「ティキに謝れぇぇぇぇぇっ!」
俺のパンチをアダムが避ける。でも、その表情は引きつっていた。当然だろう。何せ、今の俺にはアダムの攻撃が全部通用しないんだから。
正確には、アダムが攻撃してもそれをアンジェ達が防いだり、あるいは阻止してくれている。たまに俺へ届く時があっても、それは俺が神の力で跳ねのけてしまえばいいだけの事。
「有り得ないっ! こんな事が有り得る訳が……っ!」
今も表情に動揺と恐怖を浮かべながら、一向にティキへ謝ろうとしないアダム。その事に俺は拳を握りしめ、再びあいつへと迫る。
「いいからティキに謝れって言ってるだろぉっ!」
「っ?!」
やっと俺の拳がアダムの体を掠めた。あいつのスーツが一部破れ、表情が一気に不安一色へ染め上る。だからといって、俺は攻撃を止めるつもりはない。止めるとすれば、アダムがティキへ謝ると言い出すか、俺があいつを一発完全に殴り飛ばした時だけだ。
「調子に乗るなっ!」
「乗らせてるのはお前だろっ!」
アダムの反撃の錬金術を左腕で薙ぎ払い、右腕を繰り出す。その拳は、またもアダムに届かないが、またスーツの一部を無に還した。
「アダム、たった一言でいい。ティキに謝ってくれ。酷い事を言って悪かったと、それだけでいいんだ」
「馬鹿な事を言わないで欲しいな、本当に。そんな趣味はないんだよ、人形に謝るなんて」
「っ! お前ぇぇぇぇぇぇっ!」
どこまでもこちらの願いを無下にするアダムへ、俺は怒りを込めて地面を蹴る。ティキはいつだってこいつの事を話していた。嬉しそうに、楽しそうに。本気で好きなんだと俺は思った。
例えそれが無知からくるものだとしても、だからと言って間違ってるとは思えなかったから。ティキの真っ直ぐな目と想いを、否定したくなかったから。
なのに、なのにこいつはそれを平気で踏み躙った。それどころか嘲笑ってさえいた。身の程を知れと、そんな雰囲気を漂わせて。
しかも、あろう事か人形と言い放った! ティキはっ! あんなにも心を動かして生きているのにっ!
「シキっ! 手を貸す!」
「あーし達も、一発ぶん殴ってやんないと気が済まないのよっ!」
「これまでの分、思いっきり乗せてやるワケダっ!」
俺と一緒にアンジェ達も戦ってくれる。彼女達もアダムのティキへの扱いを怒ってくれているんだ。そう、そうなんだ。よりにもよってアダムだけがティキをちっとも見ていなかった。
あんなに無邪気で無垢で素直なティキ。そんな子に強く思われていたのに、アダムは欠片もティキの方を見ようとしなかったんだ。
「鬱陶しいな、君達はっ!」
「その言葉っ!」
「そっくりそのままっ!」
「お返しするワケダっ!」
アダムの錬金術をアンジェ達三人の錬金術が食い止める。その間隙を縫って、俺はアダムへ迫る事に成功。
「なっ?!」
「オラァッ!」
サンドバッグを打ち抜くようなイメージで拳を振り抜く。見事にアダムを捉えた俺のパンチはあいつの胸へ突き刺さるように命中した。
まるでゴム鞠のように地面で跳ねるアダムを見つめ、俺は少しだけ呼吸を整える。と、その瞬間微かに何か頭の中に浮かんだ。
フィーネから熱い眼差しを向けられている誰か。それは……俺? でも、どことなくフィーネの格好なんかが俺のよく知る物とは違う気がした。
「……何だ、今の? 神の力の持ち主の記憶……?」
そうとしか思えない。そうなら納得出来る。俺に宿った事でその記憶の残滓とでも言うものが流れてきているんだろう。
「シキっ!」
「アンジェ……。それにリオとレティも」
「やったじゃないっ! あの局長にいいの叩き込むなんてねっ!」
「見ていてスカッとしたワケダ」
揃って笑みを見せる三人へ、俺は小さく頷いて返す。未だに俺の中に不思議な何かが宿っている。その熱が俺の何かを刺激しているような感覚があるけど、これは、もしかして俺に記憶を見せようとしてるんだろうか?
でも、何故だろう? さっきのは見せられたというより、思い出した感じに近い気もする。そう、忘れていた事を、何かの拍子にふと思い出すような、そんな感覚に。
「俺の記憶喪失って……もしかして……」
意識を思い出す事に集中してみようかと、そう思った時だった。
「こ、こうなったら……もう手段は選んでいられないね、この状況だと。嫌だったけど、こうするしかないようだ、今の僕ではっ!」
アダムの声が聞こえてきて、そちらへ視線を向ければアダムの体が変化を起こしていた。人の形を捨てていくようなそれに、俺もアンジェ達も言葉がない。
アダムの姿はみるみる内に巨大な牛のようなものへと変わり、一言で表すのなら”怪物”と呼ぶのが相応しいものとなった。
「人でなしと言ったのは、こういう意味でもあったかっ! アダムっ!」
「凄い魔力ね。人の姿でいるのに結構な魔力使ってたって事でしょ、これ……っ!」
「それで黄金錬成を、か。魔力だけは凄まじいワケダ……っ!」
「だからってティキを泣かせていい訳ないっ! ましてや、見下し蔑む事さえもっ!」
アダムから放たれる威圧感にリオとレティが息を呑む。でも、俺にはそんな事はどうでもいい。アダムはティキを泣かせた。突き放して見下した。それだけで十分殴られる理由にはなる。
「覚悟するんだね、人類共。こうなった僕は止められないよ、何者であっても」
「ほざけっ! 神の力を私欲に使おうとする簒奪者めっ! それに、無垢な心を踏み躙り、人類を見下すその振る舞い。私の敵はお前だっ! アダムっ!」
「きっちりこれまでの事も含めてお返ししてやろうじゃないっ!」
「人類の軛をより強くしようとするアダムを、私達が見過ごせるはずないワケダっ!」
「行こうっ! アンジェ! リオ! レティ! アダムを止めてティキへ謝らせるんだっ!」
俺の言葉に一瞬だけ三人が笑みを見せて頷いてくれる。伝わったらしい。俺は、あくまでアダムを止めてティキへ謝らせたいだけなんだと。
ああ、そうだ。俺はアダムを殴るとは言ったけど、殺すとは言ってない。殺したいとも思わない。あいつがどれだけ最低で最悪な奴だとしても、ティキの大好きな相手なんだ。
だから、アダムの最終的な処遇はティキに決めてもらいたい。そう強く思って俺はアダムへと走り出した。
「……ティキ、悪いけれど少しだけここで待っていて頂戴。私達も、貴方の大好きな相手に謝って欲しいのよ」
マリアの言葉にみんなが頷いた。あたしもそうだ。たしかにあの野郎は許せない。だけど、あんな奴でもティキにとっちゃあたしらにとってのシキだ。なら、殺すなんてのは出来ない。だけど、ティキへした事の報いは受けてもらう。
「セレナ、ここでティキの護衛、頼むな」
「任せておいて。その方が私向きだし」
あたしの頼みにセレナは力強い笑みを返した。本当に、強いよな。こういう時のセレナは響みたいな印象を受けるぜ。
「シキさん達の応援に行かないと」
