※この作品はR-18です。

淫姫絶頂したいフォギア   作:拙作製造機

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お忘れかもしれませんが、今作のAXZは冬が舞台。つまり、星座が夏ではなく冬。そういう事です(汗


過去と未来の狭間で、もがき足掻く事こそが……

「起きてシキ。お~き~て~」

 

 ゆさゆさと体を揺さぶられる。もう少しまどろんでいたいんだけどな。そう思いながら目を開けると、そこにはティキの少し不機嫌な顔があった。

 

「やっと起きた。シキ、今日はお寝坊さんね」

 

 言われて近くの時計へ目をやる。現在時刻は午前八時になるところ。うん、たしかにいつもよりも遅い。

 と、そこで気付く。サンジェルマンがいない事に。まぁ、いたら今頃ティキが指摘してきているだろうし。

 

「おはようティキ」

「おはようシキ。ご飯、もう持ってきてあるよ」

「ありがとう。じゃ、まず顔洗ってくる」

「はーい」

 

 寝惚けた頭でのっそりとベッドから出る。そのままバスルームの方へ向かえば洗面台がお出迎え。顔を冷水で洗い、目を覚ましてからうがいをして戻る。

 ティキはもういつものとなった白一色コーデのままで、窓際の椅子に座って外を眺めていた。そうしていると本当にただの美少女にしか見えない。

 

「お待たせ」

「別に待ってないわ」

「そっか」

 

 ティキの向かいへ座り、テーブルに乗っている食事へ手を付ける。当然ではあるが俺は一階のビュッフェを利用出来ない。サンジェルマン達はそこで朝食を取っているらしいが、俺は一応軟禁状態だからなぁ。

 

 あと、誘われてもきっと俺は行かなかっただろう。ティキを一人にするのは心苦しいし。何せ、彼女はガリィ達と違って食事が出来ないから。

 

「ねぇシキ。もうスーツ出来た?」

「むぐっ? ……さすがにまだ無理だよ」

 

 一昨日採寸し、そこから作ってもらうとしても数日はみないと駄目だろう。下手をしたら一週間以上かかるかもしれないし。

 

「え~っ? じゃ、いつになるの?」

「……向こうが連絡してくるまで待つしかないよ」

「む~っ」

「膨れても駄目なものは駄目。それよりもティキに聞きたい事があるんだけど、いいかい?」

「ティキに?」

「前外出した時に言ってた事だよ。プラネタリュウムとティキが同じっていうあれ」

「あ~、うん。星座とかが見れるんでしょ? ティキ、それ出来るもの」

 

 そんな事かとばかりの反応だけど、俺としては正直よく分からないのが実情。何せガリィ達はそんな能力なかったからなぁ。

 なので、食事しながら見せてくれるように頼む事に。ティキは仕方ないなぁと言いながら部屋の中央へと移動した。

 

 そして……

 

「……へぇ」

 

 天井が一瞬にして星空へ変わった。あのバルベルデで見た時よりも上のレベルな星空だ。まるで宇宙の中へ放り出されたような、そんな感じさえ受ける。

 しばらく俺は食事も忘れて星空を眺めていた。どれぐらいそうしていただろう。やがて星空は消え、ティキがこちらへ顔を向けた。

 

「どう?」

「凄いよ。そうとしか言えないぐらいだ。あんな星空、見たくても中々見れない」

「そっか。シキが喜んでくれたなら良かった。ティキのあれ、誰も喜んではくれなかったから」

 

 最後だけ、どこか寂しげな雰囲気で告げるティキが見てられなくて、俺は思わずその傍へ駆け寄って抱き締める。

 

「シキ……?」

「そんな事言わないでいいから。俺、忘れないよ。ティキの見せてくれた星空を。世界で一番凄い星空をさ」

「……うんっ!」

 

 聞こえてきた明るい声に俺はティキの体を離す。そこには、こちらを見上げて笑う可愛い女の子がいた。思わず笑みを返して頭を撫でる。すると、ティキがくすぐったそうに笑った。本当に、可愛いな。

 

「ティキ、いつかさっきのを俺の家族にも見せてくれるかい?」

「家族?」

「ああ。娘や奥さん達だ。その時は、ティキのそれをみんなが驚いてそして褒めてくれるよ。凄い綺麗だって」

「……ホント?」

「勿論。断言してもいいぐらいだ。絶対みんな喜んでくれるってね」

 

 特に響辺りは大はしゃぎしてくれるだろう。いや、意外と迫力に負けて黙り込むかもしれない。

 

「ならいいわ。いつかシキの家族にもさっきの見せてあげる」

「うん、楽しみにしておくよ」

 

 最後にもう一度だけ頭を撫でて俺はティキから手を離す。さて、すっかり冷めてしまったけど食事を続けるか。

 

「ねぇシキ」

「ん?」

 

 テーブルへ戻るなりティキがトテトテと近付いて顔を覗き込んできた。そうしていると、本当にただの女の子みたいだ。

 

「その時は、アダム達も一緒よね?」

「……そうしたいね」

 

 俺の答えにティキはちょっとだけ悲しそうに笑った。きっと、俺がそれを難しいと思っている事を察したんだろう。

 その事に俺は喜びと申し訳なさを感じる。俺に出来たのは、黙ってティキの頭を優しく撫でる事だけだった……。

 

 

 

 シキが冷めた食事へ手を付け始めた頃、シャトーは普段ない程に静まり返っていた。

 

「……キャロルちゃん、ガリィ達は?」

「休眠状態だ。ドリンクをありったけ使ったとはいえ、さすがにスープ使用の相手をするには少々張り切り過ぎた。朝食を食べた後ですぐさま休んでもらっている。父さんがいなく、ドリンクさえも使い切った今、ガリィ達の稼働エネルギーを増やす術はないからな」

 

 そのキャロルの言葉に響だけでなく全員が黙り込む。それが意味するのは、今後ガリィ達の援護や支援は望めないという事。

 それだけではない。シキがいなくなり、皆の笑い声も少なくなったシャトーから更に活気が失われる事でもある。

 

 シキがさらわれて、本当に彼女達から笑顔が減った。いや、正確には笑い声が減ったのだ。

 どうして笑える? 夢子達にとっては父親を、了子達にとっては愛する男を、ナスターシャでさえ頼もしい義息を、それぞれ奪われたのだ。そんな中で心から笑う事は中々難しいだろう。

 

「……夢子も、眠ってばかりになってしまいました」

 

 ぽつりとナスターシャが呟く。その視線は腕の中で静かに寝息を立てる夢子へと注がれていた。

 

「みんなの事を呼ぶ事も、あまりしてくれなくなりましたね」

「そうデスね。こうなってくると、キャロルやエルを姉さんって呼んだのが奇跡デス」

「うん、そうだね」

 

 沈んだ声で話す未来達。シキがさらわれてしばらくはまだ夢子も元気があった。それが、新年を過ぎた辺りで少しずつ大人しくなっていったのだ。

 泣く事も増え、それまではガリィ達でも泣き止んでいたのが了子でなければ泣き止まないようにもなったのである。

 

 それを誰もがこう思っていた。父親と長く引き離されてしまったから、母親とは長く離れていたくないという気持ちの表れだろうと。

 

「……止めろよ。んな小さな事で奇跡なんて言葉使うな」

 

 どこか窘めるような声が全員の心を打つ。その声の主であるクリスは柔らかい笑みを浮かべていた。

 

「奇跡って言うなら、せめてあいつを連れ戻すぐらいにしとけ。ま、それもちょっと言い過ぎな感じか」

「クリスちゃん……」

「お前までんな暗い顔すんな。シキの奴がスケベだけどスケベじゃない気持ちで戦ってるんだろ? それをあたしらでちゃんと説教してやらねーといけないし、年越しの事やクリスマスの事の埋め合わせもさせるんだ。これは奇跡じゃなくて当然だろ?」

「うん、そうだね、そうだよ! 奇跡って言うのはもっと凄い事だよね!」

「おう、そうだ」

 

 響の声と顔に明るさが戻ったのを見て、クリスは嬉しそうに笑みを見せる。その様を見て未来だけが噛み締めるように笑みを浮かべた。

 

(今の二人を、出会ったばかりの二人に見せてあげたいな。あのクリスが響を励ましてあげるなんて、ね)

 

 最初は衝突した二人が、今や名前で呼び合い笑みを見せ合う仲となっている事。その不思議さに未来は時の流れを感じ取る。

 まだ響が装者として戦い始めて二年にもならない。その間にあまりにも色々な事があり過ぎたため、未来の中ではもっと年月が経ったように思えていたぐらいだ。

 

「では、奇跡はきっとエルが見つけ出してくれるでしょう」

「えっと、それってイグナイトの?」

「そうです。どうやら何とか出来るらしいと、そう昨晩話してくれました」

 

