この方が内容が予想出来ないのでいいかなと。
「あんたに一つ聞きたい事があるんだけど」
そうカリオストロに話を振られたのは、彼女達が這う這うの体で帰ってきた翌日の事だ。その理由を聞いて、俺はアダムという相手への嫌悪感が増したのをよく覚えている。
サンジェルマンさん達は、スープを使っていたにも関わらず響達と戦い負けてしまったそうだ。
で、問題はそこから。なんとアダムとやらはサンジェルマンさん達を助けると言いながら、凄い攻撃を放ったらしい。それを目晦ましにして逃げろという事だったようだが、戦いでダメージを負った三人は逃げる事が出来なかったそう。
そこを助けたのが響達だった。彼女達はS2CAを使い、アダムの攻撃を迎撃、その余波を響以外の全員で防いでサンジェルマンさん達も守ったのだとか。
思い出すだけでもため息が出る内容だ。そして、俺の能力抜きで見事な結果を掴みとったみんなに拍手を送りたい。本当に、俺がいなくても何とか出来るんだよな、みんなは。
そんな事を思い出して俺はカリオストロへ問いかけた。
「何かな?」
「プレラーティがやってるスープの濃縮って、本当に血液からやってる?」
まさかの疑問に俺は首を傾げた。いや、プレラーティがヘマをするとは思っていないからだ。たしかにプレラーティが二人へ渡しているらしいカプセルの中身は俺の精液。
でも、その中身を確認する事などないはずなんだよなぁ。だって、そのまま飲み込んでるんだから。
が、そんな俺へカリオストロはどうにも解せないとばかりの表情を見せた。
「あれ、粘性があるのよねぇ。プレラーティは飲み易くするためって言ってたけど、逆にあった方が飲みにくいと思わない?」
「それが疑問に思う理由?」
「それだけじゃないの。何て言うか、血液を基にしてると思えないぐらい美味しいのよねぇ」
「……プレラーティの調合技術が凄いだけじゃない?」
内心で冷や汗がダラダラ出てくる。何というか、カリオストロは疑問じゃなくてほぼ確信を持ってる気がするのだ。
それは、自分の飲んでいる物が血液を濃縮しているはずはないって事。で、そこで俺に聞きに来たと言う事は、少しでもいいから情報が欲しいんだろう。
誰だって、自分が口にしてる物が正体不明なんて嫌だもんなぁ。
「そうかもしれないけど、それなら隠すのもおかしいのよ。だって、意味ないじゃない」
「まぁ、それはそうだ」
ここは同意しておく。何せ企業ではないのだ。わざわざ調合材料や比率を隠す必要性はない。
「だからあんたなら何か知ってるんじゃないかってね。ま、プレラーティがサンジェルマンへ飲ませるのに変な物を与えるとは思えないんだけど、ね」
「あーしにはともかく?」
「あら、言うじゃない。でも、それならなくはないわ。ただ、それでも悪戯で済むレベルでしょうけど」
可愛らしくウインクまでするカリオストロに内心で感心する。何せ彼女も元は男なのだ。それが見事なまでの女性っぷりだもの。正直聞いて尚信じられないぐらいだ。
俺が若干カリオストロの振る舞いに見入っていると、こちらから得られるものは何もないと察したのかカリオストロはため息を吐いて背を向けた。
「どうやら何も知らないみたいね。邪魔したわ~」
「お構いなく。こちらとしてもティキもいなくて暇したから嬉しかったよ」
そう、今この部屋には、というより場所にはティキはいない。サンジェルマンさんと共にアダムの傍にいるからだ。
ま、サンジェルマンさんは前回の事への抗議を含めた報告に行ってるだけらしいけど。
「本当にティキと会話してんのね。あの子、完全に局長しか眼中にないって言ってもいいのに」
よくもまあと言いたそうなカリオストロに俺も苦笑しながら頷いた。実際、ティキの話題の九分九厘はアダムである。だけど、ようやく他の話題を振るようにもなってきた。
それは、俺とみんなの思い出話。要は身近な恋愛話を聞きたいのだ。セレナとのデートやその前にあった化粧品関連の話、奏と行った温泉旅行に未来との遊園地デートなどなど。
それらは乙女なティキにはかなり興味を惹いたらしく、最近はむしろ向こうから話を振られるぐらいになっていた。
―――ねぇねぇ、また聞かせて。あなたと彼女の話!
まぁ、ティキはその語られてる相手が一人と思っているようだけど。
「もしかしたら、ティキはアダム以外が相手にしてくれないのもあってああなったんじゃない?」
「それはないわ。サンジェルマン曰く、ティキは最初からああだったそうよ」
「…………アダムって、ティキみたいな子が好み?」
スコア達には作られた目的が必ずある。ガリィ達にもあったのだから間違いない。なら、最初からアダムへの重たすぎる気持ちを宿したティキはどういう目的があるのだろう。
「……これ、ティキには言うんじゃないわよ?」
俺の問いかけへのカリオストロの反応は、思いがけず真剣なものだった。なのでこちらも真剣な面持ちで頷いた。
「あくまであーしの個人的な見立てよ? 局長は、ティキの事を大事にはしてるわ。ただ、それは感情からとかじゃなくて義務感に近いものがあるって感じる」
「義務感?」
「そ。ティキに何かあったら自分が困る。だから大事にする。そんな感じ」
「…………愛情や思いやりじゃないって事か」
「あーしの主観だけどね」
そう言ったカリオストロだけど、その目はそれを疑っているようには見えなかった。ティキはアダムによって作られたのは間違いない。そして、最初からアダムを一途に慕うようになっていた。
なのに、アダムはティキを義務的に大事な扱いをするだけ。
何となくだけど、これは嫌な予感がする。キャロルでさえ、当初はガリィ達を目的のために捨てるというか壊させるつもりだった。
もしかして、アダムも似たような事を考えているのかもしれない。自分の目的のため、ティキを利用し最後は壊す。
そんな事を想像し、俺は思わず拳を握った。許せないと、そう思った。最初から犠牲にするつもりで作り、自分のために利用する。
でも、もしそうならわざわざ心なんて与えないでいいじゃないか。どうして人形のままにしない。心が宿れば、もうそれは人間と変わらないだろ。
「ありがとうカリオストロ。俺、もっとティキと話をする事に決めた。あの子を、アダムの道具のままにはさせたくない」
「……今の言葉、あーしは聞かなかった事にしといてあげる。精々頑張りなさいな」
それだけ告げてカリオストロは部屋を去った。その背を見送りながら俺は思う。本当にサンジェルマンさん達は悪人じゃないと。
だからこそ、きっと響やセレナはまた辛い想いをしてるんだろうとも思う。キャロルのように分かり合って手を取り合えたら。そう俺だって思うのだから。
―――ティキを、今のティキから壊さないといけない。道具のティキじゃなく、心ある存在としてのティキにしてあげたい……。
「逃げられたんだからいいじゃないか、結果的に」
ジャグジーに浸かりながらのアダムの言葉に、サンジェルマンは眉一つ動かさず口を開いた。
「結果的には、です。それも、あろう事かシンフォギアへ借りを作ってしまう形で」
「いいんだよ、無視すれば。敵なんだよ、向こうは僕らの。目的を阻む相手にいらないよ、配慮は」
「そうそう。アダムの言う通りよ。サンジェルマンったら、本当に変わらないのね」
アダムに抱き着き幸せそうなティキを見て、サンジェルマンは目を閉じて息を吐く。可哀想にと、どこかでそう思いながら。
それを別の意味に捉えたのだろう。ティキは若干ムッとした顔でサンジェルマンを見る。
「文句があるのなら言ってみなさいよ! 思ってる事は言葉にしないと分からないってシキが言ってたもん!」
「……シキ、か。シンフォギアを強化していた存在だったね、その名は」
