夢子の母にしてシンフォギアの開発者。天羽々切起動時にフィーネとして覚醒し魂を塗り潰されるも、シキの生命のスープをフィーネが摂取した事により何故か魂が復元、現状のように一心同体となる。
了子にとって、シキは紛れもなく命の恩人であり愛する男。フィーネにとって、シキは野望を阻んだ間接的要因にして愛を注いでくれた男。
その想う心はシキに抱かれて過ごす日々でゆっくりと重なり合い、夢子を産み落とした事で完全なる一致を果たした。
今やフィーネは輪廻転生を望まず、シキとの別れを迎えれば二度と誰かの魂を塗り潰す事もなく静かに眠りたいと考えているが……。
人類史の彼方から此方へ
ジリジリと何かが煩くなっているのであります。これは、何でしょうか? 煩くて眠れないのであります。
「う~っ、静かにするであります」
腕を伸ばしても音の出所に届かないので、仕方なく起きる事に。で、そこで目に入った光景は見慣れた場所ではなく、とても温かな雰囲気のある部屋。
「はえ?」
夢でありますか? そう思って首を傾げたところで、思い出す。もう私めは、シキさんの不思議な力で元の体に、人間に戻れた事を。
「……ぁ」
ちゃんと目を覚ませば、そこはあの暗くて不気味な場所じゃなく、仄かに明るい普通の部屋。見回せば、ヴァネッサとミラアルクがいて、着てる服はちゃんとした物。
「……目覚ましを止めないとであります」
ジリジリと存在を主張する物を手で止めて、私めは静かに息を吐く。今ので起きない程、ヴァネッサもミラアルクも疲れてるのでありますね。
思い出せば、私めはお風呂で半分寝ていたでありますし、その分眠りが浅かったのでありましょう。
「起こすのは、止めておいた方がいいでありますね」
そっとふとんを抜け出して、静かにドアを開けて近くにある靴箱からスリッパを取り出す。これもシキさん達がくれた物。その場しのぎと言ってたでありますが、何もなかった私達にはとてもありがたいものであります。
スリッパを履いて一人リビングへと向かう。本当は今日からお仕事を始めるのでちゃんと三人で挨拶をするべきと思うでありますが、シキさん達なら事情を話せば少しぐらいの寝坊は許してくれるはず。
そう考えて、せめて私めだけでも遅刻しないように行動開始なのであります。
「ん? ああ、エルザか。おはよう」
リビングへ顔を出すと、キャロルがいたであります。隣には眠そうな顔をしたエルもいるでありますね。目をこしこしと擦っているのが可愛いであります。
「おはようであります。えっと、シキさんはまだ寝てるでありますか?」
「父さんならそうだと思う。母さんはさっき牛乳だけ飲んで部屋へ戻ったけど、すれ違わなかった?」
「いえ、会わなかったであります」
「そっか。じゃ、きっと父さんを起こしに行ったんだ」
言い終わってどこか苦笑するキャロルでありますが、どこに笑う要素があったんでありますかね? あと、エルは顔を洗った方がいいと思うのであります。まだこしこししてるでありますから。
「エル、顔を洗った方がいいと思うのでありますよ。その方が目が覚めると思うのであります」
「……そうします」
「はぁ~……あれだけ私に早く寝た方がいいって言っておいて、自分は考え事して夜更かしするから」
「仕方ないじゃないかぁ。響さん達のギアも何とか強化できないかなって考えちゃったんだもん」
眠そうな声で言い返すエルでありますが、キャロルはそんなエルをとっても優しい目で見ているであります。あれは、ヴァネッサが私めやミラアルクを見る目に似てるであります。
……そういえば、キャロルはエルのお姉ちゃんでありました。納得であります。
「もう、そういうのが一番眠れなくなるって分かってるでしょ? 今後は寝ると決めたらそういうのは考えない事」
「ふぁ~い」
「返事はしっかり」
「……はーい」
「よし」
フラフラとキッチンの方へ向かうエルにキャロルが満足そうに頷いてるであります。聞いていると、とっても心があったかくなるでありますね。
私めも、ヴァネッサやミラアルクとこんな会話をする日が来るのでありますか? もし来るとすれば、それは意外と早いかもしれないであります。
「それにしても、エルザだけ?」
「あ、その、二人はまだ寝てるのであります。多分ですが、私めは昨日お風呂から寝ていたようなので、私めの事をしてくれた分二人は疲れたのだと思うのであります」
私めの事を見て小首を傾げるキャロルへ説明。記憶がぼんやりとしてるでありますが、何となくミラアルクが体を拭いてくれたりヴァネッサと二人で服を着せてくれた事は覚えているのであります。
「そう。まぁ、今日はカリオストロが来るまでは休んでていいから。本格的に働いてもらうのはその後って父さんが言ってたし」
「い、いいのでありますか?」
驚きであります。昨日はお客さんとして休ませてもらったのに、今日は今日でカリオストロが来るまでお休みなんて。
「良いも何も仕事着も無ければ当座の服もないでしょ? それで仕事する? 結構この家の掃除はきついのに」
キャロルの顔が少しだけ呆れたものに変わって私めを見つめる。た、たしかに昨日見せてもらっただけでもかなりの部屋数と場所だったであります。
今の格好はシキさんがくれたシャツとじゃーじ?と言うもの。これは動きやすいでありますが、替えがないのであります。かといって、あの場所で着ていた物は、もう二度と着たくないでありますし……
「分かってくれた? ま、何かしたい気持ちは分かるけど、今は大人しく待ってた方がいい。そのうち嫌でも働いてもらうから」
「分かったであります」
そうやって私めがキャロルに返事をした辺りでキッチンからエルが戻ってきた。その顔は、どうやらすっかり目が覚めたようでありますね。
「おはようございます、エルザさん」
「おはようであります」
「挨拶が遅いよエル。後、パジャマが濡れてる」
「し、仕方ないじゃないか。寝惚けてて水を出す勢いが強くなっちゃったんだ」
「もう、駄目な妹。姉の私がついてないと顔もちゃんと洗えないの?」
「そんな事ないよ。そういうキャロルだって、パジャマの一番上のボタン開いてるよ。駄目な姉だね」
け、ケンカでありますか? 二人の言葉の応酬に私めがハラハラしていると、二人はその顔を近付け合って……小さく笑った?
「「なんてね」」
「へ?」
「エル、着替えてこようか。父さんが起きてきてからにしようと思ったけど、時間かかりそうだし」
「そうだね。着替えてから朝ごはん食べよう」
「そういう訳だから、エルザ、また後で」
「また後です」
「え、あ、はいであります」
仲良く歩き出す二人を見送り、私めは一人リビングに取り残される。何というか、分からない二人であります。どうしてケンカするような言い合いをして笑ったのでありますかね?
「あら? エルザ、もう起きたのですか?」
「あ、ファラさん。おはようであります」
キャロルとエルと入れ替わりにファラさんがやってきたであります。ちなみに、キャロルとエルは呼び捨てで構わないと言ってくれたのでそう呼んでいるし、ミカやガリィも同じであります。
残りの方達は私めがさん付けで呼ばせてもらっているのであります。オートスコアラーとはいえ、ファラさんとレイアさんは私達に優しくしてくれた。なら、あの場所にいた錬金術師達よりもよっぽど人間らしいのでありますから。
「おはようございます。ミラアルクとヴァネッサはどうしたのですか?」
「あ、その、まだ寝てるであります」
「そうですか。なら、丁度良かった。これから朝食の支度をするのですが、お試しで少し手伝ってみますか?」
「いいのでありますか? なら、是非とも手伝わせてもらうのであります」
こうして私めはファラさんの手伝いで朝ごはんの支度をする事に。やらせてもらったのはサラダ作り。トマトをスライスし、レタスをちぎり、きゅうり、という物を輪切りにして、最後に缶詰のコーンを散らしてツナを乗せれば完成であります!