 夢子の寝顔を眺めながらナスターシャはそう話した。そう、シキがさらわれて以降、エルとキャロルはナスターシャと共に寝ていた。

 了子の部屋に行かないのは夢子に配慮しての事である。実の母と二人きりでいさせてやりたいという、二人の不器用で小さな姉心であった。

 

「キャロル、どういう事?」

「説明して欲しいデス」

「それはいいが、理解出来るか?」

 

 間髪入れずに放たれた質問へ調と切歌が思わず言葉に詰まる。キャロルの表情はどこか呆れるものだったのだ。そこから錬金術の用語などが沢山使われる事を察し、どうしたものかと互いの顔を見合わせた。

 

「はいっ! 私にも分かるようにお願いしたいなっ!」

「…………奴らのファウストローブがイグナイトを封じているのは分かっているな? それは、呪いに対して浄化の概念が働いているためだ。だから、賢者の石の特性を失わせる事が出来ればいい。要は、相手の持つ特殊能力を消滅させる事だ」

「それが、出来そうなの?」

「この世に絶対無敵など有り得ない。もしあるとすれば、それは無敵に見せているだけだ。実際、あのバルベルデの相手はそれだったろう」

 

 キャロルの言葉に誰もが納得する。ヨナルデパズトーリは、そういう意味でうってつけの存在だった。マリアのガングニールでの直接攻撃以外無力化していたのだから。

 

「あの時は、たしかに私達はそう思った」

「デスデス。絶対無敵って、そう感じたものデス」

「あれも、ガングニールじゃないと駄目だったんだよね?」

「そう、哲学兵装というやつだ。故に奴らの目論見は、実行されたとしてもガングニールで粉砕出来る」

 

 当然の理のように述べるキャロルだが、聞いている響としては未だに理解出来ないらしく、小首を傾げるような動きを見せた。

 

「それなんだけど、どうしてガングニールなの?」

「……ガングニールは、一説によれば神を殺した槍となっている。つまり、神を殺した武器だ。その話が長い年月をかけて神殺しという概念をガングニールへ与えた。故に神の力と呼ばれる無敵に等しい力を粉砕出来る」

 

 これで話は終わりだとばかりのキャロルの声で、響は後頭部へ手を当てて苦笑いを見せる。一応理解は出来たが、完全にではないのだろう。

 が、そんな彼女の事をよく知る者がちゃんとため息混じりに口を開いた。

 

「要は、ガングニールがもしもの時の切り札になるって事」

「さっすが未来、分かり易い!」

「……俺の説明の意味は何だったんだ?」

「意味はある。あたしらは今のでしっかり分かった」

「うん、ありがとうキャロル」

「ならいい」

 

 クリスとセレナの言葉に安堵するように息を吐き、キャロルは席を立った。

 

「俺はこれからギアの改良へ入る。一応夕食には顔を出すが、出てこない場合は」

「呼びに行くから安心してくれていいデスよ」

「……すまないが頼む」

 

 そう言ってキャロルは食堂を後にする。ギアの錬金術による改良作業は、本部よりもシャトーの方が向いているとキャロルは判断したのだ。

 遠くなっていく背中を見つめ、セレナは静かに立ち上がった。そして響達を見回して笑みを見せる。

 

「さっ、じゃあ私達も動こうか。と言っても、響は課題を終わらせておく事。未来、クリス、監督よろしく」

「はい」

「おう」

「お、お手柔らかに」

「で、切歌と調は私と一緒にお買い物だよ」

「了解デス」

「分かった」

「マム、夢子をお願い」

「ええ」

 

 こうして彼女達も動き出す。変わってしまった日常の中で、いつかまた戻る笑顔を信じて。

 

 その頃、エルは本部内のキャロルとの共同研究室で膨大な資料とにらめっこをしていた。何か賢者の石を無力化出来る術はないものかと、目を皿のようにして資料を見つめて。

 

「……ダメだ。やっぱりそんな都合のいいものが見つかるはずはない」

 

 口をついて出たのは弱気な言葉。だが、それにすぐに気付いて首を細かに左右に動かすと、彼女は軽く頬を叩いた。

 

「諦めない。きっと、きっとどこかに手がかりがあるはずだ」

 

 言い聞かせるようにそう呟いてエルは再び資料へと意識を向ける。と、そこで彼女はある部分に目を奪われた。

 

「これは……」

 

 それは、かつての響が陥っていた融合症例に関する資料。その一部に記載された、彼女の体内から取り出された物質。それにエルはしばらく意識を向け、やがて勢い良く椅子から立ち上がると、その資料を手にしたまま了子の研究室へと向かった。

 

「母さんっ!」

「……ノックもしないでどうしたの?」

 

 いつもであれば礼儀正しいエルが採った行動に首を傾げ、了子は椅子を回転させる。その視線の先で荒く呼吸をするエルの表情から、何かを感じ取りながら。

 

「こ、これを見てください」

「どれどれ……」

 

 差し出された資料へ手を伸ばし、眺める事数分、了子はおもむろに眼鏡を外した。

 

「響の体内から採取された物が、どうして賢者の石への対抗策となる?」

「そ、それは響さんという一人の体から生み出された物です。いえ、フィーネ母さんに分かるように言うなら、全にして一なる物」

「賢者の石と同じ表現だな……っ! そうか! 錬金術の基本か!」

「は、はい。この物質を組み込めば最低でもイグナイトの使用を可能に出来るはずです」

 

 そこまで聞いてフィーネはエルへと近付き、その頭をそっと撫でた。

 

「えっと……?」

「ん? ああ、驚かせただろうか。お前の行いを褒めたつもりだった。よくやったな、エル」

「っ……うんっ! ありがとう、フィーネ母さんっ!」

 

 誰かに褒められる。これをエルはそこまでされてこなかった。いや、されなかった訳ではない。ただ、初めてフィーネから褒められた事。これがエルにとって思いの外嬉しさを感じさせたのである。

 

 この後、エルはフィーネと共に発令所へ赴き、響の体から採取された物質の使用を嘆願、これが受理され、深淵の竜宮から”反ラピス物質”と仮称を付けられた物質が本部へと速やかに移送される事となる。

 本来であれば聖遺物ではない物を組み込む事はギアの展開などを阻害する可能性があるのだが、エルとフィーネの二人が揃って口にした「この物質は基本何の役にも立たない」という特性のため、その不安も払拭される事となった。

 

 響達五人のギアへ先行的に組み込まれる事となり、その最初を飾ったのはやはりガングニール。

 

「いやぁ、まさか課題をやってたら呼び出されるとは思わなかったよ」

「すみません。でも、相手は響さんを一番の障害とみていますから」

 

 突貫工事にも近い作業ではあるが、エルだけでなく了子やナスターシャも協力する事で何とか響の分だけを明日までに仕上げる事が可能となっていた。

 キャロルへは意図的に情報を遮り、プロジェクトアルケミーへ専念させる事となる中、エルは了子の非凡さを改めて痛感する事となる。

 

「ね、エル。ちょっと聞きたいんだけど」

「何? 母さん」

 

 それは時刻が普段の帰宅時刻を過ぎた辺りの事だった。組み込みも終わり、後はチェックをして終了と、そうエルが思った瞬間である。

 

「これ、イグナイト使ったとしたら、その後に問題起きるんじゃない?」

「…………どうしてそう思うの?」

「だって、これは賢者の石を無力化するというより、その効果を弱体化させるみたいなものでしょ? じゃ、無理矢理イグナイトを使用する事に変わりはない。その反動みたいなの、ギアに出ないかしら?」

 

 それはエルもどこかで思っていた事だった。組み込んだ物質が出来るのは、賢者の石の効果への弱体化。それは無力化ではない。

 そんな中でイグナイトという呪いの力を使うのだ。その負荷や負担はどうなるかは、エルにも正直未知数であった。

 

「それは……」

「こうなると、それが出た時の事を考える必要があるわねぇ。う~ん……」

 

 言いよどむエルを無視するように、了子は手元のキーボートを叩き出す。その行動にエルは何も言えぬまま見つめ続けた。

 やがて、了子の手が止まり、満足そうに頷いてエルの方へと振り向いた。

 

「ねぇ、こんなのどう?」

 

 聞かれてエルが了子の横へ移動する。そこから覗きこもうとしたエルだったが、若干背が足りずよく見えなかった。と、そんな彼女の体がふわりと浮きあがり、そのまま了子の膝へと運ばれる。

 

「はい、ここならよく見えるでしょ?」

「母さん、ありがとう」

「どういたしまして」

 

 感謝を述べて視線をモニタへと向けるエル。そこには、予想されうるギアへの問題とその対応策がつらつらと書き記してあったのだ。

 