「デスね。神の力でとんでも強化されたシキさんデスけど、それでも生身には変わりないデスし」
「そうだね。行こうっ!」
響の言葉であたしら全員に揃って同じ気持ちが生まれる。シキの傍へ行って、あいつを助けてやりたいって。
それにしても、境内がメチャクチャになっちまった。ティキは出来るだけ被害を出さないようにしてたみたいだけど、アダムの野郎はそんな事お構いなしに暴れ始めてやがる。
ここからもティキが最後の最後まで神の力ってのに抗ってたのが分かるな。そうだったからこそ、響の声や歌に反応したんだろうし。
「開いた両手で、誰かと繋がる、か。あいつらしいぜ」
あたしに今のような状況を作り出したのも、思えばあのバカがいればこそだ。そして、シキ。あたしらであの二人に人生を変えられてない奴はいないんじゃねーかって、そう思うぐらいあの二人は色々とお節介焼きでお人よしで、あったかいから。
「だからあの野郎にも、仕方ねーから分けてやろうってんだっ!」
あのあったかさを、あの温もりを。正直今もむかついてるし苛立ってもいる。だけど、一番アダムの奴に言いたい事やしたい事があるのは、あたしじゃなくてあの泣いてた子だ。
だから我慢する。あたしの中の衝動や憤りなんかを全て。それは、あの子があの野郎へ代わりにぶつけてくれる時に頼めばいい。今は、あの二人やみんながあたしにくれたあったかさで戦おう。
「下がれっ! ミサイル注意報だっ!」
前衛で戦ってるシキ達へ聞こえるように叫んで、あたしはギアへ意思を伝える。イチイバルがすぐにそれに呼応してあたしの腰辺りからミサイルポッドを展開した。
「喰らえぇぇぇぇぇぇっ!」
あたしの想いを乗せてミサイルが飛んでいく。それはアダムの攻撃で迎撃されるけど、んな事は最初っから想定内。
「マリアさんっ!」
「分かってるっ!」
ダブルガングニールがアダムへ肉薄するも、それを見た目に反しての素早い動きでかわす牛野郎。だが、その反撃はあの二人をしっかり捉えやがった。
それで吹き飛ぶ二人に、思わずあたしは息を呑んだ。どうして図体がでかくなった方が動きが速くなんだよっ! 反則だろ、そんなんっ!
「なら私達がっ!」
「やるデェェェェェスっ!」
後輩コンビが敵討ちとばかりに迫るが、その息の合った攻撃までもあのデカブツは容易に避けて反撃を繰り出した。
その光景にあたしは目を疑いたくなった。コンビネーションって意味じゃ、あたしらの中であの二人は間違いなくトップだ。それを易々とあしらえる時点で、今のあたしらじゃどうしようもねーんだよ。
「こうなったら……」
そっと胸のイグナイトモジュールを握る。残された手段はイグナイトを使う事。出力を上げて、少しでもあのとんでもへ迫るんだ。そして、六人でのユニゾンかシンクロで一気に攻め立てるしか有効な手段はない。
「それに……」
見ればあの三人も苦戦してやがる。シキも動きの速度が上がったせいで、ついていくのさえ難しくなってるみてーだ。
「全員で力を合わせても、届くかどうか……」
弱気な気持ちが込み上げる。こんな時、両翼の先輩がいればと思う事も弱気な証拠か。だけど、今ここにあの二人はいない。もっと言えば、未来さえもいないんだ。
九人の装者は、その内の六人がやっと。一人はギアの改良中で、二人は遠くロンドンときてる。
「だからこそ、あたしらがその分までやらないとな」
マリアから聞いた両翼からの伝言。あたしらを信じてるからこそ、あの二人はその胸の内に秘めた想いを隠して希望を託した。
ああ、そうだ。期待をされてんだ、あたしらは。あの二人が音より早く駆けつけても、そん時はもう全てが終わってるって、そんな未来を。
「セレナっ! 聞こえてるか!」
だからあたしは呼ぶ。現状のコンビ相手にして、この中で一番この状況をひっくり返せそうな存在を。
「うんっ! やってみるっ!」
「頼むっ!」
何も言わないでもやっぱりセレナは気付いてた。あたしらの中で唯一と言っていい力を持っているセレナしか出来ない、反撃の手段に。
セレナの優しい歌声が響き渡る。フォニックゲインを高めるだけじゃない、聞く人を癒す歌声が。
「止めてもらおうか、余計な事はっ!」
「させるかってのっ!」
目ざとくこっちのやろうとしてる事に気付いたデカブツがセレナへ狙いを定めて接近しようとしてきやがる。だからあたしが迎え撃つ。
それに、あたしからはよく見える。あのデカブツが気付いていない、色んな事に。セレナの歌が起こしている変化に。
そんな事も知らず、デカブツがあたしの攻撃を掻い潜って目の前まで迫ってきた。本当に動きは早いな、おい。だけど、あたしに恐怖も不安もない。
「終わりだよ、これでっ!」
「そいつはどうかな?」
「何? なっ!?」
デカブツの拳があたしへ届く寸前、その巨体が大きく横へと押しやられる。
「「はあぁぁぁぁぁぁっ!」」
響とシキの二人がその拳をデカブツの横っ腹へ叩き込んだからだ。にしても、セレナの歌で影響受けるのはてっきりギア持ちだけだと思ってたのによ。しっかりシキまで影響受けてやがる。
もしかして、これも神の力って奴の影響か? だとすりゃ、当然……。
「私達もっ!」
「忘れないでもらいましょうかっ!」
「デスっ!」
「がはっ!」
反対方向からの三人同時攻撃。押しやろうとする二人の力もあって、その威力はかなりのもんらしい。デカブツが堪らず呻いてやがる。
そして、あたしには見えた。デカブツの後方から迫る、三つの影が。どうやらセレナの歌はこの場の全員に効果あったみてーだ。
「勝機を零すなっ! 掴み取れっ!」
そのあたしの声に三つの影は頷いた、ように見えた。
「「「もらったっ!」」」
「調子に乗るなぁ!」
錬金術師達の攻撃を見て、デカブツが全身から衝撃波を放ちやがった。それがシキ達を弾き飛ばしてデカブツの自由を取り戻させる。
あたしは反射的に攻撃をデカブツへと放った。勿論目的は追撃やダメ押しじゃねぇ。シキ達へ意識を向けられないようにするためのもんだ。
それに合わせるように、あの三人もデカブツへと攻撃を叩き込む。が、それら全てをあいつは防ぎやがった。あたしの攻撃は避けずに払いのけ、三人の錬金術は自分の錬金術で相殺して。
「化物かよ……」
やっぱりイグナイトしかねーな。そう思ってあたしが手を動かすのと、響達が手を動かすのは同時だった。
「ったく、こういうとこまでシンクロ出来るのかよ、あたしらは」
思わず小さく呟いて、あたしは笑みを浮かべた。そして、周囲に同じ音声が響き渡る。その数、六つ。
―――ダインスレイフ。
「イグナイト、だと? どうして使えるんだ、それが」
アダムは純粋な疑問としてそう問いかける。そこに不安も恐怖もない。当然だ。今の彼にとってイグナイトとなったギアなど敵ではないと、そういう気持ちの表れである。
「一々説明するのは面倒だから、この一言にしてあげるわ。使えるようにしたから使えるのよ」