そうしていると、レイアさん達も姿を見せて、一気にキッチンが賑やかになったのであります。
私めはサラダを円卓へ並べ、ミカと一緒にお皿などを並べる。すると、どこか疲れたシキさんと上機嫌な了子さんが夢子を抱えて現れて、その後ろからヴァネッサとミラアルクもやってきたのであります。
「いたいた。エルザ、起きたなら起こせよ」
「そうよ。部屋にいなくてビックリしたんだからね」
「ご、ごめんなさいであります」
二人の言葉に心配させてしまったと理解し、頭を下げる。ただ、二人の意識はすぐに私めのやっていた行動へ向いたようでありました。
「あら? エルザちゃん、もしかして……」
「お前、食事の手伝いしてたのかよ?」
「そうよ。地味に頑張ってくれたわ。その瑞々しく彩りが派手なサラダはエルザが作った」
「へぇ、よく出来てるじゃないか。初めてやったにしては綺麗だよ。見栄えがいい」
「そうねぇ。彩りが見事だわ。赤、緑、黄の三色と、ツナを中央に配置してあるのもお店みたいね」
シキさんと了子さんに褒められると何とも言えないであります。何というか、お父さんとお母さんに褒められているような、そんな気分になるでありますよ。
「くっ、これは早速エルザに一歩先を行かれたぜ」
「ふふっ、そうね。お姉ちゃんとしては、嬉しいやら悔しいやらだけど」
「ならあんた達も手伝いなさいな。ほら、出来た物から運んでいって頂戴」
「それぐらいなら出来るはずだゾ」
「分かりました」
「了解だぜ」
ガリィとミカに言われてヴァネッサとミラアルクが動き出す。私めも手伝おうとして、何故か腕を優しく掴まれた。振り向けば、そこにはシキさんがいたであります。
「エルザちゃんはもういいよ。二人も君と同じで何かしたいんだ。その気持ちと仕事、邪魔しちゃダメだよ?」
「……分かったであります」
言われて気付いた。私めが何かしないとと、そう思ったように二人も同じ事を思ってたんだと。それをシキさんは察して、私めを止めてくれたであります。
二人の焦りにも似た何かを解消させてあげなさいって。そこへ私めが混ざったら、二人は余計もやもやするでありますね。
私めは夕食時に座った場所へ腰かけた。そうやって座って見ていると、何とも言えない気持ちになってくるであります。
ファラさん達に混ざって動くヴァネッサとミラアルク。その光景がこれまでなかったぐらいに新鮮で、そして嬉しかった。だって、二人は笑っているのでありますから。
「……本当に、夢のようであります」
噛み締めるように呟く。昨日の今頃は、また憂鬱な時間の始まりと思っていたのに。それが、ここまで変わるなんて……
「エルザ、飲み物はミルク? それとも水? あるいはジュースやお茶もあるけど」
「え? あ、水でいいであります」
聞こえた声に顔を動かせば、ガリィがミルクと水が入った大きな入れ物を手にしていたであります。
えっと、お茶は昨日の夜に飲ませてもらったむぎちゃ、でありますかね? それとも、紅茶でありますか? あるいはりょくちゃと言うものかもしれないであります。
そう思って水を選ぶ。でも、それがガリィには別の意味に聞こえたようで……
「ホント? 遠慮とかしなくてもいいわよ。意外とこの家、小金持ちだから」
「小金持ち、でありますか?」
「マスターとエル、お母さんにシキ、四人の稼ぎでも割とあるのよ。で、それとは別にマスターとシキが別口でお金を稼げるの。だからご飯に関してぐらいは遠慮なんかしなくていいわ。てか、そこで遠慮すると今後何も言えなくなるし出来なくなるから」
「そうよん。エルザ、もう貴方もこの家の一員なんだから、遠慮は可能な限りしないで頂戴。して欲しい時は、こっちからお願いするから。ね?」
「わ、分かったであります。了子さんまでそう言ってくれるのなら、私めは遠慮しないように心掛けるであります」
「よろしい。で、ガリィ、私にはまずお水。二杯目はコーヒーで」
「砂糖一つのミルクなし、でしょ? はいはい、いつものね」
そう答えてガリィはため息を吐いて動き出した。何というか、今のようなのはまだ私めには無理であります。でも、何かいいでありますね。いつもの、という響きは。
「と、こういう感じ。エルザも思った事や感じた事は言ってくれていいわ。この国の言葉にね、こういうのがあるの。ケンカするほど仲が良いって」
「ケンカしてるのに、でありますか?」
「そう。あのね、ケンカってどうでもいい相手とする? ケンカする相手って、少なからず好意か敵意がないと出来ないじゃない?」
「……はいであります」
了子さんの言葉で私めは思い出す。あの場所にいた時、私めは最初こそ抵抗しようと思ってた。だけど、それも段々しなくなっていった事を。
その根底には、今の言葉がある気がしたであります。要するに、私めはあの場所の錬金術師達へ意識を向ける気がなくなったのであります。
言っても無駄。やっても無駄。なら、意識を向けるだけ無駄。だから何も言わない何もしない。そうか、最初の抵抗がケンカなら確かに相手へ何か思ってないと出来ないでありますね。
「で、普通はケンカって相手へ自分の事を教えてるの。何が嫌で何が好き。何が苦手で何が得意。そういうのを言い合って、ぶつかり合って……」
「それで、仲良くなるでありますか?」
「場合によっては、かしら。いつだってそうとは限らないけど、上手くいけば、ケンカしても仲直り出来れば、もっとお互いの事を知る事が出来るじゃない」
「お互いを、知る……」
そこで朝のキャロルとエルのケンカを思い出した。あれは、もしかしてそういう事なんだろうか。二人は、お互いの駄目な部分を言い合って、それで余計相手の事を知って仲良くなった?
「そうそう。それに、私達は家族なの。家族って、余程の事がない限りケンカしても仲直り出来るものよ。だって、そもそもケンカって根底には自分をもっと知って欲しいって気持ちがあるんだから」
「自分を、もっと知って欲しい……」
「だから、エルザもケンカを恐れずに私達へ意見して。それで、時には仲良くケンカしましょ?」
「……頑張ってみるであります」
私めがそう返すと了子さんは軽く微笑んで離れていった。お母さんと、そう呼ばれてるでありますが、その理由がよく分かった気がするであります。
わ、私めもお母さんって呼んでもいいでありますかね? そうなったらシキさんをお父さんって呼ぶ事になって……あぅ、何か恥ずかしいのであります!
「何赤い顔してんだ?」
「ふぇっ?!」
「どうかしたのエルザちゃん。変な声出したりして」
気が付けばミラアルクとヴァネッサが隣に座っていた。そして目の前からは良い匂い。見れば厚切りトーストが二枚にスクランブルエッグ、それにカリカリのベーコンが三枚。きっと一枚のベーコンを食べやすい大きさに切ったのでありますね。
「美味しそうであります」
「だな。お前の作ったサラダもあるし」
「ドレッシングは個々で好きな物をかけていいそうよ。お姉ちゃんはシーザーにしようっと」
「ならウチは……このゴマって奴にするぜ」
「わ、私めは……」
ヴァネッサとミラアルクがそれぞれで別の物を選んだ。だから私めはどっちにするかを決められないであります。と、そんな時私めをシキさんが優しく見つめて小さく首を左右に振った。
―――誰かの後じゃなく自分で選んだ道を歩くんだよ。
そう言われた気がして、私めは思わず息を呑んだ。そうだ、そうであります。もう私めは誰かに従う必要はないであります。
例えそれがヴァネッサやミラアルクでも、私めはもう私めの意思で生き方を選べるんでありますっ!