「……母さん、どこで錬金術の知識を?」

「ああ、これ? それはフィーネからの知識よん。彼女も自分なりに調べてはいたみたい。何がどう自分の目的に活かせるか分からなかったから、ですって」

「そうなんだ……」

 

 視線はモニタから逸らさず、エルは納得するようにそう返した。そして、彼女は頷く。錬金術師として頼れる姉の力を借りる事を。

 

「母さん、僕、キャロルにこれを見てもらいたいんだけど、いい?」

「ええ。是非キャロルの意見も聞きたいものだわ」

 

 この後、キャロルは送られた内容に驚き、唸り、了子との意見交換を電話にて始めてしまうのだが、その会議は夕食の呼びかけに来た切歌によって強制終了を迎え、無事にエルと了子も帰宅の途に就けた事を記す。

 

 

 

「まさかねぇ……」

「驚きと納得の半々なワケダ」

 

 時刻は午後八時を過ぎた頃、私達はシキのいる部屋の前で鉢合わせていた。何の事はない。要は私達三人して彼と交わろうと思っていたのである。

 

 それにしても、カリオストロはまだ分かる。シャワーを軽く浴びてきたのだろう。バスローブ姿に淡く香水の香りがする。

 問題はプレラーティだ。見た事のない可愛らしい寝間着を着ていた。おそらくだが、前回の外出の際に購入したのだろう。しかも、あの店はそういう物はなかったように記憶しているので、その後で別の店へ向かったのだ。

 

「彼のスープが贄となる事が分かった時、真実を教えてもらった。二人が彼と何をしているのかも、な」

 

 私がそう告げると、二人は同時に赤面した。その反応に私は軽く驚いてしまった。それは、まるで女性が知られたくない事を知られてしまった時の反応にしか思えなかったために。

 

「そ、そうよね。シキはそういうの隠さないでしょうし」

「あ、ああ。隠せと私達も言わなかったワケダしな」

「それで、二人はどうするつもりだ?」

 

 その問いかけに、二人の雰囲気が変わった。それまでとは打って変わって静かな、それでいて激しい炎のようなものを漂わせた気がしたのだ。

 

「どうするって?」

「サンジェルマンは何を言いたいワケダ?」

「私は彼と交わり、儀式の起動に使えるだけの贄とできるかどうかを確かめる」

「「っ……!」」

 

 何故か私の言葉に二人が奥歯を噛んだ。どうしてだと思っていると、二人が同時に私の顔を見て理由を教えてくれた。

 

「「顔、笑ってる(ワケダ)」」

「……そんなつもりはなかったんだが」

 

 どうやら知らず勝ち誇るような笑みが出ていたらしい。まぁ、仕方ないだろう。

 

「それで、話を戻すが二人はどうする?」

「……あーし、シキと約束しちゃったのよねぇ。装者を殺さないようにするって。そのためにもぉ、スープを体の中でゴクゴクしないといけないワケ」

「私も同じなワケダ。スープをもらわぬ体では、シンフォギアと互角すら厳しいワケダ」

「……そういう、事か」

 

 つまり二人はシキを譲るつもりはないと言う事だ。静かに火花を散らす私達。このままでは埒が明かない。こうなればシキに決めてもらおう。

 

「分かった。では、彼に判断してもらおう」

「いいわよ」

「了解だ」

 

 出会ってから初めてだろうぐらいに、私達は今火花を散らしていた。それが”女”としてのものだとどこかで理解し、私はシキを恨んだ。

 シキが二人を女へ変え、私までも女へと戻してしまった。それが現状へと繋がっている。顔を見たら、まず恨み言の一つでも言わせてもらおう。そう思って私はシキの部屋のドアをノックした。

 

「はい? あれ? 三人揃ってどう……あ~」

 

 顔を出したシキは、私達を見て何かを察したように気まずそうな表情を見せる。

 

「とりあえず入って。話は中で」

 

 その意見に私達も異論はなく、黙って入室すれば最早見慣れた内装が出迎える。シキは部屋の中央辺りで私達へと振り向いた。

 

「で、何で三人から険悪な雰囲気が? これ、俺が原因?」

 

 単刀直入に尋ねられた事へ、私だけでなくカリオストロもプレラーティも言葉に詰まる。シキが嘆いている。それも、自分自身へ。そう分かってしまったためだ。

 

「……そうなる、な」

「あーし達、本気で女にされちゃったの」

「シキ、お前の事だから責任は取ってくれると思ってはいるワケダが……どうする?」

 

 私達の言葉と雰囲気で全てを理解し、シキは表情を変えた。それは、言うなれば凛々しい男の顔、だろうか。初めて私達相手に交渉してきた時よりも、更に決意を感じさせるものだ。

 

「そうなんだ。なら、一つだけ三人に必ず果たしてもらいたい事がある。この事が片付いたら、パヴァリアを抜けて欲しい。それを絶対守ってくれるのなら、俺が全力で三人を守るよ。奥さん達を説得して、ね」

 

 言われた言葉が胸に響く。シキは、今回の事が私達にとっても装者達にとっても平和的に解決出来ると思っているのか。いや、そうしてみせるという決意表明だろう。

 そこで思い出すのはあの立花響という名の装者。彼女も私達と手を繋ぎ合う事を目指すと言っていた。それも、シキと同じでと。

 

「……神の力を顕現させ、人類を支配の軛から解き放つ。それは、私の理想だ。それを果たす事は装者達を」

「そこなんだけどさ。それ、本当にみんなと戦わないとどうにか出来ない? 俺の精液で儀式の起動は何とか出来そうなんじゃないの?」

「あ、それは……」

 

 答えに困る。結局最初のスープは私が飲んでしまったし、二度目も口でもらってそのまま飲み干した。そう、私は未だにシキの精液を贄としてどこまで使えるかを試していない。

 

「サンジェルマン? どうしたの?」

「もしかして、まだ試していないワケダ」

「っ」

 

 その瞬間、二人の目が細くなった。私を問い詰めようとするかの如く、カリオストロとプレラーティが詰め寄ってくる。

 

「あれぇ? どーしたのかしらサンジェルマン。あーし達の目、見てくれない?」

「私の言葉にも答えて欲しいワケダ。勿論、シキのにも」

「そ、そのだな? 試してみようとは思った。思ったのだが……」

「「「思ったのだが?」」」

「き、気が付いたら飲んでしまっていたのだ。避妊具から口の中へと流して」

 

 隠しても仕方ない。開き直るように事実を述べ、私はシキを見た。シキは私を見て何か納得するように頷いている。

 

「そういう事か。じゃ、俺の判断は決まったよ。ゴムを付けて三人とエッチする。それを全部贄にしてみて」

 

 告げられた内容に私だけでなく二人も黙った。何故ならシキは怒っていたのだ。何に怒っているのかは分からないが、視線が私を捉えている事から私に対しての怒りだと思う。

 心が、騒ぐ。まるで父に咎められているような気分だ。鋭い視線と無言の圧力。これまでも感じた事のない訳ではないものだが、何故かシキのは妙に私の心を乱す。

 

「どうして俺が怒ってるか分かる?」

「……贄にすると言っておきながらしなかったからか?」

「そうだけどそれだけじゃない。サンジェルマン、俺は言ったはずだよ。俺の精液でみんなが戦わずに済むのならって。君はそれを聞いておきながらどうして二度目を俺にもらおうとしなかったのさ。俺がシャワーから出てきた時に、素直に飲んでしまったと言ってくれればいいだけだろ?」

 

 静かに、淡々と言われる言葉が胸に痛い。そう、私はあの時何故か言い出せなかった。きっと、あんな事を言いながら黙って生命のスープを飲んでしまった事を恥と思ったのだろう。

 

「……すまない。その、君も疲れていたようだし、時間も」

「一度射精するぐらいの余裕はあった。体力的にも時間的にも。それが分からないサンジェルマンじゃないだろう」

 

 ピシャリと言い放たれた言葉に返す言葉がなかった。そうだ、たしかに一度ぐらいなら出来た。ただ、あの時の私ではそれで止まれなかったと思う。それどころか、避妊具を使わず交わりたいと言い出していたかもしれない。

 

 私が何も言えず沈黙したのを見て、シキは視線を私からカリオストロ達へ向けた。

 

「二人もだ。まさか二人はサンジェルマンが何をしようとしているかをまったく知らないって事はないんだろ? なら、彼女の実験へ協力してあげてもいいじゃないか。それなのに譲る気はないとばかりに女の匂いをさせて」

「そ、それはぁ……」

「さ、サンジェルマンならとっくに実験を完了していると思ったワケダ」

「へぇ、それならもう譲る必要はないぐらい儀式の起動ってのは簡単なんだ」

 