「呪いの力も、使い様によっては誰かを守り、助けられる。そのためにこれは、イグナイトは存在します」
イヴ姉妹の言葉にアダムが僅かに苛立ちを覚えていた。例えイグナイトとなろうとも状況が好転した訳ではないのにも関わらず、どこか強気な事へ。
「ラピスの光とダインスレイフの闇。それは、決して相容れないのかもしれない。でも、だからって存在し合う事を拒絶する訳じゃない」
「時には手を取り合って、一緒に戦う時もあるんデス」
調と切歌は言いながらサンジェルマン達を見る。その視線に気付き、彼女達も小さく頷いた。
「呪いだろうが浄化だろうが、大事なのはそれを何に使ってどうするかだ。あたしらは、それを可能な限り誰かを助け守る事に使って来た。これまでもそうだし、これからもそうするつもりだ」
「力に善悪はありません。なら、私達はいつだってどんな時だって、それを心に真っ直ぐ使いたい。自分のためだけじゃない。自分やみんなのためにって、そう思えるようにっ!」
クリスの言葉にシキが嬉しそうに頷き、響の叫びと共にサンジェルマン達が装者達の横へと移動した。
並び立つ九人の女性。纏うモノは違えども、その使い道はただ一つ。目の前の異形を止め、戦いを終わらせる。そのためだけに、彼女達はその纏う力を一つに束ねようとしていた。
「ふん、無駄だよ。そんなものでは止められないさ、今の僕は」
アダムの言う通り、イグナイトとなったシンフォギアとファウストローブの共同戦線でも、今の彼を止めるには不足。だが、シンフォギアの切り札であるエクスドライブを使うにはフォニックゲインが足りない。
が、この場には奇跡を起こせる者がいる。これまでもその意図せぬ奇跡で装者達を、様々な者達を助け守ってきた、そんな者が。
「なら、止められるようにしてみせるだけだっ!」
「何っ?!」
瞬間、周囲を眩しい輝きが包む。それは、神の力。それが九人の体を照らし、温め、包む。その眩さが消えた後には、有り得ない光景が広がっていた。
「な、何だ……何だその姿はっ!?」
アダムが見た物は、まさしく神の御業。イグナイトの黒で染め上げながらもエクスドライブが如き姿となった装者六人と、ラピス・フィロソフィカスの輝きをより強めた白を基調とするファウストローブとなった錬金術師三人の姿がそこにはあったのだ。
それを可能としたのは、この場にいる唯一の男の存在。神の力を宿しながらも、人のままで居続けられる、生きる奇跡。
「勝利が女神の管轄なら闘争は男神の管轄ってな!」
シキの言葉に九つの微笑みが浮かぶ。分かったのだ。今、自分達が纏うモノが何かを。シンフォギアでもなければファウストローブでもないと。故に彼女達は揃って口を動かす。アダムの問いかけへ答えとして。
―――愛だっ!
―――何故そこで愛っ!?
シキの想いがギアとローブへ変化を与えた。ならば、身に纏うそれは具現化した愛そのものである。そう九人は感じ取ったのだ。故に直感した。もう負けはないと。
神の力を得たからでも、纏うモノが強化されたからでもない。愛する男がくれたのが、力でも武器でもなく愛なのだ。あったかいものをもらった以上、その振るう力に迷いも躊躇いもない。
ただ、そのもらった想いに応えるように動くだけである。
「行こうっ!」
響の声に頷いて、女性達は動き出す。黒と白がまるで混ざり合うようにアダムへと迫る。呪いと浄化。相反する二つの在り方が、シキという一人の人間の手によって共存していた。
矛盾。だが、それこそが人の本質である。誰かを傷付ける一方で、我が身を傷付けてでも誰かを助ける。そんな在り方こそが人間らしさであり、故に光と闇は互いを打消し合いながらも拒絶出来ないのだ。
犠牲を良しとしない装者達と、犠牲を受け入れてきた錬金術師達。その道は完全に重なる事はないかもしれない。けれど、決して交わらないとは限らない。
現に、今こうして二つの道は交わっている。アダムという、無垢な少女を泣かせた者を止めるために。
「合わせるワケダっ!」
「了解っ!」
「デスっ!」
プレラーティのけん玉の玉部分へ乗った切歌と調が、振り抜かれた際の勢いを乗せて回転しながらアダムへと迫る。
それを迎撃しようとするアダムだが、二人の攻撃へ意識を向けた瞬間、その更に上からけん玉による一撃が襲い掛かった。
「賢しいものだ、無駄だけどっ!」
「そうとも限らないんじゃない!」
三人の攻撃を片手で受け止めるアダムだが、その背後から聞こえた声に彼は目を見張った。
「突っ込むぞっ!」
「これでっ!」
クリスとマリアによる合体ギアの先端へカリオストロが乗っていたのだ。しかも、その拳を固く握りしめて。
無防備な背面を狙うそれに、アダムは体を動かしながら残る片手でバリアを展開する。結果、左右を襲われる形となったアダムは、その正面に見える姿に息を呑んだ。
「いいかっ! 狙いは一つっ!」
「はいっ! 分かってます!」
「ティキちゃんのためにも、絶対に止めてみせますっ!」
サンジェルマンを先頭にして響とセレナが迫ってきていたのだ。足元から迫るそれは、まさしく地を這う人間らしい動き。だが、今のアダムにそれを防ぐ術はないと言っても良かった。
両腕は左右で封じられ、更には錬金術までも使わされている。ここで更なる術の行使はいくらアダムと言えど難しいものがある。
「そんな無理を通してみせるさ、今の僕はぁぁぁぁっ!」
強引に全身から魔力を衝撃波として放ち、アダムは迫り来る響達だけでなく攻撃していた周囲をも吹き飛ばしてみせた。が、その反動は大きく、アダムは疲れたかのように両腕を下げて肩で息をしていた。
「はぁ……っはぁ……」
それこそが、彼女達の真の目的とも知らずに。
「ん……?」
アダムは気付いた。己が影に出来た妙な形を。最初こそ自慢の角が変な形で影へ影響したのかと思った。だがしかし、それは徐々に大きさを増していき、アダムがその正体に気付いた時には、もう既に遅かったのだ。
見上げた先には、右手を握り締めたシキがいた。彼は九人の行動の裏で密かに神の力で飛行し、アダムの頭上で機会を窺っていたのだ。
全ては、その身に宿した力を一点集束させての一撃を叩き込むために。
「要シキっ?!」
「これで止まれぇぇぇぇぇっ!!」
「「「「「「「「「行けっ! シキ(さん)っ!」」」」」」」」」
九つの声が重なり、シキがそれを合図に右腕へ神の力を収束させていく。その一撃はアダムの胸をきっちり捉えた。そして、アダムの体がゆっくりと人へと戻り始めて倒れていく。
それが、戦いの終わり。どこまでも殺すのではなく止める事にこだわった者達の想いが、人を支配し導こうとする怪物を上回った瞬間であった。
あちこち壊れてしまい荒れた様子の境内を眺め、シキは申し訳なさを噛み締めるように息を吐いた。その脳裏には、人のよさそうな神主の顔が浮かんでいる。
(これ、何とか出来ないもんかな?)
