この日、シャトーに新しい施設が出来た。とはいえ、それは当分俺専用となる男性用の浴室である。広さは女性用に比べて狭いものの、現状で言えばとても広く感じる。いつかここで息子達と裸の付き合いをするのかもしれないと思うと、正直期待と不安が脳裏を過ぎるけども。
「父さんの希望通りサウナも作った。他に何か希望はあるか?」
「ううん、ないよ。ありがとうキャロル、エル。じゃ、早速一緒に入ろうか。夢子や了子も一緒にさ」
「……母さんや夢子も、か?」
「いいんですか?」
「多分了子もいいって言うよ。その、家族だろ? 本当はファラ達も誘うべきなんだろうけど、今日のとこはね」
その言葉に二人は互いの顔を見合わせて、小さく頷き合う。そして揃って浴室を出て行った。さてさて、ならこちらは一応水着でも用意しますかね。そうやって準備して一人浴室で待っているとやがて現れるは裸のエルと了子に夢子、それとタオルで体を軽く隠すキャロルの姿。
「父さん、お待たせしました」
「アナタ、夢子抱いてもらっていい?」
「OK」
笑顔のエルと了子へ笑みを返すと、何故か感じる恨めしい視線。
「キャロル? どうかしたのか?」
「……父さんだけ水着とはどういう事だ」
問いかけは予想通りの内容だった。どう答えるべきかと思って少し思案顔をするや、了子が楽しげに笑う。ああ、これはキャロルを軽くからかうつもりだ。そう思っても止める事はしない。こういうのも家族の関わりみたいなものだからな。
「あら、キャロルはお父さんの裸を見たいの?」
「っ!? そ、そういう訳じゃない!」
「なら気にする必要ないじゃないか。父さんは僕らのために水着を着てるんだと思うよ?」
「そ、それはそうだと思うが……」
「俺は別に脱いでもいいよ? どうする?」
了子が意図して作り出した流れにエルが無意識に乗っかって、俺が最後を締めくくる。キャロルはオロオロしながらどう答えるべきかと考え始めた。なので了子へ視線を送り小さく頷く。すると、彼女は俺の意図を察したのか苦笑した。
「なぁキャロル、何なら水着を着てきてもいいぞ?」
「水着を……っ! い、いや、いらない。俺はこのままでいい」
「そう。それで、お父さんはどうするの?」
「……と、父さんも脱げ。家族での裸の付き合いだ。一人だけ水着では壁を感じるっ」
「だって、父さん」
「分かった。じゃ、一旦脱いでくるよ」
「はぁ~い。じゃ夢子はこっちへ戻っておいで~」
了子へ夢子を渡して一旦脱衣所へ向かう。水着を脱いでタオルで前を隠して再び浴室へ戻ると、エルとキャロルが二人で了子の体を洗っていた。了子は夢子を抱えたままで、少しくすぐったそうにしている。と、その視線がこちらへ向いた。
「アナタ、見て。私、女王様みたい」
「ある意味そうだったんじゃないの? ほら、フィーネはさ」
「う~ん……たしかに世話をされる立場ではあったけど、こんな愛らしい世話役はいなかったって言ってるわ」
「僕らが愛らしい?」
「ま、こんな外見の世話役は本来つかぬだろうからな」
意外そうなエルとどこか嬉しそうなキャロル。了子はそんな二人を優しい眼差しで見つめていた。きっとフィーネも似たような心境なのだろう。さて、なら俺も体を洗うか。
すると背中を誰かが洗い始めてくれた。まぁ、エルかキャロルしかいないわけだけど。チラリと視線を向ければ、キャロルがその小さな体で懸命に背中をタオルで擦っていた。
「ありがとうキャロル。その調子でお願い出来るか?」
「ああ、大丈夫だ。それにしても、父さんの背中も大きいな」
「……いつまでもそういう背中でいたいもんだよ」
「父さん……」
いつか年老いて否応なく存在感が小さくなる時はくる。その時まで子供達に大きな背中と思われていたい。父としても、男としても。そんな気持ちがキャロルにも伝わったのだろうか。心なしかキャロルの背中を洗う力が少しだけ優しさを増した気がした。