「なら、私めはこの……何て読むか分からない物にするであります」
「和風かぁ。まぁ癖はないし多分口に合うと思うから試してみるといいよ」
「そうね。和風は私もオススメよ。地味な色味で派手な美味しさ」
「もし良ければ次は青じそを推します。私はこの酸味が好きなので」
「ミカはゴマだゾ。甘くて美味しいゾ~」
「お子様ね、あんたは。ゴマの美味しさは甘さじゃなくて香りとコクよ」
「エルは何が好き?」
「僕はシーザーかなぁ。何でも無難に合うし」
「あら、母さんもよ。気が合うわねぇ」
私めの選択を切っ掛けに会話が盛り上がるのが、何とも家族って感じなのであります。見ればヴァネッサとミラアルクも笑ってて、それを見て私めも笑顔になった。
―――大勢で食べる食事とは、こんなにもいいものなのでありますね。
その日の朝食は、私めの人生で一番美味しいものでありました。そして、きっとこれからもずっと人生で一番美味しい食事は続くのであります。
そう強く思いながら私めは後片付けの皿洗いをヴァネッサやミラアルクと手伝うのでありました……。
「わざわざありがとう、リオ」
「別にいいのよ。あーしとしても楽しかったわ。こうでもしないと中々買い物も出来ないしね」
昼下がりのシャトー。そこにカリオストロの姿があった。つい先程までヴァネッサ達を連れて買い物へ行っていたのである。
今三人は買ってきた仕事着へ着替え、ガリィの監督の下で部屋の掃除を始めている頃だろう。
ちなみに仕事着は動きやすさ重視の格好で、三人それぞれで選んだエプロンを装着するというもの。ヴァネッサは白のエプロンで、ミラアルクが赤のエプロン、エルザが青のエプロンというチョイスだ。
そこに何かの意味や意図を込めたのかは本人達のみぞ知る。ただ、一つ記すならばフランス国旗の配色と同じであるとだけだろうか。
「それにしても、どうして今朝は三人して食事もせずに出て行ったんだい?」
「分かってるんでしょ?」
即応。シキとカリオストロはしばらく見つめ合い、やがてどちらともなく小さく笑って息を吐いた。
「ヴァネッサさん達へ気を遣ったんだ?」
「ま、そんなとこよ。でも、それも今日だけ。明日からはちゃんと朝ご飯食べていくわ。ここでの食事、あーし達も気に入ってるのよ」
「それは良かった。それに、ヴァネッサさん達も表面上はともかく、内心ではリオ達への恨みなんかはないと思うよ。ただ」
「分かってるわ。そう簡単に割り切れないわよ。いくら知らなかったとはいえ、あーし達は組織の幹部。サンジェルマンもそうだけど、局長でさえ今回の件は本気で反省してたわ。かつてのカストディアンと同じ事をしてたってね」
その言葉だけでシキには分かった。アダムがヴァネッサ達の一件でかなり心を痛めたのを。
彼はそもそもカストディアンに生み出された存在だ。しかも、その発展性がないと言う理由で捨てられた過去を持つ。故に今回の一件はそれを思い出させたのだろう。
―――笑えないね、本当に。知らぬ間に、あれと同じ事をしていたんだ、僕は。
そう悲しげに呟き、アダムがより一層組織の改革へ乗り出したのは言うまでもない。
生憎それを知る者はティキだけ。シキどころかカリオストロさえも知る事のない出来事だが、二人もアダムの過去を少しだけ知っているために想像は難しくなかった。
「……じゃ、アダムが空回らないようにアンジェ達は大変だ」
「本当よ。でも、ティキが上手く秘書やってるのよ、これが。局長が暴走しそうになるとティキがすぐあーし達へ連絡入れてくれてね。出来る女、目指してるんですって」
どこかからかうように最後を締めくくるカリオストロに、シキはやや照れくさそうに頬を掻いて視線を逸らす。そんな彼に、カリオストロが笑みを深くしていく。
「ほ~んと、イイ子ちゃんよ。今でも局長にはもったいないって思うぐらいに」
「そっか」
「そうよ。っと、そうだった。例の件だけど、何とかなるかもしれないってプレラーティが」
「本当?」
例の件。それは現状パヴァリアの幹部であるサンジェルマン達の同居に関する話だ。
元々シャトーを緊急時はS.O.N.Gの本部として使用する事を条件に、シキ達はその改造資金を得ていた。
そのため、秘密結社であるパヴァリアの幹部三人を同居させる事が国連へ知られれば面倒な事になりかねないと弦十郎から指摘され、シキはそれをどうにか出来る手段を模索していたのだ。
「モチのロンよん。何でも、テレポートジェムが好評なんでしょ? 要するに便利アイテム」
「うん、そうだね」
「で、南極でキャロルがアルカ・ノイズは無力だって、そう見せたじゃない? だけど、あれってきっと世界中はこう思ってる。キャロルがやってるんじゃなく、S.O.N.Gの持つ何かで無力化してるんだって」
そこでシキは理解する。何をカリオストロが言おうとしているか。何をプレラーティがやろうとしているか。
「で、そう思って内心ビクビクしてる各国首脳とかに渡すんだね? 対アルカ・ノイズジェムを」
「ご明察。つまり護身用アイテムね。それを融通するからあーし達の事を何とか出来ないかって、そういう事みたい」
「キャロルが作ったって事にして?」
「正確には、共同開発って事にして欲しいらしいわ。その方が余計あーし達を同居させる事に説得力が出るでしょ?」
ウインクで締め括るカリオストロにシキは苦笑しながら同意するように頷いた。
つまり、サンジェルマン達としてはアルカ・ノイズをあまり快く思っておらず、その被害を抑えるために秘密裏に動いた結果キャロルと手を結んだ。
そう国連や各国に思わせた方がいいのではないかと、そうプレラーティは考えているのだろう。
その案を聞いて早速とばかりにシキは弦十郎と八紘へ連絡を取る。この辺りにも彼が男として成長している事が窺える。
以前までなら報告をしてもすぐではなかっただろうし、相手も弦十郎のみだったはずだ。
それが即報告と連絡、加えて相談までし、政府に深く関わり各国とも繋がりを持てる八紘へも範囲を広げていたのだから。
『成程な。たしかに嗅がせるものとしては効果が高いだろう。それに、物が物だけにパヴァリア側としても自前の施設でやる事が厳しいとも言える』
「はい。アルカ・ノイズを作ったのがキャロルとはいえ、その作り方自体はパヴァリアの物です。なら、それを無力化ないし防衛する物を幹部が作るのはあまり良い印象を与えません」
『だろうな。場合によっては反逆を疑っているとも受け取れる。疑心暗鬼を招く可能性が高い』
「なので、我が家となれば元々はパヴァリアも関わった建物です。しかも、そこの所有者は錬金術師」
『これほどまでに好条件はないわけだ。だが、だからこそ余計怪しまれるぞ?』
「キャロルからすればアルカ・ノイズは自分でどうにか出来るものです。わざわざ防衛策を新しく作る必要はありません。なのにそれへ手を貸す事で身の潔白を証明すると考えてもらえませんかね?」
『……つまり、キャロル君は自分だけでなく世界を混乱に陥れぬためにしようとしていると?』
「そこまではいいません。ただ、自分がかつて作ったもので悲しむ存在を出したくないと、そう考えていると思うんですよ、今のキャロルなら」
シキの言葉に弦十郎は小さく息を吐いて笑みを浮かべる。娘の心境を考えて述べる辺りが本当の父親らしく思えたためだ。
『分かった。国連の方は俺から手を打とう』
「ありがとうございます。政府の方は八紘さんに、お義父さんにお願いしようと思っています」
『八紘兄貴を義父と呼ぶか。どうやら君も、いやお前も腹を決めたようだ。よし、ならそちらは任せた。八紘兄貴によろしく伝えておいてくれ』
「はい」
弦十郎との会話を終えるなり、シキはすぐさま最近登録したばかりの番号へ電話をかける。
『何かあったかね?』
「風鳴八紘さんに是非ご報告したい事があります」
シキの言い方で私人ではなく公人としての自分へ話があると察し、八紘は少しだけ居住まいを正した。
『聞こう』