「そうよ。私にアダムともっと仲良くなれる方法を教えてくれるの」
「へぇ、それはそれは助かるね、色々と」
その時サンジェルマンは見た。一瞬ではあるがアダムが浮かべた厄介そうな表情を。ティキはアダムに頭を撫でられ目を閉じていたから気付けない。だが、確かにアダムはしたのだ、俗に言う嫌そうな顔を。
「局長、あれ程までの事をして隠滅したかった情報とは一体?」
「さて何だったかな、それは。ただ、相手へ情報を得られるのは得策にはならないと思っただけさ、僕は」
「……そうですか。では、私はこれで。ティキ、貴方はここに残る?」
「そうね。アダムはどうしたらいいと思う?」
サンジェルマンの問いかけにティキはアダムへ視線を送る。それは彼が自分に残って欲しいと言ってくれる事を願っての眼差し。
「いいさ、好きにすれば。ティキのしたい事を支持するよ、いつだって」
「ああん、いけず~。でも、そういうところも好きっ!」
「じゃあ、私は戻る」
「ばいばーい」
二人へ背を向け、サンジェルマンはその場から立ち去る。その顔には、アダムへの軽蔑とティキへの憐みを浮かべて……。
浴室内に響く濁った水音。それはプレラーティがシキのペニスをしゃぶる音だ。普段の無表情さはどこへやら、フェラチオをする彼女はとてもいやらしく、また魅惑的な表情を浮かべていた。
「ぷ、プレラーティ……そろそろ……」
シキの声から射精が近い事を察し、プレラーティは早くスープをとばかりにスロートを激しくする。やがてシキが射精しそうになった瞬間、プレラーティはその口を窄めて出される白濁を吸い取ろうとした。
それも、シキから教えてもらった事である。出す瞬間に強く吸う事でより射精量が増すのだと。
(ああ……この味、この熱、いつものスープなワケダ。私の体を強化し、シンフォギアに負けないようにするためのエネルギー……)
うっとりとしながら目を閉じて精飲するプレラーティ。その頭をシキが優しく撫でていた。その温もりにプレラーティは嫌がる事も拒否する事もなく、むしろどこか嬉しそうに笑みさえ浮かべて精飲を終える。
そんなプレラーティにとってある意味で至福の時間は、シキにとっては自己嫌悪に陥る時間でもあり、対照的な雰囲気のままで二人はシャワーを浴びた。
「なぁ、一ついいだろうか」
「ん?」
シキにシャワーをかけられながら、プレラーティはどこか恥ずかしそうにそう切り出した。
この時、シキはプレラーティが何を考え何を思っているのかをまったく想像もしていなかった。
「もっと効果の高いスープの摂取法はないだろうか。もしあれば教えて欲しいワケダ」
「へ?」
向けられた眼差しは真剣さを秘めていた。このままではシンフォギアに勝てない。そうプレラーティは確信していたのだ。
それをどうにかするには、最初に五人相手に渡り合えた以上の強さを得る事。つまりはスープの量を増やす事だった。
だが、それはシキの気持ちがあるため難しい。しかし諦める事は出来ないとも思い、プレラーティは正面突破を試みたのである。
つまり、シキ本人への頼みとして。
「お前にとっては現状ままがいいのは分かっているワケダ。だが、このままでは私だけでなくカリオストロやサンジェルマンまでも不味い事になる恐れが出てきたワケダ」
プレラーティの言い方でシキは悟る。つい最近あった、三人が死に直面した出来事を。
「……アダムの関与か」
「そうだ。シンフォギアと戦い、もしも今度は向こうも消耗したらどうなるかお前にも分かるワケダ。そうならないためにも」
「だけど、みんながプレラーティ達に余裕で勝ってくれれば問題ないだろ」
「お前は分かっていないワケダ。もし私達が崖まで追い込まれた時、その命を賭して大反撃しないとでも思っているのか?」
言外にプレラーティが告げていた。自分達には切り札が残っているのだと。それはラピス・フィロソフィカスではない彼女達の文字通り最後の手段だ。
「絶唱みたいなのが、君達にもあるのか?」
「詳しくは言わないが、それを使えばいくらシンフォギアと言えどただでは済まないワケダ。そこへ目的を果たすべく局長が現れれば」
「…………要は、アダムよりも君達の方がまだ俺の心情へ配慮してくれるって?」
「無事に帰りたいと言っていたが、それに装者達を犠牲するお前ではないワケダ。以前のお前の言葉を借りるなら、簡単には利用させないワケダ」
ニヤリと笑うプレラーティだが、シキはそんな彼女に怒るのでも呆れるのでもなく、ただただタメ息を吐いた。
「……分かった。でも、どこかで察してると思うけどさ、その手段ってセックスしかないよ?」
「やはりか。まぁ、それしかないと思っていたワケダ」
平然と返すプレラーティだったが、その顔は若干赤い。今の体となってからの性体験が皆無だったためである。要は未経験故の緊張が走ったのだ。
が、そんなプレラーティを見たシキは大きくため息を吐いて頭を掻く。彼は、方法を教えると言っただけであり、それを行うつもりはない。そう伝えようと思っていた。
「あのさ、プレラーティ。俺は」
「そ、その、おそらく大丈夫だと思うが、出来るだけ優しくしてくれると助かるワケダ」
そんなシキの思惑を打ち砕かんばかりにプレラーティが乙女を見せる。恥じらいと緊張を表情に浮かべ、やや伏し目がちなまま胸を両腕で隠しながらのそれに、シキは続けようと思っていた言葉を思わず飲み込んだのだ。
(や、ヤバいぐらい可愛い……っ!)
これまで射精しても全て手淫か口淫止まり。だからと言って自分で慰めるのも出来ず、それまでの女性達との日々もあってシキの性欲は、本人も知らぬ内にグツグツと煮込まれていた。
そこへきての、美少女然としたプレラーティからのセックス要求である。しかも、それが演技ではなく素の反応で恥らっていた事も大きかった。
今まで抑えていた感情を本能がほんの僅かに上回るには、それは十分過ぎる程の破壊力を有していた。
「ダメだ……」
が、それでも踏み止まれる何かが今のシキにはあった。
「その、プレラーティの言ってる事も考えてる事も分かる。そのために俺のスープを今まで以上に必要としてるのも。だけど、だとしても、俺は、浮気はしたくない」
「……これまでも似たような事をしてるワケダ」
「そうかもしれない。でも、セックスまでいったらもう言い訳は利かない。スープを利用するだけなら手や口でも十分だからね」
「っ! だが、そうするのがより効果を高めると言ったのはお前なワケダ!」
「教えて欲しいと言われたから教えた。ついでにしてくれって言葉は、たしかなかったように記憶してるけど?」
「っ」
その言葉を告げるシキの表情は真剣そのもの。決して性欲に流されないと己を律している一人の男がそこにいた。
かつてシャトーでの暮らしで彼は信念を揺らがせ、もう少しで恐ろしい結末を迎えそうになった事がある。その経験が、彼の本能を抑えていた。
もう信念や覚悟を揺らがせてはいけないと。最後まで貫いてみせろと。それは、彼が未熟な頃から見てきた一人の漢の影響がある。
強く、優しく、頼りになる、そんな漢の背中を目指しているからこそ、シキは過去の自分のようにはならないと出来たのだ。
「プレラーティ、君達への協力は俺に出来る範囲内でするよ。だからごめん。セックスは諦めてくれないか。その代わり、これから君にしてもらっている時だけ、奥さんの一人だと思って過ごすようにする。それなら、きっともっとスープの濃度が上がるはずだから」
「……それで変化なしならどうするワケダ?」
「そうだね。そうなったら、その時考えるよ。少なくても、俺は君を抱くつもりはない」