「キャロル、僕も父さんの背中を洗ってもいいかな?」
「ああ、いいぞ」
「ならキャロルはお父さんに頭を洗ってもらったら?」
「俺はいいけど……」
「お、俺も構わない」
「じゃあ、後で僕もお願いしていい? ダメかな、父さん」
「分かった。了子、先にお湯に入ってくれるか? 俺の方が終わったら夢子を預かるから」
「だぁ~い丈夫よ」
そう軽く返して了子は目を閉じる。するとその髪色が瞬時に変化し見事なブロンドとなった。
「夢子は私の力でこう出来る」
ふわりと宙に浮く夢子に俺だけでなくキャロルとエルも言葉がない。更に夢子はその状況に楽しそうな笑い声を出していた。つまり、フィーネの力でこうされるのが怖くないのだ。さすが了子の娘と言うべきか、俺の娘と言うべきか。
「母さん、もしかしてこうやって時々あやしてる?」
「……常に抱き抱えているのも腕が疲れるのでな」
「泣かなかったのか?」
「そうだ。最初は平然としていたぞ。そして徐々に笑い出したな。胆の据わった子だ」
「……いいけど、それはせめて物心つくまでにしてくれよ?」
そう言いつつ、どこかで五歳ぐらいになっても楽しんでいる夢子の様子が思い浮かんだ。それと、その頃にはいるであろう他の子供達さえ自分も自分もと言いそうな気がする。
「どうしたの父さん。何か妙な顔をしてるけど」
「うん、ちょっとした未来予想図を考えてね」
「どうせ将来生まれてくる姉妹の事だろう。いや、弟も生まれて欲しいからどう表現するべきだ?」
「え、えっと……妹と弟だから……いもうと?」
「エル、それでは二つの言葉が合成されていると分からないぞ。アナタ、娘達が困っている。助けてやれ」
可愛らしい会話に和んでいると苦笑するフィーネから矢が飛んできた。仕方ないな。
「家族でいいんじゃない? 別に妹とか弟なんて表現にこだわる必要もない気もするし」
「……だ、そうだ」
フィーネの言葉に揃って顔を見合すキャロルとエルが可愛らしく、俺は笑みを浮かべてその動向を見守った。
「じゃあ、将来生まれてくる家族の事を考えてた?」
「それなら、自然か」
「よし、話もまとまったところで背中の続きをお願い。で、キャロルは椅子を持って前にどうぞ」
「分かった」
そうして俺がキャロルの頭を出来るだけ優しく洗い、こちらの背中をエルが洗うという構図が出来上がった。フィーネはその長い髪を洗いながらこちらを見て微笑んでいる。夢子は笑い疲れたのか、声を上げる事はなくなっていたが顔は笑顔のままだった。
「んっ、父さんもう少し強くてもいいぞ」
「分かった。……これでいい?」
「ああ、それでいい」
「父さん、背中はもう終わりました」
「ありがとうエル。流してもらっていいか?」
「はい。えっと……」
桶にお湯をため始めるエルを軽く見やって、意識をキャロルの方へ向ける。正直女の子の髪を洗うのは初めてだったので色々と思う事があった。だけど、キャロルはされるがままに俺へ委ねてくれている。それが無言の応援に思えて緊張せず手を動かせていた。
「これぐらいでいいかな。キャロル、流すぞ」
「ん、分かった。早く流して」
キャロルの口調が柔らかくなった。どうやら娘モードになったらしい。それを微笑ましく思いながらシャワーを手にしてお湯を出す。温度が上がったのを確かめてから、優しくキャロルの頭へお湯をかけて泡を流していく。と、その時背中に温かい物が掛けられた。エルがお湯を掛けてくれたのだ。
「父さん、流れました」
「ありがとう。エル、キャロルへタオルを」
「いい。自分で持ってる」
「そっか。父さん、次は僕をお願いします」
「ん。キャロル、交代してやって」