 シキの言葉に二人が俯いた。間違いなくシキは怒っている。それも、かなり深くだ。理由は一つ。私達が戦いを避けられるかもしれない可能性を追い求めていなかった事。

 つまり、シキにとって大事な者達へ危険を及ぼそうとしていた事だ。故にシキは怒っている。私達を信じて、心苦しくもスープを与えてくれていたのだから当然だろう。

 

「俺は、君達を信じてた。俺の事を利用すると言いながら大事に丁重に扱ってくれていたし、何より君達は根っからの悪人には思えなかった。だから、出来る限りみんなを殺さないでくれと頼んで、そして君達にも死んでほしくないから抱いた。たしかに絶対とは言わなかったし、そっちも可能な限りと返した。だけど、戦わずに何とか出来る可能性が見えて、それを調べてくれないのはどうなんだ?」

 

 返す言葉がない。シキの言い分は正しい。最初はともかく、今の私達は彼と約束を交わしている。本物の生命のスープをもらう代わりの、契約のようなものを。

 可能な限りに装者達を殺さない。私達が死なないように。たったそれだけの、シキからの愛情の約束。それを私が裏切った。よりにもよって、その約束を交わしたその日に。

 

「……サンジェルマン」

「っ」

 

 体が震える。ああ、これは初めての経験だ。父に叱られる瞬間というのはこんな感覚なのだろうか。

 

「今度こそ約束してくれるか? 戦わないで済む方法があるのなら、その可能性を諦めない事」

「……ああ」

「ありがとう。カリオストロ、君は?」

「勿論よ。その、ごめんなさいね?」

「その言葉だけで十分だよ。レティはどう?」

「それは善処ではなく確実に履行するワケダ」

「そうしてくれると嬉しいな。さて、じゃあ……」

 

 そこで一気にシキから怒気が消える。そしてシキは静かに服を脱ぎ始めた。その瞬間、私の下腹部が、子宮が疼き始める。分かったのだ。今からシキが私達を抱いてくれるのだと。

 視線を動かせばカリオストロとプレラーティも頬を紅潮させていた。まだ私はそこまでなっていないと思うが、その差を生んでいるのがあの薄いゴムなのだとしたら、私はそれをなくして交わりたいと思い出す程にシキの女となっている。

 

「三人共、覚悟して。今夜は寝かせないぞ」

「「「っ!?」」」

 

 間違いなくその言葉を聞いた瞬間、私のヴァギナが愛液を流した。シキの声は聞いた事のない程に低く、それがより彼が男なのだと私へ教えてきたのだ。

 

「さっ、服を脱いで。脱ぎ終わった順番でチンポハメてくから」

 

 そう言われた瞬間、カリオストロとプレラーティが競うように服を脱ぎ始める。私はそこまで素早くは出来なかった。こんな事ならもっと脱ぎ易い服を着て来ればよかった。

 やがてカリオストロが脱ぎ、プレラーティも一糸まとわぬ姿となっていて、私が最後に裸となる。そこで気付いた。私達は揃って乳首が主張していると。

 

 その一因は、間違いなくシキの視線とペニスにある。視線はまるで私達を慈しむような優しさを宿しているのに、ペニスは雄々しく反り返っているのだ。今にも私達へ種付けしたいと叫んでいるかのように。

 

「じゃ、まずはカリオストロか。レティとサンジェルマンは少し待ってて」

「それはいいのだが、一つ教えて欲しい」

「何?」

 

 先程は流してしまったが、気になっている事がある。その相手であるプレラーティへ私は視線を向けた。

 

「先程から君が口にしているレティとは何だ?」

「あーしもそれ気になってんのよねぇ」

「簡単な話なワケダ。シキが付けた私の愛称なワケダ」

 

 どこか嬉しそうな顔でそう言ってプレラーティはシキを見た。シキもその表情に苦笑し、頬を掻いている。恥ずかしいのか照れくさいのか分からないが、どちらにせよ気分はあまり良くないな。

 

「あー、うん。プレラーティって名前がちょっと俺には長く感じてね。で、レティって呼んでもいいって許可をもらったんだ」

「……へぇ、あーしの名前は長く感じないの?」

「そんな事ないよ。近い内に同じ事を聞こうと思ってたさ。リオ辺りかな?」

「あらいいじゃない。あーしもいいわよん、リオって呼んでも」

「わ、私も考えてくれれば吝かではない」

 

 このままでは私だけ爪弾きにされると思って口を挟む。するとそんな私にシキは軽く驚きを見せるように瞬きし、喜びを噛み締めるような笑みを浮かべた。

 

「そうか。なら、アンジェは?」

「アンジェ? ……そういう事か」

 

 私の名前の一部を抜き出しての愛称か。しかも語感や雰囲気から考えるに、シキはエンジェル辺りも意識していそうだ。天使、か。もしそうだとすれば、私は間違いなく堕天使だろうな。

 

「いいかな?」

「ええ、それでいい。少々愛らしすぎる気もするが」

 

 そう、私には似つかわしくない気がする。でも、シキが付けてくれた愛称だ。そう思うと嬉しくもある。ああ、成程。これがプレラーティが表情を緩ませた理由か。納得するしかない。

 

「そんな事ないよ。アンジェって呼ばれても不思議じゃないぐらい君は可愛いと俺は思うから」

「っ!?」

「ちょっとぉ、あーしは?」

「リオもだって。勿論レティもね」

「とってつけたような言い方だが許してやるワケダ」

 

 拗ねたような二人にシキは苦笑していた。そんなどこか和やかな雰囲気だったが、それもそこまでだ。すぐに私達はシキと交わりたいという欲求に満たされる。視界に映る、雄々しく逞しい雄の象徴によって。

 まるで魅入られたように私達の意識と視線が集中していく。更にペニスの先端から出てくる透明な液体が私達から理性を奪ったのだ。

 

「……ごめん、気が変わった。三人いっぺんに抱かせてくれるか? 勿論ちゃんと一回ずつスープあげるからさ」

 

 その申し出に今の私達が出来たのは、ただ首を縦に振るだけだった……。

 

 

 

「ああっ、最高だよ三人共。そのままチンポを舐め回して」

 

 シキの視線の先では、三人の美女が蕩けた顔でペニスへ舌を這わせていた。左右をカリオストロとプレラーティが、中央をサンジェルマンが陣取り、三人は艶かしく舌を動かしてフェラチオを行っていた。

 シキの両手で頭を優しく撫でられているカリオストロとプレラーティ。その温もりと舐め取る味に酔いしれるように表情を緩め、二人の元男はすっかり女と堕ちていた。

 

(ああ、何度舐めても美味しいわぁ。あーし、このチンポ好きにされちゃったぁ……)

(普段よりも味が濃い気がするワケダ。これは、もしや三人でしているからか……?)

 

 音を立ててペニスへ奉仕を続ける二人とは対照的に、サンジェルマンは静かに音を立てないように舌を亀頭へと這わす。

 

(美味しい……何て美味しいのだ、このペニスは。もっと舐めていたい。出来る事ならずっと……)

 

 じっくり味わうように舌で亀頭を転がすように舐め、カウパーを独り占めするサンジェルマン。そんな彼女がペニスへ夢中となっている要因がもう一つある。

 

「エロくて綺麗だよアンジェ」

 

 シキから向けられる優しい眼差しと優しい声。それにサンジェルマンは喜びを得ていた。彼女が言った通り、サンジェルマンはシキに父を見ている。幼い日に突き放された実の父がくれなかったものをシキから受ける事で、彼女の心はその頃のやり直しとでもいうべき感覚へ陥っていたのだ。

 

「レティ、リオ、どちらか袋の方も舐めてくれるか? アンジェはそろそろ我慢汁を二人へ飲ませてあげるように」

「……っはぁ、分かった」

「なら、あーしがタマタマ可愛がっちゃうわぁ」

「シキ、私が亀頭へ奉仕する。期待していいワケダ」

「ん、頼むなレティ。っと、リオはやっぱ情熱的だな。その調子で頼むよ。アンジェ、何ならキスしようか?」

「いいのか?」

「当然。おいで?」

 

 こうしてサンジェルマンはシキとディープキスをしながら愛撫される事となり、その間プレラーティとカリオストロがペニスへの熱烈奉仕を行う事に。

 だが、二人はシキの意識を自分達へ向けようと動き出す。サンジェルマンがその体を押し付けるようにキスしているのを見たためだ。

 

「シキ、あーしぃ……チュッ、お口にいっぱぁい出して欲しいの。おっぱいでシコシコするから、たくさぁ~ん、出して?」

「むっ、ならば私だって負けていられないワケダ。シキ、その大きくて優しい手で私の胸を大きくしてくれないか? 何なら女性器を刺激してくれても構わないワケダ。私に、その、お、女の快楽を刻み付けて欲しい……ワケダ」

