「とりあえず、私達はカルマ・ノイズに備える事。おそらくだけど、近く何か動きがあるのは間違いないわ。それにこの世界の装者だけでは対処出来なくなる」
「それを阻止するために私達が呼ばれた。そう考えるのが妥当だな」
「もしくは、見せてくれたのかもしれません」
「見せる?」
「何をだ?」
マリアと翼が揃って疑問符を浮かべると、響は噛み締めるように答えた。
「手が届く世界もあったんだって。私達の抱いた悲しみや苦しみがない世界もあるんだって、そう教えてくれたんです。例え自分がここの住人じゃなくても、そういう世界もあるんだって、そう思うと嬉しくなりますから」
「……有り得たかもしれない可能性。だが、それは私達が諦めず足掻いた結果の末。そう考えればこれからも手を伸ばせると、そういう事か」
力強く頷く響を見て、マリアがしみじみと呟く。貴方らしいわ、と。それに照れ笑いを見せる響だったが、すぐにその表情を引き締めた。
「だからこそ、この世界を無くさせはしません。みんなが掴みたかった未来が、笑顔が揃っているんですから」
拳を握り締め、響はそう告げた。翼もマリアもそんな彼女に何も言わなかった。ルナアタックもフロンティア事変も、響は最後には手を掴む事が出来た。だが、唯一その手が掴めなかったのが魔法少女事変。後少しとまで差し伸ばして届かせられなかった相手。それがキャロルであった。故に、彼女はこの世界を守りたかった。エルを双子の姉妹として扱い、オートスコアラー達と家族になり、シキと了子を父母と呼ぶ、そんな姿を見せられたから。
「……とりあえず、今日はもう寝ましょう。そして明日、S.O.N.G本部へ行って、こちらの装者と模擬戦をさせてもらうの」
「戦力を確認しておくと言う事か」
「ええ。こちらは今の私達よりも幾分か年月が経過しているようだけど、実戦経験はこちらよりも少ないみたいだし」
「たしか、アルカ・ノイズをキャロルちゃんが制御出来るからでしたっけ。もしそうなら、エルフナインちゃんにも同じ事出来ないかな?」
「おそらく無理だろう。原理を聞いてみなければ分からないが、キャロル本人しか出来ない芸当のはずだ。でなければ、こちらでも早々に対処されているだろう」
翼の言葉に響が残念そうに項垂れた。せめてそれが可能になるだけでもかなり平和に近付くからだ。二人もそれが分かったのだろう。どこか悲しそうに笑みを浮かべて彼女を見つめていた。その後、響と翼はそれぞれの割り当てられた部屋へ戻りベッドへ横になる。だが、響は中々寝付けなかった。思い出していたのだ。あのキャロルとの最後の戦いで、手を可能な限り伸ばした時の事を。たしかに掴んだのだ。しかし、掴み続ける事が出来なかった。もしあそこで掴み続けていたのなら、もっとああしていたら、ああ出来ていたら。そんな事を考えてしまって、彼女は眠気が来なくなっていた。
「……あまりこの世界に深く関わらない方がいいのは分かるけど……」
知りたい。そう思ってしまうのだ。どうしてキャロルと手を取り合えたのか。どうやって了子やナスターシャをも助ける事が出来たのか。知ってはいけないと思えば思う程、それを知りたい欲求は高まっていく。目を閉じればあの時の光景が甦る。イグナイトモジュールを使い、ありったけの想いと力で伸ばした手。それへキャロルが手を伸ばして掴んだ瞬間を。
「もしかしたら、奏さんやセレナさんがいなきゃ、了子さんやナスターシャ教授がいなきゃ、届かせる事は出来ないかもしれない。だとしても……」
暗くなりそうな気持ちに頬を軽く叩き、響は目を閉じた。もう考えるのを止めようと、そう結論付けて。それでも、どこかでこの気持ちはくすぶり続ける事となる。
明けて翌朝、セレナ達手製の朝食を食べ、マリアが昨夜話し合った通りの提案を持ちかける。それに何の疑問も抱かず、代表して翼が了承。こうして三人は平行世界の装者達と模擬戦を行う事となるのだが、すぐに彼女達は自分達の読みの甘さを悟る事となった。最初に相対したのは、響に調、そしてセレナだった。
「「「恋をして愛を知る。そんな時に憧れた」」」
「なっ!?」
「その組み合わせでユニゾンだと!?」
平行世界組は、どんな組み合わせでも見事な連携や協力攻撃を仕掛けてきたのだ。阿吽の呼吸。そう呼んで差し支えないレベルの、である。三人からすれば、それだけの攻撃を出来るのは切歌と調ぐらいだろうものだ。それを、無意識レベルでやってのけている。それを実感し、三人は休憩中その事を話し合った。
「どう思います?」
「先程尋ねたが、理由については詳しく話せないと言われた。ただ、全員が要シキの妻である事で察して欲しいと」
「同じ男を愛したから? それって……」