「分かってる」
顔をタオルで拭きながらキャロルは立ち上がる。その時、一瞬だけどキャロルの視線が腰に巻いたタオルへ向けられた気がした。多分俺が変な事を考えてないか確かめたのだろう。キャロルはそういう事をあまり好ましく思ってないみたいだし。
キャロルが立ち去るのと入れ替わりにエルが少しはしゃぎ気味に椅子へ座る。こういう時はやはりエルの方が子供らしく思えるし、妹っぽく見えるな。
「母さん、そろそろ夢子を洗ってやったら?」
「そう、だな。なら、私が抱えておくから頼めるか?」
「分かった。夢子、すぐに綺麗にしてあげるからね」
聞こえてくる会話に思わず笑みが零れる。キャロルの声が弾んでいるのが嬉しいし、フィーネもすっかり母親らしくなっているのが感慨深い。だからだろうか、キャロルと同じ色をしたエルの髪を同じように洗いながら微笑んだ。
「エル、こんな感じで大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。でも、やっぱりキャロルと違うんだ」
「キャロルと? どういう事?」
「あ、その、いつもは僕の髪をキャロルが洗ってくれるから」
「へぇ。っと、そろそろ流すよ」
初耳だ。と言う事は、意外とお姉ちゃんしてるんだな、キャロルも。そう思いながらエルの頭へシャワーを向ける。出てきたお湯が泡を流していく。
「うし、もう目を開けてもいいよ」
「……っぷは。ありがとう父さん」
「どういたしまして」
タオルで自分の顔を拭いてこちらを向くエルの可愛さよ。ついつい頭を撫でてしまう。それにくすぐったそうに目を細めながら笑うエルが本当に愛おしい。でも、その愛おしさは了子達とはどこか違う気がした。それに、あの頃はエルとキャロルに手コキしてもらいたかったけど、今はそんな気にならないしなれない。……でも、あの頃はある意味仕方ないよな? だって娘じゃなかったし。
「父さん、どうしたの? 早くお風呂に入ろう」
「え? あ、うん」
不思議そうに首を傾げるエルに促され、俺は立ち上がって湯船の方へ。フィーネは夢子を抱えて微笑み、キャロルは小さな妹を愛おしげに洗っていた。本当にそうしているとフィーネとキャロルが実の母娘のように見えてくる。
「エル、二人にとって了子とフィーネは同じ扱い?」
「うん。だって、母さんだから」
「……そっか。そうだよな」
何故かそのエルの言葉に安堵している俺がいた。俺が了子とフィーネを同じ奥さんとして扱っているように、エルとキャロルも同じ母として扱っているのだと、そう分かったからだろうな。この後エルと一緒にお湯に浸かった。そうしているとキャロルとフィーネが夢子と一緒に湯船へと入る。
「夢子ってフィーネの事はどう思ってるんだろうね?」
「……母と、思ってくれていると嬉しいな」
「大丈夫だよ母さん。僕らもそうだから」
「ああ。了子母さんもフィーネ母さんも同じ母親だ。きっと夢子もそう思ってくれる」
「うん、俺も何となくそうなる気がするよ。ほら、あの浮かんでいる時の反応とかから」
その言葉にフィーネも一瞬呆れ、そして苦笑しながら頷いた。
「そうだな。あの子はお前の子でもあった」
「何か納得したくない言われ方だけど、そういう事だよ」
「でも、こうしていると本当の親子のようだ。夢子が黒髪だから父さんの子という印象が強いしな」
「僕らは幸せです。二人の母さんを持ってるんだから」
「俺もだよ。フィーネも了子も俺からすれば大切な妻だからさ」
「ふふっ、そうか。私も錬金術師を子に出来るとは思わなかった。キャロル、エル、こちらへ来てくれ。アナタ、夢子を少し預かってくれるか?」
「いいよ」
フィーネから夢子を受け取り、軽く頬を触る。それにくすぐったそうに笑う姿を見て癒される俺の横で、キャロルとエルがフィーネに抱き締められていた。