 

 キスしているサンジェルマンに出来ないおねだり。それを淫らにするカリオストロと、やや恥じらいを見せながら行うプレラーティ。

 そんな二人にシキは嬉しそうに笑みを返すと、サンジェルマンの体を愛撫していた片手を動かしてプレラーティの体へ這わせて二人同時に可愛がり始めた。

 

「んはぁ……シキ、もっと触ってくれぇ」

「んっ、あぁ……シキぃ」

 

 優しいフェザータッチと呼ばれるような触り方で二人の胸を愛撫するシキの手付きに、サンジェルマンとプレラーティから熱っぽい声が漏れる。

 プレラーティはもっと触ってくれと言う様にシキの手を取り、自身の秘部へとそれを導く。既に濡れているそこは熱くなっており、ペニスの侵入を今か今か待ちわびていた。

 

「やんっ、チンポが跳ねたぁ。あーしのおっぱいが我慢汁で火傷しちゃいそう」

 

 カリオストロはその自慢の乳房でシキのペニスを挟み扱き上げていた。以前シキへしてあげると言っていたパイズリである。

 更に舌を伸ばしてのパイズリフェラにする事でシキを喜ばせて興奮させると共に、自らもカウパーを味わう事でヴァギナを濡らしていく。

 

「んぁ……シキ、下腹部が切ないんだ。何とかしてぇ」

 

 胸を押し付けるようにしながら、サンジェルマンが艶めいた声でシキへセックスをねだる。だが、シキはそんな彼女へ静かに首を横に振った。

 

「ダメだよアンジェ。明確に疼く場所を言ってごらん? オマンコ? それとも子宮? で、そこに何を欲しいかもね」

 

 淫語を使えと、暗にそう告げたシキにサンジェルマンは赤面する。これまで彼女がしてきた性交は、自分の体を男の好きにさせる事ばかりだった。誰も彼女の恥らうところや戸惑うところを見ようとはしなかったのである。

 

「い、言わなければ駄目か?」

「言ってくれたら嬉しいな。だって、レティとリオは言えるよ?」

 

 その瞬間、二人の目が妖しく光った。

 

「私の子宮にシキの熱くて濃い子種を注いでほしいワケダ。それこそ、妊娠してしまうぐらいに」

「あーしのオマンコにぃ、シキのオチンポミルク欲しいのぉ。それで受精しちゃうぐらい、いっぱぁいにし・て?」

「……と、こんな感じ」

 

 どこか苦笑するように表情を変えて、シキはサンジェルマンを見つめた。何故ならプレラーティは自分の愛液塗れとなった片手の指を舐めていて、カリオストロなどペニスを頬で撫で始めていたからだ。

 完全に出来上がっている二人にシキは苦笑していた。だが、それがサンジェルマンには別の意味にしか映らない。

 

(これまで何度も男と寝てきたのに、淫らな言葉一つ言えないと笑われた……)

 

 シキが自分を微笑ましいと感じて苦笑したのだと、そう捉えてサンジェルマンは意を決した。

 

「ば、馬鹿にしないでもらおうか。私とてそれぐらい言える。シキのペニスで私のヴァギナを突いて欲しい」

「う~ん……三十点」

「っ!?」

「サンジェルマン、ただ言えばいいってもんじゃないわよ?」

「もっと男をその気にさせるような言い方をするワケダ」

 

 苦い顔でシキが告げた点数に絶句するサンジェルマンへ、カリオストロとプレラーティが助言する。それは元男故の、そしてシキに女とされたからこその言葉だ。

 だからこそサンジェルマンには分からない。これまでそんな事をした事も考えた事もないために。そのためだろうか。彼女はシキへ縋るような目を向ける。それが彼にはマリアとの初めての行為を思い出させたのだ。

 

「……耳貸して」

 

 こうしてシキから耳打ちされたサンジェルマンは顔を赤面させながらその内容を心の中で復唱し、完全に覚えたとばかりに小さく頷いてみせる。

 

「シキ、む、むっつりスケベな私のオマンコに、貴方の濃厚子種汁を注いでは、孕ませて?」

「最高だよアンジェ。ベッドに行こう。リオ、レティもおいで」

 

 恥じらいながらもシキの目を見つめて告げた言葉。その様子にシキは大いに興奮してサンジェルマンをベッドへと誘い、カリオストロとプレラーティにも両手で軽く頭を撫でてその行動を促す。

 既に出来上がっている二人は迷う事無く頷いてベッドへと向かい、サンジェルマンも体の叫びのままにベッドへと動き出した。

 

 三人はそれぞれベッドへと乗ると、四つん這いとなってシキへ臀部を突き出す形をとった。

 

「シキ、早く入れて欲しい。私にもその生命のスープを直に注いでくれ」

「シキぃ、あーしもハメハメして欲しいのぉ。あーしを完璧な女に変えたチンポで、あーしの体、屈服させて?」

「シキ、私の体はお前専用なワケダ。だから、チンポによる定期メンテナンスを要求するワケダぁ」

 

 揃って目を蕩けさせ、ヴァギナを濡らして女達は交尾をねだる。もうその頭には当初の目的など残っていない。あるのはただ心惹かれた相手と交わりたいという欲求のみ。

 

「……いいけど、三人へ一度出したら後はゴム着けるんだからな? ちゃんと贄にしてくれよ?」

 

 唯一シキだけがこの中で本来の目的を覚えていた。その言葉にサンジェルマンは頷いて、無意識に臀部を動かしてシキを誘う。その動きに小さく笑みを浮かべ、シキはゆっくりと彼女達へと近付いていく。

 

「覚悟してくれ。本当に寝かせないつもりだから」

 

 その告げられた言葉に、三つのヴァギナが蜜を流す。雄を誘う、淫らな蜜を……。

 

 

 

「「「「「「「地上のオリオン座?」」」」」」」

 

 響達装者七人の声が揃う。マリアが無事帰国し、多少ではあるが戦力が増した事を喜んだのも束の間、彼女達は揃って発令所へ集められていたのだ。そこで告げられたのが先程の言葉である。

 

「そうだ。グランマから見せてもらったレイラインのデータを分析した結果、ある地点にそうとしか表現出来ない場所を見つけた」

「それがここです」

 

 キャロルとエルが揃ってモニタへと視線を向け、響達も視線をそちらへ動かす。そこには、たしかにオリオン座のような形で複数の点が繋がれていた。

 

「……それで、ここをサンジェルマン達は狙うと?」

「ああ。多分だが、奴らは俺の計画を一部利用するつもりだったはずだ。俺も世界の分解にレイラインを使おうと思っていたしファウストローブも実用化していたからな。おそらく、俺が失敗すればそれでよし。失敗しなければそれはそれでと考えていたに違いない」

「それが支援の理由?」

「何て奴らデスか」

 

 調の問いかけにキャロルが無言で頷くのを見て切歌が嫌そうな顔をした。優しい彼女からすれば、手を貸しておきながらその失敗までも利用しようとする算段が気に入らないのだ。

 

「ね、キャロル。ここの点がある場所はどこ?」

「それについてはもう調べてあるんだ」

「その点がある場所は、それぞれ神社が存在しているの。きっと地脈と呼ばれるものに沿って建立されたはずよ」

 

 あおいの言葉と共にモニタへ複数の神社が表示される。その中の一つを見て調が首を傾げた。

 

「調神社……?」

「これでつきと読むんだ」

「ナントっ!? まるで調の名前みたいデス」

「調と書いてつきと読む、か。たしかに偶然にしちゃぁ出来過ぎだな」

「でも、私の名前は本当の名前じゃないんです。持ってた物から付けられたから……」

 

 そこで息を呑む響達旧二課組とキャロルにエル。一方、ナスターシャはしまったとばかりに顔色を変え、小さく息を吐いて口を開いた。

 

「その通りです。ですが、その時参考にしたのはこの神社の名が入ったお守りでした。もしかすると、ここは調と何か接点があるかもしれません」

「じゃ、ここに行ってみよう。調の事もだけど、相手がこの場所を狙わないとも限らないし」

「防衛兼調査、かぁ。師匠、それならいいですよね?」

「こちらとしても、もっと詳しい情報を知りたいところだ。頼めるか?」

「お任せデス」

「ま、冬休みも終わっちまったからさっさと片付けたいしな」

 

 クリスの言葉に苦い顔をする響と切歌に調。未来とセレナはそんな三人を見て苦笑し、マリアだけが呆れるようにため息を吐いていた。

 こうしてギアのない未来を除いた六人は調神社へと向かう。一方、サンジェルマン達はと言えば……

 