はっきりと断言し、シキはシャワーをプレラーティへ手渡して浴室を後にする。その背中を見送り、プレラーティは無意識に呟くのだ。
―――私でダメなら、もうあの手しかないワケダ……。
シキがプレラーティの誘惑に抗っている頃、響達は揃って空港にいた。遂に開始となるワールドツアーへツヴァイウイングが出発したためである。
シキがさらわれている状況ではあるが、前々から動いていた事もあって今更中止には出来ないと奏と翼は決意し、パヴァリアとの戦いを響達へ託して機上の人となったのだ。
「……これで戦力が減ったな」
空を飛び去る旅客機を眺め、クリスがそう呟いた。そんな言い方と、そう誰も言わないのは分かっているからだ。前回までサンジェルマン達相手に優勢を保てたのも、アダム相手に一歩も引かずにいられたのも、九人揃っていたからだと。
特に装者としての戦闘経験が誰よりも多いツヴァイウイングは、精神的にも支柱と呼んで良かった。
それが、これからはしばらくいない。それは、二人の装者が欠ける以上の損失を意味していたのだから。
「それに姉さんも……」
「そうね。私も近々また日本を離れるわ。二人程すぐじゃないけど、それでも」
「年長組が、いなくなる……」
「マリアまでいなくなったら、残りは六人デス。そうなると、二人一組で相手する事になるデスよ」
「厳しいけど、やるしかないよ。ただ、私と響や切歌ちゃんと調ちゃんはともかく……」
未来の視線はクリスとセレナへ注がれていた。現状でコンビを組むとすればクリスはセレナとなる。だが、セレナは前衛向きではない。そのため、クリスとコンビとなるとバランスが悪いのだ。
「いいさ。あたしはセレナとでも構わない。お前ら程のユニゾンとかは無理でも、あいつら相手にいいようにされない程度にはやってやらぁ」
「うん、そうだね。私もクリスとなら大丈夫」
互いに相手へ笑みを向け合うクリスとセレナ。その様子を見て響達は安堵の息を吐いた。
スープで強化しているサンジェルマン達を相手に、響達はドリンクさえ使わずに挑まねばならない。しかも、それを何度する事になるかも分からない中でだ。
そこへきての人数減少。これが今後に響かない訳はない。そんな不安の中でも、彼女達は諦める事無く前を向こうとしていた。
「とりあえず、帰ろっか」
響の言葉に頷き、彼女達は空港を後にする。マリアの運転する車で向かうのは本部が停泊している近くの駐車場。そこから歩いて向かうのは当然本部である。
勝手知ったる本部内を歩き、使われる事が稀な部屋へと入ると、全員がある物を取り出した。それは転送結晶。それを床へ落とせばあっという間にシャトーである。
「ただいまーっ」
「はいはい、おかえり」
「ガリィ、ただいまデス」
「ミカ達は家事?」
「あいつは夢子の相手で、ファラとレイアは夕飯の支度。で、あたしはここであんた達やマスター達の出迎えよ。それと、もうマムは座って待ってるわ」
どこか疲れた顔でそう告げ、ガリィは後ろを振り返る。その先にあるリビングからは食欲をそそる匂いが漂っていた。
「う~ん……良い匂い」
「今日は何だ?」
「鮭と野菜のホワイトシチューだって。あんた達は空港へ見送りに行って寒い思いをしてるだろうからってね」
「「「「「シチューかぁ」」」」」
頭の中に皿に盛られたホワイトシチューを思い浮かべ、マリアとクリス以外が笑みを零す。そんな響達を見て、クリスとマリアも苦笑した。
「なら、早く手を洗わないといけないわね」
「ほら、さっさと行くぞ」
「「「「「はーい」」」」」
「あたしはここでマスター達を待ってるわ。ま、じきに帰ってくると思うから先に食べてなさいよ」
「分かった。でも、なるべく早く来てね」
セレナの言葉にガリィは分かったと言わんばかりに頷き、彼女達を見送った。その背がかなり離れたところで、小さくガリィは呟く。
「……ったく、目には見えないけどやっぱり結構参ってるみたいね。シキもいない上に奏と翼が外国へ。で、近い内にマリアもそうなる。ほ~んと、こういうのって何て言うんだったかしら? 弱り目に祟り目?」
「間違ってはないな」
背後から聞こえた声にガリィが勢いよく振り返る。そこにはキャロルとエル、そして了子がいた。
「おかえりなさいませ、マスター。エルとお母さんも」
「ただいまガリィ」
「良い匂いがするわね。今晩は何?」
「鮭と野菜のホワイトシチューよ。さっき見送り組が帰ってきたとこ」
「じゃあ、丁度良かったね。キャロル、母さん、僕らも行こう」
「ああ」
「そうね。ガリィも行きましょ?」
「言われなくてもそうするわ」
四人で揃って歩き出すキャロル達。その足取りは、あまり軽いとは言えなかった。
あの黄金錬成の後、バルベルデから持ってきた資料から判明した事で大きかったのは、ガングニールが神殺しとしての概念兵装となっている事だった。
バルベルデで対峙したヨナルデパズトーリ。それが見せた有り得ない能力。それが神の力と呼ばれるものの一端であると分かり、キャロルはパヴァリアの目的をこう看破してみせた。
―――奴らは神の力を使って月の遺跡へアクセスし、その管理者権限を掌握するつもりだ。
神の力で月遺跡を作り上げたカストディアンに成り代わり、それを以ってバラルの呪詛からの解放ないしその無力化を企てている。キャロルはそう予想したのだ。
すると、フィーネはその意見を聞いてふざけるなとばかりに激昂した。
―――奴らがあの方に成り代わろうだと!? 思い上がりも甚だしいっ!
フィーネにとっては初恋の相手であるカストディアン。シキはそれからフィーネを寝取ったが、だからと言ってフィーネが初恋相手への気持ちを完全に捨てた訳ではない。
それでも、誰もが感じ取っている事があった。それは、フィーネの気遣いだ。
”人”でも”錬金術師”でもなく”奴ら”と表現した事。そこには、シキやキャロル達への配慮が滲んで見えたのだから。
「神の力の錬成には多くの生命エネルギーが必要……」
「あの再生能力を有した存在は、神の力を宿していた……」
「その後の調査で、最初に接敵した場所に何名かの人間がいた形跡が発見された。おそらく、彼らが生贄となったのでしょうね」
「でも、ほんの数人でそれなんですよねぇ? じゃあ、連中の狙う力を錬成するには、どれだけの生贄が必要なんだか……」
忌々しそうなガリィの言い方にキャロル達も頷いた。だが、キャロルはどこかこうも考えていた。本当に生贄だけで可能なのか、と。
月遺跡を掌握する程の神の力は、大勢の人間を犠牲にしたところで錬成出来るとは思えなかったのである。
(もし奴らの目的が強大な神の力の錬成にあるとすれば、これまでのようなやり方では届かん。もし俺がその立ち位置なら、どうやってそれを成し得ようとする……)
響達の中で唯一の純粋な錬金術師であるキャロルは、サンジェルマン達の目的を果たすための手段を想像していく。
そこには、かつて自身が行おうとしていた世界の再構築計画も大きく関わってきた。世界を効率よく分解するための方法として、キャロルはレイラインを使おうとしていたのである。
それは、かつてフロンティアでナスターシャが見つけたもの。言わば地球の動脈とでもいうべき、エネルギーの通り道である。
そこでキャロルは閃いたのだ。レイラインを使って星そのものの命を生贄にする事を。それならば途方もない神の力の錬成も可能となるかもしれない。そう結論付け、彼女は駆け足気味にリビングへと向かう。
「グランマっ! 聞きたい事がある!」
「どうしました?」
真っ先にナスターシャへと近寄り、キャロルは少しだけ荒くなった呼吸を整えながらこう問いかけた。
「レイラインのデータ、もし持ってるなら見せて」
「……何か分かったのですね」