先程まで激戦を繰り広げていたとは思えない程落ち着いた思考で、シキは調神社の事を考え始めていた。そんな彼とは違い、サンジェルマン達は目の前で意識を失い倒れるアダムを見下ろしていた。
「まさか姿を戻してしまうとはな」
「あれだけあった魔力も、今はかなり減ってるわ」
「おそらくだが、アダムの残る魔力全てを無理矢理使用して姿を戻させたワケダ」
「……神の力による、強制変化か」
「シキらしい使い方ね」
三人の顔に微かな笑みが浮かぶ。自分達の惚れた男の在り方を良く知ればこそ、今の結果は納得しか出来ないものだったのだ。
「終わったんですか?」
そこへ響が現れ、サンジェルマン達へと近付いた。その接近に気付き、三人は無言で頷いて少しだけその距離を開ける。すると、響の視界に気を失って倒れるアダムの姿が現れた。
「……裸?」
「どうやら正体を現した際に服を弾き飛ばしたようだ」
「ったく、本当に迷惑な奴よね」
「どこまでもその体質は変わらんのだろう。面倒なワケダ」
うつ伏せになって倒れるアダムへ、カリオストロとプレラーティが容赦ない言葉をぶつける。それに響は苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
「シキ、体の方は大丈夫なの?」
「ん? ああ、不思議な事に何とも」
マリアも響に続いてシキ達の傍へとやってきた。真っ先にシキを心配する辺り、彼女の本質とも言える慈愛の精神が窺える。
やがて切歌と調、クリスやセレナもシキ達の近くへと歩み寄っていく。セレナは、ティキを抱き抱えてだ。
その一方でサンジェルマン達は、アダムが往生際悪く抵抗しないようにと錬金術でその体を拘束していた。三人がかりの拘束術は、今のアダムでは確実にどうにも出来ないものとなり、更にシキも神の力でとどめの拘束を施し、万全の状態へと変えたのだ。
「さて、状況が落ち着いたようだ。シキ、頼みがある」
「バラルの呪詛の解除、だろ?」
その問いかけにサンジェルマンは静かに頷いた。今のシキならそれが可能なのではと、そう彼女は考えていたのだ。実際、シキも感覚的に月遺跡へのアクセスは可能だと思っている。だが、彼は少し目を閉じて沈黙した後、ゆっくりと目を開けてサンジェルマンの目を見つめてこう告げた。
「ダメだ。バラルの呪詛は解除しない」
「っ!? どういう意味だ!」
「……バラルの呪詛が人類の相互理解を妨げている。それは分かる。それがなくなれば人々のいざこざや言い争いもなくなる。でも、それで本当にいいんだろうか?」
その思いがけない問いかけに、サンジェルマンだけでなく誰もが目を瞬かせる。
「統一言語が戻ってきた当初はいいさ。みんなその素晴らしさを実感し、前向きにその力を使っていくだろう。でも、それが当たり前になってしまったら? 俺は、残念だけど知ってる。人間の弱さと愚かさを。平和をあれ程求めて、やっとの想いで手に入れたのに、それが半世紀もしたら当たり前の事になり、有難みも感動も失せ、その状況を保とうという努力を怠るようになってしまうのを」
シキのその例え話に、誰も何も言い返せなくなった。ここでシキがバラルの呪詛を解除するのは可能だとしても、それを当たり前と思う時代が来た時、果たして人類は相互理解を保てるのだろうかと、そうシキは問いかけていた。
今を生きる者達はまだいいかもしれない。統一言語がない時代を知り、その辛さや苦しさを知っているからだ。では、統一言語が生まれた時から当たり前となった世代ばかりになった時、果たして人類は堕落していかないだろうか。そう問いかけられて否定出来る者は残念ながらいない。
「俺、考えたんだ。これは、もしかしたら神様なりの宿題なんじゃないかって。統一言語に頼って、相手の想いや考えを察しようとしなくなった人類を見て、このままじゃいけないって、そう考えて神様は相互理解を難しくしたんじゃないだろうか? バラルの呪詛があっても、こうして俺達は言葉と表情でお互いの気持ちや考えを汲み取ろうとして、間違う事や受け取れない時もあるけど、それでも諦めずに相手を理解しようとする事で少しずつでも前に進んでいる。これこそが、本当の相互理解なんじゃないか?」
「だが、そんな事を出来るのは限られた者達だけで」
「それを、みんなが出来るようにしていけるのも俺達人間の可能性だろ? 人類が一つの目標に向かっていければ不可能な事じゃない。相互理解出来なくても、そう出来るようにしようって、そう思い続ける事こそが本当の意味での統一言語を取り戻すんだ」
理想論だと、そうサンジェルマンは思った。だが、そんな彼女の心を次のシキのまとめが打ち抜いたのだ。
―――そもそも、神様の与えた試練を神様の力で何とかするって、それじゃあ人間は無力で情けないって認めるようなものじゃないか。
悔しそうな声と顔で告げられたその言葉に、サンジェルマンは息を呑んだ。これまで理想のために幾多もの犠牲を払い進んできた道のり。それがゴール手前で根底を揺るがす一種の現実を突き付けられたのだ。
(人間は無力で情けないと認めるようなもの、か……。言われてみればそうかもしれない。私は、どこかで自分自身も含めて人に絶望していたのか……)
人は今のままでは決して相互理解など出来ない。だから支配する側とされる側に分かれてしまう。その構図を無くすために神の力でバラルの呪詛を無くす。その根底にあるのは、人類への失望だ。
そこでサンジェルマンは思い出す。響が告げたある言葉を。
―――絶望と希望が両方あるなら、いつだって希望を選びたいじゃないですか。
まさしく同じ考え方だと思ってサンジェルマンは小さく笑う。それは自嘲の笑み。その選択を出された時に、自分は知らず絶望を選んでいたのだと悟って。
静かに力を抜いていくサンジェルマン。その下がっていく腕を見て、カリオストロとプレラーティが彼女へ顔を向けた。
「サンジェルマン……?」
「いいのか?」
「……理想のため、今まで私は多くの犠牲を払ってきた。だが、その結果得られるものが更なる悲劇を生み出さないとも限らないと、今ここで突きつけられてしまった。たしかに希望はある。私の願った通り、支配の軛が消え失せる事で新しい時代が始まるだろう。だが、それがいつまで続くのか分からない。人は、バラルの呪詛があろうとなかろうと本質的に変化する訳ではない。シキの懸念する通り堕落し、より厄介な状況を作り出さないとも言えない」
言い終え、サンジェルマンは目を閉じる。浮かび上がるのは今までの装者達との戦いの記憶。それで一貫していた、一つの信念。