「母さん?」
「どうしたの?」
「なに、二人一緒に抱き締めた事は無かったと思ってな。それに、裸の付き合いというのも中々出来ないと思った」
「……なら、ついでに授乳でもしてみたら? キャロルとエルが嫌じゃなければだけど」
俺の馬鹿げた言葉に三人は目を見開いた。だが、エルはフィーネへいいのかとばかりな視線を送り、キャロルはさすがにそれはと思っているのだろうが、どこか好奇心と羞恥心の狭間にいるようだ。そしてフィーネといえば特に嫌悪感などはないようで、むしろそんな事は考えもしなかったとばかりに笑っていた。
「くくっ、本当にお前は馬鹿な事を考える事に長けているな。たしかに今しか出来ない事ではあるか。エル、お前だけでもしてみるか? キャロルはさすがに出来ないだろうし」
「いいの?」
「構わない。お前も私の子だ。ただ、思っているような味ではないと思うぞ」
「それでもいい。じゃ、少しだけもらうね、母さん」
嬉しそうに乳首に吸い付くエルをフィーネが慈愛の表情で優しく見つめながら頭を撫でる。その光景がまるで絵画のように見え、俺は黙って眺め続けた。するとキャロルが真っ赤な顔でフィーネの乳首へ顔を寄せた。
「か、母さん。私もい、いい?」
「ああ、いいぞ。私も母の気持ちを味わえるしな」
そこで俺は三人へ背を向けた。もう見る必要はないと思ったのだ。キャロルもエルもフィーネも、それぞれに経験した事のない事をしているのだ。正確には、キャロルだけは経験したけど覚えていないだけで。こちらへ手を伸ばして動かす夢子を可愛がりながら俺は一人微笑む。そんなある日の一幕だった。
「ファラ、玉ねぎは?」
「もう切り終えています」
「ありがとう。未来、そっちは?」
「人参も大丈夫です」
「そっか。じゃ、レイアは?」
「牛肉、地味に支度完了」
「よし、なら作り始めようか」
未来とのデートで食べたハヤシオムライス。それを作る事になり、未来がセレナを、俺がファラやレイアへ話を通して実現したお料理教室。ただ、当然ながらこの場にいるのは料理人達だけではない。
「ハヤシシチューかぁ。そのまま食べても美味しいんだよねぇ」
「私や切ちゃんは食べた事ないです」
「デスよ。カレーとは違うデスか?」
「材料は似ているが、どうやら香辛料が主ではないらしいぞ」
「僕はオムライスが楽しみです。本で見た事しかないので」
五人のご意見役という名のただの試食役である。今も食卓に座って忙しく動くセレナ達を眺めながら会話に話を咲かせていた。ちなみにエルが言っている本は、今はセレナ達の近くに置かれている。セレナもハヤシシチューを作った事はないらしく、未来もそこまで作り慣れてる訳ではないので料理本の出番となった訳だ。
いつかのキャロル達との街ぶらを思い出す。あの時はまさかこうなるなんて思いもしなかったなぁ。料理本を買った時、キャロルだけじゃなくみんなしてこれが食べたいあれが食べたいって言ってたっけ。帰りにファミレスへ寄ろうとしてたのを何とか止めて帰ったのが、昨日の事のようだ。
「やっと帰ってきてみれば、ここにいたのね」
「マリア?」
聞こえてきた声に振り向けば、そこにはキャリーバッグを手にしたマリアが立っていた。彼女はサングラスを外し、視線をキッチンへと向ける。そこで動き回る四人を眺めているのか、どこか笑みを浮かべて。
「自宅には行かなかったのか?」
「行こうと思ったわ。でも、嫌な予感がしてマムに連絡を取ったら誰も家にいないと言われたの。で、ここにセレナ達がいると聞いてね。誰もいない家にいても悲しいじゃない」
「成程」