「実は、我が家で同居させたい三人の女性がいるんですが、彼女達がキャロルと協力してアルカ・ノイズ対策をやってくれてるんです」
それだけで八紘は大体の事を察した。パヴァリアの名を出さないのは盗聴の危険性を考慮してであり、女性達の名を出さないのもそれと同じだと。
義息の配慮に成長を感じ取り、八紘は小さく笑みを浮かべるもすぐに凛々しい表情へと戻した。
『アルカ・ノイズ対策、か。それはキャロル君の能力で無力化出来たと南極での戦いで見せてもらったが?』
「でも、それでは各国首脳などを狙われた場合、手出しが出来ないじゃないですか。そのためのものと考えて頂ければ」
『そういう事か。要は暗殺などへの防御策』
「はい。ただ、これはキャロルだけでは不可能らしく、彼女達三人の協力なくしては実現出来そうにないんです」
『……そうか。逆に言えば、彼女達さえ協力してくれれば完成は間違いないのかね?』
「それはもう。完成した暁には、各国首脳などの重要人物へ無料で配布しますし、その前で実験を行ってもいいです」
『それは助かる。なら、完成した時には私から各国へ話を通しておこう。その背景を知れば、きっと彼らも感謝してくれるだろう』
「そうなってくれると信じてます。あ、そうだ」
『まだ何かあったかね?』
話は終わりと思った瞬間、シキから聞こえた少し力の抜けた声に八紘は疑問符を浮かべる。そんな彼へシキが告げたのは……
「いつか、お義父さんとお酒を飲み交わしてみたいです。二人きりで」
『……それもいいが、まずは私にも孫の顔を見せてもらいたいな』
「あ、そうでしたね。なら、近い内に我が家へ来てください。招待状を出しますから」
『ははっ、招待状か。成程、たしかに君の家へは普通の手段では行けないな』
「お義父さんでもそこは譲れませんので。ご理解ください」
『ああ、分かっている。私も楽しみだよ、君の家がどういうものかは』
「きっとご期待を裏切らないと思いますよ。では、これで失礼します。仕事、頑張ってください」
『ありがとう。君も体に気を付けてな』
聞こえてくる通話が終わった事を示す音に、シキは大きく息を吐いた。それは何も話が終わったからだけではない。
(遂に、ここに八紘さんを招く時が来たんだなぁ……)
義父と呼べる八紘を、これまでそこまで深く関わってこなかった存在を家へ招く事。更に夢子を見せる事もシキにとって緊張する事であった。
ないと思っているが、もし八紘を夢子が怖がったら今後に色々差し支えるからだ。かつてであればハーレムがと、そう思っての考えかもしれなかったが、今のシキが思うのは別の事。
(夢子をみんなは自分達の子供や妹、あるいは家族ってそう思ってくれてる。八紘さんを夢子が受け入れなかったら微妙な空気になってしまうかもしれない)
新しくやってきたヴァネッサ達を受け入れた夢子は、その三人からもすぐに可愛がられる存在であり、サンジェルマン達さえも顔を見る度に愛でている程なのだ。
シキもこれまでの事から夢子が八紘を怖がる事はないと思っているが、世の中に絶対はない以上不安は残る。
「どう? 話は上手くまとまりそう?」
「あー、うん。多分リオ達の事は大丈夫だと思うよ」
「あーし達は、ねぇ。なら、心配事は風鳴八紘と夢子?」
「八紘さんの事、知ってるんだ?」
「当然。シキが思ってるよりも、風鳴八紘ってその筋じゃ有名人よ?」
そのカリオストロの言葉にシキが詳しい話を聞きたがったのは言うまでもない。けれど、カリオストロがまず語ったのは、八紘よりもその父である訃堂の事だった。
曰く、風鳴訃堂は怪物であり国を護るためなら何でもやる鬼。迂闊に手を出せば必ず血が流れ屍が生まれると。
「ま、風鳴八紘はそんな訃堂とは違う意味で厄介ね。紳士的で誠実、だけども譲れぬ事は一切譲らず妥協しない。かと思えば譲れる部分はしっかり譲り、交渉に関しては柔と剛を両立させる。ま、これは結社が関係してるとこの筋から聞いた事なの」
「要するに、外交手腕が凄い?」
「らしいわ。何よりも凄いのはそんな立ち回りをしながらこれといった敵を作らない事だそうよ」
「本当に強い人は戦わずに勝つって言うからね。さすがは真の防人。勝負をつけるに矛を交える必要なしって事かぁ」
思いがけないところから義父を褒められ、シキとしては嬉しくなって笑みが浮かんだ。後で翼にも教えてやろうと思いつつ、シキはその場から立ち上がる。
「さて、じゃあちょっと俺はヴァネッサ達の様子を見てくるよ」
「ならあーしは本部へ戻るとするわ」
「ん。今夜はどうする?」
「サンジェルマンに聞いてみるけど、多分今夜はお泊りになるはずよ。なんだかんだでサンジェルマンもここでの食事、気に入ってるみたいだもの」
「分かった。なら、そのつもりでみんなには言っておく」
「お願いね。駄目そうなら早めに連絡するから」
そこで話は終わり、二人はそれぞれの目的のため動き出す。シキはヴァネッサ達の様子を見にリビングを離れ、カリオストロは協会本部へと戻っていった。
その頃、ヴァネッサ達と言えば……
「ま、一旦これで休憩にしてあげるわ」
各装者達の自室となる部屋全ての掃除を終え、休憩所とも言うべき場所である大浴場前の脱衣所にいた。ガリィは慣れない事への疲れを見せる三人を見て、どこか楽しげに笑って大浴場へと向かって歩き出した。
「あ、あの……」
「何よ? こう見えてもガリィちゃんは忙しいの。用件は手短に頼むわ」
「お風呂場で何を?」
「何って、掃除に決まってるでしょ。あんた達は休憩が必要だけど、あたしは生憎とそういうのいらないの。で、掃除しないといけない場所はまだある。だから時間を無駄には出来ないのよ」
それだけ言うと、ガリィはヴァネッサ達へ手を振って大浴場の中へと入っていった。
見送る形となったヴァネッサ達だったが、それがガリィなりの気遣いであるとは分かっている。ガリィは、ここは休んで構わないから自分が大浴場の掃除を終えたらまた働いてもらうぞと、そう言っているのだと。
「……エルの言った通り、捻くれた奴だぜ」
「でも、さっきまでの教え方は丁寧だったであります」
「そうね。ここを途中にしたのも、私達を最初からここで休ませるためでしょうし」
ヴァネッサがそう言うとミラアルクとエルザが小さく声を漏らした。脱衣所には、当然ながら水分が補給出来るように水が置いてある。それだけではなく座ったり寝転んだりが可能な場所もあるのだ。
これほどまでに休憩に適した場所は無い。そうヴァネッサは理解していたのである。言葉遣いはキツイが優しく気配りなどが出来る存在というエルの表現は正しかったとヴァネッサは実感し、小さく笑う。
(オートスコアラーなんて思えないわね、これじゃあ。シキさん達が家族と呼ぶ訳が分かるもの)
人形ではなく一人の人間。そう思い扱う家だからこそ、人ならざる体だった自分達も最初から人として扱われたのでは。ヴァネッサはそう思ってそっと自分の胸へ手を当てる。
「……この家で私にしか出来ない事、見つけてみようかしら」
昨日シキの力で元に戻った体。以前はパヴァリアでファウストローブの研究をしていたヴァネッサだが、事故により機械混じりの体となった後はそういった知識から遠ざかっていた。
だが、キャロルが錬金術師でありファウストローブを持っている事を聞いて、ヴァネッサの中に眠る研究者心が疼いたのだ。調べてみたい。そしてあの頃のように自分の持てる知識や技術をぶつけてみたい、と。
「それにしても、休憩したら次はどこを掃除するでありますか?」
「さぁ? ま、どこでもいいぜ。正直普通の部屋ならやる事や気を付ける事は覚えたしな」
長椅子に腰掛け、隣り合って話すエルザとミラアルク。その手には小さな紙コップが握られている。脱衣所に置かれている水分補給用の物だ。中身は当然水。それでも、疲れた体には十分過ぎる程の癒しだった。
「そんな事言うと、ガリィが普通じゃない場所をやるって言い出すでありますよ?」