「何より、戦場で命を奪おうとする相手に対して、殺意ではなく理解を胸に抱いて向かってきた者達がいる。人類全てがそんな強くはあれないかもしれない。だが、だからといって弱いとも限らない。それに劇的に世を変えれば、そのしわ寄せがどこかに必ず出る。それが読めない以上、私の理想をここで実現するのが怖い。怖く、なった……」
現状から良くなるのか悪くなるのか。その結果、悪化しようものなら目も当てられない。今まで理想に真っ直ぐに進んできたサンジェルマンへ突きつけられたある種の現実。
それに彼女は躊躇う事無く突き進むような愚者にはなれなかったのである。思い描いた理想は、未来永劫理想の姿を保っていられるのかと、そう尋ねられて彼女は足を止めた。
沈黙が辺りを包む。俯くサンジェルマンと、それを複雑な表情で見つめる響達という構図だ。
「……アンジェ、こういうのならどうかな?」
「何だ?」
「完全解除じゃなくて、もう少し呪詛を弱めるというか、その効力を弱めてみるっての。要は、これまでよりも少しだけ相互理解しやすくするって感じかな?」
「……出来るのか、そんな事が」
信じられないとばかりに目を見開くサンジェルマン。周囲も同じ気持ちなのだろう。揃ってシキを見つめていた。
「やってみるだけやってみるよ。今の俺なら、出来そうな気がするんだ」
そう笑みを浮かべて告げて、シキは目を閉じる。すると、その体が淡く輝き始めた。その輝きがやがて一本の光の柱を作り、空へと、正確には月へと向かって伸びていく。
その輝きを誰もが見つめていた。まるで人の祈りを月へ届けるような、その光景を。ただ、黙って誰もが見守っていた。どれぐらいそうしていただろう。気付けばその光は消え、シキからも完全に輝きが失せ、辺りを静寂が包んでいた。
「……出来た、のか?」
「ああ、ほんの少しだけだが呪詛を弱めた。これまでよりは、相互理解がし易くなったはずだ」
「……そうか」
「自分で言うのも何だが、信じるのか?」
「自分への傷を恐れて希望を手放すよりも、傷を負ってでも希望を掴み取りたい。信じる信じないではなく、私がそう思って生きて行きたいんだ。それに、もういいんだ。支配の軛からの解放を人の手で、人の力だけで成し遂げる。これからの私の理想に、神の干渉はいらない。私は、もう絶望を選ぶ事はしないのだから」
凛とした表情と声でそう言い切るサンジェルマンに、シキは静かに笑みを浮かべて頷いた。それは、まるで父親が子の成長を見て喜びを噛み締めるかのようだった。
周囲もサンジェルマンの決意を聞いて、微かな笑みを浮かべていく。人ならざる力に頼るしかない事。それは絶望にも等しい。何故なら、人には無限の可能性があるのだ。それに対して見切り、諦め、突き放すのは絶望としか表現出来ないと言える。
「……随分と大言を吐くじゃないか、君にしては」
「アダム……」
そんな空気に水を差すような声が響く。その主、アダムはボロボロの状態でもまだ見下すような表情を浮かべていた。
「酷い答えじゃないか、神の力に縋り自らの理想を果たそうとして数百年以上も歩き続けた割に」
「そうだな。たしかに多くの犠牲を出しておきながらこれは酷いかもしれない。だが、その犠牲を無駄にしないためにも、この行動の結果は良いものでなければならない」
「そのためなら見捨てるのかい、もっとも確実な理想を叶える術を」
「ああ。人の持つ強さと可能性をもう一度信じてみようと思えた。シキと立花響が、私にそれを見せてくれた。人は愚者なれど、それ故に貫き通せる強さがあると」
言ってサンジェルマンは二人を見た。それだけではない。他の装者達も優しい眼差しで見つめていったのだ。敵対しても、その命を取る事を拒否し、何とか和解の道を模索し続けた強く愚かな者達を。
「私は、長きに渡る時間の中で忘れていたようだ。私もまた人であり、その可能性を信じ続ける事を。人に絶望するのは自分自身への絶望にも等しいのだと」
「馬鹿馬鹿しい。最初からないのさ、君達に希望などは。僕をどうにかしたところで終わらないよ、絶望の未来は」
「それを変えていけるのが人間だ。その発展性と可能性を持たないから、君は見捨てられたと何故忘れているんだ?」
「っ!?」
シキの言葉にアダムが初めて見せるような青い顔をした。周囲もまた、そんな事を言ったシキに驚きの顔を見せている。周囲全ての者達の視線を浴びながら、シキはどこか悲しそうな顔をしてアダムを見つめていた。
「アダム、君は完全で完璧な存在だ。だが、それ故に想像力に欠ける。いや、他者への関心でもいい。君は、自分の事ばかりで他の事を見ようともしなかった。どうやらそれは今でも克服出来ていないようだね。残念だよ」
「ま、まさか……君は、貴方は……」
「それに比べて、人はここまでなったか。安易な相互理解を封じられ、その身を傷付けながらも、それでも相手を分かろうと手を伸ばし続ける強さ。たしかに愚かで強い在り方だ。アダムには逆立ちしても不可能だろう」
シキの口調は、どこまでも穏やかで静かなものだった。それは、彼らしくないもの。その事にアダム以外の誰もが気付いていた。今話しているのはシキであってシキではないと。
「貴方は一体誰? シキの体を使って話しているのは」
「……私の名前など意味がない。ただ、この体を一時的に使わせてもらっているだけだ。心配せずとも、事が終われば返す」
「フィーネさんと了子さんみたいな感じかな?」
「だろうな。まぁ、おそらく神の力ってやつの持ち主なんだろうよ」
クリスがそう告げた瞬間だった。装者達にフィーネの声が聞こえてきたのは。
『待て! シキと、そのお方と会話させて欲しいっ! 誰でもいい! 端末を使えるようにしてくれ!』
まるで懇願するかのような言い方に、響達は思わず顔を見合わせた。あのフィーネがここまで言う相手。そうなれば今シキの体を使っている存在は一人しかいない。
「……フィーネ、か。すまないが彼女と話す事は出来ない。ただ、これだけは伝えて欲しい。私は、君の幸せを願っている、と」
「あの、それだけでいいんですか?」
「ああ。もう私はこの世にいない。いつまでも亡くなった存在に囚われず、今の幸せを謳歌して欲しいんだ。この男と、想いを通じ合ってくれた事を、私は嬉しく思っている」
優しく微笑むシキに、響は何も言えなくなった。フィーネの初恋相手は、今の彼女の幸せを喜び祝っていると感じられて。
そして、その声はギアを通じてフィーネへも届いた。彼女は発令所の床へ崩れ落ち、涙を流していたのだ。
『貴方様は、本当に酷い方です。私の想いを知って尚も、そうやってそっと突き放す。私の想いを、直接聞いてくださる事さえして頂けないなんて……』
「フィーネ、君の想いはこの男へ向けられている。今の君が私へ向けているのは、かつての想いの名残に過ぎない。それは嬉しいが、もう縛られないでくれ。私は、君と口付けるどころか抱き締める事さえ出来なかった、そんな存在なのだから」