ワールドワイドなアーティストであるマリアは、今や世界を救った存在という事もあって余計に忙しい日々を送っている。ただ、キャロル達との一件があって以降はそれも殺人的なものではなくなり、比較的彼女の要求も通り易くなっているとか。
どうもキャロルの創る転送結晶がお偉方には好評らしく、それを常識的な値段で提供する代わりに俺達への便宜を図れと要求したらしい。風鳴さんが教えてくれたのだが、キャロルは一人でパヴァリアと交渉した事もあり、そういう胆は据わっているらしい。
「それで、一体今日は何のイベント?」
「未来とセレナが主体でのお料理教室。作るのはハヤシオムライス。で、了子は夢子を連れて買い物。ガリィとミカはその護衛兼荷物持ち」
「貴方は一緒に行かなかったの?」
「男が排除される買い物って辺りで察して」
「……そういう事。じゃ、貴方は暇なのね?」
「ま、そうなる。正直味見役は足りてるし」
ここにいるのも出かける先もする事もないからだ。マリアも俺のそういう心境を感じ取ったのだろう。苦笑するやそっと俺の手を掴んできた。
「ね、ちょっといいかしら」
「何?」
「デートの話し合いをしたいの。ダメかしら」
「……じゃ、俺の部屋に行こうか」
「ええ」
マリアと二人で歩き出す。勿論キャリーバッグは俺が運ぶ。その部屋までの間、マリアとは恋人繋ぎで歩いた。そういうのが初めてだったので心なしかマリアが嬉しそうに見える。俺はそんな彼女に笑みが浮かぶ。部屋に入るや、マリアが抱き着いてきた。
「……ねぇ、いつ種付けしてくれるの?」
心が弾む問いかけだった。濡れた瞳、潤んだ眼差し。そして、奥底に見える嫉妬の炎。きっと自分以外は一度泊まりがけのデートを経験済みと知ったのだろうな。
「今から話し合うデートで、というのは?」
「今からがいいと言ったら?」
「構わないけど、落ち着かないと思うよ」
「……そう、ね。なら大人しく話し合う事にしておくわ」
そこで離れようとするのでちょっと力を入れて抱き寄せる。それでこちらの意図を察して顔を上へ向けてくれるマリアを愛おしく思いつつ、そっと唇を重ねた。と、侵入してくる熱を持って動く生物。マリアの舌だ。それが久しぶりのキスを少しでも長くしたいと言わんばかりに激しく絡んできた。
「……っはぁ」
「ふふっ、こうして味わってみると美味しいのね、シキの唾液」
「マリア、本当は話し合いで終わるつもりないだろ」
「当然でしょ。奏や翼は貴方と古い付き合いだけど、私はほとんど二人きりの時間もなければ思い出もないもの」
拗ねた表情のマリアが可愛い。こうなると装者達で一番の年長とは思えないな。
「さっきと言ってる事が矛盾してるぞ?」
「種付けは先延ばしでいいわ。ただ、セックスしたいの。実はね、私、とあるやり方を知ったのよ。それを試してみたくて」
「……SM?」
「いえ、そういうのではないわ。セックスのやり方のようなものよ。それと、それがしてみたいならいつでもいいからね」
「そうだな。SMはやるとしてもマリアが最初だ」
「っ……ダメだわ。やっぱりそういうので喜ぶ女になったようよ」
「それは良かった。世界の歌姫は俺のものだって胸を張れるよ」
「んっ……」
先程はハードだった。なので今回はディープに。だけどマリアの望み通りに尻を強く揉み、スイッチを切り替えろと言外に告げる。それが伝わったのか、マリアが嬉しそうに体を押し付けてきた。マリアの大きな胸が押し潰される。いや、これは押し潰そうとしているのだ。それさえも快感へとするために。
「……マリア、ブラ外さないでいいの?」
「これはこれで悪くないって感じるの。本当にドMとして目覚めたみたい」
「ドM、か。いっそもっと酷い呼び方されてみるか?」
「……例えば?」
「雌豚」
その瞬間、マリアがブルリと震えた。間違いなく歓喜の震えだ。これ、そういう事だよな。試してみるか?