キャロルの眼差しを受け止め、ナスターシャは研究者としての眼差しを返した。義祖母ではなく研究者。そこには、ナスターシャらしい不器用さが見える。
義祖母としては、今は家の中なのだからその話は後でと、そう言わねばならない。だが、キャロルの目は錬金術師としてのものだった。それに応じるには、自分も私人ではなく公人であるべきだと。
椅子から立ち上がり、ナスターシャは裏にマリア達四人と撮ったプリクラを張り付けた携帯を取り出す。そのままどこかへコールし、繋がった瞬間、ナスターシャははっきりとした口調で話を切り出した。
「風鳴司令ですか? レイラインのデータをキャロルに開示したいのです。理由は、相手の錬金術師の思惑を解き明かすためです」
「グランマ……」
少しも疑いや躊躇いもないナスターシャの口調に、キャロルは言葉がなかった。まだ何も言っていない。それなのに自分の考えを読んでいるかのような言い方をする彼女に、キャロルは言いようのない温かさを覚えた。
やがて会話は終わったのか、ナスターシャは携帯をしまいキャロルへと視線を向ける。
「許可が出ました。ですが、今日はもう遅いので明日以降です」
気持ちと在り様を、公人から私人へと切り替えて。
「……はい、グランマ」
「では、手を洗ってきなさい。エルもですよ」
「うん、分かってます」
「マム? 私もですか?」
「了子さんもです。風邪は万病の元と言いますし、気を付けるに越したことはありません」
「は~い」
「それとうがいもですからね」
祖母というより母なナスターシャに、キャロルだけでなくエルや了子も笑みを浮かべて目配せする。そして小さく頷き合って振り返るとこう揃って告げるのだ。
―――はい、マム。
その言葉に、ナスターシャは一瞬面食らったように瞬きをした後、どこか嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。
そしてそれを見て、響達もまた笑顔を浮かべる。そんなある日の風景。シキがいなくても、まだ家には笑顔があった。だが、それも彼がいたからこその笑顔なのである。
「聞いたわよ。やっぱりあんた、スープの濃縮手伝ってたんじゃない」
そう言ってカリオストロが俺を起こしたのは、プレラーティが抱いてと遠回しに言ってきた翌日の事だった。
「……はい?」
寝起きの頭で処理するには少々面倒な事が起きている。それぐらいは何とか理解出来た。
「だから、プレラーティが言ってきたのよ。スープの濃縮はあんたの手助けがないと出来ないって。で、更なる濃縮をやろうとしたら拒否された」
「…………ああ」
やっと理解と納得がいった。つまりプレラーティはカリオストロに一部情報を開示したんだ。俺の精液がスープと教えるのではなく、今までカリオストロが飲んでいた物を俺が手助けして用意していたと。
そして、もっとも効率の良い方法をやろうとして俺がNOを突き付けた事も。
「と、言う訳でぇ……」
「何するつもりだ?」
「こうするの……よっ!」
「へっ?」
あっさりと体をカリオストロに持ち上げられる。そのまま俺は脱衣所を越えバスルームへ連行された。で、そこではプレラーティがお出迎え。
それと同時に俺の体は何かで拘束される。見れば、これは水? と、そこで思い出す事が。錬金術の基本というか基礎というかは四大元素らしい事。
ガリィ達のエレメント能力について聞いた時、キャロルが教えてくれたのは、錬金術師はその四大元素の中から自分の得意属性を見つけて磨くのが一般的という事だ。そうそう、キャロルはその全てを扱えると言ってたっけ。
「これ、カリオストロの術?」
「だとしたら何?」
「君の得意は水なんだなぁって。プレラーティは?」
「……相克する属性と言えば伝わるワケダ」
「ああ、火か。サンジェルマンさんは風? 土?」
雑談をしながらゆっくりと頭を目覚めさせる。おそらくだけど、これから俺を待っているのは理性と本能のせめぎ合いだ。
しかも恐ろしい事に、プレラーティは俺がスケベしたがっているのをどこかで察している。そこまで来れば何故カリオストロに情報開示したのか見えてくるだろう。
そう、プレラーティはこう考えている。俺が手を出さないのなら、自分達が出してしまえと。ただ、無理矢理では意味がないから、俺の意思は残した形で快楽に流されてしまうように仕向けるのだろうな。
そんな風に色々考える俺へ、カリオストロが意外と律儀に質問へ答えようとしてくれた。
「サンジェルマンは」
「もういいワケダ。シキ、お前は昨日私にこう言った。こちらへは自分の出来る範囲で協力すると。なら、それを実行してもらうワケダ」
「あら、そんな事言ったのに拒絶したの? 意外と男らしくないのねぇ」
いっそ事実を告げた方がいいだろうか。そんな事を思うも、それではプレラーティがカリオストロへ協力を求めた意味がない。
それでカリオストロが俺を解放してくれるぐらいなら、プレラーティは最初から巻き込んだりしないだろうし。
「まぁ、お前の気持ちも分かるワケダ。何せ、表向きは不義を働く事になるワケダ」
「不義? ちょっと、どういう事よ?」
「カリオストロ、実はこいつがシンフォギアへ提供していたスープは、血液ではなかったワケダ」
俺の事を見つめながら告げられたのは、やはりそういう事だった。見ればカリオストロは突然の事に困惑している。
「その正体は、あろう事かこいつの精液だったワケダ」
「……嘘?」
「「残念ながら本当(なワケダ)」」
同じ言葉が異なる言い方でハモった。俺は当然げんなりと、プレラーティは突き放すように。
それでカリオストロも受け止める気になったのか、どこか複雑そうな顔をして俺を見てきた。ま、そうだろうと思う。
何せ、彼女は俺に言っていたのだ。美味しいと思う、と。
「話を続けるぞ。その効果の差は以前見えたと思うが」
「っ!? あの時のは、そういう事だったの……」
「そういうワケダ。だが、お前も知っての通り、その後シンフォギアに逆転を許したワケダ」
「それでもっと効果を上げる方法をやろうとして、拒否された? ……不義ってそういう訳ね」
納得。そんな言葉が浮かびそうな感じでカリオストロが深く頷いた。こうして見てると、カリオストロはどことなく以前のプレラーティに近い気がする。
何というか、女らしいんだけど、女じゃないって感じ。上手く言えないけど、上辺だけしか女になってない。内面的なものが、女じゃないって言うのが一番近いんだろうか。
と、そこで思い出す。プレラーティもそうだった。だけど、俺の精液を口にしてから内面的なものも女らしくなった気がする。
「だからカリオストロの協力が必要なワケダ」
「それがいまいちピンとこないのよね~。どうしてあーしが必要?」
「不義とは言い訳が出来ないからこそ不義となるワケダ。そこに言い訳の余地が、それも完全なものがあればどうなるワケダ?」
その言い方で俺は察した。何の事はない。昔の切歌と調がやった事である。俺の身動きを奪い、その上で肌を重ねるのだ。
で、俺のチンポを気持ち良くして射精させれば終わり。カリオストロの協力は拘束と共犯者にする意図もあるんだろうな。
「要は逆レイプ? まぁ、それでも最後は気持ち良くなっちゃうのが男の悲しい性だけど」
「抗い続けての最後ならば、まだ言い訳も出来るワケダ。それに、もう一つ言い訳の理由も与えてやればいいワケダ」
「もう一つの理由?」
カリオストロの疑問は俺の疑問でもあった。思い付く理由は先程のものしかない。まだ俺がみんなへ出来る言い訳などあるだろうか。
「私達が死なないように、なワケダ」
「「っ!?」」