「動きがあったか」

「ええ、世界の歌姫と合流して装者六人で移動開始」

「一人いないのは万が一の際の備えだろう。念には念をというワケダ」

「ま、それがあの神獣鏡ってとこがちょっと腑に落ちないけどね」

 

 響達の行動を監視し、未だ手に入っていないレイラインのデータから得られるはずの情報を知ろうとしていた。キャロルが既に自分達の目的を察している事を知ったサンジェルマン達は、ならばとそれを逆手にとって、S.O.N.Gの動きからどこが怪しいのか突き止めようとしていたのである。

 

「いや、あのギアはたしかに戦闘向きではないが、聖遺物関係には無類の強さを誇るはずだ。ないと思うが、ラピスも異常をきたすかもしれない。そういう意味では厄介な相手と言える」

「防衛となれば、あーし達が罠を張るのも厳しい」

「成程、たしかに一人でも我々を足止め出来、かつ有効打を与えられるかもしれないワケダ」

 

 実際はギアを強化されているためなのだが、それを彼女達は知りようがない。そのために未来が同行しない事を深読みしていた。

 動き出す響達に合わせてサンジェルマン達も動き出す。目指すは神出ずる門と呼ばれる神社一帯。その中の調神社へ響達は、その他の神社へサンジェルマン達は向かう事となる。

 

 いよいよ事態は最終局面へと近付きつつあった。

 

 そんな事とは露も知らず、シキは今日もティキとホテルの一室にいた。だが、一つ大きな違いがある。それはシキの手にしている物にあった。

 

「さてと、どうしたものかな?」

 

 それはルームキー。ホテル内に限り自由な行動を許可された証拠であった。三人まとめて抱かれた事でシキへの愛情を深めてしまったサンジェルマン達は、彼の現状を少々忍びなく思い、ホテル内限定での自由行動を認めたのである。

 シキとしては別に現状でも十分過ぎると思っていたのだが、三人の厚意に甘える形でルームキーを受け取り、それを手元で遊ばせながらこれからの行動を考えていたのだ。

 

「シキ、ティキ、この中を見て回りたいわ。だって、ティキもこの中一部しか行った事ないもの」

「う~ん……それが一番かな? よし、じゃあ探検に行こうか」

「うんっ!」

 

 響達とサンジェルマン達が動き出す中、シキとティキも動き出す。ただ、彼らだけはその雰囲気はとても和やかなものだったが。

 

「まずはどこへ行くの?」

「フロント」

「え~っ?」

「そこで館内図を見るんだ。闇雲に動くには、このホテル結構大きいからね」

「でも、探検って言うなら何も知らないままで行く方がらしいと思う」

「……一理あるなぁ。よし、ならとりあえず一番上に行ってみよう」

「うんっ!」

 

 手を繋ぎ仲良し親子の如く歩くシキとティキ。その珍道中は、始まったばかりであった。

 

 

 

「すっごぉい……」

 

 シキと一緒に来た場所は、この建物の一番上。えっと、スカイラウンジって言って、お酒とかを楽しむ場所みたい。本当は夜じゃないと駄目みたいなんだけど、シキが景色だけでも見せてってお願いして入れてもらえた。

 

「ティキ、満足した? 次に行くよ?」

「もうちょっと見ていたいけど……仕方ないわね」

 

 見れば店員さん達も苦笑してる。ティキとシキってどう見えてるんだろ? シキは多分兄妹って言ってた。

 

「無理言ってすみませんでした。お詫びに、今度はちゃんと営業時間に来ます」

「ます!」

「はい、お待ちしております」

 

 シキが店員さんへ営業中に来るって言ったからティキも来るって意味で返事。にっこり笑う店員さんは、どこか優しい感じがした。あれ、来て欲しいって思ってるのかな?

 

 今度は一つ下の階へ。でも、そこはもう宿泊する場所しかないみたいで、しかもシキが言うには一番高い金額の部屋があるフロアだって。なのでつまらないからすぐに下へ。

 だけど、しばらくは宿泊するためのフロアばかり。それでも不思議と退屈はしなかった。シキと一緒にいると、色んな事を知れるからだと思う。

 思えば、アダムはティキへ何も教えてくれなかった。お話だってティキからしないとしてくれないし、構ってもくれない。シキは、ティキが何も言わなくてもお話をしてくれるし、何かしなくても構ってくれる。

 

 それも、基本は笑顔で。シキと過ごしてる内に、ティキは気付いた事がある。アダムもよく笑ってたけど、シキと違ってあったかくないって。

 

「ねぇシキ」

「ん?」

 

 自販機って言うものがある場所を見つけて、ちょっと休憩ってなったから聞いてみようと思う。

 

「アダムって、ティキの事どう思ってるのかな?」

 

 今まではそんな事考えもしなかった。だって、ティキはアダムの事が大好きで愛してる。それだけで良かったし、構わなかった。アダムに素っ気無くされても、それもアダムなりの愛情って思ってた。

 

「そうだね……俺は直接見た訳じゃないからあくまで参考程度にして欲しいんだけど……」

「うん……」

 

 どうしよ? シキの言葉が怖い。もしシキから見て、アダムはティキを嫌いって思われたらどうしようって。そうなったら、ティキはもう生きていけない。

 

「好きか嫌いかは分からないけど、大切なんだとは思うよ。その服だって脱げとは言わなかったし、似合ってるって言ってくれたんだろ? なら、きっとティキを大事には思ってるはずだ」

「っ! そうよねっ! アダムはティキを大事に思ってくれてるもんねっ!」

「うん、そうだと思うよ。さて、ならまた探検を再開しようか」

「うんっ!」

 

 心が軽くなるのを感じて、私はシキの手を取る。そうだ、アダムはティキを大事に思ってくれてる。サンジェルマン達が似合うって言ってくれた服を、アダムも褒めてくれたんだもの。それに、それに……

 

―――シキは、嘘を言わないんだから。

 

 握る手から感じるあったかさに心が弾む。シキと一緒にいるとティキがどんどんアダムに近付いてるのが分かる。人間らしくなってるって、そう思える。

 これなら、いつかティキもアダムの隣に立って胸を張れるようになれるって、そう確信出来るもの。だからもっと色んな事をシキやサンジェルマン達から教えてもらわないと。

 ティキは錬金術が使えないけど、知識だけは知っておきたい。アダムの秘書になるなら、そういうのは知っておいた方がいいと思うし。

 

「おっ、ティキ、下を見てごらん」

「え? ……何あれ? 大きな池?」

 

 シキに言われて窓の外から下を見る。そこには長方形の形をした池があった。

 

「プールだよ。夏なら泳げたんだろうけどなぁ」

「ぷーる? 何それ?」

「えっと、水泳は分かる? まぁ、簡単に言えば夏の暑さを凌ぎながら楽しむ場所、かな?」

「へぇ、そんなものがあるんだ」

 

 また一つ新しい事を覚えた。今度アダムに話してあげよう。きっとアダムは知ってるだろうから、そこからもっと知識を得て出来る女にならなくちゃ。

 

「ティキ、一旦部屋に戻ろう。正直水分が欲しいんだ」

「むぅ、仕方ないなぁ。じゃ、拠点へ戻って体勢を立て直してから再探検ねっ!」

「そうだね。なら、俺の錬金術で部屋までの移動を楽にしよう」

「えっ!? シキ、錬金術使えるの?」

 

 言われた言葉に驚く。だって、シキは何も出来ないって聞いてたから。そんな風に驚くティキを連れてシキが向かうのは……

 

「な~んだ、エレベーターね」

「ま、俺に出来るのは科学の力を使う事ぐらいだよ」

 

 上へ向かうボタンを押して苦笑するシキ。ちょっとがっかりしたけど安心した。一瞬ティキだけ何も出来ないんだって思ったから。

 開いたドアの中へと入り、シキが部屋のある階のボタンを押す。そういえば、今日はサンジェルマン達どこへ行ったんだろ?

