来るよ。というか、これでやったんだよ」
「父さん、俺はそれを見てみたい。中々出来が良いと聞いた」
「あー、だろうね。以前風鳴さんにムービーやストーリーを見せたら、出来のいい和製ホラーだって褒めてたよ」
ちなみにああ見えて風鳴さんはそのゲームが苦手だった。とはいえ、格闘やアクションは、であり、意外にもRPGやシミュレーションは得意だそうだ。理由は簡単。ゲームではコマンドを入れなければ技などが出せないが、現実はそうではない。つまり、現実で格闘技が強いからこそ、ゲーム的な部分が苦手なのだそう。逆にシミュレーションなどは普段の指揮などでやっている事の延長なので楽なんだとか。
にしても、面白いのはみんなの反応。以前見た事のある中でクリスと切歌は明らかに嫌そうな顔をしてる。マリアとセレナは微妙そう。まぁ、あれは双子とは言え姉妹が主軸だもんな。キャロルとエルは興味津々と言った感じ。了子とマムは話題のゲームが分からないため、静観といったところだろう。
「じゃ、今度エルやキャロルがいる時にやってあげるよ。ただ、結構怖いから気を付けて」
「そんなにか?」
「楽しみです」
「うわぁ、エルちゃんもキャロルちゃんも度胸あるねぇ。ね、クリスちゃん」
「……なんであたしに振る」
「切ちゃん、二人はああ言ってるけど?」
「べ、別にいいんじゃないデスか? アタシは好きにすればいいと思うデスよ?」
ニヤニヤとしながら響と調が怖がりの二人を見つめる。ふむ、ならいっそ一作目からやってみようかな? こうしてゲームは終了となったのだが、俺がVCでそのシリーズの物を探し始めるとみんなしてそれを見つめてきた。了子とマムまでいたので、中々どうして家族らしい一幕である。
「あー、やっぱりこれだと三つか」
「そんなにあるのねぇ」
「いや、たしか全部で五作か六作あるはずだ。リメイク含めるともっとだけど」
「おー、それは凄いゾ。で、全部怖いのか?」
「……怖いけど、同時に哀しい話だよ。全部人の業ってものが描かれてる。大抵邪悪を封じる儀式とかが関わってくるんだけど、それを失敗させたのはいつも恋愛絡みでさ。愛って強いけど弱さでもあるんだって、そう感じるんだ」
俺がそう告げると、一様にみんな黙り込んでしまった。どうしたんだと思うも、そういえばここにいるみんなは愛の持つ強さと怖さを良く知ってるからだと気付いた。愛故に世界を壊そうとしたキャロルと、愛故に月を破壊しようとしたフィーネを筆頭に、それぞれが戦う事を選んだのは全て愛に繋がるもんな。
「父さん、最初のでいいです。簡単にストーリーを教えてくれませんか?」
「えっと……ある兄妹がいて、二人には所謂霊感と呼ばれるものがあった。で、ある時曰くつきの屋敷へ兄の恩師とも呼べる先生が調査のために訪れ消息を絶つ。それを探しに兄が行き、今度はその兄を追って妹が訪れるところから物語は始まるって、そんな感じ」
「その曰くが先程言っていた儀式なのか?」
「うん。それが失敗してしまったから封じなきゃいけない邪悪なものが漏れ出して、屋敷全体を包んでるんだ。中は怨霊の巣みたいになってる」
詳しく話したいけど時間も時間だ。切歌辺りが寝れなくなるといけないのでここまでにする。
「詳しい話はまた今度ね。時間も遅いし、一部はこういうの苦手だから。また明るい時にでも話すか見せるかするよ」
「そうね。切歌? お手洗いは大丈夫?」
「……マリアは意地悪デス」
「クリスは平気だよな?」
「あ、当たり前だろ。別に何て事ねえ」
「じゃ、シキさんに詳しい話してもらう?」
「響?」
未来の優しいけどどこか怖い声で響が背筋を伸ばす。うん、今のは怖い。見れば響だけでなく同じようにクリスをからかおうとしていた奏も似た動きをしていた。すると、その雰囲気を一遍させるかの如くマムが手を二度鳴らした。
「さあ、もう寝ましょう。話の続きは朝起きてからです。全員手洗いをすませ就寝ですからね」
「そうね。夜更かしは厳禁よ? もししたら、お父さんがこわぁい話を聞かせるから」
「ただし、一部限定ね。他の人達には別の方向で罰を与えるんでよろしく」
「じゃ、聞いたね響と切歌。それと調もだよ。エル、キャロルと一緒にさっさと寝るようにね」
「はい」
「分かっている」
マム、了子、俺、奏と流れで就寝を促し、この日は解散となった。余談ではあるが、俺と了子はエルとキャロルに抱き着かれてしまった。どうやら怖くはなかったが、甘えたい気持ちになったらしい。なので、今度はマムにしてあげたらと言うと、二人してやってみると言っていた。その内マムも一人で寝る事が減るだろう。今も時折切歌や調が来る事があるそうだ。エルとキャロルにはお祖母ちゃんでも、あの二人にはお母さんだからな。
―――ね、アナタ? 分かってると思うけど、もうすぐ大仕事お願いするから覚悟してね?
寝る寸前に了子が冗談めかして言った言葉。その意味を噛み締めるように頷いて俺は目を閉じた。生まれてくる子の名前。それを俺が決める事になっているからだ。いっぱい悩んで、ありったけの想いを込めよう。そう思って俺は意識を手放すのだった……。