思わず息を呑んだ。さすがに俺はその想いを口にした事はないし、分かるような振る舞いをした事もない。だけど、プレラーティの表情はそれを疑っていないどころか確信めいた感じさえ受ける。
「思い出せカリオストロ。装者達の中で、やたらと会話にこだわっていた奴がいたのを」
「……ああ、あのガングニールのお嬢ちゃんね」
「それだけじゃない。あの時、装者達が言っていたワケダ。要約すれば、私達を殺したくないと」
その言葉で俺は納得出来た。そっか。みんながアダムの攻撃からサンジェルマンさん達を守った時の事だろう。そこで分かったんだ。みんなが人殺しをしたい訳じゃない事を。
「なら、同じ理由でこの男が私達にスープを与えても文句は言えないワケダ」
「それは分かったけど、別にあーし達はスープがなくても死なないじゃない」
「違うワケダ。ここで私が言いたいのは、スープを与える事で不慮の事態を避けられるという言い訳だ」
「あ~……そういう事か。つまり、スープを与えないでいたら、みんなが全力を出した際にそっちを死なせてしまうかもしれないって、そう俺が思ったって?」
要するに俺がやるのは保険。それも、下手をすれば保険で守りたい者達を傷付けるかもしれない事だ。矛盾しているけど、スープありのプレラーティ達をスープなしで撃退出来た今のみんななら、最悪の場合プレラーティの想定を引き起こすかもしれない。
そんな有り得ないと言い切れない不安を抱いていると、プレラーティの顔が近付いてきた。
「さて、以上の点からお前が私の体内へスープを吐き出さないといけないワケダ」
「無理矢理過ぎないか? それと、それだと俺はサンジェルマンさんへも出さないといけなくなるんだが……」
俺の指摘にカリオストロと何故かプレラーティまで「ぁ……」と声を漏らした。もしかして考えてなかったのか? むしろ今の想定だと、一番なりそうなのリーダー格のあの人だろうに。
「ぷ、プレラーティ、さすがにサンジェルマンは無理だと思うんだけど」
「た、たしかにな。だが、このままではあまり良くない展開が待っていると思うワケダ。アダムは確実に私とお前を捨て駒として考えているし、サンジェルマンの事も、私達よりは有用な駒ぐらいにしか考えていないはずなワケダ」
何だろう。今のプレラーティの言葉がやけに耳に残る。アダムという奴は、そこまで酷い奴なのか。いや、言い換えよう。そこまで人でなしか。
いくら何でもサンジェルマンさん達の扱いが酷過ぎる。俺から見てもこの三人は凄い錬金術師だと思う。キャロルと同等ぐらいの力は持っているじゃないかってぐらいに。
そんな存在を捨て駒? もしくは少しは使える駒? 有り得ない。そして、それが組織のトップというのも信じられない。人望、ないだろ絶対。と、そこで気付く。だからティキには自分への忠誠じゃないけど、一途な愛情を持たせたのかと。
「プレラーティ、カリオストロ、一つだけ教えてくれるか?」
俺がそう切り出すと話し合っていた二人がこちらへ顔を向ける。
「何よ?」
「何だ?」
「俺からスープをもらったら、それでみんなをどうするつもりだ? 戦う、のはまだ仕方ないと諦めもつくけど、死なせる事は絶対に受け入れられない」
感情を出来るだけ排して告げる。ガリィ達は俺がこう言わなくても出来るだけそうしようとしてくれた。でも、それは俺が彼女達を壊していたからだ。目の前の二人は、そう出来ない。
だから言質を取りたい。取ったところで守られるとは限らないけど、彼女達の事だ。一度言った事を守らないのはかなり心を痛めるはず。
かなり甘い事を考えているのは自分でも分かっている。だけど、ああ、そうだ。俺は彼女達にも死んでほしくない。随分自分勝手で都合の良い考えだけど、キャロル達のように笑顔で過ごせるようになって欲しいと願ってるんだ。
「……つまり、あーし達に装者達を殺すなって?」
「それを守るのならスープを注ぐワケダ」
無言で頷く。不貞を働くのを承知で、不義を行うのを承知で、俺は頷いた。スケベ心じゃなく、違う何かが俺を動かそうとしてると思う。ただ、その結果する事がそういう事な辺りが俺らしくて思わず苦い顔をしてしまいそうになるけれど。
「それ、不測の事態はカウントしないの?」
「むしろそれをしないように立ち回ってくれないのなら無理」
ピシャリと言い切る。我ながら無茶を言ってる自覚はあるが、俺が一番守りたいのは悪いが響達なのだ。こればかりは譲れない。
暗に、響達を守るためにカリオストロ達は傷を負っても構わないと言っている。本当に自分勝手で都合の良い事を言ってるよな、俺。
「中々無茶な事を言ってくれるワケダ。だが、逆を言えばそれぐらい出来る程の効果を持つワケダ」
「多分ね。フェラで結構優位に立てたんだろ?」
「……信じられないけど、あんたのその雰囲気やプレラーティの反応からするとマジっぽいわね」
「それで、どうするんだ? 俺は別にどっちでもいい。今のままならみんなは君達に負けないし」
言っていて、どこかでぼんやりと思う事がある。もしかしたら、これでセックスしたらプレラーティやカリオストロ、完全に女として目覚めるんじゃないかって。
ガリィ達が壊れた要因を、全てが終わった後で本人達に尋ねた事がある。そこで言われたのは、よく分からない強いエネルギーが流れ込んできたというものだった。
それを聞いた了子は愛の力かもと笑って言っていた。俺の相手への強い想いがスープに溶け込んで、それがガリィ達の心へ浸透して変化を促したんじゃないかって。
そう考えると、プレラーティの変化みたいなものも納得出来る。彼女は俺のスープに溶けた愛情を受けて内面が女になり始めたんじゃないかって。
その理屈で言えば、膣内でスープを飲む事は間違いなく女として急速な目覚めを起こすはずだ。そうなれば、何となくだけど俺の願いをある程度酌んでくれるようになってくれるんじゃないか。そんな期待を抱いて俺は二人を見つめた。
「いいだろう。私は、約束してやるワケダ」
「プレラーティ……」
「カリオストロ、このままではアダムどころかシンフォギアにさえ打ち負けるワケダ。それを互角どころか圧倒出来るかもしれないのなら、装者達を殺さないようにするぐらい訳ないワケダ」
俺の目を見つめてプレラーティはそう告げてきた。心なしか、その目には期待の色が見える。
「そう、ね。このままじゃジリ貧だし、いいわ。あーしも約束したげる。その代わり、効果が弱かったら知らないから」
「……ありがとう」
今の会話だけでも分かる。二人は根っからの悪人ではないと。おそらく本当に自分達と衝突しないのならみんなの事を傷付ける事はしないのだ。そして、サンジェルマンさんへ二人揃って強い想いがある事も分かる。
今回の事も、根底にはそれがあるんだと思うんだ。サンジェルマンさんは、きっと生まれながらの女性。だからその体を汚させる訳にはいかないと。
「お礼はいいわ。じゃ、早速始めましょ」
「そうだな。時間は有限なワケダ」
俺の拘束を解いて、二人は服を脱ぎ始めた。若干恥じらいが見えるのはプレラーティで、思い切りいいのがカリオストロ。それにしても、やっぱり綺麗だよな、二人共。
特に初めて見るカリオストロの裸体は、正直に生唾ものだ。以前の俺なら間違いなく欲情して襲い掛かるぐらいに。
「ん? どうしたのよプレラーティ。そんなまごついちゃって」
「な、何でもないワケダ! 気にするな!」
まだ脱ぎ切っていないプレラーティへカリオストロが疑問符を浮かべていた。まぁ、仕方ないだろう。今のプレラーティは女になり始めている。男の前で裸になる事へ抵抗感があるんだと思う。
これまでは俺が先に待っていて、後から彼女が入ってくるパターンだったから分からなかったが、思い返して見れば最初の時よりも入ってくるのが遅くなっていたような気はする。