微かに悲しみと申し訳なさを湛えながら、シキはそう告げてアダムへと視線を戻した。アダムは、あまりの事に脱力し、今までの余裕やふてぶてしさが失われていた。
「アダム、私が君に言えるのはこれだけだ。人類を見下す前に、もっと彼らを見つめてみるんだ。何故君が見捨てられてしまったのか。何故人がその代わりになったのか。君が本当に完全で完璧ならば、それが出来るはずだ。私は、それを信じているよ。君にもあるはずの、可能性を」
「僕にもある……可能性……」
「そうだ。あのティキという、君が人形と呼んだ存在でさえそれを見せてくれた。可能性は万物に平等に与えられている。そこに差はない」
シキの言葉でアダムの目に光が戻り始める。それを見てシキは小さく頷くと、ティキへと視線を移した。
「創られた存在なれど、心を持ち生きる事で変化する。その成長は、誰にも読めない。改めて見せてもらったよ、無限の可能性というその意味を。だから、これは私からの祝福だ」
ゆっくりとシキが片手を上げてティキへと向ける。その手から優しい光がティキへと注がれ、やがて消える。
「これでいいだろう。誰でもいい。彼女が目覚めたら伝えてくれ。夢を叶える事が出来るか出来ないかはその想い次第だ、と」
「伝えておきます。絶対に」
響の言葉に満足そうに頷いてシキは目を閉じる。そして目を開けた瞬間……
「……あれ? 何でみんなして俺の事妙な目で見てるの?」
そこには誰もが知っているシキが戻っていたのだ。安堵の息を吐く響達。サンジェルマン達でさえどこかホッとした表情を見せていた。
一人アダムだけが静かにシキを、正確にはその体を借りていた存在を見つめていた。アダムは創造主に見捨てられた存在である。その理由は先程シキの体を借りていた者の言っていた通りであるのだが、改めて事実と共に突きつけられてしまっては、さしものアダムも認めざるを得なかった。
(僕になくて人類にあるもの、か。これはまた曖昧だね、可能性とは。だけど、認めるしかないな、それをこうやって見せられてしまっては)
ティキさえも見せた可能性というもの。アダムにはなく、このままでは永遠に有り得ない、変化と成長という結果。そう考えアダムはハッキリと自覚するのだ。自分を創造主が捨てた理由はそこにこそあったのだ、と。
「えっと、アダム、本当にティキへ謝ってはくれないのか?」
そんなアダムへシキがそう問いかける。その声には、ないと分かっていながらも微かな望みを託すかのような響きがあった。それこそが可能性なのだと、そう感じ取ってアダムは息を吐いた。
「……分かったよ、今の僕は。そちらの申し出を受け入れよう、大人しく素直に。ティキへ詫びるさ、僕のこれまでの非礼を」
「アダム……ありがとう」
「どうして礼を言うんだい、君が」
「だって、これでティキも報われるからさ。本気で大好きなんだよ、ティキはお前の事が。その相手とやり直せるんだ。こんなにめでたい事はないだろ」
心から噛み締めるように告げるシキに、アダムは今度こそ言葉を失った。そして痛感する。目の前の相手は神さえも認めた愚者であり、強き者なのだと。
「……敵わないな、君達には。どうやら本気で蛙だったようだよ、今までの僕は」
「かわず?」
「蛙の事なワケダ」
「あー、井の中の蛙のかわず、かぁ」
プレラーティの説明に納得するように頷くシキ。響などもそれで同じ反応をしているので、どうやら彼女の説明は意味があったらしい。ただ、クリスやマリアが苦い顔をしていたが。
そうしてアダムは静かな目線でサンジェルマン達を見つめた。その眼差しに込められた意思を感じ取り、三人は小さく苦笑して拘束を解いた。シキの施した拘束は、既に消え失せていたのである。
「あ、ちょっと待って」
裸のままのアダムを見たシキが何かを拾って力を込めると、それは瞬時に白いスーツへと変わった。神の力でスーツの破片を復元したのだ。
「これを」
「すまないね」
シキ以外が揃ってアダムから視線を逸らす中、アダムはいつもの格好へと戻ると、今も眠るティキへ静かに歩み寄っていく。
「ティキ、起きてくれるかい?」
「うっ……ううん……アダム?」
「ああ、僕だ。聞いて欲しい事があるんだ、他ならぬティキに」
それは、ティキが初めて聞く優しいアダムの声だった。その事に気付いて、ティキの目が一気に開く。だが、飛び起きそうな彼女を、アダムの手がそっと止めた。
「そのままでいいさ。今は、休めて欲しいんだよ、ティキの体を」
「アダム……」
ここまでの事でティキはアダムの心が分かった。本当に自分を心配しているのだと。それが嬉しく、ティキは胸を無意識に押さえた。
「ティキ、これまで僕は、君に酷い事をしてきた、とても許されないぐらいに。まずはそれを詫びさせて欲しい。許してくれると思わないが、これからは誓うよ、もうあんな考えも見方もしないと」
「アダムぅ……」
「それで、もし良ければまた僕の傍にいてくれないかな、これからも」
「……うんっ! ティキの居場所はアダムの隣だもの! 絶対っ、ぜ~ったいにそこは誰にも譲らないんだからっ!」
そうティキが言い切った瞬間だった。ティキの体が輝き始め、そして周囲を包み込むように広がる。その眩しさが消えていくと、そこには一人の少女が立っていた。
血の通った肌艶をした、一人の可憐な少女が。
「ティキ……その姿は……」
「アダム、ティキ、変なの。何だか体が震えるんだ」
「それはきっと、温度を感じるからだね、ティキの体が」
「温度? 何で?」
疑問符を浮かべるティキの体をそっと抱きしめる者がいた。その温もりに笑みを浮かべてティキは後ろを振り向く。そこには、ティキが一番あったかさを教えてもらった存在がいた。
「シキ……」
「震えるのはね、ティキがアダムと同じ体になったからさ」
「ティキが?」
「ええ。神様が貴方の成長に感心してその力を少しだけ宿してくれたのよ。それがどうなるかは貴方の想い次第って」
「ティキの想い次第?」
マリアの言葉に小首を傾げたままのティキを、誰もが微笑ましく見つめていた。
「多分だけど、ティキがさっきアダムへ言った事が原因じゃないかな? アダムの隣に居続けたい。その言葉の裏には、アダムと同じになりたいって気持ちがあったんじゃないか?」
「うん、そうよ? ティキはアダムと一緒になりたいんだもの」
迷いなく言い切られた言葉でシキはアダムへ視線を送る。それは、ティキの想いは今もアダムへ向いているのだと言う意味合いを持っていた。それをアダムも察する事が出来たのだろう。軽く笑い、小さく頷いたのだ。
そうやって流れる空気が和やかなものとなったところで、そこへ現れる者がいた。