 

「ね、サンジェルマン達ってどこへ行ったの?」

「詳しく聞いてないけど、多分そこまで遠くには行ってないと思うよ。儀式の調査みたいなものだって言ってたし」

「調査かぁ。どうせなら一緒に連れて行ってくれればいいのに……」

 

 そうすれば知らない場所や知らない物を見れた。アダムへのお土産話にもなる。

 

「まぁまぁ、そのおかげでこうして探検出来てるんだと思おう。それに、このルームキーがあればご飯も食べられるしコーヒーとかも飲めるんだ」

「そうなの? へぇ、魔法のカードね」

「そうだね。ただ、この魔法には種も仕掛けもある」

「一体どういうの?」

「チェックアウトって言って、ここを引き払う時にお金を払うんだよ」

「夢が無~い」

「まったくだ。ホント、こんなにも残酷だけど、これが現実です」

 

 そこで二人で笑う。顔を見合わせて笑うと、とっても心があったかくなるってシキから教えてもらった。アダムとはまだ出来てないけど、いつかアダムともしたいな。

 同じ事を話して、同じ事で笑って、同じ事に心を動かす。ティキの今の目標は、アダムと二人でお話しして、同じ反応をする事。

 

 ちょっと不安もあるけど、シキとこれだけ出来るし、この前はサンジェルマンの気持ちを当てられたんだもん。大丈夫だよね。

 

 ……きっと、大丈夫って思おう。ティキは、ティキなりにアダムを目指してるんだもの。

 

 

 

「神出ずる門……」

 

 神主さんから聞いた言葉がずっと頭に残っていた。この調神社だけでなく、周辺の神社を結ぶ事で出来る形をそう昔の人は呼んだ。それは、キャロルが言うには神の力を錬成させるだけの力を引き出せる事らしい。

 でも、完璧を目指すなら夏にするべきと言っていた。オリオンは日本だと夏の星座。冬ではこの神出ずる門の上にオリオン座がこないから、錬金術の観点で言うと不完全みたい。

 

「……それにしても、ここは何だか懐かしい感じがする。本当に、私はここと何か関わりがあるのかな?」

 

 不思議な感覚だった。初めて来るはずなのに、そんな感じがしなくて、どこか懐かしさを覚えてしまったから。マムが言っていた私の名前の由来。それがここのお守りだった事は、もしかして偶然じゃなかったのかも。

 

「おやおや、一人でどうかされましたかな?」

「神主さん……いえ、特に何かある訳じゃないです」

 

 後ろから聞こえた声に振り向くと、そこには神主さんがいた。おじいちゃんって、そう呼んでくれてもいいと言われたけど、やっぱり神主さんの方がしっくりくると思ってそう呼んでる。

 

「そうでしたか。ああ、そうそう、他の皆さんはお昼も近いとあって食事の支度をしてくれていますが、貴方は行かれなくていいのですかな?」

「……セレナがいてクリス先輩もいます。なら何も心配ないです」

「そうですか」

「はい」

 

 そこで会話が途切れる。でも、神主さんは何故かその場を離れようとしない。その視線は私を真っ直ぐ見つめている。その眼差しは、優しい。

 

「あの、何か?」

「いえ、こう歳を取りますと今の貴方を見てこう思ってしまうのですよ。ああ、何が悩んだり苦しんだりしているのでは、と。特に貴方を見ていると、どうも亡くなった娘夫婦の一人娘を思い出してしまって」

「……えっと」

 

 この神主さん、人は善いけど困るのがこれ。さらりと重たい事を言ってくる。まぁ、冗談らしいんだけど、言われる方としては反応に困る。実際、マリアとセレナはそれで何度かしてやられてるし。

 

「で、どうですかな? 何か気になる事でも?」

「……実は」

 

 何となくだけど、神主さんからシキさんに近い雰囲気を感じた。教えてくれるまで退かないよって、そんな感じの優しくて強くて頼りになる感じを。

 だから気付けば話してた。マムと出会った頃の私の事を、全て。驚いたのは、神主さんがお守りの話と私が施設に拾われた切っ掛けを知った時に目を見開いた事。

 

 だけど、それ以外ではまったく雰囲気も変えず、柔和な表情のままで話を聞いてくれた。

 

「だから、私にとって、この神社は何か関係があるのかもしれないって」

「そうですなぁ。人生は巡り合わせの連続とも言います。貴方がこうしてここを訪れた事にも意味はあるのでしょう。それにしても、月読調とは中々風流な名前です。きっと、名付けた方は優しく賢い方なんでしょうな」

「どうしてそう思うんですか?」

 

 私の名前は誰が付けてくれたかはっきりしない。マムだと思いたいけど、了子さんかもしれない。

 でも、絶対日本語が分かる人だったんだと今なら分かる。だって、調と書いて”つき”と読むって分からなければ私の名前は付けられていないと思うから。

 

「この神社の読み方を知っているからですよ。そこから採って、月読調とは洒落た名付けです。いや、実の親でも中々出来ません。保護した幼子へ、精一杯の愛情を向けた証のようなものですな」

「精一杯の、愛情……」

 

 じわりと胸が熱くなる。そうだ。だって、どうでもいい存在なら名前なんて適当でいい。お守りから付けるとしても、そこまで考えて付けるとは思えない。

 そこでふと思い出す。初めてシキさんと会った時、あの人も名前を聞いて驚いていた。私と切ちゃんが月と暁で対になってるって、そういう理由で。

 

「聞けば、物心つく前に保護されたとか。だとすれば、両親の愛情を知らず育つ貴方を不憫に想い、せめて名前だけでもと考えを巡らせたのかもしれません」

「そう、かもしれません……」

 

 そう、私は親の愛を知らない。だからマムがお母さんで、シキさんがお父さんでありお兄ちゃん。私の中ではその二人が両親の代わり。あれ? こう考えると私ってシキさんに父親と兄を重ねてる? だからあのデートの時、兄妹プレイを切ちゃんがしたって聞いて嫉妬したんだ。

 

「調さん、貴方は今幸せですか?」

 

 色々思い出して黙り込んだ私を、神主さんが気遣ってか話を振ってくれた。今幸せか。そう聞かれて首を縦に振る事は出来ない。シキさんがいない今は、幸せとは程遠いから。だけど、不幸と言うのも違う。今の私には、マム達だけでなく響さん達やキャロル達がいる。

 

「不幸ではないです。でも、幸せとは言い切れません」

「そうですか、それなら良かった。人は、どこまでも欲深いものです。誰が見ても羨む暮らしをしても、もっと上をとそう言い出す人もいます。貴方は、そうではなく一歩離れた場所から自分を見て今の答えを出しています。少なくても、私にはそう聞こえました。その物の見方を忘れないでください。幸せとは、不幸ではない時点で十分要点を満たしていると言う事を」

「……覚えておきます」

 

 神主さんが言いたかった事は、多分こう。私は不幸じゃないって返した。その時点で幸せも同じなんだよって。たしかにシキさんがいなくて、みんなに暗い空気が流れてる。だけど、まだ誰かが死んだ訳じゃないし、シキさんが二度と戻ってこない訳でもない。

 うん、本当だ。十分幸せだ。だって、また希望は見えてるし残ってる。私は、幸せだった。もっと上をと思ってもいる。だけど、それはきっと悪い事じゃない。

 

 だって、ほんの一月前はそれが当然で日常でいつもの事だったんだ。

 

「ありがとうございます。おじいちゃんのおかげで大事な事を知る事と思い出す事が出来ました」

「そうですか。お役に立てたようで何より」

「私、幸せでした。だから、不幸にならないように自分の出来る事を精一杯頑張ります」

「それならいいです。幸せになろうとするのは構いませんが、そればかり望み過ぎるのはいけません。大事なのは、不幸にならないように努力する事ですよ」

「はい」

 

 気のせいか、おじいちゃんと呼んだら神主さんの笑みがより深くなった。嬉しいのかな? もしかして、本当に私を孫娘みたいに思ってくれてる? だとしたら、ここへシキさんを連れてきて神前式をするのもいいかもしれない。

 

「あの、ここって結婚式も出来ますか?」

「おや、調さんにはそういうお相手が?」

「はい。出来れば赤ちゃんが欲しいなってぐらいに好きな人です」

「おやおや、これは中々お熱い思いですな。ええ、出来ますとも。詳しい話はその相手を連れてきた時にでもしましょうか。そろそろ食事も出来上がる頃でしょうし」

「調~っ! おじいちゃ~んっ! ご飯デスよ~っ!」

 

 聞こえてくる切ちゃんの声に、私はおじいちゃんと顔を向け合って笑う。切ちゃんにはこの事黙っておこう。シキさんはきっと誰とも書類上結婚出来ないだろうけど、式を挙げるのはいいよね? それで、写真ぐらい撮ってもいいよね?