「カリオストロ、とりあえず確認だけしておくかい?」
「確認?」
「ああ。本当に俺の精液が飲んでいたものかどうか。抵抗感あるだろうけど、俺のチンポ舐めてみてくれる?」
俺がそう言うと、さすがに一瞬カリオストロの顔が歪む。それでも仕方ないとばかりに息を吐いて俺の前でしゃがんでくれた。
「ったく、どうしてあーしがこんな事を……」
言いながら手コキして勃起させてくる辺り、本当に男だったんだなと思う。その手つきがプレラーティよりも慣れていたからだ。ただ、俺が完全に勃起させるとちょっとだけその目が驚きを見せたのが可愛かったけど。
「もしかして、俺のって昔の君より立派?」
「そんな事まで知ってるの。まあ、そうね。昔のあーしよりも大きくて硬いわ……って、ちょっとぉ」
「そいつは私達が男だったと知って興奮するような奴なワケダ」
「そりゃそうだよ。それが今やこんな美女だ。男心やら性やらを完全理解してくれてる女性なんて、まずいないじゃないか」
みんなでさえ分かってるけど納得出来ない時があるのだ。そう考えると、この二人は究極の女性かもしれない。
……男にとって。
「そんなもんかしら? じゃあそろそろ……あむっ」
「うあっ」
カリオストロのフェラは、何というかプレラーティと違って情熱的なものだった。いきなり舐めるのではなく咥えてきた辺り、彼女の性格というか行動原理みたいなものが見える。
しかもそんな事をされたもんだから、俺の方も我慢汁がさっさと出てきて、その味がよりカリオストロのフェラを加速させていく。
ジュッポジュッポと音をさせ、上目で俺を見る事で劣情を煽る事も忘れないカリオストロは、正直こっち系の商売してたら天下取れるんじゃないかと思う程だった。
気付けば俺の視界には、熱烈フェラを続けるカリオストロと、それをやや妬ましそうに見つめながらモジモジする全裸のプレラーティが映っていた。
「か、カリオストロ……玉も、お願い出来る?」
「んふっ……」
「ああっ、出そうだ。カリオストロ、いいかい? そろそろ出すよ?」
優しく袋を揉みながらもフェラは激しさを失わない。これでおそらくフェラをするのは初めてと思うと恐ろしい。だけど、同時に嬉しくもある。カリオストロの初めてを一つもらえたのだ。
だからお礼じゃないけど、その髪を優しく手櫛で梳いた。すると彼女は少し怪訝そうな眼差しを向けてくる。何でそんな事と思ったんだろう。
「君がとても愛しく思えたんだよ。フェラしてもらってるんだ。今ぐらいは、最愛の人って思うぐらい許してくれ」
「っ!?」
「うあっ……出る……っ!」
驚いたのか、カリオストロの舌が動いて俺のチンポの裏筋を素早く舐め上げる。その不意打ちな刺激に俺は我慢出来ずに射精した。
流れ出す俺の精液を、カリオストロは再び驚きながら飲み始める。でも、その表情は次第に緩みだらしなくなっていき、目からも力が抜けていくのが分かった。
「……な、何よこれぇ。ぜんっぜん違うじゃない」
「え?」
そんな馬鹿な。プレラーティが飲ませてたのは間違いなく俺の精液のはずだ。そう思ってプレラーティへ視線を向けると、彼女は軽く仰け反っていた。どうやら精液の味を思い出してイったようだ。
「今までのよりも味が濃くて美味しいのぉ。ねっ、もっと飲ませて。あーしのおっぱいで挟んであげるから」
「えっと……」
申し出は嬉しいが、これで俺は以前抱いた仮説の裏付けをもらったと言える。要は、これまでカリオストロが飲んでいたのは俺がプレラーティに手コキされて出したもの。
それは、言うなればプレラーティへの気持ちが溶けたスープだ。でも、今回のはカリオストロへの想いが溶けたスープ。いわば専用スープだ。その味に違いが出るのは当然と言える。
「カリオストロ、それはいいけど、本来の目的はパイズリで射精させる事じゃないだろ?」
「あっ……」
「うん、だからそれはまた今度で」
顔を赤めて、しまったという顔をするカリオストロがやけに可愛い。もしかしてもう内面の女性化が始まったんだろうか? だとすれば、やっぱり直接摂取するのは効果が高いんだと実感出来る。
「ま、待て。次は私の番なワケダ」
「ダメよ。今までこんなの独り占めしてきたんだから、あーしの番」
「それはそれ、これはこれなワケダ」
「何よ? やる気?」
「正当な権利を主張してるだけなワケダ」
目の前で始まる女の戦い。何というか、こういうの最近見なくなったから新鮮だな。少し前までは奏とマリアがやっていたっけ。
ともあれ、あまり気分の良くなる光景じゃない。俺が原因でこうなっているのだから仲裁も俺の仕事だ。そう思って二人の間に割って入る。
「ストップ。ここは俺に決めさせてもらえる?」
「……仕方ないわね」
「その方が無難なワケダ」
あっさりと引いてくれる辺り、二人も本気ではなかったんだと思う。なら、ここは公平にいきますか。
「プレラーティ、いいかな?」
「ちっ!」
「当然の結果なワケダ」
舌打ちするカリオストロと勝ち誇るプレラーティ。うん、本当に一昔前の奏とマリアだ。懐かしい気持ちになりながら、俺はプレラーティを抱き寄せる。
「ぁ……」
「お待たせ。もう準備出来てるみたいだし、早速始めようか」
「あ、ああ……頼むワケダ」
こちらを見上げ、赤面するプレラーティ。やっぱり内面の女性化が進んでると見た。なら、ちゃんと優しく扱わないといけないな。前に言われた言葉、忘れてはいないんだ。
「壁に手を付いてお尻を突き出して」
「こ、こうでいいか?」
小ぶりなお尻を突き出すようにして、こちらへ振り返るプレラーティ。本気で可愛い。でも、どこか犯罪臭がしてしまうのはご愛嬌。
小さく苦笑しながら俺はチンポをぬれぬれのマンコへと擦り付ける。それだけでプレラーティの体がビクンと動いた。本当に反応が初心で可愛い。
「力抜いて、俺に任せて」
「……信頼してやるワケダ」
その言葉が何よりの親愛と思って、俺はゆっくりとチンポをプレラーティの中へと侵入させていく。思った通りに初めてだったようで、その締め付けは久々のきつさを俺に与えてくる。
でも、心配していた事は起きなかったらしい。というのも、プレラーティの膣から血が流れてこなかったのだ。もしかして、この辺りも錬金術での性転換が関係してるんだろうか。
「は、入っている……私の中に、シキが入っているのを感じるワケダぁ」
「痛みはある?」
「な、ないワケダ。むしろ、今まで感じた事のない快楽を覚えているワケダ」
「そっか。じゃあ、動くね?」
「ああ……ひゃんっ!?」
許可も出たので軽く腰を動かす。するとそれだけでプレラーティから可愛らしい声が上がる。初めて聞く彼女の女の声。それに俺だけでなくカリオストロまで驚いていた。
「プレラーティ、あんたそんな声出るのね……」
「き、聞くなぁ! わ、私だって出したくて出してる訳じゃないワケひゃんっ!」
恥ずかしがってるプレラーティを俺は可愛いと思い、もっと見たくて腰を振る。例えそれで文句を言われても構わないと。それぐらい、今のプレラーティは可愛かった。
「や、やめろぉ! あんっ! こ、こんな声を出させるなぁ!」
「無理っ! だって、今のプレラーティ、とっても可愛らしくて堪らないんだ! もっとその可愛い声を聞きたい! もっとその可愛い顔を見たいっ!」
「っ!?」
「可愛いよプレラーティっ! 愛してるっ!」
以前言った事を守るように告げる。スープの濃度を少しでも上げるように、行為の最中だけ最愛の人として扱うという、あれを。でも、それが思った以上に効果があったらしく、俺が愛してると言った次の瞬間、強い締め付けがチンポを襲った。