「愛、ですかね?」
「そう、これが愛。愛の力ね……」
出した仮説に腕を組む三人。未だに乙女である彼女達には想像もつかないだろう。装者達は九人での性行為や、三人や四人などでの複数プレイさえも幾度となく経験している。果てには、本来ならば誰にも見せられない行為までも見せ合っているのだから。そういう意味でも、こちらの装者達は強力だった。連携や同調の質が明らかに上だったのだから。
「……イグナイト、使ってみましょうか」
「そうだな。このまま押されたままでは終われん」
「ええ。私達では向こうのようなユニゾンなどは無理。だからこそ、向こうにはないもので突き破るしかない」
マリアの言葉に二人も頷いて再開された模擬戦の相手は、セレナをリーダーとした元F.I.S組だった。三人の世界ならばマリアがリーダーをする組み合わせであるが、だからこそ警戒を強めて三人は胸元のイグナイトモジュールへ手をかけた。
「「「イグナイトモジュール、抜剣っ!」」」
”ダインスレイフ”
瞬時に漆黒を纏って動き出す響達。それにも動じる事無くセレナ達は立ち向かう。攻めを切歌と調が担当し、その援護をセレナが担当する戦闘スタイルは、攻め手のみの響達にとっては少々厄介であった。何せ切歌と調のコンビは元の世界でも手強く、二人であっても打ち崩すのは至難の業であり、ましてやそこへセレナによる支援が行われる事でより困難な存在へと変わっていたのだ。
「嫌よ嫌よと言ってるだけじゃ」
「私の想いは止められない」
「だから分かっているのよ、貴方」
「「「ホントはしたいと思ってるんでしょ?」」」
「予想はしていたが……っ!」
「ええっ! ユニゾンにシンクロ……っ!」
「連携や協力は向こうが上です。でもっ!」
切歌と調のデスマーチの如き攻撃を翼とマリアがこじ開ける。その一瞬を響が駆け抜けセレナへ迫る。相手の要はセレナ。それを潰せば三人で切歌と調を倒す事は出来る。
「届けぇぇぇぇぇっ!」
「「セレナっ!?」」
響の放つ一撃がセレナへ直撃し砂煙を巻き起こす。素早く砂煙の中へと駆け寄る切歌と調に合わせるように、翼とマリアも響へと合流した。
「どうだ?」
「届いたはずです。だけど」
「だけど?」
「……微かに聞こえた気がしたんです。あの音声が」
「音声……っ! それって!」
マリアが声を上げた瞬間、砂煙の向こう側から二つの音声が聞こえてくる。それはイグナイトモジュールの起動音。まさかと思って表情を引き締める響達の目の前で砂煙が晴れる。そこには、漆黒を身に纏ったセレナ達がいた。
「危なかったよ。踏み込みや打撃が若干こっちの響より速いし重いから」
「マリアもアガートラームだから違和感強いデスしね」
「うん、それに翼さんの太刀筋も鋭い感じ」
どこかピリリとした空気が流れ始める。それが向こうの全力解放の証拠だと理解し、響達は苦笑した。気付いたのだ。たしかにこれまで向こうはイグナイトを使っていない事に。そして、それは自分達と対等の条件で戦おうとしていたからだろうとも。
「侮られてはいないが、少々癪だな」
「ですね。先にイグナイト使ったの、こっちですし」
「だけど、イグナイトでの戦闘経験はこちらが上。その扱いに慣れているところを見せてあげましょ?」
「「はい(ああ)っ!」」
結果として、イグナイト同士の戦いは響達の勝利で幕を閉じる。やはりその出力に慣れている事が勝負を分けたのだが、それ故に悔しさも残る結果と言えた。通常状態では、響達の敗色濃厚と確定したからだ。これに翼は更なる精進を誓い、マリアは切歌と調以外でもユニゾンやシンクロが出来るように提案するべきと考え、響は単純にそうなれた愛の力に感心していた。
シャワーで汗を流し、本部内の食堂で食事を取る事にした響達。セレナ達から一緒にシャトーでの昼食に誘われたのだが、三人で話し合いたい事もあると辞退したのだ。と、そこへ現れる二人の人物。響と切歌であった。どこか上機嫌で会話しながら、二人は響達の傍へと近付いていく。
「あっ、ビッキーさんデス」
「ホントだ。そっちもこれからご飯?」
「う、うん」
「ビッキーさんというのは何だ?」
「大方こちらの響とそちらの響の呼び分け方でしょう」
「「正解(デス)」」
笑顔で告げる二人に響も合点がいったのか手をポンと打った。安藤創世が自身を呼ぶ時のものだったからだ。
「でも、どうして二人はここに? さっき、セレナさん達は家に帰ってご飯だって」
「あー、私達はちょっと野暮用があってね」
「デスよ。それでみんなには先に帰ってもらったんデスけど」
「空腹感が強いので少しだけここで食べていこうと?」
「……貴女達らしいわ」