「随分派手にやったものですな」
悠然とした雰囲気をまとうように神主はどこか楽しげな声でそう告げた。その周囲にはS.O.N.G職員であろう黒服の男性が二人いる。今まで神主の男性を保護し、避難させていたのだ。
「あ、これはその……」
「事情はこちらの方達からある程度聞いています。まぁ、神様が暴れたのなら仕方ありますまいて」
どこまでも柔和な神主にシキは返す言葉に困る。だが、神主の言葉から何か思いついたのか、彼はおもむろに片手を地面へ、正確には境内の石畳へ当てると目を閉じた。
すると、シキの手が輝き始めてその光が境内全体へと走る。その直後、境内が眩い輝きに包まれ、一瞬の後に光が失せた。
「……これは」
「嘘……」
あまりの事に何度も瞬きをする神主と響達。何と神社が元通りになっていたのだ。壊れた鳥居や石畳など、一切の漏れもなく見事に修復されていたのである。
「神様の力なら、神社の修復に使わないといけないかなと思いました。これで、ここでの不作法を許していただけると助かります」
「いやいや、神様は人の世に本来干渉しないものです。それが起きたと言う事は、それだけこの世に何か大きな災いが振りかかったのだと思います。それにしても、難儀なものを得てしまいましたなぁ」
シキの力を目の当たりにしながらも、神主は少しも態度や雰囲気を変えなかった。そこに強さを見て、シキは感服するように肩の力を抜いた。
「ですが、おかげで守る事や助ける事が出来た命があります。神様の力ですけど、出来るだけ人らしく使って生きたいものです」
「人らしく、ですか。成程、貴方はそれを良い意味で出来そうな方のようだ。くれぐれも力に飲まれぬよう、心を鍛えてください」
「はい、そうします。正しく力を使えるように」
そう凛々しく返すシキを見て、神主は静かに笑みを浮かべたまま頷き、ティキとアダムは微笑み、女性達は一様に熱い眼差しを送った。
「神の力、か。恐ろしいものだ」
俺の呟きに周囲からも賛同するような雰囲気が感じられる。了子君はもう落ち着いていて、先程の要君から得られたデータを何度も見返していた。
キャロル君とエルフナイン君も錬金術師としての観点から神の力について分析を開始している。ナスターシャ教授は、一人夢子君を抱えてあやしているが、あれが日常でのあの人なのかと思うと笑みが浮かびそうになる。
こう言ってはなんだが、立派なおばあちゃんといった佇まいだ。
「シキの体に宿ったアレって、今後どうなるんでしょうか?」
「さてな。こればかりは何とも言えん。厄介事になるだろうが……」
「だからと言って響ちゃんにギアを纏って要君を殴れと言うのも……」
「そうだな。だからと言って、神殺しの力が相手を傷付けずに効果を発揮するのかは疑問が残る」
そこで俺は言葉を切った。先程調神社を後にしたところでアダムからもたらされた情報を思い出して。
―――僕が神の力を求めた理由には、復活するカストディアンへの対抗もあるのさ、もう一つとして。
その復活予想地点は、あのティキというオートスコアラー、でもあった少女が教えてくれるそうだ。あの要君を乗っ取ったとみられるカストディアンが残した祝福で、ティキと呼ばれたオートスコアラーは人間に等しい存在へと変化したようだ。
ただ、持っていた能力は失われていないらしく、了子君達が言うにはピノキオと思えとの事。要は不思議な力によって人間と近しくなった人形、だろうか。
「それに、未確認ではあるが、恐るべき存在への備えとしてあの力はまだ必要だ」
「「はい」」
俺のように鍛えた訳でもない要君をあれ程までに動かせる神の力。更にティキや境内の修復などで見せたその汎用性。紛れもなく奇跡の力だ。
諸外国にその存在を知られてしまったのは厄介ではあるが、要君がアダムを戻すためにやった行動と、その後の月への干渉の映像で彼から力の宿った証のような輝きが失せた事もあって、八紘兄貴が何とか黙らせる事が出来たそうだしな。
ただ、おそらくあの人は黙っていないだろうが。
「司令、朗報かもしれない情報が出来た」
「何だろうか?」
気が重くなる未来を考えていると、キャロル君からそんな事を言われた。視線を向ければキャロル君とエルフナイン君がこちらを見て力強い笑みを浮かべている。
「神獣鏡のギア、改良が完了した。後は起動実験を行うだけだ」
「本当か。それはたしかに朗報かもしれない。なら、未来君には悪いが明日起動試験を行うと伝えてくれ」
「分かりました。それと、心配いりません。明日はまだ始業式なので昼までには終わります」
「……そうだったな」
エルフナイン君の言葉に、彼女達がまだ学生である事を強く思い出した。始業式、か。縁の遠い言葉になってどれだけになるやら。
「弦十郎ちゃん、医務室借りるわ。あの人が帰ってきたらしばらく誰も近付けないで」
「分かった」
「了子さん、その前に夢子達だけでも会わせてあげては?」
「そのつもりですわマム。子供達には、大人の事情も何も関係ありませんもの」
優しく微笑み、了子君がキャロル君とエルフナイン君を見た。それに二人は頷くも、キャロル君は照れくさいのか顔を俯けたままだったが。
どうやら、まだ簡単には子供へ戻れないらしいな。無理もないと思う。長きに渡り父の言葉とその復讐を胸に生きてきたのだ。いくら何でもすぐには折り合いをつけられないだろう。
その後、発令所を出て行く了子君に続いてナスターシャ教授やキャロル君とエルフナイン君もこの場を後にする。残される形となった俺達は、ティキと要君が見せた神の力の分析結果を見つめる事となった。
「……攻防一体の力ですね。もしこれを使っていたのが装者やあの三人だったらと思うと」
「凄まじい力を見せていただろうな。それこそエクスドライブを超えるだろう」
「だけど、ティキもシキも力に振り回される事はなかった。もしかして、意外と扱いやすいのかもしれません」
「どうだろうな。宿せる条件が条件だ。扱いやすいか否かは一概には評するのは難しいだろう」
そう、あの力は人類には宿せない。そして、どうなるかも分からなかった。だからこそアダムは保険と実験を兼ねてティキという人形を用意していた訳だ。
ただ、要君がその有資格者とは想定外も甚だしいだろうがな。
俺も、そこについては驚きを隠せない。要君の素性は未だに不明だが、呪詛がないという一点から考えても普通の人間ではない事が確定している。元々能力もあって、彼の事は色々と調べてはいた。だが有力な情報は得られないまま、今日まできたのだ。
彼は、一体何者なのだろうか? 保護された時以前の失われた記憶。そこに何か手がかりがあるのか? だが、逆行催眠など様々な方法を試して無理だったものを、どうやって探る?