見ればプレラーティが大きく震えていた。声を押し殺してイったらしく、両足がガクガクと震えているし背中は反っていて顔も上を向いている。
「……プレラーティ」
「っはぁ……はぁ……。い、今のはもう止めるワケダ。その、お前の妻に悪いと思うワケダ」
そうは言うけど、こちらへ向ける眼差しは潤んでいてとても喜んでいるように見える。それに、今更そんな事を言われてもと思ってしまう。理由はどうあれ、俺が進んで彼女達以外の女性へ手を出した事に変わりはないんだし。
「別にいいよ。今更だしさ。という訳で続行するわけだ」
「なっ……ま、真似するな」
「了解。じゃ、そういう事でっ!」
「ひゃんっ!? ま、また奥ぅ……」
蕩けた力のない声で呟かれる快楽に溺れたプレラーティの言葉。それに俺は笑みを浮かべて腰を振る。昔のような壊すぐらいのセックスではなく、慈しみ溶け合うようなセックスで。
するとどんどんプレラーティの声が甘く溶けたようなものへ変わっていく。まるで、内面が女性らしくなっていくのを示すように。
「はぁん……い、今のとこぉ、今のところが好きなワケダぁ」
「やっぱり奥なんだね。じゃあ……ここをこうするのは?」
「ああっ、それも好きぃ。入口をペニスで擦られるの、気持ちいいワケダぁ」
「なら……最初ゆっくりで途中からこうっ!」
「にゃぁぁぁっ! そ、それはダメぇ! 感じるところと感じるやり方の混合はズルいワケダぁ!」
こんな感じですっかり発情した雌みたいな雰囲気を出してくれてる。チラリと視線を後ろへ向ければ、そこには堪らずオナニーを始めているカリオストロ。
何というか、ツヴァイウイングやイヴ姉妹との3Pを思い出すな、これ。とにかく今はプレラーティをたっぷり愛してあげよう。
そうやって抱いていると、プレラーティがやや辛そうに見えた。体勢が体勢だ。多分疲れてきたのだろう。そう思って俺はその体を後ろから抱き抱えるようにして、その場に座った。
「んんっ!? な、何を」
「背面座位。これなら少しは楽だろ? 俺にもたれてくれていいから」
「……分かった。なら、お言葉に甘えるワケダ」
少しだけ笑みを浮かべ、プレラーティはこちらへ背中を預けてくれる。それだけではなんなので、俺は彼女の顔を軽く動かした。こちらへ不思議そうな顔を向けるプレラーティへ、俺はそっとキスをする。
「……いきなり何をするワケダ」
「したくなったから」
「…………勝手にしろ」
言葉とは裏腹にマンコの締め付けは強くなる一方だ。ならばと、俺はそのままキスを続けた。舌を入れるのは止めておいたが、キスする度に締め付けがキュッキュと変わるのがとても可愛く思えた。
途中でプレラーティに体勢を変えてもらい、対面座位へ変更。そうしたら、プレラーティが抱き着いてきたので、もっと愛おしく思ってキスをした。
そんな事をしていればやがて迎える結末は一つな訳で……
「うっ……!」
「ぁ……じんわりと、あったかいものが流れてくるのを感じるワケダ……」
俺に強く抱き着きながらプレラーティがそう呟いた。出し終わった後も、少しの間彼女はそうしていた。俺もどいてくれとは言わなかった。
「……プレラーティ」
「……何だ?」
「絶対みんなを殺さないでくれ」
「可能な限り善処してやるワケダ」
「それと」
「まだ何かあるのか?」
「死なないで」
「っ……ああ、私もそのつもりなワケダ」
「ちょっとちょっとっ! 何いい雰囲気出してるワケ? あーしもいるんですけどぉ!」
俺がプレラーティへ心からの願いを告げていると、後ろから聞こえてくる大きな声。振り向けばカリオストロが不機嫌極まりない顔で立っていた。
「煩い奴だ。もう少し雰囲気というものを考えて欲しいワケダ」
「な~に乙女みたいな事言ってんのよ。これはスープをもっとも効率良く得るための行為なんだからね。目的、忘れんじゃないわよ」
「……分かっているワケダ」
そう言ってプレラーティはカリオストロに見えないよう、俺の首筋へキスをして離れていく。そして、もう終わったとばかりにシャワーを浴び始めた。
「さっ、次はあーしよ。どういう体勢でしたいのかしら?」
「ええっと……そうだね」
こちらをチラリと見てくるプレラーティの目がこう言っていた。私と同じ体勢はするなと。多分そういう事だと判断し、俺はその場へ寝転がる事にする。それだけでカリオストロは俺の希望する体位を悟ってくれたらしい。
「あら、そういう事。ま、それはおっきな胸の方がそそるものね」
明らかにプレラーティへの言葉ではあるが、素知らぬ顔で彼女はシャワーを浴びている。でも、絶対今のイラッとしたと思う。だって、少しだけだけど、プレラーティが歯を食いしばったのが分かったし。
「じゃあ、しましょっか。こうして……んっ、ああんっ!」
「ぐっ……」
カリオストロの中もやはりきつかった。更に言えば、プレラーティよりも上のきつさ。多分だけど、カリオストロはプレラーティよりも活動的なんだろう。それでマンコの方も締め付けがきつめなんだ。
そう思いながら俺は自分の上で揺れる二つのおっぱいを眺める。眺めだけなら奏に負けてないな、カリオストロ。ただ、マリアやクリスには及ばない。あれ、本気で心配になるぐらい揺れるもんな。
「んんっ! ちょっとぉ、今っ、絶対あーし以外の女の事考えてるでしょ!」
「ごめん。なら、そうしないようにする」
「あっ、おっぱい揉むのね。男ってそこが大好きだもの」
ゆさゆさ揺れる二つの果実を両手で掴み、優しく揉んでみる。するとカリオストロがくすぐったそうに笑う。その笑みがとても綺麗で可愛くて、欲情ではなく愛情を感じてしまった。
「可愛いな、その顔」
「え?」
「あ、いや……くすぐったいって感じに今笑ったから」
思った事をつい口にしてしまう。これは完全にみんなとの交わりで癖付いたものだ。思った事をそのまま繋がってる時は言うと、彼女達はそれに素の反応や表情を見せてくれるものだから、ついついそうするようになってしまった。
そんな俺の言葉に、カリオストロはゆっくりと顔を赤らめていく。何というか、思ったよりもこういうところは初心なんだろうか?
「や、ヤダっ、さすがに手慣れてるだけあるじゃない。女の弱いとこ、知ってるのね」
「別におだてや世辞じゃないから。これだけは、分かってくれ」
「っ! も、もうっ! ほ、ほら、もっとエッチな事していいから」
「ははっ、うん、そうさせてもらうよ」
照れ隠しにスケベを煽るカリオストロが余計可愛く見えて、笑いが出てしまった。それにややムっとした表情を見せるも、すぐにカリオストロは気を取り直して上下運動を再開。
俺は彼女のお言葉に甘え、上半身を起こして胸へ吸い付かせてもらう事に。乳首はしっかりと主張していて、俺が口をつけるとカリオストロが嬉しそうに声を上げた。
「あんっ、こ、こんな感じなのね。んんっ、クリクリまで……」
聞こえてくる声は、どこからどう聞いても甘い女の声だ。何というか、本当にカリオストロもプレラーティと同じで、俺のスープを摂取してから内面までも女性らしくなってきてる気がする。
だって、明らかに声の感じがこれまでと違うのだ。これまではどこか演じてる感じがしたのが、今は自然な感じというか、意識的な雰囲気が消えているように思う。
なので、試しにと乳首を甘噛みしてみる。
「ああっ、今の好きよぉ。でも、もっと強くてもいいかしら」
「強く、ね。なら……」
「んああっ! や、ヤダぁ。あーし、Mの気あったの? これ、さいっこうにキモチイイ」
……マリアが喜ぶぐらいでやったんだけど、どうやら良かったらしい。本人も言っているが、これはMの素質十分だろう。と、なればカリオストロにはマリアと同じような方向性がいいんだろうか?