「へっ、上等じゃねーか。どこでもしっかり綺麗にしてやるぜ」
「そぉ……なら、やってもらおうかしら?」
「「っ?!」」
背後から聞こえてきた声にエルザとミラアルクが背筋を伸ばす。その声は、とても優しかった。まるで錆びついたように首をギギッと動かし、二人は後ろを見た。
「お風呂場の掃除って、水場だけあって色々面倒なのよぉ。やり方教えてあげるから、あんた達三人でやって頂戴。どこでもしっかり、き・れ・い、にしてくれるのよね?」
蛇に睨まれた蛙の如く、何も言う事も動く事も出来ないエルザとミラアルク。ガリィの目は獲物を捕らえた捕食者のそれだったのだ。
「その、ガリィ? それぐらいで許してもらえないかしら? エルザちゃんもミラアルクちゃんも決して掃除を甘く見てる訳じゃないの。ただ、休憩してて少しだけ気が抜けただけで」
「分かってるわよ。だけどね、これだけは言っておくわ。気を抜くのはいいけど手は抜かないで。この家、普段掃除する場所だけじゃなくて、一週間に一度だけどやらないといけない場所なんかもあるの。そこは言った通り、掃除する機会は一週間に一度だけ。そこで手を抜かれたら後々困るの自分達なんだから。分かった?」
ガリィの言葉に無言で首を縦に動かすエルザとミラアルクを見て、ヴァネッサは小さく苦笑する。これで当分二人はガリィに頭が上がらないだろうと思ったのだ。
と、そこでシキが姿を見せた。神の力を宿したおかげで彼は様々な感覚が鋭くなっているため、彼女達の気配を感じ取って脱衣所へとやってこれたのである。
「いたいた。どうだい? 掃除は大変じゃない?」
「あっ、シキさんであります」
「何だ? もう幹部との話は終わったのかよ?」
「うん、まあね」
「シキさん、お仕事はいいんですか?」
「ん? ああ、これから行こうと思ってるよ。仕事って言っても、今や成分献血とかだし、時間も決まってる訳じゃないからね。気楽なものさ」
ヴァネッサへそう笑顔で返してシキはガリィを見た。
「ガリィ、三人はどう? 掃除、任せられそう?」
「今のところは個室ならってとこね。大広間とかお風呂場とかはまだ未知数」
「そっか。なら、最初はみんなの部屋を一人に任せてって感じがいいかな?」
「それがいいんじゃない? ま、正直翼の使った後の部屋はまだ任せるのは怖いけどね」
「……それもいつか分かる日が来るんだ。なら、早い内に教えておくのもいいかもしれない」
翼が聞けば赤面し俯くだろうやり取りである。三人は生憎翼の事を知らないに近いため、揃って疑問符を浮かべていたが。
「ん~……それは今度翼が泊まった翌日にでもやるわ。で、用件はそれだけ?」
「それだけ」
「じゃあさっさと仕事行きなさい。邪魔よ邪魔」
「へいへい。じゃ三人共、大変だろうけど頑張って」
「「「はい(おう)」」」
最後に笑顔を向け、シキは脱衣所を去る。その背を見送って、エルザとミラアルクは気合を入れるかのように握り拳を見せた。
「うし、じゃあガリィ、悪いけど風呂場の掃除、教えてもらうぜ」
「しっかり覚えてお役に立つのであります!」
「あらぁ? 急にやる気になっちゃって。もしかして、あんた達、シキに褒められたいの?」
「そ、そんな事はないであります!」
「まぁ、褒められるにこした事はないと思うけどな」
「ふ~ん……」
ニヤニヤして二人を見つめるガリィではあったが、その内心は若干微笑みを浮かべている。気付いたのだ。ミラアルクはともかく、エルザのシキを見る目がキャロルやエルに近しい事を。
(どうやらエルザの奴、シキに親を見てるわねぇ。まぁ、今のあいつは父親オーラ強くなってるし、無理もないか。マスターとエルにはそれとなく教えておきましょ)
血の繋がりがないキャロルとエルを我が子として思い、大事にしているシキならばエルザがその胸の内を打ち明ければ同じように扱う事は間違いない。
そう考え、ガリィはまずマスターであるキャロルとその妹エルの判断を仰ぐ事にしたのだ。そう、ガリィ達にとってマスターはキャロルであるが、その双子の妹という扱いになったエルもまたマスターに次ぐ存在へ昇格させているのだ。
ともあれ、ガリィ監督の下、三人は慣れない水場の掃除に汗を掻く。昨夜は使うだけだった立場から、そこを清掃する立場になって初めて分かる苦労と大変さ。
だけれど、故に思うのだ。これはここで暮らす者達の役に立っているのだと。自分達だけが使う場所ではない所を綺麗にする。家事と言うのは名の通り家の事だ。それは即ちそこで暮らす者達には欠かせないもの。
そして、それは自分達の生きる意味を見失っていた三人にとって、とても大きな意義を持った。
(今の私達には、ここで恩返しする事が一番の目的でいいかも。そうして生きていきながら、ゆっくりやりたい事やしたい事を見つける。シキさんが言ってくれたように、今の私達には体よりも心を休める時間が必要なんだわ)
(何かをして褒められる。それだけで嬉しくなると私めは知ったであります。もっともっと皆さんのお役に立って、いっぱい褒められたいであります)
(生きるって事は大変だって分かってたけど、こうしてると余計思うんだぜ。ここで家事をある程度覚えておけば、将来の役に立つし頑張るか。……いつか、ウチら三人でここを出て暮らすってなった時、寂しいって感じないといいけどな)
掃除を終えて脱衣所でへたり込みながらぼんやりと思考に耽る三人。その姿を眺め、ガリィは少しだけ優しい笑みを浮かべるのであった。
そして時刻は夜の七時を過ぎ、ここ要家の食卓には大きな鍋が三つ置かれていた。冬の日本と言えばやはり鍋であり、キャロル達もシキ達との関わりもあってすっかり感覚が日本人らしくなり始めていたのだ。
ただ、目の前に置かれた見慣れぬ調理器具と状況に、この家の新参者である六人の女性はどうすればいいのかと疑問符を浮かべていたが。
「し、シキさん? これは、一体どういう?」
「あー、ヴァネッサさん達の前にあるのは、寄せ鍋って言って一番シンプルで食べやすい煮込み料理」
「シキ、私達の方は?」
「アンジェ達のは白だしで作った鍋つゆで食べるしゃぶしゃぶ。それも癖がないから大丈夫だと思って」
ここにアダムがいれば大いに笑っただろう。パヴァリアを抜けた三人と幹部三人が揃いも揃って同じ顔で土鍋を見つめているのだから。
それはまるで初めて見るものを眺める子供のような眼差し。不思議さを宿した、純粋な視線だ。そんな二組の中間に、呆れるような表情のクリスがいた。
「あのな、不思議なのは分かるけどさっさと食べようぜ。あたしは腹が減ってるんだ」
エルザとプレラーティの間へ座らされているクリスは、勿論サンジェルマン達とヴァネッサ達への説明役兼緩衝材役であった。
本来であれば二つの鍋をみんなで食べ合うのだが、鍋をつつくというのはその場にいる者達への一定以上の信頼感や親しさがなければ出来ない。そう考えればサンジェルマン達とヴァネッサ達が同じ鍋をつつくのは不可能だとファラ達は考え、その二組の前に別々の鍋を用意したと言う訳である。
「そうだな。食べ方は教えてもらえるの?」
「ああ、しっかりあたし様が教えてやる。そっちもな」
「お願いするわ」
サンジェルマンへはっきりと頷き、ついでにヴァネッサ達へも顔を向けて安心させるクリス。長きに渡り装者達の中で世話焼き役をしているだけあり、彼女のこういう場面での信頼感は抜群であった。
「それじゃ、手を合わせて……」
「「「「「「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」」」」」」
シキの合図で全員が手を合わせて声を揃える。この日本式の食事の挨拶も、サンジェルマン達とヴァネッサ達には新鮮であり、同時に要家の一員になったという実感を与える効果をもたらしていた。
ちなみに、シキ達が食べているのは某有名店の辛みそ鍋である。ただし、キャロルやエルに配慮して最低の辛さであったが。