「変態マゾ」
「っ?!」
「……マリア、もしかして感じてる?」
「…………みたい。ゾクッとした感覚が走ったわ」
「どうする? その扉、開ききってもいいのか?」
「シキが開きたいなら」
即答。それが俺の中の何かを大きく揺らす。何だろう。奏になくてマリアにある何かが俺の中へ強く響くのか? だとすれば、それは何だ? そうやって思考を逸らさないと不味い気がする。多分だけど、奏に甘えるようにマリアへ甘えたら抜け出せなくなるんだろう。
「……開くとしても二人きりの時だけだな。俺だけのマリアにしたい」
「……その言われ方だと例えM調教でも嬉しくなるものね。私も自分だけの貴方が欲しいわ」
本当に笑顔を見せてくれるマリアが愛しくなって、俺は少しだけ強く抱き締める。きっとマリアは名の通りの人間なのだ。慈愛に満ち、母性溢れる女性なのだろう。Mの気質は、全てを受け止める彼女だからこそのものだ。手荒に扱われて喜ぶのではなく、相手が包み隠さずぶつかってくるのを喜んでいるのだろう。そう思って俺は彼女へ告げる。
「マリア、正直に教えてくれ。君は俺にどうして欲しい?」
「……女としては私だけを選んで欲しいわ。でも、人としてはこのままみんなの中心であって欲しい。あんなに明るいマムは、キャロルやエル、夢子がいるからなの。私達じゃあそこまでは無理だった。もう貴方が、家族がいない生活は考えられないのよ。このままみんなで家族らしくなっていきたい。もっと仲良く、喧嘩したりしながら絆を深めていきたいの」
「……分かった。大黒柱であり続けられるようにするよ」
「お願い。ハーレムと言いつつ、その実家族を求めたシキだから私はついていける。きっとそれは、誰もが心の奥底で欲していたものだろうから」
そのマリアの言葉は本音半分優しさ半分だろう。みんなの欲しかった家族は、絶対現状とは違うはずだから。だけど今の形をマリア達は受け入れてくれている。ならそれを守るのが俺の役目だ。
その後、俺とマリアはベッドに腰掛けてデートについて話し合った。マリアは行ってみたい場所ややってみたい事がかなりあったようで、こちらとしては色々助かった。何せこれまではこちらが全て考えていたからなぁ。マリアとのデートは彼女の希望を取り入れて行う形でいいので、そういう意味では今までで一番楽かもしれない。
「で、肝心な事を聞きたいんだけどさ」
「何?」
「いつ出来そう?」
「そうね……」
思い出しながらマリアがバッグから何かを取り出した。それは手帳。何となくアナログな気もするけど、マリアらしい気もする。それをパラパラと捲りながら、マリアはあるページでそれを止めた。
「……この日でお願い出来る?」
「…………大体今から一か月ぐらいか」
「ええ」
「分かった。じゃ、その日に迎えに行くよ」
「ありがとう。楽しみにしておくわ」
微笑むマリアへ軽いキスをする。するとその微笑みが微かに色付く。くすぐったそうに笑う彼女は天使のように見えた。だからもっとその顔が見たくてキスを繰り返す。何度も、何度も、繰り返す。それが天使をゆっくり淫魔へと変えていく。
「シキ、私熱が出てきたみたい」
「へぇ、風邪かな」
「ふふっ、貴方にお熱って言い方ならどうかしら?」
「……ならもっと熱を上げないとな」
「んっ、出来れば消火してくれない? とっても粘性の高い消火剤を火元に放射して」
「了解。まず火元を特定するな?」
マリアの服へ手を伸ばし、そのまま脱がし始める。彼女はそれをし易いように動いてくれ、尚且つこちらの股間へ手を伸ばしてきた。マリアの大きく綺麗な乳房が露わになると同時に吸い付いた。その瞬間股間の刺激が止まる。
「マリア、下着汚れるから脱いだら?」
「……もう手遅れみたい」
恥ずかしそうに答えるマリアだが、その顔はどこか嬉しそうに見える。本当に俺だけの彼女だ。ならばとばかりにこちらで下へ手を伸ばす。それを嫌がる事もなく彼女はむしろ積極的に体を委ねてくれるのだ。
「本当だ。洪水だね」
「激しいキスと優しいキスの応酬の影響ね。早く脱がせてくれる?」
「了解。よっと…………お~っ」