いや、そもそも本当に”彼の記憶は失われている”のか? 俺はそんな事を思いながら目の前の映像を見つめた。輝きを身に纏う、要君の姿を……。
「では、私達はここまでだ」
本部近くまで来たところでサンジェルマンさんがそう言った。見ればプレラーティさんやカリオストロさんも同じ気持ちなのか笑ってる。
「どうしても、行ってしまうんだね?」
「ああ。約束を違えてしまうが、これは許して欲しい」
「局長とティキだけじゃパヴァリアは変えられないだろうしね」
「我々も幹部として内部から変えていかなければならないと思うワケダ」
シキさんとの会話で分かる。きっとサンジェルマンさん達はパヴァリアを抜けるつもりだったんだって。だけど、アダムさんが改心してティキちゃんを受け止めた事で、それを見守る気になったんだ。
「そうしてくれると助かるよ、こちらとしても」
「アダムだけじゃ、きっと見逃しとかしちゃうもんね」
帽子を触って笑みを見せるアダムさんの隣で、笑顔のティキちゃんが嬉しそうに寄り添っている。その肩をアダムさんの手が軽く抱いていて、本当にティキちゃんが幸せそうだ。
「だからシキ、貴方の傍へ行くのはまだ無理だ」
「だけど、組織にいながらでも会う事は出来るわ」
「近い内にシキの家へ行かせてもらうワケダ」
「分かった。本部は無理でも我が家は中立地帯だ。アンジェにも夢子に会って欲しいし、ティキのアレをみんなに見てもらいたいからね」
「うん、ティキもシキのお家行きたいわ。その時は秘書さんらしい格好で行くからね」
「うん、楽しみにしてる」
本当ならアダムさんを本部へ連れて行かないといけないんだけど、師匠が言うには今パヴァリアの体制を大きく崩すと色々大変な事になるらしい。だからアダムさんと取引をして、パヴァリアの錬金術師達を監視してもらって危険な事をしないようにしてもらう事になったみたい。
で、それを受けてサンジェルマンさん達が一緒にパヴァリアへ戻り、アダムさんの監視と協力をする。そのために本部へ連れて行く事は出来ないって事で、ここでお別れ。
「例の話で出てきた決戦の場所、必ず教えてくれるのよね?」
「ああ、勿論だよ。僕らだけで、何とか出来るとは思えないからね、あの相手は」
「おそらくその時も近いはずだ。そちらも、出来る限り万全の体制を心がけて欲しい」
アダムさんとサンジェルマンさんの言葉に私達は頷く。奏さんと翼さんもいれば、きっとどんな相手でもへいきへっちゃらだ。
それに、これからはサンジェルマンさん達もいる。あと、何と言っても……
「その時は、俺もあの力で援護するよ。それが、きっとあの力が俺に宿った意味だと思う」
シキさんがそう言うと、一瞬だけ淡く体が光った。それが優しくあったかい光で、私は心が温まる。本当はギアのないシキさんを戦場に行かせたくない。でも、未来がそうだったように、きっとシキさんもこれまで私達を送り出すしか出来なかったのを悔やんでいたと思うから。
師匠だってそうなんだ。大の大人が女子供を戦場へ送る。それに心を痛めていないはずはないって。だから私は受け入れる。今のシキさんは、戦えるって信じて。
「じゃあ、ここまでだ、名残惜しいけれど」
「シキ、みんな、ばいばーい!」
転送結晶でアダムさんとティキちゃんがいなくなる。手を振るティキちゃんへ私だけじゃなく調ちゃんや切歌ちゃん、セレナさんも手を振った。
「シキ、そして装者達、色々あったが、君達と出会えて良かった」
「あーし達はあーし達にしか出来ない形で平和ってものを目指してみるわ」
「その内にまた会って話をしようと、エルにも伝えて欲しいワケダ」
「ええ、分かったわ」
「そっちも、元気でな」
「絶対にまた会いましょう」
「今度はツヴァイウイングも一緒デスから」
「美味しい料理、作りますからね」
みんなの言葉にサンジェルマンさん達が笑顔で頷いてくれる。なら、私も。
「いつか、きっといつかシキさんの家でお話しましょう!」
「ああ、そうだな。シキの家で、いつか」
「いつでも待ってるよ。我が家は、元々錬金術師の作った家だからね」
シキさんの言葉に小さく笑って、サンジェルマンさん達も転送結晶を使っていなくなった。少しだけ寒くなって、私は身を震わせる。
「じゃ、行こう。まずは本部へ行って、それから家に帰ってパーティーのやり直しだ」
「悪いがそれは無理だろ。両翼の先輩はいないんだぜ?」
「なら、帰ってくるのに合わせてやればいいわ。早ければ明日には一時帰国するそうよ」
マリアさんの言葉に私達は驚き、そして笑みが浮かぶ。と、その時車の近付いてくる音がした。目を動かせば本部のある方向から一台の車が向かって来る。
「あれって……」
「運転してるの了子じゃないか。それにキャロルとエル、お義母さんもいるぞ」
この距離で車に乗ってる人達全員が分かるシキさんが凄い。多分神の力の効果なんだと思うけど、それでも凄いなぁ。と、そう思ってると車が止まって後部座席からエルちゃんとキャロルちゃんが急いで出てきた。
「「父さんっ!」」
「エルっ! キャロルっ!」
飛び込んでくる二人をしゃがんで受け止めるシキさんは、とってもお父さんだった。涙ぐむキャロルちゃんと泣いてるエルちゃんも、とっても子供って感じ。何だか、見てるこっちも嬉しくて泣けちゃいそう。
「シキさん、無事で何よりです」
「おーあっ!」
「お義母さん……夢子……」
マムの腕に抱かれながらシキさんへ一生懸命両手を伸ばす夢子ちゃんの姿に、私は溢れてくる涙を止められなかった。見ればみんな泣いてる。クリスちゃんは顔を背けて隠してるつもりだろうけど、肩が震えてるから意味ないよ。
切歌ちゃんと調ちゃんもシキさんと再会した時よりも分かり易く泣いてた。マリアさんとセレナさんも微笑みながら何度も何度も目元を拭ってる。
「夢子、エルとキャロルも聞いてくれ。遅くなって、心配かけて、本当にごめん。ただいま」
「「おかえりなさいっ!」」
「おあえいっ!」
「っ! 夢子ぉ……」
エルちゃんとキャロルちゃんの言葉には何とか耐えてたシキさんも、夢子ちゃんのおかえりには無理だったみたいで、ぼろぼろと涙を流してマムから夢子ちゃんを受け取っていた。
泣いてるシキさんと嬉しそうに笑う夢子ちゃん。その対比が、何だかとってもおかしくて、あったかくて、幸せだった。
了子さんは何も言わずにそっと眼鏡を動かして目元を指先で拭ってた。その姿も、とってもお母さんって感じであったかい。
今度、また家に帰ってみよう。年始の挨拶は行ったけど、シキさんの事もあってお父さん達にはどこか心配させてただろうし。そんな事を思いながら、私は目の前の光景を見つめ続ける。
不思議と、もう寒さはそんなに感じなかった。流れる涙が、心からあったかくしてくれたんだと、そう思いながら……。
理想に生きたサンジェルマンが簡単にそれを諦めるか? そう思った時、ふとその理想が果たして本当に彼女の望む姿のままで有り得るのだろうかと思いました。
原作で彼女は神の力を以って人類を支配から解き放とうとしました。でも、それは今回で書いた通り劇的な変化です。そんな事をいきなりやれば、混乱は避けられません。
果たして、そこまであの時の彼女は考えていたのだろうか。良くも悪くも真っ直ぐなサンジェルマンは、理想を果たす事だけ目指して進み、その後の事を考えていなかったのではと思ったのです。
故に、それを突き付けられた時、真っ直ぐな彼女(シキとの交流で変化もしている)なら、立ち止まってくれるのではと。
それ故の今作の結末です。犠牲を無にしないために、叶える理想は良いものでなければならないというサンジェルマンの思考が導いた、人の手だけによる道筋を往くという。
批判や否定もあるかもしれませんが、今作は元々エロバカな作品ですので寛大な心で許して頂けると幸いです。