「こ、こうでいいのだろうか?」
「ん? ああ、それでいい。肉は色が変わるまでくぐらせて食べるんだ」
「あの、これはもう食べられるでありますか?」
「……白菜は白いとこが透明になるまで待て。食えねー事はねーけど、まだ固いからな」
「お野菜をお肉で一緒に巻いて食べるの美味しいわよ」
「それはいい事を聞いたワケダ。早速試してみるワケダ」
「やってもいいが、野菜は肉よりも火が通り難いからな? 先に野菜を入れておけよ?」
「この白いの、すぐ崩れちまうぜ。食べられるのかよ、本当に」
「だぁ! 豆腐はその穴の開いてるお玉ですくえ。いや、いい。あたしがやってやる。お椀貸せ」
「あ、なら私にもお願い出来る?」
「おう、次な。ほれ、熱いから四つに割ってしばらく冷まして食べろ」
「悪いな。感謝するぜ」
完全に世話焼きママと化したクリスを見つめ、シキ達は苦笑していた。それと、シキが密かにクリスへ期待していた効果も、薄っすらとではあるが出始めていたのだ。
それは、クリスがある程度二組の世話を終えて自分も食べだした時の事。当然彼女は二組どちらへも特に思う事がある訳ではない。故にしゃぶしゃぶも寄せ鍋も食べる訳で……
「ん~~~~っ! っはぁ、寄せ鍋はやっぱ美味ぇな。あっさりとした白身が最高だぜ。どれ、次はしゃぶしゃぶをっと……肉を泳がせながら鍋底の野菜をすくうように巻いてっと……ふ~っ、ふ~っ……はむっ……はふはふっ……かぁっ! 美味いっ!」
意図せずして二つの鍋の美味しさを伝え、一人だけその両方を味わえる事は、ゆっくりとサンジェルマン達とヴァネッサ達へ相手の鍋も食べてみたいという欲求を起こさせる事となる。
特に、日本料理に馴染みのない彼女達である。初めて食べる鍋は季節も相まって最高に体を温め心も温めた。その心の熱が、遂に隔たれていた二組の壁を溶かし始めたのだ。
「その、雪音クリス、頼みがある」
「あ?」
ルンルン気分でしゃぶしゃぶを楽しんでいるクリスへ、サンジェルマンが声をかける。その視線はゆっくりとクリスからヴァネッサ達の前にある寄せ鍋へ動いていった。
「向こうの鍋も、気になるんだ。少しもらってもいいだろうか?」
「……そういう事なら自分で聞けよ。あたしを仲介して聞くような事じゃねーだろ」
「そう、だな。そうだった」
何かに気付いて優しく笑うクリスへ、サンジェルマンも似たような笑みを返して視線をヴァネッサ達へ向けた。
「すまないが、少しそちらの鍋の具をもらえないだろうか?」
その問いかけにヴァネッサ達が顔を見合わせ、少しした後に小さく頷き合う。
「……なら、そちらの鍋も私達へ食べさせてもらえますか?」
返ってきた言葉にサンジェルマンはカリオストロとプレラーティへ視線を向ける。二人はどこか微笑みながら頷いた。それを見たクリスが上機嫌で二組へこう持ちかけたのは言うまでもない。
―――なら、あたしは向こうの鍋食ってるから、後はお前らで好きにやってくれ。
こうしてクリスがシキ達の方へ移動し、二つの鍋が少しだけその開いていた距離を詰める。更に二つの鍋を食べるため、プレラーティとエルザ以外は席を立って食べ始めたのだ。
「色が変わったけど、これでいいのか?」
「問題ないわ。それで食べられるわよ」
「このポン酢と言う物を付けても美味いが、何も付けなくても十分食べられるワケダ」
「くぐらせただけなのに野菜に味が付いているであります。私めはこの味も好きであります」
「ダシ、という物の味だそうだ。そちらの味も中々いい。私は嫌いではない」
「あら、もう具材がなくなってしまいそうですね」
本来であれば行儀が悪いと言うところだが、六人は日本人ではないのでシキは何も言わず、むしろ嬉しそうに見つめていた。そんな彼の視界の隅に綺麗な金髪が映ったのはそんな時だ。
「フィーネ……?」
「思い出したのだ。私も、ああやって家族となっていった事を。鍋というのは不思議だ。ただの煮込み料理のはずなのに、何故か食べる者達の心を近付ける」
「同じ釜の飯を食うって言葉があるぐらいだし、やっぱり同じ物を食べるって言うのは結束力を強くするんじゃないかな?」
「結束力……そうか」
シキの意見に納得するように呟いて、フィーネは静かに立ち上がるとサンジェルマン達六人の傍へと近付いていく。
「そちらの鍋もそろそろ食べる物がなくなってきただろう。シメの時間にするが、そちらは何を食べたい」
「ど、どちら様でありますか?」
突然のフィーネにサンジェルマン達は驚き、ヴァネッサとミラアルクは疑問符を浮かべ、エルザが代表して問いかける。そんな彼女達にフィーネは小さく苦笑すると、一瞬にして了子へと戻る。
「「「えっ!?」」」
「こういう事よん。私は、先史の巫女フィーネとして覚醒したの。でも、色々あって塗り潰されたはずの魂がこうやって戻って、彼女と共存しているわけ」
「……フィーネでもあり櫻井了子でもある、というワケダ」
「そ。それで、どうするの? シメって言うのは、鍋の楽しみでもあってね、その鍋つゆにご飯や麺を入れてちょっとだけ手を加えて食べる事なの。美味しいわよ~」
「私のおすすめは麺。何でも合うし、店でも食べられない味だから」
「僕は断然ご飯を推します。鍋の美味しさが染み込んだ雑炊は、最高なんです」
「で、あたしは贅沢に両方って言っておく。どうせ鍋は複数あるんだ。なら、三つ全て違うシメにするのもアリってもんだしな」
最後のクリスの意見にエルザとミラアルクが即座に賛成。ならばとヴァネッサも同意し、サンジェルマン達も異論なく、シメは三種類用意される事となる。
赤い辛みそ鍋にはラーメンが、寄せ鍋にはご飯が、しゃぶしゃぶ鍋にはうどんが投入され、出来上がった三つのシメに全員が舌鼓を打つ事になった。
綺麗に空となった三つの鍋をヴァネッサ達が洗う中、サンジェルマン達はその背を見つめていた。
「……たった二日でこれ程まで変わるのだな、人とは」
「そうね。昨日見た時はどこか生気が無かったんだけど」
「人を大きく変えるのは、誰かに強く必要とされる事かもしれないワケダ」
噛み締めるようなプレラーティの言葉に、カリオストロだけでなくサンジェルマンも頷いた。彼女達はシキと交わり、彼から強く求められる事で変わった経験を持つ。
だからこそ、ヴァネッサ達の変化がよく理解出来たのだ。要家で必要とされている事に加え、家族の一員としても扱われている事。それがそれまで化物扱いされていた三人にとってどれ程の癒しとなったのかを。
「食後のお茶をどうぞ」
「派手な食事の後には地味な落ち着き。人生には、このメリハリが大事よ」
「あら、ありがとう」
「いつもの事ながら気が効くワケダ」
サンジェルマン達の前へ置かれる三つのティーカップ。その中身は勿論あったかい紅茶である。その香りに表情を緩めるカリオストロとプレラーティだったが、サンジェルマンは何故かそれを少しだけ見つめ、何かを決意したかのように立ち上がると洗い物をしているヴァネッサ達へ近付いて行った。
「すまない。少しいいだろうか?」
「……何か?」
凛々しい表情のサンジェルマンとどこか訝しむようなヴァネッサ。エルザとミラアルクも若干ではあるがサンジェルマンを警戒するように見つめている。
そこから自分がまだ三人にどう思われているかを察し、サンジェルマンはその表情を緩めて笑みを見せると手を差しだしたのだ。
「え?」
「私もこの家の手伝いをしておきたいと思ったのだ。良ければ、手伝わせてもらえないだろうか?」
「……洗い物、するのでありますか?」
「ああ。だが、何分こういう事をするのも久しぶりなのでね。可能なら見ていて注意や指示を出してくれると助かる」
「は? 久しぶりって、パヴァリアの幹部が洗い物なんてしてた事あるのかよ?」
「そうだ。私とて最初から今のような立場だった訳ではない。幼い頃は日々を生きるために体中を汚しながら駆け回った事もある」