「もう、じっくり見るのは止めて。恥ずかしいわ」
下着を脱がしていくとマリアのマンコとの間に糸を引いた。それだけでテンションが上がる。それが向こうにも伝わるのか、マリアが嬉しそうな声で制止してきた。だけどそれが意味するのは催促だ。そう思ってより舐めるように眺めた。でも、気付けば本当に舐めていた。とても濃いマリアの味がする。
「ああっ……んっ! ……あっ、そこもっとぉ」
聞こえてくる声が愛撫により熱を入れさせる。世界の歌姫が上げる嬌声。男では自分しか聞けないそれを聞いて、どうして昂らずにいられようか。もっと聞きたい上げさせたいと思うのが普通だろう。どんどん強くなるマリアの味や匂いにも興奮しながら愛撫を続ける。それだけで射精してしまいそうなぐらい、こみ上げてくるものがあった。
「シキ……私もぉ……舐めたいわ。貴方のチンポしゃぶらせてぇ」
「……じゃ、舐め合おうか」
こうして始まる69はもう凄まじい熱量だった。互いに横向きになって相手の性器を愛撫する。マリアのフェラはねっとりとしながらも、射精が近付くと熱を失い、また落ち着いた辺りで熱を戻す。そんなやり方に俺は手加減せず何度もイカせるようにクンニした。イケばイク程マリアの声が艶めいていき、呂律が妖しくなっていくのがチンポに悪いけど。
「し、シキぃ……そろそろのましぇてぇ……」
「何を?」
「スープよぉ。濃厚ザーメンスープぅ」
「……じゃあ本気フェラよろしく」
「ええ、任せて……はむっ」
そこから射精までは瞬殺だった。やはりマリアの掌だったのだとよく分かった。だけど、そこでふと思ったのだ。マリアが俺をイカせないようにしていたのは、我慢させた一番搾りを飲んでみたかったからではないかと。そんなくだらない事をマリアの尻を揉みながら思った。
「マリア、どう? 美味しいか?」
「はぁぁぁぁぁ、最高よ。今までで一番美味しいの。それと、余計火事が酷い事になったみたい」
「……そうみたいだな」
言いながらマンコを指で広げるマリアに舌なめずりながらチンポを動かす。それで少しだけマンコから愛液が出てくるのでより一層性欲が高まる。もう辛抱堪らんとばかりに起き上がり、マリアの中へ侵入しようと試みると何故か彼女がこちらを見て不思議そうな表情を浮かべていた。
「どうかしたのか?」
「その、妊娠しやすい手段は使ってくれないの?」
その問いかけですぐに理解した。マリアはまだアレを詳しく知らないでも、普段と違う事が見当たらないために質問してきたのだろう。
「それはデートの時に、でいいか? 今日は君を抱きたいから繋がりたいんだ」
「……そのセリフはズルいわ。ええ、本当にズルい。一気に気持ちが愛し合う事だけにされたもの。しかも、すぐに激しく強く抱いて欲しいって」
「俺も同じだよ。だから、一気に奥までいくからな?」
「ええっ! 来てっ!」
そうして求め合ったエッチは、不完全燃焼で終わりを迎える事になる。というのも、部屋にノック音が鳴り響いたのだ。それはハヤシオムライスが出来上がったという呼びかけの声。救いだったのは、エルやキャロルじゃなくセレナだった事だろう。何故って? 俺とマリアの獣のように求め合う声を娘達には聞かせられないからだ。
―――姉さん、帰ってきてたならまず私達へ教えて欲しいなぁ。
―――……いいじゃない。こうでもしないと私は中々愛してもらえないのよ。
この会話の後、俺とマリアはそれぞれ簡単に汗を流しに分かれ、セレナはマリア分のハヤシオムライスを作りに戻った。そして例のハヤシオムライスはとても美味しかった。ただ、セレナが皿を下げる時にちょっとしたおねだりをしてきたが。
おかげで食事後にデザートとしては重た目な姉妹丼を食べる事になった。まぁ、それはそれでとても美味しかったけれど。
ちなみに、セレナ曰く最中の声ははっきり聞こえていないから安心していいとの事。……風呂場でもどうかを確かめるべきだろうなぁと、そんな馬鹿な事を思いながら姉妹の温もりを抱き締める。するとマリアがそっと耳打ちしてきた。
―――私の知った方法も、デートの時に試しましょう。