 それを大事に保管して、いつか生まれてくる子供達にだけ見せてあげるんだ。お母さんは、こんなに綺麗だったんだよって。それと、お父さんはこんなにカッコ良かったんだよって。

 

「おじいちゃん、さっきの話は誰にも言わないでください。二人だけの秘密です」

「分かりました。墓まで持って行きましょう」

 

 冗談に聞こえない返しをされて、私は思わず苦笑する。うん、シキさんに会わせたい人が出来た。何となくだけど、シキさんも年を取ったらこうなりそうな気がするし。

 おじいちゃんと隣り合って歩きながら切ちゃんが手を振ってる場所を目指す。そこにはマリア達もいて、特に響さんが早く来て欲しそうな顔をしてる。

 

 やっぱり私は幸せだ。だけどこれはまだ完全じゃない。早くシキさんを連れ戻して、あのいつもの光景を取り戻すんだ。

 

 

 

「やっと一階か……」

 

 長かったと、そう思って俺は息を吐く。ほとんど半日使ってのホテル散策となったけど、ティキが楽しんでくれたようなので良しとする。それに、久々にいい運動にもなった。

 ただ、やはり三十階以上の建物を散策するのはしんどい。こりゃ、本気で体力作り始めないといけないかも。ただ、そのメニュー作りはクリス辺りにお願いしたい。風鳴さんや翼だと殺人的になりそうだし。

 

「シキ、お疲れ様。でも、ちょっと情けないわよ。いつだって余裕を持ちなさい。アダムみたいに」

「ははっ、そうだね。俺としてもそうでありたいもんだよ」

 

 大人の余裕というやつは、俺がいつも風鳴さんから感じているものだ。あんな風な人間になりたいもんだよ。

 

「さて、じゃあ少し休んでから部屋に戻ろうか。ティキ、何か飲む?」

 

 何気なく振った言葉だった。言うなれば他愛のない会話の切っ掛け。だけど、それがティキには……

 

「ううん、いらないわ。ティキに食べ物や飲み物は必要ないもの」

「っ!?」

 

 思いの外重たい言葉を言わせてしまうものだと、そこで思い出した。心なしかティキの笑みが寂しそうに見えて、俺は思わずその体を抱き寄せる。

 

「シキ?」

「ごめん。俺、今ティキに辛い事を言わせた」

「そうなの? ティキは気にしてないよ?」

「気にしてくれた方が俺は嬉しいんだけどな。ティキ、飲む事は出来るよね?」

「え? うん。それは出来るけど?」

 

 キョトンとした感じの声で小首を傾げるティキが本当に愛おしくて、俺はそっと体を離して微笑みかける。

 

「なら、初めての体験をしてみよう。一緒に紅茶でも飲まないか? 少しだけ出来る女の気持ちを味わえるかもしれないし」

「う~ん……それならお酒の方が興味あるけど、いいわ。じゃあ、早速行きましょ!」

 

 嬉しそうな笑顔と声を返してくれるティキに安堵し、俺はその手を引いて歩き出す。喫茶スペースだろう場所の上質なソファへ腰かけ、ティキと向かい合う。ティキはメニューを眺めて不思議そうな顔をしていた。

 

「ねぇシキ。紅茶なんてメニューないけど?」

「ああ、それはね……」

 

 二人でメニューを眺めて少し語らう。ティキは当然だけど初めて飲食のメニューなどを見るからか、とても興味深そうに話を聞いてくれた。

 紅茶やコーヒーの話は俺もそこまで詳しくないけど、それでもそんな聞きかじった知識さえティキは目を輝かせて聞いてくれる。本当に素直で無垢な子だ。

 

 やがて話が一段落した辺りでウェイターの格好をした男性が近付いてきたので注文をする。俺はコーヒーでティキにはホットミルクティーを頼む事に。

 いや、アダムはコーヒーを飲むからって聞いたから、ならそれをティキにも味わってもらおうと考えた。ま、どうせ支払いはパヴァリア持ちだ。少しぐらい贅沢したっていいだろう。

 

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

「お願いします」

 

 一礼し優雅に立ち去る後ろ姿を眺めていると、ティキがポツリと呟いた。

 

「ああいうのカッコいいかも」

「ん? あの服装って事?」

「うん。黒だからアダムの傍にいたら対照的でイイ感じじゃない?」

「ああ、そうかもね。対比な色合いだし、お互いに映えるかも」

「……スーツの色、黒にすれば良かったかなぁ」

 

 言われて思い出す。仕立ててもらうスーツの色は、ティキらしさや女の子という事も加味して淡いピンクにしてもらったのだ。

 

「なら、それはまた別の服装にしよう。冬が終われば春が来るし、服装もそこで変えるんだ」

「そうなんだ。アダムはいつだって同じだったけど……」

「そういう人もいるさ。でも、ティキはアダムの驚く顔とかがみたいんだろ? なら季節ごとに服装を変えてあげればいいよ」

「そっか! その方が色んなティキを見せられるものね!」

「うん。またリオ、じゃないカリオストロに手伝ってもらうといいよ」

「そうね! そうするわ!」

 

 愛称で呼んでもティキには分からないと思って言い直す。そうこうしていると俺達の前へ運ばれるオーダーした飲み物。俺の前にはアイボリーホワイトのカップとソーサーが、ティキの前にはきっと高級品であろうティーカップと揃いの柄のティーポットが置かれ、ミルクが別添えで置かれた。

 

「ご注文は以上でお揃いでしょうか?」

「はい」

「では、ごゆっくり」

 

 またも優雅に一礼し去っていく。ううむ、ああいうのはすぐに身に付くものじゃないとはいえ、俺も出来るだけあんな風になりたいもんだ。

 

「シキ、これどうやって飲むの?」

「えっと、まずは……」

 

 うろ覚えながらミルクティーを作る。出来上がったそれを飲んだティキは、不思議そうに首を傾げながらも飲み、二杯目は紅茶だけで飲んでいた。

 俺のコーヒーにも少しだけ口をつけ、ティキは最後まで首を傾げる。そこで俺は分かった。ティキには味覚がないのだと。だから何も感じられないし分からないのだ。

 

「ティキ、ごめんな。何も楽しくなかっただろ?」

 

 部屋へ戻る途中、エレベーターの中でそう俺は問いかけた。だけど、そんな俺へティキはコクンと首を動かしてから笑顔を返してきた。

 

「そんな事ないわ。だって、シキがティキに色んな事を知ってもらおうってしているの分かったもの。正直飲んだ物の味とかは分からなかったけど、アダムが飲んでる物を飲めてティキは嬉しかったわ。ありがとう」

「……そっか。それなら良かった」

 

 そっとティキの頭を撫で、俺は噛み締めるように答えた。最初に会った頃とは別人のように成長しているティキの放つ眩しさに目を細めながら……。

 

 

 

 夜の静けさが辺りを包む。人もおらず、境内は静まり返っている。そんな中で、サンジェルマンは激しい負荷に耐えていた。地上のオリオン座の一角を占める神社で、彼女は儀式のための術を施されていたのである。

 

「……これで残すは一か所、ね」

「ああ、装者達が宿泊している場所だ。さすがに今夜はこれで終わりにしておくべきと思うワケダ」

「はぁはぁ……そう、だな。時間も遅くなった。一旦拠点へ帰還しよう」

 

 脂汗を滲ませながらサンジェルマンはそう告げてゆっくりと立ち上がる。まだ地上のオリオン座を形成する神社へS.O.N.Gによる見張りなどは行われていなかった。

 その理由は一つ。下手に人員を配置すると、その人間を贄とされてしまうからだ。それに、いざとなればパヴァリア光明結社の計画は阻止出来るともあり、無駄な人的資源の損耗を弦十郎や八紘が避けたというのもある。

 

 そう、天の神出ずる門はない以上、レイラインを要石にて封じるという最終手段を回避する術がアダム達にはないのであった。

 しかも、キャロルによって各地の要石も破壊されていないため、よりその手段の威力は上がる。アダムがギリギリと表した時期ではあったが、実際にはある意味でとうに過ぎていたのだから。

 

「それにしても、いよいよなのね」

 

 カリオストロの言葉に残る二人が頷く。神の力を錬成するための儀式。その最終段階へと入ったのだ。儀式の起動に必要な贄は、シキの能力で何とか出来る事が分かっている事もあり、そこまでは心配の種がないと言える。

 ただ、そこから先は不安しかないのだ。サンジェルマン達は知っている。神の力は、自分達には宿せない事を。原罪を背負う人類には、その呪われた身では、神の力は宿らないのだ。

 

「錬成出来た神の力を、どうやって使うのか。局長は何か考えがあるようだが……」

「何故だろうか。それに最大の不安を覚えるワケダ」

「あーしも。ま、その時はあのお嬢ちゃん達が全力で止めに来るだろうけど、ね」

 

 冬の寒空の下、三人は天を見上げて息を吐く。それは、白く色付きながら周囲へ溶けて行く。神の力を巡る一連の流れの終わり。それが、もうすぐそこまで迫っていた……。




キャロルが前回でサンジェルマン達の行動を失態と評しましたが、今回は彼女の方が失態をしてしまうという展開に。
まぁ、お互いに相手の事を全て知っている訳ではないからこその結果ですが、こうして神出ずる門へパヴァリア側も辿り着く事となりました。

原作ではティキへと宿した神の力。これでは、一体どうなるのでしょうか?
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