言いながらそっとヴァネッサの横へ立ち、残った鍋を片手で持つサンジェルマン。と、その残った手へスポンジが握らされた。
「これを使って洗ってください。汚れがこびりついてる場合、裏側で擦るといいそうです」
「そうか、分かった。ありがとう」
「……どういたしまして」
サンジェルマンの素直な感謝に一瞬面食らいながらも、ヴァネッサは微かに笑みを浮かべて言葉を返す。その様子を見て、カリオストロとプレラーティが黙って笑みを浮かべたままで席を立ったのは言うまでもない。
かくしてパヴァリア幹部三人がヴァネッサ達に見守られながら洗い物をするという、見る者が見れば驚く事請け合いの珍事は起こったのだ。
「お前の思惑通りか?」
その光景を眺めていたシキへ、フィーネが笑いながら問いかける。彼女の視線は、シキではなくキッチンの六人へと向けられていた。
「ここまでは想像もしてなかったよ。あれは、アンジェとヴァネッサさんの手柄さ」
「冬も厳しさを増すというのに雪解けとはな。やはりこの場所は温かいようだ」
「少し違うよフィーネ」
「ん?」
「温かいじゃなくて、あったかい、だ」
「あははっ、そうだったな。ああ、ここはあったかい場所だ」
微笑みながら目の前を見つめ続けるシキとフィーネ。そこでは、あまりにも手付きがおぼつかないサンジェルマンを見かねてヴァネッサがスポンジを奪い、手本を見せていた。
それを見たカリオストロとプレラーティが苦笑し、エルザとミラアルクが声を上げて笑う。それを聞いてヴァネッサも笑みを零し、サンジェルマンだけがやや憮然とした表情を浮かべていたが、やがて彼女も笑い出す。
「キャロル、あれ見て」
「見なくても聞こえてる。それに、別に不思議じゃない」
「え?」
眠りそうな夢子を優しく見つめて微笑むキャロルを、エルは不思議そうに見つめた。その視線へ顔を向ける事なく、キャロルはそっと夢子の頬をつついて口を開く。
「ここは、どこにも属さない場所だから。どこに属する人間でも、ここでは関係なく一人の人として扱われる。なら、あの六人が仲良く笑うようになったっておかしくないじゃない」
「……そうだね。うん、我が家はそういう場所だもん」
最後に顔を動かしてエルへ笑みを見せるキャロル。そんな彼女へエルも笑みを返してゆっくりと振り向く。そこでは、洗い物を終えた六人がレイア達の淹れた紅茶を受け取り口へつけようとしていた。
その光景が、エルには平和という言葉を表していると感じられた。と、そんな彼女の肩をそっと叩く者がいた。
「エル、夢子が寝ちゃったから父さんか母さんを呼んできて。私達よりもそっちの方が安全だから」
「うん、分かった」
出来るだけ静かに歩き出すエルを見送り、キャロルはもう一度寝息を立てる愛しい妹へと顔を向ける。
「……でも、この家があったかい場所になった一番の要因は夢子だと思うな」
天使の寝顔を見せる夢子を見つめ、キャロルは一人微笑む。自分で何か動く事なく周囲を変えていく力を持つ、幼い命を……。
「んっ……ああっ……」
艶めいた声が室内に漏れる。その声の主は先史の巫女、フィーネ。で、上げてる理由はただ一つ。
「どうしたのフィーネ。もしかして、おっぱい搾られて感じた?」
俺がフィーネの乳房を強めに揉んで母乳を出させたからだった。夢子のために生成される母乳なのに、それを夫に搾られ快感を得てしまう。これがフィーネには背徳感を与えるようで、この上なくよがってくれるのだ。
やわやわとフィーネの巨乳を揉みながら、時々トキトキになった乳首を指の腹で弾く。
「はぁんっ! あ、アナタぁ」
「何? そんな物欲しそうな顔して。言いたい事があるなら言ってごらん」
「そ、その……」
「うん」
会話をしながらも俺はフィーネへの愛撫を忘れない。顔を赤めながらも吐息は色っぽいフィーネに正直チンポが早く入れさせろと煩いぐらいだ。
でも、まだまだ。何せ久々のフィーネとのラブラブエッチである。すぐに繋がって獣となるのはもったいない。
手の中で張りのある巨乳を優しく揉む。強くすると母乳が出てしまうからだ。それは、まだ今じゃない。今は中々エッチな誘いが言えない巫女様を焦らし、子作りを、種付けをおねだりさせるのが一番重要なのだから。
「あ、アナタの、チンポで、夢子のような可愛い子を私に作って欲しいっ!」
目をきつく閉じて言い切るフィーネ。正直もう堪らない程可愛いが、ここはぐっと我慢。すると、俺の反応がないのでフィーネが目をおそるおそる開いていく。で、こちらを見つめてどこか寂しそうな表情に。
「だ、駄目だろうか? ひゃんっ!?」
その瞬間、俺は手にしていた巨乳を強く揉んでいた。そしてそのままフィーネへキスする。舌をねじ込むようにし、フィーネと舌を絡めていく。
「んっ……はぁ……アナタぁ……んぅ」
艶めいた表情と声で俺を呼ぶフィーネ。心なしか、さらわれる前よりも俺への熱が上がってる気がする。
「じゅるるっ……フィーネ、一ついいか?」
「ふふっ、何だ?」
俺の胸にもたれかかって嬉しそうに笑うフィーネ。その眼差しは、とても幸せそうだ。
「俺がいない間に何かあった?」
「うふふ、どうだろうな。でも、これだけは言える。私が今一番愛しているのは、アナタだ。あの方でも誰でもなく、要シキなのだ」
「フィーネ……」
思わぬ宣言に心が熱くなる。夢子がお腹にいる時にもフィーネから俺を愛してると言われたけど、それを超える程の強く熱い想いを伝えてもらった。
と、そこでチンポへ手が伸びてくる。見ればフィーネが妖艶に微笑んでいた。そのまま白くて綺麗な指がチンポへ絡み付いてきて、ゆっくりと扱き始めた。
「くっ……フィーネ……」
「アナタ、私も愛してくれ。アナタの好きにしてくれていい。もっとアナタを感じさせてくれ」
「そういう事なら……」
「あっ……んんっ! 乳首を虐めるのか。あんっ、ふふっ、気持ちいい。アナタの温もりがあれば、今の私はきっと痛めつけられても喜べる自信があるぞ? ああっ! 胸が潰れるぅ!」
何かすっごくフィーネがエロ覚醒したんですけどっ!? これはMに目覚めたというよりは、完全に俺へ身を委ねてくれたって事でいいんだろうか?
頭の中がぐるぐると混乱してくるが、それでもフィーネの胸を揉む事は止めないし止めるつもりはない。柔らかくて張りがあって、とても気持ちいいおっぱいなのだ。これから手を離すなどとんでもない。
そうだ、ついでにフィーネへお願いをしよう。今のフィーネならきっと言ってくれる。そう思って俺はチンポを扱き続けて、キスしてとばかりに舌を伸ばし続けてくるフィーネを見た。
「フィーネ、胸じゃなくておっぱいって言って」
「おっふぁふぃ?」
「うん、おっぱい。それと、出来れば母乳をチンポへかけてパイズリも」
「あははっ、急に以前のアナタへ戻ったな。くくっ、いや、でもそれが嬉しいと感じるとは、私も変わったようだ」
言ってる事はともかく、表情だけは可愛い女の子のように笑って、フィーネはチンポから手を離して体勢を変えてくれた。大きな胸を両手で持ち上げ、自分で搾って母乳をチンポへかけていくのは何とも言えず興奮する。
あったかい液体が掛かる度、俺の中で父親が頭を抱えて男がガッツポーズ。ただ、フィーネが望むのが子供と分かっているのでどちらにせよチンポを萎えさせる事はないけど。
母乳をある程度かけ終わったところで、チンポを包む柔らかくあったかい感触。それだけで射精したい程の幸福感と満足感だ。何せ先史の巫女のパイズリである。
「んっ……こう、だったな。やはり何度やっても慣れないものだ」
「これだけでも俺は満足だよ、フィーネ。でも、もっと幸せにして欲しいんだ」
「ああ、分かっている。私のおっぱいでたっぷり出させてやるからな? 覚悟しておけ」
「うわぁ、世界で一番恐ろしくて幸せな脅しだよ、それ」
何よりおっぱいと口にしたフィーネが照れたのか顔を赤くしていたからな! チンポは平気になってもおっぱいが恥ずかしいとか、この巫女様可愛すぎだろ! これが俺の妻なんです!