探りを入れる意味も兼ねて言葉攻めをしてみる事に。
「おいおい、元男なのにドMとか、救い難い性癖だな」
「そ、それは言わない約束でしょ」
「良く言うよ。今も俺の言葉でマンコが締め付けたぞ。自分でも分かってるんだろ?」
「それはぁ」
「認めるんだ。カリオストロは、痛くされて感じるドMなんだ……って!」
「はあああああんっ!」
言い終わると同時にカリオストロの両乳首を思い切り引っ張る。すると仰け反りながら絶頂した。うん、間違いないな。彼女、マリアとタメ張れるMだ。
そう判断し、俺は小刻みに震えるカリオストロをゆっくりと床へ倒していく。そして、そのまま両足を持ち上げてっと。
「な、何?」
「ん? ああ、ご希望に沿おうと思ってさ。一番奥で出してあげようとね」
「一番奥? って、ああっ!」
全体重を乗せる形でカリオストロへピストン開始。種付けプレスって奴だ。これはマリアだけでなくみんな好きなのだが、ここでキスをして息を塞いでやれば……
「んんっ!? んんんんんっ!!」
思った通り、マンコの締め付けが凄い事になった。正直言おう。これ、もしカリオストロが本気で嫌がっているのなら俺はとうに弾き飛ばされている。
何せ彼女達は生身の状態でギアとやり合えるのだ。そんな彼女が俺を振り払えないわけがない。つまり、これをカリオストロも受け入れている。
「っぷは、どうだい? 今の、嫌?」
「き、聞かないでも分かってる癖にぃ。もっと長くてもいいわ」
「ん、了解。じゃあ……」
「んぅ」
ロングキスを望まれたのでそうすると、今度はカリオストロが舌を入れてきた。少しびっくりしたけど、それぐらい求めてくれていると思えば嫌になるはずもない。
愛しさを込めて舌を絡めてあげると、よりマンコの締め付けが良くなる。そのまま舌を絡め合いながら腰を動かせば、聞こえてくる濁った音。
カリオストロが本気で感じて、喜んでいる証が奏でる音である。と、そこで余計締め付けがきつくなった。
「……どうした?」
「は、恥ずかしいのよ。あーしのオマンコがラブジュースをいっぱい流してるからでしょ、この音」
「だろうな」
「何か、感じ過ぎてる自分に恥ずかしくなってきたの。おかしいわ、こんな事割り切れると思ってたのに……」
自分で自分が分からないと言うような声だ。だけど、俺はそれを良い変化だと思う。
「する前に思っていた事と経験した後に思った事が一致するとは限らない。カリオストロ、こうやって男と交わった事はある?」
「ないわよ」
「だからじゃないか? やっぱり男の時と女の時じゃ感じ方も違うはずだし、男よりも女の方がイった時の快感が強いって言うじゃないか。それもあって、今の君は混乱してるんだよ」
「……そんなもんかしら?」
「それぐらいに考えていた方がいいよって事。とりあえず、そろそろスパートかけるな」
「分かったわ。そうしておく」
ここから会話はなかった。俺とカリオストロはキスしているか息継ぎするかのどちらかで、後はお互いの性器が出す分泌物が出す粘り気のある音だけが響いていた。
気付けばカリオストロは全身で俺の体を絡め取っていて、それが子供をねだるマリアや奏を連想させる。本当に、俺も変わった。以前ならここで頭の中には気持ち良く射精する事しかなかったはずだ。
それが、今は相手の事を想い、愛したいという性欲だけじゃない気持ちがある。初めてした女性としてのエッチを良いものにしてあげたいと思うんだ。
「カリオストロっ……もう……っ!」
「い、いいわっ……きて? あーしの中にきてぇぇぇぇぇっ!」
「ぐっ……ああっ!」
「あぁ……出てるの分かるわぁ。あったかいのが、あーしの中に……」
うっとりした顔と声でそう言って、カリオストロは俺の体を優しく抱き締めてきた。と、そこでふと目と目が合う。
「……女の幸せって、こういう事を言うのかしらね?」
「それは君が決める事だよ。でも、もしそう思ってくれたのなら良かった」
言ってそっと頬へキス。自分でも不思議なぐらい、本当にみんなへするような行動が出来た。
「あんた……ううん、貴方って本当に不思議ね。あーし、昔詐欺師やってたけど、貴方なら女専門で同じ事出来る気がするわ」
「無理だよ。俺は嘘で女を抱けない。俺が抱く時は本気なんだ。今だって、そういう意味じゃ本気だ。みんなのためにも、君達のためにも、死んでほしくないって思ってるんだから」
「……もう、本当に厄介な男だわ。もしかして、これが後悔するって事なのかしら?」
俺の事を強く抱き締めて囁くカリオストロ。後悔するって、どういう事だ? もしかして、夢子を届けてくれた時に、誰かに何か言われたんだろうか?
「いつまで浸っているワケダ」
と、そこへ聞こえてくるプレラーティの呆れるような声。視線を動かせば、俺達を見下ろす形で立つ裸のプレラーティ。
「人には雰囲気を作るなと言っておいて、自分はそうするとは」
「仕方ないじゃない。やっぱ、こうやって肌重ねてるとムード出てきちゃうもんよ」
「それなら私も許されてしかるべきだろう。納得がいかないワケダ」
「えっと、とりあえずこれでいいか? 二人共、体の感じはどう?」
またケンカになりそうと判断し、俺は拘束が緩くなったカリオストロの腕から抜け出した。離れ際、カリオストロが若干寂しそうにしたのが胸にきたけど。
「ああ、今まで以上に活力がみなぎってくるワケダ」
「ホントね。これ、凄いわ」
どうやらこれで終わりらしい。それと同時に押し寄せる罪悪感。結局信念は貫けなかった、か。だけど、彼女達を死なせたくはない。もし彼女達が死ぬ事があれば、その時はみんなも危ない可能性が非常に高い。
だから、飲み込む事にする。生きて帰れたら、みんなの文句も不満も怒りも何でも受け止めよう。そう決意し、俺はシャワーを浴びようとして何故かその手を二人に止められる。
「何?」
見れば、プレラーティもカリオストロも真剣な表情でこちらを見つめていた。
「貴方のした事、無駄にはしないわ」
「約束通り、装者達を殺さぬよう善処する。その代わり……」
「その代わり?」
何だろう、嫌な予感がする。
「「これからも、よろしく(なワケダ)」」
揃って顔を赤くしながら告げたのは、今後のセックス要求。うん、どうやら望む望まずに関わらず、俺はエロから逃げられないらしい。
これを喜ぶべきか悲しむべきか。願わくば、みんなからのお仕置きが去勢ではない事を……。
「やはりこれでは限界のようだ」
私の目の前には、私用のラピスがある。その輝きは最初に比べて増しており、その完成度は確実に錬成した当初を超えていた。
ただ、それを支えていたスープの効果も頭打ち。もう何度垂らしても変化は起きず、私のラピスは静かに輝きを放つのみ。
「……濃縮スープなら、望みはありそうだが……」
プレラーティがくれるようになったあのカプセル。あれならば今よりもラピスの純度を上げられるかもしれない。だが、あれは精製するのに時間が必要ですぐには手に入らない上、数も多く作れないために研究用には出来ないらしい。
「なら、服用するために渡される物を使うしかないか」
そう呟いて、私はダメだと首を振る。あれを飲まねばシンフォギアへの対抗は難しい。特に、あの黄金錬成を撥ね退けた時のような状態は。
「神の力の錬成もある。あまり時間はかけていられない」
レイラインの情報がS.O.N.G関連施設のどこかにある以上、そこへ出向きそれを入手しなければならない。
月遺跡を掌握出来る程の神の力は、人の命だけでは錬成出来ないのだから。この星を巡る膨大なエネルギー。それを利用し、神いずる門を開くために。
そのためには、シンフォギアを確実に跳ねのけられるようにしなければ。
と、ふとそこで思いついた。この生命のスープならば、もしかして神の力の錬成へ活かせるのではないかと。
物は試しとこの国では言うのを思い出して、私は早速残った血液を贄として錬成を始めた。
「……これは……本当に……」
結果は成功だった。ただし、これではバルベルデの時に成した程度が精一杯だ。私の求める段階へは、まだまだ遠いと言える。
それでも、これは大きな一歩だ。特に、他者の命を使わず錬成出来た事が。もっと多くの血液があればいいのだろうか? あるいは、プレラーティが行っている濃縮を手伝う事かもしれない。
「他者を犠牲にせず、神の力へと至れる、か。もし本当にそれが可能ならば、要シキ、お前は奇跡の存在と言えるな」
もし、私が血液をもっと多く欲しいと言えば、彼はどんな反応を見せるだろう。嫌がるだろうか。もしくは、理由を聞かせてくれと言うだろうか。
後者とすれば、上手くいく可能性は大いにある。幸い、彼は私には一応の感謝をしているようだからだ。
プレラーティやカリオストロは呼び捨てるのに、私にだけ敬称を付けるのがその証拠と言える。おそらくだが、私がいる事が彼の娘を守ったと知ったからだと思う。
さすがに赤子まで人質には出来ない。本音を言えば、父と引き離してしまった事さえ胸を痛めている。そこには、彼の父親としての気持ちが大きく影響していた。
娘を想う父の気持ちを、あれだけ強くはっきりと見せられたのは初めてだ。抵抗する力もないのに、私達の手の内にあって娘と再会すると強く決意し、そのために最低限の交渉をまとめた男、要シキ。
「それだけではなくティキまでも……」
今回の報告で感じた、ティキの些細な、だけども大きな変化。あのティキが局長以外の男性の名を出しただけではない。その相手の言葉さえも引用したのだ。
ティキを成長した娘と思って接していると、彼はそう言っていた。その通りに、彼は色々な事をティキへ話しているようだ。まだ一月も経過していないのに、ティキがある程度懐いたと言えばその凄さが分かると言うもの。
「要シキ、か。もっと彼と話してみるべきかもしれない」
ツヴァイウイング、一時戦線離脱。マリアも近々そうなる。ここにきて装者側の体制が大きく乱れる事に。
その反面、プレラーティとカリオストロは本当のスープを、しかも中出しで吸収。更にサンジェルマンがシキへと迫る。
……中盤に向けて波乱の展開が起きそうです(汗