翼の問いかけに照れくさそうに笑う二人を見て、マリアがため息混じりに額へ手を当てる。一人、響だけが同じような思考をすると悟って苦笑いを浮かべていた。
「じゃ、ごゆっくり」
「また後で、デース」
手を振って歩き出す二人。だが、その体が三人の横を通過する瞬間、ふわりと漂ういい匂い。その初めて嗅ぐ匂いに三人は揃って鼻を動かした。
「……香水? いや、シャンプーの匂いだろうか?」
「二人して同じ物を?」
「可能性はなくはないですけど、そんな感じじゃないですよこれ。何か、美味しそうな感じです」
「立花らしい、とは言えんな。実は私もそんな風に思った」
「翼も? じゃあ、何か二人でこっそりとお菓子でも食べてたとか?」
「野暮用の、正体見たり、お菓子食い……ですか?」
響の流用川柳に翼とマリアが苦笑する中、話題の二人は離れたテーブルに座り、食事を始めていた。
「あーあ、早く欲しいなぁ」
「私と調は妊活してもらってますからね。楽しみデスよ」
「いいよねぇ。こっちは中々お父さん達がさぁ。事実婚でも重婚は許さんって」
腹部を撫でながら会話する二人。そう、彼女達の野暮用はシキとのセックス。誰もいなくなったシミュレータールームで3Pをしていたのだ。既に奏とマリアが実証したシキとのセックスで孕む方法。それを翼にセレナ、クリスはしてもらっているのだが、最近になって切歌と調もそれをされるようになった。理由は簡単。共に大学の卒業が見えたからである。
「響さん達のパパさん、頑固デスね。ママ達は許してくれたデスのに」
「お母さん達は、どちらかって言うと諦めたって感じだよ。後は、うちはお祖母ちゃんがマムと茶飲み友達になったのも大きいかも。まぁシキさんは、それぐらいじゃないと娘の父親は務まらないって笑ってるけどね」
「……じゃ、シキさんもそうなるんデスか?」
「かもしれない。本人も言ってたよ。夢子ちゃんが彼氏作る時が来たら、私のお父さんの本当の気持ちが分かるだろうって」
そこで会話を切り、響はご飯を口に運んだ。その味は、やはりどこか普段のものより落ちる気がした。
その夜、響は一人で大浴場の湯船に浸かっていた。眠くない訳ではなかったが、今日の模擬戦の事がずっと頭の中を巡っていたのだ。故に体を動かして汗を掻いたので、もう一度風呂へ入りに来ていた。
「……奏さんとマリアさんがいなかったけど、きっと同じ事が出来るんだろうな」
初めて聞く歌ばかりだった。様々な三人の組み合わせで、あれだけ見事なハーモニーを奏でられては認めるしかない。何せ未来さえも立派に装者として動いていたのだ。こちらの装者達は、チームワークで言えば完全に上だと。
「もっと聞いてみたかったな、みんなの歌」
最初はバラバラに歌っていたかと思えば、サビ前から一気に合わさる歌があれば、最初のみ揃えて、後は重なる事もなく歌い、最後のサビだけ合唱するのもあった。ユニゾンでありシンクロであり個人であり。様々な旋律が三人を包み、襲い掛かってきたのだ。
「…………だけど、あれはこっちのみんなだから歌える歌だ。どれだけ仲良くなっても、私達じゃ歌えない」
響も気付いている。あの歌の数々は、要シキと関ったからこそ生まれた歌だと。故に、例え自分達が今まで以上に仲を深めても、似た事は出来ても同じ事は出来ないと理解していたのだ。それを思うと複雑な気持ちとなる。何もシキとそうなりたい訳ではない。ただ、本気で好きになる異性と出会えた事が羨ましいと思ってしまったのだ。
「私も、出来るかなぁ」
そんな事を呟き、ふと響はあるフレーズを思い出した。
「恋をして愛を知る。そんな時に憧れた」
「だけど気付いてしまったの。愛を知って恋をする。そんな事もあるんだと」
聞こえてきた歌に響は視線を動かした。そこにはもう一人の自分であり、確実に交わらない存在が立っていた。その裸体を見て、彼女は改めて思うのだ。胸の大きさも、腰回りも、更に尻の肉付きさえも違う事に。
(私よりも女らしいよね、こっちの私)
愛する男と共に過ごしているからだろうと思い、響は小さく苦笑。それに相手は不思議そうに首を傾げながら、静かに近付いて行く。
「私もご一緒していいかな?」
「え? う、うん」
「じゃ、お邪魔しまーす」
隣り合うように湯に浸かる二人の響。その構図がおかしいのか、彼女達は揃って笑った。
「どうして今の歌を?」
「えっと、私には遠い歌だなぁって」
「あー……かもね。正直さ、私もシキさんに、可愛いとか色気があるって言われなかったらこうなってないから」
「可愛い……色気がある……」
「うん。あれはルナアタックが終わった後の頃だなぁ。シキさんって、すっごくマッサージが上手いんだ。それで、じゃあやってもらおうと思ってさ。そうしたら会話の流れでそんな事言われた」
「可愛いって?」
「そうそう。私って奏さんや翼さん、クリスちゃんみたいじゃないからってそう言ったら、私には私なりの可愛さや色気があるからって」
それだけで響には分かった。嬉しくなってしまうだろう事が。何せ、言われた事がないからだ。中学は途中からノイズ関係で悲惨なものへと変わり、高校は女子校で異性と接する機会が激減したために。そんな中ではっきりとそう言われたら、確かに多少意識してしまうだろうと分かったのだ。
「それだけじゃない。シキさんは、私の命の恩人なんだ」
「え?」
「そっちはどうしたのか分からないけど、ガングニールの侵食、こっちはシキさんの能力で解決したんだ。それが恋が愛に変わった瞬間かな? ああ、この人なら全てを委ねられるって、そう思った」
そう告げる響の眼差しは、とても懐かしそうで愛おしいものを見つめるものだった。その横顔の美しさに響は息を呑む。自分にもこんな顔が出来るのかと、そう思って。
「それで、そっちはどうやったの?」
「え? ああっ! その、未来が神獣鏡のギアを纏ってきて、その攻撃で未来と一緒に……」
「あー、そっかぁ。その手があったか」
「むしろそれ以外があった事が驚き。あの人の能力って、そんな事も出来たんだ」
「結果的に、かな。シキさんのは、基本ギア関連だけに特化してるんだよ」
「へぇ」
それからはお互いの事を覚えている頃から確かめ合った。幼少期から装者になるまでを。そこで二人は知ってしまう。あのライブ後から、既に大きく道が異なっている事を。
「……そっか。そんな事になってたかもしれなかったんだ……」
「……うん。でも、こっちもそっちみたいになってたかもしれないし」
「どうかな? 奏さんの話じゃ、シキさんの能力でリンカーを使わなくなったの、ライブの半年前ぐらいって言ってたよ。じゃ、シキさんがいないそっちは無理なんじゃないかな?」
やんわりとした仮説に響は何も言えない。理解したのだ。相手は、自分の方が有り得ない可能性を掴んでいるだろう事を察したと。そして、それを裏付けられる事実を彼女は知っている。奏が死ななくても翼が死に、同時にライブ会場が凄惨な事になるのを。更に、もっと酷い結果さえある事も。
「ね、お父さんとはどうなったの?」
「えっと、もう再会出来てお母さん達と一緒に暮らしてる」
「そっか。良かったぁ」
「……あのさ、一ついいかな?」
自分よりも幾分女らしい自分を見て、響は最後にこれだけを確かめようと思った。彼女ももう子供ではない。愛し合う男女がいて、同じ場所で暮らしていれば、何をするのかぐらい察しがつく。だが、きっとそれは他の女性ともだ。それで平気なのかと、そう思ったのだ。
「あの人が自分以外とその、エッチしても平気?」
「平気じゃないよ。でも、嫌でもなくなったかな? 今は、いいよ! じゃあ、私に夢中にさせてみせるからっ! ……て感じ」
「……嘘」
「これがホントなんだなぁ。言っておくけど、未来やクリスちゃんもそうだよ。みんな、もっと自分に夢中にさせてやるって、そう思って奪い合い」
苦笑いしながら告げられる内容に、響は心から衝撃を受けていた。だけども、そんな響へ彼女は理解出来るだろう言い方をする。
―――みんなで一緒に幸せになりたい。シキさんはそう言ってくれた。きっとシキさんが一人を選ぶと、みんな泣いてた。選ばれなかった人も、選ばれた人も、シキさん自身も。だから、今の形になった。ベストじゃないけど、これがベター。そう了子さんもフィーネさんも言ってたし。
みんな泣いていた。その意味を響は理解する。選ばれなかった人は簡単だ。選ばれた人は、その泣かせてしまった人達を見て涙を流す。そして、選んだシキはその涙する原因となった事で。誰も笑顔になれない。だからこそ、シキは茨の道を選んで進んだ。それを嫌がり離れるのなら、泣くのは自分だけで済むと、そう思ってと。
「強いですね、シキさん」
「え? あー、どうだろう? 多分外から見るとそう見えるだけかもしれないなぁ。内側から見ると、エッチで情けないとこが多い人だよ」
即答で否定された事に響は驚く。だけど、どこかで似たような事を経験したような気がして、彼女は記憶を探る。そして見つけたのだ。それは、父を褒めた時の母の態度。つまり、夫婦の反応である事に。
「……本当に夫婦なんだ」
「ん? うん、そうだよ。私はシキさんの奥さん。大切な人達が同じ奥さん仲間で、義理のお母さんと娘もいる。色々大変な事もあるけど、それ以上に楽しくて幸せだよ」
心の底から断言して笑顔を見せる響に、響は何も言えなかった。だけど、その幸せが伝わったのだろう。同じように笑顔を返すのだった。
その頃、翼も思わぬ来客を迎えていた。それはもう一人の翼。彼女は三人がキャロルと戦った事を察し、ある事を確かめるために部屋を訪れていたのだ。
「では、お父様は無事なの?」
「ああ、無事だ。要石は守れなかったがな」
そう、キャロルとの話で聞いた事から、風鳴の家が戦場になったのではないかと予測、八紘の安否を確かめたかったのだ。例え世界が違えど、敬愛する父である事に変わりはないと思って。
「良かった。そう、そちらでもお父様は無事なのね」
「……一ついいだろうか。何故そちらは、その、話し方を変えている?」
「分からない?」
即座に返された言葉に翼は息を詰まらせる。目の前の自分が使っている口調は、かつて奏相手にしていたもの。つまり、片翼となった風鳴翼では二度と使えないものだ。それを目の前の相手は誰にでも使っている。ただし、その場所はシャトーの中。つまり、家の中では剣ではないという事なのだ。
「その様子じゃ大丈夫みたいね。そう、私はここでは女なの。きっと、貴女は剣で在り続けるのでしょうね。それが悪いとは言わない。だって、私だってそう思っていた頃があるから。だけど、変えられてしまったの。あの人に、シキさんにね」
「……男女の関係となって、か」
「それだけじゃないけど、まぁそうね」
苦笑しながら答える彼女に、翼はむず痒いものを感じた。こちらの自分は可愛らしいと思ってしまったのだ。所作や雰囲気が女性らしく、また体つきも若干ではあるが自分より女らしい。こんな可能性があるのだろうかと、そう思いつつ、翼は内心で首を勢い良く左右に振った。
(有り得ないっ! 私がこうなるなど……こんな女性らしさに溢れる生き方など、決して出来はしないっ!)
防人として、自分は剣となると決めたのだ。あの忘れられない犠牲を出した時から。そんな風に思い直す翼を見て、もう一人の翼は少しだけ寂しそうな眼差しを向ける。
「志を高く、そして強く持つのは素晴らしい。でも、それに固執してはいけないわ」
「っ!?」
「変化が良いとは言わないけれど、変化しないのも良くないの。いえ、周囲や環境で変化させてもらえるなら、それを受け止めなさい。だけど、強引に変わろうとするのはダメ。適応は、意識するよりも無意識の方が正しいはずだから」
「……貴女は、そうだったと?」
「ええ。気が付いたら、その……エッチになってた」
「なっ!?」
思わぬ告白に驚愕する翼だったが、目の前の自分がそれを恥ずかしそうにでも、嬉しそうに言っている事に気付いてその様子を窺った。
「別にいやらしい意味ではないの。その、歳相応の興味を持てたって事だから。奏が見る見る綺麗になって、どんどん輝きを増していくのを目の当たりにして、私も興味が出た。そんなに恋愛とは、異性とは凄いものなのかと」
「それで要さんに?」
「ふふっ、そうだよ。ある意味、こうなった原因は私みたいだし」
「は?」
またも衝撃発言。だが、今度はその衝撃から翼が脱する前に彼女が茶目っ気たっぷりに笑みを浮かべてこう言った。
「私がシキさんへ迫ったから、あの人はツヴァイウイングを自分のものにしたくなったみたいなの。それまでは奏一筋の人だったんだけどね」
「…………そうか」
まさか自分に横恋慕などという気持ちが芽生える可能性があるとは。そんな風に感じて翼は強く理解した。目の前の自分は、決して有り得ない自分であると。それが分かっただけでも良しとしよう。そう考えて彼女は小さく息を吐く。何がどうなってもこうはなれないしならない。そう実感している彼女へ、翼がどこか悲しそうな表情を浮かべたのはそんな時だった。
「そっちでは、キャロル達はどうなったの?」
「…………おそらく予想通りだ」
「そう……」
そこで会話は終わった。翼は沈痛な面持ちの自分を横目で見つめ、その心痛を推し測った。奏を失った時の自分よりもある意味で辛いかもしれないと。その理由は、彼女自身が一番良く分かっている。あの奏だけが装者として戦っている世界。そこで知った奏の心。その時の自分と近いだろうと推測していたのだ。
「そちらは強いのね」
「……そうでもあるし、そうでないとも言える。私は、貴女を見ているとそう思う。強さは一つではない。私の強さと貴女の強さは質が違う」
「いえ、そちらの方が強いわ。私は、奏とシキさんを失っていたら、きっともう飛ぶどころか立てさえしない。だけど、そちらはそれでも立派に立ち、先輩と風を吹かせている。そんな振る舞い、私にはけして出来ない」
その内容に一瞬だけ反論しようとする翼だったが、結局はせずに終わった。奏はともかくシキは彼女の世界では出会ってさえいないのだ。失っていない相手である以上、悲しみや苦しみにはならないと告げようとしたのだろう。だが、向こうにしてみればそこを考えるのが普通かと思い直し、黙ったという訳だった。
と、その時何かの呼び出し音が鳴り響く。弾かれるように翼が通信機を取り出した。
「はい」
『例の黒いノイズが現れた! 場所は郊外の霊園だ!』
「霊園……? っ! 奏の家族が眠る場所ですね!」
『ああ。すまないが頼む』
二人の翼が動き出した頃、既に先んじて現場へと向かい出している者達がいた。その先頭を行くのはローラーで移動出来る調であった。それに続く形で切歌とセレナが、少し遅れてマリアと響が走っていた。こちらの響はクリスや未来と共に念のために待機している。
「もう日付も変わろうとしてるデスのに!」
「美容の大敵」
「仕方ないよ。ノイズはこっちの都合なんてお構いなしだから」
「マリアさん、翼さんです!」
「すまない! 出遅れてしまった!」
「いいのよ。こちらの翼は待機?」
「ああ、複数出現する可能性もあると伝えた」
「複数デスか。まぁ、関係ないデス!」
「うん、全部やっつけるだけ」
「奏の家族のお墓は、絶対守らないとね」
総勢六人の装者。それが現場に到着した時、霊園はまるで死の世界のような、異様な不気味さと雰囲気が漂っていた。深夜だからではない。何か別の理由でそうなっていると誰もが感じ取った。慎重に進んで行くと、開けた場所で、まるで何かを待っていたかのようにカルマ・ノイズが立っていた。だが、そこで響達三人は気付く。
「っ! 翼さん! マリアさん!」
「ええ、分かってるわ!」
「気を付けろ! あれはただのカルマ・ノイズじゃない!」
今までのカルマ・ノイズには見られなかった変化が見えたのだ。それは背中の羽。飛行型のカルマ・ノイズはいたが、人型に羽があるのは初めて見たのだ。飛行能力を有しているのは間違いない。そう判断し三人は身構える。一方、セレナ達は不思議そうな表情で彼女達を見た。
「あれが普通じゃないの?」
「何?」
「こっちで発見されたのは、前のもあれだった」
「そんな……」
「じゃ、こっちの私達が倒したカルマ・ノイズも?」
「デスよ? あれが標準じゃないんデスか?」
認識の齟齬がある。そう理解するも、そこは共に何度となく戦闘を経験した者達である。即座に意識を切り替えカルマ・ノイズへと集中する。詳しい話は後。そう考えて六人は動き出す。
「前衛は私達三人が引き受ける。そちらは援護を頼めるか?」
「分かった。切歌、調、いい?」
「OKデスよ!」
「フォローは任せて」
「お願い! じゃ、突っ込みます!」
響を先頭に翼とマリアが続く。それを追う形で切歌と調が走る。セレナは五人の動きを見つつ、適切な行動を取れるように思考する。すると、響の拳がカルマ・ノイズを捉えてその体を揺らした。だが、その感触に響が表情を歪める。
(硬いっ!)
ノイズとは思えない程の強度。それを目の前のカルマ・ノイズから感じ取ったのだ。そしてそれは翼やマリアも同様だった。アームドギア越しに伝わる感触に驚きと苦痛を浮かべたのだ。切歌と調も攻撃を物ともしないカルマ・ノイズに舌を巻きつつ、手を休めずに攻撃を続けた。
「セレナさん! この前のカルマ・ノイズって硬かったって言ってました!?」
「ううん! そんな事は聞いてないよ!」
「では、これは初戦の敗退を受けての変化という事かっ!」
「敗戦を糧に成長変化すると言うの? だとしたら初めてのケースだわ……っ!」
「なら、S2CAデスっ!」
「それならいけるはず!」
「いや、仕掛けるには早いかもしれん。それに、前回の敗戦を踏まえているなら……」
「当然何らかの対策はしているでしょうね」
響の拳や脚が炸裂するも、それを物ともせずに反撃を繰り出してくるカルマ・ノイズ。それを避け切れず、響は両腕を交差させて受ける。するとその体が激しく地面を滑るような状態で大きく後ろへ飛ばされた。その光景に誰もが息を呑んだ。
「立花っ!」
「大丈夫っ!?」
「な、何とか……」
膝をその場へ着き、響は疲れた顔で返事を返す。たった一撃の攻撃で一気に疲弊する。その事が周囲にカルマ・ノイズへの警戒心を最大まで引き上げる。その視線を受け、カルマ・ノイズは悠然と歩みを進めるのみ。それさえも余裕を感じさせる動きであり、翼とマリアは確信する。このカルマ・ノイズは今までのとは毛色が違うと。
「立花っ! 最後にもう一度だけ踏み止まれるか!」
「っ! はいっ!」
「セレナっ! 悪いけど少しだけ切歌達とあいつの相手を頼むわ!」
「分かりました! 二人共、行くよっ!」
「任せろデスっ!」
「足止めぐらいならっ!」
「やるぞっ!」
「ええっ!」
切歌と調と入れ替わるように翼とマリアが後退する。更にセレナもカルマ・ノイズへと向かって行き、響はその場へ何とか立ち上がる。正直に言えば、ここでS2CAは辛い。だが、攻撃力を考えるのなら、セレナ達にやらせるよりも自分達がやるべき。そう響は理解していた。故に呼吸を整える。体に残るダメージは、実はそこまででもない。しかし、まるで生きる力をかなり吸い取られたかのように感じてはいた。死の呪い。それを叩きつけられたかのように。
(よく分からないけど、多分あのカルマ・ノイズの攻撃を受けたらダメだ。掠っても直撃でも関係なく不味い……)
それをセレナ達に教えるべき。そう思うも、すでに大声を出す余裕さえないのだ。今は、S2CAのために残った力を振り絞らねばならないために。脂汗さえ流す響を見て翼とマリアは一瞬息を呑む。
「立花、本当に大丈夫なのか?」
「正直に言いなさい」
「……今にも倒れそうです。だけど、だからこそあのカルマ・ノイズを放置しちゃ不味いんです。動く死そのもの。そんな表現がピッタリくる感じなんです」
「動く死そのもの、か。これはこちらの小日向を連れて来るべきだったかもしれない」
「今までのものより呪いの要素が強いのかもしれないわ。だけど、本当にいけるの?」
「はい、やってみせます」
意を決した表情で返す響に翼もマリアも何も言わず、黙って彼女へ手を差し出す。それに響は小さく笑みを浮かべて手を繋いだ。その場へ響き渡る三つの絶唱。その悲しく切ない旋律にセレナ達はタイミングを窺う。カルマ・ノイズの攻撃をかわし、捌きながら。そして絶唱の旋律が消え、その束ねられたフォニックゲインを乗せた拳を握りしめ、響はその場を蹴って飛び出した。
「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!」
カルマ・ノイズへ叩き込まれる強力な一撃。そのエネルギーの奔流がその身を遥か上空へと巻き上げていく。だが、それを見届ける事なく響はセレナ達へ視線を向けて囁くように告げる。
―――後はお願い……。
その言葉を最後に倒れる響を見て慌てて駆け寄ろうとする切歌と調へ、制止する鋭い声が後ろから聞こえた。
「待ってっ! 今はカルマ・ノイズが先だよ!」
「セレナ……?」
「で、でも今のでやっつけたデスよ?」
「ううん、まだ倒し切れてない。だから響は私達に後を託したんだよ。S2CAは出来ないけど、私達も絶唱を使って一斉に叩き込もう。それしかとどめを刺す術はないから」
視線を上へ向けるセレナ。そこには、たしかにカルマ・ノイズの姿は見えた。羽を広げてフォニックゲインの奔流を切り裂くようにし、カルマ・ノイズはそのまま地上へと戻ってきた。その姿はダメージこそ負っているものの、致命傷には程遠い事が見て取れる。そして、その理由もセレナは察していた。
「っ!? あの硬さは、最初からS2CAを使わせる事を前提にしてたんだ! 防ぐんじゃなくて撃たせて耐え切る。それで疲弊したところを倒すつもりで」
「こうなると……」
「うん、あっちのマリア達も戦闘継続は厳しい」
「……やるよ、二人共」
自分達へ迫ってくるカルマ・ノイズを前に、三人は絶唱を使用した。再び霊園に響き渡る旋律。それを聞いても悠々と歩くだけのカルマ・ノイズ。その威圧感に飲まれかけながらも、三人は絶唱のエネルギーをそれぞれのアームドギアへ収束し、頷き合ってカルマ・ノイズへと叩きつける。
「「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」」
イガリマの鎌を、シュルシャガナの鋸を、カルマ・ノイズが両手で押さえる。それを見ていた翼とマリアは気付いた。さすがにS2CAを喰らった後では、絶唱の威力を受け止める事は避けたいのだろうと。イガリマとシュルシャガナのアームドギアが悲鳴を上げるように振動し、少しずつ亀裂が生じる。その瞬間、無防備な胴体へアガートラームの短剣が投擲された。
「これで倒れてっ!」
その祈りを込めた声にカルマ・ノイズが軽くぐらついた瞬間、切歌と調は握っていた力が弱くなったのを察してアームドギアへ力を込める。それが最後の一押しであった。合計で六つの絶唱を受けたカルマ・ノイズは跡形もなくその場から消滅。それを見届け、セレナ達は息を吐いた。こうして霊園での戦闘は終わりを告げた。響達三人へ大きな痛手を残して……。
「一つ聞いてもいいかしら?」
あの戦いの後、響は一旦S.O.N.G本部内のメディカルルームへ運ばれ、今はそこで眠りに就いている。翼は割り当てられた部屋で休息を取り、念のためにファラが傍についていた。そんな中、マリアはアガートラームの特性を活かしてS2CAの負荷を軽減出来たため、こうしてちゃんと朝に目覚めていた。そして、ある人物と会話していたのだ。それは、もう一人のマリア・カデンツァヴナ・イヴであった。
「何かしら?」
「どうして貴方はあの要シキという男の妻に?」
「知っても意味はないわ。そちらにシキはいない。それに、いたとしても、私のように惚れる事はないわ。知り合う切っ掛けも、惚れ込む切っ掛けもないでしょうから」
どこか懐かしそうに笑う彼女に、マリアはどう反応すればいいか分からない。要するに真っ当な惚れ方ではないと告げていたからだ。つまり、彼の持つ特殊能力が大きく目の前の女性との付き合いに関わっている。そう判断し、マリアはそれとなく探りを入れてみる事にした。何も興味本位ではない。聞いてしまったのだ。彼の特殊能力さえ使えば、もっと楽に戦えただろう可能性をクリス達が話していたために。
「そう。では、貴方が惚れた理由は彼の能力?」
「もしそう思うのなら、貴方もそういう面で男に惚れるという事よ」
即答。しかも、どこか軽い呆れを込めた声だった。マリアも咳払いをするしかない。ぐうの音も出ないとはこの事である。
「私がシキに惚れたのは、今にして思えば勘違いもあったかもしれない。だけど、一番は彼の素直さかしら? 一度でも心を許すと、欲望を隠す事なく伝えてくるの。それが、どうも可愛く思えたのよ。母性本能をくすぐられたのね。気付けば、彼に抱かれたくなっていた」
「……そ、そう」
思っていたよりも心にくる。そう感じてマリアは赤面していた。それはそうだろう。何せ自分自身から惚気話を聞かされるのだ。これを精神的に苦しまずに聞けるマリアではない。それを分かっているのだろう。彼女は大きくなり始めたお腹を撫でながら、笑みまで浮かべて話し出す。そう、初めてのキスから初体験まで赤裸々に。その生々しい内容にマリアは耳を塞ぎたくなった。特に、乱暴に扱われて喜んでしまったとの告白には、その場から逃げ出したくなる程の衝動を覚えたのだ。
「……と、こんな感じよ。それで私は彼の女になった」
「本当に私なの? そう思わずにはいられない話だわ」
「それは、貴方がまだ異性を本気で好きになった事がないからよ。姉代わりもいいけど、貴方が考えているよりもあの二人はこちらの幸せを願ってるわ。下手をすると、貴方が幸せにならないと自分達の幸せを掴もうとしないぐらいに」
「切歌と調が……」
「色々難しいでしょうけど、いい相手を探した方がいいわ。恋をして愛を知り、私の歌には深みが出たもの。休養前の私、ラブソングが一番得意だったのよ?」
「嘘……」
実はそれはマリアが若干苦手にしているものであった。恋愛をした事のないマリアは、ラブソングの歌詞に込められた意味が、時折つかみ切れていない気がしていたのだ。特に大人の恋愛となると納得どころか理解さえ出来ず、それでも精一杯背伸びして歌っていた。
「本当の恋や愛って、歌のような綺麗なものばかりじゃない。時には他者が見たら目を覆ったり耳を塞ぎたくなる事もある。でも、そんな中にも本当に愛情を通わせているものもあるの。それを私はシキと繋がる事で知った。まぁ、そっちは経験しない方がいいわ。姉妹で同じ男と、なんてね」
「当たり前よっ!」
即答。だが、どこかでこうも思っていた。セレナと共に笑えるのなら、そうなってもいいかもしれないと。顔を真っ赤にして言い返すマリアを見て、どこか楽しげに笑っていたマリアだったが、不意にその表情が真剣なものへ変わった。
「あの子は、しばらく動けないわ。今の内にそちらは一旦帰還して状況を話して対策を練ってくれる? 残念だけど、こちらはカルマ・ノイズの情報が少なすぎて打てる手がないに近いわ。それに、今回以上のカルマ・ノイズが出現した場合、こっちは動ける装者を総動員しての絶唱でも勝てないかもしれないから」
「分かったわ。翼に事情を説明して残ってもらうから。あの子と翼がいざとなればいるなら、少しは安心感も違うでしょ?」
「……ありがとう。そうしてくれると助かるわ。なら、こちらの人間もそっちに連れて行って。その方が色々な説明を省けるし、何より説得力があるはずよ」
こうしてマリアは翼へ事情を話し、平行世界へ残留してもらう事にした。そしてガリィを連れて一旦元の世界へと戻る。事態は、ゆっくりと動き出していた……。
進化するカルマ・ノイズ。一撃で全身の活力を奪われる能力。S2CAさえ耐え切る驚異の頑丈さ。全てがこれまでと違う相手に、装者達は苦戦を強いられる。そんな中、翼とセレナ、クリスの妊娠まで発覚し、事態はいよいよ三人が恐れた選択を迫られる。
次回、淫姫絶頂したいフォギア「もう一人の彼女達 その3」
呼ぶしかないのか……雪音達を……。
お楽しみに!
なお、予告は予定です。何の前触れもなく変更される恐れがあります。