そんな感じでテンションを上げている間も、フィーネによるミルクタンクと化したおっぱいによるパイズリは続いていた。
はっきり言おう。見た目がメチャクチャエロい。時々力を入れ過ぎるのか、乳首から母乳が出てくるのだ。それでフィーネが感じてしまうらしく「あっ……」とか「ああっ……」とか声を漏らすのが非常にチンポに悪い。
「んっ……これまでよりも反応が大きいな。そんなに乳の出るおっぱいが好きか?」
「それもあるけど、フィーネが今までよりも魅力的に見えるからだよ。俺を大好きだって、そういう気持ちが伝わってくるしね」
「……そうか。ふふっ、そう言ってくれるか。ああ、本当に私は幸せだ。アナタ、可能なら私はアナタと同じ時間を生きて、そして二度と目覚める事のない結末を迎えたい」
「フィーネ……」
今の俺にはフィーネの願いが分かるし叶えてやれる。神の力でフィーネ自身を輪廻の鎖から解放してやる事だ。
全ての女性にフィーネの因子は存在し、ある条件を満たせばフィーネの器として覚醒する。
だから、その根本であるフィーネ自身へ神の力で干渉して、彼女自身を媒介に施したものと逆の事をしてやればいい。
「……それをやるとしても、今から何十年も後の話だからな?」
「ええ、今はそれでいい。私も本当の意味で母になり、祖母になってみたい。アナタの血を、意思を受け継ぐ存在を産み落とし、その行く末をある程度でいいから見届けたいから」
声と口調が柔らかくなったフィーネに、思わず息を呑んだ。もしかすると、これが本来のフィーネなのかもしれないと。
「……フィーネ、横になって欲しい。君が、君を抱きたい」
「ああ……ああっ! 私も、私もアナタに抱いて欲しいっ! アナタに抱かれて子を生したいっ!」
「うん、作ろうっ! 俺と君の子を! 夢子の家族をっ! いいね、フィーネ!」
「はい、アナタっ!」
今までにない程気分が高揚する。フィーネが俺に見せてくれた本来の顔がその原因なのは言うまでもない。奏達には恨まれるかもしれないけど、フィーネと了子は別人なんだ。だから、それで理解してもらうしかない。
ベッドの上で俺へ向けて股を開いて、フィーネはその手でマンコを開いて見せてくれた。男を誘う様にヒクヒクとしているそこは、人によってはグロテスクと思うかもしれない。
だけど俺にはこの上なく魅力的な光景だった。何せ愛する妻が、そこまでして俺のチンポを、精子を、遺伝子を求めているという事なのだから。
「アナタ、早く来て? もう私は待ちきれないんだ。初めて抱かれた日よりも胸の鼓動が高鳴って、お腹の辺りが疼いて仕方ないの。櫻井了子は夢子を自然な形で宿せなかったから、私は自然な形で子を宿らせて欲しい」
「ああ、いいよ。フィーネへ俺が上げる初めてはそれだ」
「……嬉しい。これで私もアナタから初めてをもらえるのか」
チンポをマンコへあてがいながら、聞こえてくる声に心を震わせる。あのフィーネが心の底から喜んでくれている。俺の子を自然な形で宿す事に嬉しいと言ってくれていると。
「一気に入れるからな?」
「はい、いつでもどうぞ」
この一生を尽くすと決めたような声に、今の俺はとても懐かしさに似た感情を抱く。多分だけど、神の力の持ち主に多少影響されているんだと思う。どうやらフィーネの想い人だったようだし。
と、何故だろうか。以前であればその想い人からフィーネを寝取ったと興奮できたし、俺がそいつの分まで幸せにしてやるんだとか思えたのに、今はちっとも感情が動かない。
「どうした? 誘いが足りなかったか?」
一向に動かない俺へフィーネが普段の調子で声をかけてきたのはそんな時だった。
「っ!? そんな事ないよ。ちょっとだけ感慨深く思ってただけさ」
「ふふっ、そうか。私も驚いている。櫻井了子と想いを通じ合わせた時もそうだったが、今のアナタを見ていると過去の恋心を思い出すのだ。あの方は私を想っていてくれたのだと、そう分かった今、現在で私を愛して求めてくれたアナタへこの身を全て委ねる事に躊躇いもなくなった。あの方は私の幸せを願ってくれた。そしてアナタが私を幸せにしてくれる」
「そうだよ。俺は、フィーネを幸せにしたいんだっ!」
そうはっきりと言い切ると同時にチンポをフィーネの中へと突き入れる。
「ああんっ♡ い、今のはズルいです……女の身も心も幸せにするなんてぇ……」
「フィーネがいけないんだよ? 夫の前で過去の恋人の話をしたんだからね」
一瞬にしてフィーネが奥さんモードへと変わった。多分だけど無意識に神の力を使ってるんだと思う。きっと、妊娠率の上昇のために。それに付随して感度や幸福感なんかも上がってるんじゃないかな?
そして、何となくだけど俺に神の力が宿ったのは実はこのためなんじゃないかと思う。あのアダムと戦った後、一人で何度か記憶を思い出そうとしてみていくつか見えた事があったからだ。
一つ目は、俺の体を使ってみんなと話した相手はフィーネの想い人だって事。二つ目は、その神様は何かと戦って傷を負った事。三つ目は、その何かの対策でバラルの呪詛は存在するって事。
正直三つ目を知った時は胆が冷えた。俺がアンジェに言った事って、とんでもない奴を復活させる手助けになったんだもんなぁ。
だけど、だからこそ俺の体を神様が乗っ取ってそれを阻止したんだろう。アンジェへ言った言葉も、おそらく嘘だ。ただ、アンジェはそれが本当でも嘘でも構わないって思ってたみたいだけど。
「あっ……んんっ♡ あ、アナタぁ♡ 好きっ♡ 好きですっ♡ 愛していますっ♡」
考え事をしつつ腰を動かしていると聞こえるフィーネの艶っぽくも可愛い声。見れば何と乳首から母乳が流れ出している。
え? これってフィーネが感じ過ぎて母乳を噴き出させてるって事? 何そのエロい現象。そう思って注視していると、確かにピュッピュッと白濁液がピンクの蕾から弱々しくだが吹き出している。
「フィーネぇ!」
「んああああっ♡♡ い、いきなりそんな強く腰を打ちつけないでぇっ♡ んんっ♡ 子宮がぁ、子宮が潰れてしまうっ♡ アナタの子を宿す揺りかごなんですっ♡ もっと大事にしてっ♡」
「無理だよっ! こんなエロい光景見せられてっ! しかも種付けおねだりされてっ! 男が理性保っていられるかぁ!」
腰を打ちつける度に乳首からミルクが流れ出る。フィーネの顔はいやらしく緩み、チンポを舐め回すようにマンコが締め付けるのだ。
チンポを子宮へと突き当てながら、時々おっぱいを吸えば口に溢れる何とも言えない味。甘いような気もするそれは、慈愛溢れる味と言ったところだろうか。
そこからは、フィーネミルクを味わいながらチンポを子宮へ押し付けたままにした。時折口を乳首から離してフィーネとキスをする。舌を絡めてそこでも交わるように。
そうしていると不思議なもので、勝手にチンポとマンコが、正確には亀頭と子宮口がキスし始める。俺が動かなくてもフィーネが何もしなくても、ただ繋がっているだけで体は求め合い新しい生命を為そうとするんだ。
生命の神秘って事だろうか。そんな事を頭の片隅で考えながら、俺はフィーネとキスを続けた。その大きくて柔らかいおっぱいを揉みながらだけど。
「ああっ、そろそろ出しそう」
「我慢せず出してくれ♡ 何度も何度もアナタの子種を注いで欲しい♡ 何だったら永遠に母乳が出る体にしてくれて構わないからぁ♡」
「フィーネ……っ! 出すぞっ! 出すぞぉっ!」
そう言った瞬間、全身を絡めるようにフィーネが腕や足を動かしてきた。それが嬉しくて、俺はキスをしながら子宮めがけて精を放つ。
これまでにない程の快楽と共に幸福感と満足感が全身を駆け巡り、俺は思わずフィーネとキスしながらそれが伝われとばかりに舌を絡めた。
すると、その瞬間頭の中が真っ白になって……気が付いたら目の前に全裸の見慣れぬ女性がいた。
―――厄介な存在だな、貴様は。奴め、まさかこのような手段まで講じてくるとは……。
―――奴? 君は一体……。
―――ふん、まあいい。所詮は追い詰められての苦し紛れ。それに我にも利用価値はある。その時には、もう我を止める術などない。
―――待ってくれ! 君は、君は一体誰だ!
薄っすらと消えていく謎の女性へ声をかけるけど、一切こちらを見ないで相手は消える。そこで意識が戻って、目の前には心配そうに俺を見つめるフィーネの姿。
「アナタ、大丈夫か?」
「……うん、心配させてごめん」
「そうか。いや、何もないのならいい。それで、この後はどうする?」
未だに俺の体をしっかりと全身で拘束しているのにそれはないだろう。そう思っても口にはしない。だから代わりに体で返事。
「ぁ……♡ ふふっ、もっと出してくれるのか♡」
「当然。今度はおっぱいを吸いながら出してあげるよ」
「はぁんっ♡ そ、それは駄目だっ♡ そんな事されたらぁ♡」
「そんな事されたら?」
「……櫻井了子の魂を今一度完全に塗り潰して、完全に私としてしまいたくなるじゃないか」
乙女のように悪戯めいた笑顔を見せて、俺へ笑いかけるフィーネはとても綺麗で可愛く愛らしかった。結果どうなったかと言えば……
「お、おっぱい吸いながら射精駄目ぇ♡ も、もう入らないんだぁ♡ アナタの精子で子宮が溺れてるのぉ♡ 夢子の家族、いっぱいデキちゃうっ♡ 私が初めての双子産んじゃうっ♡」
宣言通りフィーネミルクを飲んでお返しにチンポミルクを出し続けました。いや、驚いた事に飲んでると本気でいくらでも射精出来そうな気がしてくるんだよね、これ。
もしかすると、ただの神の力の影響かもしれないけど、下手するとフィーネミルクじゃなくて了子ミルクでも同じ事が出来る可能性がある。だから近々試してみようと思う。
……その際はゴム着けよう。ドリンクの材料、しばらく採取してなかったしね。
シキが見た記憶のような記録。ぶつかり合う二つの存在、バラルの呪詛の一部真実、そして謎の女性。
けれど、そんな事はどこ吹く風とばかりに妻となる女性達と遂に迎える至福の時間。
ただ、それを覗き見る者が今の要家には存在していて……。
次回、淫姫絶頂したいフォギア「
「せ、セックスってそんなにいいものなの?」
♡マークはアリかナシか
-
アリ
